説明

光情報記録媒体

【課題】記録再生装置におけるディスクタイプの確認が容易となり、一つの記録再生装置で他の種類の光ディスクと共用化できると共に、ディスクの生産が容易になる。そしてROM層の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層に記録し、置き換えることが可能になる光情報記録媒体を実現できる。
【解決手段】光情報記録媒体1は、基板50上に、ROM層20及びRE層40と、ROM層20及びRE層40を分離する中間層30と、基板50より最も遠い位置に設けられた透光層10と、を有する。そして、RE層40は、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層であり、且つROM層20において用いられている情報記録形式より、容易に判定可能な方式で記録されるBCAの記録層であって、透光層10表面の防汚特性が、RE層40を基準に定められている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、コンビネーションディスク(ROM(再生専用)層とRE(記録再生)層とが混在する多層光ディスク)が求められている。その理由は、例えば以下のことがあげられる。カーナビソフトでは、常にネットに接続できるわけではなく、全ての地図情報をダウンロードするには時間が掛かるため、安価なROMでの配布が望ましい。一方、地図情報は日々変わるため、ネットから新たに更新できるほうが望ましい。この両方の問題を解決できるROM層の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層に記録し、置き換えることが可能になるコンビネーションディスクが求められていた。
【0003】
上記コンビネーションディスクを実現するには、特許文献1にあるように、再生光入射面から最も遠い位置にある情報記録層(以下、L0層と称する)からの戻り光には、他の情報記録層の存在により損失が生じるため、一般にRE層より反射率の高いROM層を設けるほうが好ましいと考えられていた。
【0004】
また、光ディスクの一つの規格において、ROM,R,RW,RE等種類があると共に、記録容量向上の為に情報記録層を2層にするなど様々なバージョン(ディスクタイプ)がある。そして、例えば、上記のようなカーナビでの使用を想定すると、一つの記録再生装置で、カーナビを使用していない時には、レンタル映画ソフト(ROM)や自宅での録画したドラマを録画したディスク(R,RW,RE)を再生できることが望まれるので、上記記録再生装置においては、ディスクが装填された場合、できるだけ容易にディスクのタイプを判別する手段が必要となる。
【0005】
上記ディスクタイプを判別する手段としては、情報記録領域外にバーコードを印刷する等の方式等も考えられるが、後述する理由のため、情報付加後は修正が出来ず、ディスクが完成した状態で記録するほうが望ましい。このため、実質的には、BCA記録(YAGレーザ等によりパルスレーザー光を情報記録層に照射して、例えば約10μm程度の幅で長さが数百μmのストライプ(バーコードのような)を形成し、情報を記録すること)のような光照射を用いたディスク内部への記録が望ましい。
【0006】
特許文献1には、再生光入射面より順に透明基板、RE層、中間層、ROM層、保護樹脂膜からなるコンビネーションディスクが開示されている。
【0007】
特許文献1に開示されているようなコンビネーションディスクを実現するには、再生光入射面から最も遠い位置にある情報記録層(L0)からの戻り光は、他の情報記録層の存在により損失が生じるため、一般にRE層より反射率の高いROM層を設けるほうが好ましい。
【0008】
また、非特許文献には、ディスクタイプを判断する方法として、ビームエキスパンダの値やフォーカスやトラッキングの状態が最適でなくとも判定可能となるような大きさの記録マークにて情報を記録する方法(BCA)が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−106546号公報(1997年4月22日公開)
【特許文献2】特開2006−120318号公報(2006年5月11日公開)
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】(Standard ECMA-267,-382,-384)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、非特許文献(DVD規格)に記載の技術では、ディスクのタイプによって、BCA記録する位置がまちまちであるという問題があった。例えば、DVD−ROMは、光入射面から遠い基板に設けられた情報記録層にBCA記録を行うための記録層が設けられており、2層のDVD−R、−RWは光入射面に近い基板に設けられた情報記録層にBCA記録を行うための記録層が設けられている。すなわち、記録再生装置は、ディスクのどの層にBCAが設けてあるかを予め設定することが出来ず、BCAを再生する場合に、記録されている層を確定するために、ある程度のフォーカスサーチが必要であった。
【0012】
また、特許文献1に開示されているように、再生光入射面から最も遠い位置にある情報記録層(L0)に、ROM層を設けるコンビネーションディスクでは、後述する理由で、再生光入射面から最も遠い層にBCA記録することは困難であるという問題点があった。
【0013】
DVDタイプよりも、容量アップが図りやすいBD形式の多層ディスクでは、上記情報が記録される層は、BDタイプの多層ディスクにおいては、単板光ディスクであることから、基板上に必ず情報記録層が設けられる。
【0014】
なぜならば、DVDのような2枚の基板を貼り合せる複板光ディスクでは、どちらの基板表面に情報記録層があってもコスト等に差が生じないが、単板光ディスクにおいては、情報記録層を2層化するためには、基板に設けられた情報記録層の上に中間層を設けて新たな情報記録層を設ける必要がある。このため、コストの点から基板上に情報記録層を設けないで、中間層を設けることは、実質ありえないためである。
【0015】
すなわち、BDタイプの光ディスクの規格においては、基板上に必ず情報記録層が設けられることになるので、上記情報記録層に記録された情報を再生するための記録再生装置は、記録された場所を想定しやすく、BCA(Burst cutting area)再生の設定を予め行うことが可能になる。よって、一つの記録再生装置において、同一規格内の様々な種類の媒体を共用(ディスクタイプを認識するのみを含む)しやすくなる。
【0016】
しかしながら、上記を実現するためには、特許文献1に記載のコンビネーションディスクには以降に示す点で問題があった。
【0017】
まず、BCA記録(YAGレーザ等によりパルスレーザー光を情報記録層に照射して、例えば約10μm程度の幅で長さが数百μmのストライプ(バーコードのような)を形成し、情報を記録すること)は、再生が容易になるように特定の位置に記録されていることが望ましい。更に、BD構成の場合は後述する理由により、L0の位置に記録されることが望ましい。
【0018】
また、BCA記録時には、RE層への不正なダビング等を防止できるディスクの個体識別番号も同時に記録されることがコストダウンのためには好ましい。
【0019】
さらに、個体識別番号を記録する場合は、製造上の管理の観点から、ディスクが完成した状態で記録するほうが望ましい。
【0020】
すなわち、実質的にはBCA記録はディスクが完成した状態で記録する必要がある。ところで、詳細は後述するが、BCA記録において、ROM層への記録とRE層への記録では、記録する際に必要なレーザの出力が大きく異なる。異なる理由は、RE層であれば、通常の情報記録を行う場合と同様に、記録マークの状態を結晶状態とアモルファス状態へ相変化させれば良いが、ROM層の場合はコストの観点から通常金属反射膜のみが設けられているため、相変化させることは出来ず、金属膜を焼き切るような状態にすることで記録するため、より大出力のレーザを用いる必要があるためである。
【0021】
一方、2層REディスクにおいては、L0にBCA記録する場合、少なくとも直上のRE層(L1)においても、L0層へと透過する高出力レーザによる熱により、相変化が起こる場合がある。
【0022】
よって、少なくともL0層がROM層であるコンビネーションディスクは、L0層が情報記録層の中で、最も光入射面より遠い位置に設けられているため、BCA記録の際、ビームが必ず他の情報記録層を通過するので、その途中のいずれかの層に必ず存在するRE層をビームが通過する。詳細は後述するが、その場合、ROM層に比べてRE層は光を吸収しやすいので、RE層の温度が上昇し、その熱により透光層とRE層が剥離するという現象が生じる。このような現象が生じると、L0層上にフォーカスすることができず、L0層上にBCA記録された情報が正しく再生できない。
【0023】
また、L0層がROM層であるコンビネーションディスクでは、後述する理由により、再生不良を起こす可能性もあった。
【0024】
