説明

光断層画像化装置

【課題】測定光と参照光の干渉光の周波数解析を行うことにより断層画像を取得する光コヒーレンストモグラフィー計測において、所望のタイミングで、自動的に測定光と参照光の光路長差を調整する。
【解決手段】測定対象Sへ測定光L1を照射する位置を微少に移動する毎に、光源ユニット210から補助光Lbを射出し、光分割手段3で補助測定光Lb1と補助参照光Lb2とに分割し、合波手段4で反射膜19で反射した補助反射光Lb3と補助参照光Lb2を合波する。光検出器247は補助干渉光Lb4の光強度を検出する。リアルタイム光路長調整部253は、補助干渉光Lb4の光強度に基づいて、基準点である光プローブ230の窓入射点16aにおいて、測定光L1+反射光L3の光路長と参照光L2の光路長とが一致するように、光路長変更手段220の反射ミラー22を移動し、参照光Lの光路長を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OCT(Optical Coherence Tomography)計測による光断層画像を取得する光断層画像化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、体腔内の断層画像を取得する装置として超音波を用いた超音波断層画像取得装置等が知られているが、その他に低コヒーレンス光による光干渉を用いた光断層画像取得装置を用いることが提案されている(たとえば特許文献1参照)。特許文献1においては、タイムドメイン計測により断層画像を取得するものであって、内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネルを介して体腔内にプローブを挿入することにより測定光が体腔内に導波されるようになっている。
【0003】
具体的には、光源から射出された低コヒーレンス光が測定光と参照光とに分割された後、測定光は測定対象に照射され、測定対象からの反射光が合波手段に導波される。一方、参照光は光路長の変更が施された後に合波手段に導波される。そして、合波手段により反射光と参照光とが合波され、合波されたことによる干渉光がヘテロダイン検波等により測定される。ここで、タイムドメイン計測は測定光と参照光との光路長が一致したときに干渉光が検出されることを利用した計測方法であり、参照光の光路長を変更することにより、測定対象に対する測定位置(測定深さ)が変更されるようになっている。
【0004】
ところで、近年、干渉光を空間的あるいは時間的に分光することにより、参照光の光路長を掃引することなく高速に光断層画像を取得する周波数ドメインOCT計測が提案されている(たとえば特許文献2、3または非特許文献1参照)。この周波数ドメインOCT計測としては、干渉光を空間的に分光することにより光断層画像を取得するSD−OCT(Source Domain OCT)計測と、干渉光を時間的に分光することにより光断層画像を取得するSS−OCT(Swept source OCT)計測とが知られている。
【0005】
SD−OCT(Source Domain OCT)計測では、光源から射出される光の周波数を空間的に分光して干渉光を時間的に一括して検出を行うものであり、通常マイケルソン型干渉計を用いて光源から広帯域の低コヒーレンス光を射出して測定光と参照光とに分割した後、測定対象に測定光が照射されたときの反射光と参照光との干渉光を各周波数成分に分解したチャンネルドスペクトル信号をフーリエ解析することにより、深さ方向の走査を行わずに光断層画像を取得するようになっている。
【0006】
SS−OCT(Swept source OCT)計測は、光源から射出されたコヒーレンス光を測定光と参照光とに分割した後、測定光が測定対象に照射されたときの反射光と参照光とを合波し、反射光と参照光との干渉光の強度に基づいて光断層画像を取得するものである。このSS−OCT計測では、光源から射出される光の周波数を時間的に変化させながら干渉光の検出を行うものであり、例えば、マイケルソン型干渉計を用いて、光源から射出されるレーザ光の周波数を時間的に変化させながら反射光と参照光との干渉が行われる。そして、光周波数領域のインターフェログラムから所定の測定対象の深さ位置における反射強度を検出し、これを用いて断層画像を生成する。
【0007】
このように、周波数ドメインOCT装置においては、周波数解析を行うことにより各深さ方向における反射率すなわち断層情報を取得することができる。
【特許文献1】特開2003−172690号公報
【特許文献2】米国特許第5565986号明細書
【特許文献3】特開平11−82817号公報
【非特許文献1】光技術コンタクト、2003、Vol41、No7、p426−p432「光周波数走査スペクトル干渉顕微鏡」武田 光夫著
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
周波数ドメインOCT装置においては、光路差がゼロの点を基準点として、該基準点からの相対位置を得ることができるため、原理的には測定光と参照光との光路長を一致させる必要はない。しかし、実際には光路長差が大きい領域では、干渉信号の空間周波数が拡大してしまうため、干渉光を検出する光検出器の空間分解能あるいは時間分解能により、断層情報を取得可能な光路長差の最大値が決められてしまう。すなわち、SD−OCT装置では、例えば光検出器としてフォトダイオードアレイを使用する場合であれば、フォトダイオードの間隔である空間分解能によって、SS−OCT装置であれば、光検出器によるサンプリング間隔である時間分解能によって、断層情報を取得可能な光路長差範囲が決められる。
【0009】
このため、少なくとも光断層情報を取得する前に、光断層情報を取得可能な光路長差範囲内に測定対象が含まれるように、光路長を調整する必要があり、光断層画像化装置には、測定光または参照光の光路中に光路長を調整する光路長調整手段が設けられている。通常、使用者は目的の光断層画像を取得する前に、適当な光路長を設定して、光断層画像を取得して、この光断層画像を表示装置へ表示させる。使用者は、その光断層画像を目視して、光断層画像の中に測定対象が含まれるように、手動動作により光路長調整手段を調整する。その後、目的の光断層画像を取得する。
【0010】
しかしながら、測定光または参照光の光路長は、温度変動などにより変化することがある。また、測定光または参照光の導光に導波路、例えば光ファイバ等を用いている場合には、該ファイバの屈曲により光路長に変化が生じる場合もある。このため、目的の光断層画像を取得している最中に、光路長が変化し、その結果光断層画像の取得部位(深さ)がずれてしまい、測定対称の光断層画像が良好に取得できない場合がある。
【0011】
そこで、本発明は、測定光と参照光の干渉光を検出し、検出された干渉光を周波数解析することにより測定対象の光断層情報を取得する光断層画像化装置において、所望のタイミングで、自動的に光路長を調整することのできる光断層画像化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光断層画像化装置は、光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
