説明

光拡散性積層樹脂フィルムおよびその製造方法

【課題】樹脂フィルム表面を加工する際に、気泡の侵入等界面の問題が起こりにくく、貼合や塗工等の加工前後の光拡散特性の変化が小さい光拡散性樹脂フィルムおよびその製造方法を提供することである。
【解決手段】重量平均粒子径が1〜20μmである光拡散剤が分散された透明性樹脂からなる樹脂層(A)の少なくとも片面に、透明樹脂層(B)が積層されてなる、厚みが30〜500μmの光拡散性積層樹脂フィルムであって、該樹脂層(A)は、該透明性樹脂100重量部に対して、5〜40重量部の光拡散剤を含有する光拡散性積層樹脂フィルムおよびその製造方法が提供される。透明樹脂層(B)は樹脂層(A)の両面に積層されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性樹脂を基材とする光拡散性積層樹脂フィルムおよびその製造方法に関し、より詳しくは、表面平滑特性に優れる光拡散性積層樹脂フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光拡散特性を有するフィルムは、これを透明基板に貼合して光拡散板とし、照明カバーや照明看板などに応用したり、液晶TV、プロジェクションTV等に光拡散機能やレンズ機能を付与するための部材に適用するなど様々な用途で用いられている。
【0003】
従来、樹脂フィルムへの光拡散特性の付与は、基材となる透明性樹脂中に、特定の粒子径を有し、基材とは異なる屈折率を持つ透明な微粒子を分散させる方法(たとえば、特許文献1)、透明性樹脂基材表面に微粒子をコーティングする方法(たとえば、特許文献2)、樹脂フィルム表面に凹凸を転写する方法(たとえば、特許文献3)などにより行なわれてきた。
【0004】
ここで、光拡散特性を有するフィルムを上記用途等に適用する場合においては、しばしば、当該光拡散性フィルムを、接着剤や粘着剤を用いて他のフィルムや樹脂基板に接合させたり、硬化性樹脂を当該光拡散性フィルム表面に塗布し硬化させることにより、新たな別の機能を付与することが行なわれる。しかし、このような場合において、上記従来の光拡散性フィルムを用いると、光拡散性フィルム表面の凹凸の影響により、界面が不安定になるという問題があった。たとえば、光拡散性フィルムと他のフィルムとを一体化しようとすると、表面凹凸のために界面に気泡が入りやすくなり、また、気泡が入らないように貼合しようとすると積層フィルムが大きく反るなど、非常に加工しにくいという問題があった。さらに、貼合加工時において、粘着成分が光拡散性フィルム表面の凹凸を埋めることにより光拡散性フィルム表面の凹凸が消失する場合があるが、この場合には、加工前後における光拡散特性が大きく変化してしまうこととなり、最終製品の設計にも影響するという問題があった。
【特許文献1】特開平3−237133号公報
【特許文献2】特開平6−59108号公報
【特許文献3】特許第3438771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、樹脂フィルム表面を加工する際に、上記のような界面の問題が起こりにくく、貼合や塗工等の加工前後の光拡散特性の変化が小さい光拡散性樹脂フィルムおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、重量平均粒子径が1〜20μmである光拡散剤が分散された透明性樹脂からなる樹脂層(A)の少なくとも片面に、透明樹脂層(B)が積層されてなる、厚みが30〜500μmの光拡散性積層樹脂フィルムであって、該樹脂層(A)は、該透明性樹脂100重量部に対して、5〜40重量部の光拡散剤を含有する光拡散性積層樹脂フィルムが提供される。透明樹脂層(B)は樹脂層(A)の両面に積層されていてもよい。
【0007】
本発明においては、少なくとも1つの透明樹脂層(B)における、樹脂層(A)側とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、0〜0.5μmであることが好ましい。
【0008】
樹脂層(A)の厚みは、光拡散性積層樹脂フィルムの厚みの50〜95%であることが好ましい。また、樹脂層(A)の透明樹脂層(B)側表面と、透明樹脂層(B)の樹脂層(A)側表面とは接していることが好ましい。
【0009】
透明樹脂層(B)は、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、またはこれらの2種以上の混合樹脂からなることが好ましい。また、上記透明性樹脂は、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、スチレン系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂、またはこれらの2種以上の混合樹脂であることが好ましい。
【0010】
また、本発明によれば、樹脂層(A)および透明樹脂層(B)は、共押出成形により、成形されるとともに、積層一体化されることを特徴とする光拡散性積層樹脂フィルムの製造方法が提供される。本発明の製造方法は、上記光拡散性積層樹脂フィルムを製造するための方法として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、その表面に貼合や塗工などの加工処理を行なっても、不良が少なく光学特性の変化を最小限し得る光拡散性積層樹脂フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の光拡散性積層樹脂フィルムは、光拡散剤が分散された透明性樹脂からなる樹脂層(A)の片面または両面に、透明樹脂層(B)が積層されてなる。