説明

光線路心線判定装置およびその判定方法

【課題】作業対象の光線路心線の判定精度を高める。
【解決手段】光線路網のOLT11とONU17とを接続する光線路の途中にモニタ点を設けて伝送光信号の一部を抽出し心線判定装置14に入力する。この装置14では、モニタ点における光信号の抽出結果から信号フレームがモニタ点を通過するタイミングを測定して記録しておき、そのフレームからONU17またはOLT11が持つ装置時間および装置情報を取得してモニタ点とONUとの距離情報並びにONU固有識別情報を取得すると共に、モニタ点から光線路遠端までの光線路長を計測する。そして、モニタ点とONUとの間の距離情報と計測光線路長とを比較し、光線路における反射点と光線路遠端のONU情報とを照合する。その解析において、光線路に可逆性の損失を与え、損失を付与する前後に生じる光線路長計測データの変化と、計測線路長と照合一致したONU情報とから光線路の心線情報を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバによる光線路で構築された光通信ネットワーク(光線路網)に係り、特に分岐方光線路網の光線路心線の中から対象とする心線を特定する光線路心線判定装置及び心線判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のインターネット利用者の拡大とTV電話や映像配信といったブロードバンドアプリケーションの普及により、アクセスネットワークにも光線路を用いた通信ネットワークが利用されている。このような光線路によるネットワーク(以下、光線路網と記す)では、経済的な構築をするために、伝送光信号を光線路網の途中で光スプリッタによって分岐し、通信事業者ビルに設置される1台の所内側伝送装置OLT(Optical Line Terminal)に対して複数のユーザ側伝送装置ONU(Optical Network Unit)を接続する分岐型(PON:Passive Optical Network)の光線路網が広く用いられている。
【0003】
ところで、分岐型光線路網についてルート変更が必要となった場合には、屋外のマンホール等の光線路の接続点において、光線路の切替工事を行うことになる。一般に、光線路の接続点には、光線路心線に設備情報を記載した識別タグ等が取り付けられている。しかしながら、識別タグの取り付け誤り等がある場合を想定し、屋外切替点での作業者は、通信事業者ビルの作業員と連絡を取りつつ、対象心線の確認を行いながら心線の特定(判定)を行う。この確認手順は、(1)屋外作業者が対象と思われる光線路心線に曲げ損失を付与し、(2)これを通信事業者ビルの作業者が光線路損失の発生をモニタし、(3)損失発生が確認された光線路心線が、切替対象とする光線路の線路長と一致しているか否かを調べ、(4)一致している場合に正しい対象の光線路心線であると判断し、屋外作業者に正しい対象心線である旨の連絡を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“拡大する光アクセス網を支える光媒体網運用技術”、NTT技術ジャーナル2006.12、P58-61
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の多心化された光ファイバケーブルの接続点においては、高密度の光線路心線を扱う作業環境となり、その環境下で光線路心線に識別タグを取付ける場合に、誤った心線に識別タグを取付けてしまう恐れがあった。一旦、誤った光線路心線に識別タグが取り付けられると、作業現場となる接続点のみでの情報からは、正しい光線路心線であるか否かを確認することができない。
【0006】
また、光線路心線を識別する情報の一つにその線路長があり、線路長の確認には光パルス試験が一般的に用いられる。この光パルス試験では、光線路にパルス光を入射し、散乱光や反射光の戻る時間とパワーを計測することで、光線路長手方向の損失位置や光線路遠端を検出する。しかし、光パルス試験により得られた波形より読取られる光線路心線の遠端位置が、本来あるべき長さであるかどうかを確認するためには、予めストレージされた設備データとの比較する必要がある。
【0007】