該光分割手段により分割された前記測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光である第1の干渉光を検出する第1の干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記第1の干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、
補助光を射出する補助光源ユニットを備え、
前記光分割手段が、前記補助光源ユニットから射出された前記補助光を前記測定光と同光路へ分割される補助測定光と前記参照光の光路との光路長差が規定されている光路へ導光される補助参照光とに分割するものであり、
前記合波手段が、前記光分割手段により分割された前記補助測定光の反射光である補助反射光と前記補助参照光とを合波するものであり、
該合波手段により合波された前記補助反射光と前記補助参照光との干渉光である第2の干渉光を検出する第2の干渉光検出手段と、
該第2の干渉光検出手段の検出結果に基づいて、前記測定光、前記反射光または前記参照光の光路長を調整する光路長調整手段を備えることを特徴とするものである。
【0013】
なお、ここで「測定対象で反射した反射光」とは、測定対象では反射した光に加え測定対象で散乱された光を含むものである。また、「前記参照光の光路との光路長差が規定されている光路へ導光される補助参照光」とは、参照光の光路の光路長より所定値だけ光路長が長いまたは短い光路へ導光される補助参照光を意味している。なお、参照光の光路と補助参照光の光路の光路長差は、その値が明らかであれば、任意の値に設定可能であってもよい。また当然、参照光と同一の光路へ導光される補助参照光も「前記参照光の光路との光路長差が規定されている光路へ導光される補助参照光」へ含まれている。
【0014】
前記補助光の波長帯域は、前記光の波長帯域と重ならないものであってもよい。
【0015】
前記光断層画像化装置は、前記第1の干渉光の光路と前記第2の干渉光の光路を分離する光路分離手段を備えるものであってもよい。
【0016】
また、前記補助参照光が、前記光分割手段により前記参照光と同光路へ分割されるものであり、前記参照光および前記補助参照光の光路中に設けられた、前記参照光をほぼ透過し、少なくとも前記補助参照光の一部を反射する第2の反射手段と、前記第2の反射手段を透過した前記参照光を反射する第3の反射手段とを備えるものであってもよい。
【0017】
前記第2の反射手段は、光路方向へ移動可能に配設されているものであってもよい。
【0018】
前記第2の干渉光検出手段が、前記第2の干渉光を空間的または時間的に積算した積算信号を検出結果として出力するものであれば、前記光路長を変更する光路長変更手段を備え、前記光路長調整手段は、前記光路長の変更前後に前記第2の干渉光検出手段により検出された前記積算信号を比較し、該比較結果に基づいて前記光路長を調整するものであってもよい。
【0019】
なお、光路長変更手段は、光路長調整手段とは別個に設けられているものであってもよいし、あるいは光路長調整手段が兼ねているものであってもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光断層画像化装置は、光を射出する光源ユニットと、該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、該光分割手段により分割された前記測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光である第1の干渉光を検出する第1の干渉光検出手段と、該干渉光検出手段により検出された前記第1の干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、補助光を射出する補助光源ユニットを備え、前記光分割手段が、前記補助光源ユニットから射出された前記補助光を前記測定光と同光路へ分割される補助測定光と前記参照光の光路との光路長差が規定されている光路へ導光される補助参照光とに分割するものであり、前記合波手段が、前記光分割手段により分割された前記補助測定光の反射光である補助反射光と前記補助参照光とを合波するものであり、該合波手段により合波された前記補助反射光と前記補助参照光との干渉光である第2の干渉光を検出する第2の干渉光検出手段と、該第2の干渉光検出手段の検出結果に基づいて、前記測定光、前記反射光または前記参照光の光路長を調整する光路長調整手段を備えることにより、所望のタイミング、例えば光断層情報の取得毎に、自動的に光路長を調整することができ、装置の利便性を向上させることができる。
【0021】
前記補助光の波長帯域が前記光の波長帯域と重ならない場合には、容易に補助干渉光と干渉光とを分離することができる。
【0022】
前記測定光および前記補助測定光の光路中に、前記測定光をほぼ透過し、少なくとも前記補助測定光の一部を反射する第1の反射手段を備える場合には、該第1の反射手段を基準点として光路長差を調整することができる。
【0023】
前記補助参照光が、前記光分割手段により前記参照光と同光路へ分割されるものであり、前記参照光および前記補助参照光の光路中に設けられた、前記参照光をほぼ透過し、少なくとも前記補助参照光の一部を反射する第2の反射手段と、前記第2の反射手段を透過した前記参照光を反射する第3の反射手段とを備える場合には、補助参照光の光路長と参照光の光路長とを個別に設定でき、装置の利便性が向上する。
【0024】
前記第2の反射手段が、光路方向へ移動可能に配設されている場合であれば、補助参照光の光路長と参照光の光路長差を所望の距離に設定することができる。
【0025】
前記第2の干渉光検出手段が、前記第2の干渉光を空間的または時間的に積算した積算信号を検出結果として出力するものであり、前記光路長を変更する光路長変更手段を備え、前記光路長調整手段が、前記光路長の変更前後に前記第2の干渉光検出手段により検出された前記積算信号を比較し、該比較結果に基づいて前記光路長を調整するものであれば、積算した検出値を用いることによりノイズの影響を受けにくく、より正確に光路長を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な第1の実施形態である光断層画像化装置について図1を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態である光断層画像化装置の概略構成図である。
【0027】
本光断層画像化装置200は、例えば体腔内の生体組織や細胞等の測定対象の断層画像を前述のSD−OCT計測により取得するものであって、低コヒーレンス光Laまたは該低コヒーレンス光Laとは波長領域が重なっていない補助光Lbを射出する光源ユニット210と、光源ユニット210から射出された光Laを測定光L1と参照光L2とに分割し、また補助光Lbを補助測定光Lb1および補助参照光Lb2とに分割する光分割手段3と、光分割手段3により分割された参照光L2および補助参照光Lb2の光路長を調整する光路長変更手段220と、光分割手段3により分割された測定光L1および補助測定光Lb1を測定対象Sの方向へ照射する光プローブ230と、測定光L1が測定対象Sで反射した反射光L3と参照光L2とを合波し、また補助測定光Lb1が光プローブ230の窓16で反射した補助反射光Lb3と補助参照光Lb2とを合波する合波手段4と、合波された反射した反射光L3と参照光L2との間の干渉光L4と、合波された補助反射光Lb3と補助参照光Lb2との間の干渉光Lb4とを分離し、干渉光L4を空間的に分光して検出し、また補助干渉光Lb4の光強度を検出する干渉光検出手段240と、該干渉光検出手段240の検出結果から断層情報を取得する断層情報取得部250と、該断層情報取得部250で取得された断層情報から断層画像を生成する画像生成部251と、該画像生成部251で生成された断層画像を表示する画像表示部252と、干渉光検出手段240で検出された補助干渉光Lb4の光強度に基づいて、参照光L2の光路長をリアルタイムに調整するリアルタイム光路長調整部253とを有している。
