説明

光干渉断層像形成装置

【課題】波長掃引におけるデータの取り込みタイミングを当該波長掃引において生成されたトリガ信号により決定し、安定したデータの取り込みを可能にする。
【解決手段】測定光と参照光との干渉光に基づいて断層像を形成する光干渉断層像形成装置は、サンプリングタイミングで干渉光の光強度を電気的なデジタル信号に変換する変換器と、光源の1回の波長掃引における、予め設定した所定波長の光を検出することでトリガ信号を生成する光検出器とを、サンプリングタイミングごとに変換器から出力されるデジタル信号を所定の遅延時間だけ遅延させて出力する遅延部とを有する。信号処理部は、遅延部から出力されるデジタル信号のうちの、光検出器でトリガ信号が生成された時点から所定期間のデジタル信号を用いて1ライン分のラインデータを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光干渉断層像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、動脈硬化の診断や、バルーンカテーテル、ステント等の高機能カテーテルによる血管内治療時の術前診断、あるいは、術後の結果確認のために光干渉断層診断装置(OCT:Optical Coherent Tomography)が使用されている。光干渉断層診断装置は、先端に光学レンズおよび、光学ミラーを取付けた光ファイバを内蔵したカテーテルを血管内に挿入し、光学ミラーを回転させながら血管内に光を照射し、生体組織からの反射光を受光することでラジアル走査を行う。そして、光干渉断層診断装置では、このラジアル走査により得られた反射光をもとに、血管の断面画像を描出する。さらに、光干渉断層診断装置の改良型として、波長掃引を利用した光干渉断層診断装置も開発されている。
【0003】
光干渉断層診断装置は、装置内部で、光源から出力される光を測定光と参照光に分割し、測定光をカテーテル内部の光ファイバを介して先端から出射する。そして、生体組織により反射された反射光を同じ光ファイバを介して装置内部へ取り込み、反射光と参照光とを干渉させることで、参照光と同じ光路長からの測定光の強度、すなわち、反射光の強度を得ることができる。
【0004】
上述のような光干渉断層診断装置では、装置内部で参照光をミラーで反射させて反射光を得るとともに、ミラーの位置を前後に移動させることで、参照光の光路長を走査する。そして、この光路長の走査に同期させて参照光と反射光との干渉光を得ることで、深度方向の反射強度の分布を得ることができる。光干渉断層診断装置は、光ファイバを軸方向に回転させることによりラジアル走査を行い、血管断面画像を描出する。
【0005】
一方、参照光の光路長を変化させる代わりに波長掃引を利用することで断面像を形成する光干渉断層診断装置も提案されている。波長掃引を利用した光干渉断層診断装置では、出射する光の波長を繰り返し掃引することで、参照光の光路長を走査することなく、得られた干渉光の周波数分布から、測定光と参照光の光路差が同じ点を基準とした深度方向の反射強度分布を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−128074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように光干渉断層診断装置は、生体組織からの後方散乱光を受光することで得られた血管の断面画像を描出するものである。波長掃引を利用した光干渉断層診断装置は、一般に用いられている光干渉断層診断装置に比べて、感度が高い、撮像速度が速い、等の利点がある。波長掃引光源を作り出す方法としては様々な形態が提案されており、その代表的なものとしてMEMSミラーを利用した波長掃引光源、ポリゴンスキャナミラー(以下、ポリゴンミラー)を使用した波長掃引光源がある。
【0008】
このような波長掃引光源を使用した光干渉断層診断装置では、波長掃引の開始とAD変換によるデータ取得のタイミングを合わせることが重要である。そのため、光源出力に閾値を設定してトリガ信号を生成する方法や、FBG(Fiber Bragg Grating)ファイバを利用して特定波長を反射させ、その反射ピークに閾値を設定してトリガ信号を生成する方法などが知られている。FBGファイバを使用するトリガ信号生成方法では、波長掃引ラインごとの出力の増減がトリガのジッタ(jitter)に影響しないのでトリガ信号の安定度が高い。
【0009】
しかしながら、トリガ信号の生成が、光源からの光が波長掃引の途中の所定波長に達したことを検出することにより行われるため、生成されたトリガ信号は次回の波長掃引におけるデータ取得タイミングに利用されることになる。この様子を図8を用いて説明する。
【0010】
