説明

光拡散性フィルム

【課題】積層体のベースフィルムに好適な光拡散性フィルムを提供する。
【解決手段】下記要件(1)〜(4)を満たす光拡散性フィルム。(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層を有する、(2)前記光拡散層が、少なくとも熱可塑性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなる、(3)前記光拡散層の内部に、微粒子とは独立した気泡を含有する、(4)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を150℃で30分間熱処理した場合の四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散性フィルムに関する。詳しくは、優れた平面性を有する積層体のベースフィルムに適した光拡散性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムを基材フィルムとする光拡散性フィルムは、優れた光透過性、光拡散性、耐薬品性から液晶ディスプレイのバックライト用フィルムとして利用されている。特に、表面が平滑でありながら、光透過性、光拡散性、機械的強度に優れた光拡散性フィルムが提案されている(特許文献1〜2)。このような光拡散フィルムの平滑面に硬化収縮性樹脂組成物からなる各種の機能層を付与することで、複合化した機能を持たせることが可能となる。
【0003】
上記の如き用途の光拡散性フィルムには、通常の包装用途等のフィルムに比べて平面性(平面な台の上に戴置した場合のフラットネス)が良好であることが要求される。殊に、近年の製品の高性能化に伴って、平面性に対する要求が高く、平面性の乱れは品質上の欠陥となる。
【0004】
一方、平面性の良好な空洞含有ポリエステル系フィルムを得ることを目的に、ロール状フィルムから切り出したフィルムのカールと、加熱後のカールを抑えることに関して、特許文献3、4の如く、縦延伸工程での表裏の赤外線の出力の変更および横延伸工程、熱固定工程のフィルムの温度差を設けて実施する方法が記載されている。
【0005】
更に、平面性の良好なフィルムを得ることを目的に、フィルムから切り出したフィルムのカールを加重下で抑えることに関して、特許文献5の如く、フィルム表裏の温度差を縦延伸時に10℃以下とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】

【特許文献1】特開2001−272508号公報
【特許文献2】特開2002−196113号公報
【特許文献3】特開2001−342273号公報
【特許文献4】特開2001−342274号公報
【特許文献5】特開平10−258458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光拡散性フィルムをベースフィルムとして作製された積層体も平面性が良好であることが要求される。平面性の良好な積層体をえるために、上記のように比較的厚手のベースフィルムを用いたり、平面性の優れたベースフィルムを用いることが行われている。また、積層体自体にソリがあったとしても、積層体を部材として組立体を作製する場合は、アセンブリー方法を工夫することで積層体の平面性を調整することが行われている。そのため、従来のベースフィルムであっても問題なく使用することが可能であった。
【0008】
しかしながら、硬化収縮性樹脂組成物を積層した場合、樹脂の硬化に伴う硬化収縮により、僅かではあるが硬化性樹脂層側に微小なソリが生じていることが分かった。そのため、従来は平面性が良好とされていた積層体においても、より大面積化が求められる用途などにおいては、ソリの程度が少ないものが精密性の向上に役立つと考えた。
【0009】
本発明は、光拡散性フィルムに関する。詳しくは、優れた平面性を有する積層体のベースフィルムに適した光拡散性フィルムに関する。例えば、光拡散性フィルムに硬化収縮性の樹脂組成物を積層した際に、硬化収縮性樹脂組成物の硬化収縮が発生しても、ベースフィルムが反対面に収縮性を有するために、全体として反りが均衡し、積層体全体として優れた平面性を備えることが可能なベースフィルムとして好適に使用できる光拡散性フィルムに関する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明の内、第1の発明は、下記要件(1)〜(4)を満たす光拡散性フィルムである。
(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層を有すること
(2)前記光拡散層が、少なくとも熱可塑性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなること
(3)前記光拡散層の内部に、微粒子とは独立した気泡を含有すること
(4)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の片側の面を上にして台紙に載せ、加熱オーブン中で150℃で30分間熱処理した後、台紙ごと前記試料を加熱オーブンより取り出し、前記試料を室温で30分放置した後、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下であること
(なお、加熱後に室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にしてソリの高さを測定する。)

第2の発明は、フィルム断面に観察される前記光拡散層内部の気泡の、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2であることを特徴とする前記光拡散性フィルムである。 第3の発明は、前記光拡散性フィルムの厚みが100μm以上400μm以下である前記光拡散性フィルムである。
第4の発明は、光拡散性樹脂フィルムの全光線透過率が80%以上であり、かつヘーズが60%以上であることを特徴とする前記光拡散性フィルム。
第5の発明は、前記光拡散性フィルムの少なくとも片面に被覆層を有し、前記被覆層の表面に紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂からなるプリズム列、または光拡散層を設けてなることを特徴とする積層体である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光拡散性フィルムは、フィルム単体としても積層体としても平面性が良好である。よって、好ましい実施態様として、本発明のフィルムをベースフィルムとして、ハードコート層やレンズ層などの硬化収縮性樹脂組成物を積層しても、積層体全体としての平面性が良好である。また、好ましい実施態様として、収縮性の異なる、もしくは収縮性を有する素材を、積層、もしくは張り合わせても、積層体全体としての平面性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光拡散性フィルムの基材フィルムであるポリエチレンテレフタレート系フィルムは、エチレングリコールおよびテレフタル酸を主な構成成分とする。本発明の目的を阻害しない範囲であれば、他のジカルボン酸成分およびグリコール成分を共重合させても良い。上記の他のジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシベンゾフェノン、ビス−(4−カルボキシフェニルエタン)、アジピン酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、シクロヘキサン−1、4−ジカルボン酸等が挙げられる。上記の他のグリコール成分としては、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ビスフェノールA等のエチレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。この他、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸成分も利用され得る。
【0013】
本発明の光拡散性フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも片側の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層が積層した構造を有するものであって、さらにその光拡散層の内部に該微粒子とは独立した気泡を含有することを特徴とする光拡散性フィルムである。
【0014】
本発明でいう気泡とは、フィルム内部に含まれる気体の種類、または真空かどうかに拘わらず、フィルム断面を切り出したときに、断面内に観察される空隙のことをいう。また、この断面は走査型電子顕微鏡を用いて観察することができる。本発明では、1,000倍の倍率で観察した際に認識できない空隙は気泡と呼ばない。
