説明

光干渉式ガス濃度測定装置

【課題】 ガス濃度の測定を高い精度で行うことができ、しかも、装置全体の小型化および省電力化を図ることのできる光干渉式ガス濃度測定装置を提供すること。
【解決手段】 この光干渉式ガス濃度測定装置は、互いに同一の長さを有する標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を有するチャンバと、光源からの光を分割して標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部の各々に入射させると共に、標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を通過した光を合成して干渉縞を生じさせる平行平面鏡と、当該平行平面鏡によって合成された光を受光して被測定ガスと標準ガスとの光の屈折率の相違を干渉縞の変位量として検出する干渉縞検出手段とを具えてなり、平行平面鏡における、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面の反射率が10〜60%とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉式ガス濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉式ガス濃度測定装置の或る種のものとしては、図1を参照して説明すると、被測定ガスが導入される被測定ガス用セル部(12A,12B)および例えば空気などの標準ガスが導入される標準ガス用セル部(11)が区画されてなるチャンバ(10)と、光源(21A,21B)からの光を分割して標準ガス用セル部(11)および一方の被測定ガス用セル部(12A)の各々に入射させる平行平面鏡(23)と、チャンバ(10)を通過した光を反射することによってその進行方向を変更し、標準ガス用セル部(11)および他方の被測定ガス用セル部(12B)を通過させた後に平行平面鏡(23)上において重ね合わせ、干渉縞を生じさせることのできるよう、調整されて配置されたプリズム(28)と、平行平面鏡(23)上で重ね合わせられた合成光(干渉光)を受光する干渉縞検出手段(30)とを具えてなる構成のものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−30859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上記のような構成の光干渉式ガス濃度測定装置においては、例えば省電力化が求められているが、光源(21A,21B)として、例えば比較的高輝度の発光ダイオードを用いることが必要とされることから、光干渉式ガス濃度測定装置はその消費電力が大きなものとなってしまうのが実情である。
このような要請に対して、例えば、光量の小さい小型の光源を単に用いた場合には、形成される干渉縞を十分な明るさ(濃度)を有するものとすることができなくなり、所期のガス濃度測定を行うことができなくなる。
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであって、所期のガス濃度測定を確実に行うことができ、しかも、省電力化および小型化を図ることのできる光干渉式ガス濃度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の光干渉式ガス濃度測定装置は、互いに同一の長さを有する標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を有するチャンバと、光源からの光を分割して標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部の各々に入射させると共に、標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を通過した光を合成して干渉縞を生じさせる平行平面鏡と、当該平行平面鏡によって合成された光を受光して被測定ガスと標準ガスとの光の屈折率の相違を干渉縞の変位量として検出する干渉縞検出手段とを具えた光干渉式ガス濃度測定装置であって、
前記平行平面鏡における、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面の反射率が10〜60%であることを特徴とする。
【0007】
本発明の光干渉式ガス濃度測定装置においては、平行平面鏡は、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面に、反射膜が形成された構成のものとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光干渉式ガス濃度測定装置によれば、平行平面鏡における、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面の反射率が所定の大きさとされていることにより、干渉縞検出手段に到達する光量を多くすることができるので、形成される干渉縞が明るくなり、従って、例えば光源として光量の小さい小型のものを用いること、あるいは、干渉縞検出手段による受光時間を短縮することにより装置全体の省電力化を図った場合であっても、所期のガス濃度測定を確実に行うことができる。
また、干渉縞検出手段による受光時間が短縮されることにより、ガス濃度変動の追従性を向上させることができて高い測定精度を得ることができる。
