説明

光触媒再生方法及び腐食性ガス浄化装置

【課題】光触媒部材の劣化度を光触媒部材の色の変化により判定し、判定結果に応じて、光触媒の劣化に伴う色の変化及び触媒活性を再生する光触媒再生方法とこの再生方法により再生される光触媒部材を備えた腐食性ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】酸化チタンに白金、銀、銅、バナジウムのうち少なくとも1つの金属を担持した複合化合物の光触媒フィルタ2に腐食性ガスを接触させることにより、腐食性ガスを分解除去する腐食性ガス浄化装置1である。光触媒フィルタ2の色を色検出手段3(カラーセンサ)で検出し、光触媒フィルタ2の色の変化に基づいて、光触媒の劣化度を劣化度判定手段4が判定する。劣化度判定手段4の判定に基づいて、光触媒再生手段5が光触媒フィルタ2に酸化剤を含んだ洗浄液に接触させ、光触媒フィルタ2を再生する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタンに貴金属(白金、銀、銅、バナジウムの中から少なくとも1つからなる)を担持した複合化合物の光触媒を部材へコートした光触媒部材を洗浄する光触媒再生方法、及び前記光触媒部材が備えられる腐食性ガス浄化装置に関するものである。具体的には、腐食性ガスの浄化に伴う前記光触媒の劣化を前記光触媒部材の色の変化に基づいて判定し、該判定結果に応じて前記光触媒部材を洗浄し、その触媒性能を回復させ、再生する光触媒再生方法、及び腐食性ガス浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン光触媒は、空気中や水中の有害物質を分解する浄化作用や、抗菌作用、防汚作用を有することが知られている。
【0003】
酸化チタン光触媒に、そのバンドギャップ以上のエネルギーを有する光を照射すると、価電子帯から伝導体に電子が励起され、電子−正孔対が生成する。励起された電子が光触媒の表面に拡散して、表面吸着水と反応し、OHラジカルなどの活性酸素種が生成する。そして、この活性酸素種や正孔等が光触媒表面に吸着あるいは衝突した有害物質を分解する。
【0004】
酸化チタンのバンドギャップは、約3.0eVであり、約400nm以下の波長の光を照射することで励起反応が起こり、有害物質を除去することができる。
【0005】
環境中に存在している腐食性ガス(窒素酸化物ガス、又は硫化水素ガス等)の浄化装置として、酸化チタン光触媒を部材(フィルタ等)にコートした光触媒部材を腐食性ガス除去に使用した場合、光触媒部材の表面に腐食性ガスを分解したときの分解生成物が蓄積する。浄化する腐食性ガスが高濃度である場合や、光触媒を長期に亘って使用した場合、光触媒部材の表面が分解生成物等に覆われてしまい、光触媒の触媒性能が低下する。この状態になると、光触媒部材の表面が顕著に変色する。
【0006】
すなわち、光触媒部材の表面が変色して見栄えが悪くなるともに、腐食性ガスに対する分解能力が低下する。
【0007】
そこで、光触媒の触媒能力を回復するために、光触媒部材の定期洗浄が行われている。そして、この定期洗浄の際に触媒能力の確認を行い、触媒能力の低下が確認された場合には、触媒能力回復操作が行われている。
【0008】
例えば、特許文献1に記載の光触媒の再生方法では、定期的に光触媒シートを洗浄し、その表面に吸着した大気汚染物質の酸化生成物を溶出させて光触媒活性を回復させたうえで、さらに触媒能力の確認を行い、必要に応じて光触媒シートにアルカリ剤を添加し、再使用時における光触媒の除染機能を高めている。
【0009】
また、近年、高出力の青色LED(Light Emitting Diode)、純緑色LEDが利用できるようになり、発光素子に3原色LEDを用いたフルカラーセンサが開発されている(例えば、非特許文献1、2)。
【0010】
カラーセンサとは、検出体からの反射光を光の3原色であるR(赤)、G(緑)、B(青)の各成分に分解し、その比率により色を判別するセンサである。
【0011】
3原色LEDを用いたフルカラーセンサは、単色光を用いた場合と比較して、微妙な色差を検出できる利点を有する。微妙な色差は、白熱ランプを用いたフルカラーセンサでも検出可能であるが、3原色LEDを用いたフルカラーセンサは、長寿命、低消費電力、発熱が少ないという利点を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−305214号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】野村光俊、柴田克也“3原色LEDを用いたSA1J−F形ファイバ型フルカラーセンサの開発”、[online]、平成11年12月1日、IDEC REVIEW、[平成21年4月27日検索]、インターネット<URL:http://www.idec.com/jpja/technology_solution/tech_resources/pdfs2/IRV_1999_13.pdf>
【非特許文献2】“デジタルカラー判別センサ CZ”、[online]、[平成21年4月27日検索]、インターネット<URL:http://www.keyence.co.jp/switch/color/cz/menu/236/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記従来技術において、光触媒部材の表面に付着した腐食性ガス由来の物質は、単純な水洗浄により除去することができる。しかし、腐食性ガスが高濃度である場合や、光触媒部材を長期に亘って使用した場合、変色の度合いも大きく、単純な水洗浄では光触媒性能が回復しないことがある。また、水洗浄において、触媒性能が回復した場合においても、光触媒部材表面の変色は完全に回復しないこともある。
