説明

光情報記録媒体

【課題】半透過情報記録層において記録材料部や金属部の厚みを極端に薄くしなくとも多層ディスクに求められる透過率を実現できるようにする。
【解決手段】半透過情報記録層は、レーザ光の入射側からみて順に、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの記録材料部と、第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの金属部と、第3誘電体部とを有する構造とする。また第3誘電体部も屈折率が2.4以上の材料を用いる。また第3誘電体部は、第1誘電体部が2.4以上の或る屈折率とされた場合において、当該半透過情報記録層の透過率がその最大透過率から透過率低下が1%以内の範囲となる屈折率範囲の屈折率とされるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の照射により記録層の状態を変化させその変化を光学的な応答の変化として読み取ることで情報の記録、消去および読み取りが行なわれる光情報記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】国際公開第03/025922号パンフレット
【0003】
レーザビームの照射による情報の記録、再生及び消去可能な光メモリー媒体の一つとして、結晶−非晶質間、あるいは結晶1−結晶2の2つの結晶相間の転移を利用する、いわゆる相変化型光記録媒体が知られている。この相変化型光記録媒体としては例えばCD−RW(Compact Disc - Rewritable)、DVD−RW(Digital Versatile Disc - Rewritable)、DVD−RAM(Digital Versatile Disc - Random Access Memory)などが商品化されている。
相変化記録方式に用いられる記録層材料としては、GeSbTe、AgInSbTeなどを主成分とする記録材料が広く知られており、書き換え可能な光ディスクとして実用化されている。
【0004】
近年はブルーレイディスク(Blu-ray disc:登録商標)に代表される青色レーザ波長に対応した高密度光ディスクや、それに対応するディスクドライブ装置が製品化されている。そして、ブルーレイディスク等の高密度光ディスクの規格の中では、書き換え型(相変化型)光ディスクのうち、CD−RW、DVD−RW、DVD−RAMでは見られなかった二層ディスクの規格が盛り込まれ実用化されている。
書き換え型において二層ディスクが実現した技術的背景には、青色レーザ光に対して相変化記録材料や情報記録層内で使用されている金属薄膜が赤色レーザ光に比べて光を通しやすいことがある。また光情報記録媒体に対しては大容量記録、長時間録画といった要求が常に存在し、この点でも二層ディスクの開発が促進された。
【0005】
二層ディスクの構造(ディスクの厚み方向の層構造)を図15(a)に模式的に示す。
相変化型の二層ディスクは、ポリカーボネート等のプラスチックからなる支持基板100上に、第一情報記録層101が形成される。そして、その上に記録再生レーザ光の波長に対して透明な中間層102を介して第二情報記録層103が形成され、その上に記録再生波長に対して透明な光透過保護層(カバー層)104が形成された層構造を有する。
記録再生に用いるレーザ光は光透過保護層104側から図示しない対物レンズを通して入射される。対物レンズを通過したレーザ光は第一情報記録層101もしくは第二情報記録層103に集光され、情報の記録再生が行われる。
【0006】
相変化型の二層ディスクにおいて特徴的なのは第二情報記録層103であり、スパッタリング装置を用いて誘電体、金属、相変化記録材料などを、記録再生性能を発揮できるよう積層して形成する。
たとえば典型的な積層構造は、図示するように、レーザ光入射側から見て、第1誘電体部111、記録材料部112、第2誘電体部113、金属部114、第3誘電体部115とされる。即ちディスク製造時には、中間層102上に、順に、第3誘電体部115、金属部114、第2誘電体部113、記録材料部112、第1誘電体部111を積層していくことで、当該層構造が形成される。なお記録材料部112は、相変化記録材料で形成される。金属部114は、レーザ光に対する反射膜としての機能を持つ。
このような第二情報記録層103は、第一情報記録層101の記録再生のために光を透過する性質を有する半透過情報記録層とされ、おおよそ45%から55%の光透過率をもたせて、光ディスク記録再生装置(ドライブ)からみて第一情報記録層と第二情報記録層の記録再生パワーや反射率が一致するように設計されている。
上記特許文献1には、このような高い光透過率を得る方法として、半透過情報記録層にて、半透過情報記録層より支持基板側に配置された中間層材料と半透過情報記録層中の金属反射膜間に配置する誘電体に高屈折率透明誘電体を配置する方法が記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、相変化型二層ディスクは、光入射側の半透過情報記録層(第二情報記録層103)に50%前後という高い光透過率を得る必要があり、このために、記録材料部112や金属部114(金属反射膜)を極端に薄くする手法をとっている。
ところがこのため、光ディスクメディアの保存における信頼性や情報の記録再生信号特性を確保することが困難な状況に陥っている。
記録材料部112や金属部114の厚みを減らすことなく光透過率を高めることが出来れば、その分を記録材料部112や金属部114を厚くする方向に設計でき、信頼性や記録再生信号特性を向上することが可能となる。このため半透過情報記録層において記録材料部112や金属部114を極端に薄くすることなく、光透過率を高める技術の開発が望まれている。
【0008】
また、デジタル放送の本格稼動等の状況から、より大容量の情報記録媒体への需要が高まり、光ディスクも更なる大容量化が求められるようになってきた。