樹脂層(A)を構成する透明性樹脂(以下、透明性樹脂(a)と称する)および透明樹脂層(B)を構成する透明性樹脂(以下、透明性樹脂(b)と称する)としては、溶融可能である限り特に制限されず、たとえば、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖低密度ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、セルロースアセテート樹脂、エチレン−ビニルアセテート樹脂、アクリル−アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリル−塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸メチル−スチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等の汎用またはエンジニアリングプラスチックの他に、ポリ塩化ビニル系エラストマー、塩素化ポリエチレン、エチレン−アクリル酸エチル樹脂、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、アイオノマー樹脂、スチレン・ブタジエンブロックポリマー、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエン樹脂、アクリル系ゴム等のゴム状重合体を挙げることができる。これらの2種以上の混合物が用いられてもよい。また、透明性樹脂(a)と透明性樹脂(b)とは同じであっても、異なっていてもよい。なお、本発明において「透明性」とは、両表面が平滑な厚さ1mmのシートとしたときの全光線透過率が85%以上であることを意味する。
【0013】
これらの中でも、光学特性が良好であることから、メタクリル酸メチル系樹脂、スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、および脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂を好ましく用いることができる。
【0014】
メタクリル酸メチル系樹脂とは、メタクリル酸メチル単位を50重量%以上含む重合体である。メタクリル酸メチル単位の含有量は、好ましくは70重量%以上であり、100重量%であってもよい。メタクリル酸メチル単位が100重量%の重合体は、メタクリル酸メチルを単独で重合させて得られるメタクリル酸メチル単独重合体である。
【0015】
メタクリル酸メチル系樹脂は、メタクリル酸メチルと共重合し得る単量体との共重合体であってもよい。メタクリル酸メチルと共重合し得る単量体としては、たとえば、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などの不飽和酸類;クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類;ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのアルキルスチレン類などの置換スチレン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどを挙げることができる。かかる単量体は、それぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0016】
スチレン系樹脂とは、スチレン系単官能単量体単位を50重量%以上含む重合体であって、スチレン系単官能単量体の単独重合体であってもよいし、スチレン系単官能単量体およびこれと共重合可能な単官能単量体の共重合体であってもよい。スチレン系単官能単量体とは、たとえばスチレンのほか、クロロスチレン、ブロモスチレンなどのハロゲン化スチレン類、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等アルキルスチレン類等の置換スチレン等のような、スチレン骨格を有し、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する化合物である。
【0017】
スチレン系単官能単量体と共重合可能な単官能単量体とは、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有し、この二重結合を用いてスチレン系単官能単量体と共重合可能な化合物であり、たとえばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチルなどのアクリル酸エステル類;アクリロニトリルなどが挙げられ、メタクリル酸メチルなどのメタクリル酸エステル類が好ましく用いられる。これらの単官能単量体は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0018】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、通常、二価フェノールとカーボネート前駆体とを界面重縮合法、溶融エステル交換法で反応させて得られたものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法により重合させたもの、または環状カーボネート化合物の開環重合法により重合させて得られるものである。
【0019】
ここで使用される二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテルおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
