説明

光散乱装置及び光散乱方法

【課題】エレクトロウェッティング現象を利用して光の散乱状態を容易に制御し得る光散乱装置を提供する。
【解決手段】光散乱装置は、第1支持体11、第2支持体12、接合部材13、第1電極21、絶縁膜22、第2電極23、並びに、絶縁性の第1の液体31及び導電性の第2の液体32を具備し、第1電極21は所定の形状にパターニングされており、第2電極23はベタ電極であり、電極21,23に電圧が印加されていないとき、第1の液体31及び第2の液体32は層状の状態にあり、且つ、第1の液体31は絶縁膜22と接し、第2の液体32は第2電極23と接しており、電極21,23に電圧が印加されたとき、第1の液体31は絶縁膜22と接した状態で滴状となり、第2の液体32は、第2電極23と接し、且つ、絶縁膜22とも接した状態となり、滴状の第1の液体31によって入射光が散乱される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱装置及び光散乱方法に関し、より具体的には、エレクトロウェッティング現象を利用した光散乱装置及び光散乱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロウェッティング現象(電気毛管現象)を利用した光学装置の開発が進められている。エレクトロウェッティング現象は、導電性を有する液体と電極との間に電圧を印加したときに電極表面と液体との固液界面におけるエネルギーが変化し、液体表面の形状が変化する現象を云う。
【0003】
図5の(A)及び(B)に、エレクトロウェッティング現象を説明するための原理図を示す。図5の(A)に模式的に示すように、例えば、電極101の表面に絶縁膜102が形成されており、この絶縁膜102の上に電解液から成る導電性の液滴103が置かれているとする。絶縁膜102の表面には撥水処理が施されており、図5の(A)に示すように、電圧を印加していない状態では、絶縁膜102の表面と液滴103との間の相互作用エネルギーは低く、接触角θ0は大きい。ここで、接触角θ0は、絶縁膜102の表面と液滴103の正接線との成す角度であり、液滴103の表面張力や絶縁膜102の表面エネルギー等の物性に依存する。
【0004】
一方、図5の(B)に模式的に示すように、電極101と液滴103との間に電圧を印加すると、液滴側の電解質イオンが絶縁膜102の表面に集中することによって電荷二重層の帯電量変化が生じ、液滴103の表面張力の変化が誘発される。この現象がエレクトロウェッティング現象であり、印加電圧の大きさによって液滴103の接触角θvが変化する。即ち、図5の(B)において、接触角θvは、印加電圧Vの関数として、以下の式(1)の Lippman-Young の式で表される。
【0005】
cos(θv)=cos(θ0)+(1/2)(ε0・ε)/(γLG・t)×V2 (1)
【0006】
ここで、
ε0 :真空の誘電率
ε :絶縁膜の比誘電率
γLG:電解液の表面張力
t :絶縁膜の膜厚
である。
【0007】
以上のように、電極101と液滴103との間に印加する電圧Vの大きさによって、液滴103の表面形状(曲率)が変化する。従って、例えば、液滴103をレンズ素子として用いた場合、焦点位置(焦点距離)を電気的に制御できる光学素子を実現することができる。
【0008】
また、例えば、特開2000−356750には、エレクトロウェッティング現象を利用してマスクを通過する光量を調節する表示素子が開示されているし、特開2005−316473には、エレクトロウェッティング現象を利用した光シャッタが開示されている。
【特許文献1】特開2000−356750
【特許文献2】特開2005−316473
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、或る状況にあっては透明な(光を十分に透過する)部材や装置であるが、別の状況にあっては係る透明な部材や装置が不透明な(光を余り透過しない)部材や装置となることを要求される分野、例えば、間仕切り(パーティッション)や展示品、広告媒体等の分野が存在する。しかしながら、エレクトロウェッティング現象を利用して、部材や装置におけるこのような透明/不透明(光の散乱状態)を制御する技術は、本発明者が調べた限りにおいては知られていない。
【0010】
従って、本発明の目的は、エレクトロウェッティング現象を利用して光の散乱状態を容易に制御し得る光散乱装置及び光散乱方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る光散乱装置、及び、本発明の第1の態様に係る光散乱方法における光散乱装置は、
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された絶縁膜、
(D)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(E)第1支持体と第2支持体との間に配置された、絶縁性の第1の液体及び導電性の第2の液体、並びに、
(F)第2の液体に接するように配置された第2電極、
を具備した光散乱装置であって、
第1電極は、所定の形状にパターニングされており、第2電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されている。
【0012】
そして、本発明の第1の態様に係る光散乱装置は、
第1電極と第2電極との間に電圧が印加されていない状態にあっては、第1の液体及び第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は絶縁膜と接しており、第2の液体は第2電極と接しており、
第1電極と第2電極との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体は絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2の液体は、第2電極と接し、且つ、絶縁膜とも接した状態となり、滴状の第1の液体によって入射光が散乱されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第1の態様に係る光散乱方法は、
