説明

光触媒脱臭機

【課題】浄化対象中のガス成分の組成と量が変動する場合においても、触媒シートと吸着剤シートの処理優先度を変化させることで最適な脱臭性能を示すことができる光触媒脱臭機を提供することを目的とする。
【解決手段】光触媒脱臭機1は光触媒シート2と吸着剤シート3が間隔をあけて積層された脱臭フィルタ4と励起光源5と送風手段6と風向変更手段7を備えている。光触媒シート2は酸化チタンなどの光触媒を含んで平板状に形成されており、吸着剤シート3は活性炭やゼオライトなどの吸着剤を含んで平板状に形成されており、有害ガスや悪臭成分を分解除去する。浄化対象の空気中に光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、優先的に光触媒シートに気流が接触するように風向変更手段7を配置することで光触媒シートにより優先的に分解除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害ガスの除去や悪臭成分の浄化に使用される光触媒脱臭機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の脱臭装置には、光触媒と吸着剤とを混合してなる脱臭剤を用いて、有害ガスや悪臭成分を浄化するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、その脱臭装置について図16を参照しながら説明する。
【0004】
図16に示すように、脱臭装置101は板状脱臭体102と紫外線ランプ103を備えている。板状脱臭体102は酸化チタン等の光触媒とゼオライト等の吸着剤とを混合して板状に成形されており、紫外線ランプ103は長手方向を板状脱臭体の配列方向に沿わせて配置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−286436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような従来の脱臭装置においては、送風機の働きにより脱臭装置内に浄化対象の空気を吸入し、複数の板状脱臭体の表面に空気を接触させる構造を有している。浄化対象中に含まれるガス成分は複数のガス成分が混合した組成であることが多く、光触媒で速やかに分解できるガス成分もあれば、吸着剤で一旦吸着した後に光触媒で緩やかに分解すべきガス成分もある。そのため従来の脱臭装置においては、光触媒と吸着剤を混合した脱臭剤を用いている。しかし、浄化対象中のガス成分は組成と量の変動に関わらず、脱臭剤中の光触媒と吸着剤の混合比は一定なので、最適な脱臭性能を示すことができないという課題を有していた。
【0007】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、光触媒を主要成分とする光触媒シートと吸着剤を主要成分とする吸着剤シートを個別に備えることで、浄化対象中のガス成分の組成と量が変動する場合においても最適な脱臭性能を示すことができる光触媒脱臭機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そして、この目的を達成するために、本発明は、浄化対象中のガス成分の組成と量の変動に対応して、個別に備えられた光触媒シートと吸着剤シートの機能状態を変化させるものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、浄化対象中のガス成分に関して、光触媒で速やかに分解できるガス成分が多い場合には光触媒シートを優先的に機能させ、一旦吸着した後で緩やかに分解すべきガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させることで、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図2】本発明の実施の形態1の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図3】本発明の実施の形態2の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図4】本発明の実施の形態2の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図5】本発明の実施の形態3の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図6】本発明の実施の形態3の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図7】本発明の実施の形態4の光触媒脱臭機を示す概略斜視図
【図8】本発明の実施の形態5の光触媒脱臭機を示す概略斜視図
【図9】本発明の実施の形態6の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図10】本発明の実施の形態7の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図11】本発明の実施の形態8の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図12】本発明の実施の形態9の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図13】本発明の実施の形態10の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図14】本発明の実施の形態11の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図15】本発明の実施の形態12の光触媒脱臭機を示す概略断面図
【図16】従来の脱臭装置の概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の請求項1記載の光触媒脱臭機は、脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを間隔をあけて複数枚積層された構造で、脱臭フィルタの上流側に風向変更手段を備えた構成を有する。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量に対応して、風向変更手段で風向を変更することで、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0012】
