説明

光断層画像処理装置及び光断層画像処理方法

【課題】断層画像の中から管腔内の液体浮遊物が除去された補正画像を提供する。
【解決手段】OCTプロセッサ400の信号処理装置22は、管腔内の断層画像の補正処理を行う断層画像補正部460を備える。この断層画像補正部460は、断層画像の中からプローブ領域、ガイドワイヤ領域、及び管腔組織領域を検出し、断層画像からこれらの領域を差し引くことにより、断層画像の中から管腔内の液体浮遊物の領域を検出し、断層画像から液体浮遊物が除去された補正画像を生成する。この補正画像はモニタ装置500に出力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光断層画像処理装置及び光断層画像処理方法に係り、特に、光干渉断層計測によって取得される光断層画像(以下、単に「断層画像」とも言う。)から管腔内の液体浮遊物が除去された補正画像を生成することが可能な画像処理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば医療分野などで、非侵襲で生体内部の断層情報を得る方法の一つとして、光干渉断層(OCT;Optical Coherence Tomography)計測が利用されている。OCT計測は超音波計測に比べ、分解能が10μm程度と一桁高く、生体内部の詳細な断層情報(断層画像)が得られるという利点がある。また、断層情報を取得する位置をずらしながら複数位置で取得した断層情報を繋ぎ併せることによって立体的な領域の断層情報を得ることができる。
【0003】
現在、癌の診断等の目的で生体の詳細な断層情報を取得することが求められている。その方法として、低干渉性光源から出力される光を走査して被検体に対する断層情報を得るタイムドメインOCT(Time domain OCT)が提案されている(特許文献1)。
【0004】
また、近年はタイムドメインOCTの欠点である最適な信号/ノイズ比(S/N比)が得られない、撮像フレームレートが低い、浸透深度(観察深度)が乏しいという問題を解決した改良型のOCTである周波数ドメインOCT(Frequency domain OCT)が利用されている(特許文献2)。癌以外の他の診断領域でも周波数ドメインOCT(Frequency domain OCT)が利用されており、広く臨床に供されている。
【0005】
周波数ドメインOCT計測を行う装置構成で代表的なものとしては、SD−OCT(Spectral Domain OCT)装置とSS−OCT(Swept SourceOCT)の2種類が挙げられる。SD−OCT装置は、SLD(Super Luminescence Diode)やASE(Amplified Spontaneous Emission)光源、白色光といった広帯域の低コヒーレント光を光源に用い、マイケルソン型干渉計等を用いて、広帯域の低コヒーレント光を測定光と参照光とに分割した後、測定光を測定対象に照射させ、そのとき戻って来た反射光と参照光とを干渉させ、この干渉光をスペクトロメータを用いて各周波数成分に分解し、フォトダイオード等の素子がアレイ状に配列されたディテクタアレイを用いて各周波数成分毎の干渉光強度を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより、断層情報を取得するものである。
【0006】
一方、SS−OCT装置は、光周波数を時間的に掃引させるレーザを光源に用い、反射光と参照光とを各波長において干渉させ、光周波数の時間変化に対応した信号の時間波形を測定し、これにより得られたスペクトル干渉強度信号を計算機でフーリエ変換することにより断層情報を取得するものである。
【0007】
また、OCT装置は、測定光の光軸を2次元的に走査することで、深さ方向の断層情報と合わせて被検体(測定対象)の3次元的な情報を取得することができる。OCT計測と3次元コンピュータグラフィック技術の融合により、マイクロメートルオーダの分解能を持つ測定対象の構造情報からなる3次元構造モデルを表示することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−131222号公報
【特許文献2】特表2007−510143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、OCT装置では、生体の管腔内の断層画像を取得する場合、先端に光学レンズ及び光学ミラーを取り付けた光ファイバを内蔵した光プローブを管腔内に挿入し、光ファイバの先端側に配置した光学ミラーをラジアル走査させながら、管腔内に光を出射し、組織からの反射光をもとに管腔内の断層画像を生成している。
【0010】
また、光プローブを管腔内に挿入する場合は、ガイドワイヤを光プローブに先行して患部に留置し、それに沿わせてプローブを患部まで挿通することが一般的である。
【0011】
このようにOCT装置では、光プローブやガイドワイヤを管腔内に挿入した状態で測定が行われるため、断層画像の中に光プローブやガイドワイヤが現れてしまう。また、管腔内の液体中に浮遊している液体浮遊物(例えば胆管内の胆泥など)が断層画像に現れることもある。
【0012】
これらの物体は診断とは直接関係ないものであり、診断の妨げとなることがある。その結果、誤診や所見の見落としにつながる恐れがある。このため、診断の効率や精度を向上させる観点から、これらの物体については断層画像から除去されていることが望ましい。
【0013】
しかしながら、断層画像に現れる物体のうち、管腔内の液体浮遊物は不確定な形状を有するものであり、確定形状を有する光プローブやガイドワイヤに比べて、断層画像の中における液体浮遊物の領域ないしは位置を特定することは極めて難しく、断層画像から液体浮遊物を除去するためには複雑な処理が必要となってしまう問題がある。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、断層画像から管腔内の液体浮遊物が除去された補正画像を容易に提供することが可能な光断層画像処理装置及び光断層画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明の光断層画像装置は、光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する画像取得手段と、前記光断層画像の中から前記管腔内に挿入された管腔挿入物の領域を検出する管腔挿入物検出手段と、前記光断層画像の中から前記管腔の組織領域を検出する管腔組織検出手段と、前記光断層画像から前記管腔挿入物の領域及び前記管腔の組織領域を差し引くことにより、前記光断層画像の中から前記管腔内の液体中に浮遊する液体浮遊物の領域を検出する液体浮遊物検出手段と、前記液体浮遊物検出手段の検出結果に基づいて、前記光断層画像から前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成する補正画像生成手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、上記本発明の光断層画像装置においては、前記管腔挿入物検出手段は、前記管腔内に挿入された光プローブの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することができる。
【0017】