第1電極と第2電極との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体及び第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は絶縁膜と接しており、第2の液体は第2電極と接しており、
第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで、第1の液体を絶縁膜と接した状態で滴状とし、第2の液体を、第2電極と接し、且つ、絶縁膜とも接した状態とし、滴状の第1の液体によって入射光を散乱することを特徴とする。
【0014】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第1の態様に係る光散乱方法における光散乱装置において、第2電極は、第1支持体と対向する第2支持体の対向面に形成されていてもよいし、接合部材の内面上に形成されていてもよい。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る光散乱装置、及び、本発明の第2の態様に係る光散乱方法における光散乱装置は、
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された第1絶縁膜、
(D)第1支持体と対向する第2支持体の対向面に形成された第2電極、及び、第2電極上に形成された第2絶縁膜、
(E)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(F)接合部材の内面上に形成された第3電極、並びに、
(G)第1支持体と第2支持体との間に順次配置された、絶縁性の第1の液体、導電性の第3の液体、及び、絶縁性の第2の液体、
を具備した光散乱装置であって、
第1電極及び第2電極は、所定の形状にパターニングされており、第3電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されている。
【0016】
そして、本発明の第2の態様に係る光散乱装置は、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧が印加されていない状態にあっては、第1の液体、第3の液体、及び、第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は第1絶縁膜と接しており、第2の液体は第2絶縁膜と接しており、第3の液体は第3電極と接しており、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体は第1絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2の液体は第2絶縁膜と接した状態で滴状となり、第3の液体は、第3電極と接し、且つ、第1絶縁膜及び第2絶縁膜とも接した状態となり、滴状の第1の液体及び第2の液体によって入射光が散乱されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の第2の態様に係る光散乱方法は、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体、第3の液体、及び、第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は第1絶縁膜と接しており、第2の液体は第2絶縁膜と接しており、第3の液体は第3電極と接しており、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧を印加することで、第1の液体を第1絶縁膜と接した状態で滴状とし、第2の液体を第2絶縁膜と接した状態で滴状とし、第3の液体を、第3電極と接し、且つ、第1絶縁膜及び第2絶縁膜とも接した状態とし、滴状の第1の液体及び第2の液体によって入射光を散乱することを特徴とする。
【0018】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置、あるいは、本発明の第1の態様に係る光散乱方法における光散乱装置、本発明の第2の態様に係る光散乱装置、あるいは、本発明の第2の態様に係る光散乱方法における光散乱装置において、絶縁膜(あるいは、第1絶縁膜及び第2絶縁膜)の表面には撥水処理が施されていることが好ましい。撥水処理として、例えば、ポリパラキシリレンをCVD法で成膜する方法、フッ素系のポリマーであるPVDF(ポリビニリデンフルオライド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等の材料をコーティングする方法を挙げることができる。また、高誘電率材料と撥水性材料とを複数組み合わせた積層構造で絶縁膜(あるいは、第1絶縁膜及び第2絶縁膜)の表面を被覆してもよい。
【0019】
上記の好ましい構成を含む本発明の第1の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第1の態様に係る光散乱方法における光散乱装置(以下、これらを総称して、本発明の第1の態様に係る光散乱装置等と呼ぶ場合がある)にあっては、第1の液体と第2の液体とは、不溶、不混合であることが望ましく、上記の好ましい構成を含む本発明の第2の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第2の態様に係る光散乱方法における光散乱装置(以下、これらを総称して、本発明の第2の態様に係る光散乱装置等と呼ぶ場合がある)にあっては、第1の液体と第3の液体とは、不溶、不混合であり、第2の液体と第3の液体とは、不溶、不混合であることが望ましい。
【0020】