大容量化への1つの方法として、光ディスクの更なる多層化がある。たとえばブルーレイディスクの単層ディスクは標準で25GB(Giga Byte)、二層ディスクで50GBである。3層に出来れば75GBになり4層であれば100GBを実現できる。更に最新の信号処理技術を組み合わせれば3層で100GB、4層で130GBも実現可能になると見込まれている。
3層ディスクを実現する場合、第二情報記録層より光透過保護層側に、記録再生レーザ光に対して透明な中間層を介して第三情報記録層を形成する。即ち図15(b)に模式的に示すように、支持基板200上に、第一情報記録層201、第一中間層202、第二情報記録層203、第二中間層204、第三情報記録層205、光透過保護層206が形成された層構造とする。第二情報記録層203、第三情報記録層205は、半透過情報記録層とされ、図15(a)の第二情報記録層103と同様、レーザ光入射側から見て、第1誘電体部111、記録材料部112、第2誘電体部113、金属部114、第3誘電体部115を有する構造とされることが考えられる。
【0009】
既に実用化されている二層ディスクを発展させて、このように第三情報記録層205を形成し、三層ディスクを実現する場合、第三情報記録層205の透過率は65%〜75%が求められる。これは二層ディスクの各記録層の反射率および第二情報記録層の透過率(約50%)を考慮し、各情報記録層からの反射率や記録パワーのバランスを考慮することで得られる透過率範囲である。
第一、第二情報記録層201,203からの反射率を高めようとすると、第3情報記録層205の透過率は更に高い値を要求される。
【0010】
半透過情報記録層としての情報記録層、つまり第一情報記録層101,201以外の情報記録層において、透過率を下げる主な要因は、金属部114や相変化材料による記録材料部112での光吸収にある。
金属部114や記録材料部112は、記録再生にかかわる熱的な特性や書き換え性能などに深くかかわるので、その材料を大幅に変更することはできない。
このためこれら金属部114や記録材料部112の厚みを減らすことで透過率向上を図ることが考えられるが、上述のとおり大幅な厚み低減は避けたい。
【0011】
上記のように情報記録層は積層膜であり、光学的には多重光干渉膜であるので、積層される各膜の厚みを最適化することでより透過率の高い状態に設計することは可能である。上記特許文献1では、二層ディスクに対する技術ではあるが、第二情報記録層103の透過率を高めるために第二情報記録層103において中間層102に接する第3誘電体部115に出来るだけ屈折率の高い材料を配置することを提案している。その屈折率は2.4以上である。
【0012】
しかしながら、この構成で実現できる光透過率は多く見積もっても65%未満である。三層ディスクに要求される透過率65%〜75%を実現するには更なる要素が必要である。
そこで本発明は、半透過情報記録層において、金属部や記録材料部の厚みを極端に減らすことなく、より高い透過率を実現する技術を提案し、もって3層ディスク、4層ディスクなどを実用化できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光情報記録媒体は、支持基板と、記録再生レーザ光の入射側の層となる光透過保護層の間に、波長が400〜410nmである記録再生レーザ光に対して透明な中間層によって離間された複数の情報記録層を有する。そして上記複数の情報記録層の内で、最も上記支持基板側となる情報記録層以外の1又は複数の情報記録層は、上記レーザ光を透過する性質を有する半透過情報記録層とされる。この1又は複数の半透過情報記録層の全部又は一部は、レーザ光の入射側からみて順に、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの記録材料部と、第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの金属部と、第3誘電体部とを有する構造とされているものとする。
【0014】
また上記第3誘電体部も、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上とされる。
また上記半透過情報記録層の上記第3誘電体部は、上記第1誘電体部が2.4以上の或る屈折率とされた場合において、当該半透過情報記録層の透過率がその最大透過率から透過率低下が1%以内の範囲となる屈折率範囲の屈折率とされることで、当該半透過情報記録層の光透過率が65%以上とされている。
また上記第1誘電体部及び上記第3誘電体部の消衰係数が0.04以下とする。
【0015】
また上記情報記録層として、最も上記支持基板側となる第一情報記録層と、上記半透過情報記録層とされる第二情報記録層及び第三情報記録層が形成された3層記録媒体とした場合、上記第三情報記録層が、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の上記第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの上記記録材料部と、上記第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの上記金属部と、上記第3誘電体部とを有する構造とされる。
また上記情報記録層として、最も上記支持基板側となる第一情報記録層と、上記半透過情報記録層とされる第二情報記録層、第三情報記録層及び第四情報記録層が形成された4層記録媒体とした場合、上記第三情報記録層及び第四情報記録層が、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の上記第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの上記記録材料部と、上記第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの上記金属部と、上記第3誘電体部とを有する構造とされる。
【0016】
また上記第1誘電体部は、屈折率が2.4以上の誘電体材料による一層構造で成る。
或いは、上記第1誘電体部は、屈折率が2.4以上の誘電体材料を含む、複数の誘電体材料が積層された構造で成る。
