説明

光硬化性インクジェット用インク

【課題】少ない光照射エネルギーで硬化し、高精細なパターンを形成できる光硬化性インクジェット用インクが求められている。また、光硬化性インクジェット用インクを用いて、フレキシブル基板上にも形成できる柔軟性を有する膜が形成することが求められている。
【解決手段】光重合開始剤と熱硬化性官能基を有する重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インクにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光硬化性インクジェット用インクに関し、具体的には、本発明は液晶表示素子、EL表示素子、プリント配線基板などを製造するために用いられる光硬化性インクジェット用インクに関する。さらに本発明は、光硬化性インクジェット用インクを用いたインク塗布方法、光硬化性インクジェット用インクにより得られる硬化膜、硬化膜形成方法、および、硬化膜が形成された電子回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
パターン化された硬化膜は、例えば、スペーサー、絶縁膜、保護膜など液晶表示素子の多くの部分で使用されており、これまでに多くの光硬化性組成物がこの用途に提案されてきた(例えば、特開2004−287232号公報(特許文献1)を参照)。光硬化性組成物を用いてパターン化された硬化膜を作成する方法としては、所望のパターンを有するマスクを介して紫外線を照射し、紫外線の当たっていない部分を現像により除去する、フォトリソグラフィ法が一般的である。
しかしながら、この方法では露光機、現像機等を備えた専用ラインが必要であり、設備投資も大きな金額になる。
【0003】
このような状況の下、近年では設備投資金額が少ない、現像液を使用しない、材料の使用効率が高い等の長所を持つインクジェット法が提案され、これに使用する組成物(インクジェット用インク)も提案されている(例えば、特開2003−302642号公報(特許文献2)を参照)。また、インクジェット法に使用される光硬化性インクジェト用インクも提案されている(例えば、WO2004/099272号パンフレット(特許文献3)、特開2006−282757号公報(特許文献4)、特開2006−307152号公報(特許文献5)等を参照)。
【0004】
インクジェット法に使用される光硬化性インクジェト用インクを硬化させるため照射される光としては、超高圧水銀灯から発せられる紫外線が一般的であるが、近年はエネルギー効率が高く、装置が安価なLED光源の使用が検討されている。
【0005】
しかしながら、従来の光硬化性インクジェット用インクは、超高圧水銀灯から発せられる紫外線(波長が約365nm)には高感度であるが、LED光源から照射される紫外線(波長が約395nm〜420nm)に対しては感度が十分ではなかった。
【0006】
したがって、従来の光硬化性インクジェット用インクにLED光源から照射される紫外線を照射しても、当該インクは十分硬化せず、インク滴が基板に着弾した後に液が広がってしまい、高精細なパターンが形成できないという問題があった。
【特許文献1】特開2004−287232号公報
【特許文献2】特開2003−302642号公報
【特許文献3】WO2004/099272号パンフレット
【特許文献4】特開2006−282757号公報
【特許文献5】特開2006−307152号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の状況の下、例えば、少ない光照射エネルギーで硬化する(高感度)光硬化性インクジェット用インクが求められている。高精細なパターンを形成できる光硬化性インクジェット用インクが求められている。
また、光硬化性インクジェット用インクを用いて、フレキシブル基板上にも形成できる柔軟性を有する膜が形成することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、特定の構造を有する光重合開始剤と特定の構造を有する重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インクを見出し、この知見に基づいて本発明を完成した。
本発明は以下のようなインクジェット用インク等を提供する。
【0009】
[1] 下記式(2)または下記式(3)
【化17】

(式中、R〜R15はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜5のアルキルまたは置換基を有してよいフェニルである。)
で表される光重合開始剤と、
熱硬化性官能基を有する重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インク。
[2] 式(2)および式(3)中、R〜R15はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルである、[1]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
[3] 熱硬化性官能基が、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、アルコキシ、オキシラン、オキセタンから選ばれる1以上である、[1]または[2]に記載の光硬化性インクジェット用インク
[4] 熱硬化性官能基を有する重合性モノマーがラジカル重合性二重結合を1つ有するモノマーである、[1]〜[3]のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0010】
[5] 熱硬化性官能基を有する重合性モノマーが、下記式(11)
【化18】

[式(11)中、R16は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R17は炭素数1〜3のアルキルまたは水素であり、nは0〜30の整数であり、R18は水素または式(11A)〜(11C)で表される基のいずれかである。また、式(11A)〜(11C)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜5のアルキルである。]
で表される化合物または下記式(12)
【化19】

[式(12)中、R16は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R17は炭素数1〜3のアルキルまたは水素であり、nは1〜30の整数であり、R19は式(12A)〜(12E)で表される基のいずれかである。また、式(12A)〜(12E)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜5のアルキルである。]
で表される化合物である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
[6] 式(11)中、R16はエチレン、プロピレン、ブチレンまたは下記式(B)で表される基であり、R17は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数であり、R18は水素であり、
式(12)中、R16はエチレン、プロピレン、ブチレンまたは下記式(B)で表される基であり、R17は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数であり、R19は式(12A)〜(12E)で表される基のいずれかであり、式(12A)〜(12E)中、Rはそれぞれ独立して水素またはメチルで表される基である、[5]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化20】