更には、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第1の態様に係る光散乱装置等にあっては、第1電極及び第2電極は透明電極から成ることが望ましく、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第2の態様に係る光散乱装置等にあっても、第1電極及び第2電極は透明電極から成ることが望ましい。具体的には、第1電極及び第2電極を構成する材料として、ITO系材料、銀添加ITO、IZO系材料、SnO2系材料、In23系材料、Sb25系材料、ZnO系材料、In23−ZnO系材料、Ga添加ZnO、In4Sn312、InGaZnO、TiNを例示することができる。尚、第3電極は、透明性を要求されないので、ITO等の導電性酸化物や、金属、合金、半導体材料等から構成された透明電極とすることもできるし、不透明な金属や合金から構成された電極とすることもでき、具体的には、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、銅(Cu)、金(Au)、銀(Ag)、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、ジルコニウム(Zr)、鉄(Fe)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)等の金属;これらの金属元素を含む合金(例えばMoW)あるいは化合物(例えばTiN等の窒化物や、WSi2、MoSi2、TiSi2、TaSi2等のシリサイド);シリコン(Si)等の半導体;ダイヤモンド等の炭素薄膜;ITO(酸化インジウム−錫)、酸化インジウム、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物を例示することができる。これらの電極の形成方法として、例えば、電子ビーム蒸着法や熱フィラメント蒸着法といった蒸着法、スパッタリング法、CVD法やイオンプレーティング法とエッチング法との組合せ;スクリーン印刷法;メッキ法(電気メッキ法や無電解メッキ法);リフトオフ法;レーザアブレーション法;ゾル・ゲル法等を挙げることができる。尚、本発明の第1の態様に係る光散乱装置等において、第2電極を接合部材の内面上に形成する場合、係る第2電極の構成を、第3電極と同様の構成とすることができる。
【0021】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置等にあっては、第1電極は、1枚あるいは複数枚の電極が所定の形状にパターニングされて成り、本発明の第2の態様に係る光散乱装置等にあっては、第1電極及び第2電極は、それぞれが、1枚あるいは複数枚の電極が所定の形状にパターニングされて成るが、所定の形状として、例えば、井桁状、蜂の巣状(亀甲状)、2次元マトリクス状に配列された形状(例えば、円形、正方形、正多角形等)の間を埋めるような形状とすることができる。本発明の第2の態様に係る光散乱装置等にあっては、第1電極のパターニング形状と第2電極のパターニング形状とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。尚、1枚あるいは複数枚の電極から構成された第2電極にはパターンが形成されておらず、所謂ベタ電極である。
【0022】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第1の態様に係る光散乱方法(以下、これらを総称して、本発明の第1の態様と呼ぶ場合がある)にあっては、第1の液体は絶縁膜と接した状態で滴状となり、本発明の第2の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第2の態様に係る光散乱方法(以下、これらを総称して、本発明の第2の態様と呼ぶ場合がある)にあっては、第1の液体は第1絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2の液体は第2絶縁膜と接した状態で滴状となるが、滴状の大きさとして、例えば、1×10-6m乃至1×10-4mを例示することができる。そして、このような大きさの滴状の状態が得られるように、電極のパターニングを行えばよい。通常、本発明の第1の態様にあっては、第1電極が設けられていない領域の上方において、第1の液体は絶縁膜と接した状態で滴状となる。また、本発明の第2の態様にあっては、第1電極が設けられていない領域の上方において、第1の液体は第1絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2電極が設けられていない領域の上方において、第2の液体は第2絶縁膜と接した状態で滴状となる。本発明の第2の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第2の態様に係る光散乱方法にあっては、滴状となった第1の液体の射影像と、滴状となった第2の液体の射影像とは、重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。
【0023】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置等において、滴状の第1の液体の大きさは、光散乱装置等の位置に依存することなく一定であってもよいし、光散乱装置等の位置に依存して異なっていてもよい。また、滴状の第1の液体の密度も、光散乱装置等の位置に依存することなく一定であってもよいし、光散乱装置等の位置に依存して異なっていてもよい。本発明の第2の態様に係る光散乱装置等においても、滴状の第1の液体及び第2の液体の大きさは、光散乱装置等の位置に依存することなく一定であってもよいし、光散乱装置等の位置に依存して異なっていてもよいし、滴状の第1の液体の大きさと滴状の第2の液体の大きさとは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、滴状の第1の液体及び第2の液体の密度も、光散乱装置等の位置に依存することなく一定であってもよいし、光散乱装置等の位置に依存して異なっていてもよいし、第1の液体と第2の液体との間で同じであってもよいし、異なっていてもよい。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光散乱装置等にあっては、滴状となった第1の液体、あるいは、滴状となった第1の液体及び第2の液体によって、光散乱装置等全体が、均一に光を散乱する状態(均一に不透明な状態)となってもよいし、不均一に光を散乱する状態(不均一に不透明な状態)となってもよい。後者の場合、光散乱装置等において、例えば、光散乱状態を、徐々に変化する状態としてもよいし、階段状に変化する状態としてもよいし、模様や文字、絵等として識別できるような状態としてもよい。