また、脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを密着させた脱臭シートを間隔をあけて複数枚積層し、脱臭シートの露出面が反転する構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量に対応して、脱臭シートの露出面が反転することで、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0013】
また、脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを密着させた脱臭シートを棒状の励起光源の長手方向に対して傾斜角を有するように複数枚積層する構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量に対応して、励起光の受光面および処理空気の上流側に配置するシートを変化させるので、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを励起光の照射面に配置させて優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0014】
また、光触媒シートと吸着剤シートを環状に連結させてなる脱臭シートを棒状の励起光源の長手方向に対して傾斜角を有するように複数枚積層する構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量に対応して、励起光の照射面および処理空気の上流側に配置するシートを変化させるので、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを励起光の照射面に配置させて優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0015】
また、開口部を有する光触媒シートと凸部を有する吸着剤シートを密着させた脱臭シートを有する構成にしてもよい。これにより、光触媒シートと吸着剤シートを密着させた脱臭シートにおいて光触媒シートと吸着剤シートの接触面積が増加するので、励起光が照射された光触媒シートで発生した活性酸素種の吸着剤シートへの作用量が増える。したがって、吸着剤シートに吸着されたガス成分を効率的に分解することができるという効果を奏する。
【0016】
また、浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて風向変更手段を制御する構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量を検知したガスセンサの出力に対応して、風向変更手段で風向を変更させることで、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0017】
また、浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて脱臭シートの露出面を反転させる構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量を検知したガスセンサの出力に対応して、浄化対象中のガス成分の組成と量に対応して、脱臭シートの露出面を反転させることで、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0018】
また、浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて脱臭シートの励起光受光面を反転させる構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量を検知したガスセンサの出力に対応して、励起光の受光面および処理空気の上流側に配置するシートを変化させるので、分解が容易なガス成分が多い場合は光触媒シートを励起光の照射面に配置させて優先的に機能させ、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0019】
また、光触媒脱臭機本体の吸入側と吹出し側の両方にガスセンサを備える構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量とを検知したガスセンサの出力と、浄化処理後の空気中に含まれる未処理ガス成分の組成と量を検知したガスセンサの出力の双方を比較して、浄化処理後の空気中に分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0020】
また、光触媒脱臭機本体の吸入側と吹出し側を連通するバイパスダクト内にガスセンサを備える構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量と、浄化処理後の空気中に含まれる未処理ガス成分の組成と量を、バイパスダクト内の空気流通方向を切り替えることで単一のガスセンサにより検知することができる。浄化処理後の空気中に分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0021】
また、光触媒脱臭機本体の吸入側と吹出し側を連通するバイパスダクト内に異なる特性の複数のガスセンサを備える構成にしてもよい。これにより、浄化対象中のガス成分の組成と量と、浄化処理後の空気中に含まれる未処理ガス成分の組成と量を、バイパスダクト内の空気流通方向を切り替えることで異なる特性の複数のガスセンサにより高精度に検知することができる。浄化処理後の空気中に分解に時間がかかるガス成分が多い場合には吸着剤シートを処理空気の上流側に配置させて優先的に機能させるので、最適な脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0022】
また、脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを間隔をあけて複数枚積層された構造で、励起光源の出力を可変する構成にしてもよい。これにより、分解が容易なガス成分が多い場合は励起光源の出力を低減させて、分解に時間がかかるガス成分が多い場合には励起光源の吸着剤シートを優先的に機能させるので、少ない消費電力で高い脱臭性能を示すことができるという効果を奏する。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
(実施の形態1)
図1に示すように、光触媒脱臭機1は光触媒シート2と吸着剤シート3が間隔をあけて積層された脱臭フィルタ4と励起光源5と送風手段6と風向変更手段7を備えている。矢印で示すように送風手段6により吸引された空気は脱臭フィルタ4を通過することで有害ガスや悪臭成分を除去または浄化されるものである。
【0025】
光触媒シート2は酸化チタンなどの光触媒を含んで平板状に形成されており、励起光源5から照射される紫外線の働きにより、光触媒シート2上でOHラジカルなどの活性種が生成され、有害ガスや悪臭成分を分解することができる。