[7] 下記式(2)
【化21】

(式(2)中、R、R3、R5、R6、R8およびR10がメチルであり、R2、R4、R7、R9、R11、R12、R13、R14およびR15が水素である。)
または下記式(3)
【化22】

(式(3)中、R6、R8およびR10がメチルであり、R、R2、R3、R4、R5、R7、R9、R11、R12、R13、R14およびR15が水素である)
で表される光重合開始剤と
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選ばれる1以上である重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インク。
【0011】
[8] さらに、二官能(メタ)アクリレートを含む、[1]〜[7のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
[9] 二官能(メタ)アクリレートが、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、[8]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0012】
[10] さらに、アルケニル置換ナジイミド化合物を含む、[1]〜[9]のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
[11] アルケニル置換ナジイミド化合物(A)が下記式(20)で表される化合物である、[10]に記載のインクジェット用インク。
【化23】

(式(20)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルであり、R20は炭素数1〜300の有機基であり、nは1〜4の整数である。
[12] アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(21)で表される化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化24】

[式(21)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかであり、R23は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−{(CH(CH(CHX}(式中、q、rおよびsはそれぞれ独立して2〜6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数、Xは水素または−OHである)で表される基、−(R)−C−R(式中、aは0または1の整数、Rは炭素数1〜4のアルキレン、Rは水素または炭素数1〜4のアルキルである)で表される基、下記式(A)
【化25】

(式中、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−S−または−SO−である)で表される基またはこれらの基の芳香環に直結した1〜3個の水素が−OHで置換された基である。]
[13] アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(22)で表される化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化26】

[式(22)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
24が炭素数2〜15のアルキレン(アルキレン中の互いに隣接しない任意のメチレン基は−O−または−CH=CH−で置き換えられていてもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい)、式(22A)で表される基、式(22B)で表される基、式(22C)で表される基、式(22D)で表される基または式(22E)で表される基であり、
式(22A)及び(22C)中、Rは、−CH−、−CHCH−、−O−、−C(CH−、−C(CF−または−SO−であり、式(22C)中、Xは、それぞれ独立して−CH−または−O−であり、式(22D)中、xはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。]
[14] アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(23)で表される化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化27】

[式(23)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R25が、式(23A)で表される基、式(23B)で表される基または式(23C)で表される基であり、
式(23A)中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは−OHであり式(23C)中、R’はそれぞれ独立して1,2−エチレンまたは1,4−ブチレンである。]
[15] アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(24)で表される化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化28】

[式(24)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R26が、式(24A)で表される基である。)]
[16] アルケニル置換ナジイミド化合物が、モノアミン、ジアミン、トリアミンまたはテトラアミンと下記式(25)で表される化合物とを反応させて得られる化合物である、[10]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化29】

(式(25)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかである。)
【0013】
[17] さらに、少なくとも1種のビスマレイミド化合物を含む[1]〜[16]のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
[18] ビスマレイミド化合物が下記式(30)で表される化合物である、[17]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化30】

(式(30)中、Rは炭素数2〜30の2価の有機基である)
また、式(30)中のRは、置換基を有してもよい炭素数6〜30のアリーレン、炭素数6〜30のポリアリーレン(各アリーレンの間はOまたは炭素数1〜5のアルキレンで中断されてもよい)であることが好ましい。
[19] 式(30)中、Rが下記式で表される基からなる群から選ばれる、[18]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化31】

【0014】
[20] さらに、エポキシ樹脂を含む、[1]〜[19]のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
[21] エポキシ樹脂が下記式(4)
【化32】

