光源装置
【課題】 蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合において、蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を抑制し、十分な高輝度化を図る。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックス2とを備え、固体光源5と蛍光体セラミックス2とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置10であって、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いる。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックス2とを備え、固体光源5と蛍光体セラミックス2とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置10であって、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置は広く普及しているが、近年では高輝度化が進み、一般照明や自動車のヘッドランプなどその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も高輝度化することで、さらに多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
この傾向は、白色光源に限らず、単色光源にも広がってきている。例えば現在のところ高出力の緑色光半導体は、開発途上にあり、出力が低いため、例えば特許文献1に示されているように、青色光半導体と蛍光体層とを組み合わせてプロジェクター用の緑色光源を実現する仕方が提案されている。
【0004】
このような光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するための手段として、光半導体に大電流を投入し光半導体からの励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体層において樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまう。このため、結果として、発光強度は飽和、減少し、光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置の高輝度化は困難であった。
【0005】
ここで、蛍光体層内の樹脂成分の変色とは、通常、蛍光体層は一定の形状に再現性良く形成するため、蛍光体粉末を樹脂成分と混練してペースト状に調製し、印刷法等を用いて塗布形成しており、この樹脂成分が加熱され200℃程度以上になると変色してしまう現象のことである。樹脂成分は本来透明であるため、熱により樹脂成分に変色が起きると、光半導体からの励起光や蛍光体層からの蛍光の一部を吸収してしまい、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0006】
また、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このため、熱により発生する蛍光体の温度消光も、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0007】
これらの問題を解決するために、特許文献2には、色変換扇形セクション(蛍光体層)として実質的に樹脂成分を含まない蛍光体セラミックスを使用し、さらに蛍光体セラミックスが色変換扇形セクションとして配置されたカラーホイールを、モーターで回転させる蛍光回転体として使用することが提案されている。このように、蛍光体層に実質的に樹脂成分を含まない蛍光体セラミックスを使用することで、樹脂成分の変色による問題を回避でき、また、蛍光回転体にすることで、蛍光体層(すなわち、蛍光体セラミックス)の励起される領域が時々刻々と変化するため、蛍光体層の過熱を防ぎ、蛍光体の温度消光の問題を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−085740号公報
【特許文献2】特表2009−539219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2では、色変換扇形セクションに使用される蛍光体セラミックスは、透明または半透明セラミック体に焼結された結晶無機発光材料のものとなっている。しかしながら、図1のように、固体光源5と蛍光体層(すなわち、蛍光体セラミックス)92とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置で、かつ、レンズ50で蛍光を集光して利用する場合において、蛍光体セラミックス92の透明度が高いと、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光(全方位にわたる蛍光の伝播)が発生し発光点(発光スポット)の面積が大きくなって蛍光体セラミックス92から出射される蛍光がレンズ50で効率的に集光できないために、照明光の出力が低下するという現象が、本願の発明者によって確認された。
【0010】
なお、図1において、符号6は光反射性基板であり、符号7は蛍光体セラミックス92と光反射性基板6との接合部である。すなわち、図1の光源装置90は、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側の面に光反射性基板7が設けられていることによって、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置として構成されている。
【0011】
図2は蛍光体セラミックス92内での蛍光の導光を説明するための図(断面図)である。図2を参照すると、蛍光体セラミックス92が透明に近いものである場合、蛍光体セラミックス92に固体光源5からの励起光が入射することによって蛍光が発生すると、蛍光は全方位にわたって伝播し、図2に符号Eで示すように、蛍光体セラミックス92からの蛍光の取り出し方向(図1において、レンズ50の光軸方向)とは垂直の方向(横方向)にも伝播してしまう。図3(a)は固体光源5からの励起光の蛍光体セラミックス92への入射スポット60を示す図であり、図3(b)は固体光源5からの励起光が図3(a)のように蛍光体セラミックス92に入射したとき、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光がないとした場合の蛍光の発光スポット61を示す図である。図3(b)からわかるように、蛍光の導光がないときには、蛍光体セラミックス92内における蛍光の発光スポット61の面積は、励起光の入射スポット60の面積よりも少し大きくなる(少し広がる)程度のものとなり、蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で効率的に集光でき、光源装置の高輝度化を実現できる。一方、図3(c)は固体光源5からの励起光が図3(a)のように蛍光体セラミックス92に入射したとき、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光がある場合の蛍光の発光スポット62を示す図であり、蛍光の導光があるときには、蛍光体セラミックス92内における蛍光の発光スポット62の面積は、励起光の入射スポット60の面積よりも非常に大きくなり(蛍光は、符号62a,62b,62c,62dで示すように蛍光体セラミックス92の横方向からも出射し)、蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で効率的に集光できなくなり、光源装置の高輝度化を実現することができなくなる。
【0012】
このように、特許文献2の光源装置では、透明度が高い蛍光体セラミックスを用いているので、蛍光体セラミックス内で蛍光の導光が発生し、特に図1のように反射型の光源装置の構成とし蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で集光する場合には、高輝度化には限界があるという問題があった。
【0013】