また、前記管腔挿入物検出手段は、前記管腔内に前記光プローブを案内するためのガイドワイヤの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することができる。
【0018】
また、前記補正画像生成手段は、前記管腔挿入物検出手段及び前記液体浮遊物検出手段の検出結果に基づき、前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成することができる。
【0019】
また、前記管腔挿入物検出手段及び前記液体浮遊物検出手段によって検出された各領域を前記光断層画像から除去するか否かを選択的に指示する指示手段を備え、前記補正画像生成手段は、前記指示手段の指示に従って前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が選択的に除去された補正画像を生成することができる。
【0020】
また、前記補正画像生成手段により生成された前記補正画像を表示する表示手段を備えることが好ましい。
【0021】
また、前記管腔は、胆管、膵管、血管、又は尿管とすることができる。
【0022】
本発明の光断層画像処理方法は、光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する画像取得工程と、前記光断層画像の中から前記管腔内に挿入された管腔挿入物の領域を検出する管腔挿入物検出工程と、前記光断層画像の中から前記管腔の組織領域を検出する管腔組織検出工程と、前記光断層画像から前記管腔挿入物の領域及び前記管腔の組織領域を差し引くことにより、前記光断層画像の中から前記管腔内の液体中に浮遊する液体浮遊物の領域を検出する液体浮遊物検出工程と、前記液体浮遊物検出工程の検出結果に基づいて、前記光断層画像から前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成する補正画像生成工程と、を含むことを特徴とする。
【0023】
また、上記本発明の光断層画像処理方法においては、前記管腔挿入物検出工程は、前記管腔内に挿入された光プローブの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することができる。
【0024】
また、前記管腔挿入物検出工程は、前記管腔内に前記光プローブを案内するためのガイドワイヤの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することができる。
【0025】
また、前記補正画像生成工程は、前記管腔挿入物検出工程及び前記液体浮遊物検出工程の検出結果に基づき、前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成することができる。
【0026】
また、前記管腔挿入物検出工程及び前記液体浮遊物検出工程によって検出された各領域を前記光断層画像から除去するか否かを選択的に指示する指示工程を含み、前記補正画像生成工程は、前記指示工程の指示に従って前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が選択的に除去された補正画像を生成することができる。
【0027】
また、前記補正画像生成工程により生成された前記補正画像を表示する表示工程を含むことができる。
【0028】
また、前記管腔は、胆管、膵管、血管、又は尿管とすることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光断層画像処理装置及び光断層画像処理方法によれば、光断層画像の中から管腔挿入物の領域や管腔の組織領域を検出し、光断層画像からこれらの領域を差し引くことにより、管腔内の液体浮遊物の領域を検出することができる。これにより、光断層画像から管腔内の液体浮遊物が除去された補正画像を容易に提供することが可能となる。その結果、光断層画像から診断に直接関係がない情報が除去された補正画像を提供することができ、診断の効率や精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態に係る断層画像処理装置を適用した画像診断装置の外観図
【図2】図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図
【図3】図2のOCTプローブの断面図
【図4】測定対象に対して光走査がラジアル走査の場合の断層画像のスキャン面を示す図
【図5】図4の断層画像により構築される3次元ボリュームデータを示す図
【図6】図1の内視鏡の鉗子口から導出されたOCTプローブを用いて断層画像を得る様子を示す図
【図7】図2の信号処理部の構成を示すブロック図
【図8】胆管内に挿入されたOCTプローブにより測定が行われるときの様子を簡略的に示した概略図
【図9】図7の断層画像補正部で行われる処理の流れを示したフローチャート図
【図10】断層画像データから生成される断層画像の一例を示した図
【図11】プローブ領域検出工程にてOCTプローブの内壁面(最小コストパス)が検出された様子を示した図
【図12】プローブ領域検出工程にてOCTプローブの外壁面(プローブ表面ライン)が検出された様子を示した図
【図13】ガイドワイヤ領域の検出工程にてガイドワイヤが検出されたときの様子を示した図
【図14】管腔組織領域の検出工程にてヒステリシス2値化処理が行われた後の様子を示した図
【図15】管腔組織領域の検出工程において2値化画像が得られたときの様子を示した図
【図16】液体浮遊物領域の検出工程において胆泥が検出されたときの様子を示した図
【図17】補正断層画像の一例を示した図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0032】
図1は本発明の実施形態に係る光断層画像処理装置を適用した画像診断装置の外観図である。図1に示すように、画像診断装置10は、主として内視鏡100、内視鏡プロセッサ200、光源装置300、断層画像処理装置としてのOCTプロセッサ400、及びモニタ装置500とから構成されている。なお、内視鏡プロセッサ200は、光源装置300を内蔵するように構成されていてもよい。
【0033】
内視鏡100は、手元操作部112と、この手元操作部112に連設される挿入部114とを備える。術者は手元操作部112を把持して操作し、挿入部114を被検者の体内に挿入することによって観察を行う。
【0034】
手元操作部112には、鉗子挿入部138が設けられており、この鉗子挿入部138が先端部144の鉗子口156に連通されている。本実施形態では、OCTプローブ600を鉗子挿入部138から挿入することによって、OCTプローブ600を鉗子口156から導出する。OCTプローブ600は、鉗子挿入部138から挿入され、鉗子口156から導出される挿入部602と、術者がOCTプローブ600を操作するための操作部604、及びコネクタ610を介してOCTプロセッサ400と接続されるケーブル606から構成されている。
【0035】
内視鏡100の先端部144には、観察光学系150、照明光学系152、及びCCD(不図示)が配設されている。
【0036】