なかでも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選ばれた少なくとも1種のビスフェノールより得られる単独重合体または共重合体が好ましく、特に、ビスフェノールAの単独重合体および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンとビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびはα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選択される少なくとも1種の二価フェノールとの共重合体が好ましく使用される。
【0021】
カーボネート前駆体としては、カルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0022】
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂の具体例を挙げれば、ノルボルネン系重合体やビニル脂環式炭化水素系重合体などであり、重合体の繰り返し単位中に脂環式構造を含有するのが特徴である。脂環式構造は、主鎖および/または側鎖のいずれに有していても良いが、光透過性の観点からは、主鎖に脂環式構造を含有するものが好ましい。
【0023】
脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂のより具体例な例を挙げれば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素系重合体、およびこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、光透過性の観点から、ノルボルネン系重合体水素添加物、ビニル脂環式炭化水素系重合体およびその水素化物などが好ましく、ノルボルネン系重合体水素添加物がより好ましい。
【0024】
透明性樹脂(a)および透明性樹脂(b)として、上記メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を添加した樹脂組成物や上記スチレン系樹脂にゴム状重合体を添加した樹脂組成物を用いることも好ましい。ゴム状重合体の添加により、フィルム成形時に割れにくくなり、収率を向上させることが可能となる。また、塗工や貼合時にも割れにくいため、取扱いが容易になる利点がある。ゴム状重合体は、透明性樹脂(a)、透明性樹脂(b)のいずれか一方、またはその両方に含有させることができるが、いずれか一方に含有させる場合、光拡散性積層樹脂フィルムの強度と良好な表面状態を維持することを勘案すれば、透明性樹脂(a)に含有させることが好ましい。ゴム状重合体を透明性樹脂(a)および/または透明性樹脂(b)に含有させる場合において、ゴム状重合体の添加量は、メタクリル酸メチル系樹脂またはスチレン系樹脂100重量部に対して、100重量部以下であり、好ましくは3〜50重量部である。ゴム状重合体の添加量がメタクリル酸メチル系樹脂またはスチレン系樹脂100重量部に対して100重量部を超えると、光拡散性積層樹脂フィルムの剛性が低下する傾向にある。
【0025】
ゴム状重合体としては、アクリル系多層構造重合体、およびゴム成分にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させたグラフト共重合体などがある。アクリル系多層構造重合体は、ゴム弾性の層またはエラストマーの層を内在しており、最外層として硬質層を有する多層構造体である。ゴム弾性の層またはエラストマーの層は、たとえば、全体の20〜60重量%とすることができる。アクリル系多層構造重合体は、最内層として硬質層をさらに含む構造であってもよい。
【0026】
ここで、ゴム弾性の層またはエラストマーの層とは、ガラス転移点(Tg)が25℃未満のアクリル系重合体からなる層であり、低級アルキルアクリレート、低級アルキルメタクリレート、低級アルコキシアクリレート、シアノエチルアクリレート、アクリルアミド、ヒドロキシ低級アルキルアクリレート、ヒドロキシ低級アルキルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のモノエチレン性不飽和単量体の1種以上をアリルメタクリレートや前述の多官能単量体で架橋させた重合体からなる。
【0027】
硬質層とは、Tgが25℃以上のアクリル系重合体からなる層であり、炭素数1〜4個のアルキル基を有するアルキルメタクリレートを単独または主成分とし、他のアルキルメタクリレートやアルキルアクリレート、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の共重合可能な単官能単量体の重合体からなり、さらに多官能単量体を加えて重合させた架橋重合体でも構わない。このようなアクリル系重合体としては、たとえば特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報および特開昭49−23292号公報に記載のものを挙げることができる。
【0028】
ゴム成分にエチレン性不飽和単量体をグラフト重合させたグラフト共重合体は、ゴム成分由来の単量体単位を5〜80重量%含有する(したがって、エチレン性不飽和単量体単位を95〜20重量%含有する)ことが好ましい。ゴム成分として、たとえばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合体ゴム、スチレン/ブタジエン共重合体ゴムなどのジエン系ゴム;ポリブチルアクリレート、ポリプロピルアクリレート、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル系ゴム;およびエチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等を用いることができる。ゴム成分として、2種以上の成分を使用してもよい。エチレン性不飽和単量体としては、スチレン、アクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、なかでもアクリロニトリル、アルキル(メタ)アクリレートなどのアクリル系不飽和単量体が好ましく用いられる。かかるグラフト共重合体として、特開昭55−147514号公報や特公昭47−9740号公報に記載のものを用いることができる。
