説明

光素子

【課題】本発明は、メサ構造の端面に形成した誘電体膜が活性層の近傍で剥がれることを抑制できる光素子を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光素子は、基板上に形成されたメサ構造であってその内部に活性層を含むものと、該メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備えるものである。そして、該メサ構造の端面は、3箇所以上の角部を有するように形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メサ構造の端面に誘電体膜が形成された光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、活性層(多重量子井戸)が形成されたメサ構造を有する光素子が開示されている。この光素子のメサ構造の端面には誘電体膜が形成されている。誘電体膜は、メサ構造の端面における光の反射率を制御するために形成されるものである。従って、この誘電体膜は、メサ構造の端面から剥がれず当該端面に密着していることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−108692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メサ構造の端面に誘電体膜を形成した後、光素子にはダイボンドやワイヤボンドなどの処理が施される。そして、これらの処理に伴い、誘電体膜に機械的応力や熱的応力などの応力が加えられる。前述の応力により、誘電体膜がメサ構造の端面から剥がれることがあった。特に、メサ構造の端面の角部に形成された誘電体膜には応力が集中しやすく、この部分で誘電体膜が剥がれやすい。そして、メサ構造の端面の角部は活性層に近いため、この部分で誘電体膜が剥がれると光素子の特性が変動してしまうことがあった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、メサ構造の端面に形成した誘電体膜が活性層の近傍で剥がれることを抑制できる光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る第1の光素子は、基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、該メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備える。そして、該メサ構造の端面は、3箇所以上の角部を有する形状であることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る第2の光素子は、基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、該メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備える。そして、該メサ構造の端部の角は、平面で面取りされ、又は曲面で丸められていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第3の光素子は、基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、該メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備える。そして、該メサ構造の端部の幅は、該メサ構造のほかの部分の幅よりも広いことを特徴とする。
【0009】
本発明に係る第4の光素子は、基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、該メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備える。そして、該メサ構造の端部の幅は、該メサ構造のほかの部分の幅よりも狭いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、メサ構造の端面に形成した誘電体膜が活性層近傍で剥がれることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光素子の斜視図である。
【図2】メサ構造の端部及び誘電体膜の形状を示す図である。
【図3】図1のIII−III破線における断面図である。
【図4】比較例の光素子の斜視図である。
【図5】メサ構造の端面の角部における誘電体膜の剥がれを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る光素子の変形例を示す斜視図である。
【図7】図6のメサ構造の端面に形成された誘電体膜を示す斜視図である。
【図8】他の変形例を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る光素子の平面図である。
【図10】図9に示す光素子の斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態3に係る光素子の平面図である。
【図12】図11に示す光素子の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る光素子の斜視図である。光素子10は、基板12を備えている。基板12はInPで形成されている。基板12上には、光素子10の寄生容量を低減し光素子10を高速化するために、ストライプ状のメサ構造14が形成されている。このメサ構造14は、長手方向両端に端面を有し、短手方向に側面を有している。側面は、メサ構造14を挟むように形成された溝16及び18により形成されている。
【0013】
メサ構造14の両端面に重なるように誘電体膜24及び26が形成されている。誘電体膜24及び26はメサ構造14の両端面のみならず、基板12の両端面にも形成されている。誘電体膜24及び26は、メサ構造14の端面での反射率を所望の値として効率や閾値電流等の特性を最適化するために、SiO2とTa2O5が交互に形成された膜である。さらに、メサ構造14、溝16及び18、並びに基板12上には表面電極20が形成されている。表面電極20が形成されていない部分には、絶縁膜22が形成されている。また、基板12の裏面側には裏面電極28が形成されている。
