説明

光接続部材

【課題】光コネクタの接続を外した状態、または、光コネクタの接続を外すことなく光通信状態のいずれにおいても、心線対照を容易に行うことが可能な光コネクタを提供する。
【解決手段】光信号伝送に用いられる光ファイバ同士を着脱可能に接続する光接続部材(光コネクタ,接続アダプタ)で、フェルール22に光ファイバ21aが装着された状態で、該光ファイバに可視光を漏洩させるスリット27を設け、光ファイバ21内に入力された可視光の一部を外部に放光させる光導出機構26を備える。スリット27の幅は、10μm〜40μmとするのが望ましい。光導出機構26の機能は、光コネクタ20または光コネクタ同士を接続する光接続アダプタのいずれかに備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配線網を形成する光配線盤等で、多数の光ファイバ接続に用いられる光接続部材に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムは、局と他局との間や局と加入者端末との間、さらには宅内やビル内で、多数の光ファイバからなる光ケーブルを敷設して互いに光信号を伝送して通信するシステムである。多数の光ファイバは、局内の光配線盤等で光接続部材を用いて他局や加入者宅と光接続されるが、新規布設や接続変えに際しては、接続されている光ファイバを特定するために心線対照が行われる。
【0003】
心線対照には、例えば、特許文献1に開示されているように、光配線盤に接続された光ファイバ心線のそれぞれに光カプラーを設け、その光カプラーを選択して光ファイバ心線に可視光(または、対照光)を入光させ、該光ファイバ心線の端末側で端子に設けられた光コネクタキャップに可視光を拡散透過させることにより、心線対照を行う方法が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、光ファイバコード内に入光させた対照光(可視光ではない)を、光コネクタの一方を外した接続アダプタの蓋に、対照光を可視光に変えるIRフィルタのような光学素子を組込んで、これに対照光が当たると可視光に変換されて目視による心線対照ができる方法が開示されている。また、前記の特許文献2には、光コネクタが外されていない状態の時には、光ファイバコードを曲げて屈曲点で漏れる対照光を検出する方法についても開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、光コネクタ同士を接続するアダプタに、光コネクタから漏洩された可視光が外部に漏れるような切り欠きや開口を形成して、所定の光通信ケーブルを視覚により認識する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2000−88704号公報
【特許文献2】特許第3363383号公報
【特許文献3】特開2007−226112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の特許文献1,2によれば、光ファイバ心線に光カプラーを介して直接対照光を入光し、端末側の光コネクタキャップに対照光を拡散透過させることで、目視による心線対照が容易に行えるとされている。しかしながら、高密度化された局内等の光配線設備で、多くの光ファイバ心線(または、光ファイバコード)及び光コネクタが密集し輻輳している。このため、ジャンパー線による配線換えや断線等の故障検出に対しては、光ファイバ心線にバーコード等の識別手段も付されてはいるが、もともと識別作業が困難なことに加え、光配線盤内の周辺が暗いこともあって、前記の心線対照作業は容易なことではない。この結果、心線対照の作業対象となるポートの識別には時間を要するうえに、通信中の他の光コネクタを誤挿抜することがある。
【0007】
また、上記の特許文献1,2における心線対照は、信号光がない非通信中の光ファイバ心線に対して行うもので、光コネクタの相手方光コネクタを外して、光コネクタにキャップを被せるなどの作業を必要とする。なお、上記特許文献2には、光コネクタを外さず光通信中の光ファイバ心線の心線対照を行う例も示されているが、光ファイバ心線に漏れ光が生じるような曲げを与えて検出するので、他の通信中の光ファイバ心線も曲げることとなり、定常の光通信に対して損失変動を与えて通信異常を招くという問題がある。
