説明

光触媒塗膜形成用組成物、光触媒塗膜および光触媒塗膜の形成方法

【課題】保存安定性や分散性に優れた中性の光触媒塗膜形成用組成物を提供し、また、高い硬度、優れた耐剥離性及び活性を有する光触媒塗膜及びその形成方法を提供することにある。
【解決手段】酸化チタン、アミノシラン化合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる1種又は2種以上の酸、水及び親水性有機溶媒を含む光触媒塗膜形成用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒塗膜の形成に用いられる光触媒塗膜形成用組成物、該光触媒塗膜及び該光触媒塗膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタン粉末は、白色顔料として古くから利用されており、近年は化粧品などの紫外線遮蔽材料、光触媒、コンデンサ、サーミスタの構成材料あるいはチタン酸バリウムの原料等電子材料に用いられる焼結材料に広く利用されている。特にここ数年、光触媒としての利用が盛んに試みられており、光触媒反応の用途開発が盛んに行われている。
この酸化チタン光触媒の用途は非常に多岐に亘っており、水の分解による水素の発生、酸化還元反応を利用した有機化合物の合成、排ガス処理、空気清浄、防臭、殺菌、抗菌、水処理、照明機器等の汚れ防止等、数多くの用途開発が行われている。
【0003】
しかしながら、酸化チタンは可視光付近の波長領域において大きな屈折率を示すため、可視光領域では殆ど光吸収は起こらない。屋内での蛍光灯などの下での利用を考えると、蛍光灯のスペクトルは殆どが400nm以上であるため、光触媒として十分な特性を発現することはできない。そこで、可視光領域での触媒活性を発現させより利用性の高い高活性の光触媒の開発が行なわれている。
【0004】
近年、従前の金属イオンを酸化チタンにドープした光触媒の不十分な触媒活性を改善するものとして、硫黄含有酸化チタン粉末を用いた分散剤、塗膜形成物が開示されている(特開2006−1774号公報,特開2006−312730号公報)。この酸化チタン分散体、塗膜形成物によれば、紫外線領域だけではなく可視光領域の光触媒活性が高いことから、太陽光の当たらない蛍光灯等の室内においても十分に光触媒作用を発揮することができるものである。
【0005】
光触媒塗膜形成用組成物は、一般的には、光触媒及び光触媒のバインダーとなるオルガノシラン化合物などの加水分解性珪素化合物を配合したものが用いられる(例えば、国際公開WO96/29375号公報、特開平8−164334号公報、特開2006−312730号公報など)。
【特許文献1】特開2006−1774号公報
【特許文献2】特開2006−312730号公報
【特許文献3】国際公開WO96/29375号公報
【特許文献4】特開平8−164334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、この加水分解性珪素化合物を安定して得るために、光触媒塗膜形成用組成物のpHを酸性にする必要がある。そのため、鉄、アルミニウム等の金属上への塗布には金属腐食の問題があった。このため、従来の光触媒塗膜が有する高い硬度、耐剥離性及び活性に優れたものであると共に、中性の光触媒塗膜形成用組成物の開発が望まれていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、保存安定性や分散性に優れた中性の光触媒塗膜形成用組成物を提供し、また、高い硬度、優れた耐剥離性及び活性を有する光触媒塗膜及びその形成方法を提供することにある。
【0008】
すなわち、本発明は、酸化チタン、アミノシラン化合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる1種又は2種以上の酸、水及び親水性有機溶媒を含むことを特徴とする光触媒塗膜形成用組成物を提供するものである。
【0009】
また、本発明は、光触媒塗膜形成用組成物から形成される光触媒塗膜を提供するものである。また、本発明は、前記光触媒塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥して得られる光触媒塗膜の形成方法を提供するものである。なお、本明細書において、光触媒塗膜形成用組成物は単に「組成物」とも言う。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光触媒塗膜形成用組成物は保存安定性や分散性に優れると共に、中性であるため、金属上でも容易に塗布することができる。また、得られた塗膜は硬度が高く、耐剥離性に優れ、光触媒活性も高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の光触媒塗膜形成用組成物において、酸化チタンとしては、酸化チタン、窒素や硫黄を内部に含む酸化チタン、硫黄をTiサイトにドープした酸化チタン、酸素が欠損した酸化チタン、貴金属を担持した酸化チタン、遷移金属が担持された酸化チタン、遷移金属を内部に含む酸化チタンなどが挙げられる。これらのうち、可視光で高活性を示す点で、硫黄をTiサイトにドープした酸化チタンが好ましい。組成物中の酸化チタンの含有量は、1質量%以上10質量%以下、好適には3質量%以上9質量%以下である。酸化チタンの含有量が1質量%未満であると、得られる光触媒塗膜の活性が低く、一方、10質量%を越えると、酸化チタンの分散性が悪くなる。また、上記酸化チタンは、酸化チタンに遷移金属や貴金属が添加又は担持されたものでもよい。遷移金属や貴金属の担持量は、種類によって異なるが、触媒活性が高くなるように設定され、通常、0.1質量%以上5質量%以下である。