また上記第1誘電体部、及び/又は上記第3誘電体部は、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23の少なくとも1つを、単一誘電体材料の形でもしくは複合誘電体材料の一部として有する。
また上記第1誘電体部は、複数の透明誘電体材料が積層されて成る場合において、上記記録材料部に接する誘電体をY、当該誘電体Yのレーザ光入射側に配される誘電体をXとしたときに、上記誘電体Yは、その屈折率が、
(誘電体Yの屈折率)≧−3.6×(誘電体Xの屈折率)+11
の範囲の値を有する透明誘電体材料である。
【0017】
このような本発明の光情報記録媒体は、半透過情報記録層が、第1誘電体部、記録材料部、第2誘電体部、金属部、第3誘電体部とを有する構造とされる場合において、特に第1誘電体部の屈折率が2.4以上となるようにし、これにより透過率を向上させる。また、記録材料部としては、少なくとも5.2nm以上の厚みを、また金属部としては少なくとも7nm以上の厚みを、それぞれ確保することで、記録再生性能や保存性を良好とする。
【発明の効果】
【0018】
このような本発明によれば、半透過情報記録層が、第1誘電体部、記録材料部、第2誘電体部、金属部、第3誘電体部とを有する構造とされる場合において、第1誘電体部の屈折率が2.4以上となるようにして透過率を向上させることができ、多層ディスク等の実現に供することができる。またこの場合、記録材料部としては、少なくとも5.2nm以上の厚みを、また金属部としては少なくとも7nm以上の厚みを、それぞれ確保した状態で透過率向上を図ることができ、光情報記録媒体の良好な記録再生性能や保存性を確保できる。
また第3誘電体部も、記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上とされ、また第3誘電体部は、第1誘電体部が2.4以上の或る屈折率とされた場合において、当該半透過情報記録層の透過率がその最大透過率から透過率低下が1%以内の範囲となる屈折率範囲の屈折率とされることで、半透過情報記録層の光透過率を65%以上とすることができ、3層記録媒体や4層記録媒体に好適なものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を次の順序で説明する。
[1.ディスク構造]
[2.必要な光学特性及び実現手法]
[3.半透過情報記録層の例]
【0020】
[1.ディスク構造]

実施の形態の相変化型の光ディスク1として、図1に3層ディスクの構造を、また図2に実施の形態の4層ディスクの構造を模式的に示す。
図1(a)に示すように、3層ディスクは、ポリカーボネート等のプラスチック或いはガラスからなる支持基板2上に、第一情報記録層3が形成される。そして、その上に記録再生レーザ光の波長に対して透明な第一中間層4を介して第二情報記録層5が形成される。さらにその上に記録再生レーザ光の波長に対して透明な第二中間層6を介して第三情報記録層7が形成される。そしてその上に記録再生レーザ光の波長に対して透明な光透過保護層(カバー層)8が形成された層構造を有する。
記録再生に用いるレーザ光は光透過保護層8側から入射される。ディスク記録再生装置から出射されて、光透過保護層8側から入射されたレーザ光は、ディスク記録再生装置側のフォーカス制御に応じて、第一情報記録層3もしくは第二情報記録層5もしくは第三情報記録層7に集光され、情報の記録再生が行われる。
【0021】
また4層ディスクの場合は、3層ディスクの構造に加えて第三中間層10、第四情報記録層9が形成される。即ち図2(a)に示すように、支持基板2上に、第一情報記録層3、第一中間層4、第二情報記録層5、第二中間層6、第三情報記録層7、第三中間層10、第四情報記録層9、光透過保護層(カバー層)8が形成された層構造となる。
光透過保護層8側から入射されたレーザ光は第一、第二、第三、第四情報記録層(3、5,7,9)のいずれかに集光され、情報の記録再生が行われる。
【0022】
ここで、図1の3層ディスクの場合は、最も支持基板2側となる第一情報記録層3以外の情報記録層、即ち第二情報記録層5、第三情報記録層7が、半透過情報記録層とされ、図1(b)に示す層構造を有することになる。
また、図2の4層ディスクの場合も、最も支持基板2側となる第一情報記録層3以外の情報記録層、即ち第二情報記録層5、第三情報記録層7、第四情報記録層9が、半透過情報記録層とされ、図2(b)に示す層構造を有することになる。
【0023】
この半透過情報記録層は、図1(b)及び図2(b)に示すように、光透過保護層8側(レーザ入射側)から見て、第1誘電体部11、記録材料部12、第2誘電体部13、金属部14、第3誘電体部15とされる。
即ちディスク製造時には、その半透過情報記録層の直下の中間層上に、順に、第3誘電体部15、金属部14、第2誘電体部13、記録材料部12、第1誘電体部11としての各薄膜がスパッタリング装置を用いて積層されて形成される。
【0024】
このような半透過情報記録層の第1誘電体部11、第2誘電体部13、第3誘電体部15は、それぞれ1種類の誘電体材料による一層構造によって構成されるだけでなく、複数の誘電体材料が積層された構造であっても良い。
例えば第1誘電体部11、第3誘電体部15は、相変化記録材料や支持基板側で接する中間層等の材料との相性があり、記録再生信号特性に影響を与えたり腐食等保存上の信頼性に影響を与えるため、それぞれ適した材料で複数の誘電体が積層された構造とされることがある。
【0025】
図3に積層構造例を示す。
図3は、半透過情報記録層として例えば図1の第三情報記録層7を挙げて示しているが、例えば第1誘電体部11は、誘電体a,b,cが積層された層構造とされる。
第2誘電体部13は、誘電体dによる一層構造とされる。
第3誘電体部15は、誘電体e,fが積層された層構造とされる。
これは一例であり、第1誘電体部11、第2誘電体部13、第3誘電体部15としては他の構造も考えられる。例えば第1誘電体部11は、一層構造とされたり、2つの誘電体材料による積層構造とされる場合もある。第2誘電体部13、第3誘電体部15についても同様に他の構造が考えられる。
