説明

光端末装置及びそれを備えた光伝送システム

【課題】光入力レベルの正常範囲を変更することができる光端末装置及びそれを備えた光伝送システムを提供する。
【解決手段】光信号を入力し、前記光信号に基づくRF出力信号を出力する光端末装置であって、入力した前記光信号のレベルが正常範囲内であるか否かを判定する判定手段(マイコン32)と、前記判定手段での判定に用いられる判定基準値を記憶する記憶手段(不揮発性メモリ32A)と、前記判定手段の判定結果を出力する判定結果出力手段(LED34)と、前記判定基準値を設定するための判定基準値設定コマンドを前記光信号から抽出する抽出手段(光電変換回路26、分岐器29、及びFSK復調器31)と、前記判定基準値を前記判定基準値設定コマンドに基づいて設定する設定手段(マイコン32)とを備える光端末装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光伝送システムの加入者側に設置され、受信した放送用光信号を電気信号に変換する光端末装置及びそれを備えた光伝送システムに関する。光端末装置は、放送用光加入者端末装置(V-ONU:Video-Optical Network Unit)及び通信用光加入者端末装置(D-ONU:Digital-Optical Network Unit)を有する放送通信一体型光加入者端末装置(V/D-ONU)であってもよく、V-ONUであってもよい。
【背景技術】
【0002】
光ファイバケーブルを用いたケーブルテレビ放送システム等の光伝送システムでは、加入者宅毎に光端末装置(例えば、特許文献1〜3参照)が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−288384号公報(段落0022、第2図)
【特許文献2】特開2007−124175号公報(段落0034、段落0035、第4図)
【特許文献3】実用新案登録第3134762号公報(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光端末装置では、光入力レベルの正常範囲が固定されており変更することができなかった。
【0005】
また、光端末装置では、光電変換回路の特性のばらつきによって、光入力レベルのレベル判定を行うマイクロコンピュータに入力される電圧にばらつきが生じる。しかしながら、従来の光端末装置では、光入力レベルの正常範囲が固定されており変更することができなかったため、光入力レベルのレベル判定を行うマイクロコンピュータに入力される電圧のばらつきを考慮することができず、実際には問題のない光入力レベルであるにもかかわらず光入力レベルが正常範囲でないと判定されてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記の状況に鑑み、光入力レベルの正常範囲を変更することができる光端末装置及びそれを備えた光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明に係る光端末装置は、光信号を入力し、前記光信号に基づくRF出力信号を出力する光端末装置であって、入力した前記光信号のレベルが正常範囲内であるか否かを判定する判定手段と、前記判定手段での判定に用いられる判定基準値を記憶する記憶手段と、前記判定手段の判定結果を出力する判定結果出力手段と、前記判定基準値を設定するための判定基準値設定コマンドを前記光信号から抽出する抽出手段と、前記判定基準値を前記判定基準値設定コマンドに基づいて設定する設定手段とを備える構成とする。
【0008】
このような構成によると、入力した光信号のレベルが正常範囲内であるか否かを判定する判定手段を備えているので、光入力レベルが正常範囲内であるか否かを判定することができる。さらに、このような構成によると、判定基準値を判定基準値設定コマンドに基づいて設定する設定手段を備えているので、設定手段によって再設定を行うことにより、光入力レベルの正常範囲を変更することができる。
【0009】
また、前記記憶手段が不揮発性メモリであることが望ましい。これにより、停電などにより光端末装置への電源供給が遮断されその後復旧した場合でも、判定基準値を記憶しておくことができる。
【0010】
また、前記光信号を電気信号に変換する光電変換手段を備え、前記設定手段が、前記抽出手段によって前記判定基準値設定コマンドが抽出されたときの前記光電変換手段から出力される入力レベルを検波した検波電圧を前記判定基準値として、前記判定基準値を設定するようにしてもよい。
【0011】
このような構成によると、光電変換手段の特性ばらつきが判定基準値の設定に反映されるので、実際には問題のない光入力レベルであるにもかかわらず光入力レベルが正常範囲内にないと判定されてしまうおそれがなくなる。
【0012】