図8は一般的なトリガ信号の発生とデータ取り込みのタイミングを説明する図である。(a)は、光源からの出力光の、波長掃引による波長の変化を示している。(b)は、波長掃引による干渉光の強度の変化を示している。また(c)は、トリガ信号801、遅延トリガ信号802、データ取り込みタイミング803を示している。波長掃引により光源からの出力光が所定の波長λaとなったことを検出することで、トリガ信号801が生成される。そして、このトリガ信号801を遅延時間ΔTだけ遅延させた遅延トリガ信号0802の発生時点から干渉光の光強度データの取り込みを開始する(803)。このように、ある波長掃引において発生したトリガ信号は次回の波長掃引におけるデータの取り込み開始タイミングの決定に用いられる。そのため、波長掃引と波長掃引の間のジッタの安定度が重要となる。
【0011】
しかしながら、波長掃引光源に用いられるポリゴンミラーなどの製造における精度の限界から、ジッタを安定させることには限界があり、波長掃引と波長掃引の間の時間間隔には多少の揺らぎが存在する。そのため、図8に示すように、ある波長掃引から検出されたトリガ信号を次の波長掃引におけるデータ取り込みタイミングの特定に利用すると、各波長掃引毎に取り込まれるデータと実際のレーザ波長の掃引区間に対するデータとの間にずれが生じてしまい、分解能が低下してしまう。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、波長掃引におけるデータの取り込みタイミングを当該波長掃引において生成されたトリガ信号により決定し、安定したデータの取り込みを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、例えば、本発明の光干渉断層像形成装置は以下の構成を備える。すなわち、
波長掃引による光源から出力された光を光分割手段で測定光と参照光に分割し、生体管腔内に挿入された光プローブ部を介して照射方向を回転させながら生体組織に前記測定光を出射し、得られた反射光と、前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて該生体組織の断面画像を生成する光干渉断層像形成装置であって、
サンプリングタイミングで前記干渉光の光強度を電気的なデジタル信号に変換する変換手段と、
前記光源の1回の波長掃引による、予め設定した所定波長の光を検出することでトリガ信号を生成する検出手段と、
前記サンプリングタイミングごとに前記変換手段から出力されるデジタル信号を所定の遅延時間だけ遅延させて出力する遅延手段と、
前記遅延手段から出力されるデジタル信号のうちの、前記検出手段で前記トリガ信号が生成された時点から所定期間のデジタル信号を用いて1ライン分のラインデータを生成する生成手段と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、波長掃引におけるデータの取り込みタイミングを当該波長掃引において生成されたトリガ信号により決定する。そのため、波長掃引時のジッタの安定性等の影響を受けることなく、安定したデータの取り込みが可能になり、より高い精度(分解能)の断層像(断面画像)を構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態にかかる画像診断装置の外観構成を示す図である。
【図2】画像診断装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】信号処理部の機能構成を示すブロック図である。
【図4】血管内における光プローブ部による回転走査と軸方向移動、ならびに、測定光の照射と反射光の取り込みを説明する図である。
【図5】血管内におけるイメージングコアの動作を説明するための模式図である。
【図6】実施形態によるデータの取り込みタイミングを説明する図である。
【図7】実施形態における遅延部の構成例を示すブロック図である。
【図8】従来のデータ取り込みタイミングを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0017】
図1は本発明を具備する波長掃引型光干渉断層像形成装置(OCT装置)(以下、画像診断装置という)のシステム構成及び外観構成を示す図である。図1に示すように、画像診断装置100は、光プローブ部101と、スキャナ/プルバック部102と、操作制御装置103とを備える。スキャナ/プルバック部102と操作制御装置103とは、信号線/光ファイバ104により接続されている。光プローブ部101は、生体組織(例えば血管等)の管腔内に直接に挿入され、イメージングコア(後述)を用いて生体組織の状態を測定する。スキャナ/プルバック部102は、光プローブ部101が着脱可能に構成されており、内蔵されたモータが駆動することで光プローブ部101内のイメージングコアのラジアル動作を規定する。
【0018】
