説明

光照射モジュールおよび印刷装置

【課題】
使用により紫外線照射装置から熱が発生した場合でも、紫外線照射モジュールの反りを抑制し、紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等が少ない光照射モジュールを提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の光照射装置は、複数の光照射デバイスと、放熱部材とを備えており、該放熱部材は、前記複数の光照射デバイスのそれぞれに対応した、該光照射デバイスに固定された複数の第1の放熱部材と、該複数の第1の放熱部材を共通に支持する第2の放熱部材とを有するため、紫外線照射モジュールの反りを比較的小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線硬化型樹脂や塗料の硬化に使用される光照射装置および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線照射装置は、医療やバイオ分野での蛍光反応観察、殺菌用途、電子部品の接着や紫外線硬化型樹脂およびインクの硬化などを目的に広く利用されている。特に電子部品の分野などで小型部品の接着等に使われる紫外線硬化型樹脂の硬化や、印刷の分野で使われる紫外線硬化型インキの硬化などに用いられる紫外線照射装置のランプ光源には高圧水銀ランプやメタルハライドランプなどが使用されている。
【0003】
近年、世界規模で地球環境負荷の軽減が望まれていることから、比較的長寿命、省エネルギー、およびオゾンと熱の発生を抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源に採用する動きが活発になってきている。
【0004】
ところが、熱の発生を比較的抑制することができる紫外線発光素子をランプ光源としても、使用により紫外線照射装置から熱が発生し、この熱により紫外線発光素子の発光効率の低下や、紫外線発光素子の寿命が短くなるなどの不具合が発生する。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、紫外線照射装置に放熱部材を取着し、放熱効果を高める光照射モジュールが提案されている。
【0005】
しかしながら、このような紫外線照射モジュールでは、使用により紫外線照射装置から熱が発生した場合、紫外線照射装置と放熱部材の熱膨張係数の不整合により紫外線照射モジュールに反りが発生し、結果として紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等の不具合を誘発する。さらに、前記反りにより紫外線照射モジュールと放熱部材が剥離した場合には、紫外線照射モジュールの放熱が十分に行なわれず、紫外線照度が低下する原因となる。
【0006】
そこで、使用により紫外線照射装置から熱が発生した場合でも、紫外線照射モジュールの反りを抑制し、紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等が少なく、安定して紫外線を照射可能な光照射モジュールが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−16093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、使用により紫外線照射装置から熱が発生した場合でも、紫外線照射モジュールの反りを抑制し、紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等が少ない光照射モジュールおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光照射装置は、複数の光照射デバイスと、放熱部材とを備えており、該放熱部材は、前記複数の光照射デバイスのそれぞれに対応した、該光照射デバイスに固定された複数の第1の放熱部材と、該複数の第1の放熱部材を共通に支持する第2の放熱部材
とを有することを特徴とする。
【0010】
また、前記複数の第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とが、一体的に形成されていることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記光照射デバイスは、基板と該基板に配設された発光素子とを有し、前記複数の光照射デバイスと前記複数の第1の放熱部材とがそれぞれ接着剤で接合され、該接着剤は、さらに隣接する光照射デバイス同士および第1の放熱部材同士を接合しているとともに、接合した前記基板の端面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする。
【0012】
また、前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする。
【0013】
さらに、前記基板の熱膨張係数よりも前記第1の放熱部材の熱膨張係数が大きく、前記第1の放熱部材の熱膨張係数よりも前記第2の放熱部材の熱膨張係数が大きいことを特徴とする。
【0014】
また、隣接する前記第1の放熱部材同士を部分的に接合する接合部材をさらに有していることを特徴とする。