また、上記目的を達成するために本発明に係る光伝送システムは、上記いずれかの構成の光端末装置と、前記光端末装置を遠隔制御する遠隔制御装置と、光送信装置とを備え、前記遠隔制御装置が、判定基準値を設定するための判定基準値設定コマンドを出力し、前記光送信装置が、前記判定基準値変更コマンドを含む電気信号を光信号に変換し、前記光信号を前記光端末装置に送信する構成とする。
【0013】
このような構成によると、光伝送システムの運用開始後に光端末装置の光入力レベルの正常範囲を変更したいという要求が生じた場合にも対応することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、光端末装置が、入力した光信号のレベルが正常範囲内であるか否かを判定する判定手段と、判定基準値を判定基準値設定コマンドに基づいて設定する設定手段とを備えているので、光入力レベルの正常範囲を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】は、本発明の第1実施形態に係るCATV用光伝送システムの概略構成を示す図である。
【図2】は、図1に示すCATV用光伝送システムで用いられる光端末装置の外観例を示す斜視図である。
【図3】は、V-ONUの概略構成例を示す図である。
【図4】は、工場内での判定基準値を設定する際のシステム構成例を示す図である。
【図5】は、正常範囲上限値設定コマンドのデータ構成例を示す図である。
【図6】は、正常範囲上限値設定コマンドの他のデータ構成例を示す図である。
【図7】は、正常範囲下限値設定コマンドのデータ構成例を示す図である。
【図8】は、正常範囲下限値設定コマンドの他のデータ構成例を示す図である。
【図9】は、正常範囲上限値設定コマンド及び正常範囲下限値設定コマンドのデータ構成の変形例を示す図である。
【図10】は、本発明の第2実施形態に係るCATV用光伝送システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。本発明の第1実施形態に係るCATV用光伝送システムの概略構成を図1に示す。図1に示す光伝送システムは、V-ONU遠隔制御用パーソナルコンピュータ(以下、V-ONU遠隔制御用パソコンという)1と、FSK(Frequency Shift Keying)変調器2と、混合器3と、光送信器4と、光ファイバ5と、光分岐器6と、光ファイバ7−1〜7−nと、遠隔制御機能を有するV-ONU8−1〜8−nと、テレビ受信機9−1〜9−nと、加入者側パーソナルコンピュータ(以下、加入者側パソコン)10―1〜10−nと、D-ONU11−1〜11−nと、光ファイバ12−1〜12−nと、光分岐器13と、光ファイバ14と、通信系機器15とを備えている。
【0017】
本発明に係る光端末装置の一例であるV/D-ONU16−1は、V-ONU8−1とD-ONU11−1とによって構成される。本発明に係る光端末装置の一例であるV/D-ONU16−2〜16−nについても同様であり、V/D-ONU16−kはV-ONU8−kとD-ONU11−kとによって構成される(kは2以上n以下の自然数)。V-ONU遠隔制御用パソコン1は、請求項に記載の遠隔制御装置の一例である。光送信器4は、請求項に記載の光送信装置の一例である。また、図1に示す光伝送システムにおけるV-ONU遠隔制御の仕様は、日本ケーブルラボが制定したV-ONU遠隔制御運用仕様(JCL SPEC-014 1.0版)に準拠したものとする。
【0018】
V-ONU遠隔制御用パソコン1と、FSK変調器2と、混合器3と、光送信器4と、通信系機器15とはセンタ局に設置され、光分岐器6及び13は伝送線路中に設置され、V/D-ONU16−1〜16−nと、テレビ受信機9−1〜9−nと、加入者側パソコン10−1〜10−nとは各加入者宅に設置される。なお、光分岐器6及び13はセンタ局側に設置してもよい。
【0019】
V-ONU遠隔制御用パソコン1は、V-ONU遠隔制御用ソフトウェアを内部の記憶部(不図示)に格納しており、そのV-ONU遠隔制御用ソフトウェアを実行することで、V-ONU8−1〜8−nに対応する遠隔制御命令を周期的に生成し、その遠隔制御命令をFSK変調器2に出力する。FSK変調器2は、V-ONU遠隔制御用パソコン1からの遠隔制御命令をFSK変調して混合器3に送出する。
【0020】
混合器3は、TV信号であるRF信号と、FSK変調器2からのFSK変調された遠隔制御命令とを混合した混合信号を光送信器4に出力する。光送信器4は、混合器3からの混合信号を光信号に変換し、その光信号を光ファイバ5経由で光分岐器6に伝送する。光送信器4は、例えば、混合器3からの混合信号の変化に応じて光変調度を調整した後、レーザーダイオードにより混合器3からの混合信号を光信号に変換している。
