説明

光源搭載型摺動ルーフを具備する自動車用ルーフライナ

本発明は、摺動ルーフ(10)に搭載した光源を具備する自動車のルーフライナ(2)に関する。ルーフライナ(2)は、透明ルーフライナセグメント(40)を有し、透明ルーフライナセグメント(40)の下のエリアは、摺動ルーフ(10)で閉じられる。光源を備えた摺動ルーフ(10)は、第1の接触手段(16)に電気的に接続され、ルーフライナ(2)は、自動車電気系統に電気的に接続される第2の接触手段(18)を備えている。摺動ルーフ(10)が閉じると、接触手段(16、18)は、電力を光源に供給するために、互いに導電的に接続される。これらの手法は、電力を光源に供給する電線のための複雑な取扱を回避することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動摺動ライナに配置される光源を有する自動車のルーフライナに関し、そのルーフライナは、透明ルーフライナセグメントを有し、この摺動ライナによって透明ルーフライナセグメントの下のエリアを閉じることができる。
【背景技術】
【0002】
自動車の乗員の要求に基づき車内の照明条件を最適化する技術的照明システムを統合することが、現在の開発の主題である。
【0003】
暗い自動車の乗員室を照明するために、例えば、表面照明ユニットが付加的に自動車内に配置される。表面照明ユニットは、広い面積を照明する結果としてスポット状光源よりも影を落とす傾向が少ない。表面照明ユニットの特定の実施形態は、特許文献1に記載されている。表面照明ユニットは、表面上への均一な光分布を有し、オブジェクトまたは空間を照明するために使用される。表面照明ユニットは少なくとも1枚のパネルを有し、光源はパネルの少なくとも片面に配置され、光をパネル内に反射させる反射体は、前記光源の周囲に配置される。平行に入射する光を好ましい方向に向けて放つように光を所定の角度で反射させる傾斜反射面はパネル内に提供される。好ましい方向の透明パネルの反対面には、それに入射する光を、照明されることになる所望方向に反射させる反射パネルが配置されるので、均一且つ集中的な照明が好ましい方向で達成される。
【0004】
さらに、特許文献2は、表面照明ユニットを有する自動車のルーフライナについて記載する。ルーフライナは、透明ルーフ要素を具備し、摺動ライナによって透明ルーフ要素の下のエリアを閉じることができる。表面照明ユニットは、自動車内部の摺動ライナに取り付けられ、摺動ライナの移動時に共に移動する。
【0005】
エネルギーは一般に、可動摺動ライナと共に移動される電線によって車載電源システムからここでは表面照明ユニットに供給される。電線長は、ここでは、摺動ライナの開または閉プロセス中に接続が引きちぎられるのを防止すべく十分でなければならない。さらに、電線や電線ダクトのための十分な格納空間が後者を適切に案内するのに必要である。
【0006】
【特許文献1】米国特許第5 079 675号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第199 02 244 A1号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、可動摺動ライナに配置され、電力を表面照明ユニットに供給する簡単で、小型の信頼性のある手段を保証する、光源を有する自動車のルーフライナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の特徴の組合せによって達成される。
【0009】
可動摺動ライナに配置される光源を有するルーフライナの場合、ルーフライナは透明ルーフライナセグメントを有し、摺動ライナによって透明ルーフライナセグメントの下のエリアを覆うか閉じることができ、摺動ライナは、光源に電気的に接続される第1の接触手段を有し、ルーフライナには、エネルギー源に(例えば車載電源システムに)外部から電気的に接続される第2の電気接触手段が取り付けられ、第1および第2接触手段は、光源にエネルギーを供給するために、摺動ライナが閉じると互いに導電的に接続される。
【0010】
摺動ライナに好ましくは固定接続される第1の電気的接触手段は、摺動ライナの端部位置が到達すると、ルーフライナに固定される第2の電気的接触手段への導電接続がもたらされるように、閉プロセス中に移動される。両方の構成要素は、好ましくは金属構造のものであり、ゆえに導電性である。接触を成すこの方法は、摺動ルーフが移動する間の電線の経路指定、または摺動接触部を省くことが可能となる。電力を光源に供給する簡単且つ確実な方法がゆえに確保される。
【0011】
第2の電気的接触手段は、好ましくは少なくとも1本のピン接触として具化される。この実施形態では、摺動ライナは、その端部位置がピン接触に対して動く。特に安定的な接触が、互いに当接する電気的接触手段の結果として形成され、その接触は自動車が酷く振動しても安定性が損なわれない。