【0015】
さらに、前記接合部材と前記第1の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする。
【0016】
また、前記接合部材と前記第2の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする。
【0017】
さらに、前記放熱部材には、冷媒を流すための流路が設けられていることを特徴とする。
【0018】
また、光透過性を有する記録媒体を搬送する搬送手段と、前記記録媒体に対して光硬化型インクまたは光硬化型樹脂を印刷する印刷手段と、印刷された前記記録媒体に対して光を照射する光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置を併せて提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光照射モジュールによれば、複数の光照射デバイスと、放熱部材とを備えており、該放熱部材は、前記複数の光照射デバイスのそれぞれに対応した、該光照射デバイスに固定された複数の第1の放熱部材と、該複数の第1の放熱部材を共通に支持する第2の放熱部材とを有することから、使用により紫外線照射装置から熱が発生した場合でも、紫外線照射モジュールの反りを比較的抑制し、紫外線照射領域の変動や紫外線の焦点のずれ等が比較的少なく、安定して紫外線を照射可能な光照射モジュールが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)は、本発明の一実施形態に係る光照射モジュールの平面図である。図1(b)は、本発明の一実施形態に係る光照射モジュールの側面図である。図1(c)は、本発明の一実施形態に係る光照射モジュールを構成する放熱部材の平面図である。
【図2】図2は、図1に示した光照射モジュールを構成する光照射デバイスの平面図である。
【図3】図3は、図2に示した光照射デバイスにおける2I−2I線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図1に示した光照射モジュールを用いた印刷装置の上面図である。
【図5】図5は、図4に示した印刷装置の側面図である。
【図6】図6は、本発明の他の実施例にかかる光照射モジュールを構成する放熱部材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の光照射モジュールおよび印刷装置について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(光照射モジュールの実施形態)
図1に示す光照射モジュール100は、紫外線硬化型インクを使用するオフセット印刷装置やインクジェット印刷装置等の印刷装置に組み込まれ、対象物(記録媒体)に紫外線硬化型インクを被着した後に紫外線を照射することで紫外線硬化型インクを硬化させる紫外線照射装置として機能する。
【0023】
光照射モジュール100は、複数の光照射デバイス1(本実施形態では10個)と、放熱部材2とを備えている。
【0024】
ここで、光照射モジュール100を構成する光照射デバイス1について図2、図3を用いて説明する。
【0025】
光照射デバイス1は、光照射モジュール100の紫外線照射光源として機能する。
【0026】
光照射デバイス1は、一方主面11aに複数の開口部12を有する基板10と、各開口部12内に設けられた複数の接続パッド13と、基板10の各開口部12内に配置され、接続パッド13と電気的に接続された複数の発光素子20と、各開口部12内に充填され、発光素子20を被覆する複数の封止材30と、各開口部12に対応した光学レンズ16と、を備えている。
【0027】
基板10は、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42が積層されてなる積層体40と、発光素子20同士を接続する電気配線60と、を備え、一方主面11a側から平面視して矩形状を成しており、該上面に設けられた開口部12内で発光素子20を支持している。
【0028】
第1の絶縁層41は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、およびガラスセラミックスなどのセラミックス、ならびにエポキシ樹脂、および液晶ポリマー(LCP)などの樹脂、などによって形成される。
【0029】
次に、電気配線60は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等の導電性材料により所定のパターンに形成されており、発光素子20への電流または発光素子20からの電流を供給するための給電配線として機能する。
【0030】
次に、第1の絶縁層41上に積層された第2の絶縁層42には、該第2の絶縁層42を貫通する開口部12が形成されている。
【0031】
開口部12は、各々の形状が発光素子20の載置面よりも基板10の一方主面11a側で開口面積が広くなるように、その内周面14が傾斜しており、平面視すると、例えば、略円形の形状を成している。なお、開口形状は円形に限られるものではなく、略矩形状でもよい。
【0032】
このような開口部12は、その内周面14で発光素子20の発する光を上方に反射し、光の取り出し効率を向上させる機能を有する。