また、通常ROMディスクとREディスクでは、信号の変調度が異なり、ROMディスクのほうが高いため、光入射面上への指紋や埃の付着や光入射面の傷つき等に起因するノイズに対する耐性が異なるので、透光層表面の防汚特性や耐擦傷特性がROM層にのみ適合するものである場合、RE層への記録やRE層からの情報の再生が正しく出来ない可能性がある。
【0025】
本発明の目的は、上記の問題に鑑み、同一規格内の他の様々な種類(R,RE,Rや層数が異なる媒体)と記録再生装置を共用でき、大容量情報を安価に配布可能であると共に、更新データにて随時アップデート可能な光情報記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するために、本発明の光情報記録媒体は、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に検出可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、上記読み出すことのみ可能な層には、設けられている情報を再生した場合に得られるプッシュプル信号の極性が、ポジティブになる記録形式にてプリピットが形成されており、上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれていることを特徴とする。
【0027】
上記の課題を解決するために、本発明の光情報記録媒体は、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に判定可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、上記読み出すことのみ可能な層にはオンピット形式により情報が記録されており、上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれていることを特徴とする。
【0028】
ここで、上記ディスクタイプ識別情報とは、ディスクタイプを識別するための情報である。すなわち、ディスクタイプ識別情報とは、ディスクに設けられている情報記録層の数や、設けられた情報記録層の種類(ROM,R,RE等)を表したり、上記複数の情報記録層のうち、上記情報を読み出すことのみ可能な層(以下、ROM層と称する)と、上記情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層(以下、RE層と称する)との配置位置を表す情報であり、光情報記録媒体の種類を識別するための情報である。
【0029】
また、上記個体識別番号とは、光情報記録媒体の個体を識別するための番号であり、BCA記録の際に、併せて光情報記録媒体に記録されることが好ましい。上記個体識別番号を適宜用いることにより、RE層への不正なダビング等を防止することができる。
【0030】
上記構成によると、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報は、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層(以下、L0層と称する)に記録されている。
【0031】
このため、上記複数の情報記録層のうち、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報がどの層に記録されているかを、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報を再生する再生装置に、予め設定させておくことが可能となる。これにより、上記複数の情報記録層のうち、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報が記録されている層を、上記再生装置に特定させるための時間を短縮することができる。さらに、同一の再生装置で、さまざまなディスクタイプの光情報記録媒体の共用化が容易になる。
【0032】
また、上記構成によると、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層である。つまり、上記構成によると、L0層としてRE層が配置されることとなる。
【0033】
このため、L0層としてROM層を配置した場合に生じる、上記ROM層にBCAを記録する際の上記RE層と、当該RE層の上層または下層に配される中間層や、透光層などとが剥離することを防止することができる。このため、L0層にBCA記録された上記ディスクタイプ識別情報や、上記個体識別番号などを、正しく再生装置などに再生させることができる。
【0034】
さらに、上記構成では、ROM層にはオンピット形式により情報が記録されている。つまり、ROM層に形成されているプリピットが凸形状となっている。
【0035】
よって、後述の理由により、再生装置における再生時に、ROM層からRE層へのレイヤージャンプに失敗し、誤って再度ROM層にフォーカスされた場合においても、ROM層の情報が再生可能となり、コンビネーションディスクの再生不良を防止することができる。
【0036】
これにより、コンビネーションディスクにおける再生不良が防止可能になる。
【0037】
また、オンピット形式により情報が記録されているROM層を再生した場合の、プッシュプル信号の極性はポジティブとなる。
【0038】
換言すると、ROM層には、設けられている情報を再生した場合に得られるプッシュプル信号の極性が、ポジティブになる記録形式にてプリピットが形成されていると言える。
【0039】
また、上記構成によると、上記透光層表面の防汚特性は、上記書き換え層を基準に定められているので、ROM層にのみ適合し、RE層への記録やRE層からの情報の再生に問題が生じることを防止できる。
【0040】
ここで、RE層を基準に定められている透光層表面の防汚特性及び耐擦傷特性とは、例えば、RE層を有する光情報記録媒体の透光層表面に対して、特許文献2に記載の擬似指紋付着試験や磨耗試験を行った後、RE層から信号を再生した場合、実用上問題ない程度に信号の劣化が抑制される防汚特性及び耐擦傷特性になっていればよい。
【0041】
一般的に、RE層より、ROM層のほうが信号の変調度が高いため、RE層より、ROM層のほうが光入射面上への指紋や埃の付着や光入射面の傷つき等に起因するノイズに対する耐性が高い。このため、透光層表面の防汚特性や耐擦傷特性がROM層にのみ適合するものである場合、RE層への記録やRE層からの情報の再生が正しく出来ない可能性がある。
【0042】
そこで、上記構成のように、上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれていることで、ROM層とRE層とを備える光情報記録媒体で、RE層への情報の記録再生を正しく行なうことができる。
【0043】
このように、上記構成は、DVDタイプよりも、記録容量アップが図りやすいBD形式の多層ディスクであり、且つコンビネーションディスクにおいては、光入射面に対して遠い情報記録層(L0)にユーザが利用する情報記録形式より容易に判定可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号(BCA記録時に記録される情報)があると共に、RE層が配置され、ROM層に設けられているプリピットの記録形式は、オンピットとなっている。換言すると、ROM層には、設けられている情報を再生した場合に得られるプッシュプル信号の極性が、ポジティブになる記録形式にてプリピットが形成されている。
【0044】
更に、上記構成は、ROM層の透光層表面の防汚特性及び耐擦傷特性がRE層への情報の記録やRE層からの情報の再生に問題が生じない構成である。
【0045】
上記構造により、記録再生装置におけるディスクタイプの確認が容易となり、一つの記録再生装置で他の種類の光ディスクと共用化できると共に、ディスクの生産が容易になる。そしてROM層の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層に記録し、置き換えることが可能になる光情報記録媒体を実現できる。
【0046】
本発明の光情報記録媒体は、さらに、上記判定可能な方式がパルスレーザー光を情報記録層に照射して、μm単位の幅のストライプを形成し、長さがμm単位からmm単位のストライプを形成し、情報を記録する方式であることが好ましい。
【0047】
上記構成により、ディスクタイプ識別情報及び個体識別番号を読み取るための再生装置での再生時において、フォーカスや再生光照射の半径方向位置が多少ずれたとしても、上記再生装置で、ディスクタイプ識別情報及び個体識別番号を読み取ることができる。
【0048】
本発明の光情報記録媒体は、さらに、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別番号が記録される情報を再生する際にトラッキングが必須ではない領域の半径位置が、情報を再生する際にトラッキングが必要な情報記録領域より内周にあることが好ましい。
【0049】