【0024】
以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第1の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第1の態様に係る光散乱方法、以上に説明した好ましい構成を含む本発明の第2の態様に係る光散乱装置あるいは本発明の第2の態様に係る光散乱方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、導電性を有する液体(以下、導電性液体と呼ぶ場合がある)として、例えば、水、電解液(塩化カリウムや塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸ナトリウム等の電解質の水溶液)、これらの電解質を溶かし込んだ例えばトリエチレングリコール水溶液、分子量の小さなメチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類、常温溶融塩(イオン性液体)等の有極性液体、これらの液体の混合物を挙げることができる。尚、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール類は、水溶液として導電性を持たせたり、塩を溶かして導電性を持たせて使用すればよい。また、絶縁性を有する液体(以下、絶縁性液体と呼ぶ場合がある)として、例えば、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、ウンデカン等の炭化水素系の材料、シリコーンオイル、フッ素系の材料等の無極性溶媒を挙げることができる。尚、導電性液体と絶縁性液体とは、互いに異なる屈折率を有すると共に、互いに混和することなく存在できることが要求される。また、導電性液体の密度と絶縁性液体の密度を、出来る限り同じ値とすることが望ましい。導電性液体及び絶縁性液体は、入射光に対して透明な液体であることが望ましいが、場合によっては、着色されていてもよい。本発明の第2の態様に係る光散乱装置等にあっては、第1の液体と第2の液体とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0025】
第1支持体及び第2支持体を構成する材料は、入射光に対して透明であることが要求される。ここで、「入射光に対して透明である」とは、入射光の光透過率が80%以上であることを意味する。第1支持体及び第2支持体を構成する材料として、具体的には、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、ABS樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアリレート樹脂(PAR)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ガラスを例示することができる。第1支持体を構成する材料と第2支持体を構成する材料とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。接合部材も、支持体と同様の材料から作製すればよい。
【0026】
絶縁膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜は、電気絶縁性の物質であれば特に制限されず、好適には、比誘電率が比較的高い物質が選択される。また、比較的大きな静電容量を得るために絶縁膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜の膜厚は薄い方が好ましいが、絶縁強度を確保できる膜厚以上であることが必要である。絶縁膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜を構成する材料として、例えば、SiOX系材料やSiN、SiON、酸化フッ化シリコン、ポリイミド樹脂、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラス、ガラスペーストといったSiO2系材料、酸化チタン(TiO2)、酸化タンタル(Ta25)、酸化アルミニウム(Al23)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化クロム(CrOx)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化スズ(SnO2)、又は、酸化バナジウム(VOx)を挙げることができる。絶縁膜、第1絶縁膜、第2絶縁膜の形成方法として、CVD法、塗布法、スパッタリング法、スクリーン印刷法、メッキ法、電着法、浸漬法等の公知のプロセスを挙げることができる。
【0027】
本発明の第1の態様に係る光散乱装置等を積層した構造としてもよいし、本発明の第2の態様に係る光散乱装置等を積層した構造としてもよい。これらの場合、例えば、光散乱装置等の上に別の光散乱装置等を載置する形態とすることもできるし、場合によっては、下側に位置する光散乱装置等における支持体と、その上に位置する光散乱装置等における支持体とを共通化してもよい。即ち、下側に位置する光散乱装置等における第2支持体が、その上に位置する光散乱装置等における第1支持体あるいは第2支持体に相当する構成、構造としてもよいし、下側に位置する光散乱装置等における第1支持体が、その上に位置する光散乱装置等における第1支持体あるいは第2支持体に相当する構成、構造としてもよい。本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光散乱装置等を積層した構造とする場合、例えば、光散乱装置等によって形成される各層における滴状となった液体の射影像は、相互に、重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。あるいは又、本発明の第1の態様や第2の態様に係る光散乱装置等を平面的に敷き詰めて用いてもよい。尚、この場合、一方の支持体を共通化する形態とすることもできる。即ち、例えば、本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光散乱装置等において、複数の光散乱装置等における第2支持体を共通化するような構造を採用してもよい。更には、このような各種の形態を組み合わせてもよい。