しかしながら、光線路の新設時には光線路心線の接続部において任意長の収納余長を設けるため、設備データを構築するにあたっては、正確な光線路長を求めるのは困難であり、且つ、精度の良い光線路長のデータベースを構築・運用していくには、加入者の増減に併せて、絶え間なくデータ更新作業を行うなど、非常に大きな運用コストがかかる。また、データの投入の際にはデータの投入誤りなどのヒューマンエラーが発生する。
【0008】
また、一般的に光パルス試験によって散乱光や反射光を計測する際に、光線路中に発生する反射が大きい場合、反射点間を往復する多重反射が発生し、実際に存在する光線路より長い距離に反射が発生して誤測定を行う場合がある。
本発明は、上記の事情に着目してなされたもので、従来の損失発生のモニタにより行っていた心線判定に比べ、該当光線路心線に接続されているONU情報や光線路長情報も同時に確認することが可能となり、作業対象の光線路心線の特定(判定)精度を高めることが可能な光線路心線判定装置およびその判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明に係る光線路心線判定装置は、以下の態様で構成される。
(1)所内側伝送装置OLT(Optical Line Terminal)と複数のユーザ側伝送装置ONU(Optical Network Unit)とを光線路により接続する光線路網に用いられ、前記光線路の途中にモニタ点を設けて当該モニタ点で伝送する光信号の一部を抽出し、抽出された光信号を解析して前記光線路の心線を判定する情報を取得する光線路心線判定装置であって、前記モニタ点にて前記OLTからONUへまたはONUからOLTへ伝送する光信号の抽出結果から、信号フレームがモニタ点を通過するタイミングを測定して記録する記録手段と、前記OLTとONUとの間の伝送信号フレームからONUまたはOLTが持つ装置時間および装置情報を取得することで、前記モニタ点とONUとの距離情報並びにONU固有識別情報を取得する線路情報抽出手段と、前記モニタ点から前記光線路遠端までの光線路長を計測する光線路長計測手段と、前記線路情報抽出手段によって得られた前記モニタ点とONUとの間の距離情報と、前記光線路長計測手段で得られた光線路長とを比較することにより、光線路における反射点と光線路遠端のONU情報とを照合する解析手段とを具備し、前記解析手段は、前記光線路に可逆性の損失を与えることにより、損失を付与する前後に生じる前記光線路長計測データの変化と、計測線路長と照合一致したONU情報とから前記光線路の心線情報を取得する態様とする。
【0010】
(2)(1)の構成において、前記ONUの入出力部に反射波を発生する光フィルタを配置し、光線路への側圧印加による偏波変調を用いる手法により前記光フィルタの反射波形のピーク値が変動する現象を与えることで対象となる心線を確認させる態様とする。
【0011】
(3)(1)または(2)の構成において、前記光信号の抽出には、光カプラを用いる態様とする。
(4)(1)または(2)の構成において、前記光信号の抽出には、前記光線路を構成する光ファイバに曲げを付与し、マクロベンディングによる光ファイバコアからクラッドへの放射モードを発生させて漏洩光を得る手段を用いる態様とする。
【0012】
(5)(1)乃至(4)のいずれかの構成において、前記線路情報抽出手段と光線路長計測手段それぞれの入出力ポートの切り替えに光スイッチを用いる態様とする。
(6)(1)乃至(4)のいずれかの構成において、前記線路情報抽出手段と光線路長計測手段それぞれの入出力ポートの切り替えに光分岐カプラを用いる態様とする。
【0013】
(7)(6)の構成において、前記光分岐カプラには、前記光線路長計測手段側には第1の波長の試験光を透過し、他方の線路情報抽出手段側には前記第1の波長より短い第2の波長の試験光を透過する特性を有するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラを用いる態様とする。
【0014】
また、本発明に係る光線路心線判定方法は、以下の態様で構成される。
