説明

光源ユニット及びプロジェクタ

【課題】 蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊を防止できるとともに励起光の利用効率を高め、蛍光体を均一に発光させることができる光源ユニットを備えることにより長期間安定した投影が可能なプロジェクタを提供する。
【解決手段】 プロジェクタ1は、光源ユニット60と、表示素子51と、投影側光学系と、導光光学系170と、プロジェクタ制御手段と、を備え、光源ユニット60は、励起光源71及びマイクロレンズアレイ75を備えた励起光照射装置70と、励起光源71からの射出光を受けて緑色波長帯域光を射出する方形状の緑色蛍光体層を備えた蛍光板101と、を備え、マイクロレンズアレイ75は、励起光源71と蛍光板101との間に配置され、蛍光体層の形状と相似形状の複数のマイクロ凸レンズがマトリクス状に配列されてなり、励起光源71からの射出光を、複数の光線束に変換して蛍光板101に照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光源によって発光する蛍光板を有した光源ユニット及びこの光源ユニットを備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータの画面やビデオ画像、さらにメモリカード等に記憶されている画像データによる画像等をスクリーンに投影する画像投影装置としてのデータプロジェクタが多用されている。このようなプロジェクタにおいて、従来は高輝度の放電ランプを光源とするものが主流であったが、近年、光源装置の発光素子として発光ダイオード(LED)やレーザ発光器、有機EL、あるいは、蛍光体等を用いる開発や提案が多々なされている。
【0003】
例えば、特開2004−341105号公報(特許文献1)では、透光性を有した円板からなる蛍光板の表面に、赤色、緑色、青色蛍光体層を並設し、蛍光板の裏面に紫外線透過、可視光反射のダイクロイックフィルタを配置し、蛍光板の裏面側から蛍光体層に紫外光を照射することにより赤色、緑色、青色波長帯域の光源光を生成する光源装置の提案がなされている。
【0004】
また、本願出願人は、先の出願において、励起光源としてのレーザ発光器と、反射面上に蛍光体層が形成された蛍光板と、を備えた光源装置の提案をしている。この提案では、レーザ発光器からレーザ光線を蛍光体層に照射し、蛍光体層の蛍光体から射出される蛍光光をレーザ光線を照射した面と同一の面から抽出し光源光として利用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−341105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、励起光源からの射出光を蛍光体層に照射して、蛍光体層の蛍光体から射出される蛍光光を光源光として利用するプロジェクタがある。このようなプロジェクタでは、励起光源の出力を上げることにより蛍光体層の蛍光体から射出される蛍光光の光量を増加させることができる。しかしながら、励起光源としてレーザ発光器を用いた場合、レーザ発光器から射出されるレーザ光線のパワーを大きくすると、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じるおそれがあった。
【0007】
一方、レーザ光線のパワーを大きくしつつ単位面積のパワーを弱めるためにレーザ光線を拡散させて蛍光体層に照射した場合には、レーザ光線の照射面積が蛍光体層における照射部分の面積よりも広くなり、蛍光体層から外れた位置にまでレーザ光線が照射されて、レーザ発光器からの射出光の利用効率が下がるという問題点があった。
【0008】
本発明は上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊を防止できるとともに励起光の利用効率を高め、蛍光体を均一に発光させることができる光源ユニットと、この光源ユニットを備えることにより、輝度ムラの無い、長期間安定した投影が可能なプロジェクタと、を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光源ユニットは、励起光源と、該励起光源からの射出光を励起光として発光する蛍光体層を備えた蛍光板と、前記励起光源と蛍光板との間に配置され、前記励起光源からの射出光を、複数の光線束に変換して前記蛍光板に照射するマイクロレンズアレイと、前記蛍光板近傍に配置され、前記複数の光線束を前記蛍光体層上で中心位置が重なるように該蛍光体層に照射する集光レンズと、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の光源ユニットにおいて、前記蛍光板は、表面を反射面とし、該反射面上に所定の形状の前記蛍光体層が敷設されてなり、前記マイクロレンズアレイは、前記蛍光体層の形状と相似形状の複数のマイクロ凸レンズがマトリクス状に配列されてなることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の光源ユニットでは、前記蛍光体層が方形状であることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の光源ユニットは、前記励起光源及び前記マイクロレンズアレイを備えた励起光照射装置と、前記励起光源からの射出光を受けて緑色波長帯域光を射出する緑色蛍光体層を備えた前記蛍光板と、赤色波長帯域光を射出する赤色光源と、青色波長帯域光を射出する青色光源と、前記赤色、緑色及び青色波長帯域光を同一の光軸に変換して所定の一面まで導光する光源側光学系と、を備えることを特徴とする。