【0028】
光源ユニット210は、中心波長(λc)1.1μm、スペクトル半値全幅90nmの低コヒーレント光Laを射出するSLD(Super Luminescent Diode)211と、このSLD211から射出された光を光ファイバFB1内に入射させるための光学系212と、中心波長1.6μの低コヒーレンス光Lbを射出するSLD213と、このSLD213から射出された低コヒーレンス光Lbを光ファイバFB5内に入射させるための光学系214と、光ファイバFB5と、光ファイバFB5内を伝播した低コヒーレンス光Lbを光ファイバFB1へ導入するための光ファイバカプラ215とを有している。
【0029】
光分割手段3は、例えば2×2の光ファイバカプラから構成されており、光源ユニット210から光ファイバFB1を介して導波した低コヒーレント光Laを測定光L1と参照光L2とに分割し、また低コヒーレンス光Lbを補助測定光Lb1と補助参照光Lb2とに分割する。この光分割手段3は、2本の光ファイバFB2、FB3にそれぞれ光学的に接続されており、測定光L1または補助測定光Lb1は光ファイバFB2内を伝播し、参照光L2または補助参照光Lb2は光ファイバFB3内を伝播する。なお、本例におけるこの光分割手段3は、合波手段4としても機能するものである。
【0030】
光ファイバFB2には、光プローブ230が光学的に接続されており、測定光L1または補助測定光Lb1は光ファイバFB2から光プローブ230へ伝播する。光プローブ230は、例えば鉗子口から鉗子チャンネルを介して体腔内に挿入されるものであって、光学コネクタ31により光ファイバFB2に対して着脱可能に取り付けられている。
【0031】
光プローブ230は、先端が閉じられた円筒状のプローブ外筒15と、このプローブ外筒15の内部空間に、該外筒15の軸方向に延びる状態に配設された1本の光ファイバ13と、光ファイバ13の先端から出射した測定光L1をプローブ外筒15の周方向に偏向させるミラー17と、光ファイバ13の先端から出射した測定光L1を、プローブ外筒15の周外方に配された被走査体としての測定対象Sにおいて収束するように集光する集光レンズ18aおよび18bと、光ファイバ13を光ファイバ13の軸を回転軸として回転させるモータ14とを備えている。なお、光ファイバ13、集光レンズ18aおよび18b、およびミラー17は、一体的に構成され、光ファイバ13が回転した場合には、集光レンズ18aおよび18b、およびミラー17も回転する。また、プローブ外筒15の先端部には、測定光L1を透過するリング状の窓部16が設けられている。また、窓部16の内側には波長1.5μ以上の光を反射する反射膜19が設けられている。
【0032】
一方、光ファイバFB3の参照光L2の射出側には光路長変更手段220が配置されている。光路長変更手段220は、断層画像の取得位置を調整するために、参照光L2の光路長を変更するものであって、光ファイバFB3から射出された参照光L2を反射させる反射ミラー22と、反射ミラー22と光ファイバFB3との間に配置された第1光学レンズ21aと、第1光学レンズ21aと反射ミラー22との間に配置された第2光学レンズ21bとを有している。
【0033】
第1光学レンズ21aは、光ファイバFB3のコアから射出された参照光L2を平行光にするとともに、反射ミラー22により反射された参照光L2を光ファイバFB3のコアに集光する機能を有している。また、第2光学レンズ21bは、第1光学レンズ21aにより平行光にされた参照光L2を反射ミラー22上に集光するとともに、反射ミラー22により反射された参照光L2を平行光にする機能を有している。つまり、第1光学レンズ21aと第2光学レンズ21bとにより共焦点光学系が形成されている。
【0034】
したがって、光ファイバFB3から射出した参照光L2は、第1光学レンズ21aにより平行光になり、第2光学レンズ21bにより反射ミラー22上に集光される。その後、反射ミラー22により反射された参照光L2は、第2光学レンズ21bにより平行光になり、第1光学レンズ21aにより光ファイバFB3のコアに集光される。
【0035】
さらに光路長変更手段220は、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とを固定した基台23と、該基台23を第1光学レンズ21aの光軸方向に移動させるミラー移動手段24とを有している。そして基台23が矢印A方向に移動することにより、参照光L2の光路長が変えられるようになっている。
【0036】
また合波手段4は、前述の通り2×2の光ファイバカプラからなり、光路長変更手段220により光路長が変更された参照光L2と、測定対象Sで反射した反射光L3とを合波し、光ファイバFB4を介して干渉光検出手段240側に射出するように構成されている。
【0037】
一方、干渉光検出手段240は、合波手段4により合波された反射した反射光L3と参照光L2との干渉光L4を、空間的に分光することにより、各波長成分に分解して、チャンネルドスペクトル信号を検出するものであって、光ファイバFB4から出射した干渉光L4を平行光化するコリメータレンズ241と、複数の波長帯域を有する干渉光L4を各波長帯域毎に分光する回折格子242と、回折格子242により分光された干渉光L4を各波長帯域毎に検出するCCDアレイ244と、干渉光L4および補助干渉光Lb4の光路中に配置され干渉光L4の光路と補助干渉光Lb4の光路とを分離する光路分離手段であるダイクロイックミラー245と、光路が分離された補助干渉光Lb4を集光する集光レンズ246と、分離された補助干渉光Lb4の光強度を検出する光検出器247とを備えている。なお、ダイクロイックミラー245としては、例えば波長が1.5μm以上の光は反射し、波長が1.5μmより短い光は透過するダイクロイックミラーを用いることができる。また、光検出器247の出力値は、補助干渉光Lb4を空間的に積算した検出値に相当する。
【0038】
またCCDアレイ244は、例えば1次元もしくは2次元に光センサが配列されてなるCCDアレイであり、各光センサが、上述のように分光された干渉光L4を波長帯域毎にそれぞれ検出するようになっている。
【0039】
上記CCDアレイ244は断層情報取得部250に接続され、この断層情報取得部250は画像生成部251に接続され、画像生成部251は、CRTや液晶画像表示部等からなる画像表示部252に接続されている。
【0040】
また、光検出器247は、リアルタイム光路長調整部253へ接続され、リアルタイム光路長調整部253は光路長調整手段220へ接続されている。
【0041】