【0029】
透明性樹脂(a)としては、上記のなかでも、透明性が高く、また表面に塗工がしやすいという理由から、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、スチレン系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂を好ましく用いることができる。また、透明性樹脂(b)としては、上記のなかでも、透明性が高く、拡散光が着色しにくいという理由から、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂を好ましく用いることができる。透明性樹脂(a)および透明性樹脂(b)には、これら好ましい樹脂の中から1種の樹脂のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
次に、樹脂層(A)に分散される光拡散剤について説明する。本発明において、光拡散剤には、樹脂層(A)に光拡散機能を付与するために、透明性樹脂(a)と屈折率の異なる無機系または有機系の透明粒子が用いられる。具体例としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム、シリカ、硝子、タルク、マイカ、ホワイトカーボン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の無機粒子、およびこれら無機粒子に脂肪酸等で表面処理を施したものや、架橋または高分子量スチレン系樹脂粒子、架橋または高分子量アクリル系樹脂粒子、架橋シロキサン系樹脂粒子等の樹脂粒子等が挙げられる。なお、ここで言う架橋樹脂粒子とは、アセトン中に溶解させた時のゲル分率が10%以上である粒子のことを、高分子量樹脂粒子とは、重量平均分子量(Mw)が50万〜500万の粒子のことを指している。
【0031】
高分子量スチレン系樹脂粒子とは、スチレン系単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、またはスチレン系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子を意味する。また、架橋スチレン系樹脂粒子とは、スチレン系単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子、またはスチレン系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子のことである。
【0032】
上記スチレン系単量体とは、スチレンおよびその誘導体である。スチレン誘導体としては、クロロスチレン、ブロムスチレンのようなハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレンが挙げられるが、これらに限定されるものではない。スチレン系単量体は二種類以上併用してもよい。
【0033】
上記架橋または高分子量スチレン系樹脂粒子を構成し得るラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体としては、上記スチレン系単量体成分以外であれば特に制限はないが、たとえば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類;およびアクリロニトリルなどが挙げられる。これらの中でも、特にメタクリル酸メチルのごときアルキルメタアクリレート類が好ましい。これら単量体は二種類以上併用してもよい。
【0034】
上記架橋または高分子量スチレン系樹脂粒子を構成し得るラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体としては、共役ジエン以外であって、上記スチレン系単量体および/または上記ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体と共重合可能な重合体であれば特に制限はない。このような単量体としては、たとえば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートのようなアルキルジオールジ(メタ)アクリレート類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートのようなアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレートのような芳香族多官能化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートのような多価アルコールの(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの単量体は二種類以上併用してもよい。
【0035】
また、高分子量アクリル系樹脂粒子とは、アクリル系単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子、またはアクリル系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体を重合して得られる高分子量の樹脂粒子を意味する。また、架橋アクリル系樹脂粒子とは、アクリル系単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子、またはアクリル系単量体単位を50重量%以上含み、ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体とラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体を重合して得られる架橋樹脂粒子のことである。