【0015】
本発明において、気泡は併存する微粒子とは独立して存在する気泡である。ここでいう独立とは、微粒子と気泡が全く接していないか、またはお互いに外接している状態を示す。独立でない状態とは、気泡の内壁に微粒子が内接している状態、つまり微粒子が気泡で覆われている状態のことを指し、それ以外は独立しているとみなす。
【0016】
本発明において、フィルム断面を切り出したときに観察される気泡の、フィルム面に平行方向の長さをx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2であることが好ましく、x/y<4/3であることがさらに好ましい。xとyの比x/yが3/2以上の気泡が存在していてもよいが、フィルム断面を切り出したときにフィルム面に観察される任意の隣り合う10個の気泡のうち3個以内であることが好ましい。
【0017】
この範囲の形状を有する気泡とすることにより、フィルム面に入射した光の反射を抑えることができ、高光透過性が得られる。
【0018】
本発明の気泡は、光拡散性フィルムにおいて、面内投影面積の総和が全体の30%以下であることが好ましい。ここで面内投影面積とは、フィルムを面方向から眺め、該フィルム面に気泡を投影させたときの面積のことである。例えば、透過型光学顕微鏡で面方向から観察した際に見える気泡の面積のことである。投影した場合、気泡の像が重なりあうことがあるが、重なり分は省略して計算する。高光透過率を得るためには、この総和を30%以内とすることが好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
【0019】
投影面積の計算には、例えば、キーエンス(株)製デジタルマイクロスコープVH−6200を用いて500倍の倍率で観察し、得られた画像を東洋紡績(株)製イメージアナライザーV10などの画像処理機器を用いることで容易に計算することができる。また、このとき、投影した気泡像を画像処理することにより、求めた像面積から円に換算することも可能である。円に換算したときの平均径は1〜50μmが好ましく、より好ましくは5〜40μmである。
【0020】
また、本発明では、フィルム断面の気泡のフィルム面に平行方向の長さxの平均は1〜50μmであることが好ましい。この範囲にすることにより、透過光の黄色化の抑制および反射の抑制による高光透過性が得られる。より好ましくは5〜40μmである。
【0021】
本発明の光拡散層に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプレピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリアミド、ポリエーテル、ポリエステルアミド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルおよびこれらを主たる成分とする共重合体、またはこれら樹脂の混合物等が挙げられる。好ましくは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2、6−ナフタレートまたはこれらを主たる成分とする共重合体や混合物等のポリエステル系樹脂が用いられる。
【0022】
また、本発明で用いられる微粒子としては、例えば、ガラス、シリカ、硫酸バリウム、酸化チタン、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の無機微粒子、またはアクリル樹脂、有機シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、ホルムアルデヒド縮合物、フッ素樹脂等の有機架橋微粒子、またはポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂など各種樹脂を用いた非相溶のポリマー同士をブレンドすることにより生成した樹脂微粒子等を挙げることができる。
【0023】
本発明では、非相溶のポリマー同士をブレンドすることにより生成した樹脂微粒子を好ましく用いることができる。
【0024】
ここで、熱可塑性樹脂は、単体の樹脂、または2種類以上の樹脂の混合物でもよいが、どちらの場合も実質的に非光拡散性であることが好ましい。一方、樹脂微粒子を構成する樹脂は、すべての成分が同一の単体樹脂でもよいし、異なる単体樹脂からなる成分がいくつか存在してもよく、また、混合物であってもよい。
【0025】
光拡散性フィルムの拡散性を向上させるために、熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率は異なることが好ましい。異屈折率とすることにより、界面での光屈折が起こり入射光線が散乱される。熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率差の絶対値は0.012以上0.4以下が好ましく、0.05以上0.4以下がさらに好ましく、0.1以上0.4以下が最も好ましい。また、熱可塑性樹脂および微粒子の屈折率は、ともに1.3〜1.7の範囲で、上記条件を満たすものから選択することができる。
【0026】
また光拡散性は、他にも、微粒子の体積分率や光拡散層の厚さにも依存し、これを向上させるためには、これら体積分率や光拡散層の厚さの値を増加させることで実現できる。さらに言えば、これら条件の選択により任意に拡散性をコントロールできることを表している。
【0027】
微粒子の光拡散層全体に占める体積分率は、50%以下であることが好ましく、10〜40%がさらに好ましい。50%を超えると、光拡散性フィルムの透過率が低下したり、また、樹脂の流動特性が悪くなるなどの影響がでることがある。
【0028】
また、光拡散層の厚さは、作業性等を考慮すると、10〜100μmが好ましく、20〜75μmがより好ましく、30〜50μmがさらに好ましい。
【0029】
また、微粒子の形状は、球状が好ましい。ここでいう球状とは球面体であることであり、必ずしも真球状である必要はないが、形状に異方性がない真球状であるほうが均一な散乱を得るためには好ましい。
【0030】
光拡散層が積層されるポリエチレンテレフタレート系フィルムは、一軸または二軸延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがさらに好ましい。延伸されたフィルムを積層することにより、得られる積層フィルムの曲げ強度と引っ張り強度が向上する。また、延伸フィルムの積層により、表面の平均粗さが小さく、表面が平滑な光拡散性フィルムとすることが可能である。
【0031】
また、延伸フィルムは、実質的に非拡散性であることが好ましい。実質的に非拡散性とは、使用する膜厚において、ヘーズが10%以下であることを示す。
【0032】
また、本発明で用いられる光拡散層を構成する熱可塑性樹脂は、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの原料となる樹脂の融点Tmにおいて流動性を有することを特徴とする。ここでいう流動性を有するとは、熱可塑性樹脂が結晶性の場合、温度Tmは好適には熱可塑性樹脂の融点より高いことを示しており、また熱可塑性樹脂が非晶性の場合、温度Tmは好適には熱可塑性樹脂の熱変形温度より高いことを示している。ここで熱変形温度とは、ASTM D648に準拠し、例えば1.82MPaの荷重で測定される温度のことをいう。
【0033】
本発明の光拡散性フィルムの全光線透過率は、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、最も好ましくは80%以上である。また、本発明の積層光拡散性フィルムのヘーズは、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは91%以上である。ヘーズが80%未満の場合には、平行光の透過率が高くなる傾向にあり、この場合も輝度に斑が生じやすくなる。しかしながら、用途によっては拡散性の弱いフィルムが必要な場合がある。この要望に対しては、熱可塑性樹脂と微粒子の屈折率差、混合比率、光拡散層の厚みあるいは気泡含有量などにより、所望の拡散性にコントロールする。
【0034】
基材として用いるポリエチレンテレフタレート(以下、単にPETという)の重合法としては、テレフタル酸とエチレングリコール、および必要に応じて他のジカルボン酸成分およびジオール成分を直接反応させる直接重合法、およびテレフタル酸のジメチルエステル(必要に応じて他のジカルボン酸のメチルエステルを含む)とエチレングリコール(必要に応じて他のジオール成分を含む)とをエステル交換反応させるエステル交換法等の任意の製造方法が利用され得る。