断層情報取得部250は、CCDアレイ244において検出された干渉光L4のチャンネルドスペクトル信号をフーリエ解析することにより、周波数解析を行ない、各深さ位置における反射情報からなる断層情報を取得する。そして、画像生成部251では、測定部位を僅かにずらしなら取得した断層情報に基いて断層画像を生成する。そして生成された断層画像は、画像表示部252において表示される。
【0042】
なお、干渉光検出手段240、断層情報取得部250および画像生成部251における干渉光L4の検出方法および画像の生成方法は、従来のSD−OCT装置と同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、断層情報取得部250、画像生成部251およびリアルタイム光路長調整部253は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムとして形成される。また、リアルタイム光路長調整部253についての詳細は後述する。
【0043】
以下、上記構成を有する光断層画像化装置200の作用について説明する。説明を簡単にするために、まず、断層情報を取得して、その断層情報を用いて断層画像を生成する方法を説明し、その後、本光断層画像化装置200の動作全体について説明する。
【0044】
光源ユニット210から低コヒーレンス光Laが射出され、この低コヒーレンス光Laは光分割手段3により測定光L1と参照光L2とに分割される。測定光L1は光プローブ230から体腔内に向けて射出され、測定対象Sに照射される。このとき、前述したように作動する該光プローブ230により、そこから出射した測定光L1が測定対象Sを1次元に走査する。そして、測定対象Sで反射した反射光L3が反射ミラー22において反射した参照光L2と合波され、反射光L3と参照光L2との干渉光L4が干渉光検出手段240によって検出される。断層情報取得部250では、この検出した干渉信号に対して、適当な波形補償、ノイズ除去を施した上でフーリエ変換を施し、測定対象Sの深さ方向の反射光強度分布情報である断層情報を生成し、画像生成部251へ出力し、不図示のメモリへ記憶する。
【0045】
断層情報を取得後、光ファイバ13、ロッドレンズ18およびプリズムミラー17を微少角度回転させ、前回断層情報を取得した位置からわずかに離れた位置において、上記と同様の動作を繰り返し、断層情報を取得する。このように、この動作を繰り返し、測定光L1が照射される各点において光断層情報を取得することにより、測定光L1の回転方向に沿った各部分において測定対象Sの断層情報が得られる。これらの断層情報は順次画像生成部251の不図示のメモリへ記憶される。測定光L1の照射角度を1回転させること、即ち測定光L1により測定対象Sを走査することにより、一周分の断層情報を画像生成部251のメモリに記憶する。その後、これらの断層情報を合成することにより、輪切り状の断層面についての断層画像を生成することができる。このようにして取得された断層画像は、画像表示部252に表示される。なお、例えば光プローブ230を図1の左右方向に移動させて、測定対象Sに対して測定光L1を、上記走査方向に対して直交する第2の方向に走査させることにより、この第2の方向を含む断層面についての断層画像をさらに取得することも可能である。
【0046】
次に、本光断層画像化装置200の動作を動作開始から順を追って説明する。使用者は、断層画像を取得する前に、光プローブ230を被検者の体腔へ挿入する。最初に、光路長変更手段220の基台23を手動操作により矢印A方向に移動させることにより、測定の際の基準点、例えば窓入射点16aが測定可能領域内に位置するようにおおまかに光路長を設定する。その後、各点における断層情報を取得する直前に、光路長をリアルタイムに調整する。
【0047】
以下、光路長をリアルタイムに調整する際の動作について、リアルタイム光路長調整部253の動作に基づいて説明する。図2は、低コヒーレンス光の干渉光の光強度と測定深度との関係を示すグラフである。通常、低コヒーレンス光の干渉光の光強度の検出値は、測定光と参照光の光路長が一致している位置の測定光の反射率を表している。このため、干渉光の光強度の検出値を比較することは、測定光と参照光の光路長が一致している位置における測定光の反射率を比較することとなる。
【0048】
まずリアルタイム光路長調整部253は、光源ユニット210のSLD213から低コヒーレンス光Lbを射出させる。この低コヒーレンス光Lbは、光分割手段3により補助測定光Lb1と補助参照光Lb2とに分割される。補助測定光Lb1は光プローブ230の窓部16の反射膜19により反射され、補助反射光Lb3となる。この補助反射光Lb3は、光路変更手段220の反射ミラー22において反射された補助参照光Lb2と合波され、反射光Lb3と補助参照光Lb2との補助干渉光Lb4は、光ファイバFB4内を伝播し、ダイクロイックミラー245により反射され、レンズ246により集光されて光検出器247により光強度が検出される。
【0049】
リアルタイム光路長調整部253は、光検出部247から出力された光強度の検出値をモニターしつつ、光路長変更手段220のミラー移動手段24を制御して、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とを固定した基台23を、該基台23を第1光学レンズ21aの光軸方向に僅かに移動させる。このとき基台23を移動させた後の検出値が、移動させる前の検出値より大きければ、同じ方向へさらに基台23を移動させる。また、基台23を移動させた後の検出値が、移動させる前の検出値より小さければ、逆の方向へ基台23を移動させる。このような基台23の微小移動を繰り返し、最終的にどちらの方向へ移動させても検出値が小さくなる位置、すなわち検出値が最大になる位置で基台23を停止させる。このような動作により、常に検出値が最大になる基準点、本実施形態においては反射率の高い窓入射点16aにおいて、補助測定光Lb1+補助反射光Lb3と補助参照光Lb2との光路長を一致させることができる。なお、補助測定光、補助反射光および補助参照光の光路は、測定光、反射光および参照光の光路と一致しているため、窓入射点16aにおいて、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長も一致する。
【0050】
以上の説明から明らかなように、光断層画像化装置200では、測定光L1を照射する位置を微少に移動する毎に、上記のように補助干渉光Lb4の光強度の検出値をモニターしつつ、補助参照光Lb2の光路長を変更し、検出値の大小を比較することにより、窓入射点16aにおいて、補助測定光+補助反射光の光路長と補助参照光の光路長とが一致するように、補助参照光の光路長を調整することにより、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とを一致させることができるので、測定光、反射光または参照光の光路長に、温度変動あるいは光ファイバの屈曲等により変化が生じた場合であっても、自動的に窓入射点16aにおいて、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とが一致し、測定対称Sの光断層画像を良好に取得することができる。
【0051】
また、補助干渉光Lb4の光強度、すなわち補助干渉光Lb4を空間的に積算した積算値を用いて光路長を調整しているため、ノイズの影響を受けにくく、正確に光路長を調整することが可能となる。
【0052】
