光源装置、及び通信装置
【課題】量子暗号通信に利用可能な小型の光源装置を提供すること。
【解決手段】反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【解決手段】反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術や通信技術の急速な発展に伴い、公文書、私文書を問わず、文書の電子化が急速に進んでいる。これに伴い、多くの個人や企業は、電子文書の安全管理に大きな関心を寄せている。こうした関心の高まりを受け、各方面で電子文書の盗聴や偽造等のタンパリング行為に対する安全性が盛んに議論されるようになってきた。電子文書の盗聴に対する安全性は、例えば、電子文書を暗号化することにより確保される。また、電子文書の偽造に対する安全性は、例えば、電子署名を利用することにより確保される。但し、暗号や電子署名には十分なタンパリング耐性が求められる。
【0003】
現在広く利用されている公開鍵暗号は、古典的なコンピュータの計算量的複雑性を安全性の根拠としている。例えば、RSA暗号は、「大きな合成数に対する素因数分解の困難性(以下、素因数分解問題)」を安全性の根拠としている。また、DSA暗号やElGamal暗号は、「離散対数問題に対する解答の困難性」を安全性の根拠としている。しかし、量子コンピュータは、素因数分解問題や離散対数問題に対する解答を効率的に算出することができると言われている。つまり、現在広く利用されている上記の暗号は、量子コンピュータが実用化されると、その安全性が保証されない。
【0004】
こうした実状を背景に、量子コンピュータを利用した量子暗号に関する研究や、量子通信路を利用した量子鍵配送プロトコルに関する研究が盛んに進められている。なお、上記の「古典」という表現は、「量子」ではないという意味で用いている。また、「量子」という表現は、量子力学の原理に基づいているか、量子力学の原理を応用していることを意味している。例えば、量子コンピュータは、量子力学における重ね合わせの原理を利用している。また、量子鍵配送プロトコルは、量子力学の不確定性原理を利用している。
【0005】
量子鍵配送プロトコルの代表例は、BB84プロトコルである。また、BB84プロトコルを改良した量子鍵配送プロトコルも知られている。これらの量子鍵配送プロトコルにおいては、1ビットの情報を1個の光子で送ることが盗聴困難性を保証するための条件とされている。そのため、量子鍵配送プロトコルにおける安全性を確保するためには、1パルスに1個の光子が存在するように、光源装置から放出される各パルスの光子数を厳密に制御する必要がある。しかしながら、半導体レーザ等の光源装置から放出される光子数は、ポアソン分布をしており、1パルス当たりの平均光子数を1個に制御しても、有限の確率で2個以上の光子を含むパルスが発生してしまう。
【0006】
つまり、量子鍵配送プロトコルを実現するには、ノイズが低く、かつ、十分に強度が抑制された微弱な光パルスを得ることが可能な光源装置が求められる。多くの場合、ノイズの低い光源装置としてレーザ光源が利用される。特に、取り扱いの容易さや価格の安さから、半導体レーザがよく利用される。量子鍵配送プロトコルへの応用を企図したものではないが、下記の特許文献1には、半導体レーザの一般的な構成が記載されている。同文献に記載の半導体レーザは、光共振器を構成する前端面の反射率Rfと後端面の反射率Rrを異なる値(Rf<Rr)に設定し、後端面から出力される光をモニター出来るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2666086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現行のレーザ光源を利用して1パルス当たり平均光子数が1個以下の光を得ることは難しい。例えば、波長1.5μmの光子を1個含む光パルスの長さが1nsの場合、その光パルスのエネルギーは、1.3×10−19Jである。また、その平均パワ−は0.13nWである。上記の文献に記載の半導体レーザを利用して、このような微弱な光パルスを得ることは難しい。また、上記文献に記載の半導体レーザに減衰器等を組み合わせて上記のような微弱な光パルスを得ようとすると、かなり大がかりな設備が必要になり、光源装置自体が巨大化してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、量子暗号通信に利用可能な小型の光源装置、及びこの光源装置を利用してデータを送受信することが可能な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、を備え、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となる第1の減衰量、又は、前記第1の減衰量とは異なる第2の減衰量に制御する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0015】
また、前記レーザ媒質は、半導体レーザのレーザ媒質であってもよい。
【0016】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器はファブリペロー共振器から成っていてもよい。この場合、前記第1反射器、第2反射器のいずれか一方又は両方は、誘電体膜がコーティングされた半導体端面である。
【0017】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、分布フィードバック型、又は分布ブラッグ反射型であってもよい。
【0018】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、多層膜ミラー型であってもよい。この場合、前記半導体レーザは、面発光型である。
【0019】
また、前記光検出器は、半導体受光素子であってもよい。
【0020】
また、前記光減衰器は、光学フィルタ、部分反射ミラー、或いは、光学フィルタと部分反射ミラーとの組み合わせであってもよい。
【0021】
また、前記レーザ媒質は、第1の偏光方向に直線偏光したレーザ光を出力するものであってもよい。この場合、前記光減衰器は、印加された電圧に応じた変化度合いで、前記レーザ媒質から出力されたレーザ光の偏光方向を変化させる液晶素子と、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する偏光板と、を含み、前記液晶素子を透過した光は、前記偏光板に入射され、前記制御器は、前記液晶素子に印加される電圧を制御することにより、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を制御する。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を有する光源装置と、前記光源装置を利用してデータを送信するデータ送信部と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、量子暗号通信に利用可能な光源装置を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図2】同実施形態の一変形例に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図3】同実施形態に係る光源装置における反射率の設定方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図5】同実施形態の一変形例に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る可変光減衰器の構成を説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図9】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図10】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図11】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図12】量子暗号通信に利用される一般的なレーザ光源の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図12を参照しながら、従来の光源装置91の構成について説明する。次いで、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図2を参照しながら、同実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図3を参照しながら、同実施形態に係る光源装置1における反射率の設定方法について説明する。
【0027】
次いで、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図5を参照しながら、同実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図6を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図7を参照しながら、同実施形態に係る可変光減衰器15の構成について説明する。次いで、図8〜図11を参照しながら、同実施形態に係る光源装置1の適用例について説明する。最後に、同実施形態の技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
【0028】
(説明項目)
1:はじめに
2:第1実施形態
2−1:光源装置1の構成
2−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)
3:第2実施形態(制御器14の適用)
3−1:光源装置1の構成
3−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)
4:第3実施形態(可変光減衰器15の適用)
4−1:光源装置1の構成
4−2:光源装置1の具体的な適用例
5:まとめ
【0029】
<1:はじめに>
後述する実施形態の目的は、レーザ光源を用いて、量子暗号通信に利用される低ノイズの微弱光を得ることが可能な光源装置を提供することにある。量子暗号通信に利用できるようにするためには、1パルス当たりの平均光子数が1個以下にまで光を減衰させる必要がある。例えば、波長1.5μmの光子を1個含む光パルスの長さが1nsとすると、その光パルスのエネルギーは、1.3×10−19Jとなる。また、その平均パワーは、1.3×10−10W=0.13nWである。このような微弱な光を現行の半導体レーザから直接得ることはできない。現行の半導体レーザを利用して、このような微弱な光を得るためには、例えば、図12に示すような大がかりな設備が必要になる。
【0030】
ここで、図12を参照しながら、上記のような微弱な光を得るために、現行の半導体レーザを用いて構築された光源システムの構成について説明する。この光源システムは、図12に示すように、光源装置91と、ビームスプリッタ92と、光検出器93とにより構成される。また、光源装置91は、半導体レーザ911と、光検出器912とにより構成される。さらに、半導体レーザ911には、光共振器を成す前方反射器9111及び後方反射器9112が設けられている。
【0031】
半導体レーザ911は、レーザ媒質と励起源を含んでいる。励起源は、レーザ媒質に電流や光(以下、エネルギー)を注入してレーザ媒質中の原子を励起するエネルギー注入源である。励起源からレーザ媒質にエネルギーが注入され、そのエネルギーがレーザ媒質の発振閾値を越えると、半導体レーザ911はレーザ発振する。また、レーザ媒質から発せられた光は、前方反射器9111と後方反射器9112の間で反射を繰り返しながら増幅し、前方反射器9111及び後方反射器9112から出力される。
【0032】
前方反射器9111の反射率Rfは、後方反射器9112の反射率Rrよりも小さく設定されている。そのため、前方反射器9111から強い光(出力光)が出力され、後方反射器9112から弱い光(モニター光)が出力される。後方反射器9112から出力されたモニター光は、光検出器912に入射する。
【0033】
現行の半導体レーザ91は、出力光の強度ができるだけ大きくなるよう、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率9112の間にRf≦Rr(好ましくはRf<Rr、より好ましくはRf≪Rr)という関係が成り立つように設定されている。
【0034】
一般に、出力光の強度Pfとモニター光の強度Prの間には、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率Rrを用いて下記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、下記の式(1)は、下記の式(2)のように変形できる。さらに、関数f(x)≡(1/x−x)を用いて下記の式(2)を書き換えると、下記の式(3)のように表現することができる。
【0035】
この関数f(x)は、0<x≦1の範囲で単調減少する。そのため、Rf<Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、下記の式(3)から、Pf/Pr>1となることが分かる。つまり、前方反射器9111の反射率Rfが後方反射器9112の反射率Rrよりも小さい場合(Rf<Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも大きくなる(Pf>Pr)。
【0036】
【数1】
【0037】