【0035】
本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、原料であるPETの極限粘度(IV)は、0.45〜0.70dl/gが好ましく、0.55〜0.65dl/gがより好ましい。PET原料の極限粘度が0.45以下であると、回収されて再度押出機を通過した後のPETの重合度が低くなりすぎて、フィルムの延伸性が悪化したり、耐引き裂き性が低下したりするため好ましくない。反対に、極限粘度が0.70dl/gを上回ると、濾圧が大きくなりすぎて高精度濾過が困難となるので好ましくない。なお、樹脂原料のIVは、たとえば、以下のような方法で求められ、[η]として表される。
【0036】
[極限粘度(IV)]
PETの粉砕試料を乾燥後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間、および、溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用いて、Hugginsの定数が0.38であると仮定して算出する。
【0037】
また、本発明のフィルムをPETによって形成する場合には、PET原料の酸価(AV)は、3〜30eq/tの範囲が好ましく、5〜25eq/tであるとより好ましい。酸価が3eq/t以下であると、重合速度が遅くなってしまい、製造効率が低下するので好ましくない。反対に、酸値が30eq/t以上であると、加水分解が進行し易く、重合度の低下を引き起こし易いので好ましくない。なお、樹脂原料の酸価は、たとえば、以下のような方法で求められる。
【0038】
[酸価]
原料を粉砕した後、ベンジルアルコールに溶解し、クロロホルムを加えてから水酸化ナトリウム溶液で中和滴定し、PET1t当たりの水酸化ナトリウムの当量を算出する。
【0039】
本発明の光拡散性フィルムから、製膜の長手方向(縦方向)に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出した場合、下記測定条件により150℃、30分間の熱処理により四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下になることが必要である。
【0040】
加熱後のソリは以下の方法により測定する。
(1)フィルム製膜の長手方向(縦方向もしくは機械方向ともいう)300mm×幅方向210mmの長方形のフィルム試料を切り出す。
(2)前記試料を、片側の面(例えばx面とする)を上にして平面な台紙に乗せ、加熱オーブンの棚板に載せる。ここで、台紙は厚紙、板紙ともいい、1mm程度の厚さのものが好適である。
(3)加熱オーブンを150℃に調整し、30分間、加熱処理を行う。
(4)加熱処理後、台紙ごと前記試料を取り出し、室温で30分放置する。なお、ここでの室温条件は、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された条件であることが望ましい。
(5)30分間放置した前記試料を水平なガラス板(厚さが5mm程度が望ましい)に乗せ、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で、目視により最小目盛りの10分の1まで測定する。全試料について四隅のソリの高さを測定し、四隅のソリの高さの平均を求める。
(6)なお、加熱後室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面(長方形のいずれかの辺)がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にして(前記x面を下にして)ソリの高さを測定する。つまり、本願のソリは加熱後にフィルムにソリが生じた場合の凹面を上にして四隅の高さを測定する。
【0041】
本発明の光拡散性フィルムの上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均は、0.6m以上がより好ましく、0.7mm以上がさらに好ましい。上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均が、0.5mm未満の場合は、硬化収縮性樹脂を積層した場合、樹脂の硬化収縮によりソリに抗しきれず、積層体が全体として硬化樹脂組成層側に反り易くなる。また上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均は、4.0mm以下がより好ましく、3.5mm以下がさらに好ましい。上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均が、5。0mmを超える場合は、硬化収縮性樹脂を積層した場合、樹脂の硬化収縮によりソリ以上に強いソリが生じ、積層体が全体としてベースフィルム側に反り易くなり好ましくない。
【0042】
上記条件で測定した150℃、30分間の熱処理による四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下である場合、片面に硬化収縮性樹脂組成物を積層し、硬化に伴う硬化収縮が生じても、積層体全体としては平面性が保持される。積層体全体としての平面性の許容範囲は、用途にもよるが、例えば、長手方向(縦方向)300mm×幅方向210mmの長方形の積層体の場合、四隅のソリの高さの平均は、0.5mm以下が好ましい。
【0043】
本発明の光拡散性フィルムは、加熱処理前の状態では、平面性が良好であることが望ましい。よって、長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形のフィルム試料を切り出した場合、加熱処理を行わず、四隅のソリの高さを測定した際に、ソリの高さの最大値はフィルム厚み以下であり、四隅のソリの高さの平均値は、フィルムの厚みの20%以下であることが好ましい。
【0044】
加熱処理を行わない場合の、ソリの高さの最大値は、フィルム厚み以下であることが好ましく、フィルム厚みの90%以下であることがより好ましく、80%以下であることがさらに好ましく、50%以下であることが特に好ましい。また、加熱処理を行わない場合のソリの高さの平均は、20%以下であることが好ましい。加熱処理を行わない場合のソリの高さ最大値がフィルム厚み以下、もしくは平均値が20%以下である場合は、硬化性樹脂の塗布などのフィルムの加工時において平面性の歪みが少なく加工精度が良好であるため、歩留まりの点から好ましい。
【0045】
本発明の光拡散性フィルムを構成するフィルムの厚みは、特に限定はされない。しかしながら、積層体のベースフィルムとしては、100μm以上400μm以下の厚みであると好ましい。また、フィルムの厚みは110μm以上がよりに好ましく、120μm以上がさらに好ましい。フィルムの厚みは100μm以上であれば、枚葉での取り扱いが容易となり好ましい。また、フィルムの厚みは、400μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、250μm以下がさらに好ましい。フィルムの厚みが400μm以下であれば、切断加工が容易となり好ましい。
【0046】
また、フィルムに光拡散性以外の機能性を付与するため、3層以上の多層構造を有するポリエチレンテレフタレート系光拡散性フィルムとしても良い。易滑層や易接着層を塗布する面をA層、その光拡散層をB層、これら以外の面をC層とすると、フィルム厚み方向の層構成は、A/B,A/B/A, A/B/C, A/C/B, あるいはA/C/B/C/A等の構成が考えられる。A〜C層の各層は、それぞれ、材質が同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0047】
本発明の光拡散性フィルムの片面、又は両面に後加工工程時の接着性を改良する目的や滑り性を改良する目的で種々のコーティングを製膜時に付与したものでもなんら差し支えがない。
【0048】
硬化性樹脂との接着性を改良のために、本発明のフィルムの少なくとも片面に、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とする被覆層を有することが好ましい。ここで、「主成分」とは被覆層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。本発明の被覆層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報、特許第3900191号公報、特許第4150982号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0049】
