説明

光源装置および照明装置

【課題】 固体光源からの励起光により蛍光体領域を励起する光源装置において、蛍光体領域からの蛍光および励起光を効率的に光学系へ導入して利用する。
【解決手段】 固体光源5と、固体光源5からの励起光が入射する蛍光体部12とを備え、蛍光体部12は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体領域2と、蛍光体領域2の背面に設けられた反射構造体6とを有し、反射構造体6は、蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面に点状に集光させるように反射する形状の反射面を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDや半導体レーザー等の半導体発光素子を励起源として蛍光体を励起して光源とする光源装置および照明装置が実用化されており、例えば特許文献1には、レーザー光を用いて蛍光体を励起し高輝度の光源とする光源装置および照明装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−191483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方式では、半導体発光素子で蛍光体を励起する光源装置および照明装置において、蛍光体が板状であるため光が拡散し、効率的に光学系へ導入して利用することができないという問題があった。
【0005】
本発明は、半導体発光素子などの固体光源からの励起光により蛍光体領域を励起する光源装置および照明装置において、蛍光体領域からの蛍光および励起光を効率的に光学系へ導入して利用することの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域と、該蛍光体領域内で発生した蛍光と励起光を前記蛍光体領域の表面に点状に集光させるように反射する形状の反射面を前記蛍光体領域の背面に有していることを特徴とする光源装置である。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体領域の表面に光取り出し構造を有することを特徴としている。
【0008】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記蛍光体領域の表面に遮光板を有することを特徴としている。
【0009】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【0010】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする自動車用前照灯である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域と、該蛍光体領域内で発生した蛍光と励起光を前記蛍光体領域の表面に点状に集光させるように反射する形状の反射面を前記蛍光体領域の背面に有しているので、蛍光体領域からの蛍光および励起光を蛍光体領域の表面に向けて点状に集光させて、効率的に光学系へ導入して利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の光源装置および照明装置の構成例を示す図である。
【図2】蛍光体部の構成例を示す図である。
【図3】蛍光体領域(蛍光体層)の表面に光取り出し構造を設けた蛍光体部の例を示す図である。
【図4】蛍光体領域(蛍光体層)の表面に遮光板を設けた例を示す図である。
【図5】遮光板によって遮光する部分の蛍光体領域(蛍光体層)を削りその背面に反射構造体を設けた例を示す図である。
【図6】遮光部分の前面に反射構造体を設けた例を示す図である。
【図7】本発明の照明装置の具体例を示す図である。
【図8】本発明の光源装置を複数個、方向指示器やポジションランプと組み合わせた照明装置(自動車用前照灯モジュール)の例を示す図である。
【図9】本発明の光源装置および照明装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
本発明の光源装置は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域と、該蛍光体領域内で発生した蛍光と励起光を前記蛍光体領域の表面に点状に集光させるように反射する形状の反射面を前記蛍光体領域の背面に有していることを特徴としている。なお、蛍光体領域とは、蛍光体層を有する領域であって、蛍光体層に対応させて、光の透過率や反射率を調整する調整層などが設けられる場合には、蛍光体層とともに、これらをも含めたものを指すものとする。以下では、便宜上、蛍光体層とこれに対応する蛍光体領域には、同じ符号を付している。
【0015】
図1は、本発明の光源装置および照明装置の構成例を示す図である。図1の構成例では、光源装置は、紫外光から可視光(例えば、青色光)までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、固体光源5からの励起光が入射する蛍光体部12とを備えている。
【0016】
図2は、蛍光体部12の構成例を示す図である。図2を参照すると、蛍光体部12は、固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域2と、蛍光体領域2の背面(励起光が入射する側の面とは反対の面側)に設けられた反射構造体6とを有し、反射構造体6は、蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに点状に集光させるように反射する形状(図2の例では、所定の半径の曲率を有する凹曲面の形状)の反射面6aを蛍光体領域2の背面に有している。
【0017】
すなわち、図1、図2の構成例では、蛍光体領域2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面2aとは反対側に設けられた反射面6aによる反射を用いて蛍光と励起光の光を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。
【0018】
