説明

光硬化性樹脂組成物、およびこれを用いた液晶表示素子または固体撮像素子用の部材

【課題】硬化後の現像性、耐熱変色性、高硬度であることとを両立し、イオンバリア性、耐薬品性が良好な光硬化性樹脂組成物、およびこれを硬化させてなる部材を使用した保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックス、スペーサー、およびカラーフィルターを提供する。
【解決手段】フマレート性の構成単位を1.5〜35重量%、酸性官能基を有する構成単位を10〜50重量%、芳香族炭素環を有する構成単位を3〜45重量%、およびエチレン性不飽和結合を有する構成単位を20〜65重量%有するフマレート系共重合体(A)を2〜80重量%、光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を5〜90重量%、および光重合開始剤(C)を1〜10重量%含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フマル酸エステル共重合体を含有し、カラーフィルターの保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックスまたはスペーサーを形成するための光硬化性樹脂組成物、および、それを用いたカラーフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピューターやテレビなどのフラットディスプレーとして、カラー液晶表示装置が急速に普及してきている。一般にカラー液晶表示装置は、カラーフィルターとTFT基板等の電極基板を対向させて1〜10μm程の間隙部を設け、該間隙部内に液晶化合物を充填し、その周囲をシール材で密封した構造をとっている。カラーフィルターは、画素間の境界部を遮光するために所定のパターンに形成されたブラックマトリックス層と、配列した画素部または最近ではホログラムを利用した画素部と、保護膜と、透明電極とが、透明基板に近い側からこの順に積層された構造をとっている。また、カラーフィルターおよびこれと対向する電極基板の内面側には配向膜が設けられる。さらに間隙部には、カラーフィルターと電極基板の間のセルギャップを一定かつ均一に維持するために、スペーサーが設けられている。そして、各色に着色された画素それぞれまたはカラーフィルターの背後にある液晶層の光透過率を制御することによってカラー画像が得られる。
【0003】
カラーフィルターに形成されるRGB用画素は、一般には複数の色(通常、赤(R)、緑(G)、青(B)の3原色)、ブラックマトリックスにおいては、カーボンブラック等、所定の色を発色し得るように選択された1種または2種以上の顔料を、光硬化性樹脂組成物中に配合して、これを透明基板上に塗布、乾燥し、得られた塗膜の所定領域を選択的に露光して硬化させ、有機溶剤またはアルカリ溶液で現像して形成することができる。
カラーフィルターに形成される保護膜は、画素部の保護とカラーフィルターの平坦化の役割を果たしている。カラー液晶表示装置では、カラーフィルターの透明基板表面のうねりに起因するギャップムラ、R,GおよびBの各画素間でのギャップムラ、或いは各画素内でのギャップムラなどの存在により透明電極膜の平坦性が損なわれ、色ムラ或いはコントラストムラを生じ、その結果、画像品質の低下をきたすという問題がある。従って、保護膜には高い平坦性が求められる。
【0004】
スペーサーとして、微粒子状のパールを表示領域すなわち画素部にランダムに分散させる場合と、ブラックマトリックス層が形成されている位置と重なり合う領域に、セルギャップに対応する高さを有する柱状スペーサーを形成する場合とがある。
上記したスペーサーにおいては、カラーフィルター製造時または液晶表示素子の運搬時などの衝撃によって破壊してしまわないこと、液晶セルギャップを一定に保つことが求められる。このため、スペーサーを形成する樹脂硬化物には、十分な硬度と弾性復元率を有していることが必要である。
また、液晶層への有機物の溶出、イオン性不純物の染み出しは、液晶層の汚染を招き、その結果、著しい画像品質の低下を招く恐れがある。このため、液晶画像素子に用いられる着色層、ブラックマトリックス、保護膜およびスペーサー等の部材には、イオン性不純物による汚染を防ぐ能力(イオンバリア性)が求められる。
【0005】
上記した画素部やブラックマトリックス層のような着色層、保護膜および柱状スペーサーは、樹脂を用いて形成することができる。着色層は、各色の画素やブラックマトリックスの線ごとに所定のパターンに形成する必要がある。保護膜は、シール部の密着性や密閉性を考慮すると、透明基板上の画素部が形成された領域のみ被覆できるものが好ましい。また、柱状スペーサーは、ブラックマトリックス層の形成領域内すなわち非表示領域に正確に設ける必要がある。このため、硬化させたい領域を選択的に露光した後にアルカリ現像することができる光硬化性樹脂を用いて着色層、保護膜および柱状スペーサーを形成することが提案されている。
カラーフィルターは液晶パネルを組み立てる途中で高温に晒され、例えば、配向膜を形成する工程や、蒸着(スパッタ)によってITO(Indium Tin Oxide)透明電極層が形成される場合においては250℃程度で約1時間ほど加熱される。このような場合、高温の加熱プロセス中に変色し、黄変の招来や透明性の低下などの問題を生じるおそれがある。このため、カラーフィルターに用いられる光硬化性樹脂組成物は、十分な耐熱変色性を備えている必要がある。
【0006】
このように、液晶表示素子用カラーフィルターに用いられる光硬化性樹脂組成物には、様々な性能が求められる。上記要求性能を満たすべく、これまで数多くの研究がなされてきた。例えば特許文献1においては、(メタ)アクリル酸およびグリシジル(メタ)アクリレートに代表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレートの共重合体を必須成分とし、この共重合体側鎖のエポキシ基に対してさらに(メタ)アクリル酸を付加させた光硬化性共重合体が開示されている。さらに特許文献2では、(メタ)アクリル酸と水酸基含有(メタ)アクリレートとの共重合体のカルボキシル基または水酸基を介して(メタ)アクリロイルアルキルイソシアネート化合物を付加させた共重合体を必須成分とした光硬化性樹脂組成物が開示されている。
【0007】
さらに、耐熱変色性および強度を得るためには、例えば、特許文献3では、ジシクロペンタニル基やジシクロペンテニル基のような、耐熱性や強度に貢献する脂肪族環状炭化水素基を構成単位として有する共重合体を含有する光硬化性樹脂が、また、特許文献4では、N−置換マレイミドを含む共重合体を必須成分とする光硬化性樹脂組成物が開示されている。しかしながら、これらの開示技術においては、アルカリ現像性と耐熱変色性・強度の両方の特性を満足させることが難しかった。
【0008】
特許文献5においては、フマル酸エステル化合物と、(メタ)アクリル酸またはイタコン酸とに由来する構成単位を有し、その構成単位のカルボキシル基の一部をエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物によってエステル化変性して反応性のエチレン性不飽和結合を導入した共重合体を含有する光硬化性樹脂組成物が開示されている。この開示技術では、フマル酸エステル化合物由来の構成単位を有することによって、光硬化性樹脂組成物の硬化物の耐熱変色性および強度を上げることができるが、さらにこれらの特性を上げることが望まれていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−034319号公報
【特許文献2】特開2000−105456号公報
【特許文献3】特開2002−293837号公報
【特許文献4】特開2003−215322号公報
【特許文献5】特開2003−344636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の第1の目的は、硬化後の現像性、耐熱変色性、高硬度であることとを両立し、イオンバリア性、耐薬品性が良好な光硬化性樹脂組成物、カラーフィルターの保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックスまたはスペーサーを形成するための光硬化性樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の目的は、前記の光硬化性樹脂組成物を硬化させて、液晶表示素子または固体撮像素子用の部材として好適に使用できる保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックス、スペーサー、およびカラーフィルターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フマル酸エステル化合物(以下、フマレート)に由来する構成単位と、(メタ)アクリル酸またはイタコン酸に由来する構成単位とを有し、そのカルボキシル基の一部をエポキシ基含有(メタ)アクリレート化合物によってエステル化変性して反応性のエチレン性不飽和結合を導入した共重合体を含有することを特徴とする光硬化性樹脂組成物において、さらに該共重合体中に、芳香族炭素環を有する構成単位を3〜45重量%含有せしめることにより、本発明の課題を解決する光硬化性樹脂組成物が得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔8〕である。
〔1〕下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有するフマレート系共重合体
【0014】
【化1】

