説明

光照射装置及び光照射方法

【課題】光照射装置から無駄に消費されるエネルギーを再利用できるようにすること。
【解決手段】光照射装置10は、接着シートSに相対する位置に設けられ、紫外線を接着シートSに向かって発する発光手段15を備えている。光照射装置10には、第1〜第3変換手段41〜43が設けられている。第1変換手段41は、発光手段15から照射された紫外線を電力に変換する紫外線太陽電池により構成される。第2変換手段42は、発光手段15から伝播される熱を電力に変換する熱電発電素子により構成される。第3変換手段43は、換気手段18から吹き出される送風の風力を電力に変換する風力発電ユニットにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置及び光照射方法に係り、更に詳しくは、光照射装置から発せられるエネルギーを再利用することができる光照射装置及び光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する場合がある)の処理装置においては、ウエハの回路面に保護用の接着シートを貼付して裏面研削等の処理が行われる。このような処理に使用される接着シートには、接着剤に紫外線硬化型(光反応型)のものが採用されており、上記のような処理の後、光照射装置により紫外線を照射し、接着剤を硬化させることによって接着力を弱めて、ウエハが破損しないように容易に剥離が行えるようになっている。
【0003】
前記光照射装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1における光照射装置は、ウエハに貼付された被照射体となる接着シートに紫外線を照射する発光手段と、この発光手段と接着シートとの間に設けられ、それらの間に開閉可能なシャッターとを備えている。発光手段は、水銀ランプ等が用いられ、発光を開始してから必要なエネルギーを発するまでに長い時間を要するため、発光手段での発光を継続して行いつつ、紫外線照射時にだけシャッターを開いて紫外線を照射するようになっている。
【0004】
特許文献2における光照射装置は、水銀灯からなる発光手段と、この発光手段の熱を排熱するための遠心ファンとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−281430号公報
【特許文献2】特開2006−173450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の光照射装置では、ウエハを搬入してから紫外線を照射し、当該ウエハを搬出して次のウエハを搬入するまでのウエハ1枚当たりの処理時間(1サイクル)に対し、ウエハに紫外線を照射する時間が約1/6程度と短いにも拘らず、発光手段は、発光を継続して行うため、当該光照射装置が発するエネルギーを殆ど(約5/6)を無駄に消費してしまっている、という不都合がある。更に、上流の装置に何か不具合が発生し、処理されるウエハが搬入されない場合であっても、光照射装置は常にエネルギーを消費している。ここで、ウエハに紫外線を照射しない時間だけ、供給する電力を半分にする場合もあるが、この場合であっても、光照射装置が発するエネルギーを殆ど無駄に消費してしまっていることに変わりはない。
【0007】
また、特許文献2の光照射装置では、遠心ファンを継続して稼働するので、それに要する電力消費の無駄もある。
【0008】
[発明の目的]
本発明の目的は、光照射装置から無駄に消費されるエネルギーを再利用することができる光照射装置及び光照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、被照射体に相対する位置に発光手段を有する光照射装置において、前記光照射装置が発する第1エネルギーを、当該第1エネルギーとは異なる第2エネルギーに変換可能なエネルギー変換手段を有する、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記第1エネルギーは前記発光手段が発する光とすることができる。
【0011】
また、前記第1エネルギーは前記発光手段が発する熱とすることもできる。
【0012】
更に、前記光照射装置は、前記発光手段が発する熱を光照射装置の外部に排出する換気手段を備え、
前記第1エネルギーは前記換気手段が発する風力である、という構成を採ってもよい。
【0013】
また、前記変換手段は、前記第2エネルギーとして電力に変換可能に設けられる、という構成を採ることが好ましい。
【0014】
更に、本発明の光照射方法は、被照射体に相対する位置に発光手段を有する光照射装置が発する第1エネルギーを、当該第1エネルギーとは異なる第2エネルギーに変換して使用する、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光照射装置が発する第1エネルギーをエネルギー変換手段により第2エネルギーに変換するので、例えば、被照射体へ光を照射する前後の待機時間において発せられた光である第1エネルギーを電力等の第2エネルギーに変換することが可能となる。また、光照射装置が作動している間における発光により発光手段自体が発する熱、換気手段の送風による風力等の第1エネルギーを電力等の第2エネルギーに変換することが可能となる。つまり、従来殆ど無駄に消費されたエネルギーを他のエネルギーに変換して再利用することができ、ひいては、変換されたエネルギーを当該光照射装置に再利用すれば、エネルギーの消費の少ない光照射装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る光照射装置を一部断面視した概略正面図。
