説明

光触媒用光源ユニット及びそれを用いた空質浄化装置

【課題】設置スペースが小さく、かつ耐衝撃性に優れた光触媒用光源ユニット及びそれを用いた空質浄化装置を提供する。
【解決手段】保護管、前記保護管の内部に収容された冷陰極管、前記保護管の一方の端部及び前記冷陰極管の一方の端部を支持する第1の支持体、前記保護管の他方の端部及び前記冷陰極管の他方の端部を支持する第2の支持体、並びに前記保護管を両方の端部の間の位置において支持する第3の支持体を備え、冷陰極管は光触媒に照射する光を発する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒用光源ユニットと、それを用いた空質浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒の有機物分解作用は約30年前に見出された。酸化チタンなどある種の半導体に光を照射すると、電子及び正孔が生成され、生成した電子及び正孔が半導体表面でスーパーオキサイドアニオンやヒドロキシラジカルを生成する。生成したスーパーオキサイドアニオンやヒドロキシラジカルが有機分子を攻撃することにより、有機物が分解される。この種の作用を持つ半導体材料が光触媒と呼ばれている。代表的な光触媒としてば酸化チタンが挙げられる。
【0003】
今までにこの光触媒による有機分解作用を利用した製品やデバイスが数多く提案されている。中でも空気中の臭気(有機ガス)成分を光触媒作用で分解するデバイスやフィルターの開発が盛んに行われている。例えば、光触媒を吸着剤と組み合わせることにより脱臭速度を向上させること(例えば、特許文献1参照)、光触媒とハイシリカゼオライトとを組み合わせることによりエチレンなどの特定のガスに対する分解速度を向上させること(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0004】
また、光触媒を励起させるための紫外光光源に冷陰極管を利用することで、光源の省スペース化、長寿命化と、より強力な脱臭効果を狙うものも提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平1−189322号公報
【特許文献2】特開平7−16473号公報
【特許文献3】特開2000−135416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、紫外光光源として冷陰極管を用いる場合、省スペース化のために、例えば直径4mm程度の細い冷陰極管を用いると、冷陰極管の強度が低下し、簡単な衝撃で破壊されてしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来の問題点に鑑み、設置スペースが小さく、かつ耐衝撃性に優れた光触媒用光源ユニット及びそれを用いた空質浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来の課題を解決するため、本発明の光触媒用光源ユニットは、光触媒に照射する光を発するための光触媒用光源ユニットであって、保護管、前記保護管の内部に収容された冷陰極管、前記保護管の一方の端部及び前記冷陰極管の一方の端部を支持する第1の支持体、前記保護管の他方の端部及び前記冷陰極管の他方の端部を支持する第2の支持体、並びに前記保護管を両方の端部の間の位置において支持する第3の支持体を備える。
【0008】
また、本発明の空質浄化装置は、筐体、基材と、前記基材に担持された光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体内に配置された光触媒性部材、前記筐体内に配置され、前記光触媒性部材に光を照射する、上記の光触媒用光源ユニット、及び前記筐体内に気流を発生させるための送風機を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、設置スペースが小さく、かつ耐衝撃性に優れた光触媒用光源ユニット及びそれを用いた空質浄化装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において「脱臭」とは、気相中の臭気成分や有機物等を吸着及び/または分解することをいう。好適には気相中の臭気成分や有機物の濃度を低減させることをいい、より好適には、吸着剤の吸着作用によって気相中の臭気成分や有機物等を吸着し、光触媒に紫外光を照射して臭気成分等を分解して、臭気成分や有機物の濃度を低減させることをいう。臭気成分としては、例えば、アセトアルデヒド、酢酸、アンモニア、硫黄化合物ガス(硫化水素、メチルメルカプタン等)等が挙げられ、中でも本発明の光触媒用光源ユニットはアセトアルデヒドの脱臭に適している。
【0011】