【0015】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または、炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換分岐シクロアルキル基を表す。)
【0016】
【化2】

【0017】
(式中、Rは水素原子、メチル基またはカルボキシメチル基である。)
【0018】
【化3】

【0019】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を示す。)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、RおよびRは水素原子またはメチル基である。)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、RおよびR11は水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R10はアルキレン基である。また、hは0または1の数である。)
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤
〔2〕フマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の含有濃度が2.1〜4.1mmol/gである前記の〔1〕に記載の光硬化性樹脂組成物
【0024】
〔3〕さらに、(D)エポキシ樹脂を5〜45重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、94重量%以下である前記の〔1〕または〔2〕に記載の光硬化性樹脂組成物。
〔4〕カラーフィルターの製造に用いられる前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物。
〔5〕前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を有するRGB用画素またはブラックマトリックス。
【0025】
〔6〕透明基板上に形成された着色層を被覆する保護膜が、前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである保護膜。
〔7〕透明基板上に形成された着色層と、対向させるべき電極基板との間に設けられたスペーサーが前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであるスペーサー。
〔8〕前記の〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を部材として用いたカラーフィルター。
【発明の効果】
【0026】
本発明の光硬化性樹脂組成物は、硬化させて均一な架橋構造が得られるため、アルカリ現像性に優れるとともに、耐熱変色性と硬度に優れ、なおかつイオンバリア性、耐薬品性、残膜率が良好である。
本発明の光硬化性樹脂組成物を硬化させて使用することにより、液晶表示素子や固体撮像素子用の部材として好適に使用できる保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックス、スペーサー、およびカラーフィルターを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に本発明を詳しく説明する。なお、本発明において(メタ)アクリルとはアクリル基またはメタクリル基のいずれかであることを意味し、(メタ)アクリロイルとはアクリロイル基またはメタクリロイル基のいずれかであることを意味する。
また、本発明においては、本発明の光硬化性樹脂組成物の各成分の配合割合は固形分に対する割合をもって表すものとする。固形分とは、溶剤を除く全ての配合成分の総和をいうものであり、エポキシ樹脂(D)等のうち、液状の成分も固形分に含まれる。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする。
(A)フマレート系共重合体
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤
【0028】
<フマレート系共重合体(A)>
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いるフマレート系共重合体(A)は、下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有する。
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または、炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換分岐シクロアルキル基を表す。)
【0031】
【化7】

【0032】
(式中、Rは水素原子、メチル基またはカルボキシメチル基である。)
【0033】
【化8】

【0034】
(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を示す。)
【0035】
【化9】

【0036】
(式中、RおよびRは水素原子またはメチル基である。)
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、RおよびR11は水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R10はアルキレン基である。また、hは0または1の数である。)
<フマレート性の構成単位(a1)>
式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)は、主として樹脂硬化物の耐熱変色性、透明性に寄与する成分である。フマレート性の構成単位(a1)をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体としては、下記式(5)で表されるフマレートを使用することができる。
【0039】
【化11】

【0040】
(式中、RとRは、式(1)と同じである。)
前記の式(1)および式(5)中のR、Rが炭素数3〜8の分岐アルキル基または置換分岐アルキルである官能基の具体例としては、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、sec−アミル基、3−ペンチル基、2,3−ジメチル−3−ペンチル基、tert−アミル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、2−エチル−ヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
このような分岐アルキル基または置換分岐アルキル基を有するフマレートの具体例としては、ジイソプピルフマレート、ジ−sec−ブチルフマレート、ジ−tert−ブチルフマレート、ジイソブチルフマレート、ジ−sec−アミルフマレート、ジ−tert−アミルフマレート、ジ−4−メチル−2−ペンチルフマレート、ジ−sec−アミルフマレート、ジ−3−ペンチルフマレート、ビス(2,4−ジメチル−3ペンチル)フマレート、イソプロピル−sec−ブチルフマレート、tert−ブチル−4−メチル−2−ペンチルフマレート、イソプロピル−tert−ブチルフマレート、sec−ブチル−tert−ブチルフマレート、sec−ブチル−tert−アミルフマレート、ジ−4−メチル−ペンチルフマレート、tert−ブチル−イソアミルフマレート等が挙げられる。
【0042】
前記の式(1)および式(6)中のR、Rが炭素数4〜8のシクロアルキル基または置換シクロアルキル基である官能基の具体例としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、4−tert−ブチル−シクロヘキシル基、イソボルニル基、ボルニル基、ノルボニル基等が挙げられる。
【0043】
このようなシクロアルキル基および/または置換シクロアルキル基を有するフマレートの具体例としては、ジシクロブチルフマレート、ジシクロペンチルフマレート、ジシクロヘキシルフマレート、ジシクロヘプチルフマレート、ジシクロオクチルフマレート、ビス(4−クロロ−シクロヘキシル)フマレート、ビス(4−tert−ブチル−シクロヘキシル)フマレート、ジイソボルニルフマレート、ジボルニルフマレート、ジノルボルニルフマレート等が挙げられる。
【0044】
前記の式(1)中のRがアルキル基で、Rがシクロアルキル基であるフマレートの具体例としては、イソプロピル−シクロブチルフマレート、1−クロロ−2−プロピル−シクロペンチルフマレート、1,3−ジクロロ−2−プロピル−シクロヘキシルフマレート、sec−ブチル−シクロヘキシルフマレート、tert−ブチル−シクロペンチルフマレート、tert−ブチルシクロヘキシルフマレート、sec−アミル−シクロヘキシルフマレート、3−ペンチル−ボルニルフマレート、2,3−ジメチル−3−ペンチル−アダマンチルフマレート、tert−アミル−シクロヘキシルフマレート、ネオペンチル−シクロペンチルフマレート、4−メチル−2−ペンチル−シクロヘキシルフマレート、2−エチル−ヘキシル−シクロヘキシルフマレート等が挙げられる。
前記フマレートの中でも、ジイソプロピルフマレート、ジ−sec−ブチルフマレート、ジ−tert−ブチルフマレート、ジシクロヘキシルフマレート、ジ−tert−アミルフマレートが入手性の点から好ましい。
【0045】
フマレート系共重合体(A)中のフマレート性の構成単位(a1)の含有量は、1.5〜35重量%であり、好ましくは5〜25重量%である。フマレート系共重合体(A)中に含まれるフマレート性の構成単位(a1)が1.5重量%よりも少ない場合は、樹脂硬化物の十分な耐熱変色性、透明性が得られず、35重量%よりも多い場合は、共重合性が悪くなりアルカリ現像性が低下する。
【0046】
<酸性官能基を有する構成単位(a2)>
前記の式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)は、アルカリ現像性に寄与する成分であり、その含有割合は、樹脂に要求されるアルカリ可溶性の程度により調整される。酸性官能基を有する構成単位(a2)をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体としては、エチレン性不飽和結合と酸性官能基を有する化合物を使用することができる。
酸性官能基を有する構成単位(a2)を導入するために使用される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸またはイタコン酸を用いることができ、この中でもフマレートとの共重合性が良いとの理由から、式(2)中のRはメチル基またはカルボキシメチル基であることが好ましい。
フマレート系共重合体(A)中の酸性官能基を有する構成単位(a2)の含有量は、10〜50重量%であり、好ましくは20〜40重量%である。フマレート系共重合体(A)中に含まれる酸性官能基を有する構成単位(a2)が10重量%よりも少ない場合は、現像性が悪化し、残渣などの問題を生じる。50重量%よりも多い場合は、現像性が良すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくい等の問題が生じる。
【0047】
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いるフマレート系共重合体(A)中の酸性官能基の量は酸価として、好ましくは120〜750mgKOH/g、より好ましくは200〜400mgKOH/gとなるように共重合に用いる単量体の仕込み比率を調節する。酸性官能基の量を上記の範囲とすることにより、アルカリ現像性、ならびに樹脂硬化物の耐熱変色性および高硬度が得られ、さらに樹脂硬化物を液晶表示素子または固体撮像素子用の部材として使用する上での基本的な性能、すなわちイオンバリア性、耐薬品性等の性能をも申し分なく満たすことができる。
【0048】
<芳香族炭素環を有する構成単位(a3)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、前記の式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を、本発明に用いられるフマレート系共重合体(A)中に含有することにより、パターン光硬化後のアルカリ現像性と、その後のカラーフィルター製造プロセス条件における耐熱安定性とを同時に付与することが出来る。これは、芳香族炭素環を有する化合物の使用量からすると、フマレート系共重合体(A)のガラス転移点を上昇させる効果からだけでは説明が付かない。作用機構が証明されたわけではないがおそらくは、もともと共重合性が十分ではないフマレートとアクリレートとの双方に対して良好な共重合性を有する芳香族炭素環を有する化合物を特定量用いることによって、フマレート性の構成単位(a1)と酸性官能基を有する構成単位(a2)のセグメント偏在が解消され、均一な架橋構造構造が形成されるとともに、フマレート系共重合体(A)の分子鎖全体がアルカリ溶液に対する溶解性が著しく向上する相乗効果が得られているためであると推測される。
芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を導入するために使用される単量体としては、具体的には例えば、具体的には、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、およびα−エチルスチレン等が挙げられる。
前記の式(3)において、Rとしては好ましいのは水素基であり、Rとしては好ましいのはフェニル基である。相当する単量体としては、具体的には、スチレンがフマレート系共重合体(A)に用いる他の単量体との共重合性、および入手性の面から好ましい。
【0049】
フマレート系共重合体(A)中の芳香族炭素環を有する構成単位(a3)の含有量は、3〜45重量%であり、好ましくは5〜30重量%である。フマレート系共重合体(A)中に含まれる芳香族炭素環を有する構成単位(a3)が3重量%よりも少ない場合は、本願の目的とする効果が得られず、45重量%よりも多い場合は、樹脂硬化物が脆くなり使用に適さなくなる。
【0050】
<エチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)>
前記の式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)は、光硬化性樹脂組成物の反応硬化性に寄与する成分であり、要求される硬化性の高さに応じて、含有割合を高めればよい。硬化性に寄与するエチレン性不飽和結合は、単量体成分と共存させると重合条件下で一緒に共重合してしまうので、共重合体を形成した後で公知の反応を用いた変性処理により共重合体に導入する。
エチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を共重合体に導入するためには、まず、フマレートと(メタ)アクリル酸またはイタコン酸を共重合した後、上記(メタ)アクリル酸またはイタコン酸由来のカルボキシル基にエポキシ基含有(メタ)アクリレートを反応させてエステル化変性すればよい。アルカリ現像性が不足する場合には、未変性のカルボキシル基の濃度を増加させてやればよい。
【0051】
エポキシ基含有(メタ)アクリレートとしては、下記式(6)で表されるグルシジルまたはメチルグルシジル(メタ)アクリレートや、下記式(7)で表される脂環族エポキシ化合物を例示することができる。式(6)のグリシジルメタクリレートとしてはブレンマーGH(商品名、日本油脂(株)製)、メチルグルシジルメタクリレートとしてはサイクロマーM−GMA(商品名、ダイセル化学工業(株)製)が市販され、式(7)の脂環族エポキシ化合物としてはサイクロマーM100およびA200(商品名、ダイセル化学工業(株)製)が市販されている。
【0052】
【化12】