【0036】
上記アクリル系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸、アクリル酸等がある。これらの単量体は二種以上併用してもよい。
【0037】
上記架橋または高分子量アクリル系樹脂粒子を構成し得るラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体としては、上記アクリル系単量体成分以外であれば特に制限はないが、たとえばスチレンおよびその誘導体を挙げることができる。スチレン誘導体としては、クロロスチレン、ブロムスチレンのようなハロゲン化スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンのようなアルキル置換スチレンなどが挙げられる。これらの中でも特にスチレンが好ましい。なお、これらの単量体は二種類以上併用してもよい。
【0038】
上記架橋または高分子量アクリル系樹脂粒子を構成し得るラジカル重合可能な二重結合を分子内に少なくとも2個有する単量体とは、共役ジエン以外であって、上記アクリル系単量体および/または上記ラジカル重合可能な二重結合を分子内に1個有する単量体と共重合可能な重合体であれば特に制限はなく、先述した単量体を具体例として挙げることができる。
【0039】
架橋または高分子量のスチレン系樹脂粒子およびアクリル系樹脂粒子はともに、上記構成成分を懸濁重合法、ミクロ懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法等の方法により重合することにより得ることができる。
【0040】
架橋シロキサン樹脂粒子を構成する架橋シロキサン系樹脂(架橋シロキサン系重合体)とは、一般的にシリコーンゴム、シリコーンレジンと呼称されるものであり、常温で固体状のものを指す。シロキサン系の重合体は、主にクロロシランの加水分解と縮合によって製造される。たとえば、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、フェニルメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシランに代表されるクロロシラン類を加水分解し縮合することにより、(架橋)シロキサン系重合体を得ることができる。さらに、これらの(架橋)シロキサン系重合体を過酸化ベンゾイル、過酸化−2,4−ジクロルベンゾイル、過酸化−p−クロルベンゾイル、過酸化ジキュミル、過酸化ジ−t−ブチル、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンのごとき過酸化物により架橋させたり、ポリシロキサン化合物の末端にシラノール基を導入し、アルコキシシラン類と縮合架橋させたりすることによっても製造することができる。本発明において好ましく用いられる架橋シロキサン系樹脂としては、珪素原子1個あたりに有機基が2〜3個結合した架橋シロキサン系重合体を挙げることができる。
【0041】
架橋シロキサン系樹脂を粒子状とするには、上記架橋シロキサン系重合体を機械的に微粉砕する方法、特開昭59−68333号公報に記載のごとく特定の線状オルガノシロキサンブロックを含有する硬化性重合体もしくは硬化性重合体組成物を噴霧状態で硬化させて球状粒子を得る方法、および特開昭60−13813号公報に記載のごとく特定のアルキルトリアルコキシシランまたはその部分加水分解縮合物を、アンモニアまたはアミン類の水溶液中で、加水分解・縮合させて球状粒子とする方法等が利用できる。
【0042】
本発明において用いられる光拡散剤の屈折率は、基材となる透明性樹脂(a)との屈折率との差の絶対値Rが0.01〜0.13であることが好ましく、0.01〜0.05であることがより好ましい。Rがこの範囲内にあると、光透過性と光拡散性とのバランスが良くなるためである。したがって、Rがこの範囲内となるように、透明性樹脂(a)および光拡散剤の構成材料の組み合わせを選択することが好ましい。
【0043】
架橋または高分子量スチレン系樹脂粒子の屈折率は、これを構成するスチレン系重合体の構成成分によって変化するが、通常1.53〜1.61程度である。一般的に、フェニル基を有する単量体の含有量が多いほど、またハロゲン化された単量体が多く含まれるほど、屈折率が上がる傾向がある。架橋または高分子量アクリル系樹脂粒子の屈折率は、これを構成するアクリル系重合体の構成成分によって変化するが、通常1.46〜1.55程度である。当該アクリル系樹脂粒子の場合においても、一般的にフェニル基を有する単量体の含有量が多いほど、またハロゲン化された単量体が多く含まれるほど、屈折率が上がる傾向がある。また、架橋シロキサン系樹脂粒子の屈折率は、これを構成する架橋シロキサン系重合体の構成成分によって変化するが、通常1.40〜1.47程度である。一般的に、該架橋シロキサン系重合体中のフェニル基含有量が多くほど、また珪素原子に直結した有機基が多くなるほど、屈折率が上がる傾向がある。
【0044】
本発明において用いられる光拡散剤の粒子径は、その重量平均が1〜20μmであり、なかでも2〜15μmであることが好ましい。重量平均粒子径が1μm未満であると、透けが発生しやすい。また、重量平均粒子径が20μmを超えると、透明樹脂層(B)を積層しても表面平滑性が失われやすい傾向がある。すなわち、重量平均粒子径が20μmを超える光拡散剤を樹脂層(A)に用いると、樹脂層(A)の表面凹凸形状に影響を受けて、積層された透明樹脂層(B)の表面(樹脂層(A)側とは反対側の表面)平滑性が低下し、透明樹脂層(B)の当該表面への貼合や塗工等の加工を適切に行なうことができず、その結果、当該加工による十分な特性付与を行なえない場合がある。
