説明

光触媒反応装置、放電電極及び電極製造方法

【課題】 本発明によれば、効率よく大きな電界強度を得ることが可能な光触媒反応装置
及び放電電 極及び電極製造方法を提供することができる。
【解決手段】 本発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の面と対向して設置され
前記光触媒 の位相と同様の位相をもつ電極とを有することを特徴とする光触媒反応装置
が提供される。また、本 発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の第1の面に対
向する位置に設置された第1の電極と 、前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する
位置に設置された第2の電極と、前記第1の電極も しくは前記第2の電極のうち少なく
とも一方の電極が前記光触媒の位相と同様の位相を有することを 特徴とする光触媒反応
装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒反応装置及び放電電極及び電極製造方法に関する。
【0002】
に関する。
【背景技術】
【0003】
従来、脱臭装置等、有害物質を取り除く手法の一例として、放電を用いた放電処理装置に
よるものや 、光触媒を用いた光触媒反応装置によるものが知られている。
【0004】
図7(特開2002-336654図1)、図9(特開2005-34270図4)は従来の光触媒反応装置の
一例を示し ている。
【0005】
図7において光触媒反応装置100は、単位構造体とそれを収納する筐体とから構成され
ている。筐 体は筒状の構造をしており、有害物質を含む気体が通過できるように流入口
と排出口を有している。 単位構造体は一対のハニカム電極200とそれらに挟持される光触
媒モジュールとから構成され、一対 のハニカム電極200は図示しない高圧電源部に接続さ
れている。
【0006】
ハニカム電極200は、立体形状の電極であって、導電性の箔でハニカム状に形成され、正
面および背 面から見た形状がハニカム状になっている電極本体と導電性外枠とから構成
され、正面から奥行き方 向にかけてハニカム状に貫通しており、有害物質を含む気体が
通過できるようになっている。電極本 体の側面は導電性外枠で覆われており、電極の正
面から背面方向に所定の奥行き幅を有している。
【0007】
従来では電極にハニカム電極200すなわちハニカム形状を用いている。ハニカム形状の
他に網目形 状や格子形状も使用されることもある。
【0008】
ところが、図8に示すように不規則な位相を有する光触媒と位相に規則性のあるハニカム
形状、網目 形状、格子形状の電極とを対向させて設置した場合、双方の位相はずれてし
まう。この結果、電界が 光触媒表面の鋭利部である角部に集中せず光触媒の内部の面部
分に発生してしまい電界強度に限界が 生じてしまう。鋭利ではない面部分へ放電すると
効率が悪くなってしまうからである。逆に光触媒の 鋭利な部分に電界が集中するほど電
界強度が大きくなる。
【0009】
また、図9では電極に鋭利な部分を形成している。ハニカム形状、網目形状、格子形状等
の電極の放 電部を切り欠き鋭利な端部を形成することで電極の放電性能が上がることを
利用している。しかし、 電極を切り欠いた部分、すなわち電極の一部のみしか鋭利にで
きなかった。
【特許文献1】特開2002-336654号公報
【特許文献2】特開2005-34270 号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、電界強度を効率よくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)本発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の面と対向して設置され前記光触
媒の位相と 同様の位相をもつ電極とを有することを特徴とする光触媒反応装置が提供さ
れる。
【0012】
(2)本発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置
された第1 の電極と、前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する位置に設置された
第2の電極と、前記第1 の電極もしくは前記第2の電極のうち少なくとも一方の電極が
前記光触媒の位相と同様の位相を有す ることを特徴とする光触媒反応装置が提供される

