説明

光触媒ベースの汚染制御特性を有する織物

縦糸及び横糸からみ糸(3)と共に織られた縦糸及び/又は横糸光ファイバー(2)を備えた織物(1)であって、前記光ファイバー(2)が、横向きに光を放出することが可能であり、からみ糸(3)の表面に、光触媒粒子(4)が備えられ、前記光ファイバー(2)が、侵入型変更部(5)を含み、光触媒粒子(4)を活性化するように、光を透過し、前記変更部(5)において横向きに光を放出するために、前記光ファイバー(2)の自由端(6)が光源(7)に面して位置されることが可能であることを特徴とする織物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚れた空気又は廃水のような流体中における汚染制御の分野に関する。実際には、二酸化炭素又は空気中に浮遊している他の有機粒子が充満している空間内で、汚染−制御織物(fabric web)が、使用されることが可能である。織物に対して接線方向に流れる、及び/又は織物中における、これを構成する糸が交差する点での隙間を通して流れる水中での汚染を制御するために、これが、洗浄又は廃水処理用のプラント内で使用されることも可能である。
【0002】
これは、特に、光を透過するために、光ファイバーを備えた織物に関する。
【背景技術】
【0003】
一般的に言えば、特許文献1に記載されているように、ガラスクロス又は光導波路を用いて、流体中における汚染を制御するために使用されることが可能な織物が、自然光によって、横方向に照射される。特許文献1によって開示された情報によると、実際には、クロス内に存在している光触媒粒子を活性化するために、使用されるガラスファイバーが、太陽からの光を集め、これを透過させることを可能にする。
【0004】
従って、本発明の第一の目的は、織物上に配置された光触媒粒子を活性化させることが可能な補助的な光源を使用することにより、光触媒反応の効率を改善することである。
【0005】
また、特許文献2に記載されているように、織り合わされた光ファイバーの織物としてグループ化された光ファイバーの端部を照射するために、補助的な光源を使用することは、周知である。これらの光ファイバーが、処理され、ノッチ又は小さなスリットのような浸入型変更部(invasive alterations)を有し、これらが、横向きに光を放射し、これらの繊維の外表面上に堆積された光触媒粒子を活性化する。
【0006】
しかしながら、光ファイバーの表面上に光触媒粒子を堆積し、及びこれらの接着を達成することは、これらを形成する材料のために、困難である。結果として、極めて少ない粒子が、各光ファイバー上に堆積される。従って、満足なレベルの汚染制御を達成するために、数多くの光ファイバーと共に、織物をある大きさに形成する必要がある。
【0007】
従って、本発明の第二の目的は、製造コスト及び汚染制御システムの全体の寸法を減らすように、光ファイバーの数を制限することである。
【0008】
さらに、粒子が、光ファイバーの浸入型変更部上に、堆積され、これによって、洗浄される周囲媒質と接触することにより活性化されることなく光を反射することが可能である。
【0009】
従って、本発明の他の目的は、光触媒粒子を、浸入型変更部の出来るだけ近くに配置し、これによって、光ファイバーによる横向きの光の放射を妨げないことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1008565号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0823280号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、縦糸及び横糸からみ糸(binding yarns)と共に織られた縦糸及び/又は横糸光ファイバーを備えた織物に関し、前記光ファイバーが、横向きに光を放射することが可能である。
【0012】
光を透過し、前記変更部において光を横向きに放射し、光触媒粒子を活性化するために、本発明性のある織物は、からみ糸の表面に、光触媒粒子が備えられ、光ファイバーが、浸入型変更部を含むことを特徴とし、これにより、前記光ファイバーの自由端が、光源と面して配置されることが可能である。
【0013】
換言すると、織物内に光を誘導し、分配することが可能な光ファイバーからの、紫外線放射であることが可能である放射線によって、光触媒粒子が、活性化される。光ファイバーが、からみ糸と共に織られるため、このようにして形成される織物は、均質であり、それを支持体又はフレームに取付けるために、処理が容易である。単に、フレームの大きさに織物を切断することで、いずれの寸法を有する汚染制御装置を製造することが可能となる。
【0014】
さらに、からみ糸の存在により、使用される光ファイバーの数だけでなく、からみ糸を含む織物を織る方法に直接的に依存するろ過速度を持つフィルターを形成することが可能となる。実際には、例えば、マイクロ−粒子の浸透を防ぎつつ、ろ過される流体が、この織物を通して流れることが可能である。