【0033】
光の取り出し効率を向上させるため、第2の絶縁層42の材料として、紫外線領域の光に対して、比較的良好な反射性を有する多孔質セラミックス材料、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、酸化ジルコニウム焼結体および窒化アルミニウム質焼結体により形成することが好ましい。また、光の取り出し効率を向上させるという観点では、開口部12の内周面14に金属製の反射膜を設けてもよい。
【0034】
このような開口部12は、基板10の一方主面11aの全体に渡って縦横の並びに配列されている。例えば、千鳥格子状に配列し、このような配列にすることによって発光素子20をより高密度に配置することが可能となり、単位面積当たりの照度を高くすることが可能となる。ここで、千鳥格子に配列するとは、斜め格子の格子点に配することと同義である。
【0035】
なお、単位面積当たりの照度が十分確保できる場合には、正格子状等に配列してもよく、配列形状に制限を設ける必要はない。
【0036】
以上のような、第1の絶縁層41および第2の絶縁層42からなる積層体40を備えた基板10は、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42がセラミックスなどから成る場合、次のような工程を経て製造される。
【0037】
まず、従来周知の方法により製作された複数のセラミックスグリーンシートを準備する。開口部12に相当するセラミックスグリーンシートには開口部に対応する穴をパンチング等の方法により形成する。次に、内部配線60となる金属ペーストをグリーンシート上に印刷(不図示)した上で、該印刷された金属ペーストがグリーンシートの間に位置するようにグリーンシートを積層する。この内部配線60となる金属ペーストとしては、例えばタングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)および銅(Cu)などの金属を含有させたものが挙げられる。次に、上記積層体を焼成することにより、グリーンシートおよび金属ペーストを併せて焼成することによって、内部配線60および開口部12を有する基板10を形成することができる。
【0038】
また、第1の絶縁層41や第2の絶縁層42が樹脂から成る場合、基板10の製造方法は、例えば、次のような方法が考えられる。
【0039】
まず、熱硬化性樹脂の前駆体シートを準備する。次に、内部配線60となる金属材料からなるリード端子を前駆体シート間に配置させ、かつリード端子を前駆体シートに埋設するように複数の前駆体シートを積層する。このリード端子の形成材料としては、例えばCu、Ag、Al、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金、およびFe−Ni合金などの金属材料が挙げられる。そして、前駆体シートに開口部12に対応する穴をレーザー加工やエッチング等の方法により形成した後、これを熱硬化させることにより、基板10が完成する。
【0040】
一方、基板10の開口部12内には、発光素子20に電気的に接続された接続パッド13と、該接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により接続された発光素子20と、発光素子20を封止する封止材30とが設けられている。
【0041】
接続パッド13は、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、および銅(Cu)などの金属材料から成る金属層により形成されている。なお、必要に応じて、金属層上に、ニッケル(Ni)層、パラジウム(Pd)層、および金(Au)層などを更に積層してもよい。かかる接続パッド13は、半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15により発光素子20に接続される。
【0042】
また、発光素子20は、例えば、GaAsやGaN等の半導体材料からなるp型半導体層およびn型半導体層をサファイア基板等の素子基板21上に積層してなる発光ダイオードや、半導体層が有機材料からなる有機EL素子等により構成されている。
【0043】
この発光素子20は、発光層を有する半導体層22と、基板10上に配置された接続パッド13に半田、金(Au)線、アルミ(Al)線等の接合材15を介して接続されたAg等の金属材料からなる素子電極23、24とを備えており、基板10に対してワイヤボンディング接続されている。そして、発光素子20は、素子電極23、24間に流れる電流に応じて所定の波長を持った光を所定の輝度で発し、その光を素子基板21を介して外部へ出射する。なお、素子基板21は、省略することが可能なのは周知のとおりである。また、発光素子20の素子電極23、24と接続パッド13との接続は、接合材15に半田等を使用して、従来周知のフリップ接続技術により行なってもよい。
【0044】
本実施形態では、発光素子20が発する光の波長のピークスペクトルが、例えば250〜395〔nm〕以下のUV光を発するLEDを採用している。つまり、本実施形態では、発光素子20としてUV−LED素子を採用している。なお、発光素子20は、従来周知の薄膜形成技術により形成される。