【0026】
吸着剤シート3は活性炭やゼオライトなどの吸着剤を含んで平板状に形成されており、有害ガスや悪臭成分を吸着除去することができる。
【0027】
風向変更手段7は複数の平板状の部材であり、空気流通方向において平板状の部材の下流側の一端を回転軸として回転可能な状態で光触媒脱臭機1本体に固定されている。風向変更手段7の平板を回転することで脱臭フィルタ4を通過する風向を変更させることができる。図1では複数の風向変更手段7が連携して風向を制御しており、優先的に光触媒シートに気流が接触する配置を示している。
【0028】
同様に、図2では複数の風向変更手段7が連携して風向を制御しており、優先的に吸着剤シートに気流が接触する配置を示している。
【0029】
光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、図1に示すように風向変更手段7を配置して、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと予測される場合、図2に示すように風向変更手段7を配置して、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。なお風向変更手段7の配置は図1と図2の状態に限ったものではなく、光触媒シートと吸着剤シートの両方に同等の気流を接触させる配置にしてもよい。
【0030】
具体的なガス成分としては、手指の殺菌に用いるエタノール製剤を多く使用する環境においては、光触媒シートでエタノールを分解除去すると、アセトアルデヒドが生成する可能性がある。したがって、このような環境では吸着剤シートを優先的に機能させるよう図2のように風向変更手段7を配置して、吸着剤シートによる吸着除去を優先すればよい。
【0031】
一方、喫煙機会が多い部屋等でアセトアルデヒドが発生する場合は、図1に示すように風向変更手段を配置して光触媒シートで速やかにアセトアルデヒドを分解除去すればよい。なお、風向変更手段7の構造については上記内容に限ったものではなく、光触媒シートと吸着剤シートの選択を変更できるように風向を変更できるような構造であればよい。
【0032】
(実施の形態2)
図3と図4において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図3に示すように、光触媒シート2と吸着剤シート3を密着させて脱臭シート8を構成し、2枚の脱臭シート8の吸着剤シート3側の面が接するように脱臭シート8を積層した構造で脱臭フィルタ4を構成している。したがって、図3では光触媒シート2が表面に露出した状態で脱臭フィルタが構成されているが、脱臭シート8を吸着剤シート3が接している面からそれぞれ上下に分割して平行移動させることで、図4に示すように吸着剤シート3が表面に露出している配置に変更することができる。脱臭シート8を平行移動させるための機構については詳細を記載していないが、それぞれの脱臭シート8を上下方向に平行移動可能な状態でレールに固定する構成を用いれば実現可能である。
【0034】
またこの構造に限ったものではなく、脱臭シート8の処理空気に対する露出面を任意に変更できる構造であれば同様の効果を得ることができる。
【0035】
実施の形態1と同様に、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、図3に示すように光触媒シート2を露出させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと予測される場合、図4に示すように吸着剤シート3を露出させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。
【0036】
(実施の形態3)
図5と図6において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0037】
図5に示すように、光触媒シート2と吸着剤シート3は密着して脱臭シート8を構成し、脱臭シート8が積層された構造で脱臭フィルタ4を構成している。光触媒シート2と吸着剤シート3からなる脱臭シート8は励起光源5の長手方向に対して傾斜角を有するように配置されている。光触媒シート2は励起光の受光面側に配置されており、受光面の反対側に吸着剤シート3が配置されている。
【0038】
励起光の受光面は空気流通経路においては上流側に面しているので、処理空気が光触媒シート2に優先的に接触する。脱臭シート8の中心部分に設けられた回転軸9を中心に角度を変更することで、脱臭シート8と励起光源5の長手方向に対する傾斜角を変更することができる。
【0039】
図6は、図5とは反対の状態を示し、吸着剤シート3が励起光の受光面側に配置されている。すなわち空気流通経路においては吸着剤シート3が上流側に面しているので、処理空気が吸着剤シート3に優先的に接触する。
【0040】
実施の形態1と同様に、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、図5に示すように光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと予測される場合、図6に示すように吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。
【0041】
なお、脱臭シート8の傾斜角は図5および図6に示す角度に限ったものではなく、処理対象のガス成分と脱臭フィルタ4の圧力損失に応じて任意に変更すればよい。
【0042】
(実施の形態4)
図7において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図7に光触媒脱臭機の空気流入側から参照できる部品配置を示す。励起光源5からの励起光は光触媒シート2と吸着剤シート3が環状に連結された脱臭シート8に照射されている。脱臭シート8は励起光源5の長手方向に対して傾斜角を有するように配置されている。環状の脱臭シート8の両端には回転軸10が備えられており、回転軸10を回転させることで光触媒シート2と吸着剤シート3の配置を任意に変更できるようになっている。すなわち励起光の受光面側かつ空気流通経路の上流側に配置するシートを光触媒シート2または吸着剤シート3のいずれかに任意に変更することができる。
【0044】
実施の形態1と同様に、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと予測される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。
【0045】
なお、脱臭シート8の傾斜角は図7に示す角度に限ったものではなく、処理対象のガス成分に応じて任意に変更すればよい。