ここで、蛍光体領域(蛍光体層)2には、樹脂成分を実質的に含まないもの(具体的には、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるもの)が用いられるのが良く、このような蛍光体領域(蛍光体層)2を実現するものとして、蛍光体粉末をシリコーン樹脂やガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスと称す)などを用いることができる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設けて有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、ここに挙げた蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがなく、高輝度化を図ることが可能である。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に、樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体領域(蛍光体層)2から反射構造体6への熱放散においても有利である。
【0019】
また、蛍光体領域(蛍光体層)2は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。具体的には、固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体領域(蛍光体層)2は、例えば、青、緑、赤色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体領域(蛍光体層)2が、例えば、青、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(青、緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの紫外光を蛍光体領域(蛍光体層)2に照射するとき、反射光として白色の照明光を得ることができる。また、固体光源5が例えば青色光を発光するものである場合、蛍光体領域(蛍光体層)2は、例えば、緑、赤、黄色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が例えば青色光を発光するものである場合、蛍光体領域(蛍光体層)2が、例えば、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの青色光を蛍光体領域(蛍光体層)2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、固体光源5が例えば青色光を発光するものである場合、蛍光体領域(蛍光体層)2が、例えば、黄色の蛍光体だけを含んでいるときには、固体光源5からの青色光を蛍光体領域(蛍光体層)2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0020】
また、反射構造体6は、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体領域(蛍光体層)2からの発光(蛍光)と、蛍光体領域(蛍光体層)2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面6aの役割と、蛍光体領域(蛍光体層)2から放散してきた熱を外部へ放散させる役割を担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この反射構造体6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0021】
次に、図1の光源装置をより詳細に説明する。
【0022】
図1の光源装置において、固体光源5には、紫外光から可視光(例えば青色光)領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0023】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体領域(蛍光体層)2の蛍光体としては、波長が約380nmないし約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、LaS:Eu3+、KSiF:Mn4+、 KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、(Si,Al)(O,N):Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+等を用いることができ、青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(POl2:Eu2+、BaMgAl1017:Eu2+、LaAl(Si,Al)(N,O)10:Ce3+等を用いることができる。
【0024】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nmの青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN:Eu2+、CaSi:Eu2+、KSiF:Mn4+、KTiF:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Y(Ga,Al)12:Ce3+、CaScSi12:Ce3+、CaSc:Eu2+、(Ba,Sr)SiO:Eu2+、BaSi12:Eu2+、(Si,Al)(O,N):Eu2+等を用いることができる。また、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、YAl12:Ce3+ (YAG)、(Sr,Ba)SiO:Eu2+、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の黄色蛍光体を用いることができる。
【0025】
蛍光体領域(蛍光体層)2としては、これらの蛍光体粉末をシリコーン樹脂やガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP、SiO、B、Alなどの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce3+やEu2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。これらの中でも透光性を有する蛍光体セラミックスを使用することが望ましい。これは、焼結体中に光の散乱の原因となるポアや粒界の不純物がほとんど存在しないために透光性を有するに至った蛍光体セラミックスである。ポアや不純物は熱拡散を妨げる原因にもなるため、透光性セラミックスは高い熱伝導率を示す。このため蛍光体領域(蛍光体層)として利用した場合には励起光や蛍光を拡散により失うことなく蛍光体領域(蛍光体層)から取り出して利用でき、さらに蛍光体領域(蛍光体層)で発生した熱を効率良く放散することができる。透光性を示さない焼結体でも出来るだけポアや不純物の少ないものが望ましい。ポアの残存量を評価する指標としては蛍光体セラミックスの比重の値を用いることができ、その値が計算される理論値に対して95%以上のものが望ましい。