【0015】
そこで、本発明は、光触媒の触媒活性を回復するとともに、光触媒部材表面の変色を回復することができる光触媒再生方法及びこの光触媒再生方法により再生される光触媒部材を備えた腐食ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成する本発明の光触媒再生方法は、酸化チタンに白金、銀、銅、バナジウムのうち少なくとも1つの金属を担持した複合化合物の光触媒において、前記光触媒の色の変化に基づいて、前記光触媒の劣化度を判定し、該判定に基づいて、前記光触媒を酸化剤を含んだ洗浄液に接触させ、前記光触媒を再生することを特徴としている。
【0017】
また、上記目的を達成する本発明の腐食性ガス浄化装置は、酸化チタンに白金、銀、銅バナジウムのうち少なくとも1つの金属を担持した複合化合物の光触媒に腐食性ガスを接触させることにより、腐食性ガスを分解除去する腐食性ガス浄化装置であり、前記光触媒の色を検出する色検出手段と、該検出手段により検出される前記光触媒の色の変化に基づいて、前記光触媒の劣化度を判定する劣化度判定手段と、該劣化度判定手段の判定に基づいて、前記光触媒に酸化剤を含んだ洗浄液を接触させ、前記光触媒を再生する光触媒再生手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
以上の発明によれば、光触媒の触媒活性を一定以上に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例に係る腐食性ガス浄化装置の概略図。
【図2】本発明の実施例1に係る洗浄を行った後の光触媒フィルタの触媒活性を示す図。
【図3】本発明の実施例5に係る洗浄を行った後の光触媒フィルタの触媒活性を示す図。
【図4】本発明の実施例1に係る洗浄を繰り返した後の光触媒フィルタの触媒活性を示す図。
【図5】本発明の実施例5に係る洗浄を繰り返した後の光触媒フィルタの触媒活性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、酸化チタンに貴金属(白金、銀、銅、バナジウムの中から少なくとも1つからなる)を担持した複合化合物の光触媒を部材にコートした光触媒部材を腐食性ガスの分解に使用した場合に、腐食性ガスの分解に伴い腐食性ガスに対する分解能力が低下するとともに、担持金属に起因して光触媒部材が変色する課題を解決するものである。
【0021】
光触媒の触媒活性を回復するため行う光触媒部材洗浄の際に、光触媒部材の表面の変色を回復させることにより、光触媒部材の変色により触媒能力の劣化度を判定することが可能となり、効率的に光触媒部材を洗浄することができる。
【0022】
すなわち、腐食性ガスの濃度や分解時間で光触媒部材の洗浄時期が異なるが、本発明の光触媒再生方法及び本発明の光触媒再生方法で再生される光触媒部材を備えた腐食ガス洗浄装置によれば、光触媒部材の変色判定を予め設定しておいた変色度合いへの到達の有無により判断することができるので、適切な洗浄周期で光触媒部材のメンテナンスが可能となる。したがって、腐食性ガス浄化装置において、光触媒部材の腐食性ガスの分解能力を一定能力以上に維持できる効果を有する。
【0023】
以下、具体的に実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明の実施例では光触媒部材として、セラミックフィルタの表面に酸化チタン光触媒をコートした光触媒フィルタを例として示すが、光触媒部材の形態は実施例の形態に限定されず、例えば、ガラス板や金属板の表面に光触媒をコートした光触媒部材や、布等に固定化した光触媒部材にも適用できる。さらには、光触媒そのものを光触媒部材として用いてもよい。
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例に係る腐食性ガス浄化装置について図1を参照して詳細に説明する。
【0026】
本発明の実施例に係る腐食性ガス浄化装置1は、光触媒フィルタ2、色検出手段3(以後、カラーセンサとする)、劣化度判定手段4、光触媒洗浄手段5、及び制御部6を備える。
【0027】
光触媒フィルタ2は、発泡構造体のセラミック担体に、酸化チタン光触媒をコートしたもので、空隙がランダムに配列した三次元構造を持っている。本実施例では、90×70×40mm光触媒フィルタ2を使用した。この光触媒フィルタ2で腐食性ガスを浄化すると、光触媒フィルタ2の表面に腐食性ガス由来の物質が蓄積する。光触媒フィルタ2の色は、未使用品で、ほぼ白色である。そして、腐食性ガス由来の物質の蓄積に伴って、黒緑色に変色する。
【0028】
カラーセンサ3は、公知のものを用いればよい(例えば、非特許文献1、2)。特に、3原色LEDを用いたカラーセンサ3であると、長寿命で発熱が少ないため好ましい。
【0029】
カラーセンサ3により、光触媒フィルタ2の色の変化を検出することができる。そして、検出された色に基づいて、光触媒フィルタ2の劣化度を劣化度判定手段4が判定する。
【0030】
劣化度判定手段4は、カラーセンサ3により検出された色に基づいて光触媒フィルタ2の劣化度を判定する。劣化度の判定方法としては、カラーセンサ3により検出された色が、予め設定した変色度合いに到達したか否かを判断することにより劣化度を評価する方法が挙げられる。