【0014】
図2はメサ構造14の端部(端面を含む部分をいう、以下同じ)及び誘電体膜24の形状を示す図である。メサ構造14の端部は、上面14A、斜面14B、及び側面14Cを備えている。上面14Aと側面14Cは、斜面14Bを介して接続されている。その結果、メサ構造14の端面は4つの角部14a、14b、14c及び14dを有している。また、メサ構造14の端面に重なるように形成された誘電体膜24も4つの角部を有している。
【0015】
図3は、図1のIII−III破線における断面図である。メサ構造14には活性層30が形成されている。活性層30の上には上クラッド層32が形成され、活性層30の下には下クラッド層34が形成されている。活性層30の側面にはエピタキシャル層36が形成されている。上クラッド層32及びエピタキシャル層36上にはコンタクト層38が形成されている。コンタクト層38はその上面において表面電極20と接している。活性層30、上クラッド層32、下クラッド層34、エピタキシャル層36、及びコンタクト層38を外部から保護するために絶縁膜40が形成されている。
【0016】
以下、本発明の実施の形態1に係る光素子10の特徴の説明に先立って、理解を容易にするため、比較例について説明する。図4は比較例の光素子50の斜視図である。光素子50は、メサ構造52、並びにその端面に重なるように形成された誘電体膜54及び56の形状が、本発明の実施の形態1に係る光素子10と異なる。すなわち、比較例のメサ構造52は、端面に2つの角部52a、及び52bを有する形状である。そして、メサ構造52の端面に重なるように形成された誘電体膜54も2つの角部を有している。
【0017】
比較例の光素子50の場合、角部52a及び52bに形成された誘電体膜が剥がれることがあった。図5は、角部52a及び52bに形成された誘電体膜の剥がれを示す図である。誘電体膜54は、誘電体膜54形成後の工程において与えられる機械的応力や熱的応力などの応力により、メサ構造52の端面から剥がれることがある。図5は、特に前述の応力が集中しやすい部分である「誘電体膜の角部」における誘電体膜の剥がれを示している。
【0018】
ここで、比較例の場合はメサ構造52の上面と側面がそのまま接続され、これらの面は概ね90°程度という小さい角度をなしている。よって、2つの角部52a及び52bはそれぞれ90°程度の角度を有しており、これらの部分に形成された誘電体膜には応力が集中しやすい。なお、この角度が90°でなくても、80°から100°程度までの範囲であれば同様に応力集中が著しい。このように、メサ構造の端面の角部における角度が小さいと、当該角部に形成される誘電体膜は剥がれやすい。
【0019】
ところが、本発明の実施の形態1に係る光素子10の構成によれば誘電体膜の剥がれを防止できる。本発明の実施の形態1に係る光素子10のメサ構造14は、上面14Aと側面14Cが斜面14Bを介して接続され、上面14Aと斜面14B、及び斜面14Bと側面14Cはそれぞれ135°程度の大きな角度をなす。よって、4つの角部14a、14b、14c、及び14dは、それぞれ135°程度の角度を有する角部となる。そのため、これらの4つの角部に形成される誘電体膜には応力が集中しづらい。以上より、比較例の場合のように誘電体膜が2箇所しか角部を有しない場合と比べて、誘電体膜24の各角部における応力を低減できるため、誘電体膜24の剥離を防止できる。なお誘電体膜26についても同様である。
【0020】
本発明の実施の形態1に係る光素子はさまざまな変形が可能である。図6は本発明の実施の形態1に係る光素子の変形例を示す斜視図である。図6には、誘電体膜が形成される前のメサ構造102の端部が示されている。メサ構造102は上面102A、端面102B及び102Cを備えている。端面102Bは、端面102Cに対して角度がつけられた斜面である。このような端面102Bはメサ構造102をエッチングすることで形成される。そして、端面102Cと上面102Aは、斜面である端面102Bを介して接続されている。
【0021】
図7は、図6のメサ構造102の端面102B及び102Cに形成された誘電体膜を示す斜視図である。誘電体膜104のうち、メサ構造102の角部102a及び102bに形成された部分は、斜面である端面102Bに形成されているため、メサ構造102の端面との付着面積が大きい。よって誘電体膜104の剥がれを防止できる。
【0022】
図8は他の変形例を示す斜視図である。図8には誘電体膜が形成される前のメサ構造110の端部が示されている。メサ構造110の端部の角は、エッチングにより形成された平面で面取りされている。面取りされた結果、メサ構造110には、斜面である端面110a及び110bが形成されている。そして、メサ構造110の端面に誘電体膜が形成される。そうすると、誘電体膜の角部は、端面110a及び110bにも形成される。よって、誘電体膜の角部とメサ構造110との付着面積を増加させることができるので、誘電体膜の剥がれを防止できる。なお、メサ構造110の端部の角は、平面で面取りすることに限定されず、曲面で丸めても良い。
【0023】
メサ構造の端面の形状は、メサ構造の端面が2箇所の角部を有する場合と比べて、誘電体膜の応力を低減できる形状であれば特に限定されない。すなわち、メサ構造の端面が3箇所以上の角部を有する形状であれば、メサ構造の端面が2箇所の場合と比較して、誘電体膜の応力を低減できる。なお、上述のようにメサ構造の端面の角部の数を増加させるだけでなく、例えば、図2の斜面14Bを曲面としても同応力低減に有効である。
【0024】
また、メサ構造14はストライプ状でなくカーブしていても良い。また、誘電体膜24、26は例えば、SiO2、SiN、Al2O3、Si、Ta2O5などで形成される多層膜でも良いし、単層膜でも良い。
【0025】
実施の形態2.