さらにまた、光源として光量の小さい小型のものを用いることができることによって、実際上、干渉縞検出手段によって干渉縞を検出する際に必要となる干渉縞調整用レンズとして、レンズ径の小さいものを用いることができるようになり、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の光干渉式ガス濃度測定装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
【図2】本発明に係る光干渉式ガス濃度測定装置を使用して行った実験において得られた、平行平面鏡の反射率と、平行平面鏡から出射される光量の、光源から照射される光の光量に対する光量比との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本発明の光干渉式ガス濃度測定装置の一例における構成の概略を示す説明図である。
この光干渉式ガス濃度測定装置は、互いに同一の長さを有する、被測定ガスが導入される2つの被測定ガス用セル部12A,12Bおよび検知対象ガスを含まない標準ガスが導入される標準ガス用セル部11が、標準ガス用セル部11が中央に位置するよう並設されてなるチャンバ10と、互いに異なる中心波長の光を放射する光源21A,21Bと、チャンバ10の一端側(図1において左側)外方位置に配設された平行平面鏡23と、チャンバ10の他端側(図1において右側)外方に配設された三角柱状のプリズム28と、被測定ガスと標準ガスとの光の屈折率の相違を干渉縞の変位量として検出する干渉縞検出手段30とを備えている。ここに、標準ガスとしては、例えば空気(O2 欠乏したものを含む)などを例示することができる。
【0011】
この光干渉式ガス濃度測定装置においては、光源21A,21Bからハーフミラー22を介して照射された光が、ビームスプリッタをなす平行平面鏡23によって分割されて平行光として出射され、標準ガス用セル部11および一方の被測定ガス用セル部12Aを通過した後、さらに、プリズム28の一面(光入出射面)28Aから入射し、各々、個別にプリズム28に反射されることによって当該光入出射面28Aから出射され、再び標準ガス用セル部11および他方の被測定ガス用セル部12Bを通過した後、平行平面鏡23上において重ね合わせられるよう、各構成部材の配置位置および配置状態(取り付け角度)が調整されている。
【0012】
一方の光源21Aおよび他方の光源21Bは、それぞれ、例えば中心波長が660nm、中心波長が612nmである発光ダイオードよりなり、交互に点灯される。
【0013】
干渉縞検出手段30は、平行平面鏡23上の点Pにおいて重ね合わせられた合成光(干渉光)を、平面鏡31、干渉縞調整用レンズ、例えば凸レンズ32および凹レンズ33を介して、受光する、例えばCCDよりなるラインイメージセンサ35により構成されている。
【0014】
而して、上記光干渉式ガス濃度測定装置においては、平行平面鏡23における、光源21A,21Bからの光およびチャンバ10を通過した光が入射される表面に、反射膜25が形成されており、これにより、平行平面鏡23の一面(光入出射面)23Aの、光源21A,21Bから放射される波長範囲の光に対する反射率が10〜60%とされている。 平行平面鏡23における光入射面23Aの反射率は、例えば20〜50%であることがより好ましく、これにより、十分な明るさを有する(濃度が全体的に高い)干渉縞を確実に形成することができる。
【0015】
平行平面鏡23における、反射膜25が形成される表面に対向する他面23Bには、例えば鏡面処理が施されている。
【0016】
このような構成を有する光干渉式ガス濃度測定装置は、測定動作中において、チャンバ10に対して、被測定ガス用セル部12A,12Bの各々に被測定ガスが導入されると共に、標準ガス用セル部11に標準ガスが充填された状態で、光源21Aおよび21Bのいずれか一方から光がハーフミラー22を介して照射されると、光源21A,21Bからの光がその一部が平行平面鏡23に光入射面23Aから入射されると共に残りの実質的に全部が平行平面鏡23における反射膜25によって反射される。
そして、平行平面鏡23によって分割された一方の光(反射光)L1がチャンバ10の標準ガス用セル部11を通過してプリズム28に光入出射面28Aから入射し、このプリズム28によって反射されて当該光入出射面28Aから出射された後、再度、チャンバ10の標準ガス用セル部11を通過して平行平面鏡23に入射されると共に、他方の光(透過光)L2がチャンバ10の一方の被測定ガス用セル部12Aを通過してプリズム28に光入出射面28Aから入射され、このプリズム28によって反射されて当該光入出射面28Aから出射された後、チャンバ10の他方の被測定ガス用セル部12Bを通過して平行平面鏡23に入射される。
そして、標準ガス用セル部11を2度通過した光と、一方の被測定ガス用セル部12Aおよび他方の被測定ガス用セル部12Bを通過した光ビームとが、平行平面鏡23上の点Pにおいて重ね合わせられ、この合成光が平行平面鏡23から出射され、平面鏡31、凸レンズ32および凹レンズ33を介して、ラインイメージセンサ35によって受光されて干渉縞が検出されることとなる。
このようにして、上記光干渉式ガス濃度測定装置においては、ラインイメージセンサ35によって検出される干渉縞が、被測定ガスと標準ガスとの光の屈折率差に比例して移動することを利用し、検出された干渉縞に基づいて縞数カウンタおよびフーリエ解析技術による位相解析、さらには合成波長干渉法を併用することによって干渉縞の変位量が算出され、これにより得られた干渉縞の移動量に基づいて被測定ガスに含まれる検知対象ガスの濃度が検出される。