本発明の光触媒用光源ユニットは、冷陰極管を内部に収容する保護管が、両方の端部において支持されていることに加えて、端部以外の部分においても支持されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の光触媒用光源ユニットは、光触媒に照射する光を発するための光触媒用光源ユニットであって、保護管、前記保護管の内部に収容された冷陰極管、前記保護管の一方の端部及び前記冷陰極管の一方の端部を支持する第1の支持体、前記保護管の他方の端部及び前記冷陰極管の他方の端部を支持する第2の支持体、並びに前記保護管を両方の端部の間の位置において支持する第3の支持体を備える。このようにすると、保護管が両方の端部のみで支持されている場合に比べて支持されている箇所が増えるため、耐衝撃性を向上させることができる。
【0013】
本発明の光触媒用光源ユニットにおいて、冷陰極管の発する光の強度が最大となる波長が380nm以下であることが好ましい。このようにすると、紫外領域の光を光触媒に照射することができ、光触媒において電子及び正孔を良好に生成することができるので、光触媒の脱臭速度を向上させることができる。
【0014】
保護管は、冷陰極管が発する光を透過する材料により構成されていることが好ましい。冷陰極管が紫外光を発する場合は、保護管が紫外光を透過する材料により構成されていることが好ましい。紫外光を透過する材料としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等の紫外光透過ガラスや、フッ素樹脂などが挙げられる。この中で、保護管の材質が紫外光透過ガラスであることが特に好ましい。
【0015】
本発明の光触媒用光源ユニットは、前記冷陰極管の外面と前記保護管の内面とに接するように設けられ、前記保護管の内部において前記冷陰極管を支持する第4の支持体をさらに備えることが好ましい。このようにすると、冷陰極管の外面と保護管の内面とが接触するのを防ぐことができるので、耐衝撃性をさらに向上させることができる。
【0016】
第4の支持体としては、Oリング、シリコンリング、金属リング等が挙げられる。ここで、第4の支持体がOリングであることが好ましい。
【0017】
第3の支持体及び第4の支持体の材質としては、シリコーンゴム、ブチルゴムなどのゴム類や、テフロン(登録商標)、バイトンなどのフッ素樹脂などが挙げられる。冷陰極管が紫外光を発する場合は、紫外光を透過する特性を有するという観点から、支持体の材料がフッ素樹脂であることが好ましい。このようにすると、第3の支持体及び第4の支持体が、冷陰極管からの光を遮蔽することを防ぐことができる。
【0018】
本発明の空質浄化装置は、筐体、基材と、前記基材に担持された光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体内に配置された光触媒性部材、前記筐体内に配置され、前記光触媒性部材に光を照射する、上記の光触媒用光源ユニット、及び前記筐体内に気流を発生させるための送風機を備える。
【0019】
本発明の空質浄化装置において、光触媒としては、公知の光触媒を用いることができる。光触媒としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。
【0020】
本発明の空質浄化装置において、酸化チタンとしては、例えば、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンが挙げられる。この中で、高い光触媒活性を有することから、アナタース型酸化チタンが好ましい。本発明において「アナタース型酸化チタン」とは、粉末X線回折スペクトル測定において(使用電極:銅電極)、回折角度2θ=25.5度付近に回折ピークが現れる酸化チタンのことをいう。
【0021】
本発明の空質浄化装置において、光触媒が、構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンであることが好ましい。このようにすると、光触媒の脱臭速度係数が大きくなるので、脱臭速度をさらに向上させることができる。
【0022】
ここで、光触媒である構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンにおいて、フッ素の重量比が2.5%以上3.5%以下であることが好ましい。
【0023】
フッ素含有量が2.5重量%以上であれば、例えば、電気陰性度の大きなフッ素が酸化チタン表面に位置するようになる。このフッ素の電子吸引作用によって、近接する水酸基が活性化され水酸ラジカルが生じ易くなる。その結果、光触媒反応が促進され、脱臭速度を向上できると考えられるからである。また、フッ素含有量が3.5重量%以下であれば、例えば、酸化チタン表面における光触媒反応に必要な水酸基の数を確保でき、脱臭速度を維持できると考えられるからである。
【0024】
フッ素の含有量は、例えば、吸光光度分析法(JIS K 0102)を用いて求めることができる。
【0025】
光触媒が含有するフッ素は、光触媒活性及び脱臭速度の向上の観点から、光触媒における全てのフッ素のうち90重量%以上が酸化チタンと化学結合していることが好ましい。より好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは100重量%、すなわち酸化チタン光触媒に含まれるフッ素の全量が酸化チタンと化学結合していることである。