本発明は、蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合において、蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を抑制し、十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体セラミックスの厚さは、20μm〜200μmの範囲にあることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体セラミックスを有する蛍光回転体を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用い、蛍光体セラミックスの透明度を意図的に下げているので、蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光(緑色光)を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合に、蛍光体セラミックス内での蛍光(緑色光)の導光を抑制し、緑色光の十分な高輝度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】反射型の光源装置を示す図である。
【図2】蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を説明するための図である。
【図3】蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を説明するための図である。
【図4】本発明の光源装置の一構成例を示す図である。
【図5】内部散乱係数を説明するための図である。
【図6】内部散乱係数を説明するための図である。
【図7】蛍光体セラミックスの厚さLが200μmよりも厚い場合の問題を説明するための図である。
【図8】蛍光体セラミックスを評価する測定系を示す図である。
【図9】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図10】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図11】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図12】反射型蛍光回転体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図4は、本発明の光源装置の一構成例を示す図である。なお、図4において、図1と同様の箇所には同じ符号を付している。図4を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックス2とを備え、固体光源5と蛍光体セラミックス2とが空間的に離れて配置されている。
【0022】
ここで、蛍光体セラミックスとは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。蛍光体セラミックスは蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスはその製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設け有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、上記光源装置10に用いられる蛍光体セラミックス2は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に樹脂よりも熱伝導率が高いため蛍光体層から基板への熱放散においても有利である。すなわち、上記光源装置10に用いられる蛍光体セラミックス2は、後述の光反射性基板6への熱放散においても有利である。
【0023】
蛍光体セラミックス2は、板状に成形した後に焼成し、焼成物をダイシングにより外形を制御し、研磨により厚みを制御して、目的の形状のものを得ることが出来る。実際に加工に使用する装置は、従来から知られている装置でよい。
【0024】
また、図4において、符号6は光反射性基板であり、符号7は蛍光体セラミックス2と光反射性基板6との接合部である。すなわち、図4の光源装置10は、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側の面に光反射性基板6が設けられていることによって(蛍光体セラミックス2に光反射性基板6が接着されていることによって)、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置として構成されている。
【0025】
ここで、光反射性基板6は、励起光、蛍光の反射面としての役割と、蛍光体セラミックス2からの熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体セラミックス2の支持基板としての役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この光反射性基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つアルミなどの金属基板を使用するのが好ましい。また、光反射性基板6に金属基板を使用する場合には、その表面にAgなど、より高い光反射率を有する金属薄膜を成膜してもよい。
【0026】
また、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6との接合部7には、有機接着剤(樹脂)、無機接着剤、低融点ガラス、金属のろう付けなどを用いることができる。なかでも、高い光透明性を有する樹脂の使用が望ましい。
【0027】
ところで、本発明では、蛍光体セラミックス2として、蛍光に対する内部散乱係数αが10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴としている。
【0028】
ここで、蛍光に対する内部散乱係数αは、次式(式1)のように定義される。すなわち、図5に示すように、厚さL(mm)の蛍光体セラミックス2において、固体光源5からの励起光が点Pに入射し点Pで蛍光に変換されるとし、この蛍光の反射率をRとするとき、この蛍光の透過率Tは、次式(式1)で表される。なお、exp(・・・)は指数関数である。
T=(1−R)2・exp(−αL) (式1)
式1からわかるように、内部散乱係数αが0のときには、蛍光体セラミックス2内部において蛍光の散乱は全くなく、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して透明である。これに対して、内部散乱係数αが大きくなるにつれて、蛍光の透過率Tは小さくなり、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して不透明となる。
【0029】
図6(a)は蛍光体セラミックス2が結晶体(蛍光体70のみ)となっており、蛍光体セラミックス2内に気孔(ポア)など(以下、気孔(ポア)と称す)が存在しない場合を示す図であり、このときには、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して透明であって(蛍光に対する透明度が高く)、内部散乱係数αは0に近くなる。これに対し、図6(b)は蛍光体セラミックス2内に(蛍光体70間に)気孔(ポア)71が存在する場合を示す図であり、このときには、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して不透明となって(蛍光に対する透明度が低くなって)、内部散乱係数αは大きくなる。換言すれば、内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2内における気孔(ポア)71の密度を反映したものであって、蛍光体セラミックス2内における気孔(ポア)71の密度が高くなる程、内部散乱係数αは大きくなり、蛍光に対する透明度は低くなる。
【0030】
前述したように、蛍光体セラミックス2として、仮に透明度が高い蛍光体セラミックスを用いると、蛍光体セラミックス2内で蛍光の導光が発生し、特に図4のように反射型の光源装置の構成とし蛍光体セラミックス2から出射される蛍光をレンズ50で集光する場合には、高輝度化には限界がある。
【0031】
