説明

光触媒酸化チタンゾル及びその製造方法

【課題】 暗所においても抗菌性を発現する銀を含有したpH6〜8の中性領域において、銀の沈殿を生じない安定な分散状態を維持する光触媒酸化チタンゾル及びその製造方を提供する。
【解決手段】 チタン酸ゲルとヒドロキシカルボン酸と銀化合物とを含有する溶液を80〜140℃で加熱処理し、次いで溶液のpHを6〜8の範囲に調整することにより得ることができるゾルであり、pH6〜8の中性領域において銀の沈殿を生じない安定な分散状態を維持する光触媒酸化チタンゾルである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗所においても抗菌性を発現する銀を含有した光触媒酸化チタンゾルに関し、更に詳しくはpH6〜8の中性領域において、銀の沈殿を生じない安定な分散状態を維持する光触媒酸化チタンゾル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンは紫外線を照射することにより酸化還元反応を発現し、有害物質の分解や抗菌性、超親水化現象等の光触媒効果を有することが知られている。特に、酸化チタンナノ粒子が溶媒中に均一分散した酸化チタンゾルは、量子サイズ効果による優れた光触媒活性を有すること、更に製造時のハンドリング性の良さから各種工業製品の薄膜形成材料として広く利用されている。
【0003】
しかし、酸化チタンの光触媒効果は、光が照射されることによってはじめて発現するため、その効果は太陽光やランプなどの光が照射されているときだけに限定されている。これら光触媒効果の内、超親水性に起因する防汚性については、連続的に紫外線が照射されずとも間欠的な照射によって光触媒膜表面の外観上の汚れを十分取り除くことができる。また、有害物質の分解についても、間欠的な光照射によって徐々に分解することができる。しかしながら、抗菌性や脱臭効果については、光触媒効果が発現していない間に菌や臭気が増殖、拡大することから、その効果を持続させるためには連続的な紫外線の照射が必要となる。しかし、屋内、屋外において用いられる建材やその他のアメニティー関連製品などは独自の光源を持たないため、紫外光を含む太陽光やランプがない暗所では抗菌効果が得られないことになる。
【0004】
抗菌性金属である銀と銅を含有する酸化チタンゾルに関しては、本願出願人らが既に技術を開示しており、それによると、銅と水酸化第四アンモニウムを巧みに利用することで、抗菌性の高い銀を安定に配合させている(特許文献1参照)。しかし、この特許文献1の光触媒酸化チタンゾルは、アルカリ性であるため、例えば人体に直接接触する可能性がある抗菌スプレーのような中性領域のpHが望まれる用途に適用するのは困難であった。更に、ゾル中に配合されている水酸化第四アンモニウムが人体に対して無害であるとは言えないという面もあった。更に、この光触媒酸化チタンゾルは、アルコール溶媒やエマルション塗料等のバインダー成分との混合時に不安定化しやすいという問題もあった。
【0005】
一方、本願出願人は、抗菌性金属である銀や銅は含まないが、水酸化第四アンモニウムの代わりにヒドロキシカルボン酸を分散剤として使用する光触媒酸化チタンゾルを開示した(特許文献2参照)。このような光触媒酸化チタンゾルの例として、ヒドロキシカルボン酸としてリンゴ酸を分散剤に用いたタイノックAM-15(多木化学(株)製)がある。このタイノックAM-15は、酸性からアルカリ性の広範囲のpH領域において安定であり、更にアルコール溶媒やバインダー成分の添加に際しても安定であるという特徴を有する。しかし、タイノックAM-15に酸化銀を溶解させた溶液は、50℃で2日間暗所保存しただけで銀成分による黒色沈殿が発生するという問題があった。この問題は、リンゴ酸に代えてクエン酸など他のヒドロキシカルボン酸を用いても解決できなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2008−80253号公報
【特許文献2】特開2001−206720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者らは、銀化合物を含んでいるにもかかわらず、中性領域で銀沈殿が発生しない安定な光触媒酸化チタンゾルを開発すべく鋭意検討を重ねた結果、銀化合物とヒドロキシカルボン酸とを含有する光触媒酸化チタンゾルの溶液pHを6〜8の範囲に調整することによって、銀の安定性が確保されると共に、アルコール溶媒等を混合した状態でも光触媒酸化チタンゾルの安定性が維持できることを見出し、係る知見に基づき本発明を完成させたものである。
【0008】