さらに、光検出部247において、補助干渉光Lb4の光強度を検出する際に、受光時間を増加して検出した検出値をリアルタイム光路長調整部253へ出力するように構成してもよい。受光時間を増加することにより、誤差の影響を抑制でき、より正確に光路長を調整することが可能となる。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2の実施形態による光断層画像化装置300の概略構成図である。なおこの図3において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。
【0054】
この第2の実施形態の光断層画像化装置300は、先に説明した第1の実施形態である光断層画像200と比べ、参照光L2を透過し、補助参照光Lb2を入射方向へ反射するダイクロイックミラー321が光路長変更手段320内に設けられている点が異なるものであり、その他の点は、基本的に第1の実施形態である光断層画像化装置200と同様に構成されている。
【0055】
光路長変更手段320は、参照光L2を反射させる反射ミラー22と、参照光L2を透過し、補助参照光Ls5を入射方向へ反射するダイクロイックミラー321と、ダイクロイックミラー321と光ファイバFB3との間に配置された第1光学レンズ21aおよび第2光学レンズ21bと、第2光学レンズ21bと反射ミラー22と、ダイクロイックミラー321とが配置された基台322と、該基台322を第1光学レンズ21aの光軸方向に移動させるミラー移動手段323とを有している。なお、第2光学レンズ21bと反射ミラー22とは、基台322に固定されている。また、ダイクロイックミラー321は、反射ミラー22との間隔を任意に設定した状態で基台322に固定することができるように構成されている。そして基台322を矢印A方向に移動することにより、補助参照光Lb2の光路長および参照光L2の光路長が変えられるようになっている。
【0056】
本光断層画像化装置300の動作を動作開始から順を追って説明する。使用者は、光プローブ230を被検者の体腔へ挿入し、断層画像を取得する前に、光路長の初期設定を行う。初期設定においては、光路長変更手段320の基台23を手動操作により矢印A方向に移動させることにより、測定の際の基準点、例えば窓入射点16aが測定可能領域内に位置するようにおおまかに光路長を設定する。その後、各点における断層情報を取得する直前に、光路長をリアルタイムに調整する。
【0057】
以下、光路長をリアルタイムに調整する際の動作について説明する。まず、使用者は、ダイクロイックミラー321を所定位置、例えば反射ミラー22の0.5mm前に配置した状態で、基台322に固定する。
【0058】
リアルタイム光路長調整部353は、光源ユニット210のSLD213から低コヒーレンス光Lbを射出させる。この低コヒーレンス光Lbは、光分割手段3により補助測定光Lb1と補助参照光Lb2とに分割される。補助参照光Lb2は、光路長変更手段320のダイクロイックミラー321において反射されている。一方補助測定光Lb1は光プローブ230の窓部16の反射膜19により反射され、補助反射光Lb3となる。この補助反射光Lb3は、ダイクロイックミラー321において反射された補助参照光Lb2と合波され、反射光Lb3と補助参照光Lb2との補助干渉光Lb4は、光ファイバFB4内を伝播し、ダイクロイックミラー245により反射され、光検出器247により光強度が検出される。
【0059】
その後、リアルタイム光路長調整部353は、第1の実施形態と同様に、補助干渉光Lb4の光強度の検出値をモニターしつつ、ダイクロイックミラー321の位置を移動して、補助参照光Lb2の光路長を変更し、検出値の大小を比較することにより、窓入射点16aにおいて、補助測定光Lb1+補助反射光Lb3の光路長と補助参照光Lb2の光路長とが一致するように、補助参照光Lb2の光路長を調整する。すなわち、窓入射点16aにおいて、補助測定光Lb1+補助反射光Lb3の光路長と補助参照光Lb2の光路長とが一致するように、補助参照光Lb2を反射するダイクロイックミラー321の位置を調整する。なお、測定光L1および反射光L3の光路は補助測定光Lb2および補助反射光Lb3の光路と一致し、参照光L2の光路長は補助参照光Lb2の光路長より2×0.5mm長いため、窓入射点16aより0.5mm外側において、測定光L1+反射光L3の光路長と参照光L2の光路長とが一致する。
【0060】
以上の説明から明らかなように、光断層画像化装置200では、窓入射点16aにおいて、補助測定光Lb1+補助反射光Lb3の光路長と、参照光L2よりも2×所定距離だけ光路長が短い補助参照光Lb2の光路長とが一致するように、補助参照光Lb2の光路長を調整することにより、測定光L1+反射光L3の光路長と、補助参照光の光路長+2×所定距離とを一致させることができるので、測定光、反射光または参照光の光路長に、温度変動あるいは光ファイバの屈曲等により変化が生じた場合であっても、自動的に窓入射点16aより所定距離外側において、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とが一致し、測定対称Sの光断層画像を良好に取得することができる。また、光路長変更部320において、反射ミラー22とダイクロイックミラー321との間の距離を所望の距離に設定できるため、測定対象Sの所望の深さの光断層画像を取得することができる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図4は、本発明の第3の実施形態による光断層画像化装置400の概略構成図である。なおこの図4において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。
【0062】
この第3の実施形態の光断層画像化装置400は、先に説明した第1の実施形態である光断層画像200と比べ、補助干渉光Lb4を回折格子242に入射させ、該回折格子242より分光された補助干渉光Lb4の光強度を検出する光検出器442を備えている点が異なるものであり、その他の点は、基本的に第1の実施形態である光断層画像化装置200と同様に構成されている。
【0063】
干渉光検出手段440は、光ファイバFB4から出射した干渉光L4を平行光化するコリメータレンズ241と、複数の波長帯域を有する干渉光L4および補助干渉光Lb4を各波長帯域毎に分光する回折格子242と、回折格子242により分光された干渉光L4を各波長帯域毎に検出するCCDアレイ244と、回折格子242により分光された補助干渉光Lb4の光強度を検出する光検出器442とを備えている。なお、光検出器442は、分光された補助干渉光Lb4を空間的に積分した積分値を検出するものであり、受光面積が十分に大きい光検出器が用いられる。
【0064】
本実施の形態の光断層画像化装置400においても、測定光L1を照射する位置を微少に移動して、断層情報を取得する前に、光検出器442で検出して補助干渉光Lb4の光強度の検出値をモニターしつつ、補助参照光Lb2の光路長を変更し、検出値の大小を比較することにより、窓入射点16aにおいて、補助測定光+補助反射光の光路長と補助参照光の光路長とが一致するように、補助参照光の光路長を調整することにより、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とを一致させることができるので、測定光、反射光または参照光の光路長に、温度変動あるいは光ファイバの屈曲等により変化が生じた場合であっても、自動的に窓入射点16aにおいて、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とが一致し、測定対称Sの光断層画像を良好に取得することができる。また、干渉光L4と補助干渉光Lb4とを分離する分離手段が不用となる。なお、光路長変更手段220の代わりに、図3に示した光路長変更手段320を用いることもできる。
