説明

光拡散板

【課題】軽量で、壊れにくく、吸湿や熱により変形しない光拡散板を提供する。
【解決手段】光拡散板1は、プロピレン単位含有量が98質量%以上であるプロピレン重合体中に光拡散剤が分散されてなる。光拡散板1は、その背面側に配置された光源5を備えたバックライト装置4に用いられる。このバックライト装置4は、液晶セル3を備え、液晶セル3と光源5との間に光拡散板1が位置する直下型液晶ディスプレイ装置2に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光拡散板に関し、詳しくは直下型液晶ディスプレイ装置を構成するバックライト装置に好適に組み込まれて用いられる光拡散板に関する。
【背景技術】
【0002】
直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、例えば図1に示すように、液晶セル(3)およびその直下に配置されたバックライト装置(4)とを備えたディスプレイ装置であって、バックライト装置(4)としては、例えば光拡散板(1)およびその背面側に冷陰極線管などの光源(5)を配置したものが広く用いられている〔特許文献1:特開2004−170937号公報〕。
【0003】
かかる光拡散板(1)としては、軽量であること、壊れにくいこと、吸湿や光源からの熱により変形しないことが求められている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−170937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明者は、軽量で、壊れにくく、吸湿や熱により変形しない光拡散板を開発する
べく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、プロピレン単位含有量が98質量%以上であるプロピレン重合体中に
光拡散剤が分散されてなる光拡散板(1)を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の光拡散板は、プロプレン重合体中に光拡散剤が分散されてなるものであるので、
軽量であり、機械的強度に優れていて壊れにくく、耐湿性および耐熱性に優れていて吸湿
や光源からの熱により変形することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の光拡散板(1)を構成するプロピレン重合体は、プロピレン単位含有量98質量%
以上のものであり、プロピレンを単独で重合させて得られるホモポリプロピレンであって
もよいし、プロピレンおよびこれと共重合しうる共重合成分の共重合体であってもよい。
共重合成分としては、例えばエチレン、1−ブテンなどのα−オレフィンなどが挙げられ
る。
【0009】
光拡散剤とは、プロピレン重合体と屈折率が異なる粒子であって、光拡散板(1)を透過す
る光を拡散しうるものであり、例えば無機ガラス粒子、ガラスファイバー、シリカ粒子、
水酸化アルミニウム粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、酸化チタン粒子、タ
ルクなどの無機粒子であってもよいし、スチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、
シロキサン系重合体粒子などの有機粒子であってもよい。
【0010】
光拡散剤の粒子径は、重量平均粒子径で通常0.5μm以上、好ましくは0.7μm以上
であり、通常25μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下で
ある。
【0011】
本発明の光拡散板(1)における光拡散剤の含有量はプロピレン重合体100質量部あたり
通常0.1質量部〜20質量部である。
【0012】
本発明の光拡散板(1)は、プロピレン重合体中に造核剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定剤、蛍光増白剤、加工安定剤などの添加剤を含有していてもよい。
【0013】
造核剤としては、ソルビトール系造核剤、有機リン酸塩系造核剤、カルボン酸の金属塩造核剤、ロジン系造核剤などのような、プロピレン重合体と相溶性のものが使用できる。
【0014】
ソルビトール系造核剤としては、例えばジベンジリデンソルビトール、1.3,2.4−ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(ブチルベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(メトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3,2.4−ジ(エトキシベンジリデン)ソルビトール、1.3−クロルベンジリデン−2.4−メチルベンジリデンソルビトール、モノ(メチル)ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトールなどが挙げられ、市販されているものとしては、例えばMilliken社から販売されている「Millad3988」、三井化学社から販売されている「NC−4」、新日本理化社販売されている「Gel All−MD」などが挙げられる。
【0015】
有機リン酸塩系造核剤としては、例えばビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、ビス(4−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸リチウム塩、2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、2,2’−メチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸ナトリウム塩、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸塩リチウム、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)リン酸アルミニウム塩、ビス−(4−t−ブチルフェニル)リン酸カルシウム塩などが挙げられ、市販されているものとしては、例えばADEKA社から販売されている「アデカスタブNA−11」、「アデカスタブNA−21」などが挙げられる。
【0016】