【0026】
ここで、青色励起の黄色発光蛍光体であるYAl12:Ce3+蛍光体を例に、透光性を有する蛍光体セラミックスの製造方法を説明する。蛍光体セラミックスは出発原料の混合工程、成形工程、焼成工程、加工工程を経て製造される。出発原料には、酸化イットリウムや酸化セリウムやアルミナ等、YAl12:Ce3+蛍光体の構成元素の酸化物や、焼成後に酸化物となる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いる。出発原料の粒径はサブミクロンサイズのものが望ましい。これらの原料を化学量論比となるように秤量する。このとき焼成後のセラミックスの透過率向上を目的として、カルシウムやシリコンなどの化合物を添加することも可能である。秤量した原料は、水もしくは有機溶剤を用い、湿式ボールミルにより十分に分散、混合を行う。次に混合物を所定の形状に成形する。成形方法としては、一軸加圧法、冷間静水圧法、スリップキャスティング法や射出成形法等を用いることができる。得られた成形体を1600〜1800℃で焼成する。これにより、透光性のYAl12:Ce3+蛍光体セラミックスを得ることができる。
【0027】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて凸状に整形する。さらに背面に凹曲面状の反射面6aをもつ反射構造体6を設けることで、励起された蛍光や透過光(励起光)を一点に集光させることが出来る。
【0028】
ここで、蛍光体セラミックスは、屈折率が約1.8と空気に対して屈折率が高く、さらに、内部にポアなどの散乱の原因となるものが少ないため、光が蛍光体領域(蛍光体層)2の内部に閉じ込められて、取り出せる光が減少してしまう。この問題を解決するために、蛍光体セラミックスの表面にエッチングにより凹凸の光取出し構造を設けたり、蛍光体セラミックスと空気の間の屈折率材料層を設けることで、光取出しを改善できる。
【0029】
図3には、蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aに光取り出し構造13を設けた蛍光体部12の例が示されている。上述したように、蛍光体セラミックス(例えばYAG)の屈折率は約1.8であり空気の屈折率に対して大きいため、蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aの垂直方向に対して30度以上の角度で蛍光体内部から表面に到達した光は全反射して蛍光体領域(蛍光体層)2の内部に閉じ込められてしまう。これに対し、蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aに光取り出し構造13を形成すると、未処理表面では全反射していた光の一部も、全反射することなく、蛍光体領域(蛍光体層)2から空気層に通過する。すなわち、蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aに光取り出し構造13を設けることにより、屈折率差により蛍光体領域(蛍光体層)2の内部に閉じ込められる光を効率的に取り出すことができる。光取り出し構造13としては、図3のようにアレイ状の突起を蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aに形成することが考えられる。特に形成円錐状、四角推状のマイクロオーダーの微小構造体を用いると、正面方向への光取出しが改善される。
【0030】
また、図4に示すように、蛍光体領域(蛍光体層)2の表面2aに遮光板14を設けることで、照明範囲と非照明範囲の境界を鮮明にすることが出来る。さらに、図5に示すように、遮光板14によって遮光する部分の蛍光体領域(蛍光体層)2を削りその背面に反射構造体6を設けることで、蛍光体領域(蛍光体層)2内部で反射を繰り返すことを抑制することができ、光の取り出し効率を上げることができる。あるいは、図5のかわりに、図6に示すように、遮光部分の前面に反射構造体16(遮光を兼ねた反射構造体)を設けることでも、同様の効果を得ることができる。
【0031】
また、上述の各例において、反射構造体6には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどを使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としては、Al、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体や、それらを含む合金が使用可能である。また、反射構造体6の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。また、蛍光体は光を変換する場合に発熱し、蛍光体は周囲温度が上昇すると変換効率が低下する温度消光という特性を持っている。蛍光体領域(蛍光体層)2の発光効率低下を防ぐには、より積極的に蛍光体領域(蛍光体層)2を冷却する必要があり、このため、蛍光体領域(蛍光体層)2の背面に冷却機構が設けられるのが良い。具体的に、冷却機構として、後述のように反射構造体6の背面に放熱フィン17を設けても良いし、ファン等を用いて空冷しても良いし、ペルチェ素子の様な熱電素子を用いて冷却しても良い。このように、冷却機構を設けて反射構造体6の放熱性を高め、蛍光体領域(蛍光体層)2からの発熱を背面から放熱することで蛍光体領域(蛍光体層)2の変換効率低下を防止することが出来る。すなわち、高輝度化を図ることができる。
【0032】
また、蛍光体領域(蛍光体層)2を反射構造体6に接着するには(蛍光体領域(蛍光体層)2と反射構造体6とを接合するには)、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属ろう付けなどを用いることができる。これらの中でも、高い反射率と伝熱特性を両立可能な金属ろう付けを用いるのが望ましい。セラミックス(蛍光体領域(蛍光体層)2)と金属(反射構造体6)との接合は、まず、セラミックス側に金属膜を形成し、その金属膜と金属(反射構造体6)を金属ろう付けすることで可能である。セラミックスへの金属膜の形成は、真空中での蒸着法やスパッタ法、もしくは高融点金属法などが使用可能である。なお、高融点金属法とは、セラミックスの表面に金属微粒子を含む有機バインダーを塗布し、水蒸気と水素を含む還元雰囲気下で1000〜1700℃に加熱する方法である。このとき形成される金属膜には、Si、Nb、Ti、Zr、Mo、Ni、Mn、W、Fe、Pt、Al、Au、Pd、Ta、Cuなどを含む単体や合金が用いられる。また、金属ろう材には、Ag、Cu、Zn、Ni、Sn、Ti、Mn、In、Biなどを含むろう材が使用可能である。必要であれば金属膜と金属の接合面の酸化被膜をフラックスで除去し、接合面に金属ろう材を配置し、200〜800℃に加熱し、冷却することで、接合することができる。また、接合後にセラミックスと金属の膨張係数の差による接合面の破壊を防ぐために、セラミックスと金属の中間の膨張係数を有する物質を介在させて接合を行っても良い。