【0013】
そして、本発明のプロジェクタは、上述したいずれかの光源ユニットと、表示素子と、投影側光学系と、前記光源ユニットからの射出光を前記表示素子まで導光し、かつ、前記表示素子で生成された投影光を前記投影側光学系の光軸に一致させる導光光学系と、前記光源ユニット及び前記表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊を防止できるとともに励起光の利用効率を高め、蛍光体を均一に発光させることができる光源ユニットと、この光源ユニットを備えることにより、輝度ムラのない、長期間安定した投影が可能なプロジェクタと、を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例に係るプロジェクタを示す外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例に係るプロジェクタの機能ブロックを示す図である。
【図3】本発明の実施例に係るプロジェクタの上ケースを外した内部構造を示す平面模式図である。
【図4】本発明の実施例に係るマイクロレンズアレイの正面図及び断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る励起光照射装置及び蛍光板における光束の流れに関する説明図である。
【図6】本発明の実施例に係る蛍光板の励起光照度分布を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について述べる。本発明に係るプロジェクタ1は、光源ユニット60と、表示素子51と、投影側光学系と、光源ユニット60からの射出光を表示素子51まで導光し、かつ、表示素子51で生成された投影光を投影側光学系の光軸に一致させる導光光学系170と、光源ユニット60及び表示素子51を制御するプロジェクタ制御手段と、を備える。
【0017】
この光源ユニット60は、励起光源71及びマイクロレンズアレイ75を備えた励起光照射装置70と、励起光源71からの射出光を受けて緑色波長帯域光を射出する緑色蛍光体層を備えた蛍光板101と、赤色波長帯域光を射出する赤色光源121と、青色波長帯域光を射出する青色光源301と、赤色、緑色及び青色波長帯域光を同一の光軸に変換して所定の一面まで導光する光源側光学系140と、を備える。
【0018】
そして、マイクロレンズアレイ75は、励起光源71と蛍光板101との間に配置されており、励起光源71からの射出光を、複数の光線束に変換して蛍光板101に照射する。また、蛍光板101は、表面を反射面とし、該反射面上に方形状の蛍光体層が敷設されてなり、マイクロレンズアレイ75は、蛍光体層の形状と相似形状の複数のマイクロ凸レンズ75aがマトリクス状に配列されてなる。
【0019】
さらに、光源ユニット60において、蛍光板101の近傍には集光レンズ110が配置され、マイクロ凸レンズ75aを透過した各光線束は、集光レンズ110によって蛍光体層上で中心位置が重なるように該蛍光体層に照射される。
【実施例】
【0020】
以下、本発明の実施例を図に基づいて詳説する。図1は、プロジェクタ1の外観斜視図である。なお、本実施例において、プロジェクタ1における左右とは投影方向に対しての左右方向を示し、前後とはプロジェクタ1の投影方向及び光線束の進行方向に対しての前後方向を示す。
【0021】
プロジェクタ1は、図1に示すように、略直方体形状をした手乗りサイズの小型プロジェクタ1であって、上ケース5と下ケース6により内部を覆うようにして構成されている。そして、プロジェクタ筐体の前方に位置する上ケース5と下ケース6とが嵌合されてなる正面板12には、略中央にレンズ鏡筒225が配置され、右側板15近傍に吸気孔18が形成されている。
【0022】
また、プロジェクタ筐体の上ケース5によって形成される上面板11にはキー/インジケータ部37が設けられ、このキー/インジケータ部37には、電源スイッチキーや電源のオン又はオフを報知するパワーインジケータ、投影のオン、オフを切りかえる投影スイッチキー、光源ユニットや表示素子又は制御回路等が過熱したときに報知をする過熱インジケータ等のキーやインジケータが配置されている。さらに、プロジェクタ筐体の後方や側方に位置する上ケース5と下ケース6とが嵌合されてなる背面板13や右側板15には、USB端子や電源アダプタプラグ、メモリカードの挿入口等の各種端子が設けられている。