で表される化合物である、[20]に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【0015】
[22] [1]〜[21]のいずれかに記載された光硬化性インクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布してから乾燥させて塗膜を形成する工程、および、当該塗膜に光を照射することによって硬化膜を形成する工程を含むインク塗布方法。
[23] [22]に記載のインク塗布方法を用いて硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
[24] [23]に記載された硬化膜形成方法を用いて基板上に硬化膜が形成された電子回路基板。
[25] [24]に記載された電子回路基板を有する電子部品。
[26] [23]に記載された硬化膜形成方法を用いて形成された硬化膜を有する表示素子。
【0016】
なお、本明細書中、アクリレートとメタクリレートの両者を示すために「(メタ)アクリレート」のように表記することがある。
【0017】
本明細書中、「炭素数1〜300の有機基」とは特に限定されるものではないが、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜300の炭化水素が挙げられる。
有機基としては、具体的には、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルコキシ、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリールオキシ、置換基を有していてもよいアミノ、置換基を有していてもよいシリル、置換基を有していてもよいアルキルチオ(−SY、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルを示す。)、置換基を有していてもよいアリールチオ(−SY、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)、置換基を有していてもよいアルキルスルホニル(−SO、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキルを示す。)、置換基を有していてもよいアリールスルホニル(−SO、式中、Yは置換基を有していてもよい炭素数6〜18のアリールを示す。)が挙げられる。
【0018】
本明細書中、「炭素数1〜12のアルキル」は、炭素数1〜10のアルキルであることが好ましく、炭素数1〜6のアルキルであることが更に好ましい。アルキルの例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
【0019】
本明細書中、「炭素数3〜6のアルケニル」の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
【0020】
本明細書において、「炭素数5〜8のシクロアルキル」の例としては、制限するわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0021】
本明細書において、「炭素数6〜12のアリール」としては、制限するわけではないが、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、インデニル、ビフェニリル、アントリル、フェナントリル等を挙げることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクは、例えば、波長が約395nmの紫外線に比較的高感度でありインクジェットヘッドから吐出された着弾後の液滴の広がりが少ない。これによって、本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクを用いると高精細なパターンを形成できる。
また、本発明の好ましい態様に係るインクジェット用インクを用いると、フレキシブル基板上にも形成できる柔軟性を有する硬化膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
1 本発明の光硬化性インクジェット用インク
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、少なくとも上記式(2)または上記式(3)で表される化合物である光重合開始剤と、ヒドロキシを有する重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インクである。
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、上記式(2)または上記式(3)で表される化合物である光重合開始剤と、ヒドロキシを有する重合性モノマーとを含めば特に限定されないが、さらに、エポキシ樹脂、溶媒、重合禁止剤、アルカリ可溶性ポリマー、着色剤等を混合または溶解することにより得ることができる。
【0024】
1.1 光重合開始剤
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、少なくとも上記式(2)または上記式(3)で表される化合物である光重合開始剤を含む。
上記式(2)または上記式(3)中、R〜R15はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜5のアルキルまたは置換基を有してよいフェニルである。
【0025】
本明細書において、「炭素数1〜5のアルキル」の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル等を挙げることができる。
【0026】
また、「置換基を有してよいフェニル」における置換基の例としては、制限するわけではないが、C〜C10炭化水素(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、ナフチル、インデニル、トリル、キシリル、ベンジル等)、C〜C10アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等)、C〜C10アリールオキシ(例えば、フェニルオキシ、ナフチルオキシ、ビフェニルオキシ等)、アミノ、−OH、ハロゲン(例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)又はシリルなどを挙げることができる。この場合、置換基は、置換可能な位置に1個以上導入されていてもよく、好ましくは1個〜4個導入されていてもよい。置換基数が2個以上である場合、各置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0027】
本発明で用いられる光重合開始剤は、1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。したがって、本発明で用いられる光重合開始剤は、式(2)で表される2種以上の化合物の混合物であってもよいし、式(3)で表される2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0028】
また、本発明で用いられる光重合開始剤は、式(2)または式(3)の化合物以外の化合物を光重合開始剤として含んでもよい。すなわち、本発明のインクジェット用インクは、光重合開始剤として、式(2)または式(3)の化合物とそれ以外の化合物とを併用することができる。
【0029】
式(2)または式(3)の化合物と併用することができる光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、キサントン、チオキサントン、イソプロピルキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−エチルアントラキノン、アセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−4’−イソプロピルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、イソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、カンファーキノン、ベンズアントロン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4,4’−ジ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,4,4’−トリ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2−(4’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’,4’−ジメトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2’−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−ペンチルオキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、4−[p−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)]−2,6−ジ(トリクロロメチル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(2’−クロロフェニル)−s−トリアジン、1,3−ビス(トリクロロメチル)−5−(4’−メトキシフェニル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2−(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(4−エトキシカルボニルフェニル)−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジブロモフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、3−(2−メチル−2−ジメチルアミノプロピオニル)カルバゾール、3,6−ビス(2−メチル−2−モルホリノプロピオニル)−9−n−ドデシルカルバゾール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が挙げられる。