【0065】
また、本実施の形態においては、光検出器442を用いて、補助干渉光Lb4を空間的に積算した積算値である光強度を検出し、該光強度に基づいて光路長を調整したが、例えば光検出器442の代わりに、CCDアレイを用いて、該CCDアレイの出力から断層情報を取得し、該断層情報に基いて光路長を調整してもよい。
【0066】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図5は、本発明の第4の実施形態による光断層画像化装置600の概略構成図である。なおこの図5において、図1中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。
【0067】
この第4の実施形態の光断層画像化装置600は、先に説明した第1の実施形態である光断層画像200と比べ、測定対象の断層画像を前述のSS−OCT計測により取得するものである点が異なるものであり、その他の点は、基本的に第1の実施形態である光断層画像化装置200と同様に構成されている。
【0068】
光断層画像化装置600は、光Lsと該光Lsとは波長領域が重なっていない補助光Lbを射出する光源ユニット610と、光源ユニット610から射出された光Lsを測定光Ls1と参照光Ls2とに分割し、また補助光Lbを補助測定光Lb1および補助参照光Lb2とに分割する光分割手段63と、光分割手段63により分割された参照光Ls2と補助参照光Ls2の光路長を調整する光路長調整手段220と、光分割手段63により分割された測定光Ls1および補助測定光Ls2を測定対象Sの方向へ照射する光プローブ230と、該測定対象Sで反射した反射光Ls3と参照光Ls2とを合波し、また補助測定光Lb1が光プローブ230の窓16で反射した補助反射光Lb3と補助参照光Lb2とを合波する合波手段64と、合波された反射光Ls3と参照光Ls2との間の干渉光Ls4と合波された補助反射光Lb3と補助参照光Lb2との間の補助干渉光Lb4とを分離し、干渉光Ls4を時間的に分光して検出し、また補助干渉光Lb4の光強度を検出する干渉光検出手段640と、該干渉光検出手段640の検出結果から断層情報を取得する断層情報取得部650と、該断層情報取得部650で取得された断層情報から断層画像を生成する画像生成部251と、該画像生成部251で生成された断層画像を表示する画像表示部252と、干渉光検出手段640で取得された補助干渉光Lb4の光強度に基づいて、参照光Ls2の光路長をリアルタイムに調整するリアルタイム光路長調整部253とを有している。
【0069】
光源ユニット610は、周波数を一定の周期で掃引させながらレーザ光Lsを射出する周波数掃引レーザ光源と、レーザ光Lsの波長帯域と波長が重ならない低コヒーレンス光Lbを射出するSLD617と、このSLD617から射出された低コヒーレンス光Lbを光ファイバFB61内に入射させるための光学系618と、周波数掃引レーザ光源から射出されたレーザ光Lsを光ファイバFB61へ導入するための光ファイバカプラ61とを有している。
【0070】
レーザ光Lsの周波数fは、図6に示すように、中心周波数fc であって所定の周波数掃引幅Δfの範囲において周期的に掃引するようになっている。従って、周波数fは、周波数f(fc-Δf/2)〜周波数fc+Δf/2の間で鋸波状に掃引する。
【0071】
なお、説明の便宜上、レーザ光Lsの周波数fの変化に着目して説明しているが、周波数f=光速c/波長λであるため、レーザ光Lsの周波数fを一定の周期で掃引させることはレーザ光Lsの波長λを一定の周期で掃引させることと同義であり、図6におけるレーザ光Lsの中心周波数fcは、波長λを掃引させたさせたときの中心波長λscであり、周波数掃引幅Δfは波長掃引幅Δλsである。また、図6においては、周波数が鋸波状に掃引する場合について例示しているが、波状に掃引するものであってもよい。
【0072】
光源ユニット610の周波数掃引光源は、半導体光増幅器(半導体利得媒質)611と光ファイバFB70とを有しており、光ファイバFB70が半導体光増幅器611の両端に接続された構造を有している。半導体光増幅器611は駆動電流の注入により微弱な放出光を光ファイバFB70の一端側に射出するとともに、光ファイバFB70の他端側から入射された光を増幅する機能を有している。そして、半導体光増幅器611に駆動電流が供給されたとき、半導体光増幅器611および光ファイバFB70により形成される光共振器により鋸波状のレーザ光Lsが光ファイバFB61へ射出されるようになっている。
【0073】
さらに、光ファイバFB70には光分岐器612が結合されており、光ファイバFB70内を導波する光の一部が光分岐器612から光ファイバFB71側へ射出されるようになっている。光ファイバFB71から射出した光はコリメータレンズ613、回折格子614、光学系615を介して回転多面鏡(ポリゴンミラー)616において反射される。そして反射された光は光学系615、回折格子614、コリメータレンズ613を介して再び光ファイバFB71に入射される。
【0074】
ここで、この回転多面鏡616は矢印R1方向に回転するものであって、各反射面の角度が光学系615の光軸に対して変化するようになっている。これにより、回折格子614において分光された光のうち、特定の周波数域の光だけが再び光ファイバFB71に戻るようになる。この光ファイバFB71に戻る光の周波数は光学系615の光軸と反射面との角度によって決まる。そして光ファイバFB71に入射した特定の周波数域の光が光分岐器612から光ファイバFB70に入射され、結果として特定の周波数域のレーザ光Lsが光ファイバFB61側に射出されるようになっている。
【0075】
したがって、回転多面鏡616が矢印R1方向に等速で回転したとき、再び光ファイバFB71に入射される光の波長λは、時間の経過に伴って一定の周期で変化することになる。こうして光源ユニット610からは、波長掃引されたレーザ光Lsが光ファイバFB61側に射出される。
【0076】
光分割手段63は、例えば2×2の光ファイバカプラから構成されており、光源ユニット610から光ファイバFB61を介して導波した光Lsを測定光Ls1と参照光Ls2とに分割し、する。この光分割手段63は、2本の光ファイバFB62、FB63にそれぞれ光学的に接続されており、測定光Ls1は光ファイバFB62を導波し、参照光Ls2は光ファイバFB63を導波する。なお、本例におけるこの光分割手段63は、合波手段64としても機能するものである。
【0077】
光ファイバFB62には、光プローブ230が光学的に接続されており、測定光Ls1は光ファイバFB62から光プローブ230へ導波する。
【0078】
一方、光ファイバFB63の参照光Ls2の射出側には光路長調整手段220が配置されている。
【0079】