【0026】
本発明において「酸化チタンとフッ素との化学結合」とは、酸化チタンとフッ素とが化学的に結合していることをいう。好適には担持や混合ではなく酸化チタンとフッ素とが原子レベルで結びついている状態のことをいい、より好適には酸化チタンとフッ素とがイオン結合していることをいう。本発明において「化学結合しているフッ素」とは、例えば、酸化チタン光触媒に含有されているフッ素のうち水に溶出しないフッ素のこという。酸化チタンと化学結合しているフッ素の量は、例えば、以下の手順により求めることができる。まず、酸化チタン光触媒を水中に分散させ、pH調整剤(例えば、塩酸、アンモニア水)でpH=3以下またはpH=10以上に保持する。次に、水中へのフッ素イオンの溶出量を比色滴定等により測定する。酸化チタン光触媒に含有するフッ素の総量から上記溶出量を差し引くことにより、酸化チタンと化学結合しているフッ素の量を算出することができる。本発明において「酸化チタンとフッ素とがイオン結合している」とは、酸化チタン光触媒を光電子分光分析装置で分析した際に、フッ素の1s軌道(F1s)のピークトップが683eV〜686eVの範囲となる場合をいう。これは、フッ素とチタンとがイオン結合したフッ化チタンのピークトップの値が上記範囲内であることに由来する。
【0027】
光触媒は、ナトリウムを含んでもよいが、光触媒活性及び脱臭速度の向上の点から、ナトリウムを含まないことが好ましい。ナトリウムを含む場合、光触媒全体に占めるナトリウムの含有量(A重量%)と、光触媒全体に占めるフッ素の含有量(B重量%)との比(A/B)は、光触媒活性及び脱臭速度の向上の点から、0.01以下であることが好ましく、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.001以下である。
【0028】
光触媒の比表面積は、光触媒と臭気成分との接触面の増加、また光触媒反応効率の向上の点から、200〜350m/gが好ましく、より好ましくは250〜350m/gである。ここで、本発明において比表面積とは、BET法(窒素の吸着・脱離方式)により測定した、光触媒の粉末1g当たりの表面積値のことをいう。比表面積が200m/g以上の場合、分解する対象物との接触面積を大きくすることができる。
【0029】
吸着剤としては、例えば、アルミノケイ酸塩及びシリカゲル等が挙げられる。中でも、アルミノケイ酸塩が好ましく、アルミノケイ酸塩としては、例えば、ゼオライトが挙げられる。ゼオライトの中でも、紫外光の透過性及び脱臭性能の点から、ハイシリカゼオライトが好ましく、臭気成分の吸着力の点から、ZSM−5型ゼオライトがより好ましい。ゼオライトにおけるシリカとアルミナのモル成分比(シリカ/アルミナ)は、例えば、10以上であり、好ましくは1500以上である。
【0030】
ゼオライトは、市販品を使用してもよい。市販品としては、例えば、HSZ−890HOA(東ソー株式会社製、ZSM−5型、シリカ/アルミナ比:1500〜2000(平均:1890)、平均粒径8〜14μm、カチオンタイプ:H、比表面積(BET):280〜330m/g)、HiSiv(TM)−3000(ユニオン昭和株式会社製、平均粒径:12.7μm、カチオンタイプ:Na、細孔径:6オングストローム以下、比表面積(BET):400m/g以上)等が挙げられる。
【0031】
光触媒性部材における光触媒と吸着剤との重量比(酸化チタン光触媒の重量:吸着剤の重量)は、例えば、9:1〜1:9であり、脱臭性能の点から8:2〜5:5が好ましく、より好ましくは7:3である。
【0032】
光触媒性部材は、酸化チタン及び/または吸着剤と基材との接着性向上の点から、その他の成分として、バインダーを含んでもよい。バインダーとしては、例えば、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、モンモリロナイト及びカオリン等が挙げられる。光触媒性部材におけるバインダーの割合は、バインダーの種類及び結着力等に応じて適宜決定できるが、脱臭性能向上の点から、少ないことが好ましい。バインダーがコロイダルシリカである場合、光触媒性材料における光触媒及び吸着剤の合計とバインダーとの重量比(光触媒及び吸着剤の合計重量:バインダーの重量)は、例えば、10:0〜5:5であり、好ましくは9:1〜7:3である。
【0033】
本発明の空質浄化装置において、光触媒性部材が、バインダーとしてコロイダルシリカをさらに有することが好ましい。コロイダルシリカは紫外光を透過するので、バインダーとしてコロイダルシリカを用いることにより、光触媒と吸着剤とを基材に確実に担持させ、かつ酸化チタンの励起に必要な紫外光を良好に透過させることができる。
【0034】
