説明

光源装置および照明装置

【課題】 装置が大型化したり、コストが高くなるなどの問題を生じさせることなく、照明光源の発光色(色度)を制御することの可能な光源装置を提供する。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域が周期的に交互に配置されている蛍光体部12と、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段としての反射機構16とを備えている。。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDや半導体レーザー等の半導体発光素子を励起源として蛍光体を励起して光源とする照明装置が実用化されており、例えば特許文献1には、室内の使用目的に応じて、照明装置の色温度を可変にする方式が提案されている。すなわち、特許文献1では、白色LEDと緑色LED、赤色LEDなどの発光色の異なるLEDを用意し、駆動電流を回路で制御する事で各色のLEDの光束比を変えることにより、照明装置の色温度を可変にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−270889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上述した従来の技術では、照明光源の発光色を制御する方式として、発光色の異なるLED素子を複数個用意して、その駆動電流を制御する方式が提案されているが、半導体発光素子や冷却部、半導体発光素子を駆動する回路が複数必要とするため、装置が大型化したり、コストが高くなるなどの問題があった。
【0005】
本発明は、装置が大型化したり、コストが高くなるなどの問題を生じさせることなく、照明光源の発光色(色度)を制御することの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域が周期的に交互に配置されている蛍光体部と、前記固体光源からの励起光と前記蛍光体部との相対的位置を移動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする光源装置である。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体領域は、仕切りによって分離されていることを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記制御手段は、単純な凸面鏡若しくは凹面鏡からなる反射部と、該反射部を機械的に駆動する駆動手段とを有し、駆動手段によって該反射部を機械的に駆動することで、前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記制御手段は、多数の微小鏡面を有するデジタルマイクロミラーデバイスであり、該デジタルマイクロミラーデバイスによって前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることを特徴としている。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域が周期的に交互に配置されている蛍光体部と、前記固体光源からの励起光と前記蛍光体部との相対的位置を移動制御する制御手段とを備えているので、装置が大型化したり、コストが高くなるなどの問題を生じさせることなく、照明光源の発光色(色度)を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光源装置および照明装置の構成例を示す図である。
【図2】蛍光体部の構成例を示す図である。
【図3】反射機構を駆動して、固体光源からの励起光の照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図4】反射機構を駆動して、固体光源からの励起光の照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図5】反射機構を駆動して、固体光源からの励起光の照射範囲を制御する様子を示す図である。
【図6】図3、図4、図5に示したような励起光の照射範囲を概略的に示す図である。
【図7】反射機構や固体光源を固定して、蛍光体部を圧電素子によって移動させる構成を示す図である。
【図8】図1の光源装置を用いた照明装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の光源装置は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域が周期的に交互に配置されている蛍光体部と、前記固体光源からの励起光と前記蛍光体部との相対的位置を移動制御する制御手段とを備えていることを特徴としている。なお、蛍光体領域とは、蛍光体層を有する領域であって、蛍光体層に対応させて、光の透過率や反射率を調整する調整層などが設けられる場合には、蛍光体層とともに、これらをも含めたものを指すものとする。以下では、便宜上、蛍光体層とこれに対応する蛍光体領域には、同じ符号を付している。
【0015】
図1、図2(a),(b)は、本発明の光源装置および照明装置の構成例を示す図である。なお、図1は全体図、図2(a),(b)はそれぞれ蛍光体部の正面図、平面図である。図1、図2(a),(b)の構成例では、光源装置は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域(蛍光体層)が周期的に交互に配置されている(蛍光体層が周期的に交互にセルとして配置されている)蛍光体部12と、前記固体光源5からの励起光と前記蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段としての反射機構16とを備えている。
【0016】
ここで、蛍光体部12は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体層(図2(a),(b)の例では、2種類の蛍光体層セル2a,2b)と、蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側に設けられている基板6とを有している。
【0017】
なお、少なくとも2種類の蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)は、仕切り10によって分離されている。すなわち、色度を正確に制御するためには、特定の蛍光体層のみが発光することが望ましいが、蛍光体は励起光を散光するため横方向への励起光の伝播が問題となる。これを解決するためには、蛍光体層セル2a,2bを仕切り10によって光学的に分離することで、蛍光の混色を抑制することができる。
【0018】