【0045】
そして、かかる発光素子20は、上述した封止材30によって封止されている。
【0046】
封止材30は、光透過性の樹脂材料等の絶縁材料より形成されており、発光素子20を良好に封止することにより、外部からの水分の浸入を防止したり、あるいは、外部からの衝撃を吸収し、発光素子20を保護したりする。
【0047】
また、封止材30は、発光素子20を構成する素子基板21の屈折率(サファイアの場合:1.7)空気の屈折率(約1.0)の間の屈折率を有する材料、例えばシリコーン樹脂(屈折率:約1.4)等より形成されることで、発光素子20の光の取り出し効率を向上させることができる。
【0048】
かかる封止材30は、発光素子20を基板10上に実装した後、シリコーン樹脂等の前駆体を開口部12に充填し、これを硬化させることで形成される。
【0049】
そして、光学レンズ16は、上述の封止材30上にレンズ接着剤17を介して発光素子20を覆うように配設される。本実施形態の光照射デバイスでは、光学レンズ16に平凸レンズを用いている。つまり、本実施形態の光学レンズ16は一方主面が凸状に、他方主面が平面状を成しており、他方主面から一方主面に向かって断面積は小さくなる。
【0050】
光学レンズ16は、例えばシリコーンなどによって形成され発光素子20から照射される光を集光する機能を有する。なお、光学レンズの材質としては、上に述べたシリコーン以外にウレタン、エポキシなどの熱硬化性樹脂、またはポリカーボネート、アクリルなどの熱可塑性樹脂などのプラスチック並びにサファイア並びに無機ガラスなどが挙げられる。
【0051】
また、光学レンズ16を配設しない場合でも、光照射デバイス1として機能する。しかし、光学レンズ16を使用すると集光性が上がり、発光素子20照度を比較的高くすることができる。よって、光学レンズ16を使用する方が好ましい。
【0052】
なお、本実施形態の光照射デバイス1では光学レンズ16として平凸レンズを用いたが、フレネルレンズ等のその他のレンズを必要に応じて選択すればよい。
【0053】
また、本実施形態の光照射デバイス1は複数の発光素子20を搭載しているが、搭載される発光素子20は1個であってもよい。
【0054】
次に、放熱部材2は、光照射デバイス1が使用により発する熱を放熱するための放熱用部材として機能する。複数の光照射デバイス1が放熱部材2に対してシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの接着剤3を介して縦横に接合される。この放熱部材2の形成材料としては、熱伝導率の大きい材料が好ましく、例えば種々の金属材料、セラミックス、樹脂材料が挙げられる。
【0055】
なお、本実施形態では光照射デバイス1は放熱部材2に対して樹脂系の接着剤を介して接合しているが、金属等の接合材を介して接合してもよく、ネジ止めにより両者を固定してもよい。
【0056】
放熱部材2は、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応して、光照射デバイス1に固定された複数の第1の放熱部材2aと、該複数の第1の放熱部材2aを共通に支持する第2の放熱部材2bとを備えている。
【0057】
第1の放熱部材2aは、光照射デバイス1を構成する基板10と略同形状である矩形状をなしている。そして、本実施形態の第1の放熱部材2aの光照射デバイス1と接合される一方主面の面積は、基板10の他方主面11bの面積よりも小さく形成されている。なお、第1の放熱部材2aの光照射デバイスと接合される一方主面の面積は、他方主面11bの面積と略同じであってもよいし、他方主面11bよりも大きくてもよい。
【0058】
また、第2の放熱部材2bは、複数の第1の放熱部材2aを共通に支持する支持体として機能するとともに、光照射デバイス1の使用により発した熱を放熱する放熱用部材としての機能を有する。第2の放熱部材2bには、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応した複数の第1の放熱部材2aが縦横に配設されている。ただし、隣り合う第1の放熱部材2aの間には間隙が設けられるように、隣り合う第1の放熱部材2aの配列ピッチや、第1の放熱部材2aの光照射デバイスと接合される一方主面の面積を調整する。
【0059】
なお、前記間隙は、本実施形態においては、個々の第1の放熱部材2aを取り囲むように平面視で格子状に形成されている。
【0060】
本実施形態の光照射モジュール100は、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応した第1の放熱部材2aを有することにより、光照射デバイス1の使用により熱が発生した場合でも、光照射モジュールの反り量を比較的小さく抑えることができる。
【0061】
その理由を以下に説明する。
【0062】
まず、放熱部材が従来の単に平板状の場合について検討する。光照射デバイス1が使用により発熱した場合には、放熱部材は平板の中心から外側に向かって一方向に膨張し、光照射デバイス1が低熱膨張係数のセラミックスなどの基板10で構成される場合には、光照射デバイス1と放熱部材の熱膨張差に起因して、光照射デバイス1と放熱部材との接合界面には比較的大きな熱応力が働く。結果として、光照射モジュール100は、光照射デバイス1の搭載面側に比較的大きな凹となる反りが発生する。