但し、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率Rrが等しい場合(Rf=Rrの場合)、f(Rf1/2)=f(Rr1/2)となり、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prに等しくなる(Pf=Pr)。半導体レーザ911から発せられる出力光の強度は、1mW程度か、それ以上である。そのため、半導体レーザ911から発せられる出力光の強度を1nW以下に減衰させるには、適当な透過率を持つビームスプリッタ92(又はフィルタ)等が必要になる。
【0038】
図12に例示した光源システムの場合、半導体レーザ911から出力された出力光は、ビームスプリッタ92に入射する。ビームスプリッタ92を透過した光は、ビームスプリッタ92により弱められて微弱出力光となる。一方、ビームスプリッタ92により反射した光は、比較的強度の大きい外部モニター光となる。
【0039】
なお、ビームスプリッタ92の設定を変えることにより、ビームスプリッタ92の透過光を外部モニター光、ビームスプリッタ92により反射された光を微弱出力光とする構成も可能である。また、ビームスプリッタ92は、偏光ビームスプリッタでもよい。さらに、ビームスプリッタ92の代わりに吸収型フィルタを設置してもよい。この場合、微弱出力光は得られるが、外部モニター光は得られなくなる。
【0040】
また、ビームスプリッタ92の代わりに偏光板を設置してもよい。この場合、偏光板の光軸を半導体レーザ911の出力光が持つ偏光方向から傾けることで微弱出力光を取り出すことができる。さらに、ビームスプリッタ92(又はフィルタ)を複数設置して十分に減衰した微弱出力光を得る構成にしてもよい。
【0041】
さて、ビームスプリッタ92から得られた外部モニター光は、光検出器93に入射する。外部モニター光が入射した光検出器93は、その外部モニター光の強度を検出する。光検出器93により検出された外部モニター光の強度は、半導体レーザ911におけるレーザ媒質へのエネルギー注入制御に利用される。例えば、光検出器93により検出される外部モニター光の強度が安定するように注入エネルギーを制御すれば、ビームスプリッタ92から出力される微弱出力光の強度を安定させ、ノイズを減らすことができる。
【0042】
なお、ビームスプリッタ92の代わりに吸収型フィルタ等を設置する場合、外部モニター光が得られないが、この場合には光検出器912により検出されるモニター光の強度を利用して注入エネルギーを制御すればよい。但し、モニター光の強度は、外部モニター光の強度よりも小さい場合が多い。その結果、外部モニター光の検出精度よりも、モニター光の検出精度が低くなる。そのため、微弱出力光の強度をより安定させるには、図12に示すようにビームスプリッタ92と光検出器93を利用して外部モニター光の強度を検出しつつ、その検出結果を注入エネルギーの制御に利用する方が好ましい。
【0043】
ところで、図12の例では、光源装置91の外部に設置されたビームスプリッタ92を利用して出力光の強度を減衰させていた。但し、出力光の強度を減衰させる方法としては、例えば、半導体レーザ911のレーザ媒質に注入するエネルギーを減じる方法が考えられる。しかし、半導体レーザ911の出力光には、レーザ発振の有無に関わらず自然放出光が含まれている。自然放出光はレーザ光にとってノイズ成分である。仮に、注入エネルギーを抑制して1nW以下にまで出力光の強度を減じると、出力光に占める自然放出光の割合が増大してしまう。もちろん、1nW以下の微弱な出力光を得ようとして注入エネルギーを減じると、レーザ発振自体が生じなくなったり、レーザ発振が不安定になったりする可能性もある。
【0044】
こうした理由から、半導体レーザ911から発せられる出力光の強度を微弱出力光の強度まで抑制することは難しい。従って、現行の半導体レーザ911を利用して微弱出力光を得るためには、ビームスプリッタ92等の光減衰手段を設ける必要があった。そのため、量子暗号通信に利用される微弱出力光を得るための光源システムの小型化は困難であった。後述する実施形態に係る技術は、こうした課題に鑑みて考案されたものであり、レーザ光源を用いて、安定的に低ノイズの微弱出力光を得ることが可能な小型の光源装置を提供するものである。
【0045】
<2:第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
【0046】
[2−1:光源装置1の構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。
【0047】
図1に示すように、光源装置1は、半導体レーザ11と光検出器12により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。なお、半導体レーザ11に適用可能な光共振器としては、例えば、誘電体多層膜を半導体レーザ11の端面にコーティングして得られるファブリペロー共振器がある。また、半導体レーザ11の内部にブラッグ反射構造を組み込んだDFB共振器(分布帰還型共振器)や、面発光型レーザのように屈折率の異なる半導体を交互に積層して得られるDBR共振器(分布反転型共振器)等も用いられる。
【0048】
また、前方反射器111の反射率Rf(以下、前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(以下、後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0049】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0050】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。光検出器12は、入射したモニター光の強度を検出する。なお、光検出器12としては、例えば、フォトダイオード等の半導体受光素子が利用される。また、光検出器12の表面には、無反射コーティングが施されていることが望ましい。さらに、光検出器12は、モニター光の入射面に対して斜めに傾けて設置されていることが望ましい。
【0051】
このような構成にすることで、入射したモニター光の一部が反射して半導体レーザ11に戻ることがなくなる。モニター光の反射光が半導体レーザ11に戻ると半導体レーザ11の動作が不安定になるが、上記の構成を適用することにより半導体レーザ11の動作を不安定にする要因が排除される。その結果、半導体レーザ11の動作が安定し、出力光に付加されるノイズが抑制される。
【0052】
一方、前方反射器111から出力される光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。微弱出力光の強度は、半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することにより調整される。また、光源装置1は、光検出器12により検出されたモニター光の強度に応じて、微弱出力光の強度が安定するように、半導体レーザ11に注入されるエネルギーを制御する。なお、半導体レーザ11に注入されるエネルギーの制御は、例えば、半導体レーザ11を駆動する電源を制御することにより実現される。
【0053】
(反射率Rf、Rrの設定)
ここで、前方反射率Rfと後方反射率Rrの設定方法について説明を補足する。
【0054】
ここでは一例として、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを考え、この1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を得るための設定方法について考察する。
【0055】
波長1.5μmの光子が持つエネルギーは、1.3×10−19Jである。このエネルギーが長さ1nsの矩形パルスに含まれる場合、この矩形パルスの平均強度Pfは、Pf=1.3×10−10W=0.13nWとなる。仮に、モニター光の強度PrがPr=1.3mWであるとすると、強度比Pf/Pr=1.0×10−7となる。上記の式(1)から、前方反射率Rf=99.999%、後方反射率Rr=0.01%に設定すると、この強度比Pf/Pr=1.0×10−7を満たす。
【0056】
もちろん、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法はこれに限定されない。つまり、上記の式(1)と強度比Pf/Pr=1.0×10−7を満たす前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが算出できればよい。但し、上記の式(1)は、前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせを決定するためには少し使いづらい形になっている。そこで、Pf/Pr≪1、1−Rf≪1、Rr≪1であることに注目し、上記の式(1)を近似すると、下記の式(4)が得られる。
【0057】
【数2】
【0058】
1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光が得られるようにするためには、上記の式(4)にPf/Pr=1.0×10−7を代入して、上記の式(4)を満たす前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせを決定すればよい。
【0059】
なお、Pf/Pr=1.0×10−7という条件は、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを出力する半導体レーザ11おいて、モニター光の強度Pr=1.3mWとした場合に、微弱出力光の1矩形パルスが含む光子数を平均1個にするための条件である。従って、波長、光パルスの形状及び長さ、モニター光の強度が変わると、1パルス当たり平均1個の光子を含む微弱出力光を得るための条件(強度比Pf/Pr)は変更される。しかし、適宜条件を変更することにより、1パルス当たり1光子を含む微弱出力光を得ることが可能な前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが得られる。
【0060】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成、及び、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することで、微弱出力光の強度を安定させることができる。
【0061】
[2−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)]
次に、図2を参照しながら、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。図2は、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図1に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、本変形例に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、及び光減衰器13により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0063】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0064】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、光減衰器13に入射する。光減衰器13は、入射した光の強度を減衰させる。光減衰器13としては、例えば、NDフィルタ等の光学フィルタ、ミラー、偏光板、或いは、これらの組み合わせが用いられる。光減衰器13により減衰された光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。
【0065】
微弱出力光の強度は、半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することにより調整される。また、光源装置1は、光検出器12により検出されたモニター光の強度に応じて、微弱出力光の強度が安定するように、半導体レーザ11に注入されるエネルギーを制御する。なお、半導体レーザ11に注入されるエネルギーの制御は、例えば、半導体レーザ11を駆動する電源を制御することにより実現される。
【0066】
(反射率Rf、Rrの設定)
ここで、前方反射率Rfと後方反射率Rrの設定方法について説明を補足する。
【0067】
ここでは一例として、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを考え、この1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を得るための設定方法について考察する。また、光減衰器13は、一例として光学濃度が4のNDフィルタであるとする。つまり、光減衰器13の透過率は0.0001=0.01%である。
【0068】
波長1.5μmの光子が持つエネルギーは、1.3×10−19Jである。このエネルギーが長さ1nsの矩形パルスに含まれる場合、この矩形パルスの平均強度Pfは、Pf=1.3×10−10W=0.13nWとなる。但し、この平均強度Pfは、透過率0.01%を通過した後で得たい数値である。従って、光減衰器13の前段における光の強度Pfは、Pf=0.13nW×10000=1.3μWである。
【0069】
仮に、モニター光の強度PrがPr=1.3mWであるとすると、強度比Pf/Pr=1.0×10−3となる。上記の近似式(4)から、前方反射率Rf=99%、後方反射率Rr=1%に設定すると、この強度比Pf/Pr=1.0×10−3を満たす。なお、より正確に記述すると、前方反射率Rf=99%、後方反射率Rr=1%の場合、上記の式(1)から、強度比Pf/Prは、Pf/Pr=1/985である。そして、モニター光の強度Prは、Pr=1.3mW×0.985=1.28mWである。
【0070】