操作制御装置103は、生体管腔内の光干渉断層像形成を行うにあたり、各種設定値を入力するための機能や、測定により得られたデータを処理し、断面画像として表示するための機能を備える。操作制御装置103において、111は本体制御部であり、測定により得られたデータを処理したり、処理結果を出力したりする。111−1はプリンタ/DVDレコーダであり、本体制御部111における処理結果を印刷したり、データとして記憶したりする。112は操作パネルであり、ユーザは該操作パネル112を介して、各種設定値及び指示の入力を行う。113は表示装置としてのLCDモニタであり、本体制御部111における処理結果を表示する。
【0019】
図2は、図1に示す画像診断装置100の機能構成図である。図示において、208は波長掃引光源であり、Swept Laserが用いられる。波長掃引光源208は、SOA216(semiconductor optical amplifier)とリング状に結合された光ファイバ217を有する光源部(208a)と、ポリゴンスキャニングフィルタ(208b)よりなる、Extended-cavity Laserの一種である。SOA216から出力された光が、光ファイバ217を進み、ポリゴンスキャニングフィルタ208bに入り、ここで波長選択された光が、SOA216で増幅され、最終的にカップラ214から出力される。ポリゴンスキャニングフィルタ208bは、光を分光する回折格子212とポリゴンミラー209との組み合わせで波長を選択する。回折格子212により分光された光を2枚のレンズ(210、211)によりポリゴンミラー209の表面に集光させる。これによりポリゴンミラー209と直交する波長の光のみ同一の光路を戻り、ポリゴンスキャニングフィルタ208bから出力されるため、ミラーを回転させることで、波長の時間掃引を行う。ポリゴンミラー209は、例えば、72面体のミラーが使用され、回転数が50000rpm程度である。ポリゴンミラー209と回折格子212とを組み合わせたユニークな波長掃引方式により、高速、高出力の波長掃引が可能である。
【0020】
カップラ214から出力された波長掃引光源208からの光は、第1のシングルモードファイバ230の一端に入射される。第1のシングルモードファイバ230は、光カップラ部240で2つに分岐され、一方はFBG(Fiber Bragg Grating)241に導かれる。実施形態におけるこのFBG241は、波長掃引光源208からの出力光のλsからλeまでの波長(掃引波長)のうちの特定の波長λaを持つ光のみを反射するようになっているものとする。この反射光は光カップラ部240を介して光検出器(例えばフォトダイオード)242に供給され、ここで、干渉光のサンプリング開始のトリガ信号が生成され、後述の信号処理部223に供給される。以上のように、FBG241と光検出器242は、波長掃引光源208の1回の波長掃引における、予め設定した所定波長の光を検出することでトリガ信号を生成する。
【0021】
また、波長掃引光源208から出力され、光カップラ部240で分岐した光は、第2のシングルモードファイバ231と光学的に結合されている光カップラ部226に導かれ、ここで、2つに分岐されて伝送される。すなわち、光カップラ部226は、波長掃引光源208から出力された光を測定光と参照光に分割する光分割手段として機能する。
【0022】
第1のシングルモードファイバ230の光カップラ部226より先端側には、スキャナ/プルバック部102が設けられている。スキャナ/プルバック部102の回転駆動装置204内には、非回転部(固定部)と回転部(回転駆動部)との間を結合し、光を伝送する光ロータリジョイント(光カップリング部)203が設けられている。更に、光ロータリジョイント203内の第4のシングルモードファイバ235の先端側は、光プローブ部101の第5のシングルモードファイバ236と、アダプタ202を介して着脱自在に接続されている。これにより光の送受信を繰り返すイメージングコア201内に挿通され回転駆動可能な第5のシングルモードファイバ236に波長掃引光源208からの光が伝送される。
【0023】
第5のシングルモードファイバ236に伝送された光は、イメージングコア201の先端側から血管壁の生体組織に対してラジアル動作しながら照射される。そして、生体組織の表面あるいは内部で散乱した反射光の一部はイメージングコア201により取り込まれ、逆の光路を経て第1のシングルモードファイバ230側に戻り、光カップラ部226によりその一部が第2のシングルモードファイバ237側に移る。第2のシングルモードファイバ237において反射光は後述の参照光と混合され、干渉光として、光検出器219(例えばフォトダイオード)にて受光される。
【0024】
光ロータリジョイント203の回転部側は回転駆動装置204のラジアル走査モータ205により回転駆動される。また、ラジアル走査モータ205の回転角度は、エンコーダ部206により検出される。更に、スキャナ/プルバック部102は、直線駆動装置207を備え、信号処理部223からの指示に基づいて、光プローブ部101の挿入方向(軸方向)の動作を規定している。軸方向移動は、信号処理部223からの制御信号に基づいて、直線駆動装置207内の直線駆動モータが動作することにより実現される。