【0012】
特に、閉方向において、第1の電気的接触手段は、摺動ライナの前方側端部エリアに配置できる。この実施形態は、自動車ルーフライナのガイドレールのエリアへの第2の電気的接触手段の配置を回避できる。第2の電気的接触手段は、ゆえに摺動ライナの運動機構のエリアには配置されず、その結果として電気的接触手段が安定的に取り付けられる。
【0013】
本発明の他の実施形態では、光源は、表面照明ユニットとして具化され、その結果、自動車の乗員室に特に好ましい照明がもたらされる。
【0014】
特に、車載電源システム電圧(例えば14Vまたは42V)を変圧する変圧器は、第2の電気的接続手段の上流に接続される。ELフィルムとして具化された表面照明ユニットの場合、電圧は、例えば110Vまで変圧される。これにより、高電圧をルーフエリア内に伝えることができる。
【0015】
本発明の他の有利な実施形態は従属請求項に記載される。
【0016】
本発明を、図面の多数の典型的実施形態を参照してより詳細に記載する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1に示される自動車のルーフ構造の細部は、ウインドウ要素4および担持要素6を備えたルーフライナ2を具備する。ルーフライナ2の中央エリア内には、摺動ライナ10のガイドフレーム8が配置される。透明ルーフライナセグメント40は、ライナ側でルーフライナ2を閉じる。透明ルーフライナセグメント40は、例えば、ガラスルーフまたは透明摺動ルーフであっても良い。
【0018】
ガイドフレーム8は、自動車の長手方向軸と事実上平行に延び、摺動ライナ10が移動可能に取り付けられる側部ガイドレール12を有する。閉状態において、摺動ライナ10が透明ルーフライナセグメント40を完全に覆うので、自然光が外部から透明ルーフライナセグメント40を通過して自動車の乗員室内に入射することはない。
【0019】
ELフィルムとして具化された表面照明ユニットとしてこの典型的な実施形態で具化される光源30は、乗員室側の、摺動ライナ10に配置される。この典型的な実施形態では、表面照明ユニットは、摺動ライナ10が閉じると、事実上透明ルーフライナセグメント40のエリア全体を覆う。但し、比較的小さなエリアを覆う表面照明ユニットも考えられる。表面照明ユニットは特許文献1に記述されたようにも具化できる。
【0020】
摺動ライナ10は、電線14を介して表面照明ユニットに接続され、摺動ライナ10の閉方向32に、摺動ライナ10の上側の前方側端部エリア内に配置される第1の接触手段16を有する。摺動ライナ10の開方向34は、閉方向32と逆である。
【0021】
2つの接続部36、38を介して車載電源システムに導電的に接続される第2の接触手段18は、接触手段16、18が、エネルギーを表面照明ユニットに供給するために、摺動ライナ10が閉じると互いに導電的に接続されるように、摺動ライナ10のガイドフレーム8に配置される。前方エリア内の接触手段16、18のこの構造は、ガイドレール12の隣に第2の電気的接触手段16の簡易取付を可能にする。
【0022】
第2の電気的接触手段18は、ガイドフレーム8に固定されるパネル要素24上に配置される。摺動ライナ10の取付要素20のガイド要素22は、その端部位置がガイドレール12の端部エリア内に配置される。接触手段18は、ゆえにガイドレール12の端部エリアに近接して配置される。
【0023】
第2の電気的接触手段18は、肯定割当または否定割当を有する2つのピン接触部としてこの典型的な実施形態では具化される。肯定割当および否定割当を組み合わせたたった1つのピン接触だけの実施形態も可能である。その端部位置において、摺動ライナ10は電気的接触手段18上を移動し、ラッチ位置においてそれらを包囲する、その結果として、摺動ライナ10が閉じると大きな空間を占有しない安定した電気的接続が確保される。摺動ライナ10に電力を供給するために付加的に配線経路指定しなければならない電線を省くことも可能となる。より解り易くするために、図1の摺動ライナ10は、2本の両方向矢印40で示された、僅かに開いた状態で示されている。さらに詳細には示さない典型的な実施形態では、2つの電気的接触手段は、摺動ライナまたはガイドフレームに他の点で取り付けられる。必要なのは、摺動ライナの閉状態での2つの接触手段間の電気的接触を確実にすることだけである。
【0024】
車載電源システム電圧を変圧する変圧器(詳細に例示せず)は、第2の接触手段18の上流に接続される。ELフィルムが表面照明ユニットとして使用されるとき、車載電源システム電圧は110Vまで変圧される。自動車の摺動ライナ10に配置される表面照明ユニットにエネルギーを供給する本構造を用いると、ゆえに表面照明ユニットに必要な高電圧が変圧される。
【0025】