(8)所内側伝送装置OLT(Optical Line Terminal)と複数のユーザ側伝送装置ONU(Optical Network Unit)とを光線路により接続する光線路網に用いられ、前記光線路の途中にモニタ点を設けて当該モニタ点で伝送する光信号の一部を抽出し、抽出された光信号を解析して前記光線路の心線を判定する情報を取得する光線路心線判定方法であって、前記モニタ点にて前記OLTからONUへまたはONUからOLTへ伝送する光信号の抽出結果から、信号フレームがモニタ点を通過するタイミングを測定して記録し、前記OLTとONUとの間の伝送信号フレームからONUまたはOLTが持つ装置時間および装置情報を取得することで、前記モニタ点とONUとの距離情報並びにONU固有識別情報を取得し、前記モニタ点から前記光線路遠端までの光線路長を計測し、前記取得されたモニタ点とONUとの間の距離情報と前記計測された光線路長とを比較することにより、前記光線路における反射点と光線路遠端のONU情報とを照合するものとし、前記光線路に可逆性の損失を与えることにより、損失を付与する前後に生じる前記光線路長計測データの変化と、計測線路長と照合一致したONU情報とから前記光線路の心線情報を取得する態様とする。
【発明の効果】
【0015】
上記構成によれば、従来の損失発生のモニタにより行っていた心線判定に比べ、該当光線路心線に接続されているONU情報や光線路長情報も同時に確認することが可能となり、作業対象の光線路心線の特定(判定)精度を高めることが可能な光線路心線判定装置およびその判定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る光線路心線判定装置が用いられる通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す光線路心線判定装置の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示す光線路心線判定装置が計測する信号とタイミングとの関係を示す図である。
【図4】図1に示す光線路心線判定装置の取得データの例を示す図である。
【図5】図1に示す光ファイバ心線判定装置が取得した計測データと装置情報表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(第1の実施形態)
図1は本発明の一実施形態に係る心線判定装置が用いられる通信システムの構成を示すブロック図である。
【0018】
図1において、通信事業者ビルに設置されたOLT11とユーザ宅に設置された複数のONU(図では#1〜#8)17は、詳細は図示しないが、光線路、光線路を分岐する1台または複数の光スプリッタ、および光線路を接続するコネクタまたは融着などの接続部とから構成される。図1には、通信事業者ビルと、屋外にそれぞれ光スプリッタ12,15を配置した例を示す。
【0019】
OLT11から送信された光信号は光スプリッタ12で等分岐され、光スプリッタ12の下部に接続された各々の光線路に分配される。OLT11とONU17とを接続する光線路の中途には、OLT11とONU17との間で伝送する光信号を僅かに漏洩させる光カプラ13を予め設置し、モニタ点とする。光カプラ13とOLT11またはONU17へつながるポートを通信ポート131,132と呼び、心線判定装置14を接続するポートを試験ポート133,134と呼ぶ。光カプラ13の試験ポート133,134には心線判定装置14が接続される。
【0020】
図2は上記心線判定装置14の具体的な構成を示すブロック図である。図2において、心線判定装置14は、光モニタ点からOLT11とONU17との間の信号光を受光または光モニタ点へ試験光を送出する光入出力ポート140を備える。この光入出力ポート140には、光スイッチ141により、線路情報抽出部142と光線路長計測部143とが選択的に接続される。線路情報抽出部142は光線路を伝送する通信光を入力ポートを通じて受信し、伝送フレームに含まれた装置情報や装置が備えるカウンタ(counter)値を抽出する。光線路長計測部143は試験光を入出力する光ポートを備え、光線路の光パルス応答を計測する。
【0021】
まず、線路情報抽出部142によってモニタ点とONU17との間の距離情報を伝送システムから取得する方法について説明する。光線路中を伝送するOLT11又はONU17からの光信号を入力した光カプラ13におけるモニタ点では極一部の光パワーが漏洩する。この漏洩光は心線判定装置14の光入出力ポートから線路情報抽出部142に導かれ、漏洩光受信部1421で電気信号に変換され、信号解析部1422にて、変換された信号を解析してモニタ点とONU17との間の距離情報並びにONU固有識別情報を取得する。
【0022】