【0015】
さらに、横向きに光を放射するために光ファイバー内に形成された浸入型変更部が、特に、サンドブラスト、化学エッチング、又はレーザー光のような高強度光放射を使用することによる溶解といった、様々な方法で形成されることが可能である。当然ながら、このような浸入型変更部が、多くの他の機械的又は化学的プロセスを使用することにより形成されることも可能である。
【0016】
光ファイバーの自由端を照射するための光源は、様々なタイプのものであることが可能であり、これらが、特に、発光ダイオード又は白熱灯のような広域用の光源、ネオンのようなガスを含む放電管又は蛍光灯の形状であることが可能である。
【0017】
また、ある特定の実施形態では、光ファイバーの少なくとも1つの自由端に向かう自然光を点−集光する(point−focusing)、又は線集光する(linearly focusing)ことが可能なコレクターを、光源が、備えてよい。
【0018】
有利に、光ファイバーの浸入型変更部が、織物の表面上にわたって、徐々に分配されてよい。
【0019】
実際には、織物の均一な照射、及び、それ故に、織物の全表面領域上に均一に分配された光触媒粒子の均一な活性化を達成するために、変更部の大きさ又は面密度が、織物の1つの領域と、他の領域とで異なっていてよい。一般的に言えば、光源の付近において、変更部の面密度は、低く、光源からさらに離れるにつれて増加する。
【0020】
光触媒粒子が、様々な方法で、織物の様々な構成部品に適応されてよい、
【0021】
第一の変化型によると、これらの糸が、光ファイバーと共に織られる前に、光触媒粒子を含むスプレッドコーティング(spread coating)が、からみ糸上に堆積されることが可能である。この場合、光ファイバーが、いずれの光触媒粒子を有さず、光触媒粒子が配置されたからみ糸付近において光を透過するためのみに使用される。
【0022】
第二の変化型によると、これらが、からみ糸と結合される前に、光触媒粒子を含むスプレッドコーティングが、光ファイバーによって形成されたクロス上に堆積されることが可能である。この場合、洗浄される液体又はガスに対して透過性を有する被覆された織物のスプレッドコーティング内に、光触媒粒子が、組み込まれる。このスプレッドコーティングが、特に、浸漬、パッドインプレグネーション(pad impregnation)、エマルジョンとして、スプレーイング、プリンティング、カプセル化又は電気めっきといった、様々な方法で堆積されることが可能である。
【0023】
この場合、光ファイバーが、所々に、からみ糸で織られることが可能であり、光ファイバーが、スプレッドコーティングが堆積されるからみ糸によって定義される平面に平行な平面内に実質的に位置される。従って、スプレッドコーティングが、光ファイバー上には堆積されず、からみ糸によって形成される織物の側面の1つの上にのみ堆積される。このように、からみ糸が、スプレッドコーティングを覆い、平行なオフセット平面に位置された光ファイバーに対して、保護スクリーンを形成することが可能となる。
【0024】
実際には、からみ糸が、平織(plain wave)で織られることが可能である。実際には、この種類の織り方が、織物に、最適な機械的強度及び最適な表面均一性を与える。
【0025】
第一実施形態によると、光ファイバーが、ポリメチル−メタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)及びシクロ−オレフィンポリマー(COP)を含む群から選択された材料から形成されるコア部を含んでよい。
【0026】
この場合、光ファイバーが、2つの材料から形成され、数種類のうちの1つであることが可能なシース(sheath)内にコアクラッドを有する。
【0027】
第二実施形態によると、光ファイバーが、ガラス、石英、及びシリカを含む群から選択される材料から形成されることが可能である。この場合、これらを保護する、又は、光触媒粒子が、織物上に配置されることが出来るように、シースが、光ファイバーを覆ってよい。
【0028】
有利に、からみ糸が、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む群から選択された材料から形成されることが可能である。
【0029】
さらに、光触媒粒子が、チタニウム、シリカ、亜鉛、セシウム、ジルコニウム及びスズの酸化物、並びに、カドミウム及び亜鉛の硫化物の形態の半導体物質を含む群から選択された材料から形成されることが可能である。
【0030】
また、本発明は、上記のような織物を含む複合体に関する。このような複合体は、織物の光ファイバーによって放射された光を反射することが可能な不織裏地上に、織物が、取付けられることを特徴とする。
【0031】
換言すると、光ファイバーによって放射された光を反射及び拡散し、光触媒粒子に向かう光線を偏光させるように、不織布が、スクリーンを提供するために使用される。このように、光触媒粒子の活性化効率を高めることが可能である。
【0032】