【0026】
なお、半透過情報記録層についての反射率、透過率の定義を説明しておく。
図3において矢印でレーザ光成分を示しているが、反射率は図中のrをもって反射率とする。即ちディスク記録再生装置から光ディスクに照射されるレーザ入射光を「1」としたとき、光透過保護層8の表面で反射する光成分rs、半透過情報記録層に入射する光成分ti、半透過情報記録層で反射する光成分ri、光成分riのうちで光透過保護層8の表面で反射する光成分risがあるが、つまり反射率rは、入射光=1に対する半透過情報記録層で反射してディスク記録再生装置の対物レンズ側へ戻る光成分である。つまりディスクの外から見ての、入射光に対する半透過情報記録層からの反射光成分の比率である。
後述する図5(b)(d)、図6(b)、図7(b)で用いる反射率は、この反射率rである。
但し、図5(a)(c)、図6(a)、図7(a)、及び後述する具体例としての図9では反射率(ri/ti)を用いており、これは半透過情報記録層のみで見た入射光に対する反射光の比率である。
透過率tは図中の光成分tiと、半透過情報記録層を透過する光成分toを用いて、t=to/ti をもって透過率とする。
【0027】
ここで半透過情報記録層の記録材料部12、金属部14の厚みについて述べておく。
記録材料部12は、相変化材料による薄膜として形成される。
金属部14は、Ag合金等による反射膜として形成される。
半透過情報記録層の透過率は、この記録材料部12及び金属部14の厚みに強く依存するが、透過率を上げるためには、それぞれを薄くすることが1つの手法として考えられる。ところが先に述べたように、これらを薄くするほど耐腐食性が悪化し、保存性が悪化したり、信号書き換え性能(消去比)が低下したりする。
このため本例では、これら記録材料部12及び金属部14の厚みとして下限を設ける。
図4(a)にAg合金厚に対する耐腐食性:信頼性試験における欠陥増加率の測定結果を示す。厚み7nmを越えると欠陥が増加していることがわかる。
また図4(b)には記録材料の厚みに対する信号書き換え特性:消去比の測定結果を示す。消去比の下限値26dBを破線で示したが、記録材料厚5.2nm以上でこれを上回ることがわかる。
これらよりAg合金による金属部14は7nm、記録材料部12は5.2nmが、利用可能な下限値であった。
なお、実際の大量生産工程での各種マージンを考慮したうえでの望ましい下限値として考えると、金属部14は8nm、記録材料部12は5.5nmが下限として適切であるといえる。
【0028】
[2.必要な光学特性及び実現手法]

本実施の形態で実現する光学特性及び実現手法について説明する。
上記図1,図2では3層ディスク、4層ディスクを例示したが、本発明の光情報記録媒体(光ディスク)としては2層以上の情報記録層を有するものを対象とする。
そして第二以上の情報記録層は、最も支持基板側である第一情報記録層まで記録再生レーザー光を到達させるために、透光性能を有する必要があるため、上記のように半透過情報記録層とされる。
【0029】
すでに商品化されている2層ディスクにおいては第二情報記録層の光透過率は45〜55%の光透過率を有している。
ここで2層ディスクにおける各記録層の光学特性を図5(a)に示し、入射光の使われ方を図5(b)に示す。
図5(a)は第一情報記録層と第二情報記録層についての光学特性として反射率(ri/ti)、透過率、吸収率を示している。また図5(b)は、2層ディスクへの入射エネルギーを100%としたときの第一情報記録層と第二情報記録層のエネルギー配分を、反射率(r)、吸収率で示している。
【0030】
図5(b)にあるとおり、各情報記録層に吸収される光エネルギーには一割程度の差があり、記録パワーも同程度の差になるが、記録パワーのアンバランスとしては許容範囲である。
多層ディスクにおいては、各情報記録層での吸収エネルギーが、どの層でもほぼ同等になるように設計することで、各層の記録感度を合わせることが可能になる。
第一、第二情報記録層に加えて第三情報記録層を形成して3層ディスクを構成する場合には、ディスクの外からみた各記録層の反射率(r)と記録感度を合わせるよう設計することになる。
この場合の各情報記録層の光学特性は図5(c)のようになり、入射光のエネルギー配分は図5(d)のようになる。
同様に4層ディスクにおいては各情報記録層の光学特性は図6(a)のようになり、入射光のエネルギー配分は図6(b)のようになる。
【0031】
各情報記録層は単独で記録感度や反射率の値を微調整することも可能であるので、図示した半透過情報記録層の光透過率は厳密なものではない。図5(c)では第三情報記録層の透過率を70%としているが、第三情報記録層を形成する場合には65〜75%の光透過率であれば確実にメディアとしての光学バランスや記録パワーのバランスを確保できる。例えば3層ディスクにおいて第三情報記録層の透過率が65%の場合で、図5(d)の反射率に合わせる場合、第一、第二情報記録層の反射率を若干高めて図7(a)の光学特性にすることで、3層ディスクとしてのエネルギーバランスを図7(b)のように追い込むことが出来る。
この場合、各層の光吸収率に差が出るが、第二情報記録層の吸収率に対して他層の吸収率は一割程度ずれている。この一割の差分であれば記録層の熱設計を最適化することで記録感度を合わせることが出来る。
【0032】
同様に、4層ディスクとして第四情報記録層を形成する場合には73〜83%の光透過率があれば光学バランスを確保できる。
このように情報記録層の層数が増えるほど最も光入射側の情報記録層はより高い光透過率を要求される。
【0033】
書き換え型のディスクにおいて、第二以上の情報記録層のような半透過情報記録層については、上述のようにの相変化型記録材料、誘電体、金属といった材料をスパッタリング装置で積層して形成する。即ちその基本的な構成は光入射側から第1誘電体部11、記録材料部12、第2誘電体部13、金属部14、第3誘電体部15とされる。
このような半透過情報記録層において本例では、第三情報記録層、第四情報記録層として求められる透過率を実現するために、第1誘電体部11の屈折率を2.4以上とする。