【0023】
次に、プロジェクタ1のプロジェクタ制御手段について図2の機能ブロック図を用いて述べる。プロジェクタ制御手段は、制御部38、入出力インターフェース22、画像変換部23、表示エンコーダ24、表示駆動部26等から構成される。この制御部38は、プロジェクタ1内の各回路の動作制御を司るものであって、演算装置としてのCPUや各種セッティング等の動作プログラムを固定的に記憶したROM及びワークメモリとして使用されるRAM等により構成されている。
【0024】
そして、このプロジェクタ制御手段により、入出力コネクタ部21から入力された各種規格の画像信号は、入出力インターフェース22、システムバス(SB)を介して画像変換部23で表示に適した所定のフォーマットの画像信号に統一するように変換された後、表示エンコーダ24に出力される。
【0025】
また、表示エンコーダ24は、入力された画像信号をビデオRAM25に展開記憶させた上でこのビデオRAM25の記憶内容からビデオ信号を生成して表示駆動部26に出力する。
【0026】
表示駆動部26は、表示素子制御手段として機能するものであり、表示エンコーダ24から出力された画像信号に対応して適宜フレームレートで空間的光変調素子(SOM)である表示素子51を駆動するものであり、光源ユニット60から射出された光線束、即ち光源ユニット60の光源側光学系140により所定の一面に集光された光線束を導光光学系170を介して表示素子51に照射することにより、表示素子51の反射光で光像を形成し、後述する投影側光学系を介して図示しないスクリーンに画像を投影表示する。なお、この投影側光学系の可動レンズ群235は、レンズモータ45によりズーム調整やフォーカス調整のための駆動が行われる。
【0027】
また、画像圧縮伸長部31は、再生時にメモリカード32に記録された画像データを読み出し、一連の動画を構成する個々の画像データを1フレーム単位で伸長し、この画像データを画像変換部23を介して表示エンコーダ24に出力し、メモリカード32に記憶された画像データに基づいて動画等の表示を可能とする処理を行なう。
【0028】
そして、筐体の上ケース5に設けられるキー/インジケータ部37からの操作信号は、直接に制御部38に送出される。なお、制御部38にはシステムバス(SB)を介して音声処理部47が接続されている。この音声処理部47は、PCM音源等の音源回路を備えており、投影モード及び再生モード時には音声データをアナログ化し、スピーカ48を駆動して拡声放音させる。
【0029】
また、制御部38は、光源制御手段としての光源制御回路41を制御している。この光源制御回路41は、画像生成時に要求される所定波長帯域の光源光が光源ユニット60から射出されるように、光源ユニット60の励起光照射装置、赤色光源装置及び青色光源装置の発光を個別に制御する。さらに、制御部38は、冷却ファン駆動制御回路43に光源ユニット60等に設けた複数の温度センサによる温度検出を行わせ、この温度検出の結果から冷却ファンの回転速度を制御させている。
【0030】
さらに、プロジェクタ制御手段は、光源ユニット60からの射出光の照度を測定する照度測定手段としての照度センサ42を備える。そして、制御部38は、照度センサ42から送出された各波長帯域光の出力に関する情報をもとに、光源ユニット60の各光源に印加する電圧を調整し、製品出荷当初の輝度バランスを維持する。
【0031】
次に、このプロジェクタ1の内部構造について述べる。図3は、プロジェクタ1の内部構造を示す平面模式図である。プロジェクタ1は、図3に示すように、中央部分に光源ユニット60を備え、光源ユニット60の左側方に投影側光学系が内装されたレンズ鏡筒225を備え、レンズ鏡筒225と左側板14との間にバッテリー55を備えている。また、プロジェクタ1は、レンズ鏡筒225と背面板13との間におけるバッテリー55の近傍に、左側板14と平行に配置されたDMD等の表示素子51を備えている。さらに、プロジェクタ1は、光源ユニット60の下方に主制御回路基板241を備え、レンズ鏡筒225とバッテリー55との間に電源制御回路基板242を備えている。
【0032】
また、プロジェクタ1は、光源ユニット60及びレンズ鏡筒225と背面板13との間に、光源ユニット60からの射出光を表示素子51に照射し、かつ、表示素子51で反射されたオン光の光軸を投影側光学系の光軸に一致させて投影側光学系に向かって射出する導光光学系170を備えている。また、光源ユニット60と右側板15との間には、背面板13側から順に、電源コネクタ80、後述する赤色光源121用のヒートシンク190、後述する励起光源71及び青色光源301で発生する熱をヒートシンク190へ導くヒートパイプ130、冷却ファン261を備えている。
【0033】