このような中性領域に於いて、銀化合物を含有する光触媒酸化チタンゾルが何故安定であるかについて、その理由は定かではないが、少なくともこのような溶液のpH範囲外では、銀化合物が不安定化する。本発明は、銀化合物とヒドロキシカルボン酸と酸化チタンゾルとの組合せに於いて、且つpH6〜8の範囲で始めてその効果を奏するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、銀化合物とヒドロキシカルボン酸とを含有し、溶液pHが6〜8である光触媒酸化チタンゾルに関する。
【0010】
また、本発明は、チタン酸ゲルとヒドロキシカルボン酸と銀化合物とを含有する溶液を80〜140℃で加熱処理し、次いでpHを6〜8の範囲に調整することを特徴とする光触媒酸化チタンゾルの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光触媒酸化チタンゾルは、光触媒である酸化チタンとヒドロキシカルボン酸と銀成分とを含み、銀の析出、凝集による沈殿の発生が無く、pH6〜8の中性領域において極めて安定であるという特徴を有する。
更に、アルコール系溶媒の添加に対しても安定であるという特徴を有する。
【0012】
これらの特徴により、本発明の光触媒酸化チタンゾルは、(1)暗所においても銀の使用によって抗菌効果が得られる、(2)中性領域のゾルであること及び人体に無害なヒドロキシカルボン酸を使用するため、人体に接触して薬害を起こす可能性が極めて低い。従って、抗菌スプレーとしての使用も可能である、(3)ヒドロキシカルボン酸の使用によってゾルの安定性が高いため、他の化合物を混合したコーティング剤として使用することも可能である等のように、その適用範囲が広いという特徴を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の光触媒酸化チタンゾルの酸化チタン成分は、光触媒活性を示せば特段その種類は限定されず、例えば、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型、並びにこれらの混合物を挙げることができる。光触媒酸化チタンゾルの濃度は、濃縮操作によって調整可能であるが、概ねTiO2として5〜30質量%の範囲が好ましい。下限を下廻ると塗料化して基材に塗布する際に膜が薄くなり過ぎるため、塗布効率が低くなる傾向にあり、場合によっては、複数回の塗布が必要となり生産効率が悪くなる。反対に濃度が上限を超えると、ゾルの粘度が高くなる等により操作性が悪くなる。
【0014】
次に、本発明で用いるヒドロキシカルボン酸について詳述する。ヒドロキシカルボン酸は、中性領域において酸化チタンゾル成分及び銀成分を安定化させるための必須成分である。酸化チタンゾルの分散剤として、塩酸、硝酸等の鉱酸やアンモニア、一級〜三級アミン類等のアルカリ化合物等が従来から知られている。
しかし、これらを分散剤として用いたゾルは、中性領域において銀成分を含有した状態では安定に存在することができない。即ち、塩酸を分散剤とする酸化チタンゾルに銀成分を添加すると直ちに不安定化し、不溶性の塩化銀の沈殿が生じる。また、上記以外の分散剤で安定化された酸化チタンゾルは、酸性またはアルカリ性領域では銀成分を配合することができても、pHを中性領域に調整すると、ゾルあるいは銀成分が不安定化し沈殿を生じる。
【0015】
本発明で使用するヒドロキシカルボン酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、酒石酸、マンデル酸等が挙げられる。この中でも、ゾルを最も効果的に安定化できるリンゴ酸、クエン酸の使用が特に好ましい。
ヒドロキシカルボン酸の含有量については、ゾル及び銀成分を安定化させるため、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)のモル比で0.02〜0.5の範囲が望ましい。即ち、ヒドロキシカルボン酸含有量が下限を下廻ると、酸化チタンと銀成分を安定化させることができない。一方、上限を上廻ると、過剰なヒドロキシカルボン酸により銀成分が還元してゾルが変色する傾向があるため、大量に用いることは好ましくない。
【0016】
本発明の光触媒酸化チタンゾルに含有させる銀成分は、ヒドロキシカルボン酸溶液に溶解するものであれば、特に制限無く使用することができる。例えば、酸化銀、硫酸銀、硝酸銀、炭酸銀等が挙げられる。本発明の光触媒酸化チタンゾル中の銀成分の含有量は、抗菌力とゾルの安定性が両立できる量であれば特段制約はなく、用途等により酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)のモル比で0.0002〜0.1の範囲で適宜含有させれば良い。また、ヒドロキシカルボン酸との関係について云えば、銀化合物が酸化銀(Ag2O)としてヒドロキシカルボン酸に対して、酸化銀/ヒドロキシカルボン酸のモル比で0.01〜1.0の範囲が好ましい。即ち、下限を下廻ると銀の抗菌効果が期待できず、上限を超えると銀をゾル中に安定に分散させることが困難となる。