さて、上記の式(1)にPf/Pr=1.0×10−3を代入すると、前方反射率Rf、後方反射率Rrの関係は、図3に示したグラフのようになる。つまり、図3に示したグラフ上の1点を選択し、その点に対応する前方反射率Rfと後方反射率Rrの組み合わせを選択すれば、Pf/Pr=1.0×10−3となる。言い換えると、図2に示した光源装置1において、図3のグラフに対応する前方反射率Rfと後方反射率Rrを設定し、光検出器12にて検出されるモニター光の光強度が1.3mWとなるように半導体レーザ11の注入エネルギーを制御すれば、1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を取り出すことができる。
【0071】
なお、Pf/Pr=1.0×10−3という条件は、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを出力する半導体レーザ11おいて、モニター光の強度Pr=1.3mW、NDフィルタの透過率0.01%とした場合に、微弱出力光の1矩形パルスが含む光子数を平均1個にするための条件である。従って、波長、光パルスの形状及び長さ、モニター光の強度、NDフィルタの透過率が変わると、1パルス当たり平均1個の光子を含む微弱出力光を得るための条件(強度比Pf/Pr)は変更される。しかし、適宜条件を変更することにより、1パルス当たり1光子を含む微弱出力光を得ることが可能な前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが得られる。
【0072】
以上、本発明の第1実施形態に係る一変形例について説明した。本変形例に係る光源装置1の構成、及び、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態の一変形例に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。
【0073】
なお、本変形例に係る光源装置1は、光減衰器13を利用するため、図1に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図1に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0074】
<3:第2実施形態(制御器14の適用)>
本発明の第2実施形態について説明する。
【0075】
[3−1:光源装置1の構成]
まず、図4を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図1に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0076】
図4に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、及び制御器14により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0077】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0078】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。なお、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0079】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(以下、強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(以下、注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0080】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0081】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0083】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。さらに、本実施形態の場合、制御器14を光源装置1に内蔵しているため、注入エネルギーの制御を行う手段として、外部に半導体レーザ11の駆動電源を設置する必要がない。その結果、図1に示した光源装置1に比べ、より小型の光源システムが実現される。
【0084】
[3−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)]
次に、図5を参照しながら、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。図5は、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図2、図4に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0085】
図5に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、光減衰器13、及び制御器14により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0086】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0087】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、光減衰器13に入射する。光減衰器13は、入射した光の強度を減衰させる。光減衰器13としては、例えば、NDフィルタ等の光学フィルタ、ミラー、偏光板、或いは、これらの組み合わせが用いられる。光減衰器13により減衰された光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。なお、微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。但し、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0088】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0089】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0090】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態に係る変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
以上、本発明の第2実施形態に係る一変形例について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0092】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。なお、本変形例に係る光源装置1は、光減衰器13を利用するため、図4に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図4に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0093】
<4:第3実施形態(可変光減衰器15の適用)>
本発明の第3実施形態について説明する。
【0094】
[4−1:光源装置1の構成]
まず、図6を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図6は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図5に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0095】
図6に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、制御器14、及び可変光減衰器15により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0096】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0097】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、可変光減衰器15に入射する。可変光減衰器15は、入射した光の強度を減衰させる。但し、可変光減衰器15は、減衰量が固定された光減衰器13とは異なり、制御器14の制御を受けて光の減衰量を切り替えることができる。例えば、可変光減衰器15は、量子暗号通信に利用可能な微弱出力光を得るための第1の減衰量と、微弱出力光大きな強度を持つ光(以下、非微弱出力光)を得るための第2の減衰量との間で減衰量を切り替えることができる。
【0098】
なお、非微弱出力光は、例えば、電子機器を制御したり、各種のデータを送受信したりするための一般的な光通信の光源や、レーザポインタの光源等としての用途が考えられる。また、可変光減衰器15は、例えば、図7に示すように、液晶素子151と偏光板152を組み合わせて構成される。但し、半導体レーザ11から出力された光が液晶素子151に入射し、液晶素子151を透過した光が偏光板152に入射するように、偏光板152の前段に液晶素子151が配置される。また、半導体レーザ11が水平偏光の光を出力する場合、偏光板152は、垂直偏光の光を透過するように設置される。
【0099】
このような構成にすると、半導体レーザ11から出力された光は、液晶素子151によって偏光方向が変えられない限り、偏光板152を透過しない。また、液晶素子151により変えられる偏光方向の変化度合いに応じて偏光板152を透過する光の強度が変化する。この偏光方向の変化度合いは、液晶素子151に印加する電圧が高いほど大きくなる。つまり、液晶素子151に印加する電圧を制御することにより、偏光板152から出力される光の強度を制御することができる。
【0100】
上記の通り、可変光減衰器15に対する減衰量は、制御器14により制御される。例えば、制御器14は、可変光減衰器15から出力される光を微弱出力光にする場合、可変光減衰器15の減衰量が第1の減衰量になるように、液晶素子151に印加する電圧を制御するための信号(以下、光減衰量制御信号)を可変光減衰器15に入力する。一方、可変光減衰器15から出力される光を非微弱出力光にする場合、制御器14は、可変光減衰器15の減衰量が第2の減衰量になるように、液晶素子151に印加する電圧を制御するための光減衰量制御信号を可変光減衰器15に入力する。このように、制御器14から光減衰量制御信号が入力されることによって可変光減衰器15の減衰量が制御される。
【0101】
さて、上記の可変光減衰器15により減衰された光は、微弱出力光又は非微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。なお、微弱出力光又は非微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。但し、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0102】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0103】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光又は非微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光又は非微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0104】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態に係る変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0106】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。なお、本変形例に係る光源装置1は、可変光減衰器15を利用するため、図4に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図4に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0107】
さらに、本実施形態に係る光源装置1は、可変光減衰器15を制御して半導体レーザ11から出力される光の減衰量を切り替えることができるため、同一装置により、用途に応じて微弱出力光と非微弱出力光を使い分けることができる。また、可変光減衰器15を液晶素子151と偏光板152により構成することで、液晶素子151の電圧制御という容易な操作で微弱出力光と非微弱出力光を切り替えることができる。その結果、微弱出力光源及び非微弱出力光源としての役割を兼ね備えた小型の光源装置1が実現される。
【0108】
[4−2:光源装置1の具体的な適用例]
ここで、図8〜図11を参照しながら、図6に示した光源装置1の具体的な適用例について説明する。図8は、携帯電話への適用例を示している。また、図9、図10は、ノート型コンピュータへの適用例を示している。図11は、SFP(Small Form factor Pluggable)モジュールと呼ばれるタイプの通信モジュールへの適用例を示している。この通信モジュールは、例えば、ギガビット・イーサネット(登録商標)、ファイバ・チャネル、STM(Synchronous Transport Module)等の光ファイバを利用した通信機器に搭載される,光トランシーバと呼ばれるインターフェースモジュールである。なお、図6に示した光源装置1の適用範囲はこれらの例に限定されない。
【0109】