【0031】
光触媒洗浄手段5は、劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。光触媒フィルタ2の洗浄方法は、図1に示すように、光触媒フィルタ2に酸化剤を含んだ洗浄液を噴霧する装置が挙げられる。その他、光触媒フィルタ2を酸化剤を含んだ洗浄液に浸漬する装置でもよい。
【0032】
制御部6は、劣化度判定手段4の判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があるか否かを判断し、光触媒洗浄手段5の制御を行う。なお、劣化度判定手段4が判定した劣化度を図示省略の劣化度表示手段(警報ランプ等)で表示し、この表示に基づいて光触媒フィルタ2を洗浄してもよい。
【0033】
本発明の実施例では、光触媒フィルタ2を酸化剤を含んだ洗浄液に浸漬する方法で光触媒フィルタを再生した。
【0034】
光触媒フィルタ2を洗浄する洗浄液は、ビーカ中に純水1Lを入れ、約5%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(花王株式会社製 塩素系キッチンハイター)を10mL添加し、濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を調製し用いた。
【0035】
この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を30分浸漬させた。その後、光触媒フィルタ2を溶液から引き上げ、水を切った後、水道水の流水ですすぎ洗いを実施した。洗い終わった光触媒フィルタ2は、乾燥機中で120℃、3時間乾燥させた。
【0036】
(実施例2)
本発明の実施例2に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0038】
実施例1と同様の方法で、濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0039】
(実施例3)
本発明の実施例3に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0040】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0041】
ビーカ中に水道水1Lを入れ、約5%の次亜塩素酸ナトリウム溶液(花王株式会社製 塩素系キッチンハイター)を10mL添加し、濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を30分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0042】
(実施例4)
本発明の実施例4に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0044】
実施例3と同様の方法で、濃度500ppmの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0045】
実施例1〜4の洗浄方法で洗浄した光触媒フィルタ2について、目視で色を観察し、未使用の光触媒フィルタ2と比較して、光触媒フィルタ2表面に蓄積した腐食性ガス(窒素酸化物ガス又は、硫化水素ガス)由来の物質がどの程度除去され、光触媒フィルタ2が脱色されたかを判定した。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
次亜塩素酸ナトリウムを使用した洗浄条件である実施例1〜4すべてにおいて、優れた脱色効果が確認され、未使用品と同等レベルまで光触媒フィルタ2の色が回復した。このことから、光触媒フィルタ2表面に蓄積した腐食性ガス由来の物質は、純水及び水道水に次亜塩素酸ナトリウムを溶解させた水溶液に15分浸漬することで未使用品と同等なレベルまで脱色されることがわかる。
【0048】
(実施例5)
本発明の実施例5に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0049】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0050】
ビーカ中に約40℃の純水1Lを入れ、過炭酸ナトリウム入り洗剤(花王株式会社製 酸素系キッチンハイター)を10g添加し、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0051】
(実施例6)
本発明の実施例6に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0053】
ビーカ中に約40℃の水道水1Lを入れ、過炭酸ナトリウム入り洗剤(花王株式会社製 酸素系キッチンハイター)を10g添加し、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。
【0054】
この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0055】
(実施例7)
本発明の実施例7に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0056】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0057】