換言すると、上記ディスクタイプ識別情報、及び上記個体識別番号が記録される半径位置は、情報の再生にトラッキングが必要となる情報記録領域より内周にあることが好ましい。
【0050】
上記構成によると、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別番号は、光情報記録媒体の内周近傍に配置される。このため、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別番号を、情報記録領域より外周側、つまり、光情報記録媒体の外周近傍に配置する場合と比較して、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別番号を光情報記録媒体に記録するための時間を短縮することができ、情報記録容量を増大できる。
【0051】
また、本発明の光情報記録媒体は、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層のトラックパス方向が内周から外周に向かう方向となっており、且つ上記情報を読み出すことのみ可能な層の中で最も上記透光層より遠い位置に設けられた上記情報を読み出すことのみ可能な層とのトラックパスがパラレルトラックパスとなっていることが好ましい。
【0052】
上記構成によると上記情報を読み出すことのみ可能な層の中で最も上記透光層より遠い位置に設けられた上記情報を読み出すことのみ可能な層の作製に必要なスタンパの作製時に内周近傍よりカッティングを開始することが可能になるので、上記情報記録領域全面に情報を記録する場合以外は、外周部近傍よりカッティングを開始するより、精度的な面でカッティングが容易になり、製造コストが低減できる。
【0053】
また、上記情報を読み出すことのみ可能な層のリードイン領域がコンテンツ記録領域より内周部に設けられていることが好ましい。
【0054】
上記構成によると、上記リードイン領域に記録されている媒体情報(媒体種類情報、再生条件情報、セクター最終番号情報等の情報)が、光情報記録媒体の内周近傍に配置される。このため、上記媒体情報を、上記情報記録領域より外周側、つまり、光情報記録媒体の外周近傍に配置する場合と比較して、上記情報を読み出すことのみ可能な層の作製に必要なスタンパの作製時に内周近傍に上記媒体情報を記録できるため、スタンパを製造する時間を低減でき、ひいては製造コストが低減でき、更に情報記録容量を増大できる。
【0055】
なぜならば、上記媒体情報は上記情報記録領域に記録されたコンテンツ情報を再生する場合に、必要であるため、素早く再生する必要がある。
【0056】
このため、上記媒体情報は、アドレスの確認等無しに再生できることが好ましいため、半径方向に一定の幅(ピックアップを半径方向に移動させるサーボモーター等の精度で決まり、例えば数百μm単位の幅)の領域に、1周のどの位置から再生を開始しても、すぐに情報が再生できるように同じ情報が、繰り返し記録されているため、外周近傍に設けるとより広い領域が必要となり、より多くの情報を記録する必要が生じるためである。
【0057】
本発明の光情報記録媒体の上記書き換え層のアドレスは、上記書き換え層に設けられたグルーブを基板面方向に蛇行させることによって記録され、上記情報を読み出すことのみ可能な層のアドレスは、当該情報を読み出すことのみ可能な層に設けられた凹凸からなるプリピットにより記録されていることが好ましい。
【0058】
ここで、RE層には、情報記録時に半径方向に隣接する記録マーク同士が干渉しないように、または精度良く再生するために、通常グルーブが設けられている。よって、アドレス情報を記録するためには、上記書き換え層に設けられたグルーブを、基板面方向に蛇行させることによって記録する(以下、ウォブルと称する)ことが最も容易である。一方、グルーブ上にプリピットを設けたり、グルーブの途中にプリピットを設けたりすることは、作業が複雑になるため作製コストが増大する。
【0059】
同様に、ROM層には一般に凹凸からなるプリピットにより情報記録されているので、上記と同様の理由により、アドレス情報を記録するためには、グルーブ上にプリピットを設けたり、グルーブの途中にプリピットを設けたりすることに比べて、作製コストの増大を防止することができる。
【発明の効果】
【0060】
以上のように、本発明の光情報記録媒体は、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に検出可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、上記読み出すことのみ可能な層には、設けられている情報を再生した場合に得られるプッシュプル信号の極性が、ポジティブになる記録形式にてプリピットが形成されており、上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれている。
【0061】
以上のように、本発明の光情報記録媒体は、基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に判定可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、上記読み出すことのみ可能な層にはオンピット形式により情報が記録されており、上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれている。
【0062】
それゆえ、記録再生装置におけるディスクタイプの確認が容易となり、一つの記録再生装置で他の種類の光ディスクと共用化できると共に、ディスクの生産が容易になる。そしてROM層の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層に記録し、置き換えることが可能になる光情報記録媒体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の光情報記録媒体の構成を表す概略図である。
【図2】本発明の光情報記録媒体の構成を表す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光情報記録媒体のBCAの一例を表す概略図である。
【図4】(a)は、L0層及びL1層が共に、ROM層である光情報記録媒体の構成を表す概略図であり、(b)はL0層及びL1層が共に、RE層である光情報記録媒体の構成を表す概略図であり、(c)はL0層がRE層であり、L1層がROM層である光情報記録媒体の構成を表す概略図である。
【図5】図4(a)に示す光情報記録媒体にBCA記録を行った箇所の表面の様子を表す要部拡大図である。
【図6】図5で示す光情報記録媒体の表面である透光層の厚みを測定した結果を表すグラフである。
【図7】オングルーブ記録形式のRE層を説明する概略図である。
【図8】インピット記録形式のROM層を説明する概略図である。
【図9】オンピット記録形式のROM層を説明する概略図である。
【図10】L0層がROM層であり、L1層がRE層である光情報記録媒体の構成を表す概略図である。
【図11】(a)(b)はオポジットトラックパスの説明図であり、(a)は光入射面から見たL0層のトラックパス方向を表す説明図であり、(b)は光入射面から見たL1層のトラックパス方向を表す説明図である。
【図12】(a)(b)はパラレルトラックパスの説明図であり、(a)は光入射面から見たL0層のトラックパス方向を表す説明図であり、(b)は光入射面から見たL1層のトラックパス方向を表す説明図である。
【図13】(a)は、オポジットトラックパスの場合の情報の記録再生の様子を説明する図であり、(b)は、パラレルトラックパスの場合の情報の記録再生の様子を説明する図である。
【図14】再生機がプリピットを再生する際の再生光学系のプッシュプル信号を表し、極性がポジティブであるプッシュプル信号の様子を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
(光情報記録媒体1の概略構成)
本発明の一実施の形態に係る光情報記録媒体1の構成について説明する。
【0065】
図1は、光情報記録媒体1の構成を表す概略図である。
【0066】
図1に示すように、光情報記録媒体1は、基板50上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層であるROM層20及びRE層40と、ROM層20及びRE層40を分離する中間層30と、基板50より最も遠い位置に設けられた透光層10と、を有する。つまり、光情報記録媒体1は、情報記録層にROM層20及びRE層40を含むコンビネーションディスクである。また、透光層10が配置される側が、再生光の入射側である。
【0067】
また、ROM層20は、情報を読み出すことのみ可能な層である。そして、RE層40は、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層である。RE層40は、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に判定可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層である。