【0021】
光分岐器6は、光ファイバ5によって伝送されてきた光信号をn(nは自然数)分岐して各光ファイバ7−1〜7−n経由で各加入者宅の各V-ONU8−1〜8−nに伝送する。各加入者宅の各V-ONU8−1〜8−nは、受信した光信号を電気信号に変換し、その電気信号に含まれているRF信号を各加入者宅の各同軸ケーブルを介して各加入者宅の各テレビ受信機9−1〜9−nに伝送する。また、各加入者宅の各V-ONU8−1〜8−nは、受信した光信号を変換して得られた電気信号に含まれているFSK変調された遠隔制御命令を、内部のFSK復調器(図1において不図示)によってFSK復調して遠隔制御命令を認識している。
【0022】
そして、センタ局からV-ONUへの遠隔制御は、V-ONU8−1〜8−nに対して個別に或いは一斉に行われる。個別の遠隔制御を可能にするために、V-ONU8−1〜8−n各々に固有識別情報(例えばアドレス)を付与する必要がある。個別の遠隔制御を行う場合、制御対象のV-ONUに付与した固有識別情報(例えばアドレス)を指定して制御を実行することになる。
【0023】
したがって、個別の遠隔制御を可能にするために、V-ONU8−1〜8−n各々は、工場において固有識別情報(例えばアドレス)を付与され、その後出荷され、最終的に図1に示すように各加入者宅に設置される。
【0024】
各D-ONU11−1〜11−nは、各V-ONU8−1〜8−nとともに各光端末装置16−1〜16−nの筐体内部に収納されている(後述の図2参照)。各D-ONU11−1〜11−nと各加入者側パソコン10−1〜10−nとはLANケーブルで接続されている。各D-ONU11−1〜11−nは、通信系のユニットであり、例えばインターネット接続などに使用され、各加入者側パソコン10−1〜10−nを各光ファイバ12―1〜12−n、光分岐器13、光ファイバ14、及び通信系機器15を介してインターネット等のネットワークに接続することができる。
【0025】
次に、V/D-ONU16−1〜16−n並びにその構成要素であるV-ONU8−1〜8−n及びD-ONU11−1〜11−nについて図2〜図5を参照して詳細に説明する。
【0026】
V/D-ONU16−1〜16−nはそれぞれ例えば図2に示すような外観であり、箱状の本体20と、本体20の開放部を開閉自在に覆う蓋21とを備え、本体20内部に光ファイバトレイ22と信号処理回路ユニット23とD-ONU11とを収納している。本体20の底面20Aに設けられた光ファイバ挿入口24を通じて外部から光ファイバが導入され、その導入された光ファイバが光ファイバトレイ22上に巻き付けられ、前記光ファイバの端部に設けた光コネクタが光中継アダプタに接続される。また、本体20の底面20Aには、光ファイバ挿入口24の他に同軸ケーブル接続用コネクタ25も設けられている。光ファイバによって伝送された光信号は、信号処理回路ユニット23において信号処理されて、電気信号(RF信号)に変換され、同軸ケーブル接続用コネクタ25から外部に出力される。なお、図2では、本体20内の右側に信号処理回路ユニット23が収納されていることを表すために、その上部に搭載される光ファイバトレイの図示を省略しているが、実際には本体20の左側と同様に光ファイバトレイを搭載している。
【0027】
また、V-ONU8−1〜8−nはそれぞれ例えば図3に示す概略構成のV-ONUである。図3に示すV-ONUは、入力ポート(光中継アダプタ)INと、入力ポートINからの光信号を電気信号に変換する光電変換回路(例えばフォトダイオード)26と、光電変換回路26から出力された電気信号を増幅する増幅器28と、増幅器28から出力された電気信号をTV信号であるRF信号と遠隔制御命令を含むFSK復調用のRF信号に分離する機能を有する分岐器29と、分岐器29の幹線出力からのTV信号であるRF信号に対してレベル調整を行うレベル調整部30と、レベル調整部30から送出される信号をRF出力信号としてテレビ受信機などに外部出力する出力端子(同軸ケーブル接続用コネクタ)とを備えている。
【0028】
図3に示すV-ONUは、さらに、分岐器29の分岐の出力端から送出されるFSK復調用のRF信号をFSK復調するFSK復調器31と、マイクロコンピュータ(以下、マイコンという)32と、マイコン32の制御に応じたLED(Light Emitting Diode)駆動信号を出力するLED駆動部33と、LED駆動部33からのLED駆動信号によって駆動するLED34とを備えている。マイコン32は、不揮発性メモリ(例えばフラッシュメモリ)32Aと、A/D変換器(不図示)とを内蔵している。
【0029】