カルボン酸の金属塩造核剤としては、例えば安息香酸アルミニウム、
安息香酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸アルミニウム、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸チタン、ジ−パラ−t−ブチル安息香酸クロム、ヒドロキシ−ジ−t−ブチル安息香酸アルミニウム、アルミニウム−p−ブチルベンゾエート、β−ナフトエ酸ナトリウム、シクロヘキサンカルボン酸ナトリウム、
シクロペンタンカルボン酸ナトリウム、アジピン酸アルミニウム、セバシン酸ナトリウム、セバシン酸カリウム、セバシン酸アルミニウムなどが挙げられ、市販されているものとしては、例えばジャパンケムテック(株)から販売されている「AL−PTBBA」などが挙げられる。
【0017】
ロジン系造核剤としては、ロジン酸金属塩が挙げられ、ロジン酸金属塩としては、例えばロジン酸ナトリウム塩、ロジン酸カリウム塩、ロジン酸マグネシウム塩などが挙げられ、市販されているものとしては、例えば荒川化学工業(株)から販売されている「パインクリスタル KM―1300」、「パインクリスタル KM―1500」、「パインクリスタル KR―50M」などが挙げられる。
【0018】
造核剤の添加量は、プロピレン重合体100質量部当たり、通常は0.05〜1.0質量部である。
【0019】
本発明の光拡散板(1)の厚みは通常1mm〜3mmである。また本発明の光拡散板(1)の大
きさは、目的とするバックライト装置(4)や直下型液晶ディスプレイ装置(2)に応じて適宜
選択されるが、20型(縦30cm、横40cm)以上の比較的大きな面積に好適である

【0020】
本発明の光拡散板(1)は、例えばプロピレン重合体および光拡散剤を溶融混練したのち、押出成形する押出成形法、射出成形する射出成形法、熱プレスする熱プレス法などの通常の成形方法により成形することで製造することができる。
【0021】
光拡散剤として造核作用のないものを使用した場合や、造核作用のある光拡散剤を使用した場合であっても、その使用量が少ない場合に、押出成形法により本発明の光拡散板(1)を製造するときには、ポリプロピレン重合体および光拡散剤を造核剤と共に溶融混練したのちに押出成形することで、表面に白点のない光拡散板(1)を容易に製造することができて好ましい。
【0022】
造核作用のない光拡散剤としては、例えばスチレン系重合体粒子、アクリル系重合体粒子、シロキサン系重合体粒子などの有機粒子などの有機粒子、無機ガラス粒子、ガラスファイバー、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルクなどの無機粒子などが挙げられる。
【0023】
本発明の光拡散板(1)は、その片面または両面に表面層を積層して使用することもできる
が、本発明の光拡散板(1)の表面は比較的高い表面硬度を示すので、表面層を積層するこ
となく使用しても、傷が付きにくい。
【0024】
本発明の光拡散板(1)は吸湿や熱による変形が少ないので、例えば図1に示すようなバッ
クライト装置(4)を構成する光拡散板(1)として好ましく用いられる。図1に示すバックラ
イト装置(4)は、光拡散板(1)および光源(5)を備えている。光源(5)は、光拡散板(1)の背
面側に配置されている。光源(5)として通常は冷陰極線管が用いられる。
【0025】
かかるバックライト装置(4)は、例えば図1に示すような直下型液晶ディスプレイ装置(2)
に好適に用いられる。この直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、上記バックライト装置(4)
および液晶セル(3)を備えている。液晶セル(3)はカラー画像を表示可能なものが好ましい
。この直下型液晶ディスプレイ装置(2)は、液晶セル(3)と光源(5)との間に光拡散板(1)が
位置する。そして、この光拡散板(1)として本発明の光拡散板(11)を用いることにより、
光源(5)を点灯させても、その発熱により光拡散板(1)が変形しない。
【実施例】
【0026】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例によって
限定されるものではない。
【0027】
なお、各実施例における評価方法は以下のとおりである。
(1)全光線透過率、拡散光透過率、ヘーズ
全光線透過率は、JIS K 7361に、拡散光透過率およびヘーズ(曇価)はJIS
K 7136に、それぞれ従って測定した。
(2)分光透過率(黄色度YI、色度xおよび色度y)
積分球を備えた自記分光光度計〔日立製作所社製「UV−4000」〕を用いて測定した
380nm〜780nmの波長範囲の分光透過率から黄色度YI、色度xおよび色度yを
求めた。
(3)吸水率
以下の2方法により吸水率1および吸水率2を求めた。
(3−1)吸水率1
得られた光拡散板を150mm×150mmのサイズに切り出してサンプルとし、80℃
のオーブン中で4日間保持して乾燥させた後、その質量を測定し乾燥質量(W0)とした
。その後、60℃×95℃の恒温恒湿機で4日間放置した後、直ちに質量を測定し、その
質量をW1とし、式(1)
吸水率1=(W1−W0)/W0×100(%)・・・(1)
により吸水率1を算出した。
(3−2)吸水率2
上記と同様にして切り出したサンプルを上記と同様にして乾燥させ、乾燥質量(W0)を
測定したのち、23℃の水中に24時間浸漬したのち、直ちに質量を測定し、その質量を
2とし、式(2)
吸水率2=(W2−W0)/W0×100(%)・・・(2)
により吸水率2を算出した。
(4)加熱自重撓み試験
得られた光拡散板を、押出方向(MD方向)が長辺(150mm)となり、これと直行す
る方向(TD方向)が短辺となるように、150mm×25mmの矩形状に切り出してサ
ンプルとした。このサンプルの一方端を、該一方端から20mmの範囲で水平に固定し、
他方端を自由状態とし、雰囲気温度を90℃または95℃として、一方端と他方端との高
低差を2時間後、4時間後、24時間後、48時間後および72時間後にそれぞれ測定し
た。
(5)鉛筆硬度測定
JIS K 5600に従って鉛筆硬度を測定した。
(6)引張試験
JIS K 7113に従って引張り破壊強度を測定した。
(7)曲げ試験
JIS K 7203に従って曲げ剛性度を測定した。
(8)荷重たわみ温度
押出成形直後の光拡散板と、80℃16時間のアニール処理後の光拡散板について、それ