被覆層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面または両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な被覆層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られる硬化性樹脂との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に被覆層を設ける場合は、両面の被覆層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
【0050】
被覆層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。微粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。被覆層に含有させる粒子としては、前述した微粒子と同様のものが例示される。
【0051】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【0052】
また、本発明のフィルムを構成する光拡散性フィルムには、フィルム表面の接着性を良好にするためにコロナ処理、コーティング処理や火炎処理等を施したりすることも可能である。
【0053】
また、本発明のフィルムを構成するポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム中には、必要に応じて微粒子を添加することができる。その際に添加する微粒子としては、公知の無機微粒子や有機微粒子を挙げることができる。さらに、フィルムを形成する樹脂の中には、必要に応じて各種の添加剤、たとえば、ワックス類、酸化防止剤、帯電防止剤、結晶核剤、減粘剤、熱安定剤、着色用顔料、着色防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。本発明におけるポリエチレンテレフタレート系樹脂には、微粒子を添加してポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの作業性(滑り性)を良好なものとすることが好ましい。微粒子としては任意のものが選べるが、たとえば無機系微粒子として、シリカ、アルミナ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、硫酸バリウム等を挙げることができる。また、有機系微粒子として、たとえばアクリル系樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン粒子等を挙げることができる。微粒子の平均粒径は、0.05〜2.0μmの範囲内で、必要に応じて適宜選択することができる。
【0054】
なお、上記の粒子の平均粒径の測定は下記方法により行う。
粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で写真を撮り、最も小さい粒子1個の大きさが2〜5mmとなるような倍率で、300〜500個の粒子の最大径(最も離れた2点間の距離)を測定し、その平均値を平均粒径とする。
【0055】
ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムに上記粒子を配合する方法としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂を製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化の段階、もしくはエステル交換反応終了後、重縮合反応開始前の段階でエチレングリコール等に分散させたスラリーとして添加し、重縮合反応を進めても良い。また、ベント付き混練押出し機を用いてエチレングリコールまたは水等に分散させた粒子のスラリーとポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法、または混練押出し機を用いて、乾燥させた粒子とポリエチレンテレフタレート系樹脂原料とをブレンドする方法等によって行うことができる。
【0056】
本発明のソリに対する技術思想は以下の通りである。
(1)硬化収縮性樹脂組成物は、硬化による架橋構造を形成し、硬化前後において体積が10%程度減少する。そのためベースフィルムの片面に硬化性樹脂組成物を積層した場合、樹脂の硬化に伴う硬化収縮により、積層体全体として、硬化性樹脂組成物側が凹部になるようなソリが生じる。
(2)(1)のソリを防止する為に、硬化性樹脂の硬化収縮に抗するように、ベースフィルムに反対側のソリが生じれば、積層体全体としてソリが相殺できると考えた。このため、硬化性樹脂組成物層が無い、ベースフィルム単独では、積層面と反対側にソリが生じることが必要である。
(3)本発明者らはベースフィルムの片側に高温短時間の熱処理を行うと、熱処理面が収縮し、僅かにソリが発生することを確認して本発明の着想を得た。そこから、ベースフィルムにソリを発生させるにはフィルム表裏の熱収縮率が異なると良いと考えた。フィルムの表裏に熱収縮率差がある場合、硬化性樹脂の硬化処理に際して生じる熱により、収縮率の大きい面が凹部になるようなソリが発生する。ただし、加熱により発現するソリは僅かなものであった。しかし、本発明者らは、10%程度の大きな収縮率を有する硬化収縮性樹脂組成物を塗布した場合であっても、ベースフィルムを僅かに反らせるだけで、硬化収縮に抗して積層体全体として平面性が保たれるという驚くべき効果を見出した。
(4)しかも、このベースフィルムは、加工性の点から、加熱処理を施さない状態ではソリがなく実質上平面であり、従来のベースフィルムと同様に使用が出来る必要がある。つまり、本願発明のフィルムは、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するという従来にない特性を有するフィルムである。
【0057】
[本発明のフィルムの製造方法]
<従来の延伸方法の問題点>
これまで、フィルムの平面性を制御する方法として、特許文献3(特開2001−342273号公報)、特許文献4(特開2001−342274号公報)に記載された方法が開示されている。特許文献3、特許文献4では、空洞含有ポリエステル系フィルムの場合、フィルム表裏の構造差に起因するカールを抑制する手段として、「(1)空洞の体積分率を小さくし、且つ各々の空洞サイズを小さく抑制しすることで、内部歪に耐えてカールの発生を抑制する方法、(2)フィルム厚み方向に空洞に分布を持たせる方法、(3)押し出し時の冷却差によるフィルム厚み方向の結晶化度の差に始まる各工程で付与されるフィルム表裏の構造差に起因するカールを制御するために、積極的にフィルム表裏の構造差を発生させ、必然的な構造差と補完しあってカール値をゼロに近づける方法」が記載されている。
【0058】
さらに、「ポリエステル樹脂に非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞をフィルム内部に多数含有する空洞含有ポリエステル系フィルムでは、カールの少ないフィルムを得ることは従来の技術では非常に困難である」が、「通常の透明ポリエステルフィルムでは、巻き癖カールの発生は非常に緩やかであり、問題となることは非常に少ない。」ことが記載されている。
【0059】
しかしながら、特許文献3、4はカールをなくす点に主眼が置かれているのに対し、本発明ではフィルムに潜在的なソリを積極的に付与することを目的とするものである。さらに、特許文献3、4では空洞含有フィルムが前提であるのに対し、本発明では空洞を含有しない透明なポリエチレンテレフタレート系フィルムにおいて潜在的なソリを付与するものである。
【0060】
空洞含有フィルムと、空洞を含有しないポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムとでは熱伝導度が異なる(空洞含有フィルムは熱伝導度小さいが、空洞の無いフィルムにおいては熱伝導度大きい)。よって、空洞を含有しないポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの場合、特許文献3、4の方法では、製造工程中において、潜在的なソリの発現に必要な表裏の温度差を付けることは難い。
【0061】
更に、フィルムに加重を掛けた時にカールが生じないことを目的として、特許文献5(特開平10−258458号公報)に記載された方法により縦延伸工程でのフィルム表裏の温度差を10℃以下に設定する方法が開示されている。
【0062】
特許文献3はカールを生じないフィルムを得ることを目的とするに対し、本発明ではフィルムに、硬化性樹脂の硬化に伴う硬化収縮が生じても、それに均衡しうる潜在的なソリを有するフィルムを得ることを目的とするものである。そのため、加熱による熱収縮を表裏で異なるようにするためには、特許文献5のように、一段延伸では不十分であった。本願発明のフィルムを得るためには、理由は明確ではないが、後述するように多段の延伸が必要であった。