観察光学系150は、被検体を図示しないCCDの受光面に結像させ、CCDは受光面上に結像された被検体像を各受光素子によって電気信号に変換する。本実施形態のCCDは、3原色の赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルタが所定の配列(ベイヤー配列、ハニカム配列)で各画素毎に配設されたカラーCCDである。なお、符号154は、観察光学系150に向けて洗浄液や加圧エアを供給するための洗浄ノズルである。
【0037】
光源装置300は、可視光を図示しないライトガイドに入射させる。ライトガイドの一端はLGコネクタ120を介して光源装置300に接続され、ライトガイドの他端は照明光学系152に対面している。光源装置300から発せられた光は、ライトガイドを経由して照明光学系152から出射され、観察光学系150の視野範囲を照明する。
【0038】
内視鏡プロセッサ200には、CCDから出力される画像信号が電気コネクタ110を介して入力される。このアナログの画像信号は、内視鏡プロセッサ200内においてデジタルの画像信号に変換され、モニタ装置500の画面に表示するための必要な処理が施される。
【0039】
このように、内視鏡100で得られた観察画像のデータが内視鏡プロセッサ200に出力され、内視鏡プロセッサ200に接続されたモニタ装置500に画像が表示される。
【0040】
図2は図1のOCTプロセッサの内部構成を示すブロック図である。図2に示すOCTプロセッサ400及びOCTプローブ600は、光干渉断層(OCT:Optical Coherence Tomography)計測法による測定対象の断層情報(断層画像)を取得するためのものである。
【0041】
OCTプロセッサ400は、測定のための光Laを射出する第1の光源部(第1の光源ユニット)12と、第1の光源部12から射出された光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2に分岐するとともに、被検体である測定対象Sからの戻り光L3と参照光L2を合波して干渉光L4を生成する光ファイバカプラ(分岐合波部)14と、光ファイバカプラ14で分岐された測定光L1をOCTプローブ600の光コネクタ18に導くとともに、OCTプローブ600内の回転側光ファイバFB1によって導波された戻り光L3を導波する固定側光ファイバFB2と、光ファイバカプラ14で生成された干渉光L4を干渉信号として検出する干渉光検出部20と、この干渉光検出部20によって検出された干渉信号を処理して断層情報(断層画像)を取得する信号処理部22を有する。信号処理部22で取得された断層情報は画像化されてモニタ装置500に表示される。
【0042】
また、OCTプロセッサ400は、測定の目印を示すためのエイミング光(第2の光束)Leを射出する第2の光源部(第2の光源ユニット)13と、参照光L2の光路長を調整する光路長調整部26と、第1の光源部12から射出された光Laを分光する光ファイバカプラ28と、光ファイバカプラ14で合波された戻り光(干渉光)L4及びL5を検出する検出器30a及び30bと、信号処理部22への各種条件の入力、設定の変更等を行う操作制御部32とを有する。
【0043】
OCTプロセッサ400に接続されるOCTプローブ600は、固定側光ファイバFB2を介して導波された測定光L1を測定対象Sまで導波するとともに測定対象Sからの戻り光L3を導波する回転側光ファイバFB1と、この回転側光ファイバFB1を固定側光ファイバFB2に対して回転可能に接続し、測定光L1及び戻り光L3を伝送する光コネクタ18と、を備える。
【0044】
なお、図2に示したOCTプロセッサ400及びOCTプローブ600においては、上述した射出光La、エイミング光Le、測定光L1、参照光L2及び戻り光L3などを含む種々の光を各光デバイスなどの構成要素間で導波し、伝送するための光の経路として、回転側光ファイバFB1及び固定側光ファイバFB2を含め種々の光ファイバFB(FB3、FB4、FB5、FB6、FB7、FB8など)が用いられている。
【0045】
第1の光源部12は、OCTの測定のための光(例えば、赤外領域の波長可変レーザ光、あるいは低コヒーレンス光)を射出するものである。本例の第1の光源部12は、赤外の波長域で光周波数(波長)を一定の周期で掃引させながらレーザ光La(例えば、波長1.3μmを中心とするレーザ光)を射出する波長可変光源である。
【0046】
この第1の光源部12は、レーザ光あるいは低コヒーレンス光Laを射出する光源12aと、光源12aから射出された光Laを集光するレンズ12bとを備えている。また、詳しくは後述するが、第1の光源部12から射出された光Laは、光ファイバFB4、FB3を介して光ファイバカプラ14で測定光L1と参照光L2に分割され、測定光L1は光コネクタ18に入力される。
【0047】
また、第2の光源部13は、エイミング光Leとして測定部位を確認しやすくするために可視光を射出するものである。例えば、波長660nmの赤半導体レーザ光、波長630nmのHe−Neレーザ光、波長405nmの青半導体レーザ光などを用いることができる。本実施形態における第2の光源部13としては、例えば赤色あるいは青色あるいは緑色のレーザ光を射出する半導体レーザ13aと、半導体レーザ13aから射出されたエイミング光Leを集光するレンズ13bを備えている。第2の光源部13から射出されたエイミング光Leは、光ファイバFB8を介して光コネクタ18に入力される。
【0048】
光コネクタ18では、測定光(第1の光束)L1とエイミング光(第2の光束)Leとが合波され、OCTプローブ600内の回転側光ファイバFB1に導波される。
【0049】
光ファイバカプラ(分岐合波部)14は、例えば2×2の光ファイバカプラで構成されており、固定側光ファイバFB2、光ファイバFB3、光ファイバFB5、光ファイバFB7とそれぞれ光学的に接続されている。
【0050】
光ファイバカプラ14は、第1の光源部12から光ファイバFB4及びFB3を介して入射した光Laを測定光(第1の光束)L1と参照光L2とに分割し、測定光L1を固定側光ファイバFB2に入射させ、参照光L2を光ファイバFB5に入射させる。
【0051】
さらに、光ファイバカプラ14は、光ファイバFB5に入射され後述する光路長調整部26によって周波数シフト及び光路長の変更が施されて光ファイバFB5を戻った参照光L2と、後述するOCTプローブ600で取得され固定側光ファイバFB2から導波された光L3とを合波し、光ファイバFB3(FB6)及び光ファイバFB7に射出する。
【0052】
OCTプローブ600は、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2と接続されており、固定側光ファイバFB2から、光コネクタ18を介して、エイミング光Leと合波された測定光L1が回転側光ファイバFB1に入射される。入射されたこのエイミング光Leと合波された測定光L1を回転側光ファイバFB1によって伝送して測定対象Sに照射する。そして測定対象Sからの戻り光L3を取得し、取得した戻り光L3を回転側光ファイバFB1によって伝送して、光コネクタ18を介して、固定側光ファイバFB2に射出するようになっている。
【0053】
干渉光検出部20は、光ファイバFB6及び光ファイバFB7と接続されており、光ファイバカプラ14で参照光L2と戻り光L3とを合波して生成された干渉光L4及びL5を干渉信号として検出するものである。
【0054】