マイコン32は、請求項に記載の判定手段の一例であり、請求項に記載の設定手段の一例でもある。不揮発性メモリ32Aは、請求項に記載の記憶手段の一例である。LED34は、請求項に記載の判定結果出力手段の一例である。光電変換回路26、分岐器29、及びFSK復調器31は、請求項に記載の抽出手段の一例である。光電変換回路26は、請求項に記載の光電変換手段の一例である。
【0030】
光電変換回路26の光入力レベルを検波した検波電圧はマイコン32のポートP1に入力される。マイコン32は、ポートP1に入力される検波電圧をA/D変換器によってデジタル値に変換する。したがって、ポートP1に入力される検波電圧のA/D変換値は、入力ポートINに入力される光信号のレベル(=光端末装置の光入力レベル)に応じて変化する。また、検波電圧を調整する回路(例えば可変抵抗)を用いて、電圧値を可変させ、入力ポートINへ入力される電圧を一定にさせることもできる。
【0031】
マイコン32は、光入力レベルが正常範囲内であるか否かを判定する際に用いられる正常範囲上限値および正常範囲下限値を不揮発性メモリ32Aに予め格納している。また、マイコン32は、固有識別情報(例えばアドレス)も不揮発性メモリ32Aに予め格納している。
【0032】
マイコン32は、ポートP1に入力される検波電圧のA/D変換値を、正常範囲上限値および正常範囲下限値それぞれと比較し、ポートP1に入力される検波電圧のA/D変換値が正常範囲下限値以上であって正常範囲上限値以下であれば光入力レベルが正常範囲内であると判定し、ポートP1に入力される検波電圧のA/D変換値が正常範囲下限値未満あるいは正常範囲上限値より大きければ光入力レベルが正常範囲内でないと判定する。
【0033】
なお、上記の実施例では、正常範囲上限値と正常範囲下限値の両方を設定しているが、いずれか一方のみを設定して光入力レベルが正常範囲内であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
マイコン32は、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果に応じてLED駆動部33を制御する。例えば、LED34を緑色LEDで構成し、光入力レベルが正常範囲内であるという判定結果が得られた場合はLED34を点灯させ、光入力レベルが正常範囲内でないという判定結果が得られた場合はLED34を消灯させるようにすればよい。さらに、マイコン32は、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果に関する通知信号を、V-ONUのアドレスを付与した形式で出力する。または、判定結果に関する通知信号をOK/NGの2値で出力する。当該通知信号は、通知信号出力端子35からD-ONU11(図2参照)に送信され、D-ONU11によってセンタ局の通信系機器15に伝送され、さらに通信系機器15からV-ONU遠隔制御用パソコン1に送信される。これにより、V-ONU遠隔制御用パソコン1が、V-ONU8−1〜8−nそれぞれについて、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果を把握することができる。
【0035】
図3に示すV-ONUは、判定基準値(正常範囲上限値、正常範囲下限値)を遠隔制御命令に応じて変更する構成である。具体的には、マイコン32が、FSK復調器31から判定基準値設定コマンド(遠隔制御命令の一種)を受け取り、その判定基準値設定コマンドに基づいて、不揮発性メモリ32Aに格納している判定基準値(正常範囲上限値、正常範囲下限値)を書き換える。
【0036】
このような構成により、光入力レベルの正常範囲を変更することができる。また、図3に示すV-ONUは、判定基準値を不揮発性メモリ32Aに格納しているので、停電などにより図3に示すV-ONUへの電源供給が遮断されその後復旧した場合でも、判定基準値を記憶しておくことができる。
【0037】
判定基準値の設定は、工場において行われ、その後出荷され、最終的に図1に示すように各加入者宅に設置される。工場内での判定基準値の設定は、例えば図4に示すシステム構成で行うとよい。図4に示す判定基準値設定用システムは、パーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)36と、FSK変調器37と、光送信器38と、光ATT(Attenuator)39と、光ファイバ40と、上述した構成の光端末装置16−m(mは1以上n以下の自然数)とによって構成される。
【0038】
パソコン36は、判定基準値設定用ソフトウェアを内部の記憶部(不図示)に格納しており、その判定基準値設定用ソフトウェアを実行することで、判定基準値設定コマンド(遠隔制御命令の一種)をFSK変調器37に出力する。FSK変調器37は、判定基準値設定コマンドをFSK変調して光送信器38に出力する。光送信器38は、FSK変調された判定基準値設定コマンドを光信号に変換する。光送信器38は、例えば、FSK変調器37から出力される信号の変化に応じて光変調度を調整した後、レーザーダイオードによりFSK変調器37から出力される信号を光信号に変換している。光送信器38から送信される光信号は、光ATT39によってレベル調整されたのち、光ファイバ40経由で光端末装置16−mに伝送される。