【0053】
(式中、R12およびR13は各々独立して水素原子またはメチル基である。)
【0054】
【化13】

【0055】
(式中、R14は水素原子またはメチル基である。)
また、エチレン性不飽和結合含有単位としては、下記式(4b)で表される構成単位も好ましいものの一つである。
【化14】

【0056】
(式中、RおよびR11は水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R10はアルキレン基である。また、hは0または1の数である。)
式(5)に含まれるRは、炭素数2〜4のアルキレン基であり、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等を例示できる。R10は好ましくは炭素数2〜6のアルキレン基である。
【0057】
式(5)の構成単位をフマレート系共重合体(A)に導入するためには、先ず、フマレートおよび(メタ)アクリル酸またはイタコン酸とともに下記式(8)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合する。
【0058】
【化15】

【0059】
(式中、RおよびRは式(5)と同じである。)
式(8)のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等が例示される。
このヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを共重合させることによって、下記式(9)で表される水酸基を有する構成単位がフマレート系共重合体(A)中に導入される。
【0060】
【化16】

【0061】
(式中、RおよびRは式(5)と同じである。)その後、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート由来の水酸基に下記式(10)で表されるイソシアネート化合物を反応させればよい。
【0062】
【化17】

【0063】
(式中、R15はアルキレン基であり、R16は水素原子またはメチル基である。また、hは0または1の数である。)
式(10)の(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネートとしては、メタクリロイルイソシアネート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等が例示される。これらの中では、(メタ)アクリロイル基が炭素数2〜6のアルキレン基を介してイソシアネート基(−NCO)と結合したもの、例えば、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルエチルイソシアネート等を使用するのが好ましい。これらのうち、メタクリロイルイソシアネートは、下記式(14)で表され、例えば、日本ペイント(株)製「MAI」等の商品名で市販されている。また、2−メタクリロイルエチルイソシアネートは、例えば、昭和電工(株)製「カレンズMOI」等の商品名で市販されている。
【0064】
【化18】

【0065】
上記の例では、エチレン性不飽和結合を有する構成単位をフマレート系共重合体(A)に導入する部位が、水酸基やカルボキシル基を有する単量体由来の構成単位であるが、逆に、イソシアネート基やエポキシ基を有する単量体由来の構成単位を導入部位として利用することも出来る。
例えば、上記式(11)で表されるメタクリロイルイソシアネート、上記式(6)で表されるグリシジル(メタ)アクリレート、上記式(7)で表される脂環族エポキシ化合物等を用いることが出来る。これらは、先に例示した単量体と同様、反応制御や製造が容易である。これらの単量体を用いて共重合体を形成した後、導入されたイソシアネート基やエポキシ基と反応する官能基(水酸基やカルボキシル基)とエチレン性不飽和結合とを有する化合物を反応させることによって、エチレン性不飽和結合を有する構成単位を導入することができる。
【0066】
フマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)の含有量は、20〜65重量%であり、好ましくは30〜60重量%である。フマレート系共重合体(A)中に含まれるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)が20重量%よりも少ない場合は、架橋点が不足するために樹脂硬化物の硬度が十分でなく、65重量%よりも多い場合は、アルカリ現像性が不足し使用に適さなくなる。
本発明の光硬化性樹脂組成物に用いるフマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の量は含有濃度として、好ましくは2.1〜4.1mmol/g、さらに好ましくは2.1〜3.5mmol/gとなるように共重合に用いる単量体の仕込み比率と変性率を調節する。エチレン性不飽和結合の量を上記の範囲とすることにより、樹脂硬化物の耐熱変色性、高硬度を得られ、さらに樹脂硬化物を液晶表示素子または固体撮像素子用の部材として使用する上での基本的な性能、すなわちイオンバリア性、耐薬品性等の性能をも申し分なく満たすことができる。
【0067】
<その他の構成単位>
本発明に用いるフマレート系共重合体(A)は、上記の(a1)〜(a4)の構成単位以外に、その他の構成単位を有していてもよい。その他の構成単位は、フマレート系共重合体(A)の(a1)〜(a4)の構成単位を導入するための各々の単量体との共重合性が良く、フマレート系共重合体(A)の物性を大きく変えない単量体を用いて導入する。具体的には、下記式(12)で表されるエステル基を有する構成単位が好ましく挙げられる。
【0068】
【化19】