光ファイバカプラ28から分岐させた光ファイバFB6の光路上には、干渉光L4の光強度を検出する検出器30aが設けられ、光ファイバFB7の光路上には干渉光L5の光強度を検出する検出器30bが設けられている。干渉光検出部20は、検出器30a及び検出器30bの検出結果に基づいて、干渉信号を生成する。
【0055】
信号処理部22は、干渉光検出部20で検出した干渉信号から断層情報を取得し、取得した断層情報を画像化した断層画像をモニタ装置500へ出力する。なお、本実施形態では、断層画像の中から管腔内の液体浮遊物(例えば胆泥など)が除去された補正画像が生成され、モニタ装置500に出力される。信号処理部22については後で詳述する。
【0056】
参照光L2の光路長を可変するための光路長調整部26は、光ファイバFB5の参照光L2の射出側(すなわち、光ファイバFB5の光ファイバカプラ14とは反対側の端部)に配置されている。
【0057】
光路長調整部26は、光ファイバFB5から射出された光を平行光にする第1光学レンズ80と、第1光学レンズ80で平行光にされた光を集光する第2光学レンズ82と、第2光学レンズ82で集光された光を反射する反射ミラー84と、第2光学レンズ82及び反射ミラー84を支持する基台86と、基台86を光軸方向に平行な方向に移動させるミラー移動機構88とを有する。第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変化させることにより参照光L2の光路長が調整される。
【0058】
第1光学レンズ80は、光ファイバFB5のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー84で反射された参照光L2を光ファイバFB5のコアに集光する。
【0059】
また、第2光学レンズ82は、第1光学レンズ80により平行光にされた参照光L2を反射ミラー84上に集光するとともに、反射ミラー84により反射された参照光L2を平行光にする。このように、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82とにより共焦点光学系が形成されている。
【0060】
さらに、反射ミラー84は、第2光学レンズ82で集光される光の焦点に配置されており、第2光学レンズ82で集光された参照光L2を反射する。
【0061】
これにより、光ファイバFB5から射出した参照光L2は、第1光学レンズ80により平行光になり、第2光学レンズ82により反射ミラー84上に集光される。その後、反射ミラー84により反射された参照光L2は、第2光学レンズ82により平行光になり、第1光学レンズ80により光ファイバFB5のコアに集光される。
【0062】
また、基台86は、第2光学レンズ82と反射ミラー84とを固定し、ミラー移動機構88は、基台86を第1光学レンズ80の光軸方向(図2矢印A方向)に移動させる。
【0063】
ミラー移動機構88で、基台86を矢印A方向に移動させることで、第1光学レンズ80と第2光学レンズ82との距離を変更することができ、参照光L2の光路長を調整することができる。
【0064】
操作制御部32は、キーボード、マウス等の入力手段と、入力された情報に基づいて各種条件を管理する制御手段とを有し、信号処理部22に接続されている。操作制御部32は、入力手段から入力されたオペレータの指示に基づいて、信号処理部22における各種処理条件等の入力、設定、変更等を行う。
【0065】
なお、操作制御部32は、操作画面をモニタ装置500に表示させてもよいし、別途表示部を設けて操作画面を表示させてもよい。また、操作制御部32で、第1の光源部12、第2の光源部13、光コネクタ18、干渉光検出部20、光路長ならびに検出器30a及び30bの動作制御や各種条件の設定を行うようにしてもよい。
【0066】
図3はOCTプローブ600の断面図である。図3に示すように、挿入部602の先端部は、プローブ外筒(シース)620と、キャップ622と、回転側光ファイバFB1と、バネ624と、固定部材626と、光学レンズ628とを有している。
【0067】
プローブ外筒620は、可撓性を有する筒状の部材であり、光コネクタ18においてエイミング光Leが合波された測定光L1及び戻り光L3が透過する材料からなっている。なお、プローブ外筒620は、測定光L1(エイミング光Le)及び戻り光L3が通過する先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端、以下プローブ外筒620の先端と言う)側の一部が全周に渡って光を透過する材料(透明な材料)で形成されていればよく、先端以外の部分については光を透過しない材料で形成されていてもよい。
【0068】
キャップ622は、プローブ外筒620の先端に設けられ、プローブ外筒620の先端を閉塞している。
【0069】
また、キャップ622には、ガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤ用孔623が形成されており、ガイドワイヤ用孔623は、キャップ622の側面に一方の開口623Aを有し、前面に他方の開口623Bを有している。ガイドワイヤは、事前に測定部位に配置されてOCTプローブ600をその位置に案内するためのものであり、測定位置に配置したガイドワイヤをこのガイドワイヤ用孔623に挿通させ、OCTプローブ600を先方に進行させることによって、OCTプローブ600をガイドワイヤに案内させて測定部位まで移動させることができる。このようにガイドワイヤを使用してOCTプローブ600を案内することによって、OCTプローブ600を直接進入させることが難しい胆管や膵管へのOCTプローブ600の配置を容易に行うことができる。
【0070】
回転側光ファイバFB1は、線状部材であり、プローブ外筒620内にプローブ外筒620に沿って収容されている。回転側光ファイバFB1は、光コネクタ18で合波された測定光L1とエイミング光Leとを光学レンズ628まで導波するとともに、測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに照射して光学レンズ628で取得した測定対象Sからの戻り光L3を光コネクタ18まで導波する。この戻り光L3は、光コネクタ18を介して固定側光ファイバFB2に入射する。回転側光ファイバFB1は、プローブ外筒620に対して回転自在、及びプローブ外筒620の軸方向に移動自在な状態で配置されている。
【0071】
バネ624は、回転側光ファイバFB1の外周に固定されている。回転側光ファイバFB1及びバネ624は、回転筒656とともに光コネクタ18に接続されている。
【0072】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1の測定側先端(光コネクタ18と反対側の回転側光ファイバFB1の先端)に配置されている。光学レンズ628の先端部(光出射面)は、回転側光ファイバFB1から射出された測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し集光するために略球状の形状で形成されている。
【0073】
光学レンズ628は、回転側光ファイバFB1から射出した測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し照射し、測定対象Sからの戻り光L3を集光し回転側光ファイバFB1に入射する。