【0012】
本発明の組成物に配合されるアミノシラン化合物は、組成物に硬化性を付与し、塗膜の強度を高めるために使用されるもので、一般式RSi(OR4−n (式中、Rはアミノ基を含む有機基、Rはアルキル基又はアシル基、nは1〜3の整数である。)で表されるアミノシラン化合物およびこれらの加水分解縮合物である。Rとしては炭素数1〜3のアミノ系炭化水素基が挙げられる。アミノ基はSiとは直接結合せず、末端に位置する。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、アセチル基等が挙げられる。
【0013】
本発明のアミノシラン化合物の例としては、N−2−アミノエチル-3−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、 N−2−アミノエチル−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。特に、3−アミノプロピルトリメトキシシランが、硬化性に優れるため好ましい。
【0014】
本発明のアミノシラン化合物の含有量は、酸化チタンの含有量の5.0質量%〜40質量%、好適には6.0質量%〜40質量%が好ましい。5質量%未満では、塗膜の強度が悪く、一方、40質量%を越えると、塗膜後〜3日間の水に対する耐久性が悪くなる。また、アミノシラン化合物の配合量は、アミノシラン化合物に含まれる水を含まないアミノシラン化合物のみの配合を言う。
【0015】
本発明の組成物に配合されるジアルキルスルホコハク酸塩は、分散剤として使用されるものであり、次式;
【化1】


(式中、Mはナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩又はアンモニア塩を表す。R、Rは、同一または異なってよく、炭素数5〜15のアルキル基又はフェニル基を示す。)で表されるものが挙げられる。代表例としては、ジヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジドデシルスルホコハク酸ナトリウム、ビストリデシルスルホコハク酸ナトリウムなどがあり、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムが高い分散性が得られる点で好適である。ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量は、酸化チタンの含有量の0.1〜2質量%が好ましい。0.1質量%未満であると組成物の分散が悪くなり、2質量%を越えると触媒活性が悪くなる。
【0016】
本発明の組成物に配合される酸は、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる1種又は2種以上の酸が好ましい。酸を含有することで、酸化チタンの凝集を防ぐことができ、光触媒活性が良好となる。酸を含まない、ジアルキルスルホコハク酸塩と親水性有機溶剤の系あるいはジアルキルスルホコハク酸塩と水と親水性有機溶剤の系では、酸化チタンは凝集を起こす。なお、酸であっても、硫酸、蓚酸、コハク酸、フタル酸、フマル酸、硼酸及びクエン酸を配合すると、光触媒活性は逆に低下する。酸の含有量は、組成物中、0.005質量%〜0.045質量%である。酸の含有量が0.005質量%未満であると酸化チタンが凝集し、一方0.045質量%を越えると触媒活性が下がる。また、酸の配合量は、酸に含まれる水を含まない酸のみの配合を言う。
【0017】
水の含有量は、酸の含有量の200〜1800倍(質量)が好ましい。上記の範囲とすることで、酸化チタンの分散が良好となる。
【0018】
本発明の親水性有機溶媒は、水と相溶性のある溶媒が好ましい。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、アセトニトリル、アセトン、nブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどが挙げられ、特にエタノールが好適である。含有量は残部である。
【0019】
また、本発明の組成物は、本願発明の効果を損なわない範囲で任意成分が含まれていてもよい。任意成分としては、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸アンモニウムのようなアルカリシリケート、シリカ、コロイダルシリカ(シリカゾル)、加水分解性珪素化合物、フッ素樹脂モノマー、フッ素樹脂エマルジョンが挙げられる。加水分解性珪素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのオルガノシラン、これらのオリゴマーであるポリオルガノシロキサンなどが挙げられる。本発明の組成物のpHは、4以上、8以下である。本発明の組成物は中性であるため、鉄、アルミニウム等の金属上へ塗布する際、腐食の問題が生じない。また、本発明の組成物は保存安定性及び分散性が共に優れる。
【0020】
本発明の光触媒塗膜形成用組成物は、通常、アミノシラン化合物と親水性有機溶媒を含むA液と、前記酸化チタンが、ジアルキルスルホコハク酸塩、酸、親水性有機溶媒及び水に分散されているB液とを、塗布前、好適には塗布直前に混合することにより調製される。