【0039】
正常範囲上限値を設定する場合、まず光端末装置16−mの光入力レベルが0dBmになるように光ATT39でレベル調整を行う。当該レベル調整が完了した後、パソコン36が、正常範囲上限値設定コマンド(判定基準値設定コマンドの一種)をFSK変調器37に出力する。ここで、正常範囲上限値設定コマンドのデータ構成例を図5に示す。図5に示す正常範囲上限値設定コマンドは、シリアルデータの先頭を示す制御コードであるSTX、正常範囲上限値設定コマンドであることを示す第1の識別子、チェックサム、シリアルデータの末尾を示す制御コードであるETXの順にデータ送信されるシリアルコマンドである。なお、チェックサムは、チェックサムより前のデータ全てを対象とするチェックサムでも良く、チェックサムより前のデータの一部のみを対象とするチェックサムでもよい。
【0040】
そして、光端末装置16−m内のマイコン32(図3参照)は、図5に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドを受け取り、正常範囲上限値設定コマンドに第1の識別子が含まれていることを確認すると、その時点でポートP1に入力されている検波電圧のA/D変換値を正常範囲上限値として不揮発性メモリ32Aに書き込む。これにより、光入力レベル0dBmに光電変換回路26内のフォトダイオードの特性ばらつきが反映された結果(=第1の識別子を確認した時点でポートP1に入力されている検波電圧のA/D変換値)が正常範囲上限値となるので、実際には問題のない光入力レベルであるにもかかわらず光入力レベルが正常範囲の上限を上回っていると判定されてしまうおそれがなくなる。
【0041】
図5に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドの代わりに、例えば図6に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドを用いるようにしてもよい。図6に示す正常範囲上限値設定コマンドは、シリアルデータの先頭を示す制御コードであるSTX、正常範囲上限値設定コマンドであることを示す第2の識別子、判定基準値、チェックサム、シリアルデータの末尾を示す制御コードであるETXの順にデータ送信されるシリアルコマンドである。なお、チェックサムは、チェックサムより前のデータ全てを対象とするチェックサムでも良く、チェックサムより前のデータの一部のみを対象とするチェックサムでもよい。
【0042】
光端末装置16−m内のマイコン32(図3参照)は、図6に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドを受け取り、正常範囲上限値設定コマンドに第2の識別子が含まれていることを確認すると、正常範囲上限値設定コマンドに含まれている判定基準値を正常範囲上限値として不揮発性メモリ32Aに書き込む。図6に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドを用いた場合は、図5に示すデータ構成の正常範囲上限値設定コマンドを用いた場合と異なり、正常範囲上限値に光電変換回路26内のフォトダイオードの特性ばらつきが反映されていない点に留意する必要がある。
【0043】
一方、正常範囲下限値を設定する場合、まず光端末装置16−mの光入力レベルが−6dBmになるように光ATT39でレベル調整を行う。当該レベル調整が完了した後、パソコン36が、正常範囲下限値設定コマンド(判定基準値設定コマンドの一種)をFSK変調器37に出力する。ここで、正常範囲下限値設定コマンドのデータ構成例を図7に示す。図7に示す正常範囲下限値設定コマンドは、シリアルデータの先頭を示す制御コードであるSTX、正常範囲下限値設定コマンドであることを示す第3の識別子、チェックサム、シリアルデータの末尾を示す制御コードであるETXの順にデータ送信されるシリアルコマンドである。なお、チェックサムは、チェックサムより前のデータ全てを対象とするチェックサムでも良く、チェックサムより前のデータの一部のみを対象とするチェックサムでもよい。
【0044】