【0069】
(式中、R17は水素原子またはメチル基であり、R18はアルキル基またはアラルキル基を示す。)
上記式中に含まれるR18はアルキル基またはアラルキル基であり、例えば、炭素数1〜12のアルキル基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基が例示される。この構成単位を導入するために使用される単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸イソボニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル等の(メタ)アクリル酸のエステル類が例示される。
本発明に用いるフマレート系共重合体(A)中のその他の構成単位の含有量は、32重量%以下、好ましくは20重量%以下である。その他の構成単位の含有量が32重量%を上回るとフマレート系共重合体(A)の物性が変わり、本願の目的とする効果を得ることができない。
上記の各構成単位をフマレート系共重合体(A)に導入するために使用される単量体は、単独でも、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0070】
本発明に用いるフマレート系共重合体(A)を製造するには、先ず、フマレート性の構成単位(a1)と、酸性官能基を有する構成単位(a2)からなり、エチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を後から導入できる官能基を有する構成単位、芳香族炭素環を有する構成単位(a3)、或いは、その他の構成単位を含有する重合体(以下、原料重合体という)を製造し、それから該原料重合体にエチレン性不飽和結合とともに別の官能基を有する化合物を反応させてエチレン性不飽和結合を導入すればよい。
【0071】
原料重合体を製造するために用いられる重合用溶媒としては、一般的に知られる溶媒を用いることができる。例えば、メタノール、エタノール、グリコール等の炭素原子数1〜3の脂肪族アルコール;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性溶剤、または、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類やプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸3−メトキシブチル等が挙げられ、芳香族炭化水素類、ケトン類、エステル類等も用いることができる。
【0072】
原料重合体を製造するために用いられる重合開始剤としては、一般的にラジカル重合開始剤として知られているものを使用することができる。その具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のニトリル系アゾ化合物;ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)等の非ニトリル系アゾ化合物;t−ヘキシルペルオキシピバレート、tert−ブチルペルオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ステアロイルペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、サクシニックペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルペルオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、1,1’−ビス−(tert−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物;および過酸化水素が挙げられる。ラジカル重合開始剤として過酸化物を使用する場合には、これと還元剤とを組み合わせてレドックス型重合開始剤として使用してもよい。
【0073】
原料重合体の製造においては、重量平均分子量を調節するために分子量調節剤を使用することができ、例えば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ターピノーレン、α−メチルスチレンダイマー等が挙げられる。
原料重合体は、ランダム共重合体およびブロック共重合体のいずれであってよい。ランダム共重合体を製造する場合には、各構成単位を誘導するそれぞれの単量体、触媒等を含有する配合組成物を、溶剤を入れた重合槽中に80〜110℃の温度条件で2〜5時間かけて滴下し、熟成させることにより重合させることかできる。
【0074】
原料重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、単に「重量平均分子量」または「Mw」という。)が5,000〜100,000の範囲のものが好ましく、酸価が好ましくは120〜750mgKOH/g、より好ましくは200〜400mgKOH/g、水酸基価が5mgKOH/g〜400mgKOH/gのものがより好ましい。
【0075】
原料重合体にエチレン性不飽和結合を導入する反応は、原料重合体の分子構造と、エチレン性不飽和結合を導入する単位の分子構造との組み合わせに応じて、公知の官能基変性反応を用いることができる。
フマレート性の構成単位(a1)、酸性官能基を有する構成単位(a2)、および芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を含有する原料重合体に、エチレン性不飽和結合を導入するためにグリシジル(メタ)アクリレートを反応させる場合には、該グリシジル(メタ)アクリレートを少量の触媒の存在下、原料重合体の溶液中に全量を一度に投入してから一定時間反応を続けるか、或いは、少しずつ滴下することによって、前記の式(14)で表される共重合体が得られる。
【0076】
また、フマレート性の構成単位(a1)、酸性官能基を有する構成単位(a2)、芳香族炭素環を有する構成単位(a3)、および前記の式(9)で表される水酸基含有単位を含有する原料重合体に、エチレン性不飽和結合を導入するために、前記の式(10)で表されるイソシアネート化合物を反応させる場合には、該イソシアネート化合物を少量の触媒の存在下、原料重合体の溶液中に、全量を一度に投入してから一定時間反応を続けるか、或いは、少しずつ滴下することによって、前記の式(15)で表される共重合体が得られる。この場合、触媒としてはラウリン酸ジブチル錫等が用いられ、また、p−メトキシフェノール、ヒドロキノン、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、2,3−ジ−tert−ブチルp−クレゾール等の重合禁止剤が必要に応じて使用される。
エチレン性不飽和結合を有するイソシアネート化合物は、原料重合体のアルコール性水酸基に対してはイソシアネート基を介して付加反応を起こしてウレタン結合を形成する。その結果、原料重合体における前記の式(9)で表される水酸基含有単位の部分にエチレン性不飽和結合が導入され、前記の式(5)の構成単位が形成される。
【0077】
また、エチレン性不飽和結合を有するイソシアネート化合物は、原料重合体のカルボキシル基に対してはイソシアネート基を介して炭酸ガスの脱離を伴う縮合反応を起こしアミド結合を形成する。その結果、原料重合体における前記の式(2)で表されるカルボキシル基含有単位の部分にもエチレン性不飽和結合が導入される。ただし、カルボキシル基に対するイソシアネート化合物の反応性は、アルコール性水酸基に対する同イソシアネート化合物の反応性と比べて非常に小さいので、エチレン性不飽和結合は主としてアルコール性水酸基含有単位の部分に導入され、カルボキシル基含有単位の部分に導入されるエチレン性不飽和結合は概して非常に少量である。従って、ほとんどのカルボキシル基は残存し、アルカリ現像性は失われない。
このようにして得られるフマレート系共重合体(A)を、カラーフィルターの着色層、該着色層を被覆する保護膜または液晶パネルのセルギャップを維持するための柱状スペーサーを形成するために用いる場合には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量が2,000〜100,000、好ましくは8,000〜70,000の範囲に調節するのが好ましい。重量平均分子量が5,000より小さいと現像性が良すぎてパターン露光時のパターン形状を制御しにくく、また、パターンが作製できる場合でも最終的な膜厚が減る(膜減り)等の問題がある。一方、重量平均分子量がl00,000より大きいと、レジスト化した時の粘度が高くなりすぎて塗工適性が低下したり、現像性が悪くなりパターンが抜けにくくなるなどの問題がある。
【0078】
本発明に用いられるフマレート系共重合体(A)は、耐熱変色性に寄与するフマレート性の構成単位(a1)と、酸性やアルカリ可溶性に寄与する酸性官能基を有する構成単位(a2)と、共重合性の向上に寄与する芳香族炭素環を有する構成単位(a3)が連結し、反応硬化性に寄与するエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)や、さらに必要に応じて、アルカリに対する溶解性を抑制するエステル基含有単位が連結してなるものであり、優れた耐熱変色性を備えるだけでなく、これら各構成単位の含有割合を変更することによって、反応硬化性、アルカリ可溶性、塗工性などを適宜に調節できる。
したがって、フマレート系共重合体(A)を用いて、カラーフィルターの保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックスまたはスペーサーを形成するためのアルカリ現像可能な光硬化性樹脂組成物を調製することができ、カラーフィルターの細部を形成するのに好適に用いることができる。フマレート系共重合体(A)を用いた光硬化性樹脂組成物は、特に、カラーフィルターの着色層、保護膜または液晶パネルのセルギャップを維持するための柱状スペーサーを形成するのに適しているが、耐熱変色性に優れており黄変し難いので、そのなかでも画素部や保護膜などの高い透明性を要求される部分を形成するのに非常に適している。
【0079】
以下において、フマレート系共重合体(A)を配合してなるカラーフィルターの保護膜、RGB用画素、ブラックマトリックスまたはスペーサーを形成するための光硬化性樹脂組成物について詳しく説明する。
本発明の光硬化性樹脂組成物は、フマレート系共重合体(A)を通常2〜80重量%、好ましくは10〜50重量%含有する。フマレート系共重合体(A)の含有量が80重量%よりも多いと粘度が高くなりすぎ、その結果、流動性が低下し塗布性に悪くなる場合がある。また、フマレート系共重合体(A)の含有量が2重量%よりも少ないと、粘度が低くなりすぎ、その結果、塗布乾燥後の塗膜安定性が不十分であり、露光、現像適性を損なう等の問題を生じる場合がある。
【0080】
<光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)>
本発明の光硬化性樹脂組成物は、光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)を含有する。光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、光硬化性樹脂組成物を硬化させる作用を有する、2個以上のエチレン性不飽和結合を有する多官能重合性化合物である。具体的には例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を2個有する多価アルコールジ(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の分子量10000以下のエチレン性不飽和結合を2個有するポリオールジ(メタ)アクリレート;グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を3個有する多価アルコールジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和結合を4個以上有する多価アルコールジ(メタ)アクリレートなどを例示することができる。