また、図1、図2(a),(b)の構成例では、蛍光体層(図2(a),(b)の例では、2種類の蛍光体層セル2a,2b)は基板6上に設けられている。また、基板6の少なくとも蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)側の面は、固体光源5からの励起光および蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)からの蛍光を反射する反射面となっている。すなわち、図1、図2(a),(b)の構成例では、蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。
【0019】
また、蛍光体層(例えば2種類の蛍光体層セル2a,2b)には、樹脂成分を実質的に含まないもの(具体的には、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるもの)が用いられるのが良く、このような蛍光体層を実現するものとして、蛍光体粉末をガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスと称す)などが挙げられる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設けて有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、ここに挙げた蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがなく、高輝度化を図ることが可能である。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に、樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体層から基板6への熱放散においても有利である。
【0020】
また、固体光源5が例えば青色光を発光するものである場合、例えば2種類の蛍光体層セル2a,2bのそれぞれには、具体的には例えば、黄色蛍光体の入ったセル、橙色蛍光体が入ったセルを用いることができる。この場合、本発明では、後述のように、例えば色温度の高い白色光を照明光として得るには、制御手段としての反射機構16によって、黄色蛍光体の入ったセル2aを選択的に固体光源5からの青色光により励起し、また、色温度の低い白色光を照明光として得るには、制御手段としての反射機構16によって、黄色蛍光体の入ったセル2aと同時に橙色蛍光体の入ったセルも固体光源5からの青色光により励起することができる。
【0021】
また、基板6は、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層からの発光(蛍光)と、蛍光体層で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0022】
次に、図1、図2(a),(b)の光源装置をより詳細に説明する。
【0023】
図1、図2(a),(b)の光源装置において、固体光源5には、紫外光から可視光(例えば青色光)領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0024】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約380nmないし約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、LaS:Eu3+、KSiF:Mn4+、 KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、(Si,Al)(O,N):Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+等を用いることができ、青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POl2:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、LaAl(Si,Al)(N,O)10:Ce3+等を用いることができる。
【0025】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nmの青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層の蛍光体としては、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Y(Ga,Al)12:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、CaSc:Eu2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+、BaSi12:Eu2+、(Si,Al)(O,N):Eu2+等を用いることができる。また、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、YAl12:Ce3+ (YAG)、(Sr,Ba)SiO:Eu2+、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の黄色蛍光体や、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の橙色蛍光体を用いることができる。
【0026】
蛍光体層としては、これらの蛍光体粉末をガラス中に分散させたものや、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP、SiO、B、Alなどの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce3+やEu2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。
【0027】
前述のように、図2(a),(b)の蛍光体部12において、2種類の蛍光体層セル2a,2bのそれぞれには、具体的には例えば、黄色蛍光体の入ったセル、橙色蛍光体が入ったセルを用いることができる。この場合、蛍光体部12は、例えば次のように作製される。なお、ここでは、黄色蛍光体としてYAl12:Ce3+、橙色蛍光体としてCa(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+を用いることにする。先ず、これらの蛍光体をガラス材料のP、SiO、B、Alの粉末と共に加熱して固形化する。固形化した蛍光体入りガラスは、ダイアモンドカッターやレーザースクライブ等の装置を用いて所定のサイズに切り分けられる。一方、冷却効率の高い窒化アルミの基板6を用意し、アルミニウム製の格子状のリブ構造体をロウ付けし、ロウ付けした基板6にメッキ処理で銀をコーティングする。格子状の中に先に作製した蛍光体入りガラスを接着して固定する。この場合は、基板6に窒化アルミを用い、格子状のリブ構造体にアルミニウムを用いたが、熱伝導性の高い材料であればその他の材料を用いても良い。またシリコン基板をマスキングし、フッ酸等でエッチングして、格子状に加工した物を用いても良い。また、高温処理にも耐えうるセラミック製の格子状構造体を用いれば、その格子内部に蛍光体粉とガラス原料をいれ、加熱することで、蛍光体部12を作製することもできる。