【0046】
また、光触媒シート2と吸着剤シート3の配置は図7の状態に限ったものではなく、回転軸10を操作することによって任意の状態に設置できるものである。
【0047】
(実施の形態5)
図8に示すように光触媒シート2には開口部11が設けられ、吸着剤シート3には凸部12が設けられており、実施の形態2または3のように光触媒シート2と吸着剤シート3は密着して使用される。この構造において、光触媒シート2の開口部11と吸着剤シート3の凸部12が対応して接合されるので、密着度合いが向上する。
【0048】
光触媒シート2では励起光源からの励起光を受光して活性酸素種が発生するので、開口部11近傍で吸着剤シートに吸着されたガス成分の分解に寄与することができる。開口部と凸部の配置は図8に示した構造に限ったものではなく、活性酸素種を効率良く活用できるような密着状態を実現できる構造であればよく、開口部と凸部の数を増やすことで、さらに効率良く活性酸素種がガス成分の分解に寄与することができる。
【0049】
また、光触媒シート2に凸部を設け、吸着剤シート3に開口部を設けて、光触媒シート2と吸着剤シート3を密着して使用しても同様の効果を得ることができる。
【0050】
なお、各シートにおける開口部または凸部の面積については、特に限定するものではなく、光触媒シート2の励起光受光面積と吸着剤シート3の露出面積の面積比を判断基準として決定すればよい。
【0051】
(実施の形態6)
図9に示すように、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0052】
図9に示すように、光触媒脱臭機1の空気流入側にガスセンサ13が配置されている。ガスセンサ13により流入空気中のガス成分を検知し、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図9に示すように風向変更手段7を配置して、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、風向変更手段7の配置を変更して、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。
【0053】
ガスセンサ13の特性については特に限定するものではなく、流入空気中のガス成分のうち浄化対象であるガス成分を検知できるような特性を有していれば同様の効果を得ることができる。なお、風向変更手段7の駆動方法については特に明記しなかったが、ガスセンサ13の信号出力に対応してモーター等の駆動手段で風向変更手段7を動作させればよい。
【0054】
(実施の形態7)
図10に示すように、図3と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
図10に示すように、光触媒脱臭機1の空気流入側にガスセンサ13が配置されている。ガスセンサ13により流入空気中のガス成分を検知し、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図10に示すように光触媒シート2を露出させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、吸着剤シート3を露出させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。なお、脱臭シートの配置変更方法については特に明記しなかったが、ガスセンサ13の信号出力に対応して、モーターやギヤ機構等の駆動手段を用いて実施の形態2と同様にレール上における脱臭シート8の位置を変更するなどの手段を用いればよい。
【0056】
(実施の形態8)
図11に示すように、図5と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図11に示すように、光触媒脱臭機1の空気流入側にガスセンサ13が配置されている。ガスセンサ13により流入空気中のガス成分を検知し、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図11に示すように、光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シート2で優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。なお、脱臭シートの回転方法については特に明記しなかったが、ガスセンサ13の信号出力に対応してモーターやギヤ機構等の駆動手段で脱臭シートの位置を変更すればよい。
【0058】
(実施の形態9)
図12に示すように、図5と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
図12に示すように、光触媒脱臭機1の吸入側と吹出し側にそれぞれガスセンサ13が配置されている。吸入側のガスセンサ13により流入空気中のガス成分を検知し、光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図12に示すように、光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。さらに、吹出し側のガスセンサ13により排出空気中のガス成分を検知し、光触媒の働きで新たに生成されたガス成分が排出空気中に含まれると判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、光触媒シート2の機能を抑え、吸着剤シート3を優先的に機能させればよい。
【0060】
(実施の形態10)
図13に示すように、図11と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0061】
図13に示すように、光触媒脱臭機1の吸入側と吹出し側を連通させるバイパスダクト14が備えられており、バイパスダクト14の内部にはガスセンサ13と補助送風手段15が備えられている。
【0062】
補助送風手段15の働きにより吸入側から一部の空気を吸引し、ガスセンサ13によりガス成分を検知する。流入空気中に光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図13に示すように、光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。
【0063】
また、補助送風手段15を逆回転させることで吹出し側の空気をバイパスダクト内に吸引し、ガスセンサ13により排出空気中のガス成分を検知することで、光触媒の働きで新たに生成されたガス成分が排出空気中に含まれると判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、光触媒シート2の機能を抑え、吸着剤シート3を優先的に機能させればよい。