【0013】
(3)本発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置
された第1 の電極と、前記光触媒に面し前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する
位置に設置された第2の 電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極の位相が前記光触
媒の位相と同様であることを特徴とす る光触媒反応装置が提供される。
【0014】
(4)本発明の一態様によれば、光触媒と、前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置
された第1 の電極と、前記光触媒に面し前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する
位置に設置された第2の 電極と、前記第1の電極及び前記第2の電極の位相はそれぞれ
前記光触媒の複数部分の位相とのずれ が0.5mm以内であるように設定されることを特
徴とする光触媒反応装置が提供される。
【0015】
(5)本発明の一態様によれば、光触媒の位相と同様の位相を有する電極をエッチングす
る工程と、 前記エッチング工程を繰り返すことにより電極を積層させる拡散接合工程と
を有することを特徴とす る電極製造方法が提供される。
【0016】
(6)本発明の一態様によれば、前述の電極製造方法によって製造された電極を用いるこ
とを特徴と する光触媒反応装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、効率よく大きな電界強度を得ることが可能な光触媒反応装置及び放電
電極及び電 極製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
第1の実施の形態を説明する。図1(a)は本発明の実施の形態に関する光触媒反応装置
及び放電電 極を搭載した分煙機である。上部より有害物質を含んだ空気を取り込み、浄
化された空気を下部より 排出する。図1(b)は、図1(a)で示した光触媒反応装置が
有する光触媒ユニットの概略図である 。この光触媒ユニット10の構成を説明する。
【0020】
図1に示されているように光触媒ユニット10は第1のマイナス電極12、第2のマイナ
ス電極13 、プラス電極14、第1の光触媒16、第2の光触媒17からなる。また、
光触媒ユニット10の外 側にはオゾン分解フィルター18が設定されている。
【0021】
これらの電極は矢印A方向に第1のマイナスの電極12、プラスの電極14、第2のマ
イナスの電 極13の順に並べられており、それぞれの電極の間には光触媒16が設置さ
れている。
【0022】
また、矢印Aはかび類、細菌類、臭気物質や有害物質等の分解対象を含む空気等の流路を
示す。
【0023】
電極はステンレス、アルミニウム、銅等の金属にコーティング処理を施したものや、ハス
トレイ、白 金、金等の耐食性の良好な金属あるいは合金が挙げられる。また、光触媒1
6、17は酸化チタン等 を含む多孔質セラミックからなる。この光触媒16は円筒もし
くは角柱の筒状構造を連ねた3次元網 目構造形状をしている。図2は本発明の対象とな
る光触媒の一例である四角柱の筒状構造を連ねた平 面図である。
【0024】
次に光触媒ユニット10の作用について説明をする。まず、電極12の上方より矢印A方
向から臭気 物質や有害物質等の分解対象物を含む空気等の気体が流入される。この気体
は電極12へ導かれ、電 極内の流路を通過する。電極12を通過した気体は光触媒16
へ導かれる。一方で電極12と電極1 4、及び電極14と電極13との間には図示しな
い電源部から電圧が印加される。このため、電極1 2と電極14、及び電極14と電極
13との間には電界が形成される。これらの電界の発生によって 放電が行われ放電光が
発生する。放電光はそれぞれ光触媒16、17に照射され、光触媒は活性化す る。その
結果、活性酸素であるオゾンが発生し、分解対象物を分解する。発生したオゾンはオゾン
フ ィルター18によって酸素に変えて流出される。
【0025】
この光触媒16は前述したように筒状の構造をしているが、誤差により位相が不規則にな
ってしまう 。ここでいう位相とは光触媒16における穴のあいていない部分の並び方を
言う。
【0026】
位相のずれと光触媒の反応の大きさを示す発光強度との関係を図3に示す。このグラフに
より、光触 媒の位相と電極の位相とのずれが少ないほど光触媒の反応が大きくなること
が分かる。
【0027】
そこで本発明の一例を電極12、光触媒16を用いて示す。図4に示すように、光触媒1
6の位相と 同じ、もしくはずれの少ない放電電極12を形成することを特徴とする。こ
れにより、光触媒16の 表面の角部に電界が集中し、放電光が光触媒に効率よく照射さ
れる。その結果、光触媒の反応(発光 )を大きくすることができる。この光触媒16の
角部のように鋭利な部分に電界を集中させると効率 良く放電可能である。図4では光触
媒16と電極12の位置関係について述べたが、光触媒16と電 極14、光触媒17と
電極13,光触媒17と電極14との位置関係についても同様である。
【0028】
ここで、一つの光触媒と、その前後に配置された2つの電極を一対の電極とする。図1(b
)のように 複数の光触媒があり、その光触媒のそれぞれが電極を介して配置され複数の対
の電極が存在する場合 は少なくとも一対の電極の位相と光触媒の位相とが合っていれば
効果を発揮する。
【0029】
さらに一対の電極のうち一方のみが電極の位相と合っていても効果を発揮する。
【0030】
また、互いに面する光触媒の位相と電極の位相とは全ての位相を対応させなくても効果が
ある。
【0031】
次に第2の実施の形態について説明をする。
【0032】
第1の実施の形態で使用する電極の製造方法に関するものである。位相が規則的ではない
光触媒に合 わせた電極を作るためには、使用する光触媒に合わせた電極の位相形状を作
る必要がある。
【0033】
このような電極を製造する方法として本発明の一例としてエッチングによって製造する方
法を行う。
【0034】
まず、光触媒の位相に合わせて薄板をエッチングする。このエッチングされた薄板を複数
枚製造し、 これらを拡散接合させて積層させる。
【0035】
図4に示すように拡散接合は、具体的には真空炉の中で複数のエッチングされた薄板に融
点以下の温 度を負荷させることによって原子を相互拡散させることによっておこなう接
合方法である。
【0036】
積層することで電極の耐久性が向上し、さらにエッチングによって細く鋭利は電極が形成
可能である 。電極が鋭利であると放電性が良くなり、光触媒反応の効率が向上する。
【0037】
第3の実施の形態について図6を用いて説明する。
【0038】
第3の実施の形態は第2の実施の形態の製造方法により電極を製造する電極の変形例であ
る。この製 造方法により鋭利な突起部を有する電極が得られ、電極の全体で効率の良い
光触媒反応が可能となる 。公知例の図9は電極を切り欠いた部分、すなわち電極の一部
のみしか鋭利にできなかった。
【0039】
また、本実施の形態の電極は主にプラスの電極で使用される。プラスの電極すなわち電極
14は小さ いほど電力密度が高くなる性質があり、さらに高い電圧を得ることができる