光源ユニット60は、冷却ファン261の近傍であって正面板12の近傍に配置された励起光照射装置70と、励起光照射装置70とレンズ鏡筒225との間に配置された青色光源装置300と、電源コネクタ80の近傍であって背面板13の近傍に配置された蛍光板101と、励起光照射装置70と蛍光板101との間に配置された赤色光源装置120と、光源ユニット60から射出される赤色、緑色及び青色波長帯域光を導光光学系170まで導光する光源側光学系140と、から構成される。
【0034】
励起光照射装置70は、光軸が左側板14と平行とされた2個の励起光源71と、各励起光源71の光軸上に配置された2個のコリメータレンズ73と、コリメータレンズ73の前方に配置されたマイクロレンズアレイ75と、を備える。この励起光源71は、青色レーザ発光器であり、蛍光板101に向けて青色波長帯域のレーザ光線を射出する。また、励起光源71は、励起光源71用の基板を介してヒートパイプ130と接触しており、このヒートパイプ130を介してヒートシンク190によって冷却される。コリメータレンズ73は、励起光源71からの射出光を平行な光線束に変換してマイクロレンズアレイ75に照射する。なお、マイクロレンズアレイ75に関しての詳細な説明は後述する。
【0035】
また、蛍光板101は、表面が鏡面加工された方形状の板であって、この鏡面上に方形状の緑色蛍光体層が敷設されてなる。この緑色蛍光体層は、耐熱性及び透光性の高いシリコン樹脂等のバインダと、このバインダに均一に散りばめられた緑色蛍光体と、から形成されている。そして、蛍光板101は、励起光源71から射出されたレーザ光線を励起光として緑色の蛍光光を励起光の入射面と同一の面から射出する。また、この蛍光板101の緑色蛍光体層は、表示素子51と相似形状とされており、緑色蛍光体層から射出される光線束の断面形状は、表示素子51の形状に近似したものとなる。
【0036】
赤色光源装置120は、光軸が正面板12と平行とされた赤色光源121を備える。この赤色光源121は、赤色発光ダイオードであり、ヒートシンク190によって冷却される。また、青色光源装置300は、光軸が励起光源71と平行とされた青色光源301を備える。この青色光源301は、青色発光ダイオードであり、ヒートパイプ130を介してヒートシンク190によって冷却される。
【0037】
光源側光学系140は、励起光照射装置70からの射出光及び蛍光板101からの蛍光光を集光する集光レンズ110と、赤色光源121からの射出光を集光する集光レンズ125と、青色光源301からの射出光を集光する集光レンズ305と、励起光照射装置70及び赤色光源装置120からの射出光を透過し、蛍光板101による発光光を反射する第一ダイクロイックミラー141と、赤色光源装置120からの射出光、及び、蛍光板101による発光光を反射し、青色光源装置300からの射出光を透過する第二ダイクロイックミラー142と、から構成される。
【0038】
集光レンズ110,125,305は、複数のレンズが組み合わされることにより一つの集光レンズとして構成されている。また、第一ダイクロイックミラー141は、励起光照射装置70の光軸と赤色光源装置120の光軸とが交差する位置に配置されている。さらに、第二ダイクロイックミラー142は、赤色光源装置120の光軸と青色光源装置300の光軸とが交差する位置に配置されている。
【0039】
さて、レーザ発光器からの射出光を励起光として蛍光体を発光させる構成とした光源ユニットでは、レーザ発光器である励起光源から射出される光線束は、指向性が高く、また、ピークパワーが非常に強いため、蛍光体層の一部に強く照射されて蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じるおそれがあった。そこで、本実施例の光源ユニット60では、上述したように励起光源71の前方にマイクロレンズアレイ75を配置することにより、ピークパワーの強いレーザ光線を、断面形状が蛍光体層と相似形状の光線束に変換して蛍光板101の全体へ略均一に照射することを特徴とする。
【0040】
図4は、マイクロレンズアレイ75の正面模式図及び断面模式図である。励起光照射装置70のマイクロレンズアレイ75は、図4(a)及び(b)に示すように、複数のマイクロ凸レンズ75aがマトリクス状に配列されてなる。また、各マイクロ凸レンズ75aは、蛍光板101の緑色蛍光体層の形状と略相似形状とされている。そして、マイクロレンズアレイ75に入射した光線束は、各マイクロ凸レンズ75aによって複数の光線束に変換され、また、各々のマイクロ凸レンズ75aに入射した光線束は各マイクロ凸レンズ75aによって方形断面の光線束に変換されることとなる。
【0041】
また、マイクロレンズアレイ75によって、複数の方形断面の光線束に変換された励起光は、図5に示すように、集光レンズ110によって集光されて蛍光板101の緑色蛍光体層に照射される。つまり、マイクロ凸レンズ75aを透過した各光線束は、集光レンズ110によって緑色蛍光体層上で中心位置が重なるように集光され、緑色蛍光体層上の全体に複数の方形断面の各光線束が重なり合わさって照射されることとなる。また、各光線束は、図6にマイクロレンズアレイ75を介して照射された励起光の照射分布103を示すが、マイクロ凸レンズ75aによって緑色蛍光体層102の形状と略相似形状の断面形状であるため、緑色蛍光体層102上の広い範囲に均一な強度で励起光が照射されることとなる。よって、レーザ光線のようにピークパワーが強い光線束を、緑色蛍光体層102上の広い範囲に均一強度で照射できるため、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じることを防止でき、蛍光体を均一に発光させることができる。