【0045】
樹脂層(A)に含有される光拡散剤の量は、樹脂層(A)の基材である透明性樹脂(a)100重量部に対して、5〜40重量部であり、好ましくは5〜30重量部、さらに好ましくは7〜20重量部である。光拡散剤の量が透明性樹脂(a)100重量部に対して5重量部未満であると、透けが発生しやすくなる。また、光拡散剤の量が透明性樹脂(a)100重量部に対して40重量部を超えると、上記と同様に、透明樹脂層(B)を積層しても表面平滑性が失われやすく、また樹脂層(A)が脆くなり加工しにくくなる傾向がある。
【0046】
透明性樹脂(a)に光拡散剤を分散させる方法としては、一般的な方法を採用することができ、たとえば押出機に透明性樹脂(a)および光拡散剤を加え、溶融混練する方法等を用いることができる。樹脂層(A)には、光拡散剤の他に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、難燃剤、染料、顔料などの着色剤などが添加されてもよい。また、透明樹脂層(B)についても、その透明性や表面平滑性を損なわない限り、樹脂層(A)と同様の添加剤を添加してもよい。
【0047】
本発明の光拡散性積層樹脂フィルムは、上記のような構成の樹脂層(A)の片面または両面に上記透明樹脂層(B)が積層されてなる。好ましくは、透明樹脂層(B)は、樹脂層(A)の両面に積層される。樹脂層(A)の一方の表面に第1の透明樹脂層(B)を積層し、他方の表面に第2の透明樹脂層(B)を積層することにより、樹脂層(A)の他方の表面の凹凸が第2の透明樹脂層(B)によって埋められ、これにより、当該凹凸が一方の表面に積層された第1の透明樹脂層(B)の表面(樹脂層(A)側とは反対側の表面)に影響を及ぼさなくなるため、片面にのみ透明樹脂層(B)を配置する場合よりも透明樹脂層(B)の表面が平滑なフィルムを得ることが可能となる。
【0048】
本発明の光拡散性積層樹脂フィルムは、その厚みが30〜500μmであり、好ましくは、40〜200μm、さらに好ましくは50〜150μmである。厚みが30μm未満であると、透明樹脂層(B)の表面平滑性が失われやすく、500μmを超えると、フィルムとして取り扱うことが困難となる。光拡散性積層樹脂フィルムのうち、樹脂層(A)の厚みが占める割合は、50〜95%とすることが好ましい。樹脂層(A)の厚みをこのような範囲に制御することにより、光拡散層(樹脂層(A))が適度な厚みを持つこととなり、厚みムラによる光学特性のバラツキを小さくすることができる。
【0049】
本発明の光拡散性積層フィルムにおいて、少なくとも1つの透明樹脂層(B)における、樹脂層(A)側とは反対側の表面の、JIS B0601−2001に準拠した算術平均粗さRaは、0〜0.5μmであることが好ましい。透明樹脂層(B)表面の算術平均粗さRaをこの範囲内にすることにより、当該表面の加工性がより良好になるとともに、加工前後における光学特性(特には、光散乱特性)の変化をより低減することができる。透明樹脂層(B)を樹脂層(A)の両面に積層し、両方の透明樹脂層(B)表面のRa値を0〜0.5μmとすることがより好ましい。これにより、光拡散性積層フィルムの両方を有効に活用することができる。なお、上記したように、樹脂層(A)の両面に透明樹脂層(B)を積層させることにより、より容易に算術平均粗さRaを上記範囲内にすることができる。
【0050】
また、少なくとも1つの透明樹脂層(B)における、樹脂層(A)側とは反対側の表面の、JIS B0601−2001に準拠した最大粗さ(Rz)は、0〜2.5μmであることが好ましく、RzのRaに対する比(Rz/Ra)は、1〜5の範囲であることがより好ましい。最大粗さ(Rz)をこのような範囲に設定することにより、凹凸の大きさのバラツキが小さくなり、塗工や貼合によって欠陥が発生するのをより効果的に抑制できる。
【0051】
本発明の光拡散性積層フィルムの製造方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、(1)透明性樹脂(a)に光拡散剤が分散された樹脂フィルム(樹脂層(A)に相当する)と透明樹脂フィルム(透明樹脂層(B)に相当する)とを接着剤または粘着剤を用いて貼合する方法、(2)透明樹脂フィルム上に、透明性樹脂(a)および光拡散剤を含有する樹脂組成物を塗布する方法、および(3)共押出成形法を用いて、樹脂層(A)および透明樹脂層(B)を成形すると同時に、これらを積層一体化させる方法などを挙げることができる。
【0052】
上記(1)の方法によれば、樹脂層(A)と透明樹脂層(B)との間に接着剤層または粘着剤層を有する積層樹脂フィルムが得られる。一方、上記(2)または(3)の方法によれば、樹脂層(A)の透明樹脂層(B)側表面と、透明樹脂層(B)の樹脂層(A)側表面とが接した、すなわち樹脂層(A)表面上に透明樹脂層(B)が直接積層された積層樹脂フィルムが得られる。
【0053】
上記方法のなかでも、透明樹脂層(B)表面の算術平均粗さRaを上記好ましい範囲に容易に制御可能であることから、共押出成形法による方法が好ましく用いられる。共押出成形法においては、樹脂層(A)の構成成分(透明性樹脂(a)、光拡散剤および必要に応じて添加される添加剤)と透明樹脂層(B)の構成成分(透明性樹脂(b)および必要に応じて添加される添加剤)とを、それぞれ別の押出機に投入し、加熱して溶融混練しながら、共押出成形用のダイから押出すことにより、樹脂層(A)および透明樹脂層(B)が成形されるとともに、積層一体化される。押出機としては、一軸押出機、二軸押出機などを用いることができ、ダイとしては、フィードブロックダイ、マルチマニホールドダイなどを用いることができる。共押出成形後、ロールユニットを用いて冷却ロールに挟み込んで冷却することで、光拡散性積層樹脂フィルムを得ることができる。なお、透明樹脂層(B)表面の算術平均粗さRaを上記好ましい範囲とするために、共押出成形後の冷却条件を工夫することが好ましい場合がある。このような冷却条件としては、透明樹脂層(B)のガラス転移温度より10℃以上低く設定した冷却ロールユニットで急速冷却してフィルムを強制固化させる方法、薄い金属スリーブを外膜として内部にゴムや流体を封入した金属弾性ロールを用い、できるだけ長い時間フィルム表面を両面で圧着しながら冷却固化させる方法などを挙げることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