上記距離情報並びにONU固有識別情報を取得する方法を述べる。EPON(Ethernet(登録商標)PON)においては、1台のOLT11に対して複数のONU17を制御するMPCP(Multi point control protocol)が用いられており、ONU信号が光スプリッタ15から先の光線路を共有するため、異なるONU17から送信された信号の衝突が起こらないように各ONU17が信号の送信タイミングを制御している。
【0023】
上記送信タイミングの制御に必要なOLT11とONU17との間の信号伝送遅延時間はOLT11にて取得される。この信号伝送遅延時間の取得方法を、図3に示すタイムチャートを参照して説明する。
E−PONにおいて、OLT11は新たなONU17を登録するために、Discoveryプロセスを定期的に実施する。OLT11は自身のローカルタイミングt0を含むDiscovery Gateを送信しており、ONU17は受信したt0を自身のカウンタにセットする。しかる後に、ONU17において信号の送出タイミング時に、ONU固有識別情報と送信タイミングt'1を含むRegister RequestをOLT11へ送信する。
【0024】
ここで、漏洩光受信部1421にて、モニタ点でのDiscovery GateとRegister Requestを漏洩光により検出し、信号解析部1422にて、前述の信号を計測した時間(Abs time)を絶対時間τ1、τ2として記録し、(1)式より光信号がモニタ点とONU装置間伝送にかかる時間Tαを求める。
【0025】
2Tα=(τ2 − τ1)−(t'1 − t0) …(1)
ここで、伝送フレームに埋め込まれる“MPCP timestamp”は装置の中のカウンタ値としてバイナリ値で取得できる。さらにカウンタ値から往復時間(t'1 − t0)を得る場合には、Discovery Gateフレームの“MPCP timestamp”、Register Requestフレームの“MPCP timestamp”の差に1bit当たりのタイムカウントを反映させる。
【0026】
図4にキャプチャパケットの例を示す。OLT→ONU stream のDiscovery Gateフレームには、キャプチャタイミング“Abs Timestamp : 542.092856770”と、“MPCP timestamp = 992861107”が得られた。これに対してONUから送信されたRegister RequestからはONU固有識別情報としてMAC address “xx:xx:xx:xx:01:01”とキャプチャタイミング“Abs Timestamp : 543.007258310”と、“MPCP timestamp = 1050004859”が得られた。よって、(τ2−τ1)は、0.914401540[s]であり、“MPCP timestamp”の差は57143752である。また対応する装置のMAC address は“xx:xx:xx:xx:01:01”である。E−PONでは、カウンタ1bitあたりが16nsとIEEE Std 802.3ah標準化規格に定められており、t'1−t0は0.914300032[s]、以上よりモニタ点からONUまでの往復時間、0.000101508[s]が得られた。光線路における距離LはL = T×c/n (c:光速、n:光ファイバ中の屈折率)で求められる。
【0027】
図2において、光線路長計測部143は、モニタ点において、モニタ点とONUとの間の距離を計測するもので、パルス光を発する光源1431、光信号を電気信号に変換する受光部1432、光源1431からの試験光を光線路に送信し、光線路から戻る信号を受光部1432に結合させる光カプラ1430を備えており、光源1431から光線路に入射した光は被測定線路において、レイリー散乱やフレネル反射を発生させ、光線路長での発生した地点と装置との距離に応じた遅延の後、これらの発生した信号が受光部1432で受光される。A/D変換器1433は受光信号パワーを時分割してサンプリングし、制御装置1434にて受光パワーの時間変化の解析を行う。
【0028】
心線判定装置14と被測定光線路(光ファイバ)とを接続するために、心線判定装置14を図1の光カプラ13の試験ポートに適宜接続替えし、光パルスを入力し応答光を測定する。
応答光の時間とパワー変化の関係を図5に示す。光線路からの戻り光は微弱なレイリー散乱光が線路損失に応じて徐々に減衰し、光スプリッタ12,15や光線路遠端では大きなフレネル反射が発生するため、反射パワーが急激に増大する。PON光線路では光スプリッタ12,15で光パルス試験光も各分岐線路にパワー分配され、それぞれの分岐線路下部長に応じた地点に反射ピークを得る。