また合波手段64は、前述の通り2×2の光ファイバカプラからなり、光路長調整手段220により周波数シフトおよび光路長の変更が施された参照光Ls2と、測定対象Sからの反射光Ls3とを合波し、光ファイバFB64を介して干渉光検出手段640側に射出するように構成されている。
【0080】
干渉光検出手段640は、合波手段64により合波された反射光Ls3と参照光Ls2との干渉光Ls4を、時間的に分光して検出するものであり、干渉光Ls4の光強度を、所定のサンプリング周波数で検出するInGaAs系の光検出器642aおよび642bと、光検出器642aの検出値と光検出器642b の検出値の入力バランスを調整してバランス検波を行う演算部641とを備えている。なお、干渉光Ls4は光分割手段63において二分され光検出器642aと642bにおいて検出される。また、光検出器642bとFB64との間には、干渉光Ls4と補助干渉光Lb4とを分離する、すなわち干渉光Ls4は透過し、補助干渉光Lb4は反射するダイクロイックミラー643と、該ダイクロイックミラー643で反射された補助干渉光Lb4の光強度を検出する光検出器644とが設けられている。
【0081】
演算部641は断層情報取得部650に接続され、この断層情報取得部650は画像生成部251およびリアルタイム光路長調整部253に接続されている。画像生成部251は、CRTや液晶画像表示部等からなる画像表示部252に接続されている。光検出器645は、リアルタイム光路長調整部253に接続され、またリアルタイム光路長調整部253は、光路長調整手段220へ接続されている。
【0082】
断層情報取得部650は、演算部641の出力である光周波数領域のインターフェログラム(干渉波形)をフーリエ変換し、所定の測定対象の各深さ位置における反射強度を算出し、これを用いて断層情報を生成する。また、断層情報取得部650、画像生成部251およびリアルタイム光路長調整部253は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータシステムとして形成される。
【0083】
なお、干渉光検出手段640、断層情報取得部650および画像生成部251における干渉光Ls4の検出および画像の生成についての詳細は、従来のSS−OCT装置と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0084】
以下、上記構成を有する光断層画像化装置600の動作について説明する。最初に断層画像を取得する際の動作について説明する。まず基台23を矢印A方向に移動させることにより、測定可能領域内に測定対象Sが位置するように光路長の調整が行われる。その後、光源ユニット610から光Lsが射出され、この光Lsは光分割手段63により測定光Ls1と参照光Ls2とに分割される。測定光Ls1は光プローブ230から体腔内に向けて射出され、測定対象Sに照射される。このとき、前述したように作動する光プローブ230により、そこから出射した測定光Ls1が測定対象Sを1次元に走査する。そして、測定対象Sからの反射光Ls3が反射ミラー523において反射した参照光Ls2と合波され、反射光Ls3と参照光Ls2との干渉光Ls4が干渉光検出手段640によって検出される。断層情報取得部650において、干渉光検出手段640により検出された干渉光Ls4のインターフェログラム(干渉波形)を、適当な波形補償、ノイズ除去を施した上でフーリエ変換し、測定対象Sの各深さ方向の反射光強度分布情報である断層情報を取得する。
【0085】
そして、光プローブ230のモータ14により、光ファイバ13を回転させることにより、測定光Ls1を測定対象S上で走査させれば、この走査方向に沿った各部分において測定対象Sの断層情報が得られるので、この走査方向を含む断層面についての断層画像を生成することができる。このようにして取得された断層画像は、画像表示部252に表示される。
【0086】
次に、本光断層画像化装置600の動作を動作開始から順を追って説明する。使用者は、断層画像を取得する前に、光プローブ230を被検者の体腔へ挿入する。最初に、光路長変更手段220の基台23を手動操作により矢印A方向に移動させることにより、測定の際の基準点、例えば窓入射点16aが測定可能領域内に位置するようにおおまかに光路長の調整を行なう。その後、各点における断層情報を取得する直前に、第1の実施形態である光断層画像化装置200と同様に、補助干渉光Lb4の光強度の検出値をモニターしつつ、補助参照光Lb2の光路長を変更し、検出値の大小を比較することにより、窓入射点16aにおいて、補助測定光+補助反射光の光路長と補助参照光の光路長とが一致するように、補助参照光の光路長を調整することにより、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とを一致させる。このため、測定光、反射光または参照光の光路長に、温度変動あるいは光ファイバの屈曲等により変化が生じた場合であっても、自動的に窓入射点16aにおいて、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とが一致し、測定対称Sの光断層画像を良好に取得することができる。
【0087】
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図7は、本発明の第5の実施形態による光断層画像化装置700の概略構成図である。なおこの図5において、図2中の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。
【0088】
この第5の実施形態の光断層画像化装置600は、先に説明した第2の実施形態である光断層画像300と比べ、測定対象の断層画像を前述のSS−OCT計測により取得するものである点が異なるものであり、その他の点は、基本的に第2の実施形態である光断層画像化装置300と同様に構成されている。
【0089】
光断層画像化装置700においても、窓入射点16aにおいて、補助測定光Lb1+補助反射光3の光路長と、参照光L2よりも2×所定距離だけ光路長が短い補助参照光Lb2の光路長とが一致するように、補助参照光Lb2の光路長を調整することにより、測定光L1+反射光L3の光路長と、参照光の光路長-2×所定距離とを一致させることができるので、測定光、反射光または参照光の光路長に、温度変動あるいは光ファイバの屈曲等により変化が生じた場合であっても、自動的に窓入射点16aより所定距離外側において、測定光+反射光の光路長と参照光の光路長とが一致し、測定対称Sの光断層画像を良好に取得することができる。また、光路長変更部320において、反射ミラー22とダイクロイックミラー321との間の距離を所望の距離に設定できるため、測定対象Sの所望の深さの光断層画像を取得することができる。
【0090】
なお、各実施の形態においては、リアルタイムに光路長を調整する際に、光路長の大幅な変動が予想される場合であれば、補助参照光Lb2の光路長の変更範囲を広げ、図2に示すような検出値の測定結果を取得し、検出値が最も大きくなる基準点を検出し、該基準点が得られた位置に基台23を配置してもよい。
【0091】
なお、本発明の各実施の形態においては、測定光、参照光および干渉光などの各光はそれぞれ光ファイバ中を伝搬しているが、これに限定されるものではなく、大気中もしくは真空中を伝搬させるようにしてもよい。
【0092】