【0021】
A液は、アミノシラン化合物を含有する。また、A液は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、親水性有機溶媒、水を用いることができる。アミノシラン化合物濃度は、A液とB液の混合の含有量が、前記含有量となるように調整する。また、pHを5〜10に調整するために、上記の酸を加えても良い。
【0022】
B液は、酸化チタン、ジアルキルスルホコハク酸塩、酸、親水性有機溶媒及び水から構成される。B液のpHは2〜7となるように、酸を加え調整する。その範囲外であると、酸化チタンが凝集を起こすようになる。
【0023】
B液は、まず親水性有機溶媒及び水の混合物にジアルキルスルホコハク酸塩を加える。次いでその中に酸化チタンを加える。その後、純水で希釈した酸を加え、攪拌を行い、酸化チタンを分散する。任意成分である加水分解性珪素化合物を加える場合は、B液に加える。A液では不安定となりゲル化する。
【0024】
本発明の光触媒塗膜形成方法は、A液とB液を混合して得られる光触媒塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥する方法であり、好適にはA液とB液を混合後24時間以内に混合液である酸化チタン光触媒塗膜形成用組成物を基材に塗布する方法であり、好ましくは、A液とB液の混合後、12時間以内、特に5時間以内に該混合液を基材に塗布する方法である。この方法によると、A液とB液を混合した後、塗膜組成物中の酸化チタン粉末の凝集を防止でき分散性に優れ、かつ組成物のゲル化を防止することも可能である。
【0025】
本発明の光触媒塗膜形成用組成物が塗布される基材としては、合成樹脂、鉄、アルミニウム、SUS等の金属材、ガラス等が挙げられる。これらのうち、合成樹脂材が好ましい。また、基材の形態としては、合成樹脂製のフィルム、シート、板などが挙げられる。該合成樹脂としては、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。
【0026】
光触媒塗膜の形成方法は、特に制限されず、従来の方法を用いることができ、例えば、刷毛刷り、ローラー刷り、スプレーコーティング、ディップコーティング、ロールコーティング、フローコーティング、スピンコーティングなどがある。
【0027】
塗膜の乾燥処理は、オーブンなどの加熱設備にて行なわれる。該塗膜の乾燥処理の条件は、乾燥処理温度が120℃以下、好ましくは25℃以上110℃以下であり、乾燥処理時間が1時間以内、好ましくは5分以内、より好ましくは0.5分以上1分以内である。該塗膜の乾燥処理の際の乾燥雰囲気は、特に制限されないが、大気雰囲気が経済的である。
【0028】
上記の光触媒塗膜形成用組成物により形成された光触媒塗膜は、塗膜強度が高く、耐剥離性や透明性に優れ、光触媒活性も高い。
【0029】
実施例
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0030】
[光触媒塗膜形成用組成物の調製]
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物(信越化学工業(株)KBP90,3−アミノプロピルトリメトキシシラン含有量:32.8質量%,溶媒:水)22質量部、溶媒としてエタノール121質量部を撹拌し、A液を得た。一方、エタノール643質量部にジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム(和光純薬工業(株)試薬)0.3質量部を加えた後、可視光応答型光触媒粉末(硫黄0.01%含有酸化チタン,Tiサイトを硫黄が置換した酸化チタン)71質量部を加えた。この液に、塩酸(関東化学(株)試薬,塩酸濃度:36%)0.3質量部を純水143質量部で希釈した酸を加えた後、攪拌を行い、酸化チタンを分散させ、B液を得た。A液及びB液を質量比で143:857(A液:B液)の割合で混合して、光触媒塗膜形成用組成物を得た。得られたA液、B液は、下記方法により保存安定性を、光触媒塗膜形成用組成物はpHを測定すると共に、下記方法により分散安定性を評価した。
【0031】
[光触媒塗膜の作製]
基材として、ガラス板に、実施例1で調製した光触媒塗膜形成用組成物を、速やかに、スキージ法により塗布し、110℃で1分間、オーブン中で加熱し、光触媒塗膜を作製した。A液とB液の混合から基材への塗布までの時間は、60分であった。得られた光触媒塗膜は、硬化速度、硬度試験、耐剥離性、活性及び透明性を評価した。
【0032】
[光触媒塗膜形成組成物のpHの測定方法]
pHメータ(株式会社 堀場製作所製 pHメータD−51)を用いて測定した。pH4未満を酸性、pH8より大きい場合をアルカリ性として評価した。
【0033】
[光触媒塗膜の評価方法]
1.保存安定性
A液、B液それぞれを4℃で冷蔵保存し、30日経過後の溶液を目視で評価する。著しい粘度上昇が見られるか、もしくはゲル化していれば×、変化が無ければ○と判断する。
【0034】
2.分散性
A液とB液を混合し、動的散乱法による粒度測定装置(大塚電子製FPAR1000)を用いて粒度分布測定を行い判断する。「○:平均粒径が50nm以下、△:平均粒径が100nm以下、×:平均粒径が100nmより大きい」の三段階で示した。
【0035】
3.硬化速度