【0074】
固定部材626は、回転側光ファイバFB1と光学レンズ628との接続部の外周に配置されており、光学レンズ628を回転側光ファイバFB1の端部に固定する。固定部材626による回転側光ファイバFB1と光学レンズ628の固定方法は、特に限定されず、接着剤により、固定部材626と回転側光ファイバFB1及び光学レンズ628を接着させて固定してもよいし、ボルト等を用い機械的構造で固定してもよい。なお、固定部材626は、ジルコニアフェルールやメタルフェルールなど光ファイバの固定や保持あるいは保護のために用いられるものであれば、如何なるものを用いてもよい。
【0075】
回転側光ファイバFB1及びバネ624は、回転筒656に接続されており、回転筒656によって回転側光ファイバFB1及びバネ624を回転させることで、光学レンズ628をプローブ外筒620に対し、矢印R2方向(回転側光ファイバFB1の光軸を回転中心とする回転方向)に回転させる。また、光コネクタ18は、回転エンコーダを備える。回転エンコーダからの信号に基づいて光学レンズ628の位置情報(角度情報)から測定光L1の照射位置が検出される。つまり、回転している光学レンズ628の回転方向における基準位置に対する角度を検出して、測定位置を検出する。
【0076】
さらに、回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628は、モータ660を含む駆動機構により、プローブ外筒620内部を矢印S1方向(鉗子口方向)、及びS2方向(プローブ外筒620の先端方向)に移動可能に構成されている。
【0077】
図3の左側には、OCTプローブ600の操作部604における回転側光ファイバFB1等の駆動機構の概略構成が示されている。
【0078】
プローブ外筒620は、固定部材670に固定されているのに対し、回転側光ファイバFB1及びバネ624の基端部は、回転筒656に接続されている。回転筒656は、モータ652の回転に応じてギア654を介して回転するように構成されている。回転筒656は、光コネクタ18に接続されており、測定光L1及び戻り光L3は、光コネクタ18を介して回転側光ファイバFB1と固定側光ファイバFB2間を伝送される。
【0079】
回転筒656、モータ652、ギア654、及び光コネクタ18を内蔵するフレーム650は、支持部材662を備えている。支持部材662は、図示しないネジ孔を有しており、該ネジ孔には進退移動用ボールネジ664が咬合している。進退移動用ボールネジ664には、モータ660が接続されている。モータ660を回転駆動することによりフレーム650を進退移動させ、これにより回転側光ファイバFB1、バネ624、固定部材626、及び光学レンズ628を図3のS1及びS2方向(プローブ外筒620の長手方向に沿った軸方向、すなわち、回転側光ファイバFB1の光軸に沿った方向)に移動させることが可能となっている。
【0080】
OCTプローブ600は、以上のような構成であり、モータ660の駆動によって回転側光ファイバFB1及びバネ624が、図3中矢印R2方向に回転されることで、光学レンズ628から射出される測定光L1(エイミング光Le)を測定対象Sに対し、矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に対し走査しながら照射し、戻り光L3を取得する。エイミング光Leは、測定対象Sに対し、例えば青色、赤色あるいは緑色のスポット光として照射される。このエイミング光Leの反射光(測定対象Sからの反射光)は、モニタ装置500に表示された観察画像に輝点としても表示される。
【0081】
このような回転方向に沿った光走査により、プローブ外筒620の円周方向の全周において、測定対象Sの所望の部位を正確にとらえることができ、測定対象Sを反射した戻り光L3を取得することができる。
【0082】
さらに、3次元ボリュームデータを生成するための立体的な領域の断層情報を取得する場合は、モータ66を含む駆動機構により回転側光ファイバFB1及び光学レンズ628が矢印S1方向の移動可能範囲の終端まで移動され、断層情報を取得しながら所定量ずつS2方向に移動し、又は断層情報の取得とS2方向への所定量移動を交互に繰り返しながら、移動可能範囲の終端まで移動する。
【0083】
このように測定対象Sに対して所望の範囲の断層情報を取得することによって3次元ボリュームデータを得ることができる。
【0084】
図4は、測定対象Sに対して光走査がラジアル走査の場合の断層情報のスキャン面を示す図であり、図5は図4の断層情報により構築される3次元ボリュームデータを示す図である。干渉信号により測定対象Sの深さ方向(Z方向)の断層情報を取得し、測定対象Sに対し図3矢印R2方向(プローブ外筒620の円周方向)に走査(ラジアル走査)することで、図4に示すように、Z方向とZ方向と直交するX方向とからなるスキャン面での断層情報を取得することができる。またさらに、このスキャン面に直交するY方向に沿ってスキャン面を移動させることで、図5に示すように、3次元ボリュームデータを生成するための立体的な領域の断層情報が取得できる。
【0085】
図6は内視鏡100の鉗子口156から導出されたOCTプローブ600を用いて断層情報を得る様子を示す図である。図6に示すように、OCTプローブ600の挿入部602の先端部を、測定対象Sの所望の部位に近づけて、断層情報を得る。所望の立体的な領域の断層情報を取得する場合は、必ずしもOCTプローブ600本体を移動させる必要はなく、前述の駆動機構によりプローブ外筒620内で光学レンズ628を移動させればよい。
【0086】
本実施形態の画像診断装置10は、OCTプロセッサ400の信号処理部22において行われる断層画像の補正処理に特徴を有するものである。以下、信号処理部22の構成について説明する。
【0087】
図7は図2の信号処理部22の構成を示すブロック図である。図7に示すように、信号処理部22は、主として、フーリエ変換部410、対数変換部420、断層画像構築部450、断層画像補正部460、メモリ部470、及び制御部490を備えて構成される。
【0088】
制御部490は、信号処理部22の各部の動作を制御するためのものである。また、操作制御部32の操作に従って各種処理が実施されるように、各部に対して制御信号が出力される。
【0089】
メモリ部470は、信号処理部22の各部の動作に必要なプログラムや各種情報を格納しておくためのものである。なお、本実施形態では、後述する断層画像補正部460において断層画像の中からプローブ領域やガイドワイヤ領域、管腔組織領域を検出するための情報がメモリ部470に記憶されている。
【0090】
フーリエ変換部410には、干渉光検出部20から出力された干渉信号が入力される。フーリエ変換部410は、入力された干渉信号に対してFFT(高速フーリエ変換)による周波数解析を行う機能を有する。フーリエ変換部410では、FFTによる周波数解析によって、測定対象Sの各深さ位置における反射光(戻り光)L3の強度、すなわち深度方向の反射強度データが生成され出力される。
【0091】
対数変換部420には、フーリエ変換部410から出力された反射強度データが入力される。対数変換部420は、反射強度データのダイナミックレンジを広げるために対数変換を行う機能を有する。対数変換部420からは、対数変換された反射強度データが出力される。