本発明は、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合において、蛍光体セラミックス2内での蛍光の導光を抑制して十分な高輝度化を図ることを意図しており、このため、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αを10/mm以上にして、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)として、透明度を意図的に下げたものを用いるようにしている。これにより、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることで、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現するようにしている。
【0032】
ただ、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αが30/mm以上になると、内部量子効率(励起光から蛍光への変換効率)が下がってしまうため、蛍光体セラミックス2から出射される蛍光の出力が低下し、照明光の出力が低下してしまう。従って、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αは、10/mm〜30/mmの範囲であるのが好ましい。
【0033】
このように、本発明では、蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いるので、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることが可能となり、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現することができる。すなわち、本発明では、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用い、蛍光体セラミックス2の透明度を意図的に下げているので、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光(緑色光)を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合に、蛍光体セラミックス2内での蛍光(緑色光)の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることができて、緑色光の十分な高輝度化を図ることができる。
【0034】
なお、上述の説明では、内部散乱係数αは、蛍光に対する内部散乱係数であるとしたが、実際には(実際に内部散乱係数αを割り出す測定、計算では)、蛍光そのものの反射率R、透過率Tを測定等して求めたものではなく、内部散乱係数αを、蛍光体セラミックスに吸収のない波長の光を当てたときに、この光が蛍光体内部に存在する気孔などによって蛍光変換されずに失われる割合を示すものとして捉えている。すなわち、蛍光体セラミックス2に吸収のない波長の光(例えば600nmの波長の光)を照射した場合において、蛍光体セラミックス2への照射光(例えば600nmの波長の光)の蛍光体セラミックス2と空気との屈折率差から求められる理論値を蛍光体セラミックス2の反射率Rに用い、蛍光体セラミックス2の厚さLと透過率Tとして上記照射光(例えば600nmの波長の光)の実測値を用い、式1に基づき計算によって求めたものが、内部散乱係数αの上記値(10/mm〜30/mmの範囲)の根拠となっている。
【0035】
また、蛍光体セラミックス2の厚さLは、20μm〜200μmの範囲にあるのが好ましい。すなわち、蛍光体セラミックス2の厚さLが20μmよりも薄い場合には、励起光を蛍光に変換するための光路長が短かすぎ、励起光から蛍光への変換効率が低いものとなって、蛍光体セラミックス2から出射される蛍光の出力が低下し、照明光の出力が低くなる。また、蛍光体セラミックス2の厚さLが200μmよりも厚い場合には、図7に符号Fで示すように、蛍光体セラミックス2の横方向から出射する蛍光が多くなり、その分、レンズ50に向かう蛍光が少なくなるため、照明光の出力が低くなってしまう。従って、蛍光体セラミックス2の厚さLは、20μm〜200μmの範囲にあるのが好ましい。
【0036】
また、Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあるのが好ましい。すなわち、Ce濃度が0.05mol%よりも低いときには蛍光の素となるCe濃度が低すぎるため、また、Ce濃度が1.0mol%よりも高いときには濃度消光が発生するため、照明光の出力が低くなってしまう。従って、Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあるのが好ましい。
【0037】
次に、蛍光体セラミックス2の特性とその測定方法について説明する。
【0038】
内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2内の蛍光が散乱される効率を示すものである。この内部散乱係数αに影響を与える1つの要因としては、蛍光体セラミックス2の内部に存在する気孔(ポア)であることが考えられる。このため、内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2の焼成時の焼成温度と真空度によって、蛍光体セラミックス2の内部の気孔(ポア)などの密度を制御することで、制御可能である。そして、内部散乱係数αが低いサンプルは蛍光に対する透明性が高く、内部散乱係数αが高いサンプルは蛍光に対する透明性が低いサンプルとなる。
【0039】
そして、内部散乱係数αは、具体的には、蛍光体セラミックス2に吸収のない波長の光を照射した場合の光量損失要因が蛍光体セラミックス2での反射と蛍光体セラミックス2の内部での散乱しか存在しないと仮定し、蛍光体セラミックス2での反射率Rには、蛍光体セラミックス2と空気との屈折率差から求められる理論値を用い、蛍光体セラミックス2の厚さLと透過率Tとして実測値を用いることで、式1に基づき計算によって求めることができる。
【0040】
また、内部量子効率は、前述したように、蛍光体セラミックス2において励起光子を蛍光光子に変換する割合を示すものであり、内部量子効率は、較正された励起光源と積分球と分光器、検出器からなる測定系を使用し、測定した蛍光光子数を励起光子数で割ることで求めることができる。
【0041】
また、蛍光体セラミックス2の厚さLは、マイクロノギスやレーザー変位計などを用いて測定することができる。
【0042】
また、蛍光体セラミックス2のCe濃度とは、蛍光体組成内に含まれるCe原子の割合を示すものであり、具体的には、Ce原子の原子数をLuイオンとCeイオンの合計原子数で割り、100倍することで求めることができる。なお、計算で使用する原子数は設計値である。焼成条件を調整すれば、焼成物に含まれるCe濃度は設計値と一致する。
【0043】
次に、図4の光源装置10をより詳細に説明する。
【0044】
図4の光源装置10において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。本発明は、励起光強度が高い光源を使用する場合にその効果が顕著に現れるため、もちろんこれらの光源に限定されるものではないが、例えば、GaN系の材料を用いた約450nmの青色光を発光するレーザーダイオードを用いることができる。
【0045】
また、上述のように、蛍光体セラミックス2としては、青色光領域の光を吸収し緑色発光を示すLu3Al5O12:Ce3+を用いている。この蛍光体セラミックス2は、公知の蛍光体セラミックスの製造方法によって製造することが可能であり、例えば、原料の混合、造粒、成形、真空焼成によって製造することができる。特に出発原料に平均粒子径がサブミクロン以下の粒子を使用し、成形体密度が50%以上となるように均一に成形することにより、透過率Tを高くし、散乱を少なくすることができる。以下に製造方法の一例を説明する。
【0046】
まず、原料となる元素の化合物、例えば酸化ルテチウム、酸化アルミニウム、酸化セリウムなどの酸化物を所定の比率となるように秤量し、これらをアルコール等の溶媒と共にボールミルによって混合し、造粒粉を作製する。ここで、目的とするサンプルを得るためにはCe濃度は0.1〜2.0mol%が好ましい。次に造粒粉を成形し、成形体を脱脂した後、真空雰囲気で焼成して焼結体を得る。この際、造粒粉の成形は20MPa程度の圧力で一軸金型成形し、次いで、150MPa程度の圧力で冷間静水圧成形する。脱脂処理は600〜1000℃で行うことが好ましい。また焼結は真空雰囲気下において1600〜1800℃で1〜10時間行うことが好ましい。焼結時の温度と真空度をコントロールすることで、焼結体内の散乱源となる気孔の発生をコントロールすることができる。気孔を無くすためには、焼成温度は高く、真空度は高くすることが好ましい。