【図2】第2実施形態に係る光照射装置を一部模式化した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「エネルギー」は、光、熱、風力、電力、動力等を含む諸量とされ、「光」は、紫外線を含む不可視光線の他、可視光線も含む概念として用いる。
また、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」は、図1を基準として用いる。
【0018】
[第1実施形態]
図1において、第1実施形態に係る光照射装置10は、底壁11A、頂壁11B及び側壁11Cを有するケース11と、底壁11Aの上面側に設けられるとともに、被照射体としての接着シートSが回路面(上面)に貼付されたウエハWを保持する保持手段13と、頂壁11Bの下面側に設けられた発光手段15と、発光手段15と保持手段13との間に設けられたシャッター16と、頂壁11Bに設けられた換気手段18とを備えている。接着シートSは、紫外線によってその接着力が低下する紫外線硬化型の接着シートSとされる。
【0019】
前記保持手段13は、上面側が吸着面として形成されたテーブルからなり、マウント用テープMTを介してリングフレームRFと一体化されたウエハWがマウント用テープMT側から吸着されて保持されている。保持手段13は、底壁11A上に設けられた駆動機器としての直動モータ20のスライダ20Aを介して左右方向に移動可能に設けられている。従って、保持手段13は、ウエハWに貼付された接着シートSが発光手段15の直下で相対する位置と、ケース11の開口11Dを通じて当該ケース11の外部にウエハWを表出させた位置(図1中二点鎖線参照)との間で移動可能となる。
【0020】
前記発光手段15は、紫外線ランプにより構成され、下方に配置された接着シートSに向かって第1エネルギーとしての紫外線を発するようになっている。この紫外線により、接着シートSの接着剤層が硬化され、その接着力を弱めてウエハWから接着シートSを容易に剥離できるようになる。発光手段15の両端側は、電極等を有する取付部22にそれぞれ取り付けられている。発光手段15は、頂壁11Bの下面に設けられた駆動機器としての直動モータ23のスライダ23Aを介して図1中紙面直交方向に移動可能に設けられている。スライダ23Aには、フレーム24が設けられ、このフレーム24の下面側に各取付部22の上端部が連結されている。
【0021】
前記シャッター16は、発光手段15から発せられる紫外線を遮光し、紫外線がケース11の開口11D通じて外方に漏れないように設けられている。シャッター16は、図示しないフレームを介してケース11に取り付けられた駆動機器としての直動モータ27のスライダ27Aを介して左右方向に移動可能に設けられている。従って、シャッター16は、発光手段15の下方位置と、当該下方位置から側方(左方)に退避した位置との間で移動可能となる。
【0022】
前記換気手段18は、頂壁11Bに設けられたダクト30と、このダクト30を通じてケース11内の空気を吸引し、ケース11外に排気可能なファン31とを備え、ファン31を作動することによって発光手段15が発する熱を光照射装置10の外部に排出できるようになっている。なおケース11には図示しない吸気口が設けられている。
【0023】
ここで、前記光照射装置10には、エネルギー変換手段としての第1〜第3変換手段41〜43が設けられている。第1変換手段41は、シャッター16の上面に設けられた紫外線太陽電池により構成され、発光手段15から照射された紫外線を第2エネルギーとしての電力に変換可能に設けられている。第2変換手段42は、フレーム24の下面側に設けられた熱電発電素子により構成され、取付部22や空気を介して発光手段15から伝播される熱を第2エネルギーとしての電力に変換可能に設けられている。熱電発電素子としては、特開2006−228991号公報に示される構成が例示できる。第3変換手段43は、ファン31の左側に設けられた風力発電ユニットにより構成され、ファン31から吹き出される風力を第2エネルギーとしての電力に変換可能に設けられている。第1〜第3変換手段41〜43は、図示しないケーブルによって本光照射装置10の電源、他の装置の電源、蓄電池等に接続可能になっている。
【0024】
以上の構成において、接着シートSを剥離すべく当該接着シートSに紫外線を照射する場合、保持手段13をケース11外に移動させてリングフレームRFと一体化されたウエハWを保持手段13上に吸着保持させた後、当該保持手段13をケース11内に移動させる。そして、発光手段15の下方からシャッター16を退避させ、直動モータ23によって発光手段15を図1中紙面直交方向に移動させて接着シートSに紫外線を照射する。その後、シャッター16を再度移動して紫外線照射を遮光し、保持手段13をケース11外に移動させて紫外線照射済みのウエハWを外部へ搬送する。そして、以後同様の処理が繰り返し行われる。この処理の間および処理が行われない間において、発光手段15は、必要なエネルギーを発するまでに長い時間を要するため、常時紫外線を照射し続けるように設定され、ファン31も常時換気を行うように設定されている。そこで第1変換手段41は、発光手段15が発光する紫外線によって発電を行い、第2変換手段42は、発光手段15が発する熱によって発電を行い、第3変換手段43は、ファン31が発する風によって発電を行うようになっている。