【0092】
断層画像構築部450には、対数変換部420から出力された反射強度データが入力される。断層画像構築部450は、反射強度データを断層画像として視覚化するための画像処理機能を有し、例えば、輝度、コントラスト調整、表示サイズにあわせたリサンプル、ラジアル走査等の走査方法に合わせての座標変換などを行う。断層画像構築部450では、断層画像を示す断層画像データが生成され、この断層画像データは断層画像補正部460又はモニタ装置500に出力される。
【0093】
断層画像補正部460には、断層画像構築部450から出力された断層画像データが入力される。断層画像補正部460は、断層画像データに基づき、断層画像の中から所定の対象物を除去(非表示化)する補正機能を有する。断層画像補正部460で行われる補正処理については後で詳述するが、管腔内の液体浮遊物(例えば胆泥など)のような不確定な形状を有する物体を検出して、それを非表示化した補正断層画像を生成することを特徴としている。断層画像補正部460からは、補正処理が行われた補正断層画像データが出力される。
【0094】
次に、上記の如く構成された本実施形態の作用について説明する。
【0095】
まず、胆管や膵管などの管腔内にOCTプローブ600を挿入する場合、前もってガイドワイヤを管腔内に留置しておく。ガイドワイヤを留置する方法については周知であるため、ここでは説明を省略する。そして、図3に示したOCTプローブ600のガイドワイヤ用孔623にガイドワイヤを基端側から通して、ガイドワイヤに沿ってOCTプローブ600を管腔内に挿入し、測定したい部位に配置する。
【0096】
次に、OCTプローブ600の先端を管腔内の内壁面に密着させた状態で、OCTプローブ600の先端に配置される光学レンズ628から測定対象に測定光L1(エイミング光Le)を出射することにより測定が行われる。ここで、一例として、胆管内に挿入されたOCTプローブ600により測定が行われるときの様子を簡略的に示した概略図(OCTプローブ600の軸方向に垂直な方向の断面図)を図8に示す。図8中、符号700はガイドワイヤ、符号704は胆泥を示している。なお、図8では、OCTプローブ600の内蔵物(光学レンズ628や光ファイバFB1など)の図示は省略している。
【0097】
OCTプローブ600による測定が開始されると、図7に示した干渉光検出部20には、OCTプローブ600から測定対象Sに測定光L1を照射したときに得られる反射光L3と参照光L2とが合波したときの干渉光が干渉光検出部20に入力される。なお、参照光L2は、上述したように、第1の光源部12から射出された光を分割して得られるものである。
【0098】
図7に示すように、干渉光検出部20では、干渉信号生成部20aで干渉光(光信号)を干渉信号(電気信号)に変換する処理が施され、さらにAD変換部20bで干渉信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する処理が行われる。なお、AD変換部20bでは、例えば、80MHz程度のサンプリングレートで14bit程度の分解能でアナログ信号からデジタル信号への変換が実施されるが、これらの値に特に限定されるものではない。AD変換部20bでデジタル信号に変換された干渉信号は、信号処理部22に出力される。
【0099】
信号処理部22に入力された干渉信号は、フーリエ変換部410でFFT(高速フーリエ変換)により周波数解析が行われる。これにより、測定対象Sの各深さ位置における反射光(戻り光)L3の強度、すなわち深度方向の反射強度データが生成される。この反射強度データは、対数変換部420にて対数変換され、断層画像構築部450に出力される。
【0100】
断層画像構築部450では、入力された反射強度データに対して輝度、コントラスト調整、表示サイズにあわせたリサンプル、ラジアル走査等の走査方法に合わせての座標変換などの画像処理が行われ、断層画像を示すデータとして断層画像データが生成される。この断層画像データは断層画像補正部460又はモニタ装置500に出力される。
【0101】
断層画像補正部460では、断層画像データに基づき、断層画像の中から所定の対象物を除去(非表示化)する補正処理が行われる。補正後の断層画像を示す補正画像データはモニタ装置500に出力される。
【0102】
これにより、モニタ装置500には、断層画像データに基づく断層画像、又は補正画像データに基づく補正断層画像が表示され、診断が可能となる。なお、モニタ装置500に表示する画像については、操作制御部32の入力手段からオペレータが選択できるようになっている。
【0103】
ここで、信号処理部22において行われる断層画像の補正処理について説明する。図9は図7の断層画像補正部460で行われる処理の流れを示したフローチャート図である。以下、図8に示した各処理について詳述する。
【0104】
まず、断層画像構築部450から断層画像データを取得する(ステップS10)。このとき取得される断層画像データによって生成される断層画像の一例を図10に示す。図10に示した断層画像は2次元の極座標系で示されており、横軸はOCTプローブ600の長軸周りの円周方向の位置(回転角)θを示し、縦軸はOCTプローブ600の光出射端から出射される測定光L1の出射方向(測定光L1の光軸方向であって、測定対象Sの深さ方向とする方向)の深さ位置rを示しており、縦軸下向きが測定光L1の出射方向となっている。
【0105】
図10に示した断層画像は、胆管内に挿入されたOCTプローブ600を用いて取得されたものである。この断層画像の中には、OCTプローブ600のプローブ外筒620や、OCTプローブ600を胆管内に挿入するときの挿入補助具として用いられるガイドワイヤ700が含まれている。また、胆管の内壁部に相当する管腔組織702や胆管内の内部領域(液体領域)に浮遊する液体浮遊物として胆泥704が含まれている。
【0106】
次に、断層画像の中からプローブ領域を検出する(ステップS12)。信号処理部22のメモリ部470には、OCTプローブ600を検出するための情報(OCT情報)として、OCTプローブ600の形、大きさ、位置、コントラストなどに関する情報が記憶されている。断層画像補正部460は、OCT情報に基づいて断層画像の中からプローブ領域の検出を行う。
【0107】
ここで、プローブ領域の検出方法の一例として、動的計画法を利用した方法について説明する。この方法では、まず、ステップS10で取得された断層画像データによって生成される断層画像、例えば図10に示した断層画像(原画像)に対してエッジ強調フィルタ(例えば2Dガボールフィルタ等)をかけて、OCTプローブ600のプローブ外筒620の内壁面を示すラインが強調されたエッジ強調画像を生成する。
【0108】
次に、上記のようにして生成されたエッジ強調画像の符号を反転し、検出したいエッジほどマイナス値となるコスト画像に変換する。そして、コスト画像上の探索範囲(例えばr=3〜60画素)において、動的計画法により画像左端から右端へ向かって積算コスト値が最小となるパスを検出する。この際、動的計画法で局所積算コスト最小値を探索するための縦方向(r方向)の範囲は、現在注目画素±1に制限しており、探索パスの形状が縦方向に階段状に大きくずれることがないように調整している。この結果、図11に示すように、最後に検出された積算コスト値が最小となるパス(最小コストパス)706がプローブ外筒620の内壁面を示すラインとなる。