【0064】
バイパスダクト14と補助送風手段15を利用することで、単一のガスセンサで吸入側と吹出し側の両方のガス成分を検出することができる。なお、補助送風手段15は常時運転する必要はなく、ガス成分の検出が必要なタイミングで動作させればよい。
【0065】
(実施の形態11)
図14に示すように、図13と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0066】
図14に示すように、バイパスダクト14内には2つのガスセンサ13と補助送風手段15とが備えられている。補助送風手段15の働きにより吸入側から一部の空気を吸引し、ガスセンサ13によりガス成分を検知する。2つのガスセンサは異なる特性を有しているので、ガス成分の組成を正確に検知できる。これにより、優先的に機能させる光触媒シート2、吸着剤シート3の切替を的確に行える。
【0067】
流入空気中に光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと判断される場合、図14に示すように、光触媒シート2を励起光の受光面側に配置させて、光触媒シートで優先的に分解除去すればよく、光触媒での分解に時間がかかるガス成分が多いと判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。また、補助送風手段15を逆回転させることで吹出し側の空気をバイパスダクト内に吸引し、ガスセンサ13により排出空気中のガス成分を検知することで、光触媒の働きで新たに生成されたガス成分が排出空気中に含まれると判断される場合、吸着剤シート3を空気流通経路の上流側に配置させて、光触媒シート2の機能を抑え、吸着剤シート3を優先的に機能させればよい。なお、バイパスダクト14内には2つのガスセンサが備えられているとしたが、2個に限ったものではなく、3個以上の異なる特性のガスセンサを利用することで、さらに高精度にガス成分を検知することができる。
【0068】
(実施の形態12)
図15に示すように、図1と同様の構成要素については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図15に示すように、光触媒脱臭機1は光触媒シート2と吸着剤シート3が間隔をあけて積層された脱臭フィルタ4と励起光源5と送風手段6を備えている。矢印で示すように送風手段6により吸引された空気は脱臭フィルタ4を通過することで有害ガスや悪臭成分を除去または浄化されるものである。光触媒の働きで容易に分解できるガス成分が多いと予測される場合、励起光源5の出力を増やし、速やかに分解浄化することできる。一方、光触媒シート2で新たなガス成分の生成可能性が予測される場合、励起光源5の出力を抑え、吸着剤シート3で優先的に吸着除去すればよい。励起光源5の出力変更についてはインバータ回路で制御すればよく、その制御方法については特に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明にかかる光触媒脱臭機は、浄化対象中のガス成分に関して、光触媒で速やかに分解できるガス成分が多い場合には光触媒シートを優先的に機能させ、一旦吸着した後で緩やかに分解すべきガス成分が多い場合には吸着剤シートを優先的に機能させることで、最適な脱臭性能を示すことを可能とするものであるので、有害ガスの除去や悪臭成分の浄化に使用される光触媒脱臭機等として有用である。
【符号の説明】
【0071】
1 光触媒脱臭機
2 光触媒シート
3 吸着剤シート
4 脱臭フィルタ
5 励起光源
6 送風手段
7 風向変更手段
8 脱臭シート
9 回転軸
10 回転軸
11 開口部
12 凸部
13 ガスセンサ
14 バイパスダクト
15 補助送風手段
101 脱臭装置
102 板状脱臭体
103 紫外線ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを間隔をあけて複数枚積層された構造で、脱臭フィルタの上流側に風向変更手段を備えた光触媒脱臭機。
【請求項2】
脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを密着させた脱臭シートを間隔をあけて複数枚積層し、脱臭シートの露出面が反転する脱臭フィルタである光触媒脱臭機。
【請求項3】
脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを密着させた脱臭シートを棒状の励起光源の長手方向に対して傾斜角を有するように複数枚積層した脱臭フィルタである光触媒脱臭機。
【請求項4】
光触媒シートと吸着剤シートを環状に連結させてなる脱臭シートを棒状の励起光源の長手方向に対して傾斜角を有するように複数枚積層した脱臭フィルタである請求項3記載の光触媒脱臭機。
【請求項5】
開口部を有する光触媒シートと凸部を有する吸着剤シートまたは開口部を有する吸着剤シートと凸部を有する光触媒シートを密着させた脱臭シートである請求項2または3記載の光触媒脱臭機。
【請求項6】
浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて風向変更手段を制御する請求項1記載の光触媒脱臭機。
【請求項7】
浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて脱臭シートの露出面を反転させる請求項2記載の光触媒脱臭機。
【請求項8】
浄化対象のガス組成を検知するガスセンサの出力に応じて脱臭シートの励起光受光面を反転させる請求項3記載の光触媒脱臭機。
【請求項9】
光触媒脱臭機本体の吸入側と吹出し側の両方にガスセンサを備えた請求項6から8のいずれかに一項に記載の光触媒脱臭機。
【請求項10】
光触媒脱臭機本体の吸入側と吹出し側を連通するバイパスダクト内にガスセンサを備えた請求項6から8のいずれかに一項に記載の光触媒脱臭機。
【請求項11】
異なる特性の複数のガスセンサを備えた請求項10記載の光触媒脱臭機。
【請求項12】
脱臭フィルタと励起光源と送風手段を備えた光触媒脱臭機であって、前記脱臭フィルタは光触媒シートと吸着剤シートを間隔をあけて複数枚積層された構造で、励起光源の出力を可変する光触媒脱臭機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−143133(P2011−143133A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7723(P2010−7723)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】