摺動ライナ10が閉じると、表面照明ユニットが自動的に、または自動車の乗員室内の操作者制御式要素によってスイッチが切り換えられるように、電気的配線が構成される。このような操作者制御要素は、例えば、運転者のエリアのルーフライナ2内、または自動車の前部または後部エリアのどちらかの他の乗員がアクセス可能なシートエリア内に配置されても良い。
【0026】
ガイドレール12内のガイド要素22と係合する取付要素20は、摺動ライナ10が移動できるように、縁エリア内の、摺動ライナ10に配置される。
【0027】
様々な透光状態間でスイッチが切り換えられるパネル42は、透明ルーフライナセグメント40と反対方向を向く摺動ライナ10の面に配置される。摺動ライナ10はゆえに透明ルーフライナセグメント40とスイッチ切換可能なパネル42との間に配置される。スイッチ切換可能なパネル42は、摺動ライナ10をスイッチ切換可能なパネル42から独立して表面照明ユニットと共に移動できるように摺動ライナ10から独立して機械的に配置される。スイッチ切換可能なパネル42は、透光と部分的透光設定との間でスイッチが切り換えられるのが好ましい。スイッチ切換は、例えば、自動車の乗員室内の操作者制御要素によって作動される。摺動ライナ10が開き、パネル42のスイッチが透光性に切り換えられると、当然、透明ルーフライナセグメント40しか存在していないかのように、光が透明ルーフライナセグメント40を透過して自動車の乗員室に入射することができる。
【0028】
摺動ライナ10が開き、パネル42のスイッチが部分透光性に切り換えられると、透明ルーフライナセグメント40を透過して入射する光は、パネル42で部分的に反射する。光は、それで広く拡散するように自動車の乗員室に入射する。
【0029】
摺動ライナ10が閉じ、表面照明ユニットが接続され、さらにパネル42のスイッチが透光性に切り換えられると、表面照明ユニットからの光はパネルで変更されない。摺動ライナ10が閉じると、表面照明ユニットのスイッチが投入され、さらにパネル42のスイッチが部分的透光性に切り換えられると、表面照明ユニットからの光は、広く拡散するように自動車の乗員室に入射する。
【0030】
図2は、ルーフライナ2の細部を概略分解図で示す。ルーフライナ2は、エネルギーを電気的負荷など(例えば、車載電源システムバッテリ)に供給する太陽電池または光ボルタ電池44で部分的に覆われる。摺動ライナ10のガイドフレーム8は、自動車の乗員室に面する透明ルーフライナセグメント40側に配置される。ルーフライナ2の組立状態では、摺動ライナ10の取付要素20のガイド要素22は、ガイドフレーム8のガイドレール12内で係合する。
【0031】
様々な透光状態の間でスイッチが切り換えられるパネル42は、透明ルーフライナセグメント40と反対方向を向く摺動ライナ10の側に配置される。パネル42の表面は、前記摺動ライナ10の閉状態において摺動ライナ10を完全に覆う。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】摺動ライナを有する自動車のルーフ構造の細部を概略平面図で示す。
【図2】ルーフライナを概略分解図で示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動摺動ライナ(10)に配置される光源を有し、透明ルーフライナセグメント(40)を有し、前記摺動ライナ(10)によって前記透明ルーフライナセグメント(40)を覆うことができる、自動車のルーフライナ(2)であって、
−前記摺動ライナ(10)には、前記光源(30)に電気的に接続される第1の接触手段(16)が取り付けられ、
−前記ルーフライナ(2)には第2の接触手段(18)が取り付けられ、
−前記摺動ライナ(10)が閉じると、前記第1および第2の接触手段(16、18)は前記光源(30)にエネルギーを供給するために互いに導電的に接続されていることを特徴とするルーフライナ(2)。
【請求項2】
前記第2の接触手段(18)は少なくとも1つのピン接触部として具化されることを特徴とする請求項1に記載のルーフライナ(2)。
【請求項3】
前記第1の接触手段(16)は、前記摺動ライナ(10)の前方側端部エリアに閉方向(32)に配置されることを特徴とする請求項1あるいは2に記載のルーフライナ(2)。
【請求項4】
前記光源(30)は、前記摺動ライナ(10)が閉じると自動的にスイッチが投入されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項5】
前記光源(30)は、摺動ライナ(10)が閉じると操作者制御要素によってスイッチが投入されうることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項6】
前記光源(30)は、表面照明ユニットとして具化されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項7】
前記表面照明ユニットは、ELフィルムとして具化されることを特徴とする請求項6に記載のルーフライナ(2)。