ある特定の実施形態では、織物の光ファイバーに面した裏地の少なくとも一側面上に配置された光触媒粒子も含むスプレッドコーティングを、複合体の不織裏地が、備えてよい。
【0033】
このように、一方における不織裏地と、他方における平行面内でオフセットするからみ糸との間に光ファイバーを配置することが可能であり、光ファイバーに面する両方のこれらの素子の少なくとも側面が、光触媒粒子を含むスプレッドコーティングで覆われる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明による織物の斜視図である。
【図2】本発明による前記織物の様々な代替的な実施形態の断面図を示す。
【図3】本発明による前記織物の様々な代替的な実施形態の断面図を示す。
【図4】本発明による前記織物の様々な代替的な実施形態の断面図を示す。
【図5】本発明による織物を組み込んだ複合体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明が実施される方法、及びその結果として生じる利点が、さらに容易に理解されるように、以下の実施形態の記載が、添付された図面を参照し、単に一例として、与えられる。
【0036】
上記のように、本発明は、図1に示されるような織物に関する。織物(1)が、縦糸及び/又は横糸からみ糸(3)と共に織られた縦糸及び/又は横糸光ファイバー(2)を備える。このような織物により、光ファイバー(2)が、これらが互いに平行な平面内で均一に分配されることが可能となる。これらの光ファイバー(2)が、光を透過し、これらの円筒表面の外側から横向きに光を放射するように、処理される。この光ファイバー(2)の処理が、それらの表面上に、複数の浸入型変更部を形成する。
【0037】
さらに、1つ又はそれ以上の光源(7)が、一団に集められた、又は集められていない光ファイバー(2)の自由端(6)に面して配置される。光ファイバー(2)によって横向きに放射された光が、織物(1)の一端部から多端部まで、これらの端部のそれぞれ対して直角であって、織物の内側において、透過されることが可能である。
【0038】
この配置により、織物の構成部品の1つ上に配置された光触媒粒子を活性化することが可能となる。
【0039】
図2に示されるように、光ファイバー(2)が、侵入型変更部(5)を有し、これにより、繊維の内側において光線が反射する角度を変化させ、繊維から外へ横向きに光を透過することが可能となる。
【0040】
この図に示されるように、光触媒粒子(4)が、これらが、光ファイバーと共に織られる前に、からみ糸(13)上のスプレッドコーティング(23)内に加えられる。従って、光ファイバー(3)により、光をからみ糸(13)に送ることが可能となる。
【0041】
図3に示されるように、光触媒粒子(4)が、からみ糸(3)と共に織られた光ファイバー(12)によって形成されたクロスに適応されたスプレッドコーティング(14)内に加えられてもよい。この実施形態では、スプレッドコーティングが、織られた後で、クロスの2つの構成部品に適応される。
【0042】
図4に示されるように、光触媒粒子を含むスプレッドコーティング(14)が、からみ糸(3)上にのみ配置されることが可能であるが、これは、光ファイバー(2)によって定義される平面に平行な平面内で後者がオフセットする場合である。からみ糸を組み込んだ地糸(33)(ground threads)と、光ファイバー(2)との間における、オフセットを可能とするように、次に、光ファイバー(2)が、からみ糸(33)によって、所々に、結合される。このように、織られた後で、織物の構成部品の1つのみの上に、スプレッドコーティング(14)を配置することが可能である。
【0043】
図5に示されるように、また、本発明は、上記の図4における織物であって、光触媒粒子(24)が組み込まれたスプレッドコーティング(21)を有しうる不織裏地(11)上に取付けられた織物を有する複合体に関する。これにより、相当な量の光触媒粒子が、光ファイバー(2)によって照射され、これにより、このような複合体を通して流れる流体から汚染物を取り除く効率を著しく上昇させることが可能となる。
【0044】
上記により、本発明による織物が、多くの利点を有することが明らかとなり、特に、以下の利点を有する。
光ファイバーが共に結合されているこの構造により、光触媒フィルターの処理、及び組み立てが容易となる;、
光ファイバーの数を減らし、それ故に、汚染制御システムのコストを削減することが可能となる;、
この構造の近くを流れる又はこの構造を通して流れる流体から汚染物を取り除く効率を改善することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による織物が、特に以下の実施例を含む多くの産業上の利用を含む。
病院、空港、ショッピングモール、電車又は地下の駅のような数多くのそれぞれに対応しうる閉鎖的な空間における空調システム用の汚染制御及び空気汚染制御;、
手術室及び個人用又は公衆用の輸送手段のような小さな限定空間における空調システム用の汚染制御及び空気汚染制御;、