なお、第1誘電体部11が複数の誘電体材料の積層構造(例えば上記図3の誘電体a,b,cの積層構造)とされる場合には、その積層構成のうちの少なくとも1つの誘電体材料の屈折率が2.4以上であればよい。
【0034】
また、半透過情報記録層中で吸収を有する記録材料や金属膜の厚みを減らさずに出来るだけ透過率を高めるためには、第1誘電体部11、第3誘電体部15が3共に屈折率2.4以上あることが望ましい。
【0035】
更に第1誘電体部11、第3誘電体部15に2.4以上の高屈折率材料を配置した場合に、最も透過率を高めるためには、第1誘電体部11と第3誘電体部15の屈折率の間に適切な関係があることが判明した。
即ち、第1誘電体部11もしくは第3誘電体部15の一方の屈折率が決定された場合に、最大の透過率を得るには、他方の誘電体の屈折率を図8の点線内の組み合わせになるように選ぶことが望ましい。
例えば第1誘電体部11の屈折率が2.4であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.4から2.5の範囲とされるようにする。
また第1誘電体部11の屈折率が2.5であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.4から2.7の範囲とされるようにする。
第1誘電体部11の屈折率が2.6であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.4から2.9の範囲とされるようにする。
第1誘電体部11の屈折率が2.7であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.4から3.0の範囲とされるようにする。
第1誘電体部11の屈折率が2.8であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.5から3.0の範囲とされるようにする。
第1誘電体部11の屈折率が2.9であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.6から3.0の範囲とされるようにする。
第1誘電体部11の屈折率が3.0であるときは、第3誘電体部15の屈折率は2.7から3.0の範囲とされるようにする。
【0036】
後述するが、この図8の点線内の組み合わせは、第1誘電体部11が2.4以上の或る屈折率とされた各場合において、半透過情報記録層の透過率がその最大透過率から透過率低下が1%以内の範囲となる屈折率範囲の屈折率とされる場合である。
【0037】
第1誘電体部11や第3誘電体部15に配置する2.4以上の屈折率を有する材料としては、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23などの材料が存在する。
即ち第1誘電体部11や第3誘電体部15は、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23の少なくとも1つを、単一誘電体材料の形でもしくは複合誘電体材料の一部として有するようにする。なお、単一誘電体材料とはSiO2やZnSなどの基本構造を有する誘電体による材料であり、複合誘電体材料とは、例えばSiO2やZnSなどの基本構造を有する複数の誘電体が原子レベルで均一に混ざり合ったものである。
また高屈折率材料は複素屈折率のうち消衰係数を0にすることが比較的難しい。消衰係数が増加すると情報記録層の光透過率が減少するため、第三情報記録層、第四情報記録層で使用する場合には所望の透過率を満たすことがより困難になる。このため第三情報記録層に必要な透過率65%〜75%を得るためには消衰係数kは0.04以下が必要であり、0.01以下であることが望ましい。
【0038】
相変化記録材料には組成式GeaSb2Tea+3、GeaBi2Tea+3(1≦a≦20)や、これらでGe,Teの量を微調整したもの、GeaSb2Tea+3とGeaBi2Tea+3を混ぜ合わせたような組成のもの、更にこれらの材料の記録情報保存性能等を向上するために用途に応じて元素が添加されたものなどが半透過情報記録層の記録材料として使用されている。
金属部14の薄膜は主に記録材料層で発生した熱を効率よく逃がす用途で設けられており、相変化型光情報記録媒体ではAg合金が広く使用されている。Agは青色波長帯において他の金属材料に比べて透光性や反射率が高い材料なので、半透過情報記録層でも金属部14として利用されている。
【0039】
[3.半透過情報記録層の例]

以下、半透過情報記録層としての具体例を説明する。
なお上述のように、Ag合金による金属部14は7nm、記録材料部12は5.2nmが、利用可能な下限値であるが、以下では金属部14は8nm、記録材料部12は5.5nmとして厚みを固定した上で各種具体例を示す。
また反射率rは記録材料が結晶の時の値(Rc)が1.8%〜2.2%、非晶質の時の値(Ra)との比率:Rc/Ra>4付近になるよう各材料層の厚みを合わせこんだ。
反射率rの設定範囲は他の範囲たとえば2.3%〜2.7%などに設定しても同様に扱うことが出来る。
【0040】
各具体例では、半透過情報記録層は図3に示した構造を有する。即ち支持基板側から中間層上に誘電体f、誘電体e、Ag合金、誘電体d、相変化記録材料、誘電体c、誘電体b、誘電体aの順に材料が積層されている。
Ag合金は厚み8nmで屈折率0.14−i2.2を用いた。
相変化記録材料は厚み5.5nm、結晶時の屈折率が1.8−i3.6、非晶質時の屈折率が2.8−i2.6の材料を用いた。
光透過保護層と記録層より支持基板側の中間層材料には屈折率が1.55の材料を用いた。
なおAg合金厚や記録材料厚を今回の設定より厚くすると、透過率が減少する。
【0041】
図9にサンプルS1〜S10として、各種誘電体材料の組み合わせと、その組み合わせに対する反射率、透過率の結果として、具体例を示す。この図9に示す反射率は上述した(ri/ti)である。
なおサンプルS1、S2は比較例としている。
本実施の形態に相当する実施例はサンプルS3〜S10となる。