【0033】
上記のように、本発明の構成例では、基本的に、蛍光体部12は、固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域2と、蛍光体領域2の背面(励起光が入射する側の面とは反対の面側)に設けられた反射構造体6とを有し、反射構造体6は、該蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに点状に集光させるように反射する形状(図2の例では、所定の半径の曲率を有する凹曲面の形状)の反射面6aを蛍光体領域2の背面に有しているので、蛍光体領域2からの蛍光および励起光を効率的に光学系(後述の光学系(レンズ系)20)へ導入して利用することができる。すなわち、光学系への光の導入効率を著しく向上させることができる。
【0034】
より詳細に、蛍光体領域を板状に加工した場合には、蛍光体領域の表面で反射した光が内部に閉じ込められるが、本発明では、背面の反射構造体6の反射面6aの凹曲面の形状(曲率など)を最適化することで、蛍光体領域2で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに臨界角以下の角度で集光させることができるため、光の取り出し効率を高めることができる。すなわち、本発明では、反射構造体6の反射面6aの凹曲面の形状を最適化することで、蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに照明装置にとって最適な輝度分布で集光させることができる。このことからもわかるように、反射構造体6の反射面6aの凹曲面の形状(凹曲面の曲率など)は、蛍光体領域2で発生した蛍光と励起光が蛍光体領域2の表面2aに臨界角以下の角度で集光するように設計(最適設計)されるのが良い。
【0035】
また、図1に示すように、上記光源装置と光学系(レンズ系)20とを組み合わせることで(上記光源装置からの出射光を光学系(レンズ系)20に通して照明光とすることで)、照明装置を構成することができ、この照明装置では、蛍光体領域2からの蛍光および励起光が効率的に光学系(レンズ系)20へ導入されるので、光効率の良い照明が可能となり、より高輝度な照明光を得ることができる。さらに、蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに向けて点状に集光させて光学系(レンズ系)20へ導入できるので、照明装置の光学系(レンズ系)20を小型化することが可能となり、照明装置の光学系(レンズ系)20の小型化が可能となることで、照明装置自体の小型化が可能となり、製造コストの低減、設置スペースの制約が少なくなるなどの利点がある。また、蛍光体領域2内で発生した蛍光と励起光を蛍光体領域2の表面2aに向けて点状に集光させることで、投影光の色むらや輝度むらを低減することが可能となり、より均一な照明が可能な照明装置を実現できる。
【0036】
図7には、本発明の照明装置の具体例が示されている。なお、図7において、図1乃至図6と同様の箇所には同じ符号を付している。図7を参照すると、この照明装置は、蛍光体領域2の背面に冷却用の放熱フィン17が接着して設けられ、固体光源5(例えば青色半導体レーザー)とレンズ系20とを一体化し、ケース30に入れたものとなっている。
【0037】
また、図8(a),(b)には、本発明の光源装置を複数個、方向指示器やポジションランプと組み合わせた照明装置(自動車用前照灯モジュール)の例が示されている。なお、図8(a)は自動車用前照灯モジュールの概略正面図、図8(b)は図8(a)のA−A線における断面図である。図8(a),(b)において、符号41は照明装置(自動車用前照灯モジュール)、42はロウビーム、43はポジションランプ、44はハイビーム、45は方向指示器、46はフォグランプである。
【0038】
このように、本発明の光源装置は、一般照明、自動車用照明、プロジェクター表示装置などの照明装置に用いることができる。
【0039】
なお、上述の構成例(例えば図1の構成例)では、固体光源5からの励起光を蛍光体部12(蛍光体領域2)に直接入射させたが、図9に示すように、固体光源5からの励起光を例えば反射手段36で反射させて蛍光体部12(蛍光体領域2)に入射させたりしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、一般照明、自動車用照明、プロジェクター表示装置などに利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
2 蛍光体領域(蛍光体層)
2a 蛍光体領域2の表面
5 固体光源
6 反射構造体
6a 反射面
12 蛍光体部
13 光取り出し構造
14 遮光板
16 遮光を兼ねた反射構造体
17 放熱フィン
20 光学系(レンズ系)
36 反射手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体からなる蛍光体領域と、該蛍光体領域内で発生した蛍光と励起光を前記蛍光体領域の表面に点状に集光させるように反射する形状の反射面を前記蛍光体領域の背面に有していることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体領域の表面に光取り出し構造を有することを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記蛍光体領域の表面に遮光板を有することを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする自動車用前照灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−142006(P2011−142006A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1950(P2010−1950)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】