【0042】
なお、本実施例の光源ユニット60では、2個の励起光源71の前方に1枚のマイクロレンズアレイ75を配置しているもこの構成に限定されるものではなく、例えば各励起光源71の前方に夫々マイクロレンズアレイ75を配置する構成としてもよく、また、1個の高輝度な励起光源71と1枚のマイクロレンズアレイ75とから構成してもよい。
【0043】
導光光学系170は、マイクロレンズアレイ171と、光源ユニット60からの射出光の光軸を表示素子51に向かって変更する光軸変更ミラー173と、光軸変更ミラー173とマイクロレンズアレイ171との間に配置された集光レンズ172と、光軸変更ミラー173で変更された光軸上に位置する集光レンズ174と、プリズム175と、から構成されている。
【0044】
この導光光学系170におけるマイクロレンズアレイ171は、光源ユニット60における赤色光源121、青色光源301及び蛍光板101から射出された光線束を、表示素子51の形状に合わせた複数の長方形断面の光線束に変換し、かつ、当該マイクロレンズアレイ171によって、又は、集光レンズ等によって、表示素子51上で各光線束の中心位置が重なるように集光することでミキシングし、均一な強度分布の光線束に変換する。つまり、マイクロレンズアレイ171は、ライトトンネルやガラスロッド等のように、入射した光線束を方形断面で、かつ、均一強度の光線束に変換する導光装置として機能する。プリズム175は、表示素子51に光源光を照射するコンデンサレンズとして、及び、表示素子51で生成された投影光をレンズ鏡筒225に内装された投影側光学系の光軸と一致させるように光軸を変更する光軸変換装置として機能する。
【0045】
レンズ鏡筒225に内装された投影側光学系は、固定レンズ群や可動レンズ群によって構成されており、上述したレンズモータ45を制御することにより可動レンズ群のレンズを光軸方向に稼働させることでズーム機能やフォーカス機能を実現している。
【0046】
また、バッテリー55は、プロジェクタ1の駆動電源であり、商用電源の接続により充電可能な2次電池である。なお、バッテリー55は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの2次電池を適用可能である。そして、本実施例のプロジェクタ1は、電気コード等を接続していなくとも、このバッテリー55の電力によって投影可能とされている。
【0047】
このように、本実施例のプロジェクタ1では、励起光源71の前方にマイクロレンズアレイ75を配置することにより、蛍光板101の蛍光体層における広い範囲に均一な強度の励起光を照射できることとなる。よって、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じることを防止でき、さらに蛍光体を均一に発光させることができ、輝度ムラのない、長期間安定した投影が可能なプロジェクタ1を提供できることとなる。
【0048】
また、マイクロレンズアレイ75を、蛍光体層の形状と相似形状の複数のマイクロ凸レンズ75aをマトリクス状に配列して形成することにより、励起光源71から射出された円形断面の光線束を、複数の方形断面の光線束に変換することができる。よって、方形状の蛍光体層に円形断面の光線束を照射する場合と比較すると、蛍光体層の広い範囲に励起光を照射できることとなるため、蛍光体の利用効率を高めることができる。なお、本実施例では蛍光体層102及びマイクロ凸レンズ75aの形状を方形状としたが、前述のとおり蛍光体層及びマイクロ凸レンズが相似形であれば方形状に限定されるものではなく、例えば円形状であっても、多角形であってもよい。すなわち、励起光原71からの射出光を蛍光体層と同じ形状の複数の光線束に変換できればよい。
【0049】
そして、マイクロレンズアレイ75で生成した複数の光線束を、集光レンズ110によって蛍光体層上で中心位置が重なるように集光することにより、蛍光体層に対して個々のパワーは弱い複数の光線束を重ね合わせて照射することができるため、一部の領域にのみ強いパワーの光が照射されることを防止でき、これにより、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じることを防止でき、さらに蛍光体を均一に発光させることができる。
【0050】
また、本実施例の光源ユニット60は、この励起光源71及び蛍光板101の他に、赤色光源121及び青色光源301を備えているため、光の三原色である赤色、緑色、青色波長帯域光を生成できることとなり、カラー画像の投影が可能なプロジェクタ1における光源として用いることができる。