【0055】
[光拡散性積層樹脂フィルムの製造]
(製造例1:ゴム状重合体の製造)
特公昭55−27576号公報の実施例に記載の方法に準拠して、三層構造からなるアクリル系多層重合体を製造した。内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7g、過硫酸ナトリウム0.3gを仕込み、窒素気流下で撹拌後、ペレックスOT−P((株)花王製)4.46g、イオン交換水150g、メチルメタクリレート150gおよびアリルメタクリレート0.3gを仕込んだ。ついで、75℃に昇温し150分間撹拌を続けた。
【0056】
続いて、ブチルアクリレート689g、スチレン162gおよびアリルメタクリレート17gの混合物と過硫酸ナトリウム0.85g、ペレックスOT−P 7.4gとイオン交換水50gとの混合物を、別の入口から90分間にわたり添加し、さらに90分間重合を続けた。重合を完了後、さらに、メチルアクリレート326gおよびエチルアクリレート14gの混合物と過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gとを、別々の口から30分間にわたって添加した。添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5%塩化アルミニウム水溶液に投入して重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してアクリル系多層重合体を得た。
【0057】
<実施例1〜3>
樹脂層(A)の構成材料として、表1に示す種類および量の透明性樹脂、ならびに表1に示す種類および量の光拡散剤を、ヘンシェルミキサーで混合した後、押出機Iにて溶融混練し、フィードブロックに供給した。一方、透明樹脂層(B)の構成材料として、表1に示す種類および量の透明性樹脂を押出機IIにて溶融混練し、フィードブロックに供給した。
【0058】
ついで、樹脂層(A)が中間層となり、透明樹脂層(B)がその両面に積層されるように、表1に示す押出樹脂温度にて共押出成形を行ない、表1に示すロール温度(1番と2番ロールの温度)に設定したロールユニットを介して、厚さ150μm(樹脂層(A)の厚さ:110μm、透明樹脂層(B)の厚さ:それぞれ20μm)の3層からなる光拡散性積層樹脂フィルムを作製した。
【0059】
<実施例4〜7>
樹脂層(A)が中間層となり、透明樹脂層(B)がその片面(上側)に積層されるように、表1に示す押出樹脂温度にて共押出成形を行なったこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ80μm(樹脂層(A)の厚さ:50μm、透明樹脂層(B)の厚さ:30μm)の2層からなる光拡散性積層樹脂フィルムを作製した。
【0060】
<実施例8〜10、比較例1〜2>
表1に示される種類および量の透明性樹脂、光拡散剤を用い、樹脂層(A)および透明樹脂層(B)の厚みをそれぞれ、50μm、15μm(光拡散性積層樹脂フィルムの厚み80μm)としたこと以外は、実施例1と同様にして、3層からなる光拡散性積層樹脂フィルムを作製した。
【0061】
<比較例3>
押出機IIを停止したこと以外は実施例10と同様にして押出形成を行ない、樹脂層(A)のみからなる単層樹脂フィルムを作成した(厚み80μm)。
【0062】
上記実施例および比較例で使用した透明性樹脂(樹脂1〜5)、光拡散剤(光拡散剤1〜7)は次のとおりである。
(1)樹脂1:メタクリル酸メチル/スチレン=60/40(重量比)の共重合体(屈折率1.53)。
(2)樹脂2:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体(屈折率1.49)。
(3)樹脂3:メタクリル酸メチル/スチレン=20/80(重量比)の共重合体(屈折率1.57)。
(4)樹脂4:芳香族ポリカーボネートのみの重合体(屈折率1.60)。
(5)樹脂5:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=96/4(重量比)の共重合体(屈折率1.49)70重量部に対して、上記製造例1のアクリル系多層重合体を30重量部含有させたアクリル系組成物。
(6)光拡散剤1:スチレン/ジビニルベンゼン=95/5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.59、重量平均粒子径6μm)。
(7)光拡散剤2:架橋シロキサン系重合体粒子(東レダウコーニングシリコーン(株)製、トレフィルDY33−719;屈折率1.42、重量平均粒子径2μm)。
(8)光拡散剤3:炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、CUBE30AS;屈折率1.61、重量平均粒子径5μm)。
(9)光拡散剤4:メタクリル酸メチル/エチレングリコールジメタクリレート=99.5/0.5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.49、重量平均粒子径25μm)。