【0028】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る光散乱装置等を、例えば、間仕切り(パーティッション)や展示品、広告媒体、調光装置や表示装置のバックライトユニット等に用いられる拡散板といった分野に適用することができる。光を、第1支持体側から入射させてもよいし、第2支持体側から入射させてもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明にあっては、第1電極と第2電極との間への電圧の印加の有無に応じて、あるいは又、第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間への電圧の印加の有無に応じて、第1の液体、あるいは、第1の液体と第2の液体の層状状態と滴状状態との間の状態遷移が容易に制御され、その結果、滴状の第1の液体、あるいは、滴状の第1の液体及び第2の液体による入射光の散乱の制御を容易に達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る光散乱装置及び光散乱方法に関する。実施例1の光散乱装置は、図1の(A)及び(B)に模式的な一部断面図を示し、図1の(C)に第1電極及び第1支持体の配置関係を模式的に示すように、
(A)入射光に対して透明な第1支持体11、
(B)第1支持体11と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体12、
(C)第2支持体12と対向する第1支持体11の対向面に形成された第1電極21、及び、第1電極21上に形成された絶縁膜22、
(D)第1支持体11と第2支持体12をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材13、
(E)第1支持体11と第2支持体12との間に配置された、絶縁性の第1の液体31及び導電性の第2の液体32、並びに、
(F)第2の液体32に接するように配置された第2電極23、
を具備しており、
第1電極21は、所定の形状にパターニングされており、第2電極23は、1枚又は複数枚の電極から構成されている。
【0032】
ここで、第2電極23は、第1支持体11と対向する第2支持体12の対向面に形成されており、絶縁性の第1の液体31及び導電性の第2の液体32は、より具体的には、絶縁膜22と第2電極23との間に配置されている。尚、第2電極23を、接合部材13の内面上に形成してもよい(図2の(C)参照)。
【0033】
実施例1の光散乱装置にあっては、具体的には、第1支持体11、第2支持体12及び接合部材13は、ガラス、あるいは、アクリル系樹脂等から作製されている。また、第1の液体31と第2の液体32とは、不溶、不混合であり、界面において分離されており、この界面が第1の液体31における滴状の表面を構成する。具体的には、絶縁性の第1の液体31は、シリコーンオイル(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社(旧GE東芝シリコーン株式会社))製TSF437から成り、密度は1.02グラム/cm3であり、屈折率は1.49である。一方、導電性の第2の液体32は塩化リチウム水溶液から成り、密度は1.06グラム/cm3であり、屈折率は1.34である。更には、実施例1の光散乱装置にあっては、SiO2から成る絶縁膜22の表面には撥水処理が施されている。即ち、絶縁膜22の表面には撥水処理層(図示せず)が形成されている。具体的には、撥水処理層はポリパラキシリレンやフッ素系のポリマーから成る。
【0034】
更には、それぞれが1枚の電極から構成された第1電極21及び第2電極23は、透明電極から成り、具体的には、ITOから構成されている。第1電極21のパターニングされた所定の形状は、図1の(C)に示すように、井桁状である。第1電極21に設けられた正方形の開口部の大きさを一辺20μmとした。尚、第1電極21のパターニングされた所定の形状は、正方形に限定するものではなく、図2の(A)に示すように、蜂の巣状(亀甲状)とすることもできるし、図2の(B)に示すように、2次元マトリクス状に配列された円形の形状の間を埋めるような形状とすることができる。図1の(C)に示した形状は、言い替えれば、2次元マトリクス状に配列された正方形の形状の間を埋めるような形状であるし、図2の(A)に示した形状は、言い替えれば、2次元マトリクス状に配列された正六角形の形状の間を埋めるような形状である。ここで、図1の(C)、図2の(A)、(B)には、第1電極21及び第1支持体11の配置関係を示したが、これらの上には絶縁膜22が形成され、絶縁膜22上には撥水処理層が形成されている。尚、第1電極21を明示するために、第1電極21に斜線を付した。1枚の電極から構成された第2電極23にはパターンが形成されておらず、所謂ベタ電極である。実施例1の光散乱装置あるいは後述する実施例2の光散乱装置を、例えば、間仕切り(パーティッション)や展示品、広告媒体、調光装置や表示装置のバックライトユニット等に用いられる拡散板といった分野に適用することができ、光を、第1支持体側から入射させてもよいし、第2支持体側から入射させてもよい。
【0035】