【0029】
図2において、解析部144では、光線路長計測部143による光線路計測データと、前述の線路情報抽出部142によって得たモニタ点とONUとの間の距離情報をデータ格納部1441に格納し、これらの格納データを用いてデータ比較部1442にてデータ比較を行い、その比較結果から設備判定部1443にて作業すべき光線路心線を判定する。その比較・判定処理は適宜表示部145にて表示される。
【0030】
上記構成による心線判定装置14において、光線路長計測部143による光線路計測データと、前述の線路情報抽出部142によって得たモニタ点とONUとの間の距離情報に基づいて、光線路を構成する大量の心線の中から作業すべき光線路心線(以下、該当心線)を判定する方法を以下に述べる。
【0031】
光線路網のルートを変更する切替工事を行う現地作業者は、現地へ立入るに先立ち、該当心線に接続するユーザ情報としてONUのMAC addressと該当心線に取り付けられるべき識別タグの表示情報を事前に把握しておく。その後、現場において作業者は、事前に把握している設備の識別タグを目安として該当心線の見当を付ける。
【0032】
一方で、通信事業者ビル内の光カプラ13における光モニタ点では、心線判定装置14によってモニタ点とONUとの間の距離情報、ONU固有識別情報、光線路計測データを得る。通信事業者ビル内では、屋外の切替工事を行う現地作業が開始される前に、試験ポート133,134に心線判定装置14を接続することにより、心線判定装置14−ONU17間距離、ONU17のMACアドレスと波形データを取得する。
【0033】
次に現場作業者は、該当心線であると見当を付けた光線路に対して、曲げなどの損失を与える。光計測には例えば試験光は1650nm等の通信光帯域(1260〜1625nm)よりも長い波長を用い、ONU17の直前には試験光のみを遮断する光フィルタ16を設置する。光線路への曲げによる損失は長波長のみに大きく発生するため、OLT11とONU17が通信状態であっても影響を与えることなく該当心線を特定することが可能である。
【0034】
通信事業者ビル内にて心線判定装置14を操作する作業者と、所外光スプリッタ15の下部にいる現地作業者とは、携帯電話等で進捗状況等について連絡を取りながら作業を進めることを想定する。また、現地作業者は作業すべき光線路心線に接続されたONU17の情報、例えば、“xx-xx-xx-xx-xx-01”を事前に取得しておく。
【0035】
現地作業者が光線路に対して曲げを加えると光線路心線の損失が増加するため、通信事業者ビル内にて心線判定装置14を操作する作業者は、心線判定装置14の表示により図5に示す波形を観察する。これにより、事前に確認していた“xx-xx-xx-xx-xx-01”と一致する反射が下がった場合には、間違いなく該当心線であると確認できる。一致しない場合は、所外の現地作業者が曲げを与えた光線路が本来の作業を予定する該当心線ではないことから、現地の光線路心線に目印として取付けられていた識別タグに記載の情報は誤りであり、所外の作業者は、作業予定のユーザ装置MAC addressと一致する光線路心線に波形の変化が生じる光線路を探し出せばよい。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、OLT11とONU17とを接続する光線路網において、光線路網の中途に伝送される光信号を漏洩させるモニタ点を備え、このモニタ点において、OLT11からONU17へ、またはONU17からOLT11へ伝送される伝送光信号がモニタ点を通過するタイミングを記録し、且つOLT11とONU17との間の伝送信号に記述されたフレーム情報が持つONU17またはOLT11の装置が備えるcounter値および装置情報を解析することで、モニタ点とONU17との間の距離情報、並びにONU固有識別情報を取得することにより線路情報抽出機能(142)を実現する。
【0037】
また、光線路長計測機能(143)によって光線路計測データより抽出したモニタ点からONU17との間の光線路長と、前述の線路情報抽出機能(142)によって得られたモニタ点とONU17との間の距離情報とを各々比較することで、光線路における反射点と光線路遠端のONU情報を対照するシステムを実現する。
【0038】