実施例6同様の方法で、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を30分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0058】
(実施例8)
本発明の実施例8に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0060】
ビーカ中に約40℃の純水1Lを入れ、過炭酸ナトリウム入り洗剤(花王株式会社製 酸素系キッチンハイター)を4g添加し、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。
【0061】
この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0062】
(実施例9)
本発明の実施例9に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0063】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0064】
ビーカ中に約40℃の水道水1Lを入れ、過炭酸ナトリウム入り洗剤(花王株式会社製 酸素系キッチンハイター)を4g添加し、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を15分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0065】
(実施例10)
本発明の実施例10に係る腐食性ガス浄化装置は、本発明の実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1と同じである。よって、実施例1に係る腐食性ガス浄化装置1を構成する手段と同じものについては、同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
劣化度判定手段4が判定した劣化度に基づいて、光触媒フィルタ2を洗浄する必要があると判断された場合、光触媒フィルタ2を洗浄する。
【0067】
実施例9同様の方法で、過炭酸ナトリウムを含んだ水溶液を得た。この溶液に腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を30分浸漬させた。その後、実施例1と同様の方法で光触媒フィルタ2のすすぎ洗い、乾燥を行った。
【0068】
実施例5〜10の洗浄方法で洗浄した光触媒フィルタ2について、目視で色を観察し、未使用の光触媒フィルタ2と比較して、光触媒フィルタ2表面に蓄積した腐食性ガス(窒素酸化物ガス又は、硫化水素ガス)由来の物質がどの程度除去され、光触媒フィルタ2が脱色されたかを判定した。その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
過炭酸ナトリウムを使用した洗浄条件である実施例5〜10すべてにおいて、優れた脱色効果が確認され、未使用品と同等レベルまで光触媒フィルタ2の色が回復した。このことから、光触媒フィルタ2表面に蓄積した腐食性ガス由来の物質は、純水又は水道水1Lに過炭酸ナトリウム4gを溶解させた水溶液に15分浸漬することで未使用品と同等なレベルまで脱色されることがわかる。
【0071】
以上、実施例1〜4、実施例5〜10いずれの洗浄条件においても、光触媒フィルタ2表面に蓄積した腐食性ガス由来物質の除去及び光触媒フィルタ2の変色を回復することが可能である。
【0072】
次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、使用する水のpHによっては、有害かつ腐食性を有する塩素ガスが発生する場合があるので、過炭酸ナトリウムを使用するほうがより好ましい。
【0073】
次に、実施例1及び実施例5で示した洗浄方法で洗浄した光触媒フィルタ2を使用してガス浄化試験を行い、実施例1及び実施例5で示した洗浄方法によって光触媒フィルタ2のガス浄化性能がどの程度回復するかを評価した。
【0074】
ガス浄化試験は、腐食性ガスとして硫化水素ガスを用いた。そして、有効容積1m3のアクリル試験室内で試験を行った。
試験室内に腐食性ガス浄化装置1をセットしておき、外部配管より硫化水素ガスを注入する。試験室内の硫化水素ガス濃度はおよそ500ppbとした。内部のガス濃度を均一にするため、小型ファンを使用して試験室内の空気を攪拌した状態で、腐食性ガス浄化装置1の運転を開始した。
【0075】
運転開始直前から試験室内の硫化水素ガス濃度の経時変化を硫化水素連続測定装置により測定した。この連続測定結果より、次亜塩素酸ナトリウム洗浄液及び、過炭酸ナトリウム洗浄液による光触媒フィルタ2の浄化性能回復状況を評価した。
【0076】
比較として、未使用の光触媒フィルタ2と腐食性ガス由来の物質が蓄積した洗浄前のフィルタ2の浄化性能も同様の試験方法で試験した。
【0077】
次亜塩素酸ナトリウム洗浄液で洗浄した(実施例1の洗浄方法)結果を図2に、過炭酸ナトリウム洗浄液で洗浄した(実施例5の洗浄方法)結果を図3に示す。
【0078】
図2に示すように、未使用の光触媒フィルタ2(初期値:△)では、およそ500ppbの硫化水素ガスを22分で10ppb以下にすることができる。一方、腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2(腐食ガス由来の物質蓄積:○)では、およそ500ppbの硫化水素ガスが10ppb以下になるまでに37分かかっている。このことから、腐食性ガス由来の物質が光触媒フィルタ2表面に蓄積することで、光触媒フィルタ2の腐食性ガスに対する浄化性能が低下していることがわかる。