【0063】
本発明者らは、上記した従来の延伸方法が有する問題点を解消すべく、どうすれば、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するフィルムを得ることが出来るか鋭意検討した。その結果、従来の延伸方法とは異なり、フィルムの製造工程において積極的にフィルム表裏における分子配向差を設けることにより、加熱によりソリが発現するフィルムを得ることを見出し、本願発明を完成するに至った。より具体的には、以下のような(1)〜(3)に記載した達成手段を相互に関連させることにより、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するという従来にない特性を有するフィルムを得たのである。さらに、下記(4)の手段を講じることにより、微粒子とは独立した気泡を含有する光拡散層を得ることができ、表面が平滑でありながら、光透過性、光拡散性、輝度特性に優れたフィルムを得ることが可能となり、本発明を案出するに至った。
【0064】
<本発明のフィルムの製造方法の特徴>
(1)未延伸シートの表裏の温度差
本発明のフィルムの製造において、まず溶融した樹脂を口金より押出し、冷却したキャスティングドラムに巻き取ることで急冷固化し、未延伸シートを得る。この際、未延伸シートの厚みは、例えば、100μm以上の厚手のフィルムにおいては、凡そ1000μmかそれ以上になる。未延伸シートの冷却はシート表面から行われるため、キャスティングドラムに接した面(以下、表面(F)と言う)と、その反対面(以下、裏面(B)という)とで冷却効率が異なり、未延伸シートの表裏で温度差が生じる。
【0065】
未延伸シートの厚みにも依存するが、この未延伸シートの表裏の温度差により、フィルムのカールの発現が異なる。表裏の温度差が大きくなると、シート自体がカールし、ロール表面にシート中央部がロールに密着せず、ロール上で接触が不十分となる。これにより、工程内での意図しない個所との接触し、フィルムにキズが発生することとなる。このため、通常、シートの表裏の温度差は大きくし過ぎないようにすることが行われていた。しかしながら、本願発明では、加熱処理によりソリを発現させるためには、シートの表裏で結晶性に差異を設けることにより延伸工程において延伸配向に差異を生じさせて、加熱後のソリの発現を図るものである。この表裏の結晶性に差異を設けるには表裏の温度差が低くてもまた、高くても不可で適当な範囲があると推定した。
【0066】
本願発明者は、上記特性を満たすため、未延伸シートの表裏の温度差とシート全体の温度の適正化について鋭意検討を行った。その結果、キャスティングドラムに続く第二冷却ロール(引き離しロール)の離れ際において、未延伸シートの表面(F)の表面温度をF、裏面(B)の表面温度をBとした場合に、未延伸シート表裏の表面温度差(F−B)は0℃以上33℃以下が望ましいことを見出した。
【0067】
具体的には、第二冷却ロールの出口でシート表裏の表面温度差は5℃以上がより好ましく、8℃以上がさらに好ましく、10℃以上が特に好ましい。またシート表裏の表面温度差は、30℃以下がより好ましく、28℃以下がさらに好ましく、25℃以下が特に好ましい。
【0068】
未延伸シート表裏の表面温度差(F−B)を上記範囲に制御する方法としては、冷却時間や、冷却ロールの温度を適宜制御することが望ましい。冷却されたキャスティングドラムに直接接する表面(F)は、裏面(B)に比較して早く冷却される。よって、1,000μm以上に厚くなると、表面温度差はキャスティングドラムで冷却している間、シート表裏の表面温度差が大きくなる状態が生じる。その後、キャスティングドラムに続く第二冷却ロールがある場合は、第二冷却ロールにより裏面(B)が冷却され、シート表裏の表面温度差が小さくなる。上記のような場合、例えば、冷却エアを用いて裏面を冷却させたり、キャスティングドラム径を小さくすることで早めに第二冷却ロールによる裏面の冷却を行うことにより、シート表裏の表面温度差を制御するのができる。また、冷却に要する時間は、シートの厚みや冷却ロールの速度などに依存するので、適宜、冷却エアの温度、冷却範囲、第二冷却ロールの温度などを調整するのが好ましい。
【0069】
(2)縦延伸における表裏の温度差
本発明のフィルムを得るためには、縦延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設け、フィルム表裏において分子の配向の程度を変えることが望ましい。縦延伸工程においてフィルム表裏の温度差を設けると、表面温度の高い側より表面温度が低い側の方が、配向歪みが残存し、加熱処理により発現する潜在的なソリが生じやすくなる。本発明のフィルムの製造での縦延伸時において、表裏の温度差を設けるために、ロールの温度設定や、非接触の赤外線照射、高速加熱エアによる加熱、その他の加熱または冷却手段を用いることが可能である。
【0070】
さらに、本発明のフィルムを得るためには、表裏の温度差を設けた縦延伸を、多段、少なくとも2段以上で行うことが望ましい。本願の目的とする加熱により発現する潜在的なソリを設けるためには、一段で延伸しても、温度差による効果は少なく、延伸配向が進んだ状態で更に、温度差を設けた延伸を行うことが望ましい。すなわち、表裏で温度差を設けた延伸操作を少なくとも2回繰り返すことで、一段目の処理により表裏の配向が異なった状態を、更に温度差を設けて延伸を行うことにより、硬化収縮に拮抗しうるような十分な配向歪が得られないのではないかと考えている。特に、表裏の温度差を付けて一段で延伸した後に、一旦、冷却し、再度、表裏の温度差を設けた縦延伸を行うことは、効果的に配向歪を設ける点でより好ましい。
【0071】
二段以上の縦延伸を行う場合、延伸倍率や表裏の温度差は、フィルムの厚さに応じて設定するのが望ましい。具体的には、周速差を設けたロール間において赤外線ヒータにより縦延伸を行い、100〜400μmの製品厚みのフィルムを作成する場合は、長手方向(縦方向)に2.0倍以上3.2倍以下の倍率となるように延伸した後に、その縦延伸後のフィルムを、表面温度が冷却されたニップロール間を通過させ、長手方向に1.03倍以上1.5倍以下の倍率となるように二段以上の延伸をすることが好ましい。表裏の温度差については、例えば、125μmの製品厚みのフィルムを作成する場合、一段目については、表裏の温度の平均が70℃以上115℃以下であって、表裏の温度差が0.3℃以上3℃以下となるように調整することが好ましく、二段目については、表裏の温度差が2℃以上5℃以下に調整することが好ましい。表裏の温度の平均が70℃未満では延伸が困難で厚み斑が生じやすくなり、115℃を超えでは表裏の温度差をつけることによる効果が得られにくくなる。また、表裏の温度差が5℃を超えると縦延伸後のシート自体にカールが生じ、ロールに沿わなくなり、キズが生じる原因となる。(なお、縦延伸工程におけるフィルム表裏の温度とはシートを厚み方向に三分割した中央以外の二つをいう。具体的には、伝熱計算により求めることが可能である。)
【0072】
延伸工程においてフィルム表裏に温度差を設けて配向歪みを設ける場合は、延伸変形速度が高い方が適している。そのため、表裏の配向歪を設ける上では、上記のように縦延伸工程の方が、横延伸工程よりも適している。ただし、横延伸工程においても上下に温度差を設け、多段の延伸を行うことでフィルム表裏の配向歪を設けることは可能である。
【0073】
(3)熱固定温度の上下の温度差
本発明おいて、二軸延伸後のフィルムを熱固定する熱固定工程において、フィルムの表裏の温度を0.1℃以上、0.5℃以下の温度差を設けることが好ましい。これは表裏の熱処理の程度に差異を設けることで、実質的に表裏の収縮率を変更することにある。熱固定工程において表裏の温度差を設けるには、例えば、熱固定装置のフィルムを介した上下で温度を変更する、または/そして風速差を設けることで可能となる。フィルムの表裏に上記温度差を設けるためには、熱固定装置の上下の温度差は3℃以上30℃以下が好ましい。3℃未満ではフィルムの温度差を付けるのに上下の風速差が5m/秒を超すこととなり、フィルムに歪み力が働くため、熱収縮率の制御が困難となったり、平面性の不均一が生じたり、厚みが変化する場合があり好ましくない。また、30℃超の温度ではフィルム上下の空気の密度差によりエアバランスの崩れが生じやすく好ましくない。熱固定工程において表裏の温度を実際に測定するのは困難な場合がある。そのため、シュミレーションによる表裏の温度の推定することが可能である。
【0074】
(4)熱固定温度の調整