(1)携帯電話へ適用する場合、例えば、その携帯電話には、図8に示すように、光源装置1、レンズ2、光変調器3が搭載されるであろう。この光源装置1は、図6に示したものである。また、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。この場合、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射し、光変調器3により変調を受けた後で携帯電話の外部に取り出される。
【0110】
(2)ノート型コンピュータへ適用する場合、例えば、図9に示すような配置で、光源装置1、レンズ2、光変調器3、フィルタ4、受光器5、光コネクタソケット6が搭載されるであろう。これらノート型コンピュータに搭載される部品の構成は図10のようになる。この光源装置1は、図6に示したものである。また、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。まず、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射する。次いで、光変調器3により変調を受けた光は、フィルタ4に入射する。
【0111】
上記のフィルタ4は、光源装置1から出力された光を光コネクタソケット6に導光し、一方で、光コネクタソケット6を通じて外部から入射した光を受光器5に導光する光分離器の役割を果たすものである。そのため、光変調器3により変調を受けた光は、フィルタ4を通じて光コネクタソケット6に入射する。光コネクタソケット6に入射した光は、光コネクタソケット6に接続された光ケーブルを通じて外部に取り出される。一方、光コネクタソケット6に接続された光ケーブルを通じて外部から入射した光は、フィルタ4を通じて受光器5に入射する。受光器5は、入射した光を受光する。受光器5としては、例えば、フォトダイオード等の半導体受光素子が利用される。
【0112】
なお、ここでは一本の光ケーブルで双方向に通信する状況を想定した。通常、光ケーブルによる双方向通信において、送信に用いる光の波長と受信に用いる光の波長は異なる。そのため、上記のようにフィルタ4を利用して波長の異なる光を分離することができる。もちろん、ノート型コンピュータに搭載する通信機能の種類や形態に応じて、フィルタ4、受光器5、光コネクタソケット6の構成を適宜変形してもよい。また、レンズ2を光源装置1に組み込んでしまう等、一部設計を変更することも許容される。
【0113】
(3)光トランシーバへ適用する場合、例えば、その光トランシーバには、図11に示すような配置で、光源装置1、レンズ2、光変調器3、受光器5、TIA7(TransImpedance Amplifier)、内部モジュール8が搭載されるであろう。この光源装置1は、図6に示したものである。但し、光トランシーバへ適用する場合、光源装置1に搭載される制御器14は、内部モジュール8に組み込んでもよい。
【0114】
携帯電話へ適用する場合と同様、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。この場合、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射し、光変調器3により変調を受けた後で光トランシーバの送信側ソケットに接続された光ケーブルを通じて外部に取り出される。
【0115】
光トランシーバの受信側ソケットに接続された光ケーブルを通じて外部から入射した光は、受光器5により受光される。受光器5が受光した光は、受光器5の内部で光電変換される。そして、受光器5から出力された低レベルの電流は、TIA7に入力され、電圧信号に変換されて内部モジュール8へと出力される。このように、光トランシーバは、送信側と受信側にそれぞれ1本ずつ光ケーブルが設けられている。そのため、光源装置1は、送信側の光ケーブルへと繋がる通信路に設けられる。
【0116】
以上説明したように、本実施形態に係る光源装置1は、様々な機器に適用できる。なお、光源装置1を適用可能な機器には、光源装置1を利用してデータを送信するためのデータ送信部(非図示)が接続又は設置される。
【0117】
<5:まとめ>
最後に、本発明の実施形態に係る技術内容について簡単に纏める。ここで述べる技術内容は、例えば、PC、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯情報端末、情報家電、カーナビゲーションシステム等、種々の情報処理装置に組み込み可能な光源装置に適用される。
【0118】
上記の光源装置の機能構成は次のように表現することができる。当該光源装置は、第1反射器、第2反射器、レーザ媒質、励起源を有する。当該第1反射器は、反射率R1を有する。また、上記の第2反射器は、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する。さらに、上記のレーザ媒質は、前記第1及び第2反射器の間に配置される。そして、上記の励起源は、前記レーザ媒質を励起するために設けられる。つまり、上記の光源装置は、非対称な反射率を持つ光共振器が搭載されたレーザ光源に関する。さらに、前記第1反射器の反射率R1は、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように設定されている。
【0119】
量子暗号通信に利用される光源には、光パルス1つ当たりの光子数が1個又は1個以下となるような微弱光の出力が求められる。しかし、多くのレーザ光源から出力可能な光の強度は量子暗号通信に利用される微弱光の強度よりも大きく、レーザ光源の外部に光減衰手段を設ける必要があった。例えば、光減衰手段として、高反射率のミラーや高光学濃度のフィルタが用いられていた。しかし、本発明の実施形態に係る上記の光源装置は、反射率の高い第1反射器から出力された光を出力光として利用している。そのため、この光源装置を適用した場合には外部に光減衰手段を設けずに済む。その結果、携帯電話、ノート型コンピュータ、通信モジュール等の小型機器にも搭載することが可能になる。
【0120】
ここで注意すべきは、レーザ媒質に注入されるエネルギーを弱めて量子暗号通信に利用可能な微弱強度の出力光を得ることが非常に難しいということである。一般に、レーザ光源から出力される光にはレーザ光(誘導放出光)の他に自然放出光が含まれている。この自然放出光の割合は、レーザ媒質に注入されるエネルギーが低くなるにつれて大きくなる。そのため、レーザ媒質に注入されるエネルギーを低くすると、自然放出光の割合が増えてレーザ発振が不安定になったり、レーザ発振が生じなくなったりする。さらに、レーザ光にとってノイズである自然放出光の割合が増えるため、微弱出力光の品質が大きく低下してしまう。
【0121】
このようなレーザ光源に特有の本質的な問題から、レーザ媒質に注入されるエネルギーを弱めて微弱出力光を得ることは非常に難しいのである。一方、上記の光源装置は、レーザ媒質に注入するエネルギーを弱めるのではなく、光共振器を構成する第1反射器の反射率R1を調整している。第1反射器、第2反射器を透過する光は、レーザ光であっても、自然放出光であっても、ほぼ同じ割合で減衰される。つまり、第1反射器を透過する際に自然放出光も減衰するため、レーザ光源から出力された光に含まれるレーザ光源の割合が十分に高ければ、第1反射器から高品質の微弱出力光が得られる。このように、注入エネルギーを絞り込む方法に比べ、本発明の実施形態に係る光源装置は原理的に優れている。また、微弱出力光を得るためのシステムを大幅に小型化することが可能になる。
【0122】
(備考)
上記の前方反射器111は、第1反射器の一例である。上記の後方反射器112は、第2反射器の一例である。上記の半導体レーザは、レーザ媒質と励起源を組み合わせて得られるレーザ光源の一例である。上記の携帯電話、ノート型コンピュータ、通信モジュール等は、通信装置の一例である。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0124】
上記実施形態の説明においては、レーザ光源として半導体レーザを例に挙げた。小型化の観点からは半導体レーザが好ましいが、半導体レーザに代えて任意の固体レーザを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 光源装置
2 レンズ
3 光変調器
4 フィルタ
5 受光器
6 光コネクタソケット
7 TIA
8 内部モジュール
11 半導体レーザ
12 光検出器
13 光減衰器
14 制御器
15 可変光減衰器
111 前方反射器
112 後方反射器
151 液晶素子
152 偏光板
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置、及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
情報処理技術や通信技術の急速な発展に伴い、公文書、私文書を問わず、文書の電子化が急速に進んでいる。これに伴い、多くの個人や企業は、電子文書の安全管理に大きな関心を寄せている。こうした関心の高まりを受け、各方面で電子文書の盗聴や偽造等のタンパリング行為に対する安全性が盛んに議論されるようになってきた。電子文書の盗聴に対する安全性は、例えば、電子文書を暗号化することにより確保される。また、電子文書の偽造に対する安全性は、例えば、電子署名を利用することにより確保される。但し、暗号や電子署名には十分なタンパリング耐性が求められる。
【0003】
現在広く利用されている公開鍵暗号は、古典的なコンピュータの計算量的複雑性を安全性の根拠としている。例えば、RSA暗号は、「大きな合成数に対する素因数分解の困難性(以下、素因数分解問題)」を安全性の根拠としている。また、DSA暗号やElGamal暗号は、「離散対数問題に対する解答の困難性」を安全性の根拠としている。しかし、量子コンピュータは、素因数分解問題や離散対数問題に対する解答を効率的に算出することができると言われている。つまり、現在広く利用されている上記の暗号は、量子コンピュータが実用化されると、その安全性が保証されない。
【0004】
こうした実状を背景に、量子コンピュータを利用した量子暗号に関する研究や、量子通信路を利用した量子鍵配送プロトコルに関する研究が盛んに進められている。なお、上記の「古典」という表現は、「量子」ではないという意味で用いている。また、「量子」という表現は、量子力学の原理に基づいているか、量子力学の原理を応用していることを意味している。例えば、量子コンピュータは、量子力学における重ね合わせの原理を利用している。また、量子鍵配送プロトコルは、量子力学の不確定性原理を利用している。
【0005】
量子鍵配送プロトコルの代表例は、BB84プロトコルである。また、BB84プロトコルを改良した量子鍵配送プロトコルも知られている。これらの量子鍵配送プロトコルにおいては、1ビットの情報を1個の光子で送ることが盗聴困難性を保証するための条件とされている。そのため、量子鍵配送プロトコルにおける安全性を確保するためには、1パルスに1個の光子が存在するように、光源装置から放出される各パルスの光子数を厳密に制御する必要がある。しかしながら、半導体レーザ等の光源装置から放出される光子数は、ポアソン分布をしており、1パルス当たりの平均光子数を1個に制御しても、有限の確率で2個以上の光子を含むパルスが発生してしまう。
【0006】
つまり、量子鍵配送プロトコルを実現するには、ノイズが低く、かつ、十分に強度が抑制された微弱な光パルスを得ることが可能な光源装置が求められる。多くの場合、ノイズの低い光源装置としてレーザ光源が利用される。特に、取り扱いの容易さや価格の安さから、半導体レーザがよく利用される。量子鍵配送プロトコルへの応用を企図したものではないが、下記の特許文献1には、半導体レーザの一般的な構成が記載されている。同文献に記載の半導体レーザは、光共振器を構成する前端面の反射率Rfと後端面の反射率Rrを異なる値(Rf<Rr)に設定し、後端面から出力される光をモニター出来るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2666086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現行のレーザ光源を利用して1パルス当たり平均光子数が1個以下の光を得ることは難しい。例えば、波長1.5μmの光子を1個含む光パルスの長さが1nsの場合、その光パルスのエネルギーは、1.3×10−19Jである。また、その平均パワ−は0.13nWである。上記の文献に記載の半導体レーザを利用して、このような微弱な光パルスを得ることは難しい。また、上記文献に記載の半導体レーザに減衰器等を組み合わせて上記のような微弱な光パルスを得ようとすると、かなり大がかりな設備が必要になり、光源装置自体が巨大化してしまう。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、量子暗号通信に利用可能な小型の光源装置、及びこの光源装置を利用してデータを送受信することが可能な通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、を備え、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、光源装置が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となる第1の減衰量、又は、前記第1の減衰量とは異なる第2の減衰量に制御する制御器と、を備える、光源装置が提供される。
【0015】
また、前記レーザ媒質は、半導体レーザのレーザ媒質であってもよい。
【0016】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器はファブリペロー共振器から成っていてもよい。この場合、前記第1反射器、第2反射器のいずれか一方又は両方は、誘電体膜がコーティングされた半導体端面である。
【0017】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、分布フィードバック型、又は分布ブラッグ反射型であってもよい。