【0025】
また、第2のシングルモードファイバ231の光カップラ部226より先端側には、基準光の光路長を微調整する光路長の可変機構225が設けてある。この光路長の可変機構225は光プローブ部を交換して使用した場合の個々の光プローブ部の長さのばらつきを吸収できるように、その長さのバラツキに相当する光路長を変化させる光路長変化手段を備えている。第2のシングルモードファイバ231およびコリメートレンズ234は、その光軸方向に矢印233で示すように移動自在な1軸ステージ232上に設けられ、光路長調整手段を形成している。
【0026】
具体的には、1軸ステージ232は光プローブ部101を交換した場合に、光プローブ部の光路長のバラツキを吸収できるだけの光路長の可変範囲を有する光路長変化手段を形成する。さらに、1軸ステージ232はオフセットを調整する調整手段としての機能も備えている。すなわち、光プローブ部の先端が生体組織の表面に密着していない場合でも、1軸ステージにより光路長を微小変化させることにより、干渉光を測定することが可能となる。
【0027】
ミラー227,229及びレンズ228を介して、反射された光は参照光として第2のシングルモードファイバ231に入力される。光路長の可変機構225で光路長が微調整された光(参照光)は、第2のシングルモードファイバ231の途中に設けた光カップラ部226で第1のシングルモードファイバ230側からの光(反射光)と混合されて、干渉光となり、光検出器219にて受光される。光検出器219にて受光された光は光電変換され、得られた電気的な干渉光信号は増幅器220によって増幅される。増幅器220の出力は復調器221に供給される。復調器221では干渉した光の信号部分のみを抽出する復調処理を行い、その出力はA/D変換器222に入力される。
【0028】
A/D変換器222では、干渉光の光強度を表す干渉光信号を180MHzでサンプリングしてデジタル信号に変換し、干渉光データとして出力する。なお、サンプリング周波数を180MHzとしたのは、波長掃引の繰り返し周波数を80kHzにした場合に、波長掃引の周期(12.5μsec)の90%程度を2048点のデジタルデータとして抽出することを前提としたものであり、特にこれに限定されるものではない。A/D変換器222にて生成された干渉光データ(デジタル信号)は、遅延部250に入力される。遅延部250は、A/D変換器220のサンプリングタイミングごとにA/D変換器220から出力される干渉光データを入力し、所定の遅延時間(本実施形態ではサンプリング周期の整数倍となる)だけ遅延させて信号処理部223へ出力する。遅延部250の構成及び動作の詳細については後述する。
【0029】
遅延部250で遅延された干渉光データは、信号処理部223に入力される。この信号処理部223では干渉光データをFFT(高速フーリエ変換)により周波数分解して深さ方向のデータを生成し、これを座標変換することにより、血管の各位置での断面画像を形成し、所定のフレームレートでLCDモニタ113に出力する。
【0030】
なお、信号処理部223は光路長調整手段制御部218と接続されている。信号処理部223は光路長調整手段制御部218を介して1軸ステージ232の位置の制御を行う。また、信号処理部223はモータ制御回路224と接続され、断面画像を形成する際のビデオ同期信号に同期して内部のメモリに該断面画像を格納する。また、このモータ制御回路224のビデオ同期信号は、回転駆動装置204にも送られ、回転駆動装置204はビデオ同期信号に同期した駆動信号を出力する。更に、信号処理部223は、波長掃引における所定波長検出を示すトリガ信号を光検出器242から受信すると、その時点から1ライン分に相当する干渉光データを取り込み、ラインデータを生成する。
【0031】
図4(a)は光プローブ部101のイメージングコア201が血管内腔(生体管腔)に挿入され、ラジアル走査が行われる様子を説明する図である。光学ミラー401、光学レンズ402を先端に有する光ファイバ236により構成されるイメージングコア201を内蔵したカテーテルシース403は、血管内腔に挿入される。回転駆動装置204は、カテーテルシース403内でイメージングコア201を矢印405の方向に回転させ、直線駆動装置207は矢印406の方向に移動させる。このとき、図4(b)に示すように、波長掃引光源208からの測定光が光ファイバ236を経て、光学ミラー401により血管壁へ照射される。照射された光の反射光は、光学ミラー401により光ファイバ236を経て装置へ戻される。
【0032】
図5は血管の断層像撮影時の光プローブ部101の動作を説明するための模式図である。図5(a)、(b)はそれぞれ光プローブ部101が挿入された状態の血管の斜視図及び断面図である。図5(a)において、501は光プローブ部101が挿入された血管断面を示している。上述のように、光プローブ部101のイメージングコア201はその先端に光学レンズ402、光学ミラー401が取り付けられており、ラジアル走査モータ205により図5(b)の405で示される方向に回転する。