【0063】
それに対して、放熱部材が本実施形態のように第1の放熱部材2aおよび第2の放熱部材2bで構成される場合、第2の放熱部材2bは従来の放熱部材と同様、光照射デバイス1が使用により発熱した場合には、放熱部材は第2の放熱部材2bの中心から外側に向かって一方向に膨張するが、複数の光照射デバイス1にそれぞれ対応した第1の放熱部材2
aは、第1の放熱部材2aの中心から第1の放熱部材2aの外側に向かって膨張するため、光照射デバイス1と第1の放熱部材2aとの接合界面に働く熱応力は比較的小さなものとなると考えられる。結果として、光照射モジュール100は、光照射デバイス1の搭載面側に比較的小さな凹となる反りが発生するにとどまる。
【0064】
したがって、本実施形態の光照射モジュール100は、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応した第1の放熱部材2aを有することにより、光照射デバイス1の使用により熱が発生した場合でも、光照射モジュールの反り量を比較的小さく抑えることができることから、紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等を少なくし、安定して紫外線を照射することができる。
【0065】
さらに、本実施形態の光照射モジュール100は、隣接する第1の放熱部材2a間に間隙が設けられていることから、各光照射デバイス1と第1の放熱部材2aの間の熱応力が、隣接する光照射デバイス1や第1の放熱部材に与える影響を小さくすることができ、これによっても光照射デバイスの反りを低減できる。
【0066】
また、本実施形態の放熱部材2は、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応した、光照射デバイスに固定された複数の第1の放熱部材2aと、複数の第1の放熱部材2aを共通に支持する第2の放熱部材2bとを有する構成になっていることから、隣り合う第1の放熱部材2aの間には間隙が設けられることになる。このような構造となるため、本実施形態のように光照射デバイス1を放熱部材2に樹脂系の接着剤3を介して接合する場合に、接着剤3が横に流れ出したとしても、該接着剤3が隣り合う第1の放熱部材2aの間の間隙にも流れ込むことから、接着剤3が光照射デバイス1の発光素子20の搭載面の主面に被着することを防止することができる。接着剤3が光照射デバイス1の前記主面に被着した場合には、例えば、光照射デバイス1と放熱部材2の接合後に光学レンズ16の取り付けを行なう場合などに、接着剤3が光学レンズ16の取り付け工程での治工具等に付着したり、光照射デバイス1の主面の平坦性が確保できないことから、光学レンズ16の取り付け自体に不具合が発生する。
【0067】
本実施形態の光照射モジュール100では、放熱部材2aおよび放熱部材2bの形成材料に銅(Cu)を用いて放熱部材2を一体的に形成している。具体的には、板状の銅材に切削加工を施すことにより、第1の放熱部材2aと第2の放熱部材2bを形成している。なお、第1の放熱部材2aと、第2の放熱部材2bとをそれぞれ同一材料である銅(Cu)で個別に形成し、熱硬化性の樹脂系接着剤やはんだ等の金属接合材で接合してもよいし、溶接接合してもよいし、ネジ止めにより接合してもよい。
【0068】
(印刷装置の実施形態)
本発明の印刷装置の実施形態として、図4および図5に示した印刷装置200を例に挙げて説明する。この印刷装置200は、記録媒体250を搬送するための搬送機構210と、搬送された記録媒体250に印刷を行なうための印刷機構としてのインクジェットヘッド220と、印刷後の記録媒体250に対して紫外線を照射する、上述した光照射モジュール100と、該光照射モジュール100の発光を制御する制御機構230と、を備えている。ここで、記録媒体250は、上述の対象物に相当する。
【0069】
搬送機構210は、記録媒体250をインクジェットヘッド220、光照射モジュール100の順に通過するように搬送するためのものであり、載置台211と、互いに対向配置され、回転可能に支持された一対の搬送ローラ212とを含んで構成されている。この載置台211によって支持された記録媒体250を一対の搬送ローラ212の間に送り込み、該搬送ローラ212を回転させることにより、記録媒体250を搬送方向へ送り出すためのものである。
【0070】
インクジェットヘッド220は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に対して、感光性材料を付着させる機能を有している。このインクジェットヘッド220は、この感光性材料を含む液滴を記録媒体250に向けて吐出し、記録媒体250に被着させるように構成されている。本実施形態では、感光性材料として紫外線硬化型インクを採用している。この感光性材料としては、紫外線硬化型インクの他に、例えば感光性レジスト、光硬化型樹脂などが挙げられる。
【0071】