【0079】
そして、腐食性ガス由来の物質が蓄積した光触媒フィルタ2を次亜塩素酸ナトリウム水溶液で洗浄した後の光触媒フィルタ2では、およそ500ppbの硫化水素ガスが17分後に10ppb以下となっている。このことから、腐食性ガス由来の物質が光触媒フィルタ2表面に蓄積することで、光触媒フィルタ2の腐食性ガスに対する浄化機能が低下するが、次亜塩素酸ナトリウム洗浄液で洗浄することで腐食性ガス由来の物質を除去することができ、光触媒フィルタ2の浄化性能を未使用の光触媒フィルタ2の浄化性能レベルまで回復することができる。
【0080】
同様に、図3に示すように、過炭酸ナトリウム洗浄液においても次亜塩素酸ナトリウム洗浄液と同様の効果が得られる。
【0081】
(実施例11)
実施例1の洗浄工程を30回繰り返し、光触媒フィルタ2の次亜塩素酸ナトリウムを含む洗浄液に対する洗浄耐久性を評価した。その結果を図4に示す。
【0082】
(実施例12)
実施例5の洗浄工程を30回繰り返し、光触媒フィルタ2の過炭酸ナトリウムを含む洗浄液に対する洗浄耐久性を評価した。その結果を図5に示す。
【0083】
図4、5より、次亜塩素酸ナトリウムを含有する洗浄液を用いても、過炭酸ナトリウムを含有する洗浄液を用いても、光触媒フィルタ2の性能劣化は確認されなかった。
【0084】
以上のように、本発明に係る光触媒再生方法、及び腐食性ガス浄化装置によれば、光触媒部材(光触媒フィルタ)に付着した腐食性ガス(窒素酸化物ガス又は、硫化水素ガス等)由来の物質を簡便に除去でき、光触媒部材の変色も再生することができる。光触媒部材の変色を再生できるので、光触媒部材の劣化度合いを光触媒の色の変化に基づいて評価することが可能となった。
【0085】
光触媒部材の色の変化は、目視で確認することも可能であるが、光触媒部材の色の変化を、カラーセンサ3で測定することにより、色の微妙な変化を検出することができるので、適切な洗浄周期で光触媒部材を洗浄することができる。
【0086】
光触媒部材の洗浄に用いる洗浄液は、一般に販売されている家庭用の漂白剤や洗浄剤を調製した洗浄液であり、入手も容易で、操作性に優れ、効果的に光触媒部材を洗浄することが可能である。その他、洗浄液としては、酸化性のある洗浄液を適宜用いればよい。
【0087】
なお、本発明に係る光触媒再生方法は、実施例に限定されるものではなく、カラーセンサの種類や洗浄液の組成等は、その目的を達成するものであれば適宜選択可能である。
【0088】
また、光触媒(光触媒部材)表面に蓄積する腐性ガス由来の物質には、水に溶解して酸性を示すもの(例えばSO42-、NO3-)があるので、本発明に係る洗浄液に光触媒部材を浸漬させる前に、水等で予め光触媒を洗浄した後に、洗浄液に浸漬すると、洗浄液の劣化を防止することができる。
【符号の説明】
【0089】
1…腐食性ガス浄化装置
2…光触媒フィルタ(光触媒部材)
3…カラーセンサ(色検出手段)
4…劣化度判定手段
5…光触媒再生手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタンに白金、銀、銅、バナジウムのうち少なくとも1つの金属を担持した複合化合物の光触媒において、
前記光触媒の色の変化に基づいて、前記光触媒の劣化度を判定し、
該判定に基づいて、前記光触媒を酸化剤を含んだ洗浄液に接触させ、前記光触媒を再生する
ことを特徴とする光触媒再生方法。
【請求項2】
前記色の変化は、カラーセンサで測定する
ことを特徴とする請求項1に記載の光触媒再生方法。
【請求項3】
前記光触媒を水で洗浄した後に、前記洗浄液により再生する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光触媒再生方法。
【請求項4】
前記酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウム又は、過炭酸ナトリウムのいずれかである
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光触媒再生方法。
【請求項5】
前記光触媒は、窒素酸化物又は、硫化水素を浄化する
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光触媒再生方法。
【請求項6】
酸化チタンに白金、銀、銅、バナジウムのうち少なくとも1つの金属を担持した複合化合物の光触媒に腐食性ガスを接触させることにより、腐食性ガスを分解除去する腐食性ガス浄化装置であって、
前記光触媒の色を検出する色検出手段と、
該検出手段により検出される前記光触媒の色の変化に基づいて、前記光触媒の劣化度を判定する劣化度判定手段と、
該劣化度判定手段の判定に基づいて、前記光触媒に酸化剤を含んだ洗浄液を接触させ、前記光触媒を再生する光触媒再生手段と、を備えた
ことを特徴とする腐食性ガス浄化装置。
【請求項7】
前記光触媒の劣化度を表示する劣化度表示手段を備えた
ことを特徴とする請求項6に記載の腐食性ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−544(P2011−544A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146021(P2009−146021)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】