【0033】
光学レンズ402からは、各回転角度にて測定光の送信/受信が行われる。ライン1、2、…、512は各回転角度における測定光の照射方向を示している。本実施形態では、光学ミラー401及び光学レンズ402を含むイメージングコア201が所定の血管断面501の位置で360度回動する間に、512ラインのラインデータが生成されるようにしている。なお、360度回動する間における測定光の送信/受信回数は特にこれに限られず、任意に設定可能であるものとする。このように、イメージングコア201を回転させながら信号の送信/受信を繰り返すスキャン(走査)を、一般に「ラジアルスキャン(ラジアル走査、回転走査)」という。また、このようなイメージングコア201による測定光の送信/反射光の受信は、イメージングコア201が血管内を矢印406(図4(a)参照)の方向に進みながら行われる。
【0034】
次に、実施形態における干渉光データの取り込みのシーケンスを図6を参照して詳しく説明する。図6の(a)は、波長掃引光源208から第1のシングルモードファイバ230へ出力される光(レーザ光)の波長の時間変化を示している。また(b)は、干渉光(光検出器219に入力される光)の、波長掃引による強度の変化を示している。(c)は、光検出器242により生成されるトリガ信号601、A/D変換器222からの干渉光データ(デジタル信号)出力602、遅延部250からの干渉光データ出力603の各々のタイミングを示している。
【0035】
図6の(a)において縦軸は波長、横軸は時間である。波長掃引光源208から出力される光は波長掃引によりλsからλeまで変化し、出力された光の波長が所定波長λaに到達すると、FBG241と光検出器242によりトリガ信号601が生成、出力される。また、A/D変換器222からは、光検出器219で検出された干渉光の強度に応じた干渉光データ602が、ほぼリアルタイムで出力される。そのため、ある波長掃引においてトリガ信号601の発生を検出した時点では、A/D変換器222からすでに出力済みとなった干渉光データが少なからず存在することになる。
【0036】
上述したように、遅延部250からはA/D変換部222からの干渉光データ出力602を所定時間遅延させた干渉光データ出力603が得られる。図6の(c)では、この遅延時間をΔTDとしている。遅延部250の遅延時間ΔTDを適切に設定することで、トリガ信号601の発生タイミングと、波長掃引のデータ取り込み開始タイミングの干渉光データが信号処理部223に入力されるタイミングとを合わせることができる。このような遅延時間の調整により、信号処理部223は、単に、光検出器242からのトリガ信号を受信した時点から2048点の干渉光データ604を取り込むことで、ラインデータの生成に必要な干渉光データを得ることができる。また、この場合、波長掃引光源208の波長掃引において得られたトリガ信号をもとに、その波長掃引における干渉光データの取り込み開始タイミングが決定されることになるので、ポリゴンミラー209に起因したジッタ等の影響を低減することができる。
【0037】
次に、A/D変換器222から出力された干渉光データを所定時間だけ遅延させる遅延部250の構成及び動作について、図7を参照して説明する。
【0038】
図7は遅延部250の構成例を示すブロック図である。遅延部250はA/D変換器222と同期するため、A/D変換器222のサンプリングクロックと同じ180MHzのクロック701により動作する。カウンタ702は、ノンストップカウンタで構成され、クロック701をカウントしてバッファメモリ706にアクセスするためのアドレスを生成、出力する。バッファメモリ706は、異なるアドレスに対する書き込みと読み出しとが同時に可能なデュアルポートメモリである。なお、本実施形態では、1ラインのデータに2048点の干渉光データが用いられるので、バッファメモリ706は2048(=211)個の干渉光データを格納する記憶容量を有すればよい。したがって、バッファメモリ706にアクセスするためのアドレスは、11ビットを有していれば十分である。クロック701によりカウンタ702はカウント値を1つずつインクリメントし、0〜2047のカウントを繰り返し、カウント値が循環するようにしている。
【0039】
加算器703は、カウンタ702のカウント値と、操作パネル112により設定された遅延時間(図6のΔTD)に相当するアドレス量の値721とを加算し、加算値を出力する。本実施形態の場合、180MHzでアドレスがインクリメントされるので、1アドレスが[1/180]×10−6秒の遅延量に相当する。従って、例えば、アドレス量の値721として“108”を設定すれば、遅延部250は0.6×10−6秒だけ遅延させた干渉光データを出力することになる。なお、加算器703の加算値も11ビットで制限されるため、加算値が2047を超えた場合、桁上げ分が無視される。例えば、加算値が“2050”であれば、“2”が出力されることになり、0〜2047の加算結果が循環することになる。