1分子中のエチレン性不飽和結合の数は、3個以上が好ましく、反応性や架橋密度を向上させる上では5個以上がより好ましい。
前記の光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)は、光硬化性樹脂組成物中に5〜90重量%、好ましくは10〜75重量%含有される。光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)が5重量%未満になると、形成される膜の接着強度、耐熱性等の各種物理的強度が不十分になるという不都合が生じ、80重量%を超えると光硬化性樹脂組成物の安定性が低下するとともに、形成される膜の可撓性が不十分になるという不都合が生じる。さらに、現像液に対する溶解特性を向上させるためにも上記含有量の範囲は必要であり、これを外れる場合には、パターン解像はされるが硬化速度が大きくなり、パターン周囲に対してスカムやひげを生じる。さらに上記範囲外において、ひどい場合には部分的な膨潤・剥離からくるレジスト再付着が生じ、正確なパターン形成を阻害することがある。
【0082】
<光重合開始剤(C)>
本発明において、光重合開始剤(C)とは、紫外線、電離放射線、可視光、或いは、その他の各波長、特に365nm以下のエネルギー線で活性化し得るラジカル重合開始剤をいう。具体的には例えば、ベンゾイン、ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン誘導体またはそれらのエステルなどの誘導体;キサントン並びにチオキサントン誘導体;クロロスルフォニル、クロロメチル多核芳香族化合物、クロロメチル複素環式化合物、クロロメチルベンゾフェノン類などの含ハロゲン化合物;トリアジン類;フルオレノン類;ハロアルカン類;アクリジン類;光還元性色素と還元剤とのレドックスカップル類;有機硫黄化合物;過酸化物などが挙げられる。
これらの中でも好ましくは、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)商品名「イルガキュア184」)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(同「イルガキュア651」)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(同「ダロキュア1173」)、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−4−モルフォリノブチルフェノン(同「イルガキュア369」)、2−メチル−4’−(メチルチオ)−2−モルホリノ−プロピオフェノン(同「イルガキュア907」)、1,7−(9−アクリジニル)ヘプタン(旭電化工業(株)商品名「アデカオプトマーN−1717」)、および2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール(黒金化成(株)商品名「ビミダゾール」)を挙げることができる。
本発明に用いる光重合開始剤(C)は、1種のみまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。2種以上を併用する場合には、吸収分光特性を阻害しないようにするのがよい。
【0083】
ラジカル重合開始剤は、光硬化性樹脂組成物中に通常、0.1〜18重量%、好ましくは0.5〜10重量%含有される。ラジカル重合開始剤の添加量が0.05重量%未満になると光硬化反応が進まず、残膜率、耐熱性、耐薬品性などが低下する傾向がある。また、この添加量が18重量%を超えるとベース樹脂への溶解度が飽和に達し、スピンコーティング時や塗膜レベリング時に開始剤の結晶が析出し、膜面の均質性が保持できなくなってしまい、膜荒れ発生と言う不具合が生じる。
なお、光硬化性樹脂組成物を調製するにあたって、光重合開始剤(C)は、前記フマレート系共重合体(A)を含有する光硬化性樹脂組成物に最初から添加しておいてもよいが、比較的長期間保存する場合には、使用直前に光硬化性樹脂組成物中に分散或いは溶解することが好ましい。
【0084】
<エポキシ樹脂(D)>
さらに本発明の光硬化性樹脂組成物の中には、耐熱性、密着性、耐薬品性(特に耐アルカリ性)の向上を図る目的で、エポキシ樹脂(D)を配合することができる。本発明において、エポキシ樹脂とは、エポキシ基を分子内に2個以上有する化合物を言う。具体的には例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂としてエピコート1001、1002、1003、1004、1007、1009、1010(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、ビスフェノールF型エポキシ樹脂としてエピコート807(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、フェノールノボラック型エポキシ樹脂としてEPPN201、202(商品名、日本化薬(株)製)、エピコート154(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)など、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂としてEOCN102、103S、104S、1020、1025、1027(商品名、日本化薬(株)製)、エピコート180S(商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)などを例示できる。さらに、環式脂肪族エポキシ樹脂や脂肪族ポリグリシジルエーテルを例示することもできる。
【0085】
これらの中では、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。これらのエポキシ樹脂(D)の多くは高分子量体であるが、ビスフェノールAやビスフェノールFのグリシジルエーテルは低分子量体であり、そのような低分子量体はより好ましい。また、グリシジル(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等を分子骨格中に含むアクリル系共重合体等も有効である。
【0086】
エポキシ樹脂(D)を光硬化性樹脂組成物中に配合する場合には、通常は60重量%以下、好ましくは5〜45重量%、より好ましくは10〜35重量%の割合で含有される。エポキシ樹脂(D)の含有量が60重量%を超えると、エポキシ基濃度が高くなりすぎ、光硬化性樹脂組成物の保存安定性、現像適性が低下する場合がある。また、エポキシ樹脂は、光硬化性樹脂組成物の乾燥塗膜のタックを除去するためにも有効であり、添加量5重量%程度で十分な効果が発現する。エポキシ樹脂は、露光・アルカリ現像後においても反応することなく塗膜中に残存している酸性基と、加熱処理によって反応し、塗膜に優れた耐アルカリ性を付与することになる。
本発明の光硬化性樹脂組成物において、エポキシ樹脂(D)を配合する場合には、前記の(A)(B)両成分の合計が94重量%以下であることが好ましい。
【0087】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、光感度の向上を期待したい場合には、増感剤を添加してもよい。用いる増感剤としては、スチリル系化合物或いはクマリン系化合物が好ましい。具体的には、2−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジメチルアミノスチリル)キノリン、4−(p−ジエチルアミノスチリル)キノリン、2−(p−ジメチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−3,3−3H−インドール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズオキサゾール、2−(p−ジメチルアミノスチリル)ベンズイミダゾール、2−(p−ジエチルアミノスチリル)−ベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0088】
また、クマリン系化合物としては、7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン、7−エチルアミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、4,6−ジエチルアミノ−7−エチルアミノクマリン、3−(2−ベンズイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン、7−ジエチルアミノシクロペンタ(c)クマリン、7−アミノ−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチル(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オン、7−エチルアミノ−6−メチル−4−トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H−テトラヒドロ−9−カルベトキシ(1)ベンゾピラノ−(9,9a,1−gh)−キノリジン−10−オンなどが挙げられる。
【0089】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、露光・アルカリ現像後の加熱処理における硬化を期待する場合には、熱重合開始剤としてニトリル系アゾ系重合開始剤、非ニトリル系アゾ系重合開始剤および有機化酸化物を配合することができる。これらの熱重合開始剤を配合することにより、露光・アルカリ現像後においても反応することなく塗膜中に残存しているエチレン性不飽和結合の加熱処理による反応を促進し、架橋密度を向上させることができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、反応希釈剤としてメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドンなどの単官能性単量体を添加することができる。
本発明の光硬化性樹脂組成物には、界面活性剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を配合することができる。
【0090】
さらに、上記光硬化性樹脂組成物を用いてカラーフィルターの着色層を形成する場合には、該硬化性樹脂組成物中に顔料や染料等の色材を配合する。色材としては、画素部のR、G、B等の求める色に合わせて、有機着色剤および無機着色剤の中からカラーフィルターの加熱プロセスに耐え得る耐熱性があり、かつ、良好に分散し得る微粒子のものを選んで使用することができる。
有機顔料の例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyersand Colourists社発行)においてピグメントに分類されている化合物を挙げることができる。また、前記無機顔料あるいは体質顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において色材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0091】
色材を配合する場合には、光硬化性樹脂組成物中に通常40〜75重量%、好ましくは45〜70重量%の割合で配合する。色材の配合割合が40重量%を下回ると、各画素部の着色力が不十分であり、鮮明な画像の表示が困難であり、一方、75重量%を超えると、各画素部における光透過率が不十分となるなどの不都合を生じる。