各実施例及び比較例で調製した光触媒塗膜形成用組成物を、スキージ法により塗布し、乾燥して、塗膜を形成させた。次いで、該塗膜を、110℃で1分間、オーブン中で加熱し、光触媒塗膜を形成させた。形成した塗膜に触れた際、未乾燥でベタついたり、塗膜が柔らかくなっていたりしないか確認し、「○:硬化良好、△:塗膜が柔らかい、×:未乾燥」の三段階で評価を行った。
【0036】
4.硬度試験
光触媒用接着層を爪で擦り、該接着層の破れを目視で観察し、「○:傷なし、△:若干の傷、×:明らかな傷」の三段階で評価を行った。
【0037】
5.耐剥離性
各実施例及び比較例で調製した光触媒塗膜形成用組成物を、スキージ法により塗布し、乾燥して、塗膜を形成させた。次いで、該塗膜を、110℃で1分間、オーブン中で加熱し、光触媒塗膜を形成させた。次いで、作製した光触媒塗膜に、セロハンテープを付着させてから、該セロハンテープを光触媒塗膜面に対して直角に保ち瞬間的に引き剥がした。次いで、膜の状態を観察し、「○:剥離なし、△:若干の剥離、×:明らかな剥離」の三段階で評価を行った。
【0038】
6.活性
上記のようにして光触媒塗膜を形成させたサンプルを、1質量%硝酸銀水溶液に2分間を浸漬した。取り出したサンプルを紫外線ランプで還元反応させ、色の変化を目視で確認した。着色が多いほど酸化チタンが表面に出ていることになり、活性が高いと言える。評価結果を、「○:活性良好、△:ほどほどの活性、×:活性が悪い」の三段階で示した。
【0039】
7.透明性
作製した光触媒塗膜用構造体の吸光度を分光光度計V−550(日本分光製)で測定し透明性を評価した。評価結果を、「○:透明性良好、△:ほどほどの透明性、×:透明性が悪い」の三段階で示した。
【実施例2】
【0040】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物22質量部に代えて、16質量部とし、エタノール121質量部に代えて、127質量部とした以外は、実施例1と同様にA液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【実施例3】
【0041】
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物22質量部に代えて、70質量部とし、エタノール121質量部に代えて、73質量部とした以外は、実施例1と同様にA液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0042】
比較例1
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物22質量部に代えて、10質量部とした以外は、実施例1と同様にA液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0043】
比較例2
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物22質量部に代えて、90質量部とした以外は、実施例1と同様にA液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0044】
比較例3
3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物22質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にA液を作成し、水143質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0045】
比較例4
ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.3質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0046】
比較例5
ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.3質量部に代えて、3.6質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0047】
比較例6
ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム0.3質量部に代えて、4.3質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0048】
比較例7
塩酸0.3質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0049】
比較例8
水143質量部に代えて、0質量部とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【実施例4】
【0050】
塩酸に代えて、硝酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式HNO (濃度69%水和物)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【実施例5】
【0051】
塩酸に代えて、酢酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式CHCOOH (濃度99.5%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0052】
比較例9