【0068】
透光層10は、例えば、厚さ75μmの紫外線硬化樹脂(再生光波長405nmにおける屈折率1.50)からなる。透光層10の材料は、再生光の波長において透過率が高いものであれば良い。すなわち、透光層10は、例えばポリカーボネートフィルムと透明粘着剤とで形成されていても良い。
【0069】
ここで、通常ROM層とRE層とでは、信号の変調度が異なるため、光入射面上への指紋や埃の付着や光入射面の傷つき等に起因するノイズに対する耐性が異なる。一般的に、RE層より、ROM層のほうが信号の変調度が高いため、RE層より、ROM層のほうが光入射面上への指紋や埃の付着や光入射面の傷つき等に起因するノイズに対する耐性が高い。このため、透光層表面の防汚特性や耐擦傷特性がROM層にのみ適合するものである場合、RE層への記録やRE層からの情報の再生が正しく出来ない可能性がある。
【0070】
そこで、光情報記録媒体1によると、透光層10表面の防汚特性及び耐擦傷特性が、RE層40を基準に定められている。
【0071】
つまり、透光層10の表面は、RE層40への記録及び再生に悪影響を及ぼさない防汚特性(指紋等が付着した場合においてもRE層40からの再生信号等が劣化しない特性)と耐擦傷特性とを有している。
【0072】
これにより、ROM層20とRE層40とを備えるコンビネーションディスクである光情報記録媒体1で、RE層40への情報の記録や、RE層40から読み取った情報の再生を正しく行なうことができる。
【0073】
この、RE層40を基準に定められている透光層10表面の防汚特性及び耐擦傷特性とは、例えば、RE層を有する光情報記録媒体の透光層表面に対して、特許文献2に記載の擬似指紋付着試験や磨耗試験を行った後、RE層から信号を再生した場合、実用上問題ない程度に信号の劣化が抑制されるようになっていればよい。
【0074】
なお、このRE層40を基準に定められている透光層10表面の防汚特性及び耐擦傷特性は、当業者によって、適宜決定されればよい。
【0075】
また、上記防汚特性と耐擦傷特性は、透光層10表面にハードコートが設けられることによって満たされていても良い。
【0076】
また、具体的な防汚特性と耐擦傷特性としては、2層のBD−REの防汚特性と耐擦傷特性の基準を満たす特性であることが望ましい。
【0077】
上記防汚特性と耐擦傷特性を満たすための具体的な方法としては、以降に説明するROM層表面に、22μm厚の透明粘着層を介して50μm厚のポリカーボネートフィルム貼合し、その表面にハードコートとして、コロイダルシリカが分散された紫外線硬化型樹脂であるデソライトZ7503(JSR(株)製)を、スピンコート法により塗布し、60℃で3分間乾燥して希釈溶剤を除去したのち、紫外線を照射することにより硬化させた後(硬化後の厚さは3μm)、フッ素プラズマ処理を施すことより得ることが出来る。さらに、透光層10の厚さは、光情報記録媒体の再生装置(駆動装置)が有する光学系に応じて変更されても良い。具体的には、透光層10は、例えば0.6mmのポリカーボネ−ト基板であっても良い。
【0078】
ROM層20は、例えば、厚さ9nmのAPC(AgPdCu)からなりスパッタ法により中間層30の表面に成膜されている。ROM層20の厚さ及び材料は、これに限られるものではなく、ROM層20として必要な再生光波長における透過率と反射率を有していれば良い。
【0079】
中間層30は、例えば、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.50)からなる。中間層30の材料は、これに限られたものではなく、再生光の波長において透過率が高い材料であれば良い。また、中間層30の厚さも、これに限られたものではなく、各情報記録層(ここでは、ROM層20及びRE層40)を分離でき、層間クロストークが問題にならない適度の厚さであれば良い。なお、層間クロストークとは、再生中の情報記録層以外の情報記録層からのノイズを指す。
【0080】
さらに、中間層30は、単層構造であっても多層構造であっても良い。また、この中間層30の、ROM層20側の面には、2P法(photo polymarization法)により、ROM層20に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットが設けられている。
【0081】
ここで、2P法とは、平板と原盤との間に紫外線硬化樹脂を充填し、紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させた後原盤を剥離することによって、平板上に原盤の凹凸を転写する手法を指す。
【0082】
また、ROM層20に設けられているプリピットの記録形式は、オンピット、すなわち、ROM層を再生する場合のプッシュプル信号の極性はポジティブとなっている。
【0083】
なお、プッシュプル信号の極性がポジティブとは、再生信号の受光部が内周と外周に2分割されており、外周側の受光部から得られる電圧から、内周側の受光部から得られる電圧を引くことによってプッシュプル信号が算出される再生機において、プリピットの情報を再生しているトラックから内周にジャンプした場合、図14に示すようにプッシュプル信号のレベルが0、正、0、負、0となる順で得られることを意味する。当業者には一般的な表現である。
【0084】
図14は、再生機がプリピットを再生する際の再生光学系のプッシュプル信号を表し、極性がポジティブであるプッシュプル信号の様子を表す図である。
【0085】
光情報記録媒体1のように、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層40であるコンビネーションディスクの場合、ROM層20に設けられているプリピット21の記録形式は、オンピットにする(ROM層20を再生する場合のプッシュプル信号の極性をポジティブにする)ことにより、コンビネーションディスクにおける再生不良が防止可能になる。
【0086】
なお、これについて、詳細は後述する。
【0087】
RE層(L0層)40は、例えば、スパッタ法等により7層の薄膜が積層されてなるものである。具体的には、この7層の薄膜は、再生光の入射側から、第1保護膜41(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜42(厚さ5nmのZrO2)、記録層43(厚さ10nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜44(厚さ5nmのZrO2)、第4保護膜45(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第5保護膜46(厚さ5nmのZrO2)、及び反射膜47(厚さ20nmのAPC(AgPdCu))が順に積層されている。なお、RE層40の材料、厚さ及び層数は、これに限られるものではなく、RE層として機能するものであれば良い。
【0088】
基板50には、例えば、直径120mm、厚さ1.1mmである、グルーブを有するポリカーボネートの円盤状基板からなる。基板50の材料及び厚さは、これに限られるものではなく、表面にグルーブが設けられており、かつ基板として使用できる程度の所定の強度があれば良い。具体的には、基板50は、例えばポリオレフィン樹脂、金属、ガラス等からなっていても良い。さらに、基板50は、多層構造であっても良い。
【0089】
図2は、光情報記録媒体1の構成の概略を表す平面図である。
【0090】
図3は、光情報記録媒体1に配置されているBCAの一例を表す概略図である。
【0091】
図2に示すように光情報記録媒体1は、通常の情報の記録再生を行うための領域である領域A(コンテンツ記録領域)と、BCAを記録再生するための領域である領域Bとを含む。
【0092】
領域Aは、ユーザが使用するためのコンテンツ情報などの記録再生を行なうための領域であり、記録されている情報を再生する際にトラッキングが必要な情報記録領域である。
【0093】
領域Bは、BCAを記録するためのBCA記録領域であり、光情報記録媒体1の内周側に設けられている。領域Bは、後述するディスクタイプ識別情報及び個体識別番号が記録される情報を再生する際にトラッキングが必須ではない領域である。
【0094】
BCAは、基板50の直上であるL0層に設けられている。
【0095】
BCAは、ROM層20において用いられている情報記録形式より容易に判定可能(検出可能)な方式で記録されている。また、BCAは、ディスクタイプ識別情報及び個体識別番号を含むものである。BCAの一例を図3に示す。図3では、矢印aは長さを表し、矢印bは幅を表す。
【0096】
光情報記録媒体1では、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報は、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層であるL0層に記録されている。
【0097】