【0008】
特許文献3には、光コネクタから漏洩する可視光を検出することが開示されているが、可視光の漏洩のメカニズムとその視認性の詳細は開示されていない。しかるに、可視光の漏洩は、接続アダプタの中間位置で突き合わされる光コネクタのフェルール端部分で、光ファイバ同士の僅かな軸ズレで生じ、この漏洩光がアダプタの両端側部分に設けた切り欠きや開口を通して視認されるものと想定される。なお、光ファイバ同士の突き合わせ部の軸ズレで可視光の漏洩させる場合、軸ズレの程度によって漏洩光の光量が変わるので、一定した視認性が得られない恐れがある。
【0009】
また、接続アダプタの両端側部分において視認できる可視光は、光の下流側での光強度は大きく、光の上流側の光強度は小さい。このため、接続アダプタの光出射側(下流側)では漏洩光を視認することが可能としても、接続アダプタの光入射側(上流側)では漏洩光が弱く視認が困難になることが想定される。このため、パネルを挟んで取り付けられる接続アダプタの光入射側に接続される光ファイバ心線での心線対照が難しくなることがある。
【0010】
さらに、特許文献3においては、接続アダプタに双方の光コネクタを接続した状態でなければ漏洩光は生じないので、光コネクタをアタプタに接続しない状態では、光コネクタの筐体の外面からの識別はできず、光コネクタのフェルール端を覗き込むこととなる。また、光配線盤に設けられた既設の接続アダプタでは漏洩光の検出ができないため、漏洩光が検出可能な接続アダプタと置き換えて使用しなければならないという問題がある。
【0011】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、光コネクタの接続を外した状態、または、光コネクタの接続を外すことなく光通信状態のいずれにおいても、心線対照を容易に行うことが可能な光接続部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による光接続部材は、光信号伝送に用いられる光ファイバ同士を着脱可能に接続する光接続部材で、フェルールに光ファイバが装着された状態で、該光ファイバに可視光を漏洩させるスリットを設け、光ファイバ内に入力された可視光の一部を外部に放光させる光導出機構を備える。なお、前記のスリットの幅は、10μm〜40μmとするのが望ましい。また、光導出機構を、光コネクタまたは光コネクタ同士を接続する光接続アダプタのいずれかに備えさせることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光コネクタを接続アダプタ等に接続しない状態での心線対照も可能とするが、光コネクタが接続され光信号の伝送状態を維持したままで心線対照を行うことができる。この場合、光通信に悪影響を及ぼすことなく、光コネクタの外部に漏れる可視光を視認するだけで容易に行うことができる。また、下流側に多段に設置された他の光コネクタにおいても心線対照を可能とし、光コネクタの誤挿抜を軽減し、作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明に係わる心線対照システムの一例を説明する図で、前記特許文献1に開示のシステム例を参照したものである。図中、1は光伝送装置、2はスターカプラー架、3は光ケーブル成端架、4(4a〜4d)は光ケーブル(光ファイバ心線)、5(5a〜5d)は加入者端末、6(6a〜6d)は光ファイバ(分岐光ファイバ)、7a〜7dはジャンパー線、8,9は光接続部材、10a,10bは光配線盤、11(11a〜11d)は光分岐モジュール(光カプラー)、12,13は分岐光ファイバ、14は光スイッチ、15は制御装置、16は可視光光源、17は光パルス試験器、18は損失試験用光源を示す。
【0015】
光伝送装置1(OLT)は、加入者端末5(ONT)のそれぞれに伝送すべき信号光を、光ファイバ6を介してスターカプラー架2に送出する。スターカプラー架2では、光伝送装置1から信号光を多数の加入者端末5に分配するために、光ファイバ6をスターカプラー2aにより分岐光ファイバ6a〜6dに多分岐( 図1では、4分岐の例で示している)し、それぞれに信号光が分配されて送出される。分岐光ファイバ6a〜6dの出力端は、光配線盤10aに高密度で配設された光接続部材8に接続される。なお、説明を簡略にするために、光ファイバの心線数を4本で示すが、実際は数十〜数百本の心線数で構成されている。