【0028】
上述の例では、基板6には、窒化アルミを用いたが、基板6としては、一般に、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどを使用可能であり、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としては、Al、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体や、それらを含む合金が使用可能である。また、基板6の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。また、蛍光体は光を変換する場合に発熱し、蛍光体は周囲温度が上昇すると変換効率が低下する温度消光という特性を持っている。蛍光体層の発光効率低下を防ぐには、より積極的に蛍光体層を冷却する必要があり、このため、蛍光体層の背面に冷却機構が設けられるのが良い。具体的に、冷却機構として、基板6には、基板6の背面に放熱フィンを設けても良いし、ファン等を用いて空冷しても良いし、ペルチェ素子の様な熱電素子を用いて冷却しても良い。このように、冷却機構を設けて基板6の放熱性を高め、蛍光体層からの発熱を背面から放熱することで蛍光体層の変換効率低下を防止することが出来る。すなわち、高輝度化を図ることができる。
【0029】
ところで、図1、図2(a),(b)の例では、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段として反射機構16を用いており、これにより、色度(発光色)を可変にするのを、複数の励起光源や制御回路を用いることなく実現できるため、装置の小型化、製造コストの低減が可能となる。
【0030】
また、図1に示すように、上記光源装置と光学系(レンズ系)20とを組み合わせることで(上記光源装置からの出射光を光学系(レンズ系)20に通して照明光とすることで)、照明装置を構成することができ、この照明装置では、反射機構16により、色度を可変にすることで、照明光の照明色(色度)を可変にすることができる。
【0031】
ここで、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段としての反射機構16としては、単純な凸面鏡若しくは凹面鏡からなる反射部と、該反射部を機械的に駆動する駆動手段とを有するものを用いることができ、駆動手段によって該反射部を機械的に駆動することで、前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることができる(励起光の照射角度を制御する(変化させる)ことができる)。なお、反射部を機械的に駆動する駆動手段としては、アクチュエーターやモーター等を用いることができる。
【0032】
あるいは、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段としての反射機構16としては、アレイ状の多数の微小鏡面を有するデジタルマイクロミラーデバイスを用い、該デジタルマイクロミラーデバイスによって前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることができる(励起光の照射角度を制御する(変化させる)ことができる)。そして、デジタルマイクロミラーデバイスを用いる場合には、更に精密な移動制御を行うことができる。
【0033】
図3、図4、図5は、図2(a),(b)の蛍光体部12(2種類の蛍光体層セル2a,2bのそれぞれには、黄色蛍光体の入ったセル、橙色蛍光体が入ったセルを用いるとする)を光学系の焦点位置に固定し、固体光源5としての青色半導体レーザーと反射機構16としてのデジタルマイクロミラーデバイスを蛍光体部12に照射可能な位置に配置し、反射機構16としてのデジタルマイクロミラーデバイスを駆動して、固体光源5からの励起光(青色光)の照射範囲を制御する様子を示す図である。なお、図3、図4、図5において、斜線部Eの箇所が固体光源5からの励起光(青色光)の照射範囲(千鳥格子状の照射範囲パターン)であり、このような千鳥格子状の照射範囲パターンは、デジタルマイクロミラーデバイスで容易に形成できる。
【0034】
図3では、色温度の高い白色光を得るために、黄色蛍光体の入ったセル2aが励起光(青色光)の照射範囲Eとなるように照射範囲Eの位置が制御されており、この場合、黄色蛍光体の入ったセル2aが励起光(青色光)によって選択的に励起される。また、図4では、図3の場合よりも色温度の低い白色光を得るために、橙色蛍光体が入ったセル2bが励起光(青色光)の照射範囲Eとなるように照射範囲Eの位置が制御されており、この場合、橙色蛍光体が入ったセル2bが励起光(青色光)によって選択的に励起される。また、図5では、図3と図4との間の色温度の白色光を得るために、黄色蛍光体の入ったセル2aの一部と橙色蛍光体が入ったセル2bの一部とが同時に励起光(青色光)の照射範囲Eとなるように照射範囲Eの位置が制御されており、この場合、黄色蛍光体の入ったセル2aの一部と橙色蛍光体が入ったセル2bの一部とが同時にが励起光(青色光)によって励起される。図6は図3、図4、図5に示したような励起光(青色光)の照射範囲Eを概略的に示す図である。図6を参照すると、照射範囲Eは、蛍光体層セル2aまたは2bと同じ大きさか、それよりも小さい大きさのものに設定される。そして、この場合、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)を駆動して、照射範囲Eを上下左右に移動制御することによって、図3のように黄色蛍光体の入ったセル2aだけを選択的に励起したり、あるいは、図4のように橙色蛍光体が入ったセル2bだけを選択的に励起したり、あるいは、図5のように黄色蛍光体の入ったセル2aの一部と橙色蛍光体が入ったセル2bの一部とを同時に励起したりして、白色光の色温度(色度)を所望のものに変えることができる。
【0035】
なお、上述の例では、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)によって照射範囲Eの移動制御を行ったが、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)を用いずに、固体光源5からの励起光を蛍光体部12に直接照射する構成にし、固体光源5の向きなどを変えることにより、照射範囲Eの移動制御を行うことも可能である。しかしながら、固体光源5の向きなどを変えるよりも、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)を駆動制御する方が、より精度良く正確に照射範囲Eの移動制御を行うことができるので、好ましい。