そして、光端末装置16−m内のマイコン32(図3参照)は、図7に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドを受け取り、正常範囲下限値設定コマンドに第3の識別子が含まれていることを確認すると、その時点でポートP1に入力されている検波電圧のA/D変換値を正常範囲下限値として不揮発性メモリ32Aに書き込む。これにより、光入力レベル−6dBmに光電変換回路26内のフォトダイオードの特性ばらつきが反映された結果(=第3の識別子を確認した時点でポートP1に入力されている検波電圧のA/D変換値)が正常範囲下限値となるので、実際には問題のない光入力レベルであるにもかかわらず光入力レベルが正常範囲の下限を下回っていると判定されてしまうおそれがなくなる。
【0045】
図7に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドの代わりに、例えば図8に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドを用いるようにしてもよい。図8に示す正常範囲下限値設定コマンドは、シリアルデータの先頭を示す制御コードであるSTX、正常範囲下限値設定コマンドであることを示す第4の識別子、判定基準値、チェックサム、シリアルデータの末尾を示す制御コードであるETXの順にデータ送信されるシリアルコマンドである。なお、チェックサムは、チェックサムより前のデータ全てを対象とするチェックサムでも良く、チェックサムより前のデータの一部のみを対象とするチェックサムでもよい。
【0046】
光端末装置16−m内のマイコン32(図3参照)は、図8に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドを受け取り、正常範囲下限値設定コマンドに第4の識別子が含まれていることを確認すると、正常範囲下限値設定コマンドに含まれている判定基準値を正常範囲下限値として不揮発性メモリ32Aに書き込む。図8に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドを用いた場合は、図7に示すデータ構成の正常範囲下限値設定コマンドを用いた場合と異なり、正常範囲下限値に光電変換回路26内のフォトダイオードの特性ばらつきが反映されていない点に留意する必要がある。
【0047】
また、光端末装置16−mは、図1に示す光伝送システムの運用開始後に光端末装置16−1〜16−nの光入力レベルの正常範囲を変更したいという要求が生じた場合にも対応することができる。V-ONU遠隔制御用パソコン1は、光端末装置16−mの光入力レベルの正常範囲を変更する必要が生じたときに、判定基準値設定コマンド(例えば、図5及び図7に示すデータ構成のコマンド、或いは、図6及び図8に示すデータ構成のコマンド)をV-ONU8−1〜8−nに送信する。
【0048】
V-ONU遠隔制御用パソコン1が図5又は図6に示すデータ構成のコマンドをV-ONU8−1〜8−nに送信した場合、V-ONU8−1〜8−n全てにおいて不揮発性メモリ32Aに記憶されている正常範囲上限値が書き換わる。また、V-ONU遠隔制御用パソコン1が図7又は図8に示すデータ構成のコマンドをV-ONU8−1〜8−nに送信した場合、V-ONU8−1〜8−n全てにおいて不揮発性メモリ32Aに記憶されている正常範囲下限値が書き換わる。
【0049】
V-ONU8−1〜8−nに対して個別に又はグループ毎に正常範囲上限値或いは正常範囲下限値を変更することを可能にするためには、例えば、図5〜図8に示すデータ構成のコマンドをそれぞれ図9(a)〜(d)に示すデータ構成に変更するとよい。また、グループ毎に判定基準値を変更する場合には、例えば、V-ONU遠隔制御用パソコン1がV-ONU8−1〜8−nについてのアドレスとグループとの対応関係を記憶しておくようにするとよい。図9(a)〜(d)に示すデータ構造のコマンドでは、STXと識別子との間に、正常範囲上限値或いは正常範囲下限値を変更するV-ONUを特定するためのアドレス即ち正常範囲上限値或いは正常範囲下限値の変更対象であるV-ONUのアドレスが設けられている。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係るCATV用光伝送システムの概略構成を図10に示す。なお、図10において、図1と同一の部分には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0051】
図10に示す光伝送システムは、V-ONU遠隔制御用パーソナルコンピュータ1と、FSK変調器2と、混合器3と、光送信器4と、光ファイバ5と、光分岐器6と、光ファイバ7−1〜7−nと、遠隔制御機能を有するV-ONU8−1〜8−nと、テレビ受信機9−1〜9−nとを備えている。即ち、図10に示す光伝送システムは、図1に示す光伝送システムから、加入者側パソコン10と、D-ONU11−1〜11−nと、光ファイバ12−1〜12−nと、光分岐器13と、光ファイバ14と、通信系機器15とを取り除いた構成である。