このため、上記複数の情報記録層のうち、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報がどの層に記録されているかを、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報を再生する再生装置に、予め設定させておくことが可能となる。これにより、上記複数の情報記録層のうち、上記ディスクタイプ識別情報及び上記個体識別情報が記録されている層を、上記再生装置に特定させるための時間を短縮することができる。さらに、同一の再生装置で、さまざまなディスクタイプの光情報記録媒体の共有化が容易になる。
【0098】
また、上記構成によると、透光層10から最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層である。上記構成によると、L0層としてRE層40が配置されることとなる。
【0099】
このため、L0層としてROM層を配置した場合に生じる、ROM層にBCAを記録する際のRE層と、当該RE層の上層または下層に配される中間層や、透光層などと、が剥離することを防止することができる。このため、L0層にBCA記録された上記ディスクタイプ識別情報や、上記個体識別番号などを、正しく再生装置などに再生させることができる(詳細は後述する)。
【0100】
このように、光情報記録媒体1は、DVDタイプよりも、記録容量アップが図りやすいBD形式の多層ディスクであり、且つコンビネーションディスクにおいては、L0層にユーザが利用する情報記録形式より容易に判定可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号があると共に、RE層40を配置する構成である。
【0101】
上記構造により、光情報記録媒体1の記録再生装置におけるディスクタイプの確認が容易となり、一つの記録再生装置で他の種類の光ディスクと共用化できると共に、ディスクの生産が容易になる。そしてROM層の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層に記録し、置き換えることが可能になるコンビネーションディスクが実現できる。
【0102】
また、RE層への記録不良や、RE層からの信号再生不良を防止でき、更に前述した理由によりROM層からRE層へのレイヤージャンプに失敗した場合においても、記録再生装置が混乱する等の再生不良を防止することができる。
【0103】
なお、本発明の実施の形態に係る光情報記録媒体は上記に限るものではなく、RE層やROM層が更に設けられた3層以上の情報記録媒体であっても良く、その場合は透光層や中間層の厚みが上記と異なっても良い。
【0104】
BCAは、パルスレーザー光が、L0層であるRE層40に照射されることにより、μm単位の幅で長さがμm単位からmm単位のストライプがRE層40に形成される。これにより、BCAがRE層40に形成される。
【0105】
BCAは、μm単位の幅で長さが数百μmのストライプであるので、ROM層20に形成されるプリピットなどより大きい。このため、BCAを再生する再生装置のフォーカスが多少ずれたとしてもトラッキングを行わなくとも上記再生装置で読み取ることが可能である。このため、BCAは、ROM層においてROM層において用いられるプリピットより、容易に判別可能な方式で、L0層であるRE層40に記録される。
【0106】
また、光情報記録媒体1において、領域Bは、領域Aより内周に配置されている。つまり、BCAは、光情報記録媒体1の内周近傍に配置される。このため、BCAを光情報記録媒体1の外周近傍に配置する場合と比較して、光情報記録媒体1に記録するBCAの記録量を少なくすることができる。このため、BCAを光情報記録媒体1に記録するための時間短縮することができる。
【0107】
また、RE層40(書き替え層)のアドレスは、RE層40に設けられたグルーブを基板面方向に蛇行させることによって記録され、ROM層20のアドレスは、ROM層20に設けられた凹凸からなるプリピットにより記録されている。
【0108】
ここで、RE層40には、情報記録時に半径方向に隣接する記録マーク同士が干渉しないように、または精度良く再生するために、通常グルーブが設けられている。よって、アドレス情報を記録するためには、上記書き換え層に設けられたグルーブを、基板面方向に蛇行させることによって記録する(以下、ウォブルと称する)ことが最も容易である。一方、グルーブ上にプリピットを設けたり、グルーブの途中にプリピットを設けたりすることは、作業が複雑になるため作製コストが増大する。
【0109】
同様に、ROM層20には一般に凹凸からなるプリピットにより情報記録されているので、上記と同様の理由により、アドレス情報を記録するためには、記録形式がオンピットのプリピットを設けることにより、作製コストの増大を防止することができる。
【0110】
(従来の問題点)
次に、図4(a)〜(c)を用い、従来のコンビネーションディスクにおけるBCAを記録する際の問題点について、以下に示す2種類の媒体におけるBCA記録結果を用いて説明する。
【0111】
図4(a)は、L0層及びL1層が共に、ROM層である光情報記録媒体の構成を表す概略図であり、(b)はL0層及びL1層が共に、RE層である光情報記録媒体の構成を表す概略図であり、(c)はL0層がRE層であり、L1層がROM層である光情報記録媒体の構成を表す概略図である。つまり図4(c)は光情報記録媒体1の構成を表す。
【0112】
図4(a)に示すように、光情報記録媒体110は、再生光の入射面側から順に、透光層10、ROM層120、中間層30、ROM層140及び基板50が積層された構造となっている。
【0113】
透光層10は、厚さ75μmの紫外線硬化樹脂(再生光波長405nmにおける屈折率1.50)からなる。
【0114】
ROM層120は、厚さ9nmのAPC(AgPdCu)からなる。ROM層120を形成するAPCは、スパッタ法により中間層30の表面に成膜されている。
【0115】
中間層30は、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.50)からなる。また、この中間層30の、ROM層120側の面には、2P法により、ROM層120に形状として記録される情報に応じた凹凸からなるプリピットが設けられている。
【0116】
ROM層140は、厚さ17nmのAPC(AgPdCu)からなる。ROM層140を形成するAPCは、スパッタ法により基板50の表面に成膜されている。
【0117】
基板50には、外径120mm、内径15mm、厚さ1.1mmである、グルーブを有するポリカーボネートの円盤状基板を使用した。
【0118】
図4(b)に示すように、光情報記録媒体200は、再生光入射面側から順に、透光層10、RE層(L1層)220、中間層30、RE層(L0層)240及び基板50が積層された構造となっている。
【0119】
透光層10は、厚さ75μmの紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.50)からなる。
【0120】
RE層(L1層)220は、6層の薄膜からなる。図示しないが、この6層の薄膜は、再生光入射側から、第1保護膜(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜(厚さ5nmのZrO2)、記録層(厚さ6nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜(厚さ5nmのZrO2)、半透明膜(厚さ10nmのAPC(AgPdCu))、及び透過率調整膜(厚さ19nmのTiO2)が順に積層されてなる。
【0121】
中間層30は、厚さ25μmの透明紫外線硬化樹脂(再生光波長における屈折率1.50)からなる。また、この中間層30の、RE層(L1層)220側の面には、2P法によりグルーブが設けられている。
【0122】
RE層(L0層)240は、スパッタ法により7層の薄膜が積層されている。図示しないが具体的には、この7層の薄膜は、再生光入射側から、第1保護膜(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第2保護膜(厚さ5nmのZrO2)、記録層(厚さ10nmのGeTe−Sb2Te3)、第3保護膜(厚さ5nmのZrO2)、第4保護膜(厚さ35nmのZnS−SiO2)、第5保護膜(厚さ5nmのZrO2)、及び反射膜(厚さ20nmのAPC(AgPdCu))が順に積層されている。
【0123】
基板50には、外径120mm、内径15mm、厚さ1.1mmである、グルーブを有するポリカーボネートの円盤状基板を使用した。
【0124】
そして、光情報記録媒体110を用いて、L0層がROM層140である2層媒体におけるL0層へのBCA記録に必要なパワーを測定するため、記録再生装置として、波長808nmのレーザ光を出射可能な半導体レーザを有するBD−RE用BCA記録装置(パルステック社製 ODI−1000)にて、レーザパワーを変更しながら光情報記録媒体110のROM層140にBCA記録をおこなった。