【0109】
次に、上記のようにして求められた最小コストパス706(すなわち、プローブ外筒620の内壁面を示すライン)をプローブ外筒620の側壁部の肉厚分だけ下方向(r方向)へシフトさせ、図12に示すように、プローブ外筒620の外壁面を示すラインとしてプローブ表面ライン708を検出する。本例では、最小コストパス706から30画素分だけ下方向へシフトしている。そして、プローブ表面ライン708から上側(OCTプローブ600の外周から中心軸に向かう向き)の領域をプローブ領域として検出する。
【0110】
以上が、動的計画法を利用した方法の説明である。なお、プローブ領域の検出方法としては、動的計画法を利用した方法に限定されず、それ以外の方法を用いてもよい。
【0111】
次に、断層画像の中からガイドワイヤ領域を検出する(ステップS14)。信号処理部22のメモリ部470には、ガイドワイヤ700を検出するための情報(ガイドワイヤ情報)として、ガイドワイヤ700の形、大きさ、位置、コントラストなどに関する情報が記憶されている。断層画像補正部460は、ガイドワイヤ情報に基づいて断層画像の中からガイドワイヤ領域の検出を行う。
【0112】
ここで、ガイドワイヤ領域の検出方法の一例として、エッジ強調フィルタを用いる方法について説明する。この方法では、まず、ステップS10で取得された断層画像データによって生成される断層画像、例えば図10に示した画像に対し、複数方向のエッジ強調フィルタ(例えば2Dガボールフィルタ等)をかける。そして、これらのエッジ強調フィルタをかけた結果を統合し、統合フィルタ画像を生成する。この統合フィルタ画像を負のフィルタ値に対して厳しめの閾値α(例えばα=−90.0)で二値化し、抽出された領域の中で最大面積を持つ領域を抽出する。このとき、図13に示すように、抽出領域の面積が所定範囲内(例えば100〜2500画素分に相当する面積)であれば、その領域をガイドワイヤ700として検出する。
【0113】
以上が、エッジ強調フィルタを用いる方法の説明である。なお、ガイドワイヤ領域の検出方法としては、エッジ強調フィルタを用いる方法に限定されず、それ以外の方法を用いてもよい。
【0114】
次に、断層画像の中から管腔組織領域を検出する(ステップS16)。信号処理部22のメモリ部470には、管腔組織を検出するための情報(管腔組織情報)として、診断対象となる管腔組織の形、大きさ、位置、コントラストなどに関する情報が記憶されている。断層画像補正部460は、管腔組織情報に基づいて断層画像の中から管腔組織領域の検出を行う。
【0115】
ここで、管腔組織領域の検出方法の一例として、領域抽出法を利用した方法について説明する。この方法では、まず、ステップS10で取得された断層画像によって生成される断層画像、例えば図10に示した断層画像(原画像)に対して、σ=2.0(画素)のガウシアン平滑化フィルタをかけて、高周波ノイズを除去した画像を生成する。
【0116】
次に、上記の原画像(すなわち、図10に示した断層画像)に対して、OCTプローブ600の光学レンズ628から出射される測定光L1の減衰による背景成分を指数関数でモデル化したものを最小二乗フィッティングすることによって、背景成分画像を生成する。なお、本例では、以下のモデル式を用いている。
【0117】
【数1】

ここで、左辺をP(r,θ)としているが、θは等方的なOCTの光の放射角度なので、上式右辺にθ依存性は含まれていない。ただし、フィッティング用のデータとしては、すべてのθにおける画素値を使用している。また、最小二乗法を単純な線形問題に帰着させるため、定数項cについては縦(r)方向の下側20画素領域の画素値の平均値c0を予め求めて代入する。
【0118】
最後に、高周波ノイズを除去した画像から背景成分画像P(r,θ)を引いて、原画像から高周波ノイズ及び背景成分を除去した差分画像を生成する。
【0119】
次に、差分画像に対し、ヒステリシス2値化によって管腔組織表面の候補領域を得る。その際、ヒステリシス2値化の閾値は高めの閾値Hと低めの閾値Lを使用している。本例では、H=45.0、L=15.0である。ヒステリシス2値化処理では、図14に示すように、高めの閾値Hと低めの閾値Lとによる検出領域を求める。そして、低めの閾値Lにより検出された領域のうち、高めの閾値Hにより検出された領域を内包する領域だけを残し、図15に示すような最終的な2値化結果が得られる。
【0120】
次に、各2値化領域(図15において白色で示された各領域)に対し、面積、円形度、コントラストなどの特徴量を算出する。これらの特徴量に対して閾値処理を行い、ノイズ領域(FP領域)と判定された2値化領域を削除する。
【0121】
次に、各2値化領域の各画素を中心としてある半径(例えば15画素)の円を描画し、隣接する円同士が重なり合う領域を1つのクラスタとみなす。各クラスタのうち、最大面積を持つクラスタを管腔組織領域として検出する。図15に示した例では、最大面積を持つ領域が管腔組織702として検出される。
【0122】
以上が、領域抽出法を利用した方法の説明である。なお、管腔組織領域の検出方法としては、領域抽出法を利用した方法に限定されず、それ以外の方法を用いてもよい。
【0123】
次に、断層画像の中から液体浮遊物領域を検出する(ステップS18)。本実施形態では、液体浮遊物領域の検出方法として、図10に示した断層画像の中からステップS12〜S16にて検出された各領域(すなわち、プローブ領域、ガイドワイヤ領域、及び管腔組織領域)を差し引く。これにより、例えば図16に示すように、断層画像の中から液体浮遊物領域として胆泥704が検出される。この方法によれば、管腔内の液体浮遊物、つまり不確定な形状を有する物体を複雑な処理を行うことなく、簡易な方法で容易に検出することができる。
【0124】
次に、断層画像からプローブ領域、ガイドワイヤ領域、及び液体浮遊物領域が除去された補正断層画像を生成する(ステップS20)。これにより、図17に示すような補正断層画像が得られる。このとき、除去対象となる各領域の画素は、それぞれの領域の周辺画素と同一又は類似の色で補間処理が行われることが好ましい。
【0125】
そして最後に、補正断層画像を生成するためのデータとして補正画像データをモニタ装置500に出力する(ステップS22)。これにより、OCTプローブ600やガイドワイヤ700、胆泥704が除去された補正断層画像がモニタ装置500に表示される。
【0126】
本実施形態では、断層画像からプローブ領域、ガイドワイヤ領域、及び液体浮遊物領域が除去された補正断層画像が自動的に生成されるようになっているが、これらの領域のうち補正断層画像の中で表示又は非表示とする領域を個別に選択できるようにしてもよい。この選択は操作制御部32の入力手段からオペレータが行えるようにするとよい。制御部490は、操作制御部32で選択された情報に従って、断層画像補正部460の補正処理条件の設定を変更する。これにより、オペレータの意図に応じた補正断層画像を出力することができ、利便性が向上する。
【0127】
なお、図8において、ステップS12、S14、S16に示した各処理が行われる順序に限定はなく、例えば図8に示した例とは逆の順序でもよいし、各処理が並列的に行われてもよい。
【0128】