【0025】
従って、このような第1実施形態によれば、従来では殆ど無駄に消費されていた紫外線や熱、風力といった第1エネルギーを第1〜第3変換手段41〜43によって電力に変換して得ることが可能となる。これにより、本光照射装置10から無駄に消費されるエネルギーを再利用することができる。また、変換した電力を直接利用したり、図示しない蓄電手段に蓄電して必要なときに利用したりすることにより、エネルギーを有効利用することができ、例えば、変換した電力を本光照射装置10を構成する各駆動機器へ供給することにより、エネルギーの消費の少ない光照射装置10を提供することが可能となる。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る光照射装置について、図2を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略する。
【0027】
第2実施形態のエネルギー変換手段としての第4変換手段44は、ファン31の送風により回転可能なプロペラ等からなる回転部材51と、この回転部材51の回転を図2において模式化した動力伝達機構52を介して伝達する3体の電磁クラッチ53〜55とを備えている。動力伝達機構52は、ギヤやシャフト、プーリ、ベルト等を組み合わせた公知の構造が採用され、回転部材51が回転中常時回転している。保持手段13、シャッター16、フレーム24は、第1実施形態のスライダ20A、23A、27Aに代え、スクリューねじ57〜59に連結され、当該スクリューねじ57〜59には、スクリューシャフト61〜63がそれぞれ螺合されている。各スクリューシャフト61〜63は、電磁クラッチ53〜55にそれぞれ接続され、必要なときに電磁クラッチ53〜55を介して動力伝達機構52に接続されて回転可能とされ、この回転によって第1実施形態のスライダ20A、23A、27Aと同方向にスクリューねじ57〜59を移動可能に設けられている。
【0028】
従って、このような実施形態によれば、第4変換手段44によりファン31の風力を動力に変換して再利用でき、第1実施形態の直動モータ20、23、27を作動させる分の電力消費を削減することが可能となる。なお、回転部材51を介さずに動力伝達機構52を直接的、又は、ギヤやシャフト、プーリ、ベルト等を介して間接的にファン31の出力軸に接続するように構成し、第5変換手段としてもよい。
【0029】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0030】
例えば、被照射体は、感熱接着性の接着シートとしてもよく、この場合、発光手段は、赤外線等を発光して接着シートに熱を発してもよい。この場合、第1変換手段41は、赤外線等によって発電するものに変更すればよい。
【0031】
また、接着シートSが貼付される被着体はウエハWに限定されることなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他のものも対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
更に、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0032】
10 光照射装置
15 発光手段
18 換気手段
41 第1変換手段(エネルギー変換手段)
42 第2変換手段(エネルギー変換手段)
43 第3変換手段(エネルギー変換手段)
44 第4変換手段(エネルギー変換手段)
51 回転手段(エネルギー変換手段)
S 接着シート(被照射体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体に相対する位置に発光手段を有する光照射装置において、前記光照射装置が発する第1エネルギーを、当該第1エネルギーとは異なる第2エネルギーに変換可能なエネルギー変換手段を有することを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記第1エネルギーは前記発光手段が発する光であることを特徴とする請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
前記第1エネルギーは前記発光手段が発する熱であることを特徴とする請求項1又は2記載の光照射装置。
【請求項4】
前記光照射装置は、前記発光手段が発する熱を光照射装置の外部に排出する換気手段を備え、
前記第1エネルギーは前記換気手段が発する風力であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の光照射装置。
【請求項5】
前記変換手段は、前記第2エネルギーとして電力に変換可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の光照射装置。
【請求項6】
被照射体に相対する位置に発光手段を有する光照射装置が発する第1エネルギーを、当該第1エネルギーとは異なる第2エネルギーに変換して使用することを特徴とする光照射方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−30157(P2012−30157A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170410(P2010−170410)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】