第1電極21及び第2電極23は、図示しない接続部を介して、外部の制御回路に接続され、所望の電圧が印加される構成、構造となっている。そして、第1電極21と第2電極23との間に電圧が印加されていない状態にあっては、図1の(A)に示すように、第1の液体31及び第2の液体32は層状の状態にあり、且つ、第1の液体31は絶縁膜22と接しており、第2の液体32は第2電極23と接している。一方、第1電極21と第2電極23との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体31は絶縁膜22と接した状態で滴状となり、第2の液体32は、第2電極23と接し、且つ、絶縁膜22とも接した状態となる(式(1)参照)。あるいは又、第1電極21と第2電極23との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体31及び第2の液体32は層状の状態にあり、且つ、第1の液体31は絶縁膜22と接しており、第2の液体32は第2電極23と接しており、第1電極21と第2電極23との間に電圧を印加することで、第1の液体31を絶縁膜22と接した状態で滴状とし、第2の液体32を、第2電極23と接し、且つ、絶縁膜22とも接した状態とする。こうして、実施例1の光散乱装置にあっては、滴状の第1の液体によって入射光が散乱され、実施例1の光散乱方法にあっては、滴状の第1の液体31によって入射光を散乱する。
【実施例2】
【0036】
実施例2は、本発明の第2の態様に係る光散乱装置及び光散乱方法に関する。実施例2の光散乱装置は、図3の(A)及び(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(A)入射光に対して透明な第1支持体11、
(B)第1支持体11と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体12、
(C)第2支持体12と対向する第1支持体11の対向面に形成された第1電極41、及び、第1電極41上に形成された第1絶縁膜42、
(D)第1支持体11と対向する第2支持体12の対向面に形成された第2電極43、及び、第2電極43上に形成された第2絶縁膜44、
(E)第1支持体11と第2支持体12をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材13、
(F)接合部材13の内面上に形成された第3電極45、並びに、
(G)第1支持体11と第2支持体12との間に順次配置された、絶縁性の第1の液体51、導電性の第3の液体52、及び、絶縁性の第2の液体53、
を具備し、
第1電極41及び第2電極43は、所定の形状にパターニングされており、第3電極45は、1枚又は複数枚の電極から構成されている。
【0037】
実施例2の光散乱装置にあっては、具体的には、第1支持体11、第2支持体12及び接合部材13は、ガラス、あるいは、アクリル系樹脂等から作製されている。また、第1の液体51と第3の液体53とは、不溶、不混合であり、界面において分離されており、この界面が第1の液体51における滴状の表面を構成する。更には、第2の液体52と第3の液体53とは、不溶、不混合であり、界面において分離されており、この界面が第2の液体52における滴状の表面を構成する。具体的には、絶縁性の第1の液体51及び第2の液体は、実施例1における第1の液体51と同じ材料から構成され、導電性の第3の液体53は、実施例1における第2の液体52と同じ材料から構成されている。また、実施例2の光散乱装置にあっては、SiO2から成る第1絶縁膜42及び第2絶縁膜44の表面には撥水処理が施されている。即ち、第1絶縁膜42及び第2絶縁膜44の表面には、実施例1と同様の撥水処理層(図示せず)が形成されている。
【0038】
更には、それぞれが1枚の電極から構成された第1電極41及び第2電極43は、透明電極から成り、具体的には、ITOから構成されている。第1電極41及び第2電極43のパターニングされた所定の形状は、図1の(C)に示したと同様に、井桁状である。第1電極41及び第2電極43に設けられた正方形の開口部の大きさを一辺20μmとした。尚、第1電極41及び第2電極43のパターニングされた所定の形状は、正方形に限定するものではなく、図2の(A)に示したと同様に、蜂の巣状(亀甲状)とすることもできるし、図2の(B)に示すように、2次元マトリクス状に配列された円形の形状の間を埋めるような形状とすることができる。また、実施例2にあっては、滴状となった第1の液体の射影像と滴状となった第2の液体の射影像とが重なるように、第1電極41及び第2電極43をパターニングしたが、滴状となった第1の液体の射影像と滴状となった第2の液体の射影像とが重ならないように、第1電極41及び第2電極43をパターニングしてもよい。接合部材13の内面上に形成された第3電極45は、例えば、金の薄膜から成り、接合部材13の内面全周に1枚の電極として形成されており、所謂ベタ電極である。
【0039】
第1電極41、第2電極43及び第3電極45は、図示しない接続部を介して、外部の制御回路に接続され、所望の電圧が印加される構成、構造となっている。そして、第1電極41と第3電極45との間、及び、第2電極43と第3電極45との間に電圧が印加されていない状態にあっては、図3の(A)に示すように、第1の液体51、第3の液体53、及び、第2の液体52は層状の状態にあり、且つ、第1の液体51は第1絶縁膜42と接しており、第2の液体52は第2絶縁膜44と接しており、第3の液体53は第3電極45と接している。一方、第1電極41と第3電極45との間、及び、第2電極43と第3電極45との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体51は第1絶縁膜42と接した状態で滴状となり、第2の液体52は第2絶縁膜44と接した状態で滴状となり、第3の液体53は、第3電極45と接し、且つ、第1絶縁膜42及び第2絶縁膜44とも接した状態となる(式(1)参照)。あるいは又、第1電極41と第3電極45との間、及び、第2電極43と第3電極45との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体51、第3の液体53、及び、第2の液体52は層状の状態にあり、且つ、第1の液体51は第1絶縁膜42と接しており、第2の液体52は第2絶縁膜44と接しており、第3の液体53は第3電極45と接している。一方、第1電極41と第3電極45との間、及び、第2電極43と第3電極45との間に電圧を印加することで、第1の液体51を第1絶縁膜42と接した状態で滴状とし、第2の液体52を第2絶縁膜44と接した状態で滴状とし、第3の液体53を、第3電極45と接し、且つ、第1絶縁膜42及び第2絶縁膜44とも接した状態とする。こうして、実施例2の光散乱装置にあっては、滴状の第1の液体51及び第2の液体52によって入射光が散乱される。また、実施例2の光散乱方法にあっては、滴状の第1の液体及び第2の液体によって入射光を散乱する。