本発明の空質浄化装置において、基材としては、繊維布帛、パンチングメタル、ラス材等を用いることができる。繊維布帛としては、編物、織物及び不織布が挙げられる。中でも、圧損の点から、編物及び織物が好ましく、より好ましくは織物である。布帛に使用される繊維としては、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維などの合成繊維;ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、活性炭素繊維などの無機繊維;木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプなどの天然繊維;再生繊維等が挙げられる。この中でも、光透過性の点からガラス繊維が好ましい。基材として、ガラス繊維織布を使用することが好ましい。
【0035】
基材は、シート状(平板状)で使用してもよい。また、例えばプリーツ加工や、コルゲート加工によりハニカムに成形して使用してもよい。
【0036】
光触媒性部材は、例えば、上述した光触媒及び吸着剤を基材に塗布等することにより製造することができる。光触媒及び吸着剤を溶媒等に分散させた後、基材に塗布してもよい。溶媒としては、例えば、水、エチルアルコール等が使用できる。また、光触媒及び吸着剤とバインダーとを混合し、その混合物を基材に塗布してもよい。予めバインダーを基材に塗布し、その後光触媒及び吸着剤を塗布してもよい。塗布法としては、例えば、スラリー塗布、スピンコート、吹き付け塗布、キャスティング塗工等が挙げられる。
【0037】
上記フッ素を含有する酸化チタン光触媒は、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンの水分散液とフッ素化合物とを混合し、混合液中で酸化チタンとフッ素化合物とを反応させることにより製造できる。ここで、混合液のpHが3を超える場合は、酸を用いてpHを3以下に調整すればよい。n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25等が使用できる。その水分散液としては、例えば、堺化学工業株式会社製CSB−M等が使用できる。フッ素化合物としては、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸等が挙げられる。
【0038】
本発明の空質浄化装置において、基材の開孔率が0%以上25%以下であることが好ましい。基材の開孔率が0%以上10%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
基材の開孔率は、例えば、基材の面積と開口部の面積とを用いて下記式(数1)より算出することができる。
【0040】
【数1】

【0041】
送風機としては、例えば、シロッコファン等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
(実施例1)
まず、本実施例において作製した光触媒用光源ユニットの構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施例において作製した光触媒用光源ユニット100の構成を示す斜視図であり、図2は、保護管が中間支持部により固定された状態を示す要部拡大図である。
【0044】
図1に示すように、光触媒用光源ユニット100は、冷陰極管201を収容する保護管202と、光触媒性部材150と、筐体とから構成されている。筐体は、保護管202の端部を固定するための2つの両端支持部101、保護管の中間部分を固定するための中間支持部102、及び2つの両端支持部101と中間支持部102とを両側から挟んで固定する2つの側面板105を備えている。両端支持部101及び中間支持部102は、保護管径よりわずかに大きい貫通穴103を5つずつ備えている。筐体はアクリル製である。ここで、2つの両端支持部101は本発明における第1の支持体及び第2の支持体に相当し、中間支持部102は本発明における第3の支持体に相当する。
【0045】
図1及び図2に示すように、冷陰極管201を収容した保護管202は、中間支持部102の貫通穴103に挿入され、貫通穴103の両側において保護管202に2つのOリング204を取り付けることにより固定されている。なお、本実施例において使用した冷陰極管201は、管径4mm、管の長さ300mmであり、保護管202は、管径6mm、管の長さ300mmである。なお、図2においては、中間支持部102による保護管202の固定方法のみについて示したが、2つの両端支持部101における保護管202の固定方法も同様であるため説明を省略する。
【0046】
図1に示すように、2つの側面板105にはそれぞれ2つの溝104が設けられている。シート状の光触媒性部材150(厚み約2mm)は、その両端部を溝104に挿入することにより固定されている。
【0047】
次に、本実施例において用いた光触媒性部材150の作製手順について説明する。
【0048】
酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタンに純水を加え、これを撹拌して、酸化チタン分散液を調製した。この酸化チタン分散液に、酸化チタンに対してフッ素(元素)に換算して5.0重量%に相当するフッ化水素酸(和光純薬社製、特級)を添加し、pH3に保持しながら25℃で60分間反応させた。得られた反応物を水洗した。水洗は、反応物を濾過して回収される濾液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで行った。そして、これを空気中において130℃で5時間乾燥させて酸化チタン光触媒を調製した。
【0049】
吸光光度分析法(JIS K 0102)により酸化チタン光触媒中のフッ素含有量を求めたところ、3.3重量%であった。
【0050】
酸化チタン光触媒を光電子分光分析装置で分析したところ、F1sのピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示した。つまり、得られた酸化チタン光触媒において、酸化チタンとフッ素とがイオン結合していることが確認できた。
【0051】
酸化チタン光触媒を粉末X線回折装置(使用電極:銅電極)で分析したところ、回折角度2θ=25.5度において回折ピークが現れた。つまり、得られた酸化チタン光触媒はアナタース型酸化チタンであった。
【0052】
得られた酸化チタン光触媒490gと、ゼオライト(商品名:HSZ−890HOA、東ソー製、シリカ/アルミナ比(モル比):1950)210gとを乳鉢により1分間乾式混合した。酸化チタン光触媒とゼオライトとの混合物700gをコロイダルシリカ(商品名:スノーテックスO、日産化学製)に分散させてペースト状にし、基材(ガラスクロス、商品名:V375H、ユニチカ製、200cm(100mm×200mm))に添着することにより光触媒性部材150を作製した。基材の開孔率は10%である。
【0053】
(比較例)
中間支持部102を備えていない点以外は、図1に示す実施例1の光触媒用光源ユニット100と同様にして、比較例の光触媒用光源ユニットを作製した。
【0054】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2において作製した光触媒用光源ユニットの構成について図3を用いて説明する。図3は、本実施例において用いた保護管302及び冷陰極管301の構造を示す斜視図である。
【0055】
図3に示すように、本実施例においては、冷陰極管301の外面と保護管302の内面とに接するように、冷陰極管301の周囲において3箇所にOリング306を設けた。保護管302の両端部には、エンドキャップ308を設けることにより、冷陰極管301の両端部を保護すると同時に、冷陰極管301と保護管302とを固定した。それ以外の構成については実施例1の光触媒用光源ユニット100と同様であるので説明を省略する。ここで、Oリング306は本発明における第4の支持体に相当する。
【0056】
(落下試験)
実施例1、実施例2、及び比較例の光触媒用光源ユニットについて落下試験を行い、光触媒用光源ユニットの耐衝撃性を評価した。
【0057】
落下試験は、光触媒用光源ユニットの図1に矢印で示す側が下になるようにして、所定の高さから光触媒用光源ユニットを鉄板の上に落下させ、冷陰極管の損傷の有無を目視で確認することで行った。判定は、5本の冷陰極管全てについて損傷がなかった場合を○、いずれかの冷陰極管に損傷があった場合を×とした。落下位置は、まず10cmとし、5本の冷陰極管全てについて損傷がなかった場合は10cm刻みで落下位置を高くした。落下試験は、いずれかの冷陰極管に損傷が生じるまで行った。
【0058】
落下試験の結果を(表1)に示す。下記(表1)からわかるように、実施例1の光触媒用光源ユニットは、落下距離40cmまで5本の冷陰極管全てについて損傷がみられなかった。それに対して、比較例の光触媒用光源ユニットは、落下距離30cmにおいて冷陰極管に損傷がみられた。このことから、実施例1の光触媒用光源ユニットは、中間支持部102を備えていない比較例の光触媒用光源ユニットと比較して、高さにして2倍、距離にして20cmの落下強度を有していることがわかった。
【0059】
また、実施例2の光触媒用光源ユニットは、落下距離110cmまで5本の冷陰極管全てについて損傷がみられなかった。このことから、冷陰極管の外面と保護管の内面とに接するようにOリングが設けられている実施例2の光触媒用光源ユニットは、実施例1の光触媒用光源ユニットと比較して、高さにして約3倍、距離にして70cmの落下強度を有しており、実施例1よりもさらに耐衝撃性に優れることがわかった。
【0060】
【表1】

【0061】
(脱臭性能の評価)
実施例1における光触媒用光源ユニットに対して、図1に示す矢印の方向に気流が発生するように送風ファンを備え付けることにより、空質浄化装置を作製した。
【0062】
作製した空質浄化装置を、アクリル製の環境試験室(内容積:23.2m)に配置した。次いで、環境試験室内においてアセトアルデヒドの水希釈液を蒸気拡散させ、室内のアセトアルデヒド濃度を1ppmとした。その後、冷陰極管を点灯し、送風ファンを動作させることにより、脱臭を開始した。送風ファンの動作は、風速が約1m/sとなるように調節した。
【0063】