(10)光拡散剤5:メタクリル酸メチル/スチレン/エチレングリコールジメタクリレート=85/10/5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.505、重量平均粒子径8μm)。
(11)光拡散剤6:メタクリル酸メチル/エチレングリコールジメタクリレート=95/5(重量比)の共重合体粒子(屈折率1.49、重量平均粒子径5μm)。
(12)光拡散剤7:中空ガラスビーズ(東芝バロティーニ(株)製、HSC−110;屈折率1.53、重量平均粒子径10μm)。
【0063】
また、使用した押出装置の構成は、次のとおりである。
押出機I:スクリュー径65mm、一軸、ベント付き(東芝機械(株)製)。
押出機II:スクリュー径45mm、一軸、ベント付き(日立造船(株)製)。
フィードブロック:2種3層および2種2層分配(日立造船(株)製)。
ダイ:Tダイ、リップ幅1400mm、リップ間隔1mm(日立造船(株)製)。
ロール:ポリシングロール3本、横型。
【0064】
[光拡散性積層樹脂フィルムの評価]
上記実施例および比較例で得られた光拡散性樹脂フィルムを、以下の方法により評価した。評価結果を表1に示す。
(1)全光線透過率および曇価
光拡散性積層樹脂フィルムの全光線透過率を、JIS K−7361に準拠して、透過・反射率計((株)村上色彩技術研究所製 HR−100)にて測定した。また、下記貼合評価試験における、フィルム貼合前後の光拡散性積層樹脂フィルムの曇価(積層樹脂フィルム全体)を、JIS K−7136に準拠して同装置にて測定した。
(2)算術平均粗さ(Ra)および最大粗さ(Rz
JIS B0601−2001に準拠して、表面粗さ形状測定機((株)ミツトヨ製サーフテストSJ−201)により、光拡散性樹脂フィルムが有する透明樹脂層(B)表面の算術平均粗さ(Ra)および最大粗さ(Rz)を、カットオフ値0.8mm、基準長さ0.8mm、区間数5でそれぞれ測定した。表1に示される値は、両面に透明樹脂層(B)が積層されている場合については、その平均値である。また、比較例3については、樹脂層(A)の表面についての値である。
(3)貼合評価試験
市販のフィルム貼合用の保護マスキング付き粘着材(保護マスキング:粘着材:保護マスキング=40μm:10μm:50μm)の40μm側の保護マスキングを剥離し、光拡散性樹脂フィルムが有する透明樹脂層(B)の表面(比較例3においては、樹脂層(A)表面)上に設置して、ゴムローラーにて押し付け貼合した。その状態で50μm側の保護フィルムを剥離後、密着状態を確認し、以下の通り評価を行なった。
○ 気泡が確認されなかったもの
△ わずかに気泡が確認されたもの
× 気泡が多数確認されたもの
【0065】
【表1】

【0066】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均粒子径が1〜20μmである光拡散剤が分散された透明性樹脂からなる樹脂層(A)の少なくとも片面に、透明樹脂層(B)が積層されてなる、厚みが30〜500μmの光拡散性積層樹脂フィルムであって、
前記樹脂層(A)は、前記透明性樹脂100重量部に対して、5〜40重量部の光拡散剤を含有する光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項2】
前記樹脂層(A)の両面に透明樹脂層(B)が積層されてなる請求項1に記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項3】
少なくとも1つの透明樹脂層(B)における、前記樹脂層(A)側とは反対側の表面の算術平均粗さRaは、0〜0.5μmである請求項1または2に記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項4】
前記樹脂層(A)の厚みは、光拡散性積層樹脂フィルムの厚みの50〜95%である請求項1〜3のいずれかに記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項5】
前記樹脂層(A)の前記透明樹脂層(B)側表面と、前記透明樹脂層(B)の前記樹脂層(A)側表面とは接している請求項1〜4のいずれかに記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項6】
前記透明樹脂層(B)は、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂、またはこれらの2種以上の混合樹脂からなる請求項1〜5のいずれかに記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項7】
前記透明性樹脂は、メタクリル酸メチル系樹脂、メタクリル酸メチル系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、スチレン系樹脂、スチレン系樹脂にゴム状重合体を含有させた樹脂組成物、芳香族ポリカーボネート樹脂、またはこれらの2種以上の混合樹脂である請求項1〜6のいずれかに記載の光拡散性積層樹脂フィルム。
【請求項8】
前記樹脂層(A)および前記透明樹脂層(B)は、共押出成形により、成形されるとともに、積層一体化される請求項1〜7のいずれかに記載の光拡散性積層樹脂フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2009−98557(P2009−98557A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272216(P2007−272216)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】