ぞれJIS K7207に従って測定した。
(9)ビカット軟化点(VSP)
押出成形直後の光拡散板と、80℃16時間のアニール処理後の光拡散板について、それ
ぞれJIS K7206に従って測定した。
(10)白点の有無
得られた光拡散板について、表面の白点の有無を目視により観察して、有無を評価した。
【0028】
実施例1
市販のプロピレン−エチレン共重合体〔住友化学社製「D101」、プロピレン単位含有
量99質量%以上、エチレン単位含有量1質量%以下〕100質量部および光拡散剤〔シ
ロキサン系重合体粒子、東レ・ダウコーニング社製「DY33−719」〕2.2質量部
をドライブレンドしたのち、スクリュー径40mmの押出機に供給して210〜250℃
で溶融混練し、フィードブロックおよびTダイを経由してTダイ温度245〜260℃で
押出成形を行って、厚み2mm、幅約220mmの光拡散板を得た。この光拡散板の表面には、直径約0.5mmの白点が多数観察された。この光拡散板の評価結果を第1表に示す。
【0029】
実施例2
実施例1で用いたと同じポリプロピレン樹脂〔D101〕100質量部および光拡散剤〔
DY33−719〕2.2質量部と、造核剤〔Milliken社製「Millad3988」、1,3:2,4−ビス−O−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビト
ール〕0.3質量部をドライブレンドした以外は、実施例1と同様に操作して光拡散板を
得た。この光拡散板の表面には、目視では、白点が観察されなかった。評価結果を第1表に示す。
【0030】
比較例1
実施例1で用いたポリプロピレン樹脂〔D101〕に代えて市販のプロピレン−エチレン
共重合体〔住友化学社製「S131」、プロピレン単位含有量96質量%、エチレン単位
含有量4質量%〕100質量部を用いた以外は実施例1と同様に操作して光拡散板を得た
。この光拡散板の表面には、直径約0.5mmの白点が多数観察された。評価結果を第1表に示す。





































【0031】
第 1 表
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 実施例2 比較例1
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
プロピレン重合体(質量部) 100 100 100
プロピレン単位(質量%) ≧99 ≧99 96
光拡散剤 (質量部) 2.2 2.2 2.2
造核剤 (質量部) 0 0.3 0
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
全光線透過率 (%) 53.9 57.3 56.9
拡散光線透過率 (%) 53.4 56.9 56.4
ヘイズ (%) 99.1 99.3 99.1
─────────────────────────────
黄色度YI 1.28 0.25 1.30
色度x 0.3112 0.3102 0.3114
色度y 0.3168 0.3159 0.3165
─────────────────────────────
吸水率1 (%) 0.005 0.003 0.006
吸水率2 (%) 0.007 0.006 0.011
─────────────────────────────
加熱自重撓み試験(mm)
90℃ 初期(0時間) 0.0 0.0 0.0
2時間後 2.9 2.4 4.4
4時間後 3.1 2.5 4.5
24時間後 3.4 2.6 4.6
48時間後 3.5 2.6 4.7
78時間後 3.5 2.6 4.7
95℃ 初期(0時間) 0.0 0.0 0.0
2時間後 3.1 2.4 5.0
4時間後 3.2 2.5 5.0
24時間後 3.5 2.5 5.1
48時間後 3.6 2.6 5.1
72時間後 3.7 2.6 5.1
─────────────────────────────
鉛筆硬度 B B 5B未満
─────────────────────────────
引張り破壊強度 (MPa) 2906 3295 1666
─────────────────────────────
曲げ剛性度 (MPa) 1589 1894 677
荷重たわみ温度 (℃)
アニール処理前 70 73 53
アニール処理後 81 76 58
─────────────────────────────
ビカット軟化点(℃)
アニール処理前 156 155 113
アニール処理後(80℃16hr) 156 154 114
白点の発生 あり なし あり
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】直下型液晶ディスプレイ装置およびバックライト装置の一例を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1:光拡散板 2:直下型液晶ディスプレイ装置 3:液晶セル
4:バックライト装置 5:光源(冷陰極線管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン単位含有量が98質量%以上であるプロピレン重合体中に光拡散剤が分散されてなる光拡散板。
【請求項2】
プロピレン重合体中に造核剤が含有されてなる請求項1に記載の光拡散板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の光拡散板および該光拡散板の背面側に配置された光源を備えたバックライト装置。
【請求項4】
請求項3に記載のバックライト装置および液晶セルを備え、該液晶セルと前記光源との間に前記光拡散板が位置する直下型液晶ディスプレイ装置。
【請求項5】
前記プロピレン重合体および光拡散剤を溶融混練したのち押出成形することを特徴とする請求項1に記載の光拡散板の製造方法。
【請求項6】
前記プロピレン重合体および光拡散剤を造核剤と共に溶融混練したのち押出成形する請求項5に記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−83660(P2008−83660A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306324(P2006−306324)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】