【0047】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらにダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングにより円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。なお、後述の測定では、蛍光体セラミックス2として、大きさが2.5×2.0mm、厚さLが100μmと200μmのものを使用した。
【0048】
また、光反射性基板6には、アルミ製の平板上に光反射率を高めるための銀をコーティングしたものを用いた。また、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6とを接合する接合部7には、シリコーン樹脂を用いた。すなわち、光反射性基板6上に微量のシリコーン樹脂を塗布した後、その上に蛍光体セラミックス2を配置し、その後、恒温槽内で80℃の温度で1時間放置し、次いで、150℃の温度で2時間放置して、シリコーン樹脂を硬化した。
【0049】
このようにして作製したサンプル(光反射性基板6上に配置された蛍光体セラミックス2)を図8に示すような測定系で評価した。すなわち、図8において、固体光源5として445nmの発光波長を持つ青色レーザーダイオードを使用し、この固体光源5から出射された青色光で蛍光体セラミックス2を励起した。サンプルの冷却は自然冷却のみである。蛍光体セラミックス2から発せられた緑色光はレンズ75で集光され、パスフィルター76で反射させることで、青色光を分離し、緑色光のみを検出器(サーモパイル)77で検出した。
【0050】
以下に、測定条件および測定結果を示す。
【0051】
まず、図9に示すように、内部散乱係数が異なる6個のサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6を用意し、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いた6個のサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6の条件と測定結果は、図9に示されている。なお、図9において、緑色光の出力は、最も高い値を示したサンプルを100とし、それに対する相対値で示している。図9の結果から、内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲の時に高い出力が得られることが判明した。これは、内部散乱係数が10/mmより低い(透過率が高い)場合には蛍光体内を導光するために、また30/mmより高い場合には内部散乱係数とトレードオフの関係にある内部量子効率が下がってしまうために、照明光の出力が低くなったと考えられる。
【0052】
次に、図10に示すように、図9に示したサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6と厚さLが異なるサンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6を用意し(サンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6は厚さLが100μmであるのに対し、サンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6は厚さLが200μmである)、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いたサンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6の条件と測定結果は、図10に示されている。図10の結果から、厚さLが200μm以下の範囲の場合に高い出力が得られることが判明した。厚さLが200μmよりも厚い場合には、前述したように、蛍光体セラミックス2の横方向から出射する蛍光が多くなり、照明光の出力が低くなると考えられる。
【0053】
また、図11に示すように、蛍光体セラミックス2のCe濃度が異なるサンプルC1,C2,C3,C4,C5を用意し、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いたサンプルC1,C2,C3,C4,C5の条件と測定結果は、図11に示されている。図11の結果から、Ce濃度が1.0mol%以下の範囲の場合に高い出力が得られることが判明した。Ce濃度が1.0mol%より高い場合では濃度消光が発生するため照明光の出力が低くなったと考えられる。但し、Ce濃度を変えると発光色度も変化する。したがって、本実験の結果は、例えば目的色度がCe濃度2.0mol%にある場合に、その濃度の蛍光体セラミックス2の使用を妨げるものではない。
【0054】
上述した図4の光源装置10において、蛍光体セラミックス2は、固定されていてもよいが、蛍光体セラミックス2を移動可能に構成することもできる。例えば、図12に示すように、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体1は、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6を接合したものをモーター等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体1において、光反射性基板6や接合部7(図12には接合部7を図示せず)が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、光反射性基板6の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。
【0055】
図12に示すように、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成する場合にも、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることで、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることが可能となり、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現することができる。
【0056】
また、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することにより、すなわち、固体光源5に対して蛍光体セラミックス2を回転させることにより、固体光源5からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ(この蛍光回転体1を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることができ)、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【0057】
上述したように、本発明では、固体光源5と蛍光体セラミックス2を光反射性基板6に対して同じ側に設置することで、反射型の光源装置となる。もちろん必要であれば、固体光源5と蛍光体セラミックス2との間にレンズなどの光学素子を入れることもできる。
【0058】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、高輝度化が可能な照明装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、高輝度のプロジェクター用光源や照明用光源などに利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 蛍光回転体
2 蛍光体セラミックス
5 固体光源
6 光反射性基板
7 接合部
10 光源装置
50 レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置は広く普及しているが、近年では高輝度化が進み、一般照明や自動車のヘッドランプなどその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も高輝度化することで、さらに多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