【0016】
スターカプラー架2からの信号光は、ジャンパー線7a〜7dを経て光ケーブル成端架3の光ファイバ心線に送出される。光ケーブル成端架3は、光配線盤10b、光分岐モジュール11、光スイッチ14を備える。光配線盤10bには、光伝送装置1からの信号光をジャンパー線7a〜7dにより受信する多数の光接続部材9が高密度で配設されている。なお、本発明で用いる光接続部材8,9とは、光コネクタと光コネクタを接続したもの、接続アダプタを介して光コネクタを接続した形態を言うものとする。
【0017】
光接続部材9には、受信した信号光を加入者端末5側に送出するための光ファイバ心線4a〜4dの入力端が接続される。光分岐モジュール11は、多数の光カプラー11a〜11dを有し、光ケーブル4の各光ファイバ心線4a〜4dのそれぞれの布設経路上に設けられる。光カプラ11a〜11dのそれぞれには、例えば、2本の分岐光ファイバ12,13を有していて、光スイッチ14によって接続が選択される構成となっている。
【0018】
例えば、光カプラー11aの分岐光ファイバ12に、心線対照用の可視光光源16から可視光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して加入者端末5a側に向けて可視光が伝送される。一方、分岐光ファイバ13に、可視光光源16から可視光が送出されると、光ファイバ心線4aを介して光接続部材9側に向けて可視光が伝送される。分岐光ファイバ12,13の選択は、制御装置15により制御される光スイッチ14により行われる。また、この光スイッチ14は、心線対照用の可視光の送出選択を行う以外に、パルス光を送出する光パルス試験器17、伝送損失を試験するための損失試験用光源18の選択にも用いられる。
【0019】
可視光光源16は、可視光(400nm〜750nm)を送出する光源を用いることができる。なお、赤色の光は、光接続部材に対して比較的識別しやすく、光強度も強いことから、赤色レーザ光源による600nm以上の赤色レーザ光を用いるのが望ましい。なお、光源は、レーザ光以外の光源であってもよい。また、光ファイバ内に送出される可視光は、情報伝送の信号光に使用される波長帯(1.31μm、1.55μm)より伝送損失が大きいので、局内の光配電盤(例えば、数十〜数百mの距離)で設置された光接続部材8,9側による心線対照に用いるのに適している。
【0020】
なお、上記の心線対照は、例えば、光ファイバの布設距離が比較的に短いビル内や宅内の光配線で行うこともできるが、局と多数の加入者端末5との間でも実施することができる。なお、加入者端末5に対する光ケーブルの敷設工事等では、工事現場の近くまで試験装置を運ぶことで対応させることができる。また、心線対照の距離が長くなる場合は、光パワーの大きい可視光光源を用いることで対応することも可能である。光パルス試験器17は、パルス光を光ファイバ心線4a〜4dに送出して、これに伴う後方散乱光を検出してODTR試験を行う。また、損失試験用光源18には、例えば、1.65μm帯の光源を用い、加入者端末5に至るまでの光伝送路の損失試験を行うことができる。
【0021】
上述した心線対照システムで、心線対照は、加入者端末5に対しても行うことができるが、多数の光ファイバ心線とその光接続部材8,9が多数配設された光配線盤10a,10bで行うことが多い。心線対照に際しては、例えば、可視光光源16から送出された光(例えば、赤色レーザ光)を送出すべく、光スイッチ14で対照しようとする光ファイバ心線4aと、分岐光ファイバ13を選択したとする。この場合、可視光は、光カプラー11aの分岐光ファイバ13に送出され、光カプラー11aから光ファイバ心線4a内に入光されて、伝送装置1側に設けられた光接続部材9に向けて送出される。
【0022】
本発明においては、光接続部材8または9の光コネクタで心線対照を行うに際して、光コネクタを外した状態で心線対照を行うことも可能であるが、通信状態のままでも心線対照が行えるようにしている。具体的には、光接続部材8,9の光コネクタまたは接続アダプタに、光ファイバ心線内に送出した可視光を外部に導出する光導出機構を設けて、この光導出機構から放光される可視光を視認することにより心線対照が行われる。
【0023】