【0030】
本発明で用いる光重合開始剤は、重合性モノマー100重量部に対し1〜50重量部含まれると、本発明の光硬化性インクジェット用インクが高感度となるから好ましい。さらに光重合開始剤が重合性モノマー100重量部に対し3〜40重量部含まれると、本発明の光硬化性インクジェット用インクから形成されるパターンの柔軟性が高くなるので好ましい。
【0031】
また、本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる光重合開始剤において、式(2)および式(3)で表される化合物の割合が20重量%以上であると、波長が約395nm〜420nmの紫外線に対して高感度となり好ましく、上記割合が50重量%以上であると、さらに好ましい。
【0032】
1.2 本発明の重合性モノマー
本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる重合性モノマーは、熱硬化性官能基を有する重合性の化合物を含めば特に限定されない。
本発明の光硬化性インクジェット用インクに必ず含まれる熱硬化性官能基を有する重合性モノマーは、官能基(炭素間二重結合、炭素間三重結合を含む)を少なくとも1つ有することが好ましく、これらの中でも炭素間二重結合または炭素間三重結合を1つ以上有することが好ましい。
【0033】
熱硬化性官能基はヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、アルコキシ、オキシラン、オキセタンから選ばれる1以上であることが好ましいが、これらの中でも、ヒドロキシまたはカルボキシルが好ましい。
【0034】
本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる、熱硬化性官能基としてヒドロキシを有する重合性モノマーは、ラジカル重合性二重結合を1つ有するモノマーが好ましく、1つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーがさらに好ましい。ヒドロキシと1つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0035】
本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる、熱硬化性官能基としてヒドロキシを有し、2つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート等を挙げることができる
【0036】
本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる、熱硬化性官能基としてヒドロキシを有し、3つ以上の炭素間二重結合を有する重合性モノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0037】
これらの熱硬化性官能基としてヒドロキシを有する重合性モノマーの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートを用いると、光硬化性インクジェット用インクから形成されるパターンの柔軟性が高く、基板への密着性も良好となるので好ましい。
【0038】
本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる、熱硬化性官能基としてカルボキシルを有する重合性モノマーの具体例としては、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチルマレイン酸等を挙げることができる。
【0039】
本発明で用いられる熱硬化性官能基を有する重合性モノマーは、1種のモノマーであっても、2種以上の異なるモノマーの混合物であってもよい。たとえば、本発明で用いられる熱硬化性官能基を有する重合性モノマーは、ヒドロキシを有する重合性モノマーとヒドロキシ以外の熱硬化性官能基(たとえばカルボキシル)を有する重合性モノマーとの混合物であってもよい。
【0040】
1.3 二官能(メタ)アクリレート
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、さらに二官能(メタ)アクリレートを含んでもよい。
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、重合性モノマーとして、さらに、炭素間二重結合を二つ有する重合性モノマーである二官能(メタ)アクリレートとを共に含むと、当該インクは、波長が約395nm〜420nmの紫外線に対して高感度となり、かつ、インクを硬化させて得られた硬化膜が柔軟性を有するため好ましい。光硬化性インクジェット用インクは、重合性モノマーとしてヒドロキシを有するラジカル重合性二重結合を1つ有するモノマーと二官能(メタ)アクリレートとを含むことがさらに好ましい。
【0041】
本発明の光硬化性インクジェット用インクにおいて、熱硬化性官能基を有する重合性モノマーと共に用いると好ましい二官能(メタ)アクリレートの具体例として、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジアクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート等を挙げることができる。二官能(メタ)アクリレートは重合性モノマー全体の20〜80重量%であると高感度と柔軟性のバランスがよいので好ましい。
【0042】
また、光硬化性インクジェット用インクにおいて、熱硬化性官能基を有する重合性モノマーと二官能(メタ)アクリレートに加えてさらに炭素間二重結合を三つ以上有する化合物を含む重合性モノマーを用いると、得られるインクは、波長が約395nm〜420nmの紫外線に対してさらに高感度となり好ましい。炭素間二重結合を三つ以上有する化合物は重合性モノマー全体の10〜50重量%であると、得られるインクジェット用インクの感度と柔軟性が両立するので好ましい。
【0043】
1.4 アルケニル置換ナジイミド化合物
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、さらにアルケニル置換ナジイミド化合物を含んでもよい。
アルケニル置換ナジイミド化合物は公知の方法で合成できるが、たとえば、モノアミン、ジアミン、トリアミンまたはテトラアミンと上記式(25)で表される化合物とを反応させて得られる合成することができる。
アルケニル置換ナジイミド化合物は重合性モノマー全体の5〜50重量%含まれると得られる硬化膜が高耐熱性、高絶縁性となり好ましい。
【0044】
1.5 ビスマレイミド化合物
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、さらにビスマレイミド化合物を含んでもよい。本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれるビスマレイミド化合物の具体例としては、m−フェニレンビスマレイミド、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド等を挙げることができる。
ビスマレイミド化合物は重合性モノマー全体の5〜50重量%含まれると得られる硬化膜が高耐熱性、高絶縁性となり好ましい。
【0045】
1.6 エポキシ樹脂
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、さらにエポキシ樹脂を含んでもよい。インクジェット用インクがエポキシ樹脂を含むと、インクを硬化して得られた硬化膜の耐久性が向上するため好ましい。
【0046】
本発明で用いられるエポキシ樹脂は、オキシランを有すれば特に限定されないが、オキシランを2つ以上有する化合物が好ましい。
【0047】
本発明で用いられるエポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂の具体例としては、商品名「エピコート807」、「エピコート815」、「エピコート825」、「エピコート827」、「エピコート828」、「エピコート190P」、「エピコート191P」(以上、油化シェルエポキシ(株)製)、商品名「エピコート1004」、「エピコート1256」(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、商品名「アラルダイトCY177」、「アラルダイトCY184」(日本チバガイギー(株)製)、商品名「セロキサイド2021P」、「EHPE−3150」(ダイセル化学工業(株)製)、上記式(4)で表される化合物[商品名「テクモアVG3101L」(三井化学(株)製)]などを挙げることができる。
これらの中でも、式(4)で表される化合物を用いると、本発明の光硬化性インクジェット用インクの吐出特性が良好となるので好ましい。
【0048】
本発明の光硬化性インクジェット用インクを硬化して得られる硬化膜の耐久性を向上させるために、重合性モノマー100重量部に対しエポキシ樹脂が1〜50重量部含まれることが好ましい。
【0049】
1.7 その他の成分
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、インクの吐出特性、保存安定性や、形成される膜の耐久性等を向上させるために、溶媒、重合禁止剤、アルカリ可溶性ポリマー、着色剤等を含むことができる。