なお、図9の第1誘電体部11として誘電体a,b,cを示しているが、誘電体bのみのサンプルは、その第1誘電体部11が一層構造で形成されているものである。また誘電体a,b、誘電体b,c、又は誘電体a,b,cが示されたサンプルは、その第1誘電体部11が積層構造で形成されているものである。
また第3誘電体部15として誘電体e,fを示しているが、誘電体eのみのサンプルは、その第3誘電体部15が一層構造で形成されているもので、誘電体e,fが示されたサンプルは、その第3誘電体部15が積層構造で形成されているものである。
【0042】
各サンプルは次のとおりである。なお、全サンプルにおいて、第2誘電体部13については、屈折率2.1のSiNを用い、サンプルS1以外は、その厚みは3nmとしている。
<S1>
比較例としてのサンプルS1は第1誘電体部11、第2誘電体部13、第3誘電体部15のそれぞれの誘電体材料としてSiNを用いている。SiNの屈折率は2.1である。厚みは第1誘電体部11は35nm、第2誘電体部13は10nm、第3誘電体部15は15nmである。
<S2>
比較例としてのサンプルS2は第1誘電体部11、第2誘電体部13の誘電体材料としてSiNを用い、第3誘電体部15の誘電体材料としてNb25を用いている。SiNの屈折率は2.1、Nb25の屈折率は2.55である。厚みは第1誘電体部11は35nm、第2誘電体部13は3nm、第3誘電体部15は10nmである。
【0043】
<S3>
サンプルS3は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率2.55のNb25を用い、第2誘電体部13、第3誘電体部15の誘電体材料としてSiNを用いている。厚みは第1誘電体部11は29nm、第3誘電体部15は37nmである。
<S4>
サンプルS4は第1誘電体部11及び第3誘電体部15の誘電体材料として屈折率2.55のNb25を用いている。厚みは第1誘電体部11は32nm、第3誘電体部15は25nmである。
<S5>
サンプルS5は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率2.55のNb25を用い厚みは30nmとしている。第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.77で厚み5nmのTiO2と、屈折率2.55で厚み21nmのNb25を用いている。
<S6>
サンプルS6は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率2.55で厚み25nmのNb25と、屈折率2.1で厚み5nmのSiNを用いている。第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.55で厚み25nmのNb25を用いている。
<S7>
サンプルS7は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率2.55で厚み25nmのNb25と、屈折率2.1で厚み5nmのSiNを用いている。第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.77で厚み5nmのTiO2と、屈折率2.55で厚み20nmのNb25を用いている。
<S8>
サンプルS8は第1誘電体部11の誘電体bとして屈折率2.55で厚み25nmのNb25と用い、誘電体a,cとして屈折率2.1で厚み5nmのSiNを用いている。
第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.55で厚み22nmのNb25を用いている。
<S9>
サンプルS9は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率1.48で厚み10nmのSiO2と、屈折率2.55で厚み32nmのNb25を用いている。第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.55で厚み25nmのNb25を用いている。
<S10>
サンプルS10は第1誘電体部11の誘電体材料として屈折率1.48で厚み10nmのSiO2と、屈折率2.55で厚み25nmのNb25を用いている。第3誘電体部15の誘電体材料としては、屈折率2.55で厚み25nmのNb25を用いている。
【0044】
この図9において、第1誘電体部11(誘電体a,b,c)、第3誘電体部15(誘電体d,f)に2.4以上の高屈折率誘電体を含まないサンプルS1に対し、第1誘電体部11に高屈折率誘電体であるNb25を含むサンプルS3〜S10は透過率が高められていることがわかる。
また、第3誘電体部15に高屈折率誘電体を含み、第1誘電体部11に高屈折率誘電体を含まないサンプルS2に対し、第1誘電体部11及び第3誘電体部15に高屈折率誘電体(Nb25)を含むサンプルS4〜S10も、透過率が高められている。
【0045】
すなわち第1誘電体部11に高屈折率誘電体を配置することで半透過情報記録層の透過率を向上させることが可能である。
更に第1誘電体部11と第3誘電体部15について、共に高屈折率材料であるNb25(屈折率2.55)等を含むサンプルS4〜S10記録層は、透過率65%を十分確保しており、3層ディスクの第三情報記録層7としての光学的な特性を満足することが出来る。
また、後述するように、より透過率を高め、4層ディスクの第四情報記録層9としての光学的な特性を満足することが出来る。
【0046】
第1誘電体部11にのみ高屈折率誘電体を有するサンプルS3については、透過率は60%程度であり、3層ディスクの第三情報記録層7としては、やや透過率が不足するとも考えられるが、2層ディスクの第二情報記録層としては好適である。2層ディスクの第二情報記録層とする場合は、十分以上の透過率が得られることを利用し、逆に金属部14や記録材料部12の厚みを厚くすることも想定できる。なお、この点についてはサンプルS4〜S10についても言えることである。
【0047】