【0018】
また、前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、多層膜ミラー型であってもよい。この場合、前記半導体レーザは、面発光型である。
【0019】
また、前記光検出器は、半導体受光素子であってもよい。
【0020】
また、前記光減衰器は、光学フィルタ、部分反射ミラー、或いは、光学フィルタと部分反射ミラーとの組み合わせであってもよい。
【0021】
また、前記レーザ媒質は、第1の偏光方向に直線偏光したレーザ光を出力するものであってもよい。この場合、前記光減衰器は、印加された電圧に応じた変化度合いで、前記レーザ媒質から出力されたレーザ光の偏光方向を変化させる液晶素子と、前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する偏光板と、を含み、前記液晶素子を透過した光は、前記偏光板に入射され、前記制御器は、前記液晶素子に印加される電圧を制御することにより、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を制御する。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、反射率R1を有する第1反射器と、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、前記レーザ媒質を励起するための励起源と、を有する光源装置と、前記光源装置を利用してデータを送信するデータ送信部と、を備え、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、通信装置が提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明によれば、量子暗号通信に利用可能な光源装置を小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図2】同実施形態の一変形例に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図3】同実施形態に係る光源装置における反射率の設定方法を説明するための説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図5】同実施形態の一変形例に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る光源装置の構成を説明するための説明図である。
【図7】同実施形態に係る可変光減衰器の構成を説明するための説明図である。
【図8】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図9】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図10】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図11】同実施形態に係る光源装置の具体的な適用例を示す説明図である。
【図12】量子暗号通信に利用される一般的なレーザ光源の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
[説明の流れについて]
ここで、以下に記載する本発明の実施形態に関する説明の流れについて簡単に述べる。まず、図12を参照しながら、従来の光源装置91の構成について説明する。次いで、図1を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図2を参照しながら、同実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図3を参照しながら、同実施形態に係る光源装置1における反射率の設定方法について説明する。
【0027】
次いで、図4を参照しながら、本発明の第2実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図5を参照しながら、同実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図6を参照しながら、本発明の第3実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。次いで、図7を参照しながら、同実施形態に係る可変光減衰器15の構成について説明する。次いで、図8〜図11を参照しながら、同実施形態に係る光源装置1の適用例について説明する。最後に、同実施形態の技術的思想について纏め、当該技術的思想から得られる作用効果について簡単に説明する。
【0028】
(説明項目)
1:はじめに
2:第1実施形態
2−1:光源装置1の構成
2−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)
3:第2実施形態(制御器14の適用)
3−1:光源装置1の構成
3−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)
4:第3実施形態(可変光減衰器15の適用)
4−1:光源装置1の構成
4−2:光源装置1の具体的な適用例
5:まとめ
【0029】
<1:はじめに>
後述する実施形態の目的は、レーザ光源を用いて、量子暗号通信に利用される低ノイズの微弱光を得ることが可能な光源装置を提供することにある。量子暗号通信に利用できるようにするためには、1パルス当たりの平均光子数が1個以下にまで光を減衰させる必要がある。例えば、波長1.5μmの光子を1個含む光パルスの長さが1nsとすると、その光パルスのエネルギーは、1.3×10−19Jとなる。また、その平均パワーは、1.3×10−10W=0.13nWである。このような微弱な光を現行の半導体レーザから直接得ることはできない。現行の半導体レーザを利用して、このような微弱な光を得るためには、例えば、図12に示すような大がかりな設備が必要になる。
【0030】
ここで、図12を参照しながら、上記のような微弱な光を得るために、現行の半導体レーザを用いて構築された光源システムの構成について説明する。この光源システムは、図12に示すように、光源装置91と、ビームスプリッタ92と、光検出器93とにより構成される。また、光源装置91は、半導体レーザ911と、光検出器912とにより構成される。さらに、半導体レーザ911には、光共振器を成す前方反射器9111及び後方反射器9112が設けられている。
【0031】
半導体レーザ911は、レーザ媒質と励起源を含んでいる。励起源は、レーザ媒質に電流や光(以下、エネルギー)を注入してレーザ媒質中の原子を励起するエネルギー注入源である。励起源からレーザ媒質にエネルギーが注入され、そのエネルギーがレーザ媒質の発振閾値を越えると、半導体レーザ911はレーザ発振する。また、レーザ媒質から発せられた光は、前方反射器9111と後方反射器9112の間で反射を繰り返しながら増幅し、前方反射器9111及び後方反射器9112から出力される。
【0032】
前方反射器9111の反射率Rfは、後方反射器9112の反射率Rrよりも小さく設定されている。そのため、前方反射器9111から強い光(出力光)が出力され、後方反射器9112から弱い光(モニター光)が出力される。後方反射器9112から出力されたモニター光は、光検出器912に入射する。
【0033】
現行の半導体レーザ91は、出力光の強度ができるだけ大きくなるよう、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率9112の間にRf≦Rr(好ましくはRf<Rr、より好ましくはRf≪Rr)という関係が成り立つように設定されている。
【0034】
一般に、出力光の強度Pfとモニター光の強度Prの間には、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率Rrを用いて下記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、下記の式(1)は、下記の式(2)のように変形できる。さらに、関数f(x)≡(1/x−x)を用いて下記の式(2)を書き換えると、下記の式(3)のように表現することができる。
【0035】
この関数f(x)は、0<x≦1の範囲で単調減少する。そのため、Rf<Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、下記の式(3)から、Pf/Pr>1となることが分かる。つまり、前方反射器9111の反射率Rfが後方反射器9112の反射率Rrよりも小さい場合(Rf<Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも大きくなる(Pf>Pr)。
【0036】
【数1】
【0037】
但し、前方反射器9111の反射率Rfと後方反射器9112の反射率Rrが等しい場合(Rf=Rrの場合)、f(Rf1/2)=f(Rr1/2)となり、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prに等しくなる(Pf=Pr)。半導体レーザ911から発せられる出力光の強度は、1mW程度か、それ以上である。そのため、半導体レーザ911から発せられる出力光の強度を1nW以下に減衰させるには、適当な透過率を持つビームスプリッタ92(又はフィルタ)等が必要になる。
【0038】
図12に例示した光源システムの場合、半導体レーザ911から出力された出力光は、ビームスプリッタ92に入射する。ビームスプリッタ92を透過した光は、ビームスプリッタ92により弱められて微弱出力光となる。一方、ビームスプリッタ92により反射した光は、比較的強度の大きい外部モニター光となる。
【0039】
なお、ビームスプリッタ92の設定を変えることにより、ビームスプリッタ92の透過光を外部モニター光、ビームスプリッタ92により反射された光を微弱出力光とする構成も可能である。また、ビームスプリッタ92は、偏光ビームスプリッタでもよい。さらに、ビームスプリッタ92の代わりに吸収型フィルタを設置してもよい。この場合、微弱出力光は得られるが、外部モニター光は得られなくなる。
【0040】
また、ビームスプリッタ92の代わりに偏光板を設置してもよい。この場合、偏光板の光軸を半導体レーザ911の出力光が持つ偏光方向から傾けることで微弱出力光を取り出すことができる。さらに、ビームスプリッタ92(又はフィルタ)を複数設置して十分に減衰した微弱出力光を得る構成にしてもよい。
【0041】
さて、ビームスプリッタ92から得られた外部モニター光は、光検出器93に入射する。外部モニター光が入射した光検出器93は、その外部モニター光の強度を検出する。光検出器93により検出された外部モニター光の強度は、半導体レーザ911におけるレーザ媒質へのエネルギー注入制御に利用される。例えば、光検出器93により検出される外部モニター光の強度が安定するように注入エネルギーを制御すれば、ビームスプリッタ92から出力される微弱出力光の強度を安定させ、ノイズを減らすことができる。
【0042】
なお、ビームスプリッタ92の代わりに吸収型フィルタ等を設置する場合、外部モニター光が得られないが、この場合には光検出器912により検出されるモニター光の強度を利用して注入エネルギーを制御すればよい。但し、モニター光の強度は、外部モニター光の強度よりも小さい場合が多い。その結果、外部モニター光の検出精度よりも、モニター光の検出精度が低くなる。そのため、微弱出力光の強度をより安定させるには、図12に示すようにビームスプリッタ92と光検出器93を利用して外部モニター光の強度を検出しつつ、その検出結果を注入エネルギーの制御に利用する方が好ましい。
【0043】
ところで、図12の例では、光源装置91の外部に設置されたビームスプリッタ92を利用して出力光の強度を減衰させていた。但し、出力光の強度を減衰させる方法としては、例えば、半導体レーザ911のレーザ媒質に注入するエネルギーを減じる方法が考えられる。しかし、半導体レーザ911の出力光には、レーザ発振の有無に関わらず自然放出光が含まれている。自然放出光はレーザ光にとってノイズ成分である。仮に、注入エネルギーを抑制して1nW以下にまで出力光の強度を減じると、出力光に占める自然放出光の割合が増大してしまう。もちろん、1nW以下の微弱な出力光を得ようとして注入エネルギーを減じると、レーザ発振自体が生じなくなったり、レーザ発振が不安定になったりする可能性もある。
【0044】
こうした理由から、半導体レーザ911から発せられる出力光の強度を微弱出力光の強度まで抑制することは難しい。従って、現行の半導体レーザ911を利用して微弱出力光を得るためには、ビームスプリッタ92等の光減衰手段を設ける必要があった。そのため、量子暗号通信に利用される微弱出力光を得るための光源システムの小型化は困難であった。後述する実施形態に係る技術は、こうした課題に鑑みて考案されたものであり、レーザ光源を用いて、安定的に低ノイズの微弱出力光を得ることが可能な小型の光源装置を提供するものである。
【0045】
<2:第1実施形態>
本発明の第1実施形態について説明する。
【0046】
[2−1:光源装置1の構成]
まず、図1を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図1は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。
【0047】
図1に示すように、光源装置1は、半導体レーザ11と光検出器12により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。なお、半導体レーザ11に適用可能な光共振器としては、例えば、誘電体多層膜を半導体レーザ11の端面にコーティングして得られるファブリペロー共振器がある。また、半導体レーザ11の内部にブラッグ反射構造を組み込んだDFB共振器(分布帰還型共振器)や、面発光型レーザのように屈折率の異なる半導体を交互に積層して得られるDBR共振器(分布反転型共振器)等も用いられる。