この傾向は、白色光源に限らず、単色光源にも広がってきている。例えば現在のところ高出力の緑色光半導体は、開発途上にあり、出力が低いため、例えば特許文献1に示されているように、青色光半導体と蛍光体層とを組み合わせてプロジェクター用の緑色光源を実現する仕方が提案されている。
【0004】
このような光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するための手段として、光半導体に大電流を投入し光半導体からの励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体層において樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまう。このため、結果として、発光強度は飽和、減少し、光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置の高輝度化は困難であった。
【0005】
ここで、蛍光体層内の樹脂成分の変色とは、通常、蛍光体層は一定の形状に再現性良く形成するため、蛍光体粉末を樹脂成分と混練してペースト状に調製し、印刷法等を用いて塗布形成しており、この樹脂成分が加熱され200℃程度以上になると変色してしまう現象のことである。樹脂成分は本来透明であるため、熱により樹脂成分に変色が起きると、光半導体からの励起光や蛍光体層からの蛍光の一部を吸収してしまい、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0006】
また、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このため、熱により発生する蛍光体の温度消光も、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0007】
これらの問題を解決するために、特許文献2には、色変換扇形セクション(蛍光体層)として実質的に樹脂成分を含まない蛍光体セラミックスを使用し、さらに蛍光体セラミックスが色変換扇形セクションとして配置されたカラーホイールを、モーターで回転させる蛍光回転体として使用することが提案されている。このように、蛍光体層に実質的に樹脂成分を含まない蛍光体セラミックスを使用することで、樹脂成分の変色による問題を回避でき、また、蛍光回転体にすることで、蛍光体層(すなわち、蛍光体セラミックス)の励起される領域が時々刻々と変化するため、蛍光体層の過熱を防ぎ、蛍光体の温度消光の問題を回避できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−085740号公報
【特許文献2】特表2009−539219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献2では、色変換扇形セクションに使用される蛍光体セラミックスは、透明または半透明セラミック体に焼結された結晶無機発光材料のものとなっている。しかしながら、図1のように、固体光源5と蛍光体層(すなわち、蛍光体セラミックス)92とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置で、かつ、レンズ50で蛍光を集光して利用する場合において、蛍光体セラミックス92の透明度が高いと、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光(全方位にわたる蛍光の伝播)が発生し発光点(発光スポット)の面積が大きくなって蛍光体セラミックス92から出射される蛍光がレンズ50で効率的に集光できないために、照明光の出力が低下するという現象が、本願の発明者によって確認された。
【0010】
なお、図1において、符号6は光反射性基板であり、符号7は蛍光体セラミックス92と光反射性基板6との接合部である。すなわち、図1の光源装置90は、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側の面に光反射性基板7が設けられていることによって、蛍光体セラミックス92の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置として構成されている。
【0011】
図2は蛍光体セラミックス92内での蛍光の導光を説明するための図(断面図)である。図2を参照すると、蛍光体セラミックス92が透明に近いものである場合、蛍光体セラミックス92に固体光源5からの励起光が入射することによって蛍光が発生すると、蛍光は全方位にわたって伝播し、図2に符号Eで示すように、蛍光体セラミックス92からの蛍光の取り出し方向(図1において、レンズ50の光軸方向)とは垂直の方向(横方向)にも伝播してしまう。図3(a)は固体光源5からの励起光の蛍光体セラミックス92への入射スポット60を示す図であり、図3(b)は固体光源5からの励起光が図3(a)のように蛍光体セラミックス92に入射したとき、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光がないとした場合の蛍光の発光スポット61を示す図である。図3(b)からわかるように、蛍光の導光がないときには、蛍光体セラミックス92内における蛍光の発光スポット61の面積は、励起光の入射スポット60の面積よりも少し大きくなる(少し広がる)程度のものとなり、蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で効率的に集光でき、光源装置の高輝度化を実現できる。一方、図3(c)は固体光源5からの励起光が図3(a)のように蛍光体セラミックス92に入射したとき、蛍光体セラミックス92内で蛍光の導光がある場合の蛍光の発光スポット62を示す図であり、蛍光の導光があるときには、蛍光体セラミックス92内における蛍光の発光スポット62の面積は、励起光の入射スポット60の面積よりも非常に大きくなり(蛍光は、符号62a,62b,62c,62dで示すように蛍光体セラミックス92の横方向からも出射し)、蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で効率的に集光できなくなり、光源装置の高輝度化を実現することができなくなる。
【0012】
このように、特許文献2の光源装置では、透明度が高い蛍光体セラミックスを用いているので、蛍光体セラミックス内で蛍光の導光が発生し、特に図1のように反射型の光源装置の構成とし蛍光体セラミックス92から出射される蛍光をレンズ50で集光する場合には、高輝度化には限界があるという問題があった。
【0013】
本発明は、蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合において、蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を抑制し、十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴としている。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体セラミックスの厚さは、20μm〜200μmの範囲にあることを特徴としている。
【0016】
また、請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあることを特徴としている。
【0017】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体セラミックスを有する蛍光回転体を備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1乃至請求項5記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用い、蛍光体セラミックスの透明度を意図的に下げているので、蛍光体セラミックスの面のうち固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光(緑色光)を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合に、蛍光体セラミックス内での蛍光(緑色光)の導光を抑制し、緑色光の十分な高輝度化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】反射型の光源装置を示す図である。