また、光線路に可逆性の損失を与え、損失を生じさせる前後で光線路長計測を実施して計測データに変化を生じさせ、変化した計測線路長と照合一致したONU情報をキーとして、光線路心線に誤った識別タグが取り付けられた場合でも、作業現場となる接続点のみでの情報から正しい光ファイバ心線であるか否かを確認する手段を実現する。
【0039】
上記構成によれば、従来の損失発生のモニタにより行っていた心線判定に比べ、該当光線路心線に接続されているONU情報や光線路長情報も同時に確認することが可能となり、作業対象の光線路心線の特定(判定)精度を高めることができる。
従来は光計測データとの照合は、任意長の収納余長を設けるため、一致しているかどうかの判定に数十〜数100mの差が生じることもあったが、本方式によれば非常に高い精度で照合を行うことができる。また、計測もデータ取得も直接光ファイバ心線を計測するために、この情報を関連づけて記録すればデータの投入誤りなどのヒューマンエラーは発生しえない。
【0040】
一般的に光パルス試験を実施した際、光線路中のコネクタ等の反射点を往復する多重反射によって、光線路遠端よりも長い位置にゴースト反射が発生して判断し難い場合がある。本発明を用いることで、計測波形においてどの反射点が光線路の遠端であるかを確実に判定することができる。
【0041】
尚、上記実施形態において、モニタ点にて光信号の漏洩光を取得する手段としては、光カプラを用いる手段に代えて、光線路を構成する光ファイバに曲げを付与し、マクロベンディングによる光ファイバコアからクラッドへの放射モードを発生させ、漏洩光を得る手段を用いてもよい。
【0042】
また、現地作業者と通信事業者ビル内での作業者の該当心線の確認のためには、心線判定装置14の表示にて光フィルタ16の反射波形のピーク値が変動するような現象を現地において作業者が行えばよいことから、上記のような光スプリッタ12,15の下部心線に曲げを付与する手法に代えて、光ファイバへの側圧印加による偏波変調を用いる手法により反射ピーク値を変動させてもよい。
【0043】
また、心線判定装置14が備える線路情報抽出部142と光線路長計測部143それぞれの入出力ポートを切り替える光スイッチ141には、光分岐カプラを用いてもよい。さらに、光分岐カプラを用いた場合の分岐損失を低減させるために、光線路長計測部143側には、例えば1625nmより長波長の試験光を透過し、他方の線路情報抽出部142側には1625nm以下の短波長を透過する特性を有したWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラを用いてもよい。
【0044】
また、心線判定装置14は通信事業者ビルに常時設置し、心線判定装置14の光入出力ポート140は、複数の光線路(図1において、複数のOLTが存在する場合)に設置されたそれぞれの光カプラ13に任意に接続する光スイッチ(図示せず)と接続して、心線判定装置14、光スイッチの制御および判定結果を携帯電話やデータネットワーク等を介して現地作業者のみで直接制御するシステムとしてもよい。
【0045】
その他、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成を削除してもよい。さらに、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0046】
11…OLT、17…ONU(図では#1〜#8)、12,15…光スプリッタ、13…光カプラ、131,132…通信ポート、14…心線判定装置、133,134…試験ポート、140…光入出力ポート、141…光スイッチ、142…線路情報抽出部、143…光線路長計測部、1421…漏洩光受信部、1422…信号解析部、1431…光源、1432…受光部、1430…光カプラ、1433…A/D変換器、1434…制御装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所内側伝送装置OLT(Optical Line Terminal)と複数のユーザ側伝送装置ONU(Optical Network Unit)とを光線路により接続する光線路網に用いられ、前記光線路の途中にモニタ点を設けて当該モニタ点で伝送する光信号の一部を抽出し、抽出された光信号を解析して前記光線路の心線を判定する情報を取得する光線路心線判定装置であって、