これらの成分は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0050】
1.7.1 溶媒
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、インクの吐出特性を向上させるために溶媒を含んでもよい。本発明の光硬化性インクジェット用インクに含まれる溶媒としては沸点が100℃以上の溶媒が好ましい。
【0051】
沸点が100℃以上である溶媒の具体例としては、水、酢酸ブチル、プロピオン酸ブチル、乳酸エチル、オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル、ジオキサン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トルエン、キシレン、アニソール、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等が挙げられる。
【0052】
これらの溶媒の中でもジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等を用いると、インクの吐出が安定するので好ましい。
【0053】
溶媒は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0054】
本発明の光硬化性インクジェット用インクにおいて、溶媒は固形分濃度が20重量%以下にならない程度に含まれることが好ましい。
【0055】
1.7.2 重合禁止剤
本発明の光硬化性インクジェット用インクにおいて、保存安定性を向上させるために重合禁止剤を含んでもよい。
重合禁止剤の具体例としては、4−メトキシフェノール、ヒドロキノン、フェノチアジン等を挙げることができる。これらの中でも、ジェッティング時にインクジェットヘッドを加熱した場合のインクの粘度変化が小さい点から、重合禁止剤としてフェノチアジンを用いることが好ましい。
【0056】
重合禁止剤は1種の化合物であっても、2種以上の異なる化合物の混合物であってもよい。
【0057】
インクの保存安定性と高感度とを両立させるという点から、重合禁止剤は、重合性モノマー100重量部に対し0.01〜1重量部程度添加することが好ましい。
【0058】
1.7.3 アルカリ可溶性ポリマー
本発明の光硬化性インクジェット用インクはアルカリ可溶性ポリマーを含んでもよい。
アルカリ可溶性ポリマーを含む光硬化性インクジェット用インクは、例えば、パターニングをインクジェットで行い、パターン以外の部分をエッチング等で処理した後に、パターンをアルカリで剥離する使用方法(エッチングレジスト)として使用することができる。
【0059】
本発明で用いられるアルカリ可溶性ポリマーは、5重量%のNaOH水溶液100g(50℃)に0.1g以上溶解するポリマーであれば特に限定しないが、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーの重合体、または、カルボキシルを有するラジカル重合性モノマーと他のラジカル重合性モノマーの共重合体が好ましい。
【0060】
アルカリ可溶性ポリマーの具体例としては、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、ベンジルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、ベンジルメタクリレート/5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体の開環物等が挙げられる。これらの中でも、ベンジルメタクリレート/5−テトラヒドロフルフリルオキシカルボニルペンチル(メタ)アクリレート/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/メタクリル酸共重合体を添加した光硬化性インクジェット用インクは、当該インクから形成される硬化膜の耐酸性が高く、かつ、アルカリ液で容易に除去可能であるから、電子回路基板を製作するためのエッチングレジスト用のインクジェット用インクとして好ましい。
【0061】
インクから形成される硬化膜の耐酸性が高く、かつ、アルカリ液で除去可能とする性質を付与するために、本発明の光硬化性インクジェット用インクは、アルカリ可溶性ポリマーを重合性モノマー100重量部に対し10〜100重量部程度含むことが好ましい。
【0062】
1.7.4 着色剤
光硬化性インクジェット用インクから形成される硬化膜の状態を検査する際に基板との識別を容易にするために、本発明の光硬化性インクジェット用インクは、着色剤を重合性モノマー100重量部に対し1〜50重量部程度含んでもよい。
光硬化性インクジェット用インクから形成される硬化膜の耐熱性の点から、着色剤は顔料であることが好ましい。
【0063】
1.8 光硬化性インクジェット用インクの調製方法
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、必要な成分を混合して得られた溶液を、ろ過することにより調整するのが好ましい。ろ過には、例えばフッ素樹脂製のメンブレンフィルターなどが用いられる。
【0064】
1.9 光硬化性インクジェット用インクの粘度
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、25℃における粘度が3〜300mPa・sであるとインクの吐出特性が良好となるので好ましい。25℃における粘度が20mPa・sを超える場合は、インクジェットヘッドを加熱して吐出時の粘度を下げると安定した吐出が可能になる。
【0065】
1.10 光硬化性インクジェット用インクの保存
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、−20〜20℃で保存すると粘度変化が小さく、保存安定性が良好である。
【0066】
2 インクジェット方法によるインクジェット用インクの塗布
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、公知のインクジェット方法で塗布する工程を有するインクジェット塗布方法に用いることができる。インクジェット塗布方法としては、例えば、インクに力学的エネルギーを作用させてインクを塗布させる方法、および、インクに熱エネルギーを作用させてインクを塗布させる塗布方法等がある。
インクジェット塗布方法を用いることにより、インクジェット用インクを予め定められたパターン状にインクを塗布することができる。これによって、必要な箇所だけにインクを塗布でき、コストの削減となる。
【0067】
本発明にかかるインクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布ユニットは、例えば、これらのインクを収容するインク収容部と、塗布ヘッドとを備えた塗布ユニットが挙げられる。塗布ユニットとしては、例えば、塗布信号に対応した熱エネルギーをインクに作用させ、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる塗布ユニットが挙げられる。
塗布ヘッドとしては、例えば、金属および/または金属酸化物を含有する発熱部接液面を有するものである。前記金属および/または金属酸化物の具体例は、例えば、Ta、Zr、Ti、Ni、Al等の金属、および、これらの金属の酸化物等が挙げられる。
【0068】
本発明にかかるインクを用いて塗布を行うのに好ましい塗布装置としては、例えば、インクが収容されるインク収容部を有する塗布ヘッドの室内のインクに、塗布信号に対応したエネルギーを与え、前記エネルギーによりインク液滴を発生させる装置が挙げられる。
【0069】
インクジェット塗布装置は、塗布ヘッドとインク収容部とが分離されているものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いるものでもよい。また、インク収容部は塗布ヘッドに対し分離可能または分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもののほか、装置の固定部位に設けられて、インク供給部材、例えばチューブを介して塗布ヘッドにインクを供給する形態のものでもよい。
【0070】
3 硬化膜の形成
本発明の硬化膜は、公知のインクジェット塗布方法を用いて本発明のインクジェット用インクを基板の表面に吐出した後に、インクに紫外線や可視光線等の光を照射して得られる。光が照射された部分のインクはアクリルモノマーの重合により三次元化架橋体となって硬化し、インクの広がりを効果的に抑えられる。したがって、本発明のインクジェット用インクを用いると、高精細なパターンの描画が可能になる。インクジェット用インクの組成に依存するが、照射する光として紫外線を用いた場合には、照射する紫外線の量は、ウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して、10〜1,000mJ/cm程度が好ましい。
また、必要に応じて、基板の表面に吐出され光が照射されたインクをさらに加熱・焼成してもよく、特に、120〜250℃で10〜60分間加熱することが好ましい。
【0071】
本明細書中、「基板」は、本発明のインクジェット用インクが塗布される対象となり得るものであれば特に限定されず、その形状は平板状に限られず、曲面状であってもよい。