下水処理場の池、水の配管及び給水設備における廃水汚染制御;
脱臭。
【0046】
本発明が、汚染制御だけでなく、二重機能を有することも可能であり、アンビエント照明又はさらには特に広告ポスター用のバックライトを提供するために使用されることが可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 織物
2 光ファイバー
3、13 からみ糸
4、24 光触媒粒子
5 侵入型変更部
6 自由端
7 光源
11 不織裏地
14、21、23 スプレッドコーティング
33 地糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦糸及び横糸からみ糸(3)と共に織られた縦糸及び/又は横糸光ファイバー(2)を備えた織物(1)であって、
前記光ファイバー(2)が、横向きに光を放出することが可能であり、
前記からみ糸(3)の表面に、光触媒粒子(4)が備えられ、
前記光ファイバー(2)が、侵入型変更部(5)を含み、前記光触媒粒子(4)を活性化するように、光を透過し、前記変更部(5)において横向きに光を放出するために、前記光ファイバー(2)の自由端(6)が光源(7)に面して位置されることが可能であることを特徴とする織物。
【請求項2】
前記光ファイバー(2)の侵入型変更部(5)が、前記織物(1)の表面領域上にわたって徐々に分配されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項3】
からみ糸が、光ファイバー(2)と共に織られる前に、光触媒粒子(4)を含むスプレッドコーティング(23)が、からみ糸(13)上に堆積されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項4】
光触媒粒子(4)を含むスプレッドコーティング(14)が、からみ糸(3)と結合された光ファイバー(2)によって形成されたクロス上に堆積されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項5】
前記光ファイバー(2)が、所々に、前記からみ糸(3)と共に織られることが可能であり、前記光ファイバー(2)が、前記スプレッドコーティング(14)が堆積された前記からみ糸(3)によって定義された平面と平行である平面内に実質的に位置されることを特徴とする請求項4に記載の織物。
【請求項6】
前記からみ糸(3)が、平織で織られていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項7】
光ファイバー(2)が、ポリメチル−メタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)及びシクロ−オレフィンポリマー(COP)を含む群から選択された材料から形成されるコア部を含むことを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項8】
光ファイバー(2)が、ガラス、石英、及びシリカを含む群から選択される材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項9】
からみ糸(3)が、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む群から選択された材料から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項10】
光触媒粒子(4)が、チタニウム、シリカ、亜鉛、セシウム、ジルコニウム及びスズの酸化物、並びに、カドミウム及び亜鉛の硫化物の状態の半導体物質を含む群から選択された材料から形成されることを特徴とする請求項1に記載の織物。
【請求項11】
請求項1に記載の織物を含み、
前記織物(1)が、前記織物(1)の光ファイバー(2)によって放射された光を反射することが可能な不織裏地(11)上に取付けられていることを特徴とする複合体(10)。
【請求項12】
前記不織裏地(11)が、織物(1)の光ファイバー(2)に面した裏地(11)の少なくとも一側面上に配置された光触媒粒子(4)を含むスプレッドコーティング(21)を備えることを特徴とする請求項11に記載の複合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−513737(P2010−513737A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542168(P2009−542168)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/052594
【国際公開番号】WO2008/087339
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(509077934)ブロシエール・テクノロジーズ (4)
【Fターム(参考)】