【図2】蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を説明するための図である。
【図3】蛍光体セラミックス内での蛍光の導光を説明するための図である。
【図4】本発明の光源装置の一構成例を示す図である。
【図5】内部散乱係数を説明するための図である。
【図6】内部散乱係数を説明するための図である。
【図7】蛍光体セラミックスの厚さLが200μmよりも厚い場合の問題を説明するための図である。
【図8】蛍光体セラミックスを評価する測定系を示す図である。
【図9】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図10】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図11】蛍光体セラミックスのサンプルの測定結果を示す図である。
【図12】反射型蛍光回転体の構成例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図4は、本発明の光源装置の一構成例を示す図である。なお、図4において、図1と同様の箇所には同じ符号を付している。図4を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックス2とを備え、固体光源5と蛍光体セラミックス2とが空間的に離れて配置されている。
【0022】
ここで、蛍光体セラミックスとは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。蛍光体セラミックスは蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスはその製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設け有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、上記光源装置10に用いられる蛍光体セラミックス2は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に樹脂よりも熱伝導率が高いため蛍光体層から基板への熱放散においても有利である。すなわち、上記光源装置10に用いられる蛍光体セラミックス2は、後述の光反射性基板6への熱放散においても有利である。
【0023】
蛍光体セラミックス2は、板状に成形した後に焼成し、焼成物をダイシングにより外形を制御し、研磨により厚みを制御して、目的の形状のものを得ることが出来る。実際に加工に使用する装置は、従来から知られている装置でよい。
【0024】
また、図4において、符号6は光反射性基板であり、符号7は蛍光体セラミックス2と光反射性基板6との接合部である。すなわち、図4の光源装置10は、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側の面に光反射性基板6が設けられていることによって(蛍光体セラミックス2に光反射性基板6が接着されていることによって)、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置として構成されている。
【0025】
ここで、光反射性基板6は、励起光、蛍光の反射面としての役割と、蛍光体セラミックス2からの熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体セラミックス2の支持基板としての役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この光反射性基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つアルミなどの金属基板を使用するのが好ましい。また、光反射性基板6に金属基板を使用する場合には、その表面にAgなど、より高い光反射率を有する金属薄膜を成膜してもよい。
【0026】
また、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6との接合部7には、有機接着剤(樹脂)、無機接着剤、低融点ガラス、金属のろう付けなどを用いることができる。なかでも、高い光透明性を有する樹脂の使用が望ましい。
【0027】
ところで、本発明では、蛍光体セラミックス2として、蛍光に対する内部散乱係数αが10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴としている。
【0028】
ここで、蛍光に対する内部散乱係数αは、次式(式1)のように定義される。すなわち、図5に示すように、厚さL(mm)の蛍光体セラミックス2において、固体光源5からの励起光が点Pに入射し点Pで蛍光に変換されるとし、この蛍光の反射率をRとするとき、この蛍光の透過率Tは、次式(式1)で表される。なお、exp(・・・)は指数関数である。
T=(1−R)2・exp(−αL) (式1)
式1からわかるように、内部散乱係数αが0のときには、蛍光体セラミックス2内部において蛍光の散乱は全くなく、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して透明である。これに対して、内部散乱係数αが大きくなるにつれて、蛍光の透過率Tは小さくなり、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して不透明となる。
【0029】
図6(a)は蛍光体セラミックス2が結晶体(蛍光体70のみ)となっており、蛍光体セラミックス2内に気孔(ポア)など(以下、気孔(ポア)と称す)が存在しない場合を示す図であり、このときには、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して透明であって(蛍光に対する透明度が高く)、内部散乱係数αは0に近くなる。これに対し、図6(b)は蛍光体セラミックス2内に(蛍光体70間に)気孔(ポア)71が存在する場合を示す図であり、このときには、蛍光体セラミックス2は、蛍光に対して不透明となって(蛍光に対する透明度が低くなって)、内部散乱係数αは大きくなる。換言すれば、内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2内における気孔(ポア)71の密度を反映したものであって、蛍光体セラミックス2内における気孔(ポア)71の密度が高くなる程、内部散乱係数αは大きくなり、蛍光に対する透明度は低くなる。
【0030】
前述したように、蛍光体セラミックス2として、仮に透明度が高い蛍光体セラミックスを用いると、蛍光体セラミックス2内で蛍光の導光が発生し、特に図4のように反射型の光源装置の構成とし蛍光体セラミックス2から出射される蛍光をレンズ50で集光する場合には、高輝度化には限界がある。
【0031】
本発明は、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合において、蛍光体セラミックス2内での蛍光の導光を抑制して十分な高輝度化を図ることを意図しており、このため、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αを10/mm以上にして、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)として、透明度を意図的に下げたものを用いるようにしている。これにより、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることで、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現するようにしている。
【0032】
ただ、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αが30/mm以上になると、内部量子効率(励起光から蛍光への変換効率)が下がってしまうため、蛍光体セラミックス2から出射される蛍光の出力が低下し、照明光の出力が低下してしまう。従って、蛍光体セラミックス2(Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体)の蛍光に対する内部散乱係数αは、10/mm〜30/mmの範囲であるのが好ましい。
【0033】