【0040】
本発明は、前記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施の段階ではその要
旨を逸脱し ない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施の形態に開示
されている複数の構成要 素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、
実施の形態に示される全構成要素から 幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異
なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合せても よい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態に係る光触媒反応装置の概観図と光触媒ユニットの基本構成を表す図である。
【図2】本発明の対象となる光触媒の平面図。
【図3】電極の位相と光触媒の位相とのずれと発光強度の関係図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電極の位相と光触媒の位相を示した概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る電極の構成を示した図である。
【図6】本発明の実施形態に係る電極の構成を利用した電極の一例を示した図である。
【図7】従来技術に係る光触媒反応装置の概観図である。
【図8】従来技術に係る電極の位相と光触媒の位相を示した概略断面図である。
【図9】従来技術に係る電極の一部に鋭利な端部を形成した電極を示した図である。
【符号の説明】
【0042】
10 光触媒ユニット、12 電極、13 電極、14 電極、16 光触媒、17 光
触媒、18 オゾン分解フィルター、100 光触媒反応装置、200 ハニカム電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒と、
前記光触媒の面と対向して設置され前記光触媒の位相と同様の位相をもつ電極と
を有することを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項2】
光触媒と、
前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置された第1の電極と、
前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する位置に設置された第2の電極と、
前記第1の電極もしくは前記第2の電極のうち少なくとも一方の電極が前記光触媒の位相
と同様の位 相を有することを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項3】
光触媒と、
前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置された第1の電極と、
前記光触媒に面し前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する位置に設置された第2の
電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の位相が前記光触媒の位相と同様であることを特徴と
する光触媒反応装置。
【請求項4】
光触媒と、
前記光触媒の第1の面に対向する位置に設置された第1の電極と、
前記光触媒に面し前記第1の電極と反対側の第2の面に対向する位置に設置された第2の
電極と、
前記第1の電極及び前記第2の電極の位相はそれぞれ前記光触媒の複数部分の位相とのず
れが0.5 mm以内であるように設定されることを特徴とする光触媒反応装置。
【請求項5】
光触媒の位相と同様の位相を有する電極をエッチングする工程と、
前記エッチング工程を繰り返すことにより電極を積層させる拡散接合工程とを有すること
を特徴とする電極製造方法。
【請求項6】
光触媒よりも小さい立体形状の電極において、
請求項5記載の電極製造方法によって製造された鋭利な突起を有することを特徴とする放
電電極。
【請求項7】
請求項5記載の電極製造方法によって製造された電極を用いることを特徴とする請求項1
乃至4記載の光触媒反応装置。


【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図5】
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【図6】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−188534(P2008−188534A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25973(P2007−25973)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】