【0125】
しかしながら、上述のBD−RE用BCA記録装置の最大出力である2W(BCA記録時の線速3m/s)においても、光情報記録媒体110のL0層であるROM層140にBCA記録することは出来なかった。
【0126】
次に、上記BD−RE用BCA記録装置を用いて、最大出力である2W(BCA記録時の線速3m/s)で、光情報記録媒体200のL0層であるRE層240へのBCA記録を行い、光情報記録媒体200の表面を目視にて確認した。その結果を図5に示す。
【0127】
図5は、光情報記録媒体200へのBCA記録を行った実験結果の様子を表す説明図である。また、図6は、図5で示す測定箇所で示す矢印に沿って、光情報記録媒体200の表面である透光層10の厚みを測定した結果を表すグラフである。
【0128】
図5の測定箇所を示す矢印は、紙面向かって左側方向が、光情報記録媒体200の内径方向であり、紙面向かって右側方向が光情報記録媒体200の外周方向である。そして、図5では、横軸は光情報記録媒体200上の測定位置を表し、縦軸は光情報記録媒体200表面である透光層10の厚みを表す。
【0129】
また、図5の原点を表す位置は、図6の横軸の測定位置が「0」の位置を表す。そして、図5の測定箇所を表す矢印の内径方向は、図6の測定位置としては負の方向を示す。また、図5の測定箇所を表す矢印の外周方向は、図6の測定位置としては正の方向を示す。
【0130】
図5に示すように、光情報記録媒体200にBCA記録を行ったBCA記録箇所が変色していることが目視によって確認することができた。
【0131】
また、図6に示すように、測定位置が「−1」近傍で、透光層10の厚みが厚くなっていることが分かる。このように、図5、図6の結果から明らかなように、光情報記録媒体200のBCA記録を行った半径位置において、透光層10の厚みが増大している。
【0132】
この増大は、L1層において、RE層220と、透光層10とが剥離したことによって生じたものであると考えられる。
【0133】
また、確認のため、上記半径位置のL0層へ、BD用評価機であるパルステック製ODU−1000にてフォーカスサーチを試みたところ、フォーカスが不可となっていることが判明した。
【0134】
このようにフォーカスが不可となった原因は、上述した透光層10の剥離が、L0層であるRE層240へのフォーカスを阻害していると考えられる。すなわち、透光層10が剥離すると、L0層の情報を再生することは不可能ということになる。
【0135】
よって、L0層がROM層であり、L1層がRE層である2層の光情報記録媒体には、透光層の剥離無しにBCA記録を行うことはできない。このため、L0層がROM層であり、L1層がRE層である2層の光情報記録媒体へは、実質、BCA記録が不可であることになる。
【0136】
加えて、ROM層へのBCA記録は、より多層の光情報記録媒体になれば、より高いレーザパワーにて行う必要があるため、上記結果は、RE層とROM層とが混在するBDタイプのコンビネーションディスクにおいて、他の種類の媒体との共用化を図るために、L0層にBCA記録を行う場合には、L0層はROM層であってはならないことを示している。
【0137】
上記は、ROM層に通常用いられる膜構成を適応した場合についての説明であり、BCAの書き込み可能とする為だけに、L0層のROM層をRE層と同じ膜構成で形成すれば、L0層がROM層であっても、L0層へのBCA記録は可能となる。
【0138】
ただし、ROM層の材料コストが格段に増加してしまうため、現実的ではないと言える。
【0139】
なお、RE層(L1層)220は、2層のBD−REのL1層に一般に用いられている構成である。また、RE層(L1層)220の構成を他の構成としても、光を吸収して発熱する点では大差が無いため、結果は変わらない。
【0140】
すなわち、RE層と、ROM層とが混在するBDタイプのコンビネーションディスクにおいては、L0層は、必ずRE層である必要があることになる。
【0141】
また、図4(c)のように、L0層にRE層40を設け、L1層にROM層20を設けたBDタイプのコンビネーションディスクとして光情報記録媒体1を作製した。そして、L0層であるRE層40にBCA記録を行ったところ、問題なくBCA記録ができることを確認した。つまり、光情報記録媒体1のように、L0層にRE層40を設け、L1層にROM層20を設けることにより、BCA記録を行った箇所の透光層が剥離するなどの問題は生じないことが確認できた。
【0142】
(プリピットの記録形式について)
次に、情報記録層(ROM層、およびRE層)に形成されるプリピットの形式について説明する。
【0143】
図7は、オングルーブ記録形式のRE層を説明する概略図である。図8は、インピット記録形式のROM層を説明する概略図である。図9は、オンピット記録形式のROM層を説明する概略図である。
【0144】
図4(c)に示したような光情報記録媒体1のように、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層40であるコンビネーションディスクの場合、ROM層20に設けられているプリピットの記録形式は、オンピットにする(ROM層20を再生する場合のプッシュプル信号の極性はポジティブになる)ことにより、コンビネーションディスクにおける再生不良が防止可能になる。
【0145】
上記構造により、再生不良が防止できる理由を説明するために、まず、最初に、上記以外の構造においては、再生不良が発生することを説明する。
【0146】
例えば、BD−REの場合、記録膜(RE層40)として先にも述べたもの以外にも、Te、In、Ga、Sb、Se、Pb、Ag、Au、As、Co、Ni、Mo、W、Pd、Ti、Bi、Zn、Si等の材料の少なくとも1種類以上からなる合金等などが幅広く一般的に知られており、すでに多くの材料が公知の技術として存在する。記録膜として形成された材料に記録レーザーを用いて熱を加えることで、結晶/非結晶の状態変化を起こし、そこへ読み込みレーザを照射する事で、記録膜からの結晶/非結晶の状態に伴う、反射率の変化によって、記録された情報を得ることができる。
【0147】
記録されるグルーブ方向に関しては、RE層40のグルーブ48間のピッチが例えば0.32μmのように狭い場合、凸部(グルーブ48上)と凹部(グループ48間)とで記録レーザーの入射光にとって熱的に等価ではなくなり、凹部に記録マーク49を記録する時は、入射光は凸部と凹部の壁を乗り越えて隣の凸部にまで届き、クロスライトの原因になるため、必然的にRE層40では、図7に示すようなグルーブが凸部になる配置(凸部に記録マーク49を配置する構成)であるオングルーブでの記録再生がクロスライトに対して有効な手法であり、必須である。
【0148】
次に、図4(a)に示した光情報記録媒体110の情報記録層の場合について説明する。
【0149】
コンビネーションが、上述した構造ではなく、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、ROM層140である場合、すなわち、基板50の表面の上にROM層140が設けられている場合、ROM層140に設けられるプリピット141の記録形式は、図8に示すようなインピットとなる。インピットは、プリピット141が、再生光の入射側とは反対側に凹形状となっている構成である。
【0150】
なぜならば、基板作製には、一般的に射出成型を用いるが、その場合Niスタンパが必要となる。
【0151】
ここで、一般的な光ディスク生産に用いられる、Niスタンパの作成方法を説明する。最初に、ガラス等を用いた原盤を準備し、原盤上にプライマー処理を施した後に、レジスト塗布及び乾燥の為にベークを行う。
【0152】
その後レジスト原盤の表面をレーザービーム等を用いた露光装置によって露光した後、アルカリ溶液等を用いて現像、レジストが除去されることでピット形状が形成される。この時形成されたピット形状はインピット形状となる。その後ピット形成されたレジスト原盤表面に導電膜処理を施し、電鋳等により複製しNiスタンパが完成するが、この時のピット形状は、現像後のインピット形状から反転し、オンピット形状となる。(図示せず。)
また、例えばBD−ROMのような再生波長405nmで開口数0.85の光学系に対応するような記録密度(1−7PP変調で最短マーク長が約149nmとなるような記録密度)である場合、従来までの低密度用のスタンパようにNiスタンパのコピー(反転複製)を得ることが、極めて困難になる(コピーできた場合、コピー後のNiスタンパ(マザースタンパ)の記録形式は、反転複製されインピットとなる)。
【0153】
なお困難になる理由について以下に説明する。
【0154】
一般的にスタンパのマザースタンパは、最初のNiスタンパ(ファザースタンパ)表面に、酸化皮膜を形成し、酸化皮膜上に電鋳を行う事で得ることが可能となる。
【0155】
高密度記録用スタンパのコピー時には、上記酸化皮膜生成工程において、従来より細かな維持管理が必要となる。なぜならば、酸化皮膜残留物がマザースタンパ上に残ると、再生信号品位の低下に繋がってしまうが、高密度になればなるほど、その影響が大きくなる為である。またファザースタンパ表面には酸化皮膜が形成されるため、信号品位の観点から生産への使用は好ましくない。