【0048】
また、前方反射器111の反射率Rf(以下、前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(以下、後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0049】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0050】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。光検出器12は、入射したモニター光の強度を検出する。なお、光検出器12としては、例えば、フォトダイオード等の半導体受光素子が利用される。また、光検出器12の表面には、無反射コーティングが施されていることが望ましい。さらに、光検出器12は、モニター光の入射面に対して斜めに傾けて設置されていることが望ましい。
【0051】
このような構成にすることで、入射したモニター光の一部が反射して半導体レーザ11に戻ることがなくなる。モニター光の反射光が半導体レーザ11に戻ると半導体レーザ11の動作が不安定になるが、上記の構成を適用することにより半導体レーザ11の動作を不安定にする要因が排除される。その結果、半導体レーザ11の動作が安定し、出力光に付加されるノイズが抑制される。
【0052】
一方、前方反射器111から出力される光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。微弱出力光の強度は、半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することにより調整される。また、光源装置1は、光検出器12により検出されたモニター光の強度に応じて、微弱出力光の強度が安定するように、半導体レーザ11に注入されるエネルギーを制御する。なお、半導体レーザ11に注入されるエネルギーの制御は、例えば、半導体レーザ11を駆動する電源を制御することにより実現される。
【0053】
(反射率Rf、Rrの設定)
ここで、前方反射率Rfと後方反射率Rrの設定方法について説明を補足する。
【0054】
ここでは一例として、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを考え、この1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を得るための設定方法について考察する。
【0055】
波長1.5μmの光子が持つエネルギーは、1.3×10−19Jである。このエネルギーが長さ1nsの矩形パルスに含まれる場合、この矩形パルスの平均強度Pfは、Pf=1.3×10−10W=0.13nWとなる。仮に、モニター光の強度PrがPr=1.3mWであるとすると、強度比Pf/Pr=1.0×10−7となる。上記の式(1)から、前方反射率Rf=99.999%、後方反射率Rr=0.01%に設定すると、この強度比Pf/Pr=1.0×10−7を満たす。
【0056】
もちろん、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法はこれに限定されない。つまり、上記の式(1)と強度比Pf/Pr=1.0×10−7を満たす前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが算出できればよい。但し、上記の式(1)は、前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせを決定するためには少し使いづらい形になっている。そこで、Pf/Pr≪1、1−Rf≪1、Rr≪1であることに注目し、上記の式(1)を近似すると、下記の式(4)が得られる。
【0057】
【数2】
【0058】
1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光が得られるようにするためには、上記の式(4)にPf/Pr=1.0×10−7を代入して、上記の式(4)を満たす前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせを決定すればよい。
【0059】
なお、Pf/Pr=1.0×10−7という条件は、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを出力する半導体レーザ11おいて、モニター光の強度Pr=1.3mWとした場合に、微弱出力光の1矩形パルスが含む光子数を平均1個にするための条件である。従って、波長、光パルスの形状及び長さ、モニター光の強度が変わると、1パルス当たり平均1個の光子を含む微弱出力光を得るための条件(強度比Pf/Pr)は変更される。しかし、適宜条件を変更することにより、1パルス当たり1光子を含む微弱出力光を得ることが可能な前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが得られる。
【0060】
以上、本発明の第1実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成、及び、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することで、微弱出力光の強度を安定させることができる。
【0061】
[2−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)]
次に、図2を参照しながら、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。図2は、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図1に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0062】
図2に示すように、本変形例に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、及び光減衰器13により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0063】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0064】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、光減衰器13に入射する。光減衰器13は、入射した光の強度を減衰させる。光減衰器13としては、例えば、NDフィルタ等の光学フィルタ、ミラー、偏光板、或いは、これらの組み合わせが用いられる。光減衰器13により減衰された光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。
【0065】
微弱出力光の強度は、半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することにより調整される。また、光源装置1は、光検出器12により検出されたモニター光の強度に応じて、微弱出力光の強度が安定するように、半導体レーザ11に注入されるエネルギーを制御する。なお、半導体レーザ11に注入されるエネルギーの制御は、例えば、半導体レーザ11を駆動する電源を制御することにより実現される。
【0066】
(反射率Rf、Rrの設定)
ここで、前方反射率Rfと後方反射率Rrの設定方法について説明を補足する。
【0067】
ここでは一例として、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを考え、この1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を得るための設定方法について考察する。また、光減衰器13は、一例として光学濃度が4のNDフィルタであるとする。つまり、光減衰器13の透過率は0.0001=0.01%である。
【0068】
波長1.5μmの光子が持つエネルギーは、1.3×10−19Jである。このエネルギーが長さ1nsの矩形パルスに含まれる場合、この矩形パルスの平均強度Pfは、Pf=1.3×10−10W=0.13nWとなる。但し、この平均強度Pfは、透過率0.01%を通過した後で得たい数値である。従って、光減衰器13の前段における光の強度Pfは、Pf=0.13nW×10000=1.3μWである。
【0069】
仮に、モニター光の強度PrがPr=1.3mWであるとすると、強度比Pf/Pr=1.0×10−3となる。上記の近似式(4)から、前方反射率Rf=99%、後方反射率Rr=1%に設定すると、この強度比Pf/Pr=1.0×10−3を満たす。なお、より正確に記述すると、前方反射率Rf=99%、後方反射率Rr=1%の場合、上記の式(1)から、強度比Pf/Prは、Pf/Pr=1/985である。そして、モニター光の強度Prは、Pr=1.3mW×0.985=1.28mWである。
【0070】
さて、上記の式(1)にPf/Pr=1.0×10−3を代入すると、前方反射率Rf、後方反射率Rrの関係は、図3に示したグラフのようになる。つまり、図3に示したグラフ上の1点を選択し、その点に対応する前方反射率Rfと後方反射率Rrの組み合わせを選択すれば、Pf/Pr=1.0×10−3となる。言い換えると、図2に示した光源装置1において、図3のグラフに対応する前方反射率Rfと後方反射率Rrを設定し、光検出器12にて検出されるモニター光の光強度が1.3mWとなるように半導体レーザ11の注入エネルギーを制御すれば、1矩形パルスに平均1個の光子を含むような微弱出力光を取り出すことができる。
【0071】
なお、Pf/Pr=1.0×10−3という条件は、波長1.5μm、長さ1nsの矩形パルスを出力する半導体レーザ11おいて、モニター光の強度Pr=1.3mW、NDフィルタの透過率0.01%とした場合に、微弱出力光の1矩形パルスが含む光子数を平均1個にするための条件である。従って、波長、光パルスの形状及び長さ、モニター光の強度、NDフィルタの透過率が変わると、1パルス当たり平均1個の光子を含む微弱出力光を得るための条件(強度比Pf/Pr)は変更される。しかし、適宜条件を変更することにより、1パルス当たり1光子を含む微弱出力光を得ることが可能な前方反射率Rf、後方反射率Rrの組み合わせが得られる。
【0072】
以上、本発明の第1実施形態に係る一変形例について説明した。本変形例に係る光源装置1の構成、及び、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態の一変形例に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。
【0073】
なお、本変形例に係る光源装置1は、光減衰器13を利用するため、図1に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図1に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0074】
<3:第2実施形態(制御器14の適用)>
本発明の第2実施形態について説明する。
【0075】
[3−1:光源装置1の構成]
まず、図4を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図4は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図1に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0076】
図4に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、及び制御器14により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0077】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0078】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。なお、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0079】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(以下、強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(以下、注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0080】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0081】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0082】
以上、本発明の第2実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0083】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。さらに、本実施形態の場合、制御器14を光源装置1に内蔵しているため、注入エネルギーの制御を行う手段として、外部に半導体レーザ11の駆動電源を設置する必要がない。その結果、図1に示した光源装置1に比べ、より小型の光源システムが実現される。
【0084】
[3−2:変形例(光減衰器13を設ける構成)]
次に、図5を参照しながら、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明する。図5は、本実施形態の一変形例に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図2、図4に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0085】