【0040】
例えば、実施例1において説明した光散乱装置(図参照)は、以下の方法で作製することができる。
【0041】
先ず、第1支持体11、第2支持体12、接合部材13を作製する。尚、第1支持体11の所定の領域に、例えば、スパッタリング法とエッチング技術との組合せや、リフトオフ法に基づき、所定の形状にパターニングされた第1電極21を形成し、第1電極21上に、例えば、スパッタリング法に基づき絶縁膜22を形成し、絶縁膜22上に塗布法に基づき撥水処理層を設けておく。一方、第2支持体12の所定の領域に、スパッタリング法とエッチング技術との組合せや、リフトオフ法に基づき、第2電極23を設けておく。また、接合部材13には、液体を注入し、また、液体を排出するための注入口及び排出口を適宜設けておく。そして、第1支持体11、第2支持体12、及び、接合部材13を、接着剤等を用いて組み立てる。
【0042】
次いで、第1支持体11、第2支持体12及び接合部材13によって囲まれた空間を減圧しながら、接合部材13に設けられた注入口(図示せず)から第1の液体31を注入し、第1の液体31の一部を排出口(図示せず)から排出することで、空間を第1の液体31で完全に充填する。次いで、接合部材13に設けられた注入口(図示せず)から第2の液体32を注入する。このとき、第1の液体31及び第2の液体32との間で界面が形成されるように、第2の液体32を注入する。第1の液体31及び第2の液体32の一部は、排出口(図示せず)から排出される。最後に、注入口及び排出口を封止し、電極を外部の制御回路と接続することで、光散乱装置を完成させることができる。
【0043】
尚、実施例2において説明した光散乱装置も、実質的に同様の方法で作製することができる。
【0044】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した光散乱装置の構成、構造は例示であるし、光散乱装置を構成する材料等も例示であり、適宜、変更することができる。
【0045】
実施例1あるいは実施例2において説明した光散乱装置を積層した構造としてもよい。具体的には、実施例1において説明した光散乱装置を単純に積層した構造としてもよいし、実施例2において説明した光散乱装置を単純に積層した構造としてもよいし、実施例1と実施例2において説明した光散乱装置とを単純に積層した構造としてもよい。あるいは又、図4の(A)に示すように、実施例1において説明した光散乱装置に関して、下側に位置する光散乱装置における支持体と、その上に位置する光散乱装置における支持体を共通化してもよい。即ち、例えば、下側に位置する光散乱装置における第2支持体12が、その上に位置する光散乱装置における第1支持体11に相当する構成、構造とすることができる。あるいは又、図4の(B)に示すように、実施例2において説明した光散乱装置に関して、下側に位置する光散乱装置における支持体と、その上に位置する光散乱装置における支持体を共通化してもよい。即ち、例えば、下側に位置する光散乱装置における第2支持体12が、その上に位置する光散乱装置における第1支持体11に相当する構成、構造とすることができる。ここで、光散乱装置によって形成される各層における滴状となった液体の射影像は、相互に、重なっていてもよいし、重なっていなくともよい。あるいは又、実施例1あるいは実施例2において説明した光散乱装置を平面的に敷き詰めて用いてもよい。更には、このような各種の形態を組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の光散乱装置の模式的な一部断面図であり、図1の(C)は、第1電極及び第1支持体の配置関係を模式的に示す図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、それぞれ、第1電極及び第1支持体の配置関係の変形例を模式的に示す図であり、図2の(C)は、実施例1の光散乱装置の別の変形例の模式的な一部断面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例2の光散乱装置の模式的な一部断面図である。
【図4】図4の(A)及び(B)は、それぞれ、実施例1及び実施例2の光散乱装置の変形例の模式的な一部断面図である。
【図5】図5の(A)及び(B)は、電気毛管現象を説明するための原理図である。
【符号の説明】
【0047】
11・・・第1支持体、12・・・第2支持体、21,41・・・第1電極、22・・・絶縁膜、42・・・第1絶縁膜、23,43・・・第2電極、44・・・第2絶縁膜、45・・・第3電極、13・・・接合部材、31,51・・・第1の液体、32,52・・・第2の液体、53・・・第3の液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された絶縁膜、
(D)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(E)第1支持体と第2支持体との間に配置された、絶縁性の第1の液体及び導電性の第2の液体、並びに、
(F)第2の液体に接するように配置された第2電極、
を具備した光散乱装置であって、
第1電極は、所定の形状にパターニングされており、第2電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されており、
第1電極と第2電極との間に電圧が印加されていない状態にあっては、第1の液体及び第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は絶縁膜と接しており、第2の液体は第2電極と接しており、