前記モニタ点にて前記OLTからONUへまたはONUからOLTへ伝送する光信号の抽出結果から、信号フレームがモニタ点を通過するタイミングを測定して記録する記録手段と、
前記OLTとONUとの間の伝送信号フレームからONUまたはOLTが持つ装置時間および装置情報を取得することで、前記モニタ点とONUとの距離情報並びにONU固有識別情報を取得する線路情報抽出手段と、
前記モニタ点から前記光線路遠端までの光線路長を計測する光線路長計測手段と、
前記線路情報抽出手段によって得られた前記モニタ点とONUとの間の距離情報と、前記光線路長計測手段で得られた光線路長とを比較することにより、光線路における反射点と光線路遠端のONU情報とを照合する解析手段とを具備し、
前記解析手段は、前記光線路に可逆性の損失を与えることにより、損失を付与する前後に生じる前記光線路長計測データの変化と、計測線路長と照合一致したONU情報とから前記光線路の心線情報を取得することを特徴とする光線路心線判定装置。
【請求項2】
前記ONUの入出力部に反射波を発生する光フィルタを配置し、光線路への側圧印加による偏波変調を用いる手法により前記光フィルタの反射波形のピーク値が変動する現象を与えることで対象となる心線を確認させることを特徴とする請求項1記載の光線路心線判定装置。
【請求項3】
前記光信号の抽出には、光カプラを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光線路心線判定装置。
【請求項4】
前記光信号の抽出には、前記光線路を構成する光ファイバに曲げを付与し、マクロベンディングによる光ファイバコアからクラッドへの放射モードを発生させて漏洩光を得る手段を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の光線路心線判定装置。
【請求項5】
前記線路情報抽出手段と光線路長計測手段それぞれの入出力ポートの切り替えに光スイッチを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光線路心線判定装置。
【請求項6】
前記線路情報抽出手段と光線路長計測手段それぞれの入出力ポートの切り替えに光分岐カプラを用いることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の光線路心線判定装置。
【請求項7】
前記光分岐カプラには、前記光線路長計測手段側には第1の波長の試験光を透過し、他方の線路情報抽出手段側には前記第1の波長より短い第2の波長の試験光を透過する特性を有するWDM(Wavelength Division Multiplexing)カプラを用いることを特徴とする請求項6に記載の光線路心線判定装置。
【請求項8】
所内側伝送装置OLT(Optical Line Terminal)と複数のユーザ側伝送装置ONU(Optical Network Unit)とを光線路により接続する光線路網に用いられ、前記光線路の途中にモニタ点を設けて当該モニタ点で伝送する光信号の一部を抽出し、抽出された光信号を解析して前記光線路の心線を判定する情報を取得する光線路心線判定方法であって、
前記モニタ点にて前記OLTからONUへまたはONUからOLTへ伝送する光信号の抽出結果から、信号フレームがモニタ点を通過するタイミングを測定して記録し、
前記OLTとONUとの間の伝送信号フレームからONUまたはOLTが持つ装置時間および装置情報を取得することで、前記モニタ点とONUとの距離情報並びにONU固有識別情報を取得し、
前記モニタ点から前記光線路遠端までの光線路長を計測し、
前記取得されたモニタ点とONUとの間の距離情報と前記計測された光線路長とを比較することにより、前記光線路における反射点と光線路遠端のONU情報とを照合するものとし、
前記光線路に可逆性の損失を与えることにより、損失を付与する前後に生じる前記光線路長計測データの変化と、計測線路長と照合一致したONU情報とから前記光線路の心線情報を取得することを特徴とする光線路心線判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−32988(P2013−32988A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169534(P2011−169534)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】