本発明の光拡散性フィルムは、上記のようにポリエチレンテレフタレート系フィルムの少なくとも片面に光拡散層を積層してなり、その光拡散層の内部に上記気泡を効果的に生成するためには、製膜時において、延伸ゾーンと熱固定ゾーンを連続させずに、間に上記中間ゾーンを設けることが望ましい。ここで中間ゾーンの温度は、常温から延伸温度程度の温度領域が望ましい。さらに、ポリエチレンテレフタレート系フィルムの原料となる樹脂の融点Tmより低く、熱可塑性樹脂が流動性を有する温度で熱固定することが好ましい。これにより、一軸または二軸延伸した結果、微粒子の周囲に生成していた光の反射効率が高く透過率が低い扁平状のボイドが消滅し、それとは別に独立した気泡を生成させることができ好ましい。
【0075】
本発明において、光拡散層中に気泡を含有させることにより、熱可塑性樹脂との屈折率差を大きくとれることから、入射した光線をより広い角度で拡散することができるようになる。このことが示すことは、斜めに入射した光線をより正面方向に屈折する性能に優れるということである。よって、バックライトの出射性能によっては正面輝度が高くなる効果が得られ、輝度が向上するようになり好ましい。
【0076】
本願発明においては、加熱処理前には平面であるにもかかわらず、加熱により顕在化する潜在的なソリを有するフィルムを得るためには、上記達成手段(1)〜(3)を適宜選択、もしくは組み合わせることが望ましい。本発明の表裏の熱収縮率を直接評価するのは困難であるが、上記達成手段により、表裏の熱収縮率と言う物性を微妙にコントロールするという思想が達成できたと考えている。
【0077】
上記に詳述した方法以外、例えば製膜中に片面熱処理を行う加熱ロールを通過させたり、片面冷却反対面を赤外線加熱、熱風加熱など他の方法を用いることも可能と考えられる。更に、二軸延伸後のフィルムを表裏のフィルムの温度をオフラインで変更して熱処理を行って熱処理することにより、表裏の熱収縮率を変更することにより、加熱後のソリを望みの熱収縮率差にすることも可能である。
【0078】
また、上記した(4)の方法を採用することにより、「微粒子とは独立した気泡」を効果的に生成させることが可能となる。なお、上記説明においては、中間ゾーンの設置、熱固定温度の調整による方法を示した。上記説明は、生産レベルにおいて如何に、気泡を含有する本発明のフィルムが得られるか、という技術思想を開示したものであるが、当業者であれば、上記方法と異なった方法でも容易に実施することができ、異なった方法でも本発明のフィルムを得ることができる。すなわち、熱などにより分解して気体を発生する樹脂または気体を含有した樹脂を内部に埋め込み、フィルム化した後に気体を発生させて内部に気泡を生成する方法、所望の形態に樹脂等を分散後に該樹脂が溶解する溶媒で抽出して気泡を生成する方法等により、本発明の如く「微粒子とは独立した気泡」を含有するフィルムを得ることが可能である。
【0079】
本発明における達成手段は上記の通りであるが、上記以外の製造条件、製造工程については後述する態様をとることができる。
【0080】
原料樹脂を溶融押し出しする際には、ポリエチレンテレフタレート系樹脂原料をホッパードライヤー、パドルドライヤー等の乾燥機、または真空乾燥機を用いて乾燥するのが好ましい。そのようにポリエチレンテレフタレート系樹脂原料を乾燥させた後に、押出機を利用して、200〜300℃の温度で溶融しフィルム状に押し出す。かかる押し出しに際しては、Tダイ法、チューブラー法等、既存の任意の方法を採用することができる。
【0081】
本発明のフィルムおいて、上記した縦−横延伸を行う際に、縦延伸倍率を2.5倍以上4.5倍以下に調整するのが好ましい。縦延伸倍率が4.5倍を上回って大きくなると、次の横延伸工程で破断しやすくなる。反対に縦延伸倍率が2.5倍を下回って小さくなると、延伸張力が極端に低下してしまうため、結果的にフィルムの厚みが悪くなり易い。
【0082】
また、本発明では、横延伸工程に引き続き、熱固定処理を行う。熱固定処理工程の温度は180℃以上240℃以下が好ましい。熱固定処理の温度が180℃未満では、熱収縮率の絶対値が大きくなってしまうので好ましくない。反対に、熱固定処理の温度が240℃を超えると、破断の頻度が多くなり好ましくない。なお、好適な熱固定処理方法については、後述する。
【0083】
熱固定処理で把持具のガイドレールを先狭めにして、弛緩処理することは熱収縮率、特に幅方向の熱収縮率の制御に有効である。弛緩処理する温度は熱固定処理温度からポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムのガラス移転温度Tgまでの範囲で選べるが、好ましくは(熱固定処理温度)−10℃〜Tg+10℃である。この幅弛緩率は1〜6%が好ましい。1%未満では効果が少なく、6%を超えるとフィルムの平面性が悪化して好ましくない。
【0084】
上記した方法により製造される本発明のフィルムは、透明性、厚み斑(特に、長手方向の厚み斑)、に優れており、特に硬化収縮性樹脂組成物を塗工するベースフィルムには硬化樹脂が硬化収縮するのでその硬化収縮後の平面性を保つのに好適に使用できる。
【0085】
特に、1枚のフィルムに複数の光学的機能を付与する際に、光拡散性フィルムの少なくとも一方の面に、硬化収縮性樹脂組成物からなるプリズム列、または光拡散層を設けた積層体のように、1枚のフィルムに複数の光学的機能を付与する場合に、本願発明の光拡散性フィルムは好適に使用できる。この場合に用いられる硬化収縮性樹脂組成物としては、紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂が挙げられる。
【0086】
紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂は、アクリレート系官能基を有する樹脂であり、好ましくは、ポリエステルアクリレート、あるいはウレタンアクリレートである。ポリエステルアクリレートは、ポリエステル系ポリオールのオリゴマーのアクリレートまたはメタクリレート(以下、アクリレート及び/またはメタクリレートを、(メタ)アクリレートと記載する場合がある)、あるいはその混合物から構成される。また、ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物からなるオリゴマーを(メタ)アクリレート化したものから構成される。
【0087】
紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂は、紫外線あるいは電子線を照射することにより硬化する。紫外線を照射する場合、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプを用い、100〜400nm、好ましくは、200〜400nmの波長領域で、100〜3000mJ/mのエネルギーで紫外線を照射する。また、電子線を照射する場合、走査型あるいはカーテン型の電子線加速器を用い、加速電圧1000keV以下、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有し、かつ100nm以下の波長領域の電子線を照射する。この際、紫外線あるいは電子線を照射
による発熱により、本願発明のフィルムの潜在的なソリが発現し、全体として平面性の優れた積層体が形成される。
【0088】
プリズム列、または光拡散層の厚さは、0.1〜30μmの範囲で、用途に応じて決めればよい。より好ましくは1〜15μmである。
【0089】
また、本発明の光拡散性フィルムに硬化収縮性樹脂組成物からなるプリズム列、または光拡散層を設ける場合は、密着性を高める為に、予めポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂の少なくとも1種を含む塗布層を設けることも、本発明の望ましい実施形態である。かかる塗布層を設けることで、易接着性を付与し、他の機能層を設けることが容易になる。
【0090】
本発明の光拡散フィルムをベースフィルムとする積層体は、良好な平面性を有する。ここで積層体の平面性は次のように評価することができる。積層体から長手方向に300mm、それと直角な幅方向に210mmの長方形の試料を切り出し、試料を温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で30分以上静置する。そして、フィルム四隅の反りあがりの高さを静置面を基準に垂直方向に測定する。この際、本発明の積層体は、四隅の反りの高さが0.5mm以下であることが好ましい。
【実施例】
【0091】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。なお、フィルム特性の評価方法は以下の通りである。
【0092】
(1)フィルムの平面性1
フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの試料を50枚採取する。この試料を未延伸シート工程で最初に冷却ロールに接した面(表面(F))を上にして、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、水平なガラス板(厚さ5mm)の上に載せてフィルム試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定する。四隅の高さが「0」もしくは、断面がM字状に見える時は反対面を上にしてソリを測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さの平均値と、全試料において測定した四隅のソリの高さの最大値を表示する。
【0093】
(2)フィルムの加熱後のソリ
フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの試料を5枚採取する。この試料を未延伸シート工程で最初に冷却ロールに接した面(表)を上にして150℃に調節した加熱オーブンの棚板の上に台紙(厚さ1mm)の上に載せて入れ30分間熱処理する。その後棚板の上に載せた台紙ごとフィルム試料を加熱オーブンより取り出し、温度23±2℃、湿度65±5%に管理された室内で、30分放置する。30分放置後、フィルム試料を水平なガラス板(厚さ5mm)に移し、フィルムの四隅のソリ(水平面から垂直方向の高さ)の高さをJIS金尺(0.5mm目盛)で測定する。四隅の高さが「0」もしくは、断面がM字状に見える時は反対面を上にしてソリを測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さを平均して表示する。
【0094】
(3)硬化性樹脂積層フィルムの平面性2(フィルムに硬化収縮性樹脂組成物を塗布しての評価)
東亞合成(株)製、M−315を40質量部、三菱レイヨン(株)製、ノナブチレングリコールジメタクリレート(PBOM)を40質量部、新中村化学工業(株)製ウレタンアクリレート(U−2PHA)を20質量部、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製、イルガキュア184を1.2質量部を用いて樹脂組成物を調製した。前記樹脂組成物を、フィルムアプリケータを用いて、加熱によるソリで凸になる側のフィルムの表面(上記(2)フィルムの加熱後のソリの測定において台紙に接する面)に、硬化後厚みが2mmになるように塗布した。ランプ発光長50cm、160W/cmの高圧水銀灯を光源とし、照射量1J/cm(測定機器:(株)オーク製作所製、UV−350)の紫外線を塗布面よりに照射し、前記樹脂組成物を硬化させた。尚、下記測定法により硬化収縮率を測定した場合、前記樹脂組成物は約8.0%の硬化収縮率を示した。こうして得た硬化性樹脂積層フィルムから長手方向300mm×幅方向210mmの大きさにカットした試料を5枚採取した。樹脂組成物面を上にして水平なガラス板(厚さ5mm)の上に置き、JIS金尺(0.5mm目盛)にて四隅のソリの高さ(水平面からの垂直距離)を測定する。全試料において測定した四隅のソリの高さを平均して表示する。
【0095】
硬化物の空気中での重量aおよび水中での重量bを測定し、式(i)より固体比重dsを求め、次に比重瓶を用いて硬化前の硬化性樹脂組成物の液比重dを測定し、上記の固体比重d値とから硬化収縮率s(%)を式(ii)より求めた。
=a/(a−b) (i)
s=(1−d/d)×100 (ii)
【0096】
(4)フィルムの厚み
製膜後のフィルムの厚みは、電子マイクロメーターMILLITRON(精工精密機械販売)を用いて長手方向300mm、それに直角な方向に210mmに切り出したフィルム試料の長手方向に直角な方向に約20mmずつの位置で10回計測し、その平均値を求める。
【0097】
また、実施例および比較例におけるフィルムの製膜条件を表1に示す。
【0098】
【表1】

【0099】
[実施例1]
主押出し機に、ポリエチレンテレフタレート(PET)にイソフタル酸成分を18mol%共重合させたポリエステル樹脂(屈折率:1.61)を90質量%、ポリメチルペンテン(屈折率:1.46)を10質量%混合したチップを供給し、押出機内で280℃の温度で溶融させた。また別に副押出し機に微粒子を含有しないPETを供給して、押出機内で285℃の温度で溶融させ、溶融した樹脂を押出機内でステンレス焼結体の濾材(公称濾過精度:10μm以上の粒子を90%カット)によって濾過した。次いで、溶融した樹脂をT型ダイスより溶融3層共押出しを行ない、静電印可法により鏡面の22℃キャストドラム上で冷却して3層積層シートを作製した。この3層積層シートは、粒子含有PETの両表面を無粒子PETで被覆した構造である。22℃の第二の冷却ロール(引き離しロール)から離れた未延伸シートの表裏の表面温度差(F−B)は、表1に記載のとおりであった。
【0100】
そして、得られた未延伸シートを、加熱されたロール群でフィルム温度を昇温した後、前後に配置した第一ニップロールと第二ニップロールとの間で、ニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第一赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に2.77倍延伸した(一段目の縦延伸)。このとき、第一赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を90%とした。ここで後側の第二ニップロールは冷却をした。
【0101】
しかる後、その縦延伸後のフィルムを、第二ニップロールとその直後に配置した第三ニップロールとの間で、ニップロールの間に設けた赤外線ヒータ(第二赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.17倍延伸した(二段目の縦延伸)。更に、第三ニップロールとその直後に配置した第四ニップロールとの間で、ニップロール間に設けた赤外線ヒータ(第三赤外線ヒータ)によって加熱しながら、長手方向(縦方向)に1.08倍延伸した(三段目の縦延伸)。第二、第三赤外線ヒータにおいて、表の側の赤外線出力を100%とすると、裏側の赤外線の出力を95%とした。なお、赤外線ヒータの出力と表面温度の関係を予めモデル機で測定をしておき、上記の設定により、フィルム表面の温度差が表裏で、第一段目は2℃、第二段目は3℃、第三段目は3℃となるように調節した。
【0102】
上記の如く、未延伸フィルムを縦方向に三段で延伸した後に、テンターに導き、135℃で4倍の横延伸を施した。その後、233℃で熱固定処理を施し、225℃で2.2%の横緩和処理を行った。両縁部を裁断除去してロール状に巻き取ることによって、厚さ125μmで3,300mm幅の二軸延伸フィルムを約3,000mの長さに亘って巻き取った光拡散性フィルムを製造した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0103】
得られた光拡散性フィルムについて、日本工業規格JIS K7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠し、全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製)を用いて全光線透過率とヘーズを測定した。全光線透過率は88%であり、ヘーズは90%であった。
【0104】
次に、フィルム断面を切り出し、走査型電子顕微鏡S−2100A(日立製作所(株)製)を用いて1000倍の倍率で断面観察し、断面に観察される任意の隣り合う気泡10個について、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さyを測定し、平均値について、下記の基準により評価したところ○であった。
○:2/3<x/y<3/2
×:x/y≦2/3、3/2≦x/y
この気泡は、ポリメチルペンテンからなる微粒子とは独立していた。
【0105】
また、13.3インチの直管一灯サイドライト型バックライトの導光板上に、得られた光拡散性フィルムを置き、正面輝度を測定した。導光板のみの正面輝度に対して、200cd/m2以上、輝度が高くなった場合を○、200cd/m2未満であった場合を×、と評価したところ○であった。以上、高光拡散性、高光透過性、高輝度の光拡散性フィルムが得られることがわかった。評価結果を表2に示す。
【0106】
[実施例2]
【0107】