光硬化性樹脂組成物に色材を配合する場合には、色材を均一かつ安定して分散させるために、該光硬化性樹脂組成物中に分散剤を配合してもよい。分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、シリコーン系、フッ素系等の界面活性剤を使用できる。界面活性剤の中でも、次に例示するような高分子界面活性剤(高分子分散剤)が好ましい。
【0092】
すなわち、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類;ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のポリエチレングリコールジエステル類;ソルビタン脂肪酸エステル類;脂肪酸変性ポリエステル類;3級アミン変性ポリウレタン類などの高分子界面活性剤が好ましく用いられる。
【0093】
本発明の光硬化性樹脂組成物には、塗料化および塗布適性を考慮して通常、フマレート系共重合体(A)、光硬化性化合物、光重合開始剤等に対する溶解性の良好な溶剤が含有される。使用可能な溶剤としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤などの有機溶剤を例示することができる。これらの溶剤の中では、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤がより好適に用いられる。さらに好ましくは、酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(DMDG)またはこれらを混合したものを使用することができる。これらの溶剤を用いて固形分濃度を5〜50重量%に調製する。
【0094】
上記の光硬化性樹脂組成物を製造するには、上記のフマレート系共重合体(A)、光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)、光重合開始剤(C)、および、その他の成分を適切な溶剤に投入し、ペイントシェーカー、ビーズミル、サンドグラインドミル、ボールミル、アトライターミル、2本ロールミル、3本ロールミルなどの一般的な方法で溶解、分散させればよい。なお、フマレート系共重合体(A)としては、合成反応後に有効成分であるフマレート系共重合体(A)を単離精製したものを用いるほか、合成反応により得られた反応溶液、その乾燥物などをそのまま用いてもよい。
【0095】
このようにして得られる光硬化性樹脂組成物を何らかの支持体に塗布して塗膜を形成し、該塗膜に紫外線、電離放射線等の活性化エネルギー線を照射すると、光硬化性化合物が架橋結合を形成してフマレート系共重合体(A)を包み込むか、または、フマレート系共重合体(A)の有するエチレン性不飽和結合自体が架橋結合を形成して硬化する。
硬化後の皮膜は、耐熱変色性に優れており、黄変などの変色や透明性を低下し難い。また、フマレート系共重合体(A)と光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物(B)の間にも架橋結合が形成されるので、架橋の反応点密度が高くなり露光感度、および、皮膜の強度や硬度が向上する。
【0096】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下特に断りのない限り、「部」とは重量部を示す。
材料の調製に用いた測定方法、試験方法を次に示す。
<酸価>
酸価は、JIS K0070:1992「化学製品の酸価、けん化価、エステル価、よう素価、水酸基価及び不けん化物の試験方法」に準じて、テトラヒドロフラン(THF)溶液に、一定量の樹脂を溶解させ、フェノールフタレインを指示薬としてKOH/エタノール溶液にて滴定し、測定を行った。
<重量平均分子量>
重量平均分子量(Mw)は、東ソー(株)製ゲルパミエーションクロマトグラフィー装置HLC−8220GPCを用い、カラムとして昭和電工(株)製SHODEX K−801を用い、THFを溶離液とし、RI検出器により測定してポリスチレン換算により求めた。
【0097】
硬化膜の試験方法は以下の通りである。
<380nm光線透過率>
得られたガラス基板上の硬化膜の光(380nm)の透過率を、ガラス基板
をリファレンスとし、吸光計(島津(株)製、UV−3100PC)を用いて測定した。
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」のうち、手掻き法で3H以上の鉛筆硬度を示す時に良好と判定した。
<耐熱性試験(250℃×1h.)>
硬化膜付きのガラス基板をクリーンオーブンにより、250℃で1時間加熱し、加熱試験硬化膜を得た。このようにして得られたガラス基板上の加熱試験硬化膜の可視光(380〜780nm)の透過率を、ガラス基板をリファレンスとし、吸光計(UV−3100PC、島津(株)製)を用いて測定した。
【0098】
<耐温純水試験後密着性>
保護膜を設けたガラス基板を80℃の純水に1時間浸漬後にJIS K5600−5−6:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法)」を行った結果の膜残存率が95%〜100%のときに良好と判定した。
<水蒸気透過度>
イオンバリア性の評価は、水蒸気透過度の測定を用いて行った。硬化膜をJIS K7129:1992「プラスチックフィルム及びシートの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)」のB法に準じて、水蒸気透過度測定装置MOCON社製PERMATRANを用いて40℃、90%R.H.条件で行った結果が、5.0g/m/day以下のとき良好と判定した。
<ITOスパッタ耐性>
保護膜を設けたガラス基板上に、10〜15Ω/cmの抵抗値が得られるように、230℃のスパッタ処理によりITO膜を形成させた。この基板のヘイズ値(Hz)値をDIRECT READING HAZE METER((株)東洋精機製作所製)を用いて評価した結果が、1.0以下である時に良好と判定した。
【0099】
<耐熱試験後色差>
R画素パターンを形成した基板を、クリーンオーブンにより、250℃で1時間加熱し、得られた硬化膜の加熱試験前後の色差ΔEabを、顕微分光測定装置 DSP−SP100(オリンパス光学工業(株)製)を用いて、CIE1976規格に基づき算出した。評価基準は、250℃で1時間加熱前後のΔEabが1未満の場合に○、ΔEabが1以上3未満の時に△、3以上のときに×とした。
<アルカリ現像性>
10cm画のガラス基板上に、スピンコーターにより、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmになるように形成した塗布膜形成した。塗布膜から100μmの距離に直径10μmのドットパターンを有するネガ型のフォトマスク配置し、プロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、100mJ/cmの強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施した後に形成された樹脂パターンの直径の、フォトマスクのドットパターンに対する寸法誤差が0〜2%であった場合に◎、2〜5%であった場合に○、5〜10%であった場合に△、10〜20%であった場合に×、20%以上であった場合に××とした。○以上の性能があれば、実用に供することができる。
【0100】
合成例1
<フマレート系共重合体A−1の前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):174.4g
・イタコン酸:279.5g(2.1mol)
・スチレン(St):546.1g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)100.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気下の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−1の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−1の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液へ、グリシジルメタクリレート(GMA)491.5g(3.5mol)、ピリジン35.0g、ハイドロキノン1.1gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応してフマレート系共重合体A−1の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−1の重量平均分子量は、15,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が2.2mmol/gであるフマレート系共重合体A−1が生成していることが確認できた。
【0101】
合成例2
<フマレート系共重合体A−2の前駆体の合成>
下記単量体の分量を
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):230.0g
・アクリル酸(AA):701.1g(9.7mol)
・スチレン(St):68.9g
に変更した以外は前記合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A-2の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−2の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液に対するグリシジルメタクリレート(GMA)の仕込み量を1198.4g(8.4mol)、ピリジン85.3gに変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行うことにより、フマレート系共重合体A−2の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−2の重量平均分子量は、34,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価32mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.57mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が3.7mmol/gであるフマレート系共重合体A−2が生成していることが確認できた。
【0102】
合成例3
<フマレート系共重合体A−3の前駆体の合成>
下記単量体の分量を
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):453.8g
・メタクリル酸(MAA):515.1g(5.98mol)
・スチレン(St):31.2g
に変更した以外は前記合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−3の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−3の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液に対するサイクロマーM100の仕込み量を3486.7g、ピリジン248.2gに変更した以外は、前記合成例1と同様の操作を行うことにより、フマレート系共重合体A−3の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−3の重量平均分子量は、4,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、GMAによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が2.8mmol/gであるフマレート系共重合体A−3が生成していることが確認できた。
【0103】
合成例4