このように本実施形態の画像診断装置10によれば、OCT計測によって取得された断層画像の中からプローブ領域、ガイドワイヤ領域、及び管腔組織領域を検出し、断層画像からこれらの領域を差し引くことにより、管腔内の液体浮遊物の領域を検出することができる。これにより、断層画像から管腔内の液体浮遊物が除去された補正画像を容易に提供することが可能となる。その結果、断層画像から診断に直接関係がない情報が除去された補正画像を表示することが可能となり、診断の効率や精度を向上させることができる。
【0129】
本実施形態では、胆管内の断層画像を取得する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、管腔内が液体で満たされその中に浮遊物(液体浮遊物)が存在する領域に対するOCT計測に好適であり、例えば膵管、血管、尿管などに適用することが可能である。
【0130】
なお、上述した実施形態では、OCTプロセッサ400としてSS−OCT(Swept Source OCT)装置を用いて説明したが、これに限らず、OCTプロセッサ400をSD−OCT(Spectral Domain OCT)装置としても適用可能である。
【0131】
以上、本発明の光断層画像処理装置及び光断層画像処理方法について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0132】
10…画像診断装置、20…干渉光検出部、20a…干渉信号生成部、20b…AD変換部、22…信号処理部、100…内視鏡、200…内視鏡プロセッサ、300…光源装置、400…OCTプロセッサ、410…フーリエ変換部、420…対数変換部、450…断層画像構築部、460…断層画像補正部、490…制御部、500…モニタ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する画像取得手段と、
前記光断層画像の中から前記管腔内に挿入された管腔挿入物の領域を検出する管腔挿入物検出手段と、
前記光断層画像の中から前記管腔の組織領域を検出する管腔組織検出手段と、
前記光断層画像から前記管腔挿入物の領域及び前記管腔の組織領域を差し引くことにより、前記光断層画像の中から前記管腔内の液体中に浮遊する液体浮遊物の領域を検出する液体浮遊物検出手段と、
前記液体浮遊物検出手段の検出結果に基づいて、前記光断層画像から前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成する補正画像生成手段と、
を備えたことを特徴とする光断層画像処理装置。
【請求項2】
前記管腔挿入物検出手段は、前記管腔内に挿入された光プローブの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することを特徴とする請求項1に記載の光断層画像処理装置。
【請求項3】
前記管腔挿入物検出手段は、前記管腔内に前記光プローブを案内するためのガイドワイヤの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することを特徴とする請求項1又は2に記載の光断層画像処理装置。
【請求項4】
前記補正画像生成手段は、前記管腔挿入物検出手段及び前記液体浮遊物検出手段の検出結果に基づき、前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光断層画像処理装置。
【請求項5】
前記管腔挿入物検出手段及び前記液体浮遊物検出手段によって検出された各領域を前記光断層画像から除去するか否かを選択的に指示する指示手段を備え、
前記補正画像生成手段は、前記指示手段の指示に従って前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が選択的に除去された補正画像を生成することを特徴とする請求項4に記載の光断層画像処理装置。
【請求項6】
前記補正画像生成手段により生成された前記補正画像を表示する表示手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光断層画像処理装置。
【請求項7】
前記管腔は、胆管、膵管、血管、又は尿管であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光断層画像処理装置。
【請求項8】
光干渉断層計測により管腔内の光断層画像を取得する画像取得工程と、
前記光断層画像の中から前記管腔内に挿入された管腔挿入物の領域を検出する管腔挿入物検出工程と、
前記光断層画像の中から前記管腔の組織領域を検出する管腔組織検出工程と、
前記光断層画像から前記管腔挿入物の領域及び前記管腔の組織領域を差し引くことにより、前記光断層画像の中から前記管腔内の液体中に浮遊する液体浮遊物の領域を検出する液体浮遊物検出工程と、
前記液体浮遊物検出工程の検出結果に基づいて、前記光断層画像から前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成する補正画像生成工程と、
を含むことを特徴とする光断層画像処理方法。
【請求項9】
前記管腔挿入物検出工程は、前記管腔内に挿入された光プローブの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することを特徴とする請求項8に記載の光断層画像処理方法。
【請求項10】
前記管腔挿入物検出工程は、前記管腔内に前記光プローブを案内するためのガイドワイヤの領域を前記管腔挿入物の領域として検出することを特徴とする請求項8又は9に記載の光断層画像処理方法。
【請求項11】
前記補正画像生成工程は、前記管腔挿入物検出工程及び前記液体浮遊物検出工程の検出結果に基づき、前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が除去された補正画像を生成することを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光断層画像処理方法。
【請求項12】
前記管腔挿入物検出工程及び前記液体浮遊物検出工程によって検出された各領域を前記光断層画像から除去するか否かを選択的に指示する指示工程を含み、
前記補正画像生成工程は、前記指示工程の指示に従って前記光断層画像から前記管腔挿入物及び前記液体浮遊物が選択的に除去された補正画像を生成することを特徴とする請求項11に記載の光断層画像処理方法。
【請求項13】
前記補正画像生成工程により生成された前記補正画像を表示する表示工程を含むことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の光断層画像処理方法。
【請求項14】
前記管腔は、胆管、膵管、血管、又は尿管であることを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の光断層画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−66599(P2013−66599A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207427(P2011−207427)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【出願人】(504297272)富士フイルムソフトウエア株式会社 (15)
【Fターム(参考)】