なお、以上のサンプルS3〜S10は、一例にすぎず、本発明に該当する半透過情報記録層の材料、構造は各種多様に考えられることはいうまでもない。
【0048】
ここで、例えばサンプルS6のように、第1誘電体部11(誘電体b)及び第3誘電体部15(誘電体e)に同一の材料を配置する場合を想定し、その屈折率をパラメータとして透過率を計算した結果を図10に示す。
この図10より、屈折率値が高まるほど透過率が向上することと、屈折率値が2.4以上であれば透過率65%以上を達成できることがわかる。
【0049】
また先に述べたように、第1誘電体部11、第3誘電体部15に2.4以上の高屈折率材料を配置した場合において、最も透過率を高めようとする場合には、第1誘電体部11と第3誘電体部15の屈折率の間に適切な関係がある。
第1誘電体部11、第3誘電体部15がいろいろな屈折率をとる場合の各屈折率に対する最大透過率の計算結果を図11に示す。
図11では、第3誘電体部15の屈折率が2.3〜3.0としたそれぞれの場合について、各線P1〜P8により、第1誘電体部11の屈折率が2.3〜3.0の範囲とされた場合の透過率を示したものである。
この図11より、第1誘電体部11を決定したときには、その屈折率に対して透過率を最大にする第3誘電体部15の屈折率範囲が存在することがわかる。各線P1〜P8において●が、透過率が最大値となっているポイントを示している。
【0050】
ここで、第1誘電体部11の屈折率を決めた時に得られる最大透過率に対して、半透過情報記録層の透過率が1%低下する第3誘電体部15の屈折率範囲を示したものが、上述した図8において、点線で囲われた領域である。
つまりこの点線内の領域に相当するような、第1誘電体部11の屈折率と第3誘電体部15の屈折率の組み合わせを用いることで良好な透過率特性を得ることができ、当該半透過情報記録層としての光透過率を65%以上、例えば70%程度にまで高めることもできる。
【0051】
次に消衰係数について述べる。
第1誘電体部11及び第3誘電体部15の誘電体材料が光に対し吸収を有する場合、透過率が減少してしまう。このため誘電体材料の消衰係数に対する光透過率の減少傾向を計算により調査した。
第1誘電体部11、第3誘電体部15が、屈折率2.4から3.0の範囲をとる場合に、その誘電体材料の消衰係数が発生した時の透過率の減少傾向を図12に示す。各線Q1〜Q7は、屈折率2.4から3.0の各場合における、消衰計数と透過率の関係を示している。
図12より、3.0相当の高屈折率誘電体を用いたとしても、その消衰係数が0.04を超えると透過率65%を得ることが出来ないことがわかる。よって第1誘電体部11及び第3誘電体部15の消衰係数は0.04以下であることが必要である。特には0.01以下であることが望ましい。
【0052】
屈折率2.4以上の高屈折率透明誘電体については次のとおりである。
第1誘電体部11、第3誘電体部15で必要とされる高屈折率透明誘電体を調査し、例えばブルーレイディスクで用いられているレーザ光波長405nmでの屈折率測定を行ったところ、図14に示す材料を得た。即ち、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23などの材料が存在する。
但しスパッタリング条件で屈折率、消衰係数は変化するので、図14の値を得た時の各材料の薄膜の状態が、その薄膜の状態として必ずしも最適ではない。
Bi23は消衰係数が高めであるが、透明誘電体材料との複合化により消衰係数を低下できる。たとえば Bi12SiO20(Bi23:SiO2=6:1)は光学結晶として知られており消衰係数は0.01を十分下回る。
【0053】
また、第1誘電体部11が3層の誘電体による積層構造を有し、レーザ入射側から誘電体a、誘電体b、誘電体cとなる時に、透過率65%以上を得ることが可能な誘電体b,cの屈折率の組み合わせ範囲を調査した。
なお誘電体cは、記録材料部に接する誘電体である。また誘電体bは、誘電体cのレーザ光入射側に配される誘電体である。
誘電体bと第3誘電体部15(誘電体e)は、上述の各事情を考慮すると同一材料であることが望ましい。よってここでは誘電体bと第3誘電体部15には同じ屈折率を配置した。その結果、図13の結果を得た。
図13において誘電体bと誘電体cの屈折率の関係を示すが、斜線部が透過率65%以上となる。
これより透過率65%を得るために必要な誘電体bとcの屈折率の関係は図9の直線上になり、透過率65%以上をとる範囲はこの直線の上側の斜線部、すなわち、
(誘電体cの屈折率)≧−3.6×(誘電体bの屈折率)+11
を満たす領域であった。
従ってこのような条件を満たす誘電体材料が選定されることが適切となる。
なお、誘電体aの屈折率は1.4〜3.0の範囲でどのような材料を配置しても、膜厚を最適化することで、誘電体aを配置しない場合の最大透過率と同等の透過率を得ることができた。ただし誘電体aに吸収がない場合である。
また、この例においては本発明請求項11でいう誘電体Yに相当するのは誘電体cであり、誘電体Xに相当するのは誘電体bであることを付記しておく。
【0054】
以上、実施の形態について説明してきたが、実施の形態で述べた半透過情報記録層は、第1誘電体部11、又は第1誘電体部11と第3誘電体部15の両方において、屈折率が2.4以上である。
特には第1誘電体部11と第3誘電体部15に含まれる高屈折率誘電体の屈折率値組み合わせが図8の点線内の組み合わせをとるようにすることで、記録再生レーザ波長に対して光透過率65%以上を達成することを可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態の3層ディスクの層構造の説明図である。
【図2】実施の形態の4層ディスクの層構造の説明図である。
【図3】実施の形態の半透過情報記録層の構造の説明図である。
【図4】実施の形態の金属部及び記録材料部の厚みの設定の説明図である。
【図5】二層ディスク及び三層ディスクの光学特性及びエネルギー配分の説明図である。
【図6】四層ディスクの光学特性及びエネルギー配分の説明図である。
【図7】三層ディスクの光学特性及びエネルギー配分の説明図である。