また、補助参照光の光路長を変更する場合に、光路長変更手段220または230を用いて光路長を変更したが、これに限定されるものではなく、補助参照光および参照光の光路長を等しく変更できるものであればいかなる変更手段を用いてもよい。例えば補助参照光および参照光の光路中にピエゾ素子等の光路長変更素子を設け、この光路長変更素子により光路長を変更してもよい。あるいは、図8に示すように、光路長変更手段220あるいは320の代わりに、参照光と補助参照光の光路を分割して、個別に光路長を設定可能な光路長変更手段420を用いてもよい。光路長変更手段420においては、FB3を伝播した参照光L2と補助参照光Lb2とは、WDM(Wavelength Division Multiplexing:波長分割多重)カプラー421により、FB42およびFB43へ導入される。FB42から射出された参照光は、光学レンズ422aおよび422bを介して、反射ミラー423により反射され、FB42へ再度入射する。またFB43から射出された補助参照光は、光学レンズ424aおよび424bを介して、反射ミラー425により反射され、FB43へ再度入射する。それぞれ反射ミラーにより反射された参照光L2およびLb2は、WDMカプラー421により合波され、FB3を伝播する。なお、ミラー駆動手段426は、リアルタイム光路長調整手段からの制御により、光学レンズ422bおよび反射ミラー423と、光学レンズ424bおよび反射ミラー425とを連動させて光軸方向に移動させることにより、参照光L2の光路長を調整することができる。
【0093】
また、各実施の形態においては、参照光の光路長を変更することにより光路長を調整したが、測定光あるいは反射光の光路長を変更することにより、光路長を調整してもよい。
【0094】
さらに、補助光として、低コヒーレンス光を用いて、光路長の調整を行なったが、低コヒーレンス光の変わりに、周期的に波長が掃引されているレーザ光を用いることもできる。これはSD−OCT装置の変わりにSS−OCT装置を使用するように変更する場合と同様であり、補助干渉光Lb4をサンプリング検波して、断層情報を取得して、該断層情報に基いて光路長を調整してもよいし、補助干渉光Lb4を時間的に積算した積算値、すなわち掃引一周期分の光強度を検出し、該光強度に基づいて光路長を調整してもよい。
【0095】
さらに、各実施の形態においては、マイケルソン型干渉計を用いたが、これに限定されるものではなく、他の形式の干渉計、例えばマッハツェンダー型干渉計等を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の第1の実施形態である光断層画像化装置の概略構成図
【図2】干渉光の光強度と測定対象の深さとの関係を示す図
【図3】本発明の第2の実施形態である光断層画像化装置の概略構成図
【図4】本発明の第3の実施形態である光断層画像化装置の概略構成図
【図5】本発明の第4の実施形態である光断層画像化装置の概略構成図
【図6】周波数掃引レーザ光における周波数掃引状態の説明図
【図7】本発明の第5の実施形態である光断層画像化装置の概略構成図
【図8】光路長変更手段の変形例の概略構成図
【符号の説明】
【0097】
200,300,400,600,700,800光断層画像化装置
3,63 光分割手段
4,64 合波手段
210,610 光源ユニット
220,320,420 光路長変更手段
230 光プローブ
240,440,640 干渉光検出手段
253,353 リアルタイム光路長調整部
La 低コヒーレンス光
Ls レーザ光
Lb 補助光
L1,Ls1 測定光
L2,Ls2 参照光
L3,Ls3 反射光
L4,Ls4 干渉光
Lb1 測定光
Lb2 参照光
Lb3 反射光
Lb4 干渉光
S 測定対象

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を射出する光源ユニットと、
該光源ユニットから射出された前記光を測定光と参照光とに分割する光分割手段と、
該光分割手段により分割された前記測定光が測定対象に照射されたときの該測定対象からの反射光と前記参照光とを合波する合波手段と、
該合波手段により合波された前記反射光と前記参照光との干渉光である第1の干渉光を検出する第1の干渉光検出手段と、
該干渉光検出手段により検出された前記第1の干渉光を周波数解析することにより前記測定対象の断層情報を取得する断層情報取得手段とを有する光断層画像化装置において、
補助光を射出する補助光源ユニットを備え、
前記光分割手段が、前記補助光源ユニットから射出された前記補助光を、前記測定光と同光路へ分割される補助測定光と、前記参照光の光路との光路長差が規定されている光路へ導光される補助参照光とに分割するものであり、
前記合波手段が、前記光分割手段により分割された前記補助測定光の反射光である補助反射光と前記補助参照光とを合波するものであり、
該合波手段により合波された前記補助反射光と前記補助参照光との干渉光である第2の干渉光を検出する第2の干渉光検出手段と、
該第2の干渉光検出手段の検出結果に基づいて、前記測定光、前記反射光または前記参照光の光路長を調整する光路長調整手段を備えることを特徴とする光断層画像化装置。
【請求項2】
前記補助光の波長帯域が前記光の波長帯域と重ならないことを特徴とする請求項1記載の光断層画像化装置。
【請求項3】
前記第1の干渉光の光路と前記第2の干渉光の光路とを分離する光路分離手段を備えることを特徴とする請求項2記載の光断層画像化装置。
【請求項4】
前記測定光および前記補助測定光の光路中に設けられた、前記測定光をほぼ透過し、少なくとも前記補助測定光の一部を反射する第1の反射手段を備えることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の光断層画像化装置。
【請求項5】
前記補助参照光が、前記光分割手段により前記参照光と同光路へ分割されるものであり、前記参照光および前記補助参照光の光路中に設けられた、前記参照光をほぼ透過し、少なくとも前記補助参照光の一部を反射する第2の反射手段と、前記第2の反射手段を透過した前記参照光を反射する第3の反射手段とを備えることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の光断層画像化装置。
【請求項6】
前記第2の反射手段が、光路方向へ移動可能に配設されていることを特徴とする請求項5記載の光断層画像化装置。
【請求項7】
前記第2の干渉光検出手段が、前記第2の干渉光を空間的または時間的に積算した積算信号を検出結果として出力するものであり、
前記光路長を変更する光路長変更手段を備え、
前記光路長調整手段が、前記光路長の変更前後に前記第2の干渉光検出手段により検出された前記積算信号を比較し、該比較結果に基づいて前記測定光、前記反射光または前記参照光の光路長を調整するものであることを特徴とする前記請求項1から6いずれか1項記載の光断層画像化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−89349(P2008−89349A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268416(P2006−268416)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】