【0051】
なお、本実施例のプロジェクタ1では、緑色波長帯域光のみ蛍光板101で生成する構成としているもこれに限定されるものではなく、赤色、青色波長帯域光に関しても蛍光板を用いて生成する構成としてもよく、この場合にも本実施例と同様に励起光源71の前方にマイクロレンズアレイ75を配置することで、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊が生じることを防止でき、かつ、蛍光体の利用効率を高め、蛍光体を均一に発光させることができる。
【0052】
また、蛍光体の輝度飽和や焦げによる破壊を防止するために蛍光体を回転させる必要がないため、回転駆動させるためのモータなどの駆動装置が不要となり、光源ユニット60、プロジェクタ1の小型化も可能となる。
【0053】
また、本発明は、以上の実施例に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で自由に変更、改良が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 プロジェクタ 5 上ケース
6 下ケース 11 上面板
12 正面板 13 背面板
14 左側板 15 右側板
18 吸気孔 21 入出力コネクタ部
22 入出力インターフェース 23 画像変換部
24 表示エンコーダ 25 ビデオRAM
26 表示駆動部 31 画像圧縮伸長部
32 メモリカード 37 キー/インジケータ部
38 制御部 41 光源制御回路
42 照度センサ 43 冷却ファン駆動制御回路
45 レンズモータ 47 音声処理部
48 スピーカ 51 表示素子
55 バッテリー 60 光源ユニット
70 励起光照射装置 71 励起光源
73 コリメータレンズ 75 マイクロレンズアレイ
75a マイクロ凸レンズ 80 電源コネクタ
100 蛍光発光装置 101 蛍光板
102 緑色蛍光体層 103 照射分布
110 集光レンズ
120 赤色光源装置 121 赤色光源
125 集光レンズ 130 ヒートパイプ
140 光源側光学系 141 第一ダイクロイックミラー
142 第二ダイクロイックミラー 170 導光光学系
171 マイクロレンズアレイ 172 集光レンズ
173 光軸変更ミラー 174 集光レンズ
175 プリズム 190 ヒートシンク
225 レンズ鏡筒 235 可動レンズ群
241 主制御回路基板 242 電源制御回路基板
261 冷却ファン 300 青色光源装置
301 青色光源 305 集光レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光源と、
該励起光源からの射出光を励起光として発光する蛍光体層を備えた蛍光板と、
前記励起光源と蛍光板との間に配置され、前記励起光源からの射出光を、複数の光線束に変換して前記蛍光板に照射するマイクロレンズアレイと、
前記蛍光板近傍に配置され、前記複数の光線束を前記蛍光体層上で中心位置が重なるように該蛍光体層に照射する集光レンズと、
を備えることを特徴とする光源ユニット。
【請求項2】
前記蛍光板は、表面を反射面とし、該反射面上に所定の形状の前記蛍光体層が敷設されてなり、
前記マイクロレンズアレイは、前記蛍光体層の形状と相似形状の複数のマイクロ凸レンズがマトリクス状に配列されてなることを特徴とする請求項1に記載の光源ユニット。
【請求項3】
前記蛍光体層が方形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光源ユニット。
【請求項4】
前記励起光源及び前記マイクロレンズアレイを備えた励起光照射装置と、
前記励起光源からの射出光を受けて緑色波長帯域光を射出する緑色蛍光体層を備えた前記蛍光板と、
赤色波長帯域光を射出する赤色光源と、
青色波長帯域光を射出する青色光源と、
前記赤色、緑色及び青色波長帯域光を同一の光軸に変換して所定の一面まで導光する光源側光学系と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光源ユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の光源ユニットと、
表示素子と、
投影側光学系と、
前記光源ユニットからの射出光を前記表示素子まで導光し、かつ、前記表示素子で生成された投影光を前記投影側光学系の光軸に一致させる導光光学系と、
前記光源ユニット及び前記表示素子を制御するプロジェクタ制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−197597(P2011−197597A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67134(P2010−67134)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】