【図8】実施の形態の屈折率の組み合わせの説明図である。
【図9】実施の形態の半透過情報記録層の材料の各種実施例の説明図である。
【図10】実施の形態の屈折率と最大透過率の関係の説明図である。
【図11】実施の形態の屈折率の組み合わせ毎の最大透過率の関係の説明図である。
【図12】実施の形態の消衰係数と透過率の関係の説明図である。
【図13】実施の形態の透過率65%を得る誘電体の関係の説明図である。
【図14】実施の形態で採用できる誘電体材料の説明図である。
【図15】二層ディスクと三層ディスクの説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 ディスク、2 支持基板、3 第一情報記録層、4 第一中間層、5 第二情報記録層、6 第二中間層、7 第三情報記録層、8 光透過保護層、9 第四情報記録層、10 第三中間層、11 第1誘電体部、12 記録材料部、13 第2誘電体部、14 金属部、15 第3誘電体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板と、記録再生レーザ光の入射側の層となる光透過保護層の間に、波長が400〜410nmである記録再生レーザ光に対して透明な中間層によって離間された複数の情報記録層を有し、
上記複数の情報記録層の内で、最も上記支持基板側となる情報記録層以外の1又は複数の情報記録層は、上記レーザ光を透過する性質を有する半透過情報記録層とされ、
1又は複数の上記半透過情報記録層の全部又は一部は、レーザ光の入射側からみて順に、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの記録材料部と、第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの金属部と、第3誘電体部とを有する構造とされている光情報記録媒体。
【請求項2】
上記第3誘電体部は、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上である請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記半透過情報記録層の上記第3誘電体部は、上記第1誘電体部が2.4以上の或る屈折率とされた場合において、当該半透過情報記録層の透過率がその最大透過率から透過率低下が1%以内の範囲となる屈折率範囲の屈折率とされることで、当該半透過情報記録層の光透過率が65%以上とされている請求項2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記第1誘電体部及び上記第3誘電体部の消衰係数が0.04以下である請求項3に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記情報記録層として、最も上記支持基板側となる第一情報記録層と、上記半透過情報記録層とされる第二情報記録層及び第三情報記録層が形成され、
上記第三情報記録層が、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の上記第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの上記記録材料部と、上記第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの上記金属部と、上記第3誘電体部とを有する構造とされている請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
上記情報記録層として、最も上記支持基板側となる第一情報記録層と、上記半透過情報記録層とされる第二情報記録層、第三情報記録層及び第四情報記録層が形成され、
上記第三情報記録層及び第四情報記録層が、上記記録再生レーザ光の波長に対する屈折率が2.4以上の上記第1誘電体部と、少なくとも5.2nm以上の厚みの上記記録材料部と、上記第2誘電体部と、少なくとも7nm以上の厚みの上記金属部と、上記第3誘電体部とを有する構造とされている請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
上記第1誘電体部は、屈折率が2.4以上の誘電体材料による一層構造で成る請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項8】
上記第1誘電体部は、屈折率が2.4以上の誘電体材料を含む、複数の誘電体材料が積層された構造で成る請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記第1誘電体部は、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23の少なくとも1つを、単一誘電体材料の形でもしくは複合誘電体材料の一部として有する請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記第3誘電体部は、Nb25、TiO2、ZnS、CeO2、Bi23の少なくとも1つを、単一誘電体材料の形でもしくは複合誘電体材料の一部として有する請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
上記第1誘電体部は、複数の透明誘電体材料が積層されて成る場合において、
上記記録材料部に接する誘電体をY、当該誘電体Yのレーザ光入射側に配される誘電体をXとしたときに、
上記誘電体Yは、その屈折率が、
(誘電体Yの屈折率)≧−3.6×(誘電体Xの屈折率)+11
の範囲の値を有する透明誘電体材料である請求項1に記載の光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−301622(P2009−301622A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153200(P2008−153200)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】