脱臭開始から10分後、30分後、60分後及び90分後に環境試験室内の臭気を採取した。採取した臭気(3L)をDNPH(ジニトロフェニル)で濃縮し、液体クロマトグラフィーを用いてアセトアルデヒド濃度を測定した。得られた結果を図4に示す。
【0064】
図4より、本実施例において用いた空質浄化装置によって、脱臭開始後60分で90%以上のアセトアルデヒドを脱臭できることがわかった。
【0065】
(変形例)
次に、その他の光触媒用光源ユニットの構成について図5を用いて説明する。図5は、本変形例において作製した光触媒用光源ユニット500の構成を示す図である。
【0066】
図5に示すように、本変形例の光触媒用光源ユニット500は、2つの両端支持部501、中間支持部502、及び2つの側面板505を備えた筐体に、U字型の保護管602及び冷陰極管601がOリング504により固定されている。U字型の冷陰極管601の両端部には、冷陰極管601内において放電を起こすために電界が与えられる電極部510が設けられている。
【0067】
冷陰極管内に封入されている水銀が重力によって下方にたまることにより、冷陰極管内における水銀蒸気の濃度にむらが生じる。このとき、冷陰極管の両端部に設けられた電極部の鉛直方向の位置に差がある場合は、下方の電極部の温度が上昇することにより、発光のむらや、電極損傷による寿命の低下などが起こる恐れがある。
【0068】
本変形例の光触媒用光源ユニットにおいて用いたU字型の冷陰極管601の2つの電極部510は、図5に示すように、鉛直方向において略同じ高さに設けられている。この構成により、均一な発光と高寿命を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、例えば脱臭、消臭、空気浄化等の目的で使用される浄化デバイスに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の一実施例において作製した光触媒用光源ユニットの構成を示す斜視図
【図2】同光触媒用光源ユニットにおける保護管が中間支持部により固定された状態を示す要部拡大図
【図3】本発明の他の実施例において用いた保護管及び冷陰極管の構造を示す斜視図
【図4】本発明の一実施例における光触媒用光源ユニットについて測定されたアセトアルデヒドの脱臭特性を示すグラフ
【図5】本発明の一変形例において作製した光触媒用光源ユニットの構成を示す図
【符号の説明】
【0071】
100,500 光触媒用光源ユニット
101,501 両端支持部
102,502 中間支持部
103 貫通穴
104 溝
105,505 側面板
150 光触媒性部材
201,301,601 冷陰極管
202,302,602 保護管
204,306,504 Oリング
308 エンドキャップ
510 電極部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒に照射する光を発するための光触媒用光源ユニットであって、
保護管、
前記保護管の内部に収容された冷陰極管、
前記保護管の一方の端部及び前記冷陰極管の一方の端部を支持する第1の支持体、
前記保護管の他方の端部及び前記冷陰極管の他方の端部を支持する第2の支持体、並びに
前記保護管を両方の端部の間の位置において支持する第3の支持体を備える光触媒用光源ユニット。
【請求項2】
前記冷陰極管の外面と前記保護管の内面とに接するように設けられ、前記保護管の内部において前記冷陰極管を支持する第4の支持体をさらに備える、請求項1に記載の光触媒用光源ユニット。
【請求項3】
前記第4の支持体がOリングである、請求項2に記載の光触媒用光源ユニット。
【請求項4】
前記冷陰極管の発する光の強度が最大となる波長が380nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光触媒用光源ユニット。
【請求項5】
前記支持体がフッ素樹脂により構成される、請求項4に記載の光触媒用光源ユニット。
【請求項6】
前記保護管が紫外光を透過する材料により構成されている、請求項4に記載の光触媒用光源ユニット。
【請求項7】
筐体、
基材と、前記基材に担持された光触媒と、前記基材に担持された吸着剤とを有し、前記筐体内に配置された光触媒性部材、
前記筐体内に配置され、前記光触媒性部材に光を照射する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光触媒用光源ユニット、及び
前記筐体内に気流を発生させるための送風機を備える空質浄化装置。
【請求項8】
前記光触媒が、構成元素としてフッ素を含有する酸化チタンである、請求項7に記載の空質浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−131512(P2010−131512A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−309382(P2008−309382)
【出願日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】