本実施形態では、インクジェットヘッド220としてライン型のインクジェットヘッドを採用している。このインクジェットヘッド220は、ライン状に配列された複数の吐出孔220aを有しており、この吐出孔220aから紫外線硬化型インクを吐出するように構成されている。インクジェットヘッド220は、吐出孔220aの配列に対して直交する方向に搬送される記録媒体250に対して、吐出孔220aよりインクを吐出させ、記録媒体にインクを被着させることにより、記録媒体に対して印刷を行なう。
【0072】
なお、本実施形態では、印刷機構として、ライン型のインクジェットヘッドを例に挙げたが、これに限られるものではなく、例えば、シリアル型のインクジェットヘッドを採用していてもよいし、ライン型又はシリアル型の噴霧ヘッドを採用してもよい。さらに、印刷機構として、記録媒体250の静電気を蓄え、かかる静電気で感光性材料を付着させる静電式ヘッドを採用してもよいし、記録媒体250を液状の感光性材料に浸して、かかる感光性材料を付着させる浸液装置を採用してもよい。さらに、印刷機構として刷毛、ブラシ、およびローラを採用してもよい。
【0073】
印刷装置200において光照射モジュール100は、搬送機構210を介して搬送される記録媒体250に付着した感光性材料を感光させる機能を担っている。この光照射モジュール100は、インクジェットヘッド220に対して搬送方向の下流側に設けられている。また、印刷装置200において発光素子20は、記録媒体250に付着した感光性材料を露光する機能を担っている。
【0074】
制御機構230は、光照射モジュール100の発光を制御する機能を担っている。この制御機構230のメモリには、インクジェットヘッド220から吐出されるインク滴を硬化するのが比較的良好になるような光の特徴を示す情報が格納されている。この格納情報の具体例を挙げると、吐出するインク滴を硬化するのに適した波長分布特性、および発光強度(各波長域の発光強度)を表す数値が挙げられる。本実施形態の印刷装置200では、この制御機構230を有することによって、制御機構230の格納情報に基づいて、複数の発光素子20に入力する駆動電流の大きさを調整することもできる。このことから、印刷装置200によれば、使用するインクの特性に応じた適正な光量で光を照射することができ、比較的低エネルギーの光で、インク滴を硬化させることができる。
【0075】
この印刷装置200では、搬送機構210が記録媒体250を搬送方向に搬送している。インクジェットヘッド220は、搬送されている記録媒体250に対して紫外線硬化型インクを吐出して、記録媒体250の表面に紫外線硬化型インクを付着させる。このとき、記録媒体250に付着させる紫外線硬化型インクは、全面付着であっても、部分付着であっても、所望パターンでの付着であってもよい。この印刷装置200では、記録媒体250に付着した紫外線硬化型インクに光照射モジュール100の発する紫外線を照射して、紫外線硬化型インクを硬化させている。
【0076】
本実施形態の印刷装置200は、光照射モジュール100の有する効果を享受することができる。本実施形態の印刷装置200では、光照射モジュール100は、複数の光照射デバイス1のそれぞれに対応した第1の放熱部材2aを有することにより、光照射デバイ
ス1の使用により熱が発生した場合でも、光照射モジュールの反り量を比較的小さく抑えることができることから、紫外線照射領域の縮小や紫外線の焦点のずれ等を少なくし、安定して紫外線を照射することができる。
【0077】
以上、本発明の具体的な実施形態を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
【0078】
例えば、本実施形態では、接着剤3により接合される部材は光照射デバイス1と第1の放熱部材2a以外は特に限定していないが、隣り合う光照射デバイス1同士や隣り合う第1の放熱部材2a同士を接合してもよく、接着剤3が光照射デバイス1を構成する基板10の端面の少なくとも一部を覆うようにしてもよい。このような構成とすることで、光照射デバイス1は、光照射デバイス1の基板10の他方主面11bと端面を覆うように3次元的に接着剤3を介して放熱部材2と接合されることにより、光照射デバイス1と放熱部材2との接着強度を比較的高くすることができる。
【0079】
また、本実施形態の第1の放熱部材2aおよび第2の放熱部材2bは銅の同一材料で形成されているが、第1の放熱部材2aの熱膨張係数は基板10の熱膨張係数よりも大きく、第2の放熱部材2bの熱膨張係数は第1の放熱基板2bの熱膨張係数よりも大きくしてもよい。例えば、基板10の材料はアルミナセラミックス(熱膨張係数=約6ppm/℃)、第1の放熱部材2aの材料は銅−タングステン(熱膨張係数=約8ppm/℃)、そして第2の放熱部材2bの材料は銅(熱膨張係数=約16ppm/℃)の場合が相当する。このような構成とすることにより、光照射デバイス1と放熱部材2aとの接合界面に働く熱応力を比較的小さなものとすることができることから、光照射モジュール100の反り量を比較的小さくすることができる。
【0080】
さらに、図6に示すように、本実施形態の第1の放熱部材2a同士をさらに別の接合部材70で接合してもよい。接合部材70の材質、配設位置、体積を適宜調整することで、使用により光照射デバイス1が発熱した場合の光照射モジュール100の反り量を調整することが可能となる。接合部材70は第1の放熱部材2aと同一材料であってもよいし、第2の放熱部材2bと同一であってもよいし、第1の放熱部材2aおよび第2の放熱部材2bと異なる材料であってもよい。