【0040】
以上のカウンタ702及び加算器703の出力は、バッファメモリ706の読み出しアドレス720と書き込みアドレス722として用いられる。即ち、カウンタ702及び加算器703はバッファメモリ706のアクセスアドレスを生成するアドレス生成部として機能する。カウンタ702が出力したカウント値は読み出しアドレス720としてフリップフロップ705にラッチされ、加算器703が出力した加算値は書き込みアドレス722としてフリップフロップ704にラッチされる。そして、バッファメモリ706の、フリップフロップ704にラッチされた書き込みアドレス722で指定されたアドレスには、A/D変換器222からの干渉光データ723がそのまま書き込まれる。また、バッファメモリ706の、フリップフロップ705にラッチされた読み出しアドレス720で指定されたアドレスから干渉光データが読み出され、遅延された干渉光データ724として出力される。
【0041】
以上のように、遅延部250では、クロック701をカウンタ702でカウントすることにより、A/D変換器222のサンプリングタイミングごとに更新される読み出しアドレスが生成される。また、加算器703により読み出しアドレスより所定の遅延時間に相当するアドレス量だけ異なる書き込みアドレスが生成される。そして、バッファメモリ706においては、書き込みアドレス722が示すアドレスへの干渉光データの書き込みと、読み出しアドレス720が示すアドレスからの干渉光データの読み出しとが実質的に同時に行われる。こうして、遅延部250からは、A/D変換器222が出力する干渉光データが、所定の遅延時間だけ遅延して出力されることになる。
【0042】
なお、加算器703に代えて減算器を用い、カウンタ702で生成したアドレス値を読み出しアドレスとして用いるようにしてもよいことは明らかである。また、遅延部250において、インクリメントタイプのカウンタ702を用いたが、デクリメントタイプのカウンタを用いた構成としてもよい。更に、バッファメモリ706をデュアルポートメモリとして、書き込みと読み出しを同時に行うようにしたが、これに限られるものではない。バッファメモリ706へのデジタル信号の書き込みと、バッファメモリ706からのデジタル信号の読み出しは、サンプリングタイミングの一周期内(本実施形態では180MHz)で実行されればよい。
【0043】
以上のような遅延部250の構成において、遅延時間データが、1回の波長掃引のうちの、ラインデータ生成に利用する波長の光の発生開始から前記所定の波長の光を発生するまでの時間を遅延時間ΔTDとして設定される。このようにすれば、信号処理部223は、トリガ信号の検出と同時にデータの取り込みを開始するだけで、ラインデータの生成に適した干渉光データを得ることができる。なお、操作パネル112からのユーザ操作により「遅延時間」を設定するものとしたが、「アドレス量」を設定するようにしてもよい。或いは、工場出荷時にのみ設定可能な構成、サービスマンにのみ設定が可能な構成としてもよい。
【0044】
以上の通りであるので、信号処理部223は、「光検出器242からトリガ信号を入力したときに直ちに遅延部250から出力される干渉光データの取り込みを開始し、波長掃引の1周期に対応する所定期間(図7の期間T1)だけ実行する」ことを繰り返せば良いこととなる。この信号処理部223の具体的な処理を図3を用いて説明すると次の通りである。
【0045】
先に説明したように、光プローブ部101からの測定光と、光路長の可変機構225からの参照光は光カップラ部226で合わせられて、干渉光となる。この過程で、光検出器242は、予め設定した波長の光を検出した信号、すなわちトリガ信号を信号処理部223に供給する。信号処理部223のラインメモリ部301は、光検出器242からのトリガ信号を受信すると、遅延部250により所定時間遅延された干渉光データから1ライン分(2048点)のデータを取得し保持する。
【0046】
波長掃引を利用した光干渉断層像形成装置では、ここで得られた干渉光データをフーリエ変換することで、深度方向の反射強度分布を得ることができる。すなわち、光路長の走査をすることなく、深度方向のデータを取得することができるため、高速のデータ取得が可能になる。図3のラインメモリ部301は、モータ制御回路224から出力されるモータのエンコーダ信号をもとに、モータ1回転あたりのライン数が512本となるように信号を選択し、グルーピングする。すなわち、1ラインごとの干渉光データが、モータ1回転あたり512個ずつラインデータ生成部302に出力される。
【0047】
ラインデータ生成部302は、FFT(高速フーリエ変換処理)を行うことで、ラインデータを生成するととともに、ライン加算平均処理、フィルター処理、対数変換等を行い、得られたラインデータを後段の後処理部に出力する。
【0048】