また、本発明に使用できる基板の材質は特に限定されないが、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルム、セロハン、アセテート、金属箔、ポリイミドと金属箔の積層フィルム、目止め効果があるグラシン紙、パーチメント紙、あるいはポリエチレン、クレーバインダー、ポリビニルアルコール、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(CMC)などで目止め処理した紙、ガラスなどを挙げることができる。なお、これらの基板を構成する物質には、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲において、さらに、顔料、染料、酸化防止剤、劣化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤及び/又は電磁波防止剤等の添加剤を含んでもよい。
上記の基板の厚さは、特に限定されないが、通常、10μm〜2mm程度であり、使用する目的により適宜調整されるが、15〜500μmが好ましく、20〜200μmがさらに好ましい。
【0072】
上記の基板の硬化膜形成用面には、必要によりコロナ処理、プラズマ処理、ブラスト処理等の易接着処理を施したり、表面に易接着層を設けてもよい。
【0073】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【実施例】
【0074】
[実施例1]
ヒドロキシを有し1つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシを有し2つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーとしてビスフェノールAエチレンオキシド変性ジアクリレート[(東亜合成(株)製)アロニックス(商品名)M210;以下、「M210」という]、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド[(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)IRGACURE(商品名)819、以下、「I819」という]、エポキシ樹脂として三井化学(株)製のテクモア(商品名)VG3101L(以下、「VG3101L」という)、および、重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解し、光硬化性インクジェット用インクを得た。
ここで、「I819」は上記式(2)において、R、R3、R5、R6、R8、およびR10がメチルであり、R2、R4、R7、R9、R11、R12、R13、R14、およびR15が水素である化合物である。
【0075】
4−ヒドロキシブチルアクリレート 100.00g
M210 100.00g
I819 10.00g
VG3101L 20.00g
フェノチアジン 0.05g
【0076】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インクを調製した。
この光硬化性インクジェット用インクをインクジェットカートリッジに注入し、インクジェット装置DMP−2811(商品名、Dimatix社製)に装着し、ポリイミドフィルムであるカプトン(登録商標)(商品名、東レ・デュポン(株)製、150μm厚、Hタイプ;以下、「カプトン基板」という)上にラインとライン同士の間のスペースの幅とを20μmから10μm刻みに200μmまで段階的に変え、5μmの膜厚になるように描画を行った。このとき、ラインの幅とライン同士の間の幅が同じになるように描画条件を設定した。本明細書中、このような描画を「ライン&スペース塗布」という。塗布回数は1回で、ラインの長さは50mm、ノズルからのジェッティング速度は10回/s、ジェッティング温度は60℃とした。
【0077】
描画終了後、この基板を、(株)トプコン製のプロキシミティー露光機TME−400PRCを使用して露光した。この際に、波長カットフィルターを通して380nm以下および420nm以上の光をカットして405nmの紫外線を取り出して露光した。露光量はウシオ電機(株)製の受光器UVD−405PDを取り付けた積算光量計UIT−201で測定して30mJ/cmとした。この基板を160℃で30分間焼成し、ライン&スペース塗布によるパターン(以下、「ライン&スペースパターン」という)を形成したカプトン基板を得た。この基板を顕微鏡で観察したところ、20〜40μmのライン&スペース塗布によるライン&スペースパターンでは液の広がりによりスペース部分がつぶれていたが、50μm以上のライン&スペースパターンでは描画できていた。また、この基板を描画した面を内側にして半径5mmの円筒状に曲げた後に、顕微鏡で観察したところ、ライン&スペースパターンにクラックは発生していなかった。
【0078】
[実施例2]
光重合開始剤として2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニルフォスフィンオキサイド(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)DAROCUR(商品名)TPO、以下、「TPO」という)を用いたこと以外は実施例1と同様に、下記組成で混合溶解し、光硬化性インクジェット用インクを得た。
ここで、「TPO」は式(3)において、R6、R8、およびR10がメチルであり、R、R2、R3、R4、R5、R7、R9、R11、R12、R13、R14、およびR15が水素である化合物である。
【0079】
4−ヒドロキシブチルアクリレート 100.00g
M210 100.00g
TPO 10.00g
VG3101L 20.00g
フェノチアジン 0.05g
【0080】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インクを調製した。
この光硬化性インクジェット用インクを使用して実施例1と同様の操作を行い、ライン&スペースパターンを形成したカプトン基板を得た。この基板を顕微鏡で観察したところ、20〜40μmのライン&スペース塗布によるライン&スペースパターンでは液の広がりによりスペース部分がつぶれていたが、50μm以上のライン&スペースパターンでは描画できていた。また、この基板を描画した面を内側にして半径5mmの円筒状に曲げた後に、顕微鏡で観察したところ、ライン&スペースパターンにクラックは発生していなかった。
【0081】
[実施例3]
ヒドロキシを有し1つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーとして4−ヒドロキシブチルアクリレート、カルボキシルを有し1つの炭素間二重結合を有する重合性モノマーとして2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2官能(メタ)アクリレートとして1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、光重合開始剤としてtpo、アルケニル置換ナジイミド化合物としてビス{4−(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド)フェニル}メタン(以下、「BANIM」という)、および重合禁止剤としてフェノチアジンを下記組成にて混合溶解し、光硬化性インクジェット用インクを得た。
【0082】
4−ヒドロキシブチルアクリレート 50.00g
2−アクリロイロキシエチルフタル酸 50.00g
1,6−ヘキサンジオールジアクリレート 100.00g
TPO 10.00g
VG3101L 10.00g
BANIM 10.00g
フェノチアジン 0.05g
【0083】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インクを調製した。
この光硬化性インクジェット用インクを使用して実施例1と同様の操作を行い、ライン&スペースパターンを形成したカプトン基板を得た。この基板を顕微鏡で観察したところ、20〜40μmのライン&スペース塗布によるライン&スペースパターンでは液の広がりによりスペース部分がつぶれていたが、50μm以上のライン&スペースパターンでは描画できていた。また、この基板を描画した面を内側にして半径5mmの円筒状に曲げた後に、顕微鏡で観察したところ、ライン&スペースパターンにクラックは発生していなかった。
【0084】
[比較例1]
光重合開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)IRGACURE(商品名)369、以下、「I369」という)を用いたこと以外は実施例1と同様に、下記組成で混合溶解し、光硬化性インクジェット用インクを得た。
ここで、「I369」はα−アミノアルキルフェノン系の化合物である。
【0085】
4−ヒドロキシブチルアクリレート 100.00g
M210 100.00g
I369 10.00g
VG3101L 20.00g
フェノチアジン 0.05g
【0086】
このようにして得られた溶液を、0.2μmのフッ素樹脂製のメンブレンフィルターでろ過し、光硬化性インクジェット用インクを調製した。
この光硬化性インクジェット用インクを使用して実施例1と同様の操作を行い、ライン&スペースパターンを形成したカプトン基板を得た。この基板を顕微鏡で観察したところ、20〜150μmのライン&スペース塗布によるライン&スペースパターンでは液の広がりによりスペース部分がつぶれていたが、160μm以上のライン&スペースパターンでは描画できていた。また、この基板を描画した面を内側にして半径5mmの円筒状に曲げた後に、顕微鏡で観察したところ、ライン&スペースパターンにクラックは発生していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の光硬化性インクジェット用インクは、例えば、電子回路基板に使用されるエッチングレジストや保護膜、液晶ディスプレイのスペーサーやその保護膜、フレキシブル配線基板用絶縁膜、およびこれらを用いた電子部品に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(2)または下記式(3)
【化1】