【0017】
而して、上記構成の光干渉式ガス濃度測定装置によれば、平行平面鏡23の、光源21A,21Bからの光およびチャンバ10を通過した光が入射される表面に、反射膜25が形成されて所定の波長範囲の光に対する反射率が10〜60%である構成とされていることにより、平行平面鏡23における反射膜25を透過して当該平行平面鏡23の他面23Bによって反射された後、光入射出面23Aから出射されて標準ガス用セル部11内に入射される透過光L1と、平行平面鏡23における反射膜25の表面によって反射されて一方の被測定ガス用セル部12A内に入射される反射光L2との光量の適正なバランスを維持することができると共に、ラインイメージセンサ35に到達する光量(全光量)を多くすることができるので、形成される干渉縞は、適正なコントラストを維持しながら、明るい(濃度が全体的に高い)ものとなる。
すなわち、図1に示す構成に従って試験用の光干渉式ガス濃度測定装置を作製し、光源21A,21Bの点灯条件、試験用被測定ガスの種類およびその他の条件は同一とし、平行平面鏡23における光入射出面23Aの反射率を適宜に変更して、平行平面鏡23から出射される合成光(ラインイメージセンサ35に到達する光)の光量を測定したところ、図2に示すように、反射膜25が形成された平行平面鏡23の光入射出面23Aの反射率が10〜60%であることにより、平行平面鏡23から出射される合成光の光量の、光源21A,21Bから照射される光の光量に対する光量比が15%以上となり、反射膜を有さない場合(光量比が約7%程度(図2において破線で示すグラフ)に比して2〜4倍程度光量が多くなることが確認された。
【0018】
以上のように、上記構成の光干渉式ガス濃度測定装置によれば、形成される干渉縞は適正なコントラストを維持しながら、十分な明るさを有する(濃度が全体的に高い)ものとなるので、例えば光源21A,21Bとして光量の小さい小型のものを用いること、あるいは、ラインイメージセンサ35による受光時間(例えば光源21A,21Bの点灯時間)を短縮することにより装置全体の省電力化を図った場合であっても、所期のガス濃度測定を確実に行うことができる。
また、ラインイメージセンサ35による受光時間が短縮されることにより、ガス濃度変動の追従性を向上させることができて高い測定精度を得ることができる。
さらにまた、光源21A,21Bとして消費電力の小さい小型のものが用いられることにより、干渉縞調整用レンズ具体的には凸レンズ32および凹レンズ33としてレンズ径の小さいものを用いることができるようになってチャンバ10の小型化、ひいては装置全体の小型化を図ることができると共に、いわゆる「防爆の基準」を満足するものとして構成することが容易となり、携帯型のものとしても有用なものとなる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、平行平面鏡における反射膜の具体的な構成は、上記反射特性を得ることができるよう構成されていれば特に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
また、チャンバの構造、干渉縞検出手段の構成等は、上記実施例のものに限定されるものではなく、適宜に変更することができる。
さらにまた、光源として白熱電球などを用いることができ、この場合には、干渉縞検出手段として目盛り付ガラス板、CCDカメラなどを用いて干渉縞の変位量が直接的に測定される。
【符号の説明】
【0020】
10 チャンバ
11 標準ガス用セル部
12A,12B 被測定ガス用セル部
21A,21B 光源
22 ハーフミラー
23 平行平面鏡
23A 平行平面鏡の一面(光入出射面)
23B 平行平面鏡の他面
25 反射膜
28 プリズム
28A プリズムの一面(光入出射面)
30 干渉縞検出手段
31 平面鏡
32 凸レンズ
33 凹レンズ
35 ラインイメージセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同一の長さを有する標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を有するチャンバと、光源からの光を分割して標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部の各々に入射させると共に、標準ガス用セル部および被測定ガス用セル部を通過した光を合成して干渉縞を生じさせる平行平面鏡と、当該平行平面鏡によって合成された光を受光して被測定ガスと標準ガスとの光の屈折率の相違を干渉縞の変位量として検出する干渉縞検出手段とを具えた光干渉式ガス濃度測定装置であって、
前記平行平面鏡における、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面の反射率が10〜60%であることを特徴とする光干渉式ガス濃度測定装置。
【請求項2】
平行平面鏡は、光源からの光およびチャンバを通過した光が入射される表面に、反射膜が形成されてなることを特徴とする請求項1に記載の光干渉式ガス濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−197191(P2010−197191A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41975(P2009−41975)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】