実施例1よりキャスティングドラムに巻き付ける速度を変更し、キャスティングドラムに巻きつける際にエアによる冷却風19℃を用いて冷却固化させ未延伸シートの厚みを3150μmとした。30℃の第二の冷却ロール(引き離しロール)から離れた未延伸シートの表面温度差(F−B)は、表1に記載のとおりであった。そして、得られた未延伸シートを、表1の様に縦延伸し、さらに実施例1と同様に横延伸した。なお、表1中の裏面側の赤外線の出力は、表面側の出力を100とした場合の出力割合(%)として示した。その後、225℃で1.7%の横緩和処理をすることによって、厚さ250μmの光拡散性フィルムを製造した。
【0108】
得られたフィルムの断面を実施例1と同様に観察したところ、気泡はポリメチルペンテンからなる微粒子とは独立していた。
【0109】
[実施例3]
未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを2440μmに変更し、表1の様に縦延伸した以外は実施例1と同様に実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0110】
[実施例4]
ポリエチレンテレフタレート(PET)にイソフタル酸成分を23mol%共重合させたポリエステル樹脂(屈折率1.61)100質量部に、球状で平均粒子径約8μmの架橋アクリル樹脂微粒子(屈折率1.47)20質量部配合したペレットを用い、未延伸シートの引取速度を調整して未延伸シートの厚みを3150μmに変更し、表1の様に縦延伸した以外は実施例1と同様に実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0111】
得られたフィルムの断面を実施例1と同様に観察したところ、フィルム内部にボイドは観察されなかった。
【0112】
[実施例5]
実施例1において、ポリメチルペンテンの代わりに、ポリプレピレン(屈折率:1.49)を用い、実施例2と同様にして得た未延伸フィルムを表1の様に変更した以外は実施例2と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。加熱後のソリは実施例2とは逆になっていた。評価結果を表2に示す。
【0113】
[実施例6]
実施例1と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた赤外線ヒータにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例1と同様にして光拡散性フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0114】
[実施例7]
実施例1において、ポリメチルペンテンの代わりに、ポリプレピレン(屈折率:1.49)を用い、実施例2と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた高速加熱エアにより、表面のみ加熱し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、縦延伸した以外は実施例2と同様にして光拡散性フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0115】
[実施例8]
実施例5と同様にして得た未延伸フィルムを第一ニップロールの直前に設けた高速冷却エアにより、裏面のみ冷却し、表1に記載のようなフィルム表裏の温度差を設けた。しかる後、表1の様に延伸条件を変更した以外は実施例5と同様にして光拡散性フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。加熱後のソリは実施例2とは逆になっていた。評価結果を表2に示す。
【0116】
[比較例1]
実施例1と同様に未延伸シートを得た後、縦延伸の一段目および二段目以降の赤外線ヒータの出力を調整して表裏の出力差が無い様に縦延伸を実施した以外は実施例1と同様にして光拡散性フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0117】
[比較例2]
実施例3と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0118】
[比較例3]
実施例5と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
【0119】
[比較例4]
実施例1において、ポリメチルペンテンの代わりに、ポリプレピレンを用いる以外は、実施例1と同様に未延伸シートを得た後、表1の様に縦延伸を実施した。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
【0120】
[比較例5]
実施例1と同様にして得た未延伸シートを第一ニップロールの直後に設けた赤外線ヒータにより、片面のみ加熱した。しかる後、実施例1の一段目のみ用いて一段で縦延伸した以外は実施例1と同様にして二軸延伸フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。評価結果を表2に示す。
【0121】
[比較例6]
実施例2と同様に得た未延伸シートを表1の様に縦延伸を変更して光拡散性フィルムを得た。そして、得られたフィルムの特性を、上記した各測定方法によって評価した。
【0122】
【表2】

【0123】
平面性1の平均値がフィルムの厚みの20%以下、最大値がフィルムの厚み以下であって、平面性2の平均値が0.5mm以下であるものを合格と判定して「○」とし、一つでも不合格のものは判定で「×」とした。
【0124】
表2から、実施例のフィルムは、いずれも、光透過性、光拡散性に優れ、平面性が良好である上、硬化収縮性樹脂組成物を塗布し、硬化に伴う硬化収縮が起こっても、表裏の熱収縮率の違いに起因して積層体全体としての平面性は極めて良い。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明の光拡散性フィルムは、平面性に優れ、積層体のベースフィルムとして好適である。例えば、レンズフィルム、拡散フィルム、ハードコートフィルム、NIRフィルムなどの各種光学フィルム、タッチパネル、ITOなど積層体のベースフィルムとして好適である。また、硬化性塗剤などを塗布積層する建材用途、硬化性樹脂インキなどを用いる記録材用途、2枚以上のフィルムを張り合わせて用いる張り合わせ部材用途などのベースフィルムとしても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記要件(1)〜(4)を満たす光拡散性フィルム。
(1)二軸延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、内部に光拡散成分を有する光拡散層を有すること
(2)前記光拡散層が、少なくとも熱可塑性樹脂と光拡散成分としての微粒子からなること
(3)前記光拡散層の内部に、微粒子とは独立した気泡を含有すること
(4)フィルムを製膜の長手方向に300mm、それに直角な幅方向に210mmの試料を採取し、前記試料の片側の面を上にして台紙に載せ、加熱オーブン中で150℃で30分間熱処理した後、台紙ごと前記試料を加熱オーブンより取り出し、前記試料を室温で30分放置した後、前記試料の四隅のソリの高さ(水平面から垂直方向の高さ)をJIS金尺(0.5mm目盛)で測定した際に、四隅のソリの高さの平均が0.5mm以上5.0mm以下であること
(なお、加熱後に室温で放置した後の前記試料のソリの高さが0mmであるか、もしくは、前記試料の断面がM字状である場合は、前記試料の上下面を反対にしてソリの高さを測定する。)
【請求項2】
フィルム断面に観察される前記光拡散層内部の気泡の、フィルム面に平行方向の長さx、垂直方向の長さをyとしたとき、xとyの比が2/3<x/y<3/2であることを特徴とする請求項1記載の光拡散性フィルム。
【請求項3】
前記光拡散性フィルムの厚みが100μm以上400μm以下である請求項1または2に記載の光拡散性フィルム。
【請求項4】
光拡散性樹脂フィルムの全光線透過率が80%以上であり、かつヘーズが60%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性フィルムの少なくとも片面に被覆層を有し、前記被覆層の表面に紫外線硬化型または電子線硬化型アクリル系樹脂からなるプリズム列、または光拡散層を設けてなることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2010−249930(P2010−249930A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−96969(P2009−96969)
【出願日】平成21年4月13日(2009.4.13)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】