図5に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、光減衰器13、及び制御器14により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0086】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0087】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、光減衰器13に入射する。光減衰器13は、入射した光の強度を減衰させる。光減衰器13としては、例えば、NDフィルタ等の光学フィルタ、ミラー、偏光板、或いは、これらの組み合わせが用いられる。光減衰器13により減衰された光は、微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。なお、微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。但し、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0088】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0089】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0090】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態に係る変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
以上、本発明の第2実施形態に係る一変形例について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0092】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。なお、本変形例に係る光源装置1は、光減衰器13を利用するため、図4に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図4に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0093】
<4:第3実施形態(可変光減衰器15の適用)>
本発明の第3実施形態について説明する。
【0094】
[4−1:光源装置1の構成]
まず、図6を参照しながら、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明する。図6は、本実施形態に係る光源装置1の構成について説明するための説明図である。なお、図5に示した光源装置1の構成と実質的に同じ機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより詳細な説明を省略する。
【0095】
図6に示すように、本実施形態に係る光源装置1は、半導体レーザ11、光検出器12、制御器14、及び可変光減衰器15により構成される。また、半導体レーザ11には、光共振器として前方反射器111と後方反射器112が設けられている。また、前方反射器111の反射率Rf(前方反射率Rf)は、後方反射器112の反射率Rr(後方反射率Rr)よりも大きく設定されている(Rf>Rr)。そのため、後方反射器112から強い光(モニター光)が出力され、前方反射器111から弱い光(出力光)が出力される。
【0096】
出力光の強度Prとモニター光の強度Pfの間には、前方反射率Rfと後方反射率Rrを用いて上記の式(1)で示される関係が成り立つ。また、Rf>Rrの場合にはf(Rf1/2)>f(Rr1/2)となり、上記の式(3)から、Pf/Pr<1となることが分かる。つまり、前方反射率Rfが後方反射率Rrよりも大きい場合(Rf>Rrの場合)、出力光の強度Pfは、モニター光の強度Prよりも小さくなる(Pf<Pr)。このように、光源装置1は、高強度のモニター光を後方反射器112から出力し、低強度の出力光を前方反射器111から出力する。
【0097】
後方反射器112から出力されたモニター光は、光検出器12に入射する。一方、前方反射器111から出力される光は、可変光減衰器15に入射する。可変光減衰器15は、入射した光の強度を減衰させる。但し、可変光減衰器15は、減衰量が固定された光減衰器13とは異なり、制御器14の制御を受けて光の減衰量を切り替えることができる。例えば、可変光減衰器15は、量子暗号通信に利用可能な微弱出力光を得るための第1の減衰量と、微弱出力光大きな強度を持つ光(以下、非微弱出力光)を得るための第2の減衰量との間で減衰量を切り替えることができる。
【0098】
なお、非微弱出力光は、例えば、電子機器を制御したり、各種のデータを送受信したりするための一般的な光通信の光源や、レーザポインタの光源等としての用途が考えられる。また、可変光減衰器15は、例えば、図7に示すように、液晶素子151と偏光板152を組み合わせて構成される。但し、半導体レーザ11から出力された光が液晶素子151に入射し、液晶素子151を透過した光が偏光板152に入射するように、偏光板152の前段に液晶素子151が配置される。また、半導体レーザ11が水平偏光の光を出力する場合、偏光板152は、垂直偏光の光を透過するように設置される。
【0099】
このような構成にすると、半導体レーザ11から出力された光は、液晶素子151によって偏光方向が変えられない限り、偏光板152を透過しない。また、液晶素子151により変えられる偏光方向の変化度合いに応じて偏光板152を透過する光の強度が変化する。この偏光方向の変化度合いは、液晶素子151に印加する電圧が高いほど大きくなる。つまり、液晶素子151に印加する電圧を制御することにより、偏光板152から出力される光の強度を制御することができる。
【0100】
上記の通り、可変光減衰器15に対する減衰量は、制御器14により制御される。例えば、制御器14は、可変光減衰器15から出力される光を微弱出力光にする場合、可変光減衰器15の減衰量が第1の減衰量になるように、液晶素子151に印加する電圧を制御するための信号(以下、光減衰量制御信号)を可変光減衰器15に入力する。一方、可変光減衰器15から出力される光を非微弱出力光にする場合、制御器14は、可変光減衰器15の減衰量が第2の減衰量になるように、液晶素子151に印加する電圧を制御するための光減衰量制御信号を可変光減衰器15に入力する。このように、制御器14から光減衰量制御信号が入力されることによって可変光減衰器15の減衰量が制御される。
【0101】
さて、上記の可変光減衰器15により減衰された光は、微弱出力光又は非微弱出力光として光源装置1の外部に取り出される。なお、微弱出力光又は非微弱出力光の強度は、制御器14により制御される。制御器14は、半導体チップや演算処理ユニット等を用いて構成される。但し、光検出器12と制御器14は、1つの半導体素子として同じ半導体基板上に製作されていてもよい。
【0102】
制御器14には、光検出器12により検出されたモニター光の強度(強度測定値)が入力される。この強度測定値が入力されると、制御器14は、入力された強度測定値に基づいて半導体レーザ11の注入エネルギー量を決定する。注入エネルギー量を決定した制御器14は、その注入エネルギー量のエネルギーを注入するように制御する制御信号(注入エネルギー制御信号)を半導体レーザ11に入力する。注入エネルギー制御信号が入力されると、半導体レーザ11は、その注入エネルギー制御信号に応じたエネルギーをレーザ媒質に注入する。
【0103】
このように、本実施形態に係る光源装置1は、モニター光の強度に応じて半導体レーザ11の注入エネルギーを制御する。特に、制御器14は、微弱出力光の強度を安定させるため、モニター光の強度が所定値となるように注入エネルギー量を決定する。その結果、半導体レーザ11から出力される微弱出力光又は非微弱出力光は安定した強度を持つ。なお、光源装置1の場合、モニター光の強度が高い。そのため、モニター光の強度を高精度に検出することができる。その結果、半導体レーザ11に注入するエネルギーを高精度に制御することが可能になり、微弱出力光又は非微弱出力光の強度を高精度に安定化することができるようになる。
【0104】
なお、前方反射率Rf、後方反射率Rrの設定方法については上記の第1実施形態に係る変形例と同様であるため、説明を省略する。
【0105】
以上、本発明の第3実施形態について説明した。本実施形態に係る光源装置1の構成を適用することにより、量子暗号通信に利用可能な低ノイズで安定した微弱出力光の光源を得ることができる。また、本実施形態に係る光源装置1は、微弱出力光を得るために光減衰手段(ビームスプリッタ92等)を別途設ける必要がない。そのため、本実施形態に係る光源装置1は、先に説明した現行の光源システムに比べ、大幅に小型化することが可能である。
【0106】
また、モニター光の強度が高いことから、このモニター光を利用して高精度に半導体レーザ11の注入エネルギーを制御することが可能となり、微弱出力光の強度を安定させることができる。なお、本変形例に係る光源装置1は、可変光減衰器15を利用するため、図4に示した光源装置1に比べて前方反射率Rfを大きく、後方反射率Rrを小さくすることができる。その結果、図4に示した光源装置1に比べて前方反射器111、後方反射器112を容易に製造できるようになり、製造コストの低減に寄与する。
【0107】
さらに、本実施形態に係る光源装置1は、可変光減衰器15を制御して半導体レーザ11から出力される光の減衰量を切り替えることができるため、同一装置により、用途に応じて微弱出力光と非微弱出力光を使い分けることができる。また、可変光減衰器15を液晶素子151と偏光板152により構成することで、液晶素子151の電圧制御という容易な操作で微弱出力光と非微弱出力光を切り替えることができる。その結果、微弱出力光源及び非微弱出力光源としての役割を兼ね備えた小型の光源装置1が実現される。
【0108】
[4−2:光源装置1の具体的な適用例]
ここで、図8〜図11を参照しながら、図6に示した光源装置1の具体的な適用例について説明する。図8は、携帯電話への適用例を示している。また、図9、図10は、ノート型コンピュータへの適用例を示している。図11は、SFP(Small Form factor Pluggable)モジュールと呼ばれるタイプの通信モジュールへの適用例を示している。この通信モジュールは、例えば、ギガビット・イーサネット(登録商標)、ファイバ・チャネル、STM(Synchronous Transport Module)等の光ファイバを利用した通信機器に搭載される,光トランシーバと呼ばれるインターフェースモジュールである。なお、図6に示した光源装置1の適用範囲はこれらの例に限定されない。
【0109】
(1)携帯電話へ適用する場合、例えば、その携帯電話には、図8に示すように、光源装置1、レンズ2、光変調器3が搭載されるであろう。この光源装置1は、図6に示したものである。また、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。この場合、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射し、光変調器3により変調を受けた後で携帯電話の外部に取り出される。
【0110】
(2)ノート型コンピュータへ適用する場合、例えば、図9に示すような配置で、光源装置1、レンズ2、光変調器3、フィルタ4、受光器5、光コネクタソケット6が搭載されるであろう。これらノート型コンピュータに搭載される部品の構成は図10のようになる。この光源装置1は、図6に示したものである。また、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。まず、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射する。次いで、光変調器3により変調を受けた光は、フィルタ4に入射する。
【0111】
上記のフィルタ4は、光源装置1から出力された光を光コネクタソケット6に導光し、一方で、光コネクタソケット6を通じて外部から入射した光を受光器5に導光する光分離器の役割を果たすものである。そのため、光変調器3により変調を受けた光は、フィルタ4を通じて光コネクタソケット6に入射する。光コネクタソケット6に入射した光は、光コネクタソケット6に接続された光ケーブルを通じて外部に取り出される。一方、光コネクタソケット6に接続された光ケーブルを通じて外部から入射した光は、フィルタ4を通じて受光器5に入射する。受光器5は、入射した光を受光する。受光器5としては、例えば、フォトダイオード等の半導体受光素子が利用される。
【0112】
なお、ここでは一本の光ケーブルで双方向に通信する状況を想定した。通常、光ケーブルによる双方向通信において、送信に用いる光の波長と受信に用いる光の波長は異なる。そのため、上記のようにフィルタ4を利用して波長の異なる光を分離することができる。もちろん、ノート型コンピュータに搭載する通信機能の種類や形態に応じて、フィルタ4、受光器5、光コネクタソケット6の構成を適宜変形してもよい。また、レンズ2を光源装置1に組み込んでしまう等、一部設計を変更することも許容される。
【0113】
(3)光トランシーバへ適用する場合、例えば、その光トランシーバには、図11に示すような配置で、光源装置1、レンズ2、光変調器3、受光器5、TIA7(TransImpedance Amplifier)、内部モジュール8が搭載されるであろう。この光源装置1は、図6に示したものである。但し、光トランシーバへ適用する場合、光源装置1に搭載される制御器14は、内部モジュール8に組み込んでもよい。
【0114】