図9は、本発明の実施の形態2に係る光素子の平面図である。光素子200はメサ構造202を備えている。メサ構造202の端部の幅は、メサ構造202のほかの部分の幅よりも広くなっている。メサ構造202の短手方向には溝204及び206が形成されている。そして、メサ構造202の端面に重なるように誘電体膜208及び210が形成されている。その他の構成は本発明の実施の形態1に係る光素子10と同様である。
【0026】
図10は図9に示す光素子の斜視図である。メサ構造202の端部の幅が広く形成された結果、メサ構造202の角部202aに形成された誘電体膜と、角部202bに形成された誘電体膜は活性層から離れた場所に配置される。
【0027】
本発明の実施の形態2に係る光素子200によれば、メサ構造の端面に形成した誘電体膜が活性層の「近傍で」剥がれることを抑制できる。すなわち、メサ構造202の角部202aに形成された誘電体膜と、角部202bに形成された誘電体膜は剥がれやすいが、これらは活性層から離れた場所にある。そのため、これらが剥がれたとしても活性層の近傍での剥がれとはならない。誘電体膜210も同様である。よって、光素子200の特性変動を回避できる。
【0028】
しかも、メサ構造202は端部以外では幅が狭く形成されているため、容量も低減できている。ここで、容量を低減するために、メサ構造の幅を広くする部分(端部)はメサ構造202長手方向の長さの1/10以下とすると良い。さらに、当該端部の幅は、その他の部分の幅の110%ないし1000%程度とすることが好ましい。
【0029】
本発明の実施の形態1に係る光素子10の特徴と、本発明の実施の形態2に係る光素子200の特徴を組み合わせてもよい。すなわち、メサ構造の端部の幅を他の部分の幅よりも広くしつつ、メサ構造の端面に誘電体膜の剥がれを防止する加工を施すと、誘電体膜の剥がれを抑制でき、かつ万一誘電体膜が剥がれた場合にも光素子の特性変動を回避できる。
【0030】
実施の形態3.
図11は、本発明の実施の形態3に係る光素子の平面図である。光素子300はメサ構造302を備えている。メサ構造302の端部の幅は、メサ構造302のほかの部分の幅よりも狭くなっている。メサ構造302の短手方向には溝304及び306が形成されている。そして、メサ構造302の端面に重なるように誘電体膜308及び310が形成されている。その他の構成は本発明の実施の形態1に係る光素子10と同様である。
【0031】
図12は図11に示す光素子の斜視図である。メサ構造302の端部の幅が狭く形成された結果、メサ構造302の端面の面積が小さくなっている。
【0032】
本発明の実施の形態3に係る光素子300によれば、基板12と誘電体膜308の体積弾性率の差による誘電体膜308の剥がれを抑制することができる。すなわち、メサ構造302の端面に形成される誘電体膜308は体積が小さいため、前述の体積弾性率の差による誘電体膜308の剥がれを抑制できる。なお、メサ構造の加工精度の観点から、メサ構造302の幅を狭くする部分(端部)は、メサ構造302長手方向の長さの1/10以下とすると良い。また、同様の観点から、当該端部の幅は、他の部分の幅の90%以下とすることが好ましい。
【0033】
本発明の実施の形態1に係る光素子10の特徴と、本発明の実施の形態3に係る光素子300の特徴を組み合わせてもよい。すなわち、メサ構造の端部の幅を他の部分の幅よりも狭くしつつ、メサ構造の端面に誘電体膜の剥がれを防止する加工を施すと、誘電体膜の剥がれを抑制する効果を高めることができる。
【符号の説明】
【0034】
10 光素子、 12 基板、 14 メサ構造、 16 溝、 18 溝、 20 表面電極、 22 絶縁膜、 24 誘電体膜、 26 誘電体膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、
前記メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備え、
前記メサ構造の端面は、3箇所以上の角部を有する形状であることを特徴とする光素子。
【請求項2】
前記メサ構造を挟むように形成された溝と、
前記メサ構造の端部において、前記メサ構造の上面と側面をつなぐように前記メサ構造に形成された斜面と、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光素子。
【請求項3】
前記メサ構造の端面は、前記メサ構造の上面とつながれた斜面を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光素子。
【請求項4】
基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、
前記メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備え、
前記メサ構造の端部の角は、平面で面取りされ、又は曲面で丸められていることを特徴とする光素子。
【請求項5】
前記メサ構造の側面は、前記メサ構造の上面に対して80°から100°の角度がつけられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の光素子。
【請求項6】
基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、
前記メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備え、
前記メサ構造の端部の幅は、前記メサ構造のほかの部分の幅よりも広いことを特徴とする光素子。
【請求項7】
基板上に形成された、活性層を含むメサ構造と、
前記メサ構造の端面に重なるように形成された誘電体膜と、を備え、
前記メサ構造の端部の幅は、前記メサ構造のほかの部分の幅よりも狭いことを特徴とする光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−44075(P2012−44075A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185754(P2010−185754)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】