(式中、R〜R15はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜5のアルキルまたは置換基を有してよいフェニルである。)
で表される光重合開始剤と、
熱硬化性官能基を有する重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インク。
【請求項2】
式(2)および式(3)中、R〜R15はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜3のアルキルである、請求項1に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項3】
熱硬化性官能基が、ヒドロキシ、カルボキシル、アミノ、アルコキシ、オキシラン、オキセタンから選ばれる1以上である、請求項1または2に記載の光硬化性インクジェット用インク
【請求項4】
熱硬化性官能基を有する重合性モノマーがラジカル重合性二重結合を1つ有するモノマーである、請求項1〜3のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項5】
熱硬化性官能基を有する重合性モノマーが、下記式(11)
【化2】

[式(11)中、R16は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R17は炭素数1〜3のアルキルまたは水素であり、nは0〜30の整数であり、R18は水素または式(11A)〜(11C)で表される基のいずれかである。また、式(11A)〜(11C)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜5のアルキルである。]
で表される化合物または下記式(12)
【化3】

[式(12)中、R16は環状構造を有してよい炭素数2〜12のアルキレンであり、R17は炭素数1〜3のアルキルまたは水素であり、nは1〜30の整数であり、R19は式(12A)〜(12E)で表される基のいずれかである。また、式(12A)〜(12E)中、Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1〜5のアルキルである。]
で表される化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項6】
式(11)中、R16はエチレン、プロピレン、ブチレンまたは下記式(B)で表される基であり、R17は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数であり、R18は水素であり、
式(12)中、R16はエチレン、プロピレン、ブチレンまたは下記式(B)で表される基であり、R17は水素またはメチルであり、nは1〜5の整数であり、R19は式(12A)〜(12E)で表される基のいずれかであり、式(12A)〜(12E)中、Rはそれぞれ独立して水素またはメチルで表される基である、請求項5に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化4】