<フマレート系共重合体A−4の前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):14.6g
・2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA):773.5g(6.8mol)
・スチレン(St):211.8g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)100.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気下の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(フマレート系共重合体A−4の前駆体)を得た。
<フマレート系共重合体A−4の合成>
前記の合成で得られた原料重合体溶液へ、2−アクリロイルエチルイソシアネート(AOI)1053.6g、ラウリン酸ジブチル錫1.1g、ハイドロキノン1.1gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応してフマレート系共重合体A−4の溶液を得た。
フマレート系共重合体A−4の重量平均分子量は、78,000であった。また、共重合樹脂溶液の固形分当たりの酸価を測定したところ、酸価30mgKOH/gであり、ここから計算した未変性のカルボキシル基の量は、0.53mmol/gであり、AOIによる変性反応の転化率は100%であり、配合設計通りエチレン性不飽和結合含有量が3.0mmol/gであるフマレート系共重合体A−4が生成していることが確認できた。
【0104】
<共重合樹脂溶液(a−1)の前駆体の合成>
下記分量の単量体
メタクリル酸メチル(MMA):639.4g
メタクリル酸(MAA):360.6g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−1)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−1)の合成>
前記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)327.1g、ピリジン23.3g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−1)を得た。
【0105】
比較合成例2
<共重合樹脂溶液(a−2)の前駆体の合成>
比較合成例1における単量体の分量を
・メタクリル酸メチル(MMA):33.9g
・メタクリル酸(MAA):966.1g
に変更した以外は比較合成例1と同様の操作を行うことにより、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−2)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−2)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、比較合成例1におけるグリシジルメタクリレート(GMA)の仕込み量を1552.4gに、また、ピリジンの仕込み量を110.5gに変更した以外は、比較合成例1と同様の操作を行うことにより、共重合樹脂溶液(a−2)を得た。
【0106】
比較合成例3
<共重合樹脂溶液(a−3)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):639.4g
・メタクリル酸(MAA):360.6g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−3)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−3)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)327.1g、ピリジン23.3g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−3)
を得た。
【0107】
比較合成例4
<共重合樹脂溶液(a−4)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):436.4g
・メタクリル酸(MAA):553.6g
・スチレン(St):10.0g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−3)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−4)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)612.6g、ピリジン43.6g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−4)を得た。
【0108】
比較合成例5
<共重合樹脂溶液(a−5)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):457.9g
・メタクリル酸(MAA):397.8g
・スチレン(St):144.4g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液((a−3))の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−5)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)382.1g、ピリジン27.2g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−5)を得た。
【0109】
比較合成例6
<共重合樹脂溶液(a−6)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):12.2g
・イタコン酸:244.4g
・スチレン(St):743.5g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−6)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−6)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)505.6g、ピリジン36.0g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−6)を得た。
【0110】
比較合成例7
<共重合樹脂溶液(a−7)前駆体の合成>
下記分量の単量体
・ジシクロヘキシルフマレート(DCHF):15.3g
・イタコン酸:885.5g
・スチレン(St):99.3g
を、パーブチルO(商品名、日本油脂(株)製の有機過酸化物)10.0gとともに、500gの酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解した溶液を、80℃に温度調整した2500gの3−MBAを入れた窒素雰囲気の重合槽中に6時間かけて滴下した後、同温度で4時間熟成して重合させ、原料重合体の溶液(共重合樹脂溶液(a−7)の前駆体)を得た。
<共重合樹脂溶液(a−7)の合成>
上記の合成で得られた原料重合体の溶液4010gへ、グリシジルメタクリレート(GMA)1972.7g、ピリジン140.4g、ハイドロキノン1.0gを仕込み、均一に溶解させた。次に、攪拌下の反応液中に空気をバブリングしながら80℃まで昇温し、80℃で5時間反応して共重合樹脂溶液(a−7)を得た。
【0111】
実施例1〜10
表1に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解混合したカラーフィルター用の光硬化性樹脂組成物の溶液を、孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後、10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(形式1H−DX2、ミカサ(株)製)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmの塗布膜を形成した。この塗布膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗布膜に2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(形式MA1200、大日本スクリーン製造(株)製)によって、100mJ/cmの強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
紫外線の照射後、塗布膜をクリーンオーブンにより、200℃で30分間乾燥し、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、380nm光線透過率、鉛筆硬度、耐熱性試験(230℃×1h.)、耐熱性試験(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0112】
実施例11〜20
次いで、表2に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に混合し、サンドミルにて十分に分散させることで調整した赤色(R用)光硬化性インク用組成物を、10cm画のガラス基板上に、スピンコーター(形式1H−DX2、ミカサ(株)製)により、塗布、乾燥し、乾燥膜厚2.2μmの塗布膜を形成した。この塗布膜をホットプレート上で90℃、3分間加熱した。加熱後、塗布膜に2.0kWの超高圧水銀ランプを装着したUVアライナー(形式MA1200、大日本スクリーン製造(株)製)によって、100mJ/cmの強度(405nm照度換算)で紫外線を照射した。
紫外線の照射後、塗布膜をクリーンオーブンにより、200℃で30分間乾燥し、膜厚2.0μmの硬化膜を得た。得られた硬化膜について、鉛筆硬度、耐熱試験後色差(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表1に併せて示す。
【0113】
また、表1、2における略号、および名称は次のものを示す。
A−1:合成例1で得られた共重合樹脂。固形分33.7%、酸価30mgKOH/g
A−2:合成例2で得られた共重合樹脂。固形分40.4%、酸価32mgKOH/g
A−3:合成例3で得られた共重合樹脂。固形分54.4%、酸価30mgKOH/g
A−4:合成例4で得られた共重合樹脂。固形分39.4%、酸価30mgKOH/g
DPE−6A(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):共栄社化学(株)製、商品名「ライトアクリレートDPE−6A」。
PE−4A(ペンタエリスリトールテトラアクリレート):共栄社化学(株)製、商品名「ライトアクリレートPE−4A」。
【0114】
イルガキュア184:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン。
イルガキュア369:チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1。
EP−828:ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
EP−1001:ジャパンエポキシレジン(株)製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂
パークミルD:日本油脂(株)製、有機過酸化物系熱重合開始剤、ジクミルペルオキシド。
パーブチルP:日本油脂(株)製、有機過酸化物系熱重合開始剤、α、α’−ビス(tert−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン。
【0115】
【表1】