第1電極と第2電極との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体は絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2の液体は、第2電極と接し、且つ、絶縁膜とも接した状態となり、滴状の第1の液体によって入射光が散乱されることを特徴とする光散乱装置。
【請求項2】
絶縁膜の表面には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項1に記載の光散乱装置。
【請求項3】
第1の液体と第2の液体とは、不溶、不混合であることを特徴とする請求項1に記載の光散乱装置。
【請求項4】
第1電極及び第2電極は透明電極から成ることを特徴とする請求項1に記載の光散乱装置。
【請求項5】
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された第1絶縁膜、
(D)第1支持体と対向する第2支持体の対向面に形成された第2電極、及び、第2電極上に形成された第2絶縁膜、
(E)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(F)接合部材の内面上に形成された第3電極、並びに、
(G)第1支持体と第2支持体との間に順次配置された、絶縁性の第1の液体、導電性の第3の液体、及び、絶縁性の第2の液体、
を具備した光散乱装置であって、
第1電極及び第2電極は、所定の形状にパターニングされており、第3電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されており、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧が印加されていない状態にあっては、第1の液体、第3の液体、及び、第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は第1絶縁膜と接しており、第2の液体は第2絶縁膜と接しており、第3の液体は第3電極と接しており、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧が印加されている状態にあっては、第1の液体は第1絶縁膜と接した状態で滴状となり、第2の液体は第2絶縁膜と接した状態で滴状となり、第3の液体は、第3電極と接し、且つ、第1絶縁膜及び第2絶縁膜とも接した状態となり、滴状の第1の液体及び第2の液体によって入射光が散乱されることを特徴とする光散乱装置。
【請求項6】
第1絶縁膜及び第2絶縁膜の表面には、撥水処理が施されていることを特徴とする請求項5に記載の光散乱装置。
【請求項7】
第1の液体と第3の液体とは、不溶、不混合であり、第2の液体と第3の液体とは、不溶、不混合であることを特徴とする請求項5に記載の光散乱装置。
【請求項8】
第1電極及び第2電極は透明電極から成ることを特徴とする請求項5に記載の光散乱装置。
【請求項9】
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された絶縁膜、
(D)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(E)第1支持体と第2支持体との間に配置された、絶縁性の第1の液体及び導電性の第2の液体、並びに、
(F)第2の液体に接するように配置された第2電極、
を具備し、
第1電極は、所定の形状にパターニングされており、第2電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されている光散乱装置を用いた光散乱方法であって、
第1電極と第2電極との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体及び第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は絶縁膜と接しており、第2の液体は第2電極と接しており、
第1電極と第2電極との間に電圧を印加することで、第1の液体を絶縁膜と接した状態で滴状とし、第2の液体を、第2電極と接し、且つ、絶縁膜とも接した状態とし、滴状の第1の液体によって入射光を散乱することを特徴とする光散乱方法。
【請求項10】
(A)入射光に対して透明な第1支持体、
(B)第1支持体と対向して配置された、入射光に対して透明な第2支持体、
(C)第2支持体と対向する第1支持体の対向面に形成された第1電極、及び、第1電極上に形成された第1絶縁膜、
(D)第1支持体と対向する第2支持体の対向面に形成された第2電極、及び、第2電極上に形成された第2絶縁膜、
(E)第1支持体と第2支持体をそれらの周縁部で相互に接合する接合部材、
(F)接合部材の内面上に形成された第3電極、並びに、
(G)第1支持体と第2支持体との間に順次配置された、絶縁性の第1の液体、導電性の第3の液体、及び、絶縁性の第2の液体、
を具備し、
第1電極及び第2電極は、所定の形状にパターニングされており、第3電極は、1枚又は複数枚の電極から構成されて光散乱装置を用いた光散乱方法であって、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧を印加しない状態にあっては、第1の液体、第3の液体、及び、第2の液体は層状の状態にあり、且つ、第1の液体は第1絶縁膜と接しており、第2の液体は第2絶縁膜と接しており、第3の液体は第3電極と接しており、
第1電極と第3電極との間、及び、第2電極と第3電極との間に電圧を印加することで、第1の液体を第1絶縁膜と接した状態で滴状とし、第2の液体を第2絶縁膜と接した状態で滴状とし、第3の液体を、第3電極と接し、且つ、第1絶縁膜及び第2絶縁膜とも接した状態とし、滴状の第1の液体及び第2の液体によって入射光を散乱することを特徴とする光散乱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47853(P2009−47853A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212957(P2007−212957)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】