【0156】
したがって、実質的にもコスト的にも(マザースタンパを用いることはコスト増を意味する)基板成型の際に用いられるNiスタンパの記録形式はオンピットとなるため、成型された基板に設けられるプリピットの記録形式は、反転複製されるため実質的に必ずインピットとなる。
【0157】
しかしながら、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、ROM層であるコンビネーションディスクにおいては、上記場合には再生時に以下の現象が起こりえる。
【0158】
例えば、図10に示すような、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、ROM層340であり、再生光の入射側にRE層320が配されている光情報記録媒体300の場合について検討する。
【0159】
図10は、L0層がROM層であり、L1層がRE層である光情報記録媒体の構成を表す概略図である。
【0160】
通常、RE層は、情報記録時に、ROM層と同様にアドレスを記録マークにて記録される。よってRE層の情報が記録された領域を再生する場合、オングルーブ記録がなされているとの設定で情報の再生が行われる。
【0161】
次に、ROM層340から上述のようにして情報(記録マーク49)が記録されたRE層320へレイヤージャンプが行われた場合、必ずRE層320にフォーカスされる保証はない。
【0162】
誤ってROM層にフォーカスされてしまった場合であっても、通常のRE層用のトラキング手法であるDPPでROM層においてもトラッキング可能である。このため、オングルーブでの情報記録に対応したプッシュプル信号の極性(ポジティブ)でトラッキングすると、ROM層におけるプリピットの記録形式はインピットであるため(再生するためのプッシュプル信号の極性はネガティブ)、ROM層の再生ができず、どの層にフォーカスされているか判断できず、再生不良を起こしてしまうという問題が生じてしまう。
【0163】
一方、図4(c)に示したように、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層40であるコンビネーションディスク(光情報記録媒体1)の場合、ROM層20は、通常2P法(photo polymarization法)によって形成される。
【0164】
この場合、ROM層20の形成方法には一般的には2種の方法が用いられている。
【0165】
一つは、射出成型を行う場合と同じくNiスタンパを原盤として用いる方法(形成されるROM層20におけるプリピットの記録形式はインピット)であり、もう一つはNiスタンパを用いた射出成型により作製した樹脂基板を原盤として用いる方法(形成されるROM層20におけるプリピットの記録形式は図9に示すようなオンピット)である。両手法には一長一短があり、どちらがより有効であるとはいえない(実際のBD−ROMの生産においても両手法が用いられていることからも明らか)。ここで、オンピット(オンピット形式)は、プリピット21が、再生光の入射側に凸形状となっている構成である。
【0166】
したがって、ROM層20は、別段問題なくオンピットにて形成することが可能になり、その場合、上記で示したような再生不良が生じないことになる。
【0167】
このように、透光層10より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、RE層40であるコンビネーションディスクの場合、ROM層20に設けられているプリピット21の記録形式は、オンピットにする(ROM層20を再生する場合のプッシュプル信号の極性をポジティブにする)ことにより、コンビネーションディスクにおける再生不良が防止可能になる。
【0168】
(トラックパス)
次に、光情報記録媒体1のトラックパスについて説明する。
【0169】
図11(a)(b)はオポジットトラックパスの説明図であり、図11(a)は光入射面から見たL0層のトラックパス方向を表す説明図であり、図11(b)は光入射面から見たL1層のトラックパス方向を表す説明図である。
【0170】
また、図12(a)(b)はパラレルトラックパスの説明図であり、図12(a)は光入射面から見たL0層のトラックパス方向を表す説明図であり、図12(b)は光入射面から見たL1層のトラックパス方向を表す説明図である。
【0171】
図13(a)は、オポジットトラックパスの場合の情報の記録再生の様子を表す説明図であり、図13(b)は、パラレルトラックパスの場合の情報の記録再生の様子を表す説明図である。
【0172】
一般的に、記録型の2層光情報記録媒体では、オポジットトラックパスが採用されている。これは、例えば、大量の情報を連続記録する場合、L0層の内周より記録を始めて、同層の最外周まで記録が終わると、次にはL1層への記録を始めることになるが、その場合、L1層のトラックパス方向が外周から内周に向かうオポジットトラックパスの場合は、ピックアップの半径方向の移動がほとんどない状態で、L1層へレイヤージャンプし、記録を続行することが出来る。
【0173】
一方、パラレルトラックパスの場合は、L0層の内周より記録を始めて、同層の最外周まで記録が終わると、次にはL1層への記録を始めるが、L1層のトラックパス方向は、内周から外周に向かう方向である。パラレルトラックパスの場合は、ピックアップの半径方向へ大きな移動を伴うことになる。このため、一般的に、パラレルトラックパスより、オポジットトラックパスの方が、記録時間を短縮できるためである。
【0174】
また、再生専用の2層光情報記録媒体においても同様のことが言えるため、一般に、再生専用の2層光情報記録媒体においても、オポジットトラックパスが採用されている。
【0175】
ところで、L0層がRE層であり、L1層がROM層であるコンビネーションディスクにおいては、RE層とROM層はパラレルトラックパスであることが望ましい。
【0176】
つまり、光情報記録媒体1は、L0層であるRE層40のトラックパス方向が内周から外周に向かう方向となっており、且つROM層20のトラックパスがパラレルトラックパスとなっている。
【0177】
また、光情報記録媒体1は、ROM層20のリードイン領域(領域B)がコンテンツ等が記録された領域A(図2参照)より内周部に設けられていることが好ましい。
【0178】
なぜならば、光情報記録媒体1は、連続記録時にL1層まで情報を記録することは無く、光情報記録媒体1に記録された情報を再生する際も、前述したROM層20の旧データを、ネット接続できる際に得た更新データをRE層40に記録し、置き換えるような使用を考えた場合、RE層40の補完情報を、ROM層20に記録された情報を再生する際に、適時用いる。このため、元々、光情報記録媒体1は、ROM層20からRE層40へ連続再生する方式は使えない。
【0179】
さらに、ROM層20においては、コンテンツの容量は、ROM層20の最大容量と一致していることはまずありえず、通常、コンテンツの容量は、ROM層20の最大容量より少ない。
【0180】
この場合、L1層のROM層20のトラックパス方向が外周から内周に向かう場合(オポジットトラックパスの場合)、リードイン領域に記録されている情報を再生後、すぐコンテンツ上を再生できるようにするため、ROM層20を再生するための情報を得るためのリードインエリアは、トラックパス方向の最も上流にあるべきである。よって、オポジットトラックパスの場合、ROM層20では、外周部にリードイン領域が設けられ、内周側が空白となることになる。
【0181】
ここで、リードインエリアには、主に、媒体種類情報、再生条件情報、記録条件情報、及びセクター最終番号情報など、光情報記録媒体に関する媒体情報が記録されている。
【0182】
媒体種類情報とは、R,RE,ROM(本実施の形態の場合はROM層とRE層とのコンビネーション)等の種類の情報と層数に関する情報である。再生条件情報とは、推奨再生レーザパワー、線速等の情報である。記録条件情報とは、推奨記録パワー、推奨記録ストラテジ等の情報である。また、セクター最終番号情報とは、ROM層の記録されている領域を示す情報である。
【0183】
ところで、一般に、記録再生装置が、光情報記録媒体のリードイン領域にアクセスする場合、サーボモーターによるピックアップの移動精度の限界により、光情報記録媒体のリードイン領域に半径方向にある程度の幅が無ければ、アクセスすることが出来ない。
【0184】
また、リードイン領域に記録されるべきディスク情報は、多くなく、一周のどの位置から再生が始まったとしても素早く情報が再生できるように、繰り返し記録されている。よって、同じ半径方向の幅のリードイン領域を設ける場合、内周部より外周部のディスク情報の記録の繰り返し数が格段に多くなってしまう。
【0185】
すなわち、同じ容量の情報を記録する際、トラックパス方向が内周から外周に向かうようにスタンパを作成する場合より、外周から内周に向かうようにスタンパを作成する方が、作製時間が大きくなることになる。