【請求項7】
下記式(2)
【化5】

(式(2)中、R、R3、R5、R6、R8およびR10がメチルであり、R2、R4、R7、R9、R11、R12、R13、R14およびR15が水素である。)
または下記式(3)
【化6】

(式(3)中、R6、R8およびR10がメチルであり、R、R2、R3、R4、R5、R7、R9、R11、R12、R13、R14およびR15が水素である)
で表される光重合開始剤と
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる群から選ばれる1以上である重合性モノマーとを含む光硬化性インクジェット用インク。
【請求項8】
さらに、二官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項9】
二官能(メタ)アクリレートが、ビスフェノールFエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートおよび2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる1以上である、請求項8に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項10】
さらに、アルケニル置換ナジイミド化合物を含む、請求項1〜9のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項11】
アルケニル置換ナジイミド化合物(A)が下記式(20)で表される化合物である、請求項10に記載のインクジェット用インク。
【化7】

(式(20)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルであり、R20は炭素数1〜300の有機基であり、nは1〜4の整数である。
【請求項12】
アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(21)で表される化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化8】


[式(21)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかであり、R23は水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数1〜12のヒドロキシアルキル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリール、ベンジル、−{(CH(CH(CHX}(式中、q、rおよびsはそれぞれ独立して2〜6の整数、tは0または1の整数、uは1〜30の整数、Xは水素または−OHである)で表される基、−(R)−C−R(式中、aは0または1の整数、Rは炭素数1〜4のアルキレン、Rは水素または炭素数1〜4のアルキルである)で表される基、下記式(A)
【化9】

(式中、Tは−CH−、−C(CH−、−CO−、−S−または−SO−である)で表される基またはこれらの基の芳香環に直結した1〜3個の水素が−OHで置換された基である。]
【請求項13】
アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(22)で表される化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化10】

[式(22)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、
24が炭素数2〜15のアルキレン(アルキレン中の互いに隣接しない任意のメチレン基は−O−または−CH=CH−で置き換えられていてもよく、任意の水素はフッ素で置き換えられてもよい)、式(22A)で表される基、式(22B)で表される基、式(22C)で表される基、式(22D)で表される基または式(22E)で表される基であり、
式(22A)及び(22C)中、Rは、−CH−、−CHCH−、−O−、−C(CH−、−C(CF−または−SO−であり、式(22C)中、Xは、それぞれ独立して−CH−または−O−であり、式(22D)中、xはそれぞれ独立して1〜6の整数であり、yは1〜70の整数である。]
【請求項14】
アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(23)で表される化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化11】

[式(23)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R25が、式(23A)で表される基、式(23B)で表される基または式(23C)で表される基であり、
式(23A)中、Rは炭素数1〜10のアルキルまたは−OHであり式(23C)中、R’はそれぞれ独立して1,2−エチレンまたは1,4−ブチレンである。]
【請求項15】
アルケニル置換ナジイミド化合物が下記式(24)で表される化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化12】

[式(24)中、R21およびR22はそれぞれ独立して、水素または炭素数1〜6のアルキルであり、R26が、式(24A)で表される基である。)]
【請求項16】
アルケニル置換ナジイミド化合物が、モノアミン、ジアミン、トリアミンまたはテトラアミンと下記式(25)で表される化合物とを反応させて得られる化合物である、請求項10に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化13】

(式(25)中、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、炭素数1〜12のアルキル、炭素数3〜6のアルケニル、炭素数5〜8のシクロアルキル、炭素数6〜12のアリールまたはベンジルのいずれかである。)
【請求項17】
さらに、少なくとも1種のビスマレイミド化合物を含む請求項1〜16のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項18】
ビスマレイミド化合物が下記式(30)で表される化合物である、請求項17に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化14】

(式(30)中、Rは炭素数2〜30の2価の有機基である)
【請求項19】
式(30)中、Rが下記式で表される基からなる群から選ばれる、請求項18に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【化15】

【請求項20】
さらに、エポキシ樹脂を含む、請求項1〜19のいずれかに記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項21】
エポキシ樹脂が下記式(4)
【化16】

で表される化合物である、請求項20に記載の光硬化性インクジェット用インク。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれかに記載された光硬化性インクジェット用インクをインクジェット塗布方法によって塗布してから乾燥させて塗膜を形成する工程、および、当該塗膜に光を照射することによって硬化膜を形成する工程を含むインク塗布方法。
【請求項23】
請求項22に記載のインク塗布方法を用いて硬化膜を形成する、硬化膜形成方法。
【請求項24】
請求項23に記載された硬化膜形成方法を用いて基板上に硬化膜が形成された電子回路基板。
【請求項25】
請求項24に記載された電子回路基板を有する電子部品。
【請求項26】
請求項23に記載された方法を用いて形成された硬化膜を有する表示素子。

【公開番号】特開2008−214607(P2008−214607A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305776(P2007−305776)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【Fターム(参考)】