携帯電話へ適用する場合と同様、レンズ2は、光源装置1から出力された光が光変調器3へと入射するように収束させるものである。そして、光変調器3は、入射した光の偏光方向や位相等を変調するものである。この場合、光源装置1から出力された光は、レンズ2を通じて光変調器3に入射し、光変調器3により変調を受けた後で光トランシーバの送信側ソケットに接続された光ケーブルを通じて外部に取り出される。
【0115】
光トランシーバの受信側ソケットに接続された光ケーブルを通じて外部から入射した光は、受光器5により受光される。受光器5が受光した光は、受光器5の内部で光電変換される。そして、受光器5から出力された低レベルの電流は、TIA7に入力され、電圧信号に変換されて内部モジュール8へと出力される。このように、光トランシーバは、送信側と受信側にそれぞれ1本ずつ光ケーブルが設けられている。そのため、光源装置1は、送信側の光ケーブルへと繋がる通信路に設けられる。
【0116】
以上説明したように、本実施形態に係る光源装置1は、様々な機器に適用できる。なお、光源装置1を適用可能な機器には、光源装置1を利用してデータを送信するためのデータ送信部(非図示)が接続又は設置される。
【0117】
<5:まとめ>
最後に、本発明の実施形態に係る技術内容について簡単に纏める。ここで述べる技術内容は、例えば、PC、携帯電話、携帯ゲーム機、携帯情報端末、情報家電、カーナビゲーションシステム等、種々の情報処理装置に組み込み可能な光源装置に適用される。
【0118】
上記の光源装置の機能構成は次のように表現することができる。当該光源装置は、第1反射器、第2反射器、レーザ媒質、励起源を有する。当該第1反射器は、反射率R1を有する。また、上記の第2反射器は、前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する。さらに、上記のレーザ媒質は、前記第1及び第2反射器の間に配置される。そして、上記の励起源は、前記レーザ媒質を励起するために設けられる。つまり、上記の光源装置は、非対称な反射率を持つ光共振器が搭載されたレーザ光源に関する。さらに、前記第1反射器の反射率R1は、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように設定されている。
【0119】
量子暗号通信に利用される光源には、光パルス1つ当たりの光子数が1個又は1個以下となるような微弱光の出力が求められる。しかし、多くのレーザ光源から出力可能な光の強度は量子暗号通信に利用される微弱光の強度よりも大きく、レーザ光源の外部に光減衰手段を設ける必要があった。例えば、光減衰手段として、高反射率のミラーや高光学濃度のフィルタが用いられていた。しかし、本発明の実施形態に係る上記の光源装置は、反射率の高い第1反射器から出力された光を出力光として利用している。そのため、この光源装置を適用した場合には外部に光減衰手段を設けずに済む。その結果、携帯電話、ノート型コンピュータ、通信モジュール等の小型機器にも搭載することが可能になる。
【0120】
ここで注意すべきは、レーザ媒質に注入されるエネルギーを弱めて量子暗号通信に利用可能な微弱強度の出力光を得ることが非常に難しいということである。一般に、レーザ光源から出力される光にはレーザ光(誘導放出光)の他に自然放出光が含まれている。この自然放出光の割合は、レーザ媒質に注入されるエネルギーが低くなるにつれて大きくなる。そのため、レーザ媒質に注入されるエネルギーを低くすると、自然放出光の割合が増えてレーザ発振が不安定になったり、レーザ発振が生じなくなったりする。さらに、レーザ光にとってノイズである自然放出光の割合が増えるため、微弱出力光の品質が大きく低下してしまう。
【0121】
このようなレーザ光源に特有の本質的な問題から、レーザ媒質に注入されるエネルギーを弱めて微弱出力光を得ることは非常に難しいのである。一方、上記の光源装置は、レーザ媒質に注入するエネルギーを弱めるのではなく、光共振器を構成する第1反射器の反射率R1を調整している。第1反射器、第2反射器を透過する光は、レーザ光であっても、自然放出光であっても、ほぼ同じ割合で減衰される。つまり、第1反射器を透過する際に自然放出光も減衰するため、レーザ光源から出力された光に含まれるレーザ光源の割合が十分に高ければ、第1反射器から高品質の微弱出力光が得られる。このように、注入エネルギーを絞り込む方法に比べ、本発明の実施形態に係る光源装置は原理的に優れている。また、微弱出力光を得るためのシステムを大幅に小型化することが可能になる。
【0122】
(備考)
上記の前方反射器111は、第1反射器の一例である。上記の後方反射器112は、第2反射器の一例である。上記の半導体レーザは、レーザ媒質と励起源を組み合わせて得られるレーザ光源の一例である。上記の携帯電話、ノート型コンピュータ、通信モジュール等は、通信装置の一例である。
【0123】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0124】
上記実施形態の説明においては、レーザ光源として半導体レーザを例に挙げた。小型化の観点からは半導体レーザが好ましいが、半導体レーザに代えて任意の固体レーザを利用することも可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 光源装置
2 レンズ
3 光変調器
4 フィルタ
5 受光器
6 光コネクタソケット
7 TIA
8 内部モジュール
11 半導体レーザ
12 光検出器
13 光減衰器
14 制御器
15 可変光減衰器
111 前方反射器
112 後方反射器
151 液晶素子
152 偏光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
を備え、
前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
光源装置。
【請求項2】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
を備え、
前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
光源装置。
【請求項3】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項4】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項5】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づいて、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となる第1の減衰量、又は、前記第1の減衰量とは異なる第2の減衰量、に制御する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項6】
前記レーザ媒質は、半導体レーザのレーザ媒質である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器はファブリペロー共振器から成り、
前記第1反射器、第2反射器のいずれか一方又は両方は、誘電体膜がコーティングされた半導体端面である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、分布フィードバック型、又は分布ブラッグ反射型である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、多層膜ミラー型であり、
前記半導体レーザは、面発光型である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光検出器は、半導体受光素子である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光減衰器は、光学フィルタ、部分反射ミラー、或いは、光学フィルタと部分反射ミラーとの組み合わせである、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項12】
前記レーザ媒質は、第1の偏光方向に直線偏光したレーザ光を出力し、
前記光減衰器は、
印加された電圧に応じた変化度合いで、前記レーザ媒質から出力されたレーザ光の偏光方向を変化させる液晶素子と、
前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する偏光板と、
を含み、
前記液晶素子を透過した光は、前記偏光板に入射され、
前記制御器は、前記液晶素子に印加される電圧を制御することにより、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を制御する、
請求項5に記載の光源装置。
【請求項13】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
を有する光源装置と、
前記光源装置を利用してデータを送信するデータ送信部と、
を備え、
前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
通信装置。
【請求項1】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
を備え、
前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
光源装置。
【請求項2】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
を備え、
前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
光源装置。
【請求項3】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項4】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づき、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように、前記励起源を制御して前記レーザ媒質に対する励起強度を調整する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項5】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
前記第1反射器を透過したレーザ光を減衰させる光減衰器と、
前記第2反射器を透過したレーザ光の強度を検出する光検出器と、
前記光検出器により検出されたレーザ光の強度に基づいて、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を、前記光減衰器により減衰されたレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となる第1の減衰量、又は、前記第1の減衰量とは異なる第2の減衰量、に制御する制御器と、
を備える、
光源装置。
【請求項6】
前記レーザ媒質は、半導体レーザのレーザ媒質である、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項7】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器はファブリペロー共振器から成り、
前記第1反射器、第2反射器のいずれか一方又は両方は、誘電体膜がコーティングされた半導体端面である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項8】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、分布フィードバック型、又は分布ブラッグ反射型である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項9】
前記第1及び第2反射器により構成される光共振器は、多層膜ミラー型であり、
前記半導体レーザは、面発光型である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項10】
前記光検出器は、半導体受光素子である、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光減衰器は、光学フィルタ、部分反射ミラー、或いは、光学フィルタと部分反射ミラーとの組み合わせである、
請求項6に記載の光源装置。
【請求項12】
前記レーザ媒質は、第1の偏光方向に直線偏光したレーザ光を出力し、
前記光減衰器は、
印加された電圧に応じた変化度合いで、前記レーザ媒質から出力されたレーザ光の偏光方向を変化させる液晶素子と、
前記第1の偏光方向に直交する第2の偏光方向の光を透過する偏光板と、
を含み、
前記液晶素子を透過した光は、前記偏光板に入射され、
前記制御器は、前記液晶素子に印加される電圧を制御することにより、前記光減衰器によるレーザ光の減衰量を制御する、
請求項5に記載の光源装置。
【請求項13】
反射率R1を有する第1反射器と、
前記第1反射器に対向配置された反射率R2(R2<R1)を有する第2反射器と、
前記第1及び第2反射器の間に配置されたレーザ媒質と、
前記レーザ媒質を励起するための励起源と、
を有する光源装置と、
前記光源装置を利用してデータを送信するデータ送信部と、
を備え、
前記第1反射器を透過したレーザ光の光子数が1パルス当たり1個となるように前記反射率R1が設定されている、
通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−155320(P2011−155320A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13669(P2010−13669)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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