このように、本発明では、蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いるので、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることが可能となり、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現することができる。すなわち、本発明では、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用い、蛍光体セラミックス2の透明度を意図的に下げているので、蛍光体セラミックス2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光(緑色光)を取り出す反射型の光源装置の構成とした場合に、蛍光体セラミックス2内での蛍光(緑色光)の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることができて、緑色光の十分な高輝度化を図ることができる。
【0034】
なお、上述の説明では、内部散乱係数αは、蛍光に対する内部散乱係数であるとしたが、実際には(実際に内部散乱係数αを割り出す測定、計算では)、蛍光そのものの反射率R、透過率Tを測定等して求めたものではなく、内部散乱係数αを、蛍光体セラミックスに吸収のない波長の光を当てたときに、この光が蛍光体内部に存在する気孔などによって蛍光変換されずに失われる割合を示すものとして捉えている。すなわち、蛍光体セラミックス2に吸収のない波長の光(例えば600nmの波長の光)を照射した場合において、蛍光体セラミックス2への照射光(例えば600nmの波長の光)の蛍光体セラミックス2と空気との屈折率差から求められる理論値を蛍光体セラミックス2の反射率Rに用い、蛍光体セラミックス2の厚さLと透過率Tとして上記照射光(例えば600nmの波長の光)の実測値を用い、式1に基づき計算によって求めたものが、内部散乱係数αの上記値(10/mm〜30/mmの範囲)の根拠となっている。
【0035】
また、蛍光体セラミックス2の厚さLは、20μm〜200μmの範囲にあるのが好ましい。すなわち、蛍光体セラミックス2の厚さLが20μmよりも薄い場合には、励起光を蛍光に変換するための光路長が短かすぎ、励起光から蛍光への変換効率が低いものとなって、蛍光体セラミックス2から出射される蛍光の出力が低下し、照明光の出力が低くなる。また、蛍光体セラミックス2の厚さLが200μmよりも厚い場合には、図7に符号Fで示すように、蛍光体セラミックス2の横方向から出射する蛍光が多くなり、その分、レンズ50に向かう蛍光が少なくなるため、照明光の出力が低くなってしまう。従って、蛍光体セラミックス2の厚さLは、20μm〜200μmの範囲にあるのが好ましい。
【0036】
また、Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあるのが好ましい。すなわち、Ce濃度が0.05mol%よりも低いときには蛍光の素となるCe濃度が低すぎるため、また、Ce濃度が1.0mol%よりも高いときには濃度消光が発生するため、照明光の出力が低くなってしまう。従って、Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあるのが好ましい。
【0037】
次に、蛍光体セラミックス2の特性とその測定方法について説明する。
【0038】
内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2内の蛍光が散乱される効率を示すものである。この内部散乱係数αに影響を与える1つの要因としては、蛍光体セラミックス2の内部に存在する気孔(ポア)であることが考えられる。このため、内部散乱係数αは、蛍光体セラミックス2の焼成時の焼成温度と真空度によって、蛍光体セラミックス2の内部の気孔(ポア)などの密度を制御することで、制御可能である。そして、内部散乱係数αが低いサンプルは蛍光に対する透明性が高く、内部散乱係数αが高いサンプルは蛍光に対する透明性が低いサンプルとなる。
【0039】
そして、内部散乱係数αは、具体的には、蛍光体セラミックス2に吸収のない波長の光を照射した場合の光量損失要因が蛍光体セラミックス2での反射と蛍光体セラミックス2の内部での散乱しか存在しないと仮定し、蛍光体セラミックス2での反射率Rには、蛍光体セラミックス2と空気との屈折率差から求められる理論値を用い、蛍光体セラミックス2の厚さLと透過率Tとして実測値を用いることで、式1に基づき計算によって求めることができる。
【0040】
また、内部量子効率は、前述したように、蛍光体セラミックス2において励起光子を蛍光光子に変換する割合を示すものであり、内部量子効率は、較正された励起光源と積分球と分光器、検出器からなる測定系を使用し、測定した蛍光光子数を励起光子数で割ることで求めることができる。
【0041】
また、蛍光体セラミックス2の厚さLは、マイクロノギスやレーザー変位計などを用いて測定することができる。
【0042】
また、蛍光体セラミックス2のCe濃度とは、蛍光体組成内に含まれるCe原子の割合を示すものであり、具体的には、Ce原子の原子数をLuイオンとCeイオンの合計原子数で割り、100倍することで求めることができる。なお、計算で使用する原子数は設計値である。焼成条件を調整すれば、焼成物に含まれるCe濃度は設計値と一致する。
【0043】
次に、図4の光源装置10をより詳細に説明する。
【0044】
図4の光源装置10において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。本発明は、励起光強度が高い光源を使用する場合にその効果が顕著に現れるため、もちろんこれらの光源に限定されるものではないが、例えば、GaN系の材料を用いた約450nmの青色光を発光するレーザーダイオードを用いることができる。
【0045】
また、上述のように、蛍光体セラミックス2としては、青色光領域の光を吸収し緑色発光を示すLu3Al5O12:Ce3+を用いている。この蛍光体セラミックス2は、公知の蛍光体セラミックスの製造方法によって製造することが可能であり、例えば、原料の混合、造粒、成形、真空焼成によって製造することができる。特に出発原料に平均粒子径がサブミクロン以下の粒子を使用し、成形体密度が50%以上となるように均一に成形することにより、透過率Tを高くし、散乱を少なくすることができる。以下に製造方法の一例を説明する。
【0046】
まず、原料となる元素の化合物、例えば酸化ルテチウム、酸化アルミニウム、酸化セリウムなどの酸化物を所定の比率となるように秤量し、これらをアルコール等の溶媒と共にボールミルによって混合し、造粒粉を作製する。ここで、目的とするサンプルを得るためにはCe濃度は0.1〜2.0mol%が好ましい。次に造粒粉を成形し、成形体を脱脂した後、真空雰囲気で焼成して焼結体を得る。この際、造粒粉の成形は20MPa程度の圧力で一軸金型成形し、次いで、150MPa程度の圧力で冷間静水圧成形する。脱脂処理は600〜1000℃で行うことが好ましい。また焼結は真空雰囲気下において1600〜1800℃で1〜10時間行うことが好ましい。焼結時の温度と真空度をコントロールすることで、焼結体内の散乱源となる気孔の発生をコントロールすることができる。気孔を無くすためには、焼成温度は高く、真空度は高くすることが好ましい。
【0047】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらにダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングにより円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。なお、後述の測定では、蛍光体セラミックス2として、大きさが2.5×2.0mm、厚さLが100μmと200μmのものを使用した。
【0048】
また、光反射性基板6には、アルミ製の平板上に光反射率を高めるための銀をコーティングしたものを用いた。また、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6とを接合する接合部7には、シリコーン樹脂を用いた。すなわち、光反射性基板6上に微量のシリコーン樹脂を塗布した後、その上に蛍光体セラミックス2を配置し、その後、恒温槽内で80℃の温度で1時間放置し、次いで、150℃の温度で2時間放置して、シリコーン樹脂を硬化した。
【0049】