【0036】
また、上述の例では、照射範囲の移動制御を行うことで、色度を可変にしたが、照射範囲を移動制御することなく(すなわち、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)や固体光源5を固定して)、蛍光体部12を圧電素子などの駆動機構を用いて移動させることでも、同様の効果を得ることが可能である。すなわち、色度を可変にすることができる。
【0037】
図7には、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)や固体光源5を固定して、蛍光体部12を圧電素子22によって矢印Aの方向に移動させる構成が示されている。このように、蛍光体部12を圧電素子22によって矢印Aの方向に移動させることによっても、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御することができ、色度を可変にすることができる。なお、図7には反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)が設けられているが、蛍光体部12を圧電素子22によって矢印Aの方向に移動させる構成の場合には、反射機構16(例えばデジタルマイクロミラーデバイス)は必ずしも必要ではない。
【0038】
図7の例では、固体光源5からの励起光と蛍光体部12との相対的位置を移動制御する制御手段として圧電素子22を用いており、これにより、色度を可変にするのを、複数の励起光源や制御回路を用いることなく実現できるため、装置の小型化、製造コストの低減が可能となる。
【0039】
また、図7に示すように、上記光源装置と光学系(レンズ系)20とを組み合わせることで(上記光源装置からの出射光を光学系(レンズ系)20に通して照明光とすることで)、照明装置を構成することができ、この照明装置では、圧電素子22の駆動により、色度を可変にすることで、照明光の照明色(色度)を可変にすることができる。
【0040】
また、上述した各構成例(図1、図7の構成例)において、蛍光体部12(より正確には、例えば交互に配置された2種類の蛍光体層セル2a,2b)に固体光源5からの励起光を効果的に導入するために、蛍光体部12の前面に光学的なレンズを配置しても良い。
【0041】
また、図1、図7の光源装置および照明装置では、蛍光体領域(図1、図7の構成では、蛍光体層セル2a,2b)の背面に反射率の高い部材(基板6)を配置する事で、励起光と蛍光を有効に光学系(レンズ系)20へ案内する事ができる。また、各蛍光体領域(各蛍光体層セル2a,2b)は、反射率の高い部材(仕切り10)で仕切ることで、励起される蛍光体領域(蛍光体層セル)から他の蛍光体領域(蛍光体層セル)へ励起光が漏れることを防ぎ、励起効率の向上と発光色の混色を改善できる。
【0042】
また、蛍光体領域(図1、図7の構成では、蛍光体層セル2a,2b)の表面に光取り出し構造を設けることにより、屈折率差により蛍光体領域(蛍光体層セル2a,2b)の内部に閉じ込められる光を効率的に取り出すことができる。光取り出し構造としては、アレイ状の突起を表面に形成する方法が考えられる。特に形成円錐状、四角推状のマイクロオーダーの微小構造体を用いると、正面方向への光取出しが改善される。
【0043】
また、図8は例えば図1の光源装置を用いた照明装置の他の構成例を示す図である。図8の照明装置は、照明装置外郭を形作るケース33と、ケース33内に格納された光源装置(光学系(レンズ系)20を含めた照明装置)と、光源装置(光学系(レンズ系)20を含めた照明装置)からの光を前方に所定の配光特性を持って照射するズームレンズ系31とにより構成されている。このように、図1、図7の構成において、さらに、ズームレンズ系31を用いることによって、配光(広角、狭角など)を可変することができる。特に、電動式のズームレンズ系を用いた時には、遠隔操作によって配光を可変することができる。
【0044】
以上のように、本発明では、色度を可変できる光源装置および照明装置を、複数の励起光源や制御回路を用いることなく実現できる為、装置の小型化、製造コストの低減が可能となる。
【0045】
また、本発明の光源装置および照明装置を自動車用照明装置(具体的には、例えば自動車用前照灯や補助前照灯)に用いることで、気象状況や周囲環境変化に応じて最適な照明発光色に変化させることが可能となる。このように照明色を変化させることで、視認性が向上し対向車や歩行者、障害物の発見が容易になり、運転者の疲労を低減できる。また、一般照明用としては、展示用照明を季節などの移り変わりに応じて自動的に配色を変化させて最適な照明が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、自動車用照明装置や一般照明などに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
2 蛍光体層
5 固体光源
6 基板
12 蛍光体部
16 反射機構
20 光学系(レンズ系)
22 圧電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも2種類の蛍光体領域が周期的に交互に配置されている蛍光体部と、前記固体光源からの励起光と前記蛍光体部との相対的位置を移動制御する制御手段とを備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体領域は、仕切りによって分離されていることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記制御手段は、単純な凸面鏡若しくは凹面鏡からなる反射部と、該反射部を機械的に駆動する駆動手段とを有し、駆動手段によって該反射部を機械的に駆動することで、前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記制御手段は、多数の微小鏡面を有するデジタルマイクロミラーデバイスであり、該デジタルマイクロミラーデバイスによって前記蛍光体領域への励起光の照射範囲および/または強度分布を可変にすることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−142000(P2011−142000A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1772(P2010−1772)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】