図2,図3は、本発明による光接続部材を説明する図で、図2(A)は光コネクタの概略を説明する図、図2(B)はその外観を示す図、図3(A),(B)は可視光を漏洩させるスリットについて説明する図である。図中、20は光コネクタ、21は光ファイバ心線、21aはガラスファイバ、22はフェルール、23はフェルール押え、24はコネクタ筐体、25はスプリング、26は窓部、27はスリット、28はブーツを示す。
【0024】
光コネクタ20の基本構造は、図2(A)に示すように、形状としては一般的な光コネクタ構造と同じで、例えば、フェルール22内に、光ファイバ心線21(または、光ファイバコード)の被覆を除去してガラスファイバ端部を挿入して接着一体化する。そして、フェルール22は、フェルール押え23により保持され、コネクタ筐体24にスプリング25等により軸方向に付勢された状態で装着して構成される。光ファイバ心線21の引出し部分は、ゴム等の弾力性のある材料で形成されたブーツ28で保護される。また、光コネクタの外観形状は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24に光コネクタ20の挿抜を操作するラッチレバー24a等が一体に設けられ、コネクタ筐体24先端からフェルール22が、僅かに突き出るように構成される。
【0025】
本発明による光接続部材の光コネクタ20は、光ファイバ心線21に信号光と共に送出された可視光の一部を光コネクタ20内に漏洩させ、漏洩された可視光を光コネクタの外部に放光させる構成を特徴としている。光ファイバ内の可視光を光コネクタ20内に漏洩させるには、フェルール22内に装着されたガラスファイバ21aにスリット27を設けることにより実現することができる。なお、スリット27の詳細については後述する。
【0026】
光コネクタ20内に漏洩された可視光は、スリット27の位置する部分または近傍に設けた窓部26等の光導出機構を通して、光コネクタ20の外部に放光させることにより、光ファイバ心線21の識別を可能としている。なお、窓部26は、光コネクタ20内に漏洩した可視光が光コネクタ筐体24の外面に達するように形成され、例えば、光コネクタの筐体面に小さい窓孔が複数設けられた形態で形成することができる。また、漏洩されない残りの可視光は、光コネクタ20内をスルーして下流側の光コネクタに送出される。したがって、下流側で上記の光コネクタが用いられる場合は、同様に光ファイバ心線21の識別を行うことができる。
【0027】
窓部26を通して放光される可視光は、図2(B)に示すように、コネクタ筐体24の側面に設けた窓部26の出口部分を光らせ、外部からも視覚で容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光コネクタに、図2の光コネクタ20を用いることで、一方の光コネクタを外すことなく、心線対照を行うことができる。
【0028】
可視光を光コネクタ内に漏洩させるスリット27は、例えば、図3(A),(B)に示すような形状である。このスリット27は、フェルール22のファイバ孔に、光ファイバ被覆を除去したガラスファイバ21aを挿入して接着一体化した後、フェルール22の軸に交叉するように、ダイヤモンドカッター等を用いて所定の角度θで切り込みを入れ、ガラスファイバ21aを分断するようにして形成される。この角度は、光ファイバ内を通過してきた可視光や通信光が光ファイバ内に戻らないようにするには大きくすることが好ましいが、一方、角度θが大きくなるとスリット27を通信光が通過する際の損失が増加する。よって、スリット27の角度θは、2°以上、好ましくは4°〜10°位とするのが望ましい。
【0029】
スリット27の幅Wは、あまり小さいと可視光の漏洩が少なく視認性が低下し、余り大きいと信号光の損失が大きくなる。このため、10μm〜40μmで形成されているのが望ましく、さらに好ましくは、20μm〜30μmである。なお、10μm以下では、カッター刃による加工が難しく、40μm以上では信号光の損失が大きく規定値をクリアすることが難しくなる。なお、スリット27は空隙のままとしてもよいが、透明な樹脂材を充填してもよい。これにより、信号光に対する損失をより軽減し、また、機械的強度の低下をより軽減することができる。
【0030】