このようにして作製したサンプル(光反射性基板6上に配置された蛍光体セラミックス2)を図8に示すような測定系で評価した。すなわち、図8において、固体光源5として445nmの発光波長を持つ青色レーザーダイオードを使用し、この固体光源5から出射された青色光で蛍光体セラミックス2を励起した。サンプルの冷却は自然冷却のみである。蛍光体セラミックス2から発せられた緑色光はレンズ75で集光され、パスフィルター76で反射させることで、青色光を分離し、緑色光のみを検出器(サーモパイル)77で検出した。
【0050】
以下に、測定条件および測定結果を示す。
【0051】
まず、図9に示すように、内部散乱係数が異なる6個のサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6を用意し、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いた6個のサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6の条件と測定結果は、図9に示されている。なお、図9において、緑色光の出力は、最も高い値を示したサンプルを100とし、それに対する相対値で示している。図9の結果から、内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲の時に高い出力が得られることが判明した。これは、内部散乱係数が10/mmより低い(透過率が高い)場合には蛍光体内を導光するために、また30/mmより高い場合には内部散乱係数とトレードオフの関係にある内部量子効率が下がってしまうために、照明光の出力が低くなったと考えられる。
【0052】
次に、図10に示すように、図9に示したサンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6と厚さLが異なるサンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6を用意し(サンプルA1,A2,A3,A4,A5,A6は厚さLが100μmであるのに対し、サンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6は厚さLが200μmである)、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いたサンプルB1,B2,B3,B4,B5,B6の条件と測定結果は、図10に示されている。図10の結果から、厚さLが200μm以下の範囲の場合に高い出力が得られることが判明した。厚さLが200μmよりも厚い場合には、前述したように、蛍光体セラミックス2の横方向から出射する蛍光が多くなり、照明光の出力が低くなると考えられる。
【0053】
また、図11に示すように、蛍光体セラミックス2のCe濃度が異なるサンプルC1,C2,C3,C4,C5を用意し、緑色光の出力が最も高くなる条件を調べた。測定時の励起エネルギー密度は3.5W/m2であった。実験に用いたサンプルC1,C2,C3,C4,C5の条件と測定結果は、図11に示されている。図11の結果から、Ce濃度が1.0mol%以下の範囲の場合に高い出力が得られることが判明した。Ce濃度が1.0mol%より高い場合では濃度消光が発生するため照明光の出力が低くなったと考えられる。但し、Ce濃度を変えると発光色度も変化する。したがって、本実験の結果は、例えば目的色度がCe濃度2.0mol%にある場合に、その濃度の蛍光体セラミックス2の使用を妨げるものではない。
【0054】
上述した図4の光源装置10において、蛍光体セラミックス2は、固定されていてもよいが、蛍光体セラミックス2を移動可能に構成することもできる。例えば、図12に示すように、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体1は、蛍光体セラミックス2と光反射性基板6を接合したものをモーター等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体1において、光反射性基板6や接合部7(図12には接合部7を図示せず)が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、光反射性基板6の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。
【0055】
図12に示すように、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成する場合にも、蛍光体セラミックス2に内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることで、蛍光体セラミックス2内での光の導光を抑制し、レンズ50での光の集光効率を上げることが可能となり、従来よりもより高輝度な緑色光源を実現することができる。
【0056】
また、蛍光体セラミックス2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することにより、すなわち、固体光源5に対して蛍光体セラミックス2を回転させることにより、固体光源5からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ(この蛍光回転体1を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることができ)、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【0057】
上述したように、本発明では、固体光源5と蛍光体セラミックス2を光反射性基板6に対して同じ側に設置することで、反射型の光源装置となる。もちろん必要であれば、固体光源5と蛍光体セラミックス2との間にレンズなどの光学素子を入れることもできる。
【0058】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、高輝度化が可能な照明装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、高輝度のプロジェクター用光源や照明用光源などに利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 蛍光回転体
2 蛍光体セラミックス
5 固体光源
6 光反射性基板
7 接合部
10 光源装置
50 レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体セラミックスの厚さは、20μm〜200μmの範囲にあることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体セラミックスを有する蛍光回転体を備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する蛍光体セラミックスとを備え、前記固体光源と前記蛍光体セラミックスとが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体セラミックスの面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から反射方式で蛍光を取り出す反射型の光源装置であって、前記蛍光体セラミックスに内部散乱係数が10/mm〜30/mmの範囲にあるLu3Al5O12:Ce3+蛍光体を用いることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体セラミックスの厚さは、20μm〜200μmの範囲にあることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載の光源装置において、前記Lu3Al5O12:Ce3+蛍光体のCe濃度は、0.05mol%〜1.0mol%の範囲にあることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体セラミックスを有する蛍光回転体を備えていることを特徴とする光源装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−64484(P2012−64484A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208813(P2010−208813)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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