【0116】
【表2】

【0117】
*1:各成分の固形分重量部である
比較例1〜8
表3に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に溶解混合したカラーフィルター用の光硬化性樹脂組成物の溶液を用い、実施例1〜10と同様の方法にて硬化膜を作製し、380nm光線透過率、鉛筆硬度、耐熱性試験(230℃×1h.)、耐熱性試験(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表3に併せて示す。
【0118】
【表3】

【0119】
比較例9〜16
次いで、表4に示す配合割合で酢酸3−メトキシブチル(3−MBA)に混合し、サンドミルにて十分に分散させることで調整した赤色(R用)光硬化性インク用組成物を用い、実施例11〜20と同様の方法にて作製した硬化膜について、鉛筆硬度、耐熱試験後色差(250℃×1h.)、耐温純水試験後密着性、水蒸気透過度、ITOスパッタ耐性試験の各試験を行った。結果を表4に併せて示す。
【0120】
【表4】

【0121】
表1の結果より、本発明の樹脂組成物を用いた実施例1〜10の場合は、得られた樹脂硬化物は、透明性、鉛筆硬度、耐熱性、密着性等の一般的性能を十分満足しながら、水蒸気透過度、および高温ITO処理耐性の性能が格段に優れており、本発明の目的の効果が申し分なく得られていることがわかる。さらに、表2の結果より、本発明の樹脂組成物に着色顔料を分散し、着色層用インクとして用いた場合でも、得られた硬化膜は、耐熱試験後の色差に優れ、良好な密着性、水蒸気透過度を損なわない。
これに対して、表3および4の各比較例においては、本発明に用いる共重合体を用いていない場合には耐熱透過率に劣ったり、バインダー成分である共重合体に含まれるエチレン性不飽和結合の含有量が不足している場合には、耐熱試験後の透過率、鉛筆硬度、水蒸気透過度、高温ITO処理耐性の性能に問題があり、本発明の目的の効果が得られないことがわかる。
【0122】
実施例21
(1)ブラックマトリックスの形成
下記分量の各成分を混合し、サンドミルにて十分に分散し、黒色顔料分散液を調整した。
<黒色顔料分散液の組成>
・黒色顔料:20重量部
・高分子分散剤(商品名 Disperbyk 111、ビックケミー・ジャパン(株)製):5重量部
・溶剤(3−MBA):75重量部
次に、下記分量の各成分を十分混合して、光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物を得た。
<光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物の組成>
・上記の黒色顔料分散液:55重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物:20重量部
・溶剤(3−MBA):35重量部
そして、厚み1.1mmのガラス基板(旭硝子(株)製AL材)上に上記光硬化性ブラックマトリックス用樹脂組成物をスピンコーターで塗布し、100℃で3分間乾燥させ、膜厚約1μmの光硬化性ブラックマトリックス層を形成した。該光硬化性ブラックマトリックス層を、超高圧水銀ランプで遮光パターンに露光した後、0.05%水酸化カリウム水溶液で現像し、その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して遮光部を形成すべき領域にブラックマトリックスを形成した。
【0123】
(2)着色層の形成
上記のようにしてブラックマトリックスを形成した基板上に、下記組成の赤色(R用)光硬化性樹脂インクをスピンコーティング法により塗布(塗布厚み1.5μm)し、その後70℃のオーブン中で30分間乾燥した。
次いで、赤色(R用)光硬化性インクの塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23.0℃)中に1分間浸してアルカリ現像し、赤色(R用)光硬化性樹脂インクの塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を180℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して赤色画素を形成すべき領域にレリーフパターンを形成した。
【0124】
次に、下記組成の緑色(G用)光硬化性樹脂インクを用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成した。
さらに、下記組成の青色(B用)光硬化性樹脂インクを用いて、赤色のレリーフパターン形成と同様の工程で、緑色画素を形成すべき領域に緑色のレリーフパターンを形成し、赤(R)、緑(G)、青(B)の3色からなる着色層を形成した。
【0125】
<赤色(R用)光硬化性樹脂インクの組成>
・C.I.ピグメントレッド177:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
<緑色(G用)光硬化性樹脂インクの組成>
・C.I.ピグメントグリーン36:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
<青色(B用)光硬化性樹脂インクの組成>
・C.I.ピグメントブルー15:9重量部
・ポリスルホン酸型高分子分散剤:3重量部
・実施例1の光硬化性樹脂組成物1:12重量部
・酢酸3−メトキシブチル:76重量部
【0126】
保護膜の形成
着色層を形成したガラス基板上に、実施例1の光硬化性樹脂組成物1をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚2μmの塗布膜を形成した。
光硬化性樹脂組成物1の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて着色層の形成領域に相当する領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して保護膜を形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
得られたカラーフィルターの表面に、基板温度230℃でアルゴンと酸素を放電ガスとし、DCマグネトロンスパッタリング法によってITOをターゲットとして透明電極膜を形成した。その後、更に透明電極膜上にポリイミドよりなる配向膜を形成した。
ガラス基板上に形成した透明電極膜の抵抗値が13.4Ω/cmであったのに対し、得られたカラーフィルター上に形成した透明電極膜の抵抗値は13.9Ω/cmであり、本発明の光硬化型樹脂組成物により作成したカラーフィルターの保護膜は十分なITO適性を有している。
【0127】
スペーサーの形成
着色層を形成したガラス基板上に、実施例1で得られた光硬化性樹脂組成物をスピンコーティング法により塗布、乾燥し、乾燥膜厚5μmの塗布膜を形成した。
光硬化性樹脂組成物1の塗布膜から100μmの距離にフォトマスクを配置してプロキシミティアライナにより2.0kWの超高圧水銀ランプを用いて、ブラックマトリックス上のスペーサーの形成領域のみに紫外線を10秒間照射した。次いで、0.05wt%水酸化カリウム水溶液(液温23℃)中に1分間浸漬してアルカリ現像し、光硬化性樹脂組成物の塗布膜の未硬化部分のみを除去した。その後、基板を200℃の雰囲気中に30分間放置することにより加熱処理を施して固定スペーサーを形成し、本発明のカラーフィルターを得た。
【0128】
次いで、上記カラーフィルターと、TFTを形成したガラス基板とを、エポキシ樹脂をシール材として用い、150℃で29kPa(0.3kgf/cm)の圧力をかけて接合してセル組みし、TN液晶を封入して液晶表示装置を作製した。
以上説明したように、本発明の光硬化性樹脂組成物をカラーフィルターのRGB用画素やブラックマトリックス、保護膜またはスペーサーとして用いた場合、不具合無くカラーフィルターを作成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(A)、(B)、(C)を、それぞれ(A)2〜80重量%、(B)5〜90重量%、(C)1〜10重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、99重量%以下であることを特徴とする光硬化性樹脂組成物。
(A)下記式(1)で表されるフマレート性の構成単位(a1)を1.5〜35重量%、下記式(2)で表される酸性官能基を有する構成単位(a2)を10〜50重量%、下記式(3)で表される芳香族炭素環を有する構成単位(a3)を3〜45重量%、および下記式(4a)または(4b)で表されるエチレン性不飽和結合を有する構成単位(a4)を20〜65重量%有するフマレート系共重合体
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して炭素数3〜8の分岐アルキル基もしくは置換分岐アルキル基、または、炭素数4〜8のシクロアルキル基もしくは置換分岐シクロアルキル基を表す。)
【化2】

(式中、Rは水素原子、メチル基またはカルボキシメチル基である。)
【化3】

(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数6〜12の芳香族炭化水素基を示す。)
【化4】

(式中、RおよびRは水素原子またはメチル基である。)
【化5】

(式中、RおよびR11は水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数2〜4のアルキレン基であり、R10はアルキレン基である。また、hは0または1の数である。)
(B)光重合性多官能(メタ)アクリレート化合物
(C)光重合開始剤
【請求項2】
フマレート系共重合体(A)中のエチレン性不飽和結合の含有濃度が2.1〜4.1mmol/gである請求項1に記載の光硬化性樹脂組成物
【請求項3】
さらに、(D)エポキシ樹脂を5〜45重量%含み、(A)(B)両成分の合計が45重量%以上、94重量%以下である請求項1または2に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
カラーフィルターの製造に用いられる請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を有するRGB用画素またはブラックマトリックス。
【請求項6】
透明基板上に形成された着色層を被覆する保護膜が、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものである保護膜。
【請求項7】
透明基板上に形成された着色層と、対向させるべき電極基板との間に設けられたスペーサーが請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させて形成したものであるスペーサー。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光硬化性樹脂組成物を硬化させてなる樹脂硬化物を部材として用いたカラーフィルター。

【公開番号】特開2007−137947(P2007−137947A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−330593(P2005−330593)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】