上記スリットの角度θ、スリットの幅Wについては、信号光の損失が大きくならないようにしつつ、可視光を十分に外部から視認可能な程度に漏洩させることができるよう、適宜設定すればよい。例えば、θが5°〜7°、Wが15μm〜25μmであれば、信号光の損失は、0.1dB〜0.18程度にしつつ漏洩した可視光を十分に視認することができる。
なお、上記の例では、ガラスファイバを完全に分断するようにスリット27を形成したが、ガラスファイバ中のコア部分が分断されていればよく、ガラスファイバの一部を分断せずに残した状態であってもよい。これにより、スリットの両側に存在するガラスファイバ同士の位置関係が経時的に変化するおそれも低下する。
【0031】
また、可視光の外部への放光を効果的に行うために、フェルール22が、スリット27から漏洩された可視光を散乱・透過させる材料で形成されていることが望ましい。したがって、フェルール22の材料としては、透光性と光散乱性を有するガラス、セラミック、プラスチック等を用いることができるが、特に、製造精度、コスト等の観点から結晶化ガラスを用いるようにしてもよい。
【0032】
上記のようなスリットを光コネクタのフェルール内のガラスファイバに形成することにより、可視光を光ファイバの外に漏洩して放光させることができる。一方、この可視光とともに光ファイバ内を通る信号光に対しては、スリットによる損失が所定値以下に抑えられている。また、光コネクタが接続された状態で通信中の光ファイバ心線に対して、心線対照のための可視光を送出しても、光通信上では何の支障もなく通信を行うことができる。そして、光ファイバ内に送出された可視光を光コネクタの側面等から視覚により確認することで、心線対照を容易に行うことができる。
【0033】
図4は、接続アダプタを介して光コネクタを互いに接続する光接続部材を示す図である。図中、30は接続アダプタ、31はガラスファイバ、32はアダプタフェルール、33は接続スリーブ、34はアダプタ筐体、35a,35bはレセプタクル部、36はアダプタ窓部、37はスリットを示す。その他の符号は、図2で用いたのと同じ符号を用いることにより説明を省略する。
【0034】
この図4の例は、図2で説明した光コネクタ20に形成した光導出機構を、接続アダプタ30側に設けたものである。接続アダプタ30は、両端に光コネクタが挿着されるレセプタクル部35aと35bを有し、中央部にアダプタフェルール32が保持固定され、その両側に接続スリーブ33が配されている。アダプタフェルール32は、内部にガラスファイバ31を有し、光ファイバ内に送出された可視光を外部に漏洩させるために、アダプタフェルール32にスリット37を設けている。そして、アダプタ筐体34には、スリット37の近傍に光透過が可能な窓部36が形成される。なお、接続アダプタ30は、通常、アダプタ筐体34の中央部に、支持パネル等への取付けのためのフランジ(図示省略)が設けられているので、窓孔36はこのフランジを有しない側面に形成する。
【0035】
スリット37は、図3で光コネクタ用のフェルールで説明したのと同様な方法でアダプタフェルール32内に形成される。接続アダプタ30のレセプタクル部35aと35bには、光コネクタ20が挿着され、光コネクタ20のフェルール22とアダプタフェルール32の端面同士が突き合わされることで、光接続が形成される。なお、この場合、光コネクタ20には、光導出機構をもたない通常の光コネクタを使用することができる。
【0036】
光接続部材の接続アダプタを上記のように構成することにより、光ファイバ心線21から光コネクタ20内に送出された可視光を、アダプタフェルール32内のガラスファイバ31に形成されたスリット37により漏洩させて、アダプタ筐体の窓部36を通して外部に放光させることができる。窓部36を通して放光される可視光は、アダプタ筐体34の側面に設けた窓部36で光って、外部からも視覚で容易に確認することができる。この結果、光ファイバ心線21に、可視光が送られていることを検知することができる。したがって、図1の光接続部材8,9の光接続部材に、図3の接続アダプタ30を用いることで、光コネクタを外すことなく、心線対照を行うことができる。
【0037】
上述したように本発明による光接続部材によれば、光ファイバ心線内に送出された可視光の一部を、光接続部材の外部に放光させることができ、視覚による心線対照を容易に行うことができる。また、この光接続部材での心線対照は、光コネクタを光配線網の接続から外した状態で行うこともできるが、接続した状態でも行うことができる。そして、この可視光による心線対照は、波長の異なる信号光による通信に対して影響を及ぼすことがなく、通信中においても安全に実施することができる。