後処理部303では、ラインデータ生成部302より受け取ったラインデータに対してコントラスト調整、輝度調整、ガンマ補正、フレーム相関、シャープネス処理等を施し、処理結果を画像構築部304に出力する。画像構築部304は、極座標のラインデータ列をビデオ信号に変換し、LCDモニタ113に血管断面画像として表示する。なお、ここでは一例として、512ラインから画像を構築する例を示しているが、このライン数に限定されるものではない。制御部305は上述した各部の一連の動作を制御することになる。血管断層像を得るための演算内容、並びに、その表示処理に関する部分は、本願発明には直接には関係しないので、これ以上の説明は省略する。
【0049】
以上説明したように本実施形態によれば、波長掃引を利用した光干渉断層像形成装置において、着目ライン分の波長掃引において取得されたトリガ信号を次ラインの干渉光データの取り込みに利用するのではなく、着目ラインに対する波長掃引における干渉光データの取り込みに利用できる。このため、各ラインにおけるサンプリングのタイミングのバラツキが発生しにくく、これまでよりも高い精度の断層像を構築することができる。
【符号の説明】
【0050】
100:画像診断装置、 101:光プローブ部、 102:スキャナ/プルバック部、 208:波長掃引光源、 219:光検出器、 221:復調器、 222:A/D変換器、 223:信号処理部、 240:光カップラ部、 250:遅延部、 702:カウンタ、 703:加算器、 704〜705:フリップフロップ、 706:バッファメモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長掃引による光源から出力された光を光分割手段で測定光と参照光に分割し、生体管腔内に挿入された光プローブ部を介して照射方向を回転させながら生体組織に前記測定光を出射し、得られた反射光と、前記参照光とから得られる干渉光の光強度に基づいて該生体組織の断面画像を生成する光干渉断層像形成装置であって、
サンプリングタイミングで前記干渉光の光強度を電気的なデジタル信号に変換する変換手段と、
前記光源の1回の波長掃引による、予め設定した所定波長の光を検出することでトリガ信号を生成する検出手段と、
前記サンプリングタイミングごとに前記変換手段から出力されるデジタル信号を所定の遅延時間だけ遅延させて出力する遅延手段と、
前記検出手段で前記トリガ信号が生成された時点から所定期間にわたる、前記遅延手段から出力されるデジタル信号を用いて、1ライン分のラインデータを生成する生成手段と、を備えることを特徴とする光干渉断層像形成装置。
【請求項2】
前記遅延手段は、
バッファメモリと、
前記サンプリングタイミングごとに更新される読み出しアドレスと、前記読み出しアドレスより前記所定の遅延時間に相当するアドレス量だけ異なる書き込みアドレスとを生成するアドレス生成手段と、
前記バッファメモリの前記書き込みアドレスに前記変換手段からのデジタル信号を書き込む書き込み手段と、
前記バッファメモリの前記読み出しアドレスからデジタル信号を読み出す読み出し手段と、を備えることを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項3】
前記書き込み手段による前記バッファメモリへのデジタル信号の書き込みと、前記読み出し手段による前記バッファメモリからのデジタル信号の読み出しは、前記サンプリングタイミングの一周期内で実行されることを特徴とする請求項2に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項4】
前記バッファメモリは、前記生成手段が1ライン分のラインデータを生成するのに必要なデジタル信号を格納する記憶容量を有し、
前記書き込みアドレスおよび前記読み出しアドレスは循環するように生成されることを特徴とする請求項2または3に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項5】
前記所定の遅延時間は、前記1回の波長掃引において、ラインデータ生成に利用する波長の光の発生開始から前記所定波長の光を検出するまでの時間であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の光干渉断層像形成装置。
【請求項6】
前記遅延時間を、ユーザ操作により設定するための設定手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光干渉断層像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−239514(P2012−239514A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109585(P2011−109585)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】