塩酸に代えて、蓚酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式(COOH) (濃度98%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0053】
比較例10
塩酸に代えて、クエン酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式(HOOCCHC(OH)(COOH)CHCOOH・HO)(濃度99.5%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0054】
比較例11
塩酸に代えて、フタル酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式C(COOH)(濃度98%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0055】
比較例12
塩酸に代えて、フマル酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式HOOCHCHCOOH(濃度98%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0056】
比較例13
塩酸に代えて、ホウ酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式HBO(濃度99.5%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0057】
比較例14
塩酸に代えて、コハク酸(和光純薬工業(株)試薬、化学式(CHCOOH)(濃度99.5%)とした以外は、実施例1と同様にB液を作成し、光触媒塗膜形成組成物及び塗膜を得、同様の評価を行なった。
【0058】
上記の評価結果を表1に示す。3−アミノプロピルトリメトキシシラン加水分解縮合物/酸化チタン比(質量比)が小さ過ぎると、塗膜硬度や耐剥離性が悪くなる。一方、大き過ぎると活性が低くなる。また、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム/酸化チタン比(質量比)は少ないと分散性が悪く、大きいと活性が低くなる。また、酸として塩酸、硝酸又は酢酸を用いると、同様に光触媒活性が高くなる。また、塩酸等を用いない場合は、塗膜硬度や耐剥離性等が劣る。
【0059】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン、アミノシラン化合物、ジアルキルスルホコハク酸塩、
塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる1種又は2種以上の酸、
水及び親水性有機溶媒を含むことを特徴とする光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項2】
酸化チタンの含有量が組成物中、1〜10質量%、アミノシラン化合物の含有量が酸化チタンの含有量の5.0〜40質量%、ジアルキルスルホコハク酸塩の含有量が酸化チタンの含有量の0.1〜2質量%、塩酸、硝酸及び酢酸から選ばれる1種又は2種以上の酸が組成物中、0.005〜0.045質量%、水が前記酸に対し200〜1800倍、親水性有機溶媒が残部であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項3】
前記組成物のpHが4以上、8以下であることを特徴とする請求項1又は2に光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項4】
アミノシラン化合物を含むA液と、酸化チタン、ジアルキルスルホコハク酸塩、酸、親水性有機溶媒及び水から構成されるB液を混合して得られることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項5】
前記B液のpHが2〜7であることを特徴とする請求項4に記載の光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項6】
ジアルキルスルホコハク酸塩が、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光触媒塗膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光触媒塗膜形成用組成物から形成されることを特徴とする光触媒塗膜。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の光触媒塗膜形成用組成物を基材上に塗布した後、乾燥して得られることを特徴とする光触媒塗膜の形成方法。
【請求項9】
乾燥温度が120℃以下であることを特徴とする請求項8に記載の光触媒塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2009−209250(P2009−209250A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53103(P2008−53103)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(390007227)東邦チタニウム株式会社 (191)
【Fターム(参考)】