【請求項8】
変圧器は、前記第2の接触手段(18)の上流に接続されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項9】
様々な透光状態間でスイッチが切り換えられるパネル(42)は、前記ルーフライナセグメント(40)と反対方向を向く前記摺動ライナ(10)の面に配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項10】
前記摺動ライナ(10)は、移動可能に案内されるようにガイドレール(12)内に配置されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のルーフライナ(2)。
【請求項11】
前記ガイドレール(12)は、前記ルーフライナ(2)に取り付けられるガイドフレーム(8)の構成要素であることを特徴とする請求項10に記載のルーフライナ(2)。
【請求項12】
前記第2の接触手段(18)は、前記ガイドフレーム(8)に取り付けられることを特徴とする請求項11に記載のルーフライナ(2)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動摺動ライナ(10)に配置される光源を有し、透明ルーフライナセグメント(40)を有し、前記摺動ライナ(10)によって前記透明ルーフライナセグメント(40)を覆うことができる、自動車のルーフライナ(2)であって、
−前記摺動ライナ(10)には、前記光源(30)に電気的に接続される第1の接触手段(16)が取り付けられ、
−前記ルーフライナ(2)には、前記第1の接触手段(16)に導電的に着脱可能に接続できる第2の接触手段(18)が取り付けられ、
−前記摺動ライナ(10)が閉じると、前記光源(30)にエネルギーを供給するために前記第1および第2の接触手段(16、18)は互いに導電的に接続され、
前記第1の接触手段(16)は、前記摺動ライナ(10)の前方側端部エリアに閉方向(32)に配置されることを特徴とするルーフライナ(2)。
【請求項2】
前記第2の接触手段(18)は少なくとも1つのピン接触部として具化されることを特徴とする請求項1に記載のルーフライナ。
【請求項3】
前記光源(30)は、前記摺動ライナ(10)が閉じると自動的にスイッチが投入されることを特徴とする請求項1〜2のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項4】
前記光源(30)は、摺動ライナ(10)が閉じると操作者制御要素によってスイッチが投入されうることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項5】
前記光源(30)は、表面照明ユニットとして具化されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項6】
前記表面照明ユニットは、ELフィルムとして具化されることを特徴とする請求項5に記載のルーフライナ。
【請求項7】
変圧器は、前記第2の接触手段(18)の上流に接続されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項8】
様々な透光状態間でスイッチが切り換えられるパネル(42)は、前記ルーフライナセグメント(40)と反対方向を向く前記摺動ライナ(10)の面に配置されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項9】
前記摺動ライナ(10)は、移動可能に案内されるようにガイドレール(12)内に配置されることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のルーフライナ。
【請求項10】
前記ガイドレール(12)は、前記ルーフライナ(2)に取り付けられるガイドフレーム(8)の構成要素であることを特徴とする請求項9に記載のルーフライナ。
【請求項11】
前記第2の接触手段(18)は、前記ガイドフレーム(8)に取り付けられることを特徴とする請求項10に記載のルーフライナ。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510518(P2006−510518A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−572816(P2003−572816)
【出願日】平成15年2月7日(2003.2.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/001201
【国際公開番号】WO2003/074329
【国際公開日】平成15年9月12日(2003.9.12)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】