【0186】
現在のBD−ROMに用いられているピットの大きさは、非常に小さいため、DVDを作製する為に用いられる露光装置では適応できず、EBR等を用いたカッティングや無機レジストを用いたカッティングが必要になる。
【0187】
EBR(電子線露光)によって、スタンパ製作を行なう場合、電子線を用いて対応するレジストを露光するため、十分な電子線を原盤上に塗布されたレジストに照射する必要がある。このため、カッティングのための線速を非常に遅くする必要があり、例えばBD用25GB容量のROM用スタンパを作製するためには、2日の作業時間が必要となる。このように、EBRによって、スタンパ製作を行なう場合、従来のスタンパ作製に比較にならないほど長時間の作業時間が必要となる。
【0188】
すなわち、トラックパス方向が外周から内周に向かうようにスタンパを作成すると多大な時間がかかり、ROM層の作製のコストが非常に高いものとなる。
【0189】
なお、BDにおいては、線速度一定のフォーマットが用いられている。そのためピットあるいは、グルーブ等を形成するための露光条件も同様な、線速度一定の露光装置を用いている。
【0190】
線速度一定の露光である為、内周と外周では半径位置に合わせ記録時に用いる露光装置の回転速度が変化する事になる。例えば、線速度=4.92m/secで半径位置24mmを露光した場合、1957.6rpmとなり、半径位置58mmでは810rpmとなる。
【0191】
先に述べた、ROM層がL1側のリードインエリアを外周側に設けた場合、内周側に設けた場合と同じ半径領域を必要とすると、リードインエリアの記録時間は速度的な比率から2.4倍以上の記録時間を必要とする計算となる。これは、EBRに比較して作業時間が少ない無機レジストを用いた露光によるスタンパの製造方法においても同じである。
【0192】
一方、多くのL0層のトラックパス方向が内周から外周に向かい、BCAが他の媒体の共用化するために内周に設けられていることから、BCA再生後、すぐRE層へアクセスし情報を記録する場合があることを想定できるので、L0層のトラックパス方向は、内周から外周に向かう方が好ましい。
【0193】
よって、RE層とROM層が混在するBDタイプのコンビネーションディスクにおいてはRE層とROM層とがパラレルトラックパスとなっている方が好ましい。
【0194】
つまり、光情報記録媒体1のように、L0層であるRE層40のトラックパス方向が内周から外周に向かう方向となっており、且つROM層20のトラックパスがパラレルトラックパスとなっていることが好ましい。
【0195】
さらに、RE層とROM層が更に多く混在する場合についても、同様な理由により、複数のROM層の中で透光層から最も遠い位置に設けられているROM層は、光情報記録媒体に設けられた情報記録層の中で透光層から最も遠い位置に設けられているRE層のトラックパス方向とパラレルの関係になっているほうが好ましい。
【0196】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0197】
本発明は、コンビネーションディスクに適用できる。
【符号の説明】
【0198】
1 光情報記録媒体
10 透光層
20 ROM層
21 プリピット
30 中間層
40 RE層(書き換え層)
50 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、
上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に検出可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、
上記読み出すことのみ可能な層には、設けられている情報を再生した場合に得られるプッシュプル信号の極性が、ポジティブになる記録形式にてプリピットが形成されており、
上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれていることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】
上記容易に判定可能な方式は、パルスレーザー光を情報記録層に照射して、μm単位の幅で長さがμm単位からmm単位のストライプを形成し、情報を記録する方式であることを特徴とする請求項1に記載の光情報記録媒体。
【請求項3】
上記ディスクタイプ識別情報、及び上記個体識別番号が記録される半径位置は、情報の再生にトラッキングが必要となる情報記録領域より内周にあることを特徴とする請求項1又は2に記載の光情報記録媒体。
【請求項4】
上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層のトラックパス方向が内周から外周に向かう方向となっており、且つ上記トラックパス方向に対し、上記透光層より最も遠い位置に設けられた上記情報を読み出すことのみ可能な層のトラックパスがパラレルトラックパスとなっていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項5】
上記情報を読み出すことのみ可能な層のリードイン領域がコンテンツ記録領域より内周部に設けられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項6】
上記書き換え層のアドレスは、上記書き換え層に設けられたグルーブを基板面方向に蛇行させることによって記録され、上記情報を読み出すことのみ可能な層のアドレスは、当該情報を読み出すことのみ可能な層に設けられた凹凸からなるプリピットにより記録されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項7】
基板上に、再生光によって情報を読み出すことが可能な複数の情報記録層と、上記複数の情報記録層各々を分離する中間層と、上記基板より最も遠い位置に設けられた透光層とを有し、上記複数の情報記録層は、情報を読み出すことのみ可能な層と情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層からなる光情報記録媒体であって、
上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層が、情報を書き換えることが可能な領域を含む書き換え層であり、且つ光照射によって情報を読み出すことのみ可能な層において用いられている情報記録形式より容易に検出可能な方式で記録されるディスクタイプ識別情報及び個体識別番号の記録層であり、
上記読み出すことのみ可能な層にはオンピット形式により情報が記録されており、
上記透光層表面の構造及び/又は材料が、上記書き換え層を基準に定められた防汚特性及び耐擦傷特性を有するように選ばれていることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項8】
上記容易に判定可能な方式は、パルスレーザー光を情報記録層に照射して、μm単位の幅で長さがμm単位からmm単位のストライプを形成し、情報を記録する方式であることを特徴とする請求項7に記載の光情報記録媒体。
【請求項9】
上記ディスクタイプ識別情報、及び上記個体識別番号が記録される半径位置は、情報の再生にトラッキングが必要となる情報記録領域より内周にあることを特徴とする請求項7又は8に記載の光情報記録媒体。
【請求項10】
上記透光層より最も遠い位置に設けられた情報記録層のトラックパス方向が内周から外周に向かう方向となっており、且つ上記トラックパス方向に対し、上記透光層より最も遠い位置に設けられた上記情報を読み出すことのみ可能な層のトラックパスがパラレルトラックパスとなっていることを特徴とする請求項7乃至9の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項11】
上記情報を読み出すことのみ可能な層のリードイン領域がコンテンツ記録領域より内周部に設けられていることを特徴とする請求項7乃至10の何れか1項に記載の光情報記録媒体。
【請求項12】
上記書き換え層のアドレスは、上記書き換え層に設けられたグルーブを基板面方向に蛇行させることによって記録され、上記情報を読み出すことのみ可能な層のアドレスは、当該情報を読み出すことのみ可能な層に設けられた凹凸からなるプリピットにより記録されていることを特徴とする請求項7乃至11の何れか1項に記載の光情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−40147(P2011−40147A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160515(P2010−160515)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(595047020)メモリーテック株式会社 (17)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】