【0081】
なお、接合部材70は、第1の放熱部材2aおよび第2の放熱部材2bと同一材料の場合は、切削加工等により一体的に形成してもよいし、接合部材70を別途準備して第1の放熱部材2aまたは第1の放熱部材および第2の放熱部材2bの双方と樹脂系の接着剤、金属系の接合材で接合したり、溶接してもよいし、ネジ止め固定してもよい。
【0082】
またさらに、放熱部材2には、冷媒を流すための流路を設けてもよい。該流路に冷媒を流すことにより、放熱効果をさらに高めることができる。
【0083】
さらに、印刷装置200の実施形態は、以上の実施形態に限定されない。例えば、軸支されたローラを回転させ、このローラ表面に沿って記録媒体を搬送する、いわゆるオフセット印刷型のプリンタであってもよく、同様の効果を奏する。
【0084】
本実施形態では、インクジェットヘッド220を用いた印刷装置200に光照射モジュール100を適用した例を示しているが、この光照射モジュール100は、例えば対象体表面にスピンコートした光硬化樹脂を硬化させる専用装置など、各種類の光硬化樹脂の硬化にも適用することができる。また、光照射モジュール100を、例えば、露光装置における照射光源などに用いてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 光照射デバイス
2 放熱部材
2a 第1の放熱部材
2b 第2の放熱部材
3 接着剤
10 基板
11a 一方主面
11b 他方主面
12 開口部
13 接続パッド
14 内周面
15 接合材
16 光学レンズ
17 レンズ接着剤
20 発光素子
21 素子基板
22 半導体層
23、24 素子電極
30 封止材
40 積層体
41 第1の絶縁層
42 第2の絶縁層
60 電気配線
70 接合部材
100 光照射モジュール
200 印刷装置
210 搬送機構
211 載置台
212 搬送ローラ
220 インクジェットヘッド
220a 吐出孔
230 制御機構
250 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光照射デバイスと、放熱部材とを備えており、
該放熱部材は、前記複数の光照射デバイスのそれぞれに対応した、該光照射デバイスに固定された複数の第1の放熱部材と、該複数の第1の放熱部材を共通に支持する第2の放熱部材とを有することを特徴とする光照射モジュール。
【請求項2】
前記複数の第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とが、一体的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光照射モジュール。
【請求項3】
前記光照射デバイスは、基板と該基板に配設された発光素子とを有し、
前記複数の光照射デバイスと前記複数の第1の放熱部材とがそれぞれ接着剤で接合され、該接着剤は、さらに隣接する光照射デバイス同士および第1の放熱部材同士を接合しているとともに、接合した前記基板の端面の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光照射モジュール。
【請求項4】
前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光照射モジュール。
【請求項5】
前記基板の熱膨張係数よりも前記第1の放熱部材の熱膨張係数が大きく、前記第1の放熱部材の熱膨張係数よりも前記第2の放熱部材の熱膨張係数が大きいことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光照射モジュール。
【請求項6】
隣接する前記第1の放熱部材同士を部分的に接合する接合部材をさらに有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の光照射モジュール。
【請求項7】
前記接合部材と前記第1の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする請求項6に記載の光照射モジュール。
【請求項8】
前記接合部材と前記第2の放熱部材とが同一材料からなることを特徴とする請求項6に記載の光照射モジュール。
【請求項9】
前記放熱部材には、冷媒を流すための流路が設けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光照射モジュール。
【請求項10】
光透過性を有する記録媒体を搬送する搬送手段と、
前記記録媒体に対して光硬化型インクまたは光硬化型樹脂を印刷する印刷手段と、
印刷された前記記録媒体に対して光を照射する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光照射モジュールとを有することを特徴とする印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−205984(P2012−205984A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72080(P2011−72080)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】