【0038】
また、本発明による光接続部材においては、光接続部材内で漏洩する漏洩光の他に、光ファイバ中のスリットを透過する可視光もある。このため、1本の光ファイバ心線の経路上で、複数の光接続部材が多段的に使用されている場合においても、検出される漏洩光の光量は減少して光の強度は弱くなるが、下流側に接続される他の光接続部材においても心線対照を行うことができる。また、接続アダプタを介して光コネクタ同士を接続する場合、接続アダプタの両側の光コネクタで心線対照ができ、特に、隔壁の両側に光コネクタが配されるような場合の心線対照が容易になる。なお、接続アダプタを介することなく光コネクタ同士を直接接続するような場合においても、心線対照を行うことができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態として、可視光を伝送装置側(制御装置)から送出する例で説明したが、光ケーブル等の敷設工事において、加入者端末側から可視光を送出し、加入者端末から光ケーブル成端架の間の心線対照を行う際にも、本発明は有効である。
また、本発明の実施形態で、コネクタ筐体またはアダプタ筐体に窓部を設けて可視光を筐体外部から視認する例を示したが、窓部の代わりに透明な材質で形成された筐体を使用することで、同様の効果を得ることができる。
さらに、本発明の実施形態で、光接続部材から導出された可視光を視覚で確認する例を示したが、可視光の強度が低く、視認しづらい場合には光センサを併用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係わる心線対照システムの一例を説明する図である。
【図2】本発明による光接続部材で、光コネクタに光導出機構を設ける例を説明する図である。
【図3】本発明による光接続部材で、可視光を漏洩させるスリットについて説明する図である。
【図4】本発明による光接続部材で、接続アダプタに光導出機構を設ける例を説明する図である。
【符号の説明】
【0041】
1…光伝送装置、2…スターカプラー架、3…光ケーブル成端架、4(4a〜4d)…光ケーブル(光ファイバ心線)、5(5a〜5d)…加入者端末、6(6a〜6d)…光ファイバ(分岐光ファイバ)、7a〜7d…ジャンパー線、8,9…光接続部材(光コネクタ、接続アダプタ)、10a,10b…光配線盤、11(11a〜11d)…光分岐モジュール(光カプラー)、12,13…分岐光ファイバ、14…光スイッチ、15…制御装置、16…可視光光源、17…光パルス試験器、18…損失試験用光源、20…光コネクタ、21…光ファイバ心線(光ファイバコード)、21a…ガラスファイバ、22…フェルール、23…フェルール押え、24…コネクタ筐体、24a…ラッチレバー、25…スプリング、26…窓部、27…スリット、28…ブーツ、30…接続アダプタ、31…ガラスファイバ、32…アダプタフェルール、33…接続スリーブ、34…アダプタ筐体、35a,35b…レセプタクル部、36…アダプタ窓部、37…スリット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号伝送に用いられる光ファイバ同士を着脱可能に接続する光接続部材であって、フェルールに光ファイバが装着された状態で、該光ファイバに可視光を漏洩させるスリットを設け、前記光ファイバ内に入力された可視光の一部を外部に放光させる光導出機構を備えていることを特徴とする光接続部材。
【請求項2】
前記スリットの幅は、10μm〜40μmであることを特徴とする請求項1に記載の光接続部材。
【請求項3】
前記光導出機構を、光コネクタに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光接続部材。
【請求項4】
前記光導出機構を、光コネクタ同士を接続する光接続アダプタに備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の光接続部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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