【0052】
図10に示す光伝送システムでは、各V-ONU8−1〜8−nが本発明に係る光端末装置に該当する。また、図10に示す光伝送システムで用いられている光端末装置(V-ONU8−1〜8−n)の外観例は、図2に示す外観とほぼ同様であり、図2からD-ONU11を取り除いたものとなる。また、図10に示す光伝送システムで用いられている光端末装置(V-ONU8−1〜8−n)の概略構成例は、図3に示す構成とほぼ同様であり、図3から通知信号出力端子35を取り除き、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果に関する通知信号をマイコン32が出力しない構成としたものである。
【0053】
したがって、図10に示す光伝送システムは、図1に示す光伝送システムと同様に、光入力レベルの正常範囲を変更することができる。
【0054】
なお、本発明に係る光端末装置及び本発明に係る光伝送システムは、上述した第1及び第2実施形態の構成に限定されることはない。
【0055】
例えば、図3に示すV-ONUは、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果を、LED34の点灯/消灯により、出力している構成であるが、当該構成に代えて、例えば、光入力レベルが正常範囲内であるか否かの判定結果を、LEDの色を緑/赤にしてもよいし、音声出力及びD-ONUを介してのV-ONU遠隔制御用パソコン1への通知信号出力或いは音声出力により、出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 V-ONU遠隔制御用パソコン
2 FSK変調器
3 混合器
4 光送信器
5 光ファイバ
6 光分岐器
7−1〜7−n 光ファイバ
8−1〜8−n V-ONU(本発明に係る光端末装置の一例)
9−1〜9−n テレビ受信機
10―1〜10−n 加入者側パソコン
11、11−1〜11−n D-ONU
12−1〜12−n 光ファイバ
13 光分岐器
14 光ファイバ
15 通信系機器
16−1〜16−n V/D-ONU
20 本体
20A 本体の底面
21 蓋
22 光ファイバトレイ
23 信号処理回路ユニット
24 光ファイバ挿入口
25 同軸ケーブル接続用コネクタ
26 光電変換回路
28 増幅器
29 分岐器
30 レベル調整部
31 FSK復調器
32 マイコン
32A 不揮発性メモリ
33 LED駆動部
34 LED
35 通知信号出力端子
36 パソコン
37 FSK変調器
38 光送信器
39 光ATT
40 光ファイバ
P1 ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を入力し、前記光信号に基づくRF出力信号を出力する光端末装置において、
入力した前記光信号のレベルが正常範囲内であるか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段での判定に用いられる判定基準値を記憶する記憶手段と、
前記判定手段の判定結果を出力する判定結果出力手段と、
前記判定基準値を設定するための判定基準値設定コマンドを前記光信号から抽出する抽出手段と、
前記判定基準値を前記判定基準値設定コマンドに基づいて設定する設定手段とを備えることを特徴とする光端末装置。
【請求項2】
前記記憶手段が不揮発性メモリである請求項1に記載の光端末装置。
【請求項3】
前記光信号を電気信号に変換する光電変換手段を備え、
前記設定手段が、前記抽出手段によって前記判定基準値設定コマンドが抽出されたときの前記光電変換手段から出力される入力レベルを検波した検波電圧を前記判定基準値として、前記判定基準値を設定する請求項1又は請求項2に記載の光端末装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の光端末装置と、前記光端末装置を遠隔制御する遠隔制御装置と、光送信装置とを備え、
前記遠隔制御装置が、判定基準値を設定するための判定基準値設定コマンドを出力し、
前記光送信装置が、前記判定基準値設定コマンドを含む電気信号を光信号に変換し、前記光信号を前記光端末装置に送信することを特徴とする光伝送システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−239497(P2010−239497A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−86738(P2009−86738)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000109668)DXアンテナ株式会社 (394)
【Fターム(参考)】