また、本発明の光触媒酸化チタンゾルは、酸化チタン、ヒドロキシカルボン酸、銀化合物の必須成分以外に、必要に応じてその他の成分を含有させることができる。例えば、銅、亜鉛、コバルト等の金属イオン成分や有機系抗菌剤、界面活性剤、低級アルコール類、更に水系エマルションやアルコキシシラン、アルカリ珪酸塩、炭酸ジルコニウムアンモニウムといったバインダー成分等が挙げられる。
【0017】
次に、本発明の光触媒酸化チタンゾルの製造方法について説明する。酸化チタン成分の原料となるチタン塩としては、塩化チタン、硫酸チタン、硝酸チタン等を例示することができる。これらの化合物を加熱により加水分解した後、中和し洗浄するか、あるいはアルカリで中和分解した後、洗浄することでチタン酸ゲルを得る。中和に用いるアルカリとしては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、アンモニア水等が挙げられる。
【0018】
得られたチタン酸ゲルを用いて本発明の光触媒酸化チタンゾルを得る方法としては、チタン酸ゲルと銀化合物とヒドロキシカルボン酸とを含有する溶液を加熱処理する方法であれば良く、この方法によると最終的に銀成分が安定化された光触媒酸化チタンゾルが得られる。詳述すると、一例として、チタン酸ゲルに銀化合物とヒドロキシカルボン酸を添加し、これを加熱処理した後、アルカリでpHを6〜8とした後、脱塩処理を行う方法が挙げられる。また別の例としては、酸化チタンゾル、チタン酸ゲル、銀化合物及びヒドロキシカルボン酸を含む溶液を加熱処理した後に、アルカリでpHを6〜8に調整する方法が挙げられる。尚この場合に使用する酸化チタンゾルとしては、最終的に得られる本発明の光触媒酸化チタンゾルが均一分散するものであれば特に限定されないが、例えば次の方法で得られる酸化チタンゾルを好適に使用できる。(1)チタン酸ゲルにヒドロキシカルボン酸を添加し、加熱処理した後、脱塩処理する方法、(2)アンモニア、水酸化カリウム等のアルカリを含有するチタン酸ゲルを加熱処理した後、脱塩処理する方法、(3)(2)の方法で得られた酸化チタンゾルにヒドロキシカルボン酸を添加し加熱処理した後、脱塩処理する方法等である。
【0019】
本発明の光触媒酸化チタンゾルのpHは、6〜8の中性領域とすべきである。即ち、pHが6を下廻ると銀成分の安定性が悪くなり、反対にpHが8より高くなると、ゾルの分散性が低下し、ゲル化し本発明の光触媒酸化チタンゾルを得ることができない。
加熱処理の温度は、いずれもチタン酸ゲルがゾル化する温度であれば特に限定されないが、おおよそ80℃〜140℃の温度でゾル化させることができる。
また、pH調整に使用するアルカリの種類としては、本発明の光触媒酸化チタンゾルを不安定化させるものでなければ、特に制限無く使用できる。例えば、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられる。
【0020】
脱塩処理工程は、限外ろ過、フィルタープレス、イオン交換樹脂等の一般的な装置を用いて行うことができるが、この工程は特段必須ではなく、ゾルの使用目的によっては、これを省略することもできる。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を掲げ更に説明を行うが、本発明は、これら実施例によって何ら制限を受けるものではない。尚、特に断らない限り%は質量%を示す。
【0022】
[実施例1]
四塩化チタン水溶液(TiO2=0.5%)にアンモニア水(NH3=3.0%)を攪拌下で添加し、チタン酸ゲルを生成させた。これをろ液中の塩素イオン濃度がチタン酸ゲル(TiO2)に対して100ppm以下になるまで限外ろ過洗浄し、TiO2=7.6%のチタン酸ゲルを得た。このチタン酸ゲル1000gにクエン酸1水和物を30g、酸化銀を1.3gを混合、溶解させた後、120℃で6時間水熱処理を行った。これをアンモニア水でpH7とした後、限外ろ過により、洗浄、濃縮を行い、TiO2濃度20%、銀成分がAg2Oとして0.3%、クエン酸を2.3%含有するpH6.8のアナターゼ型の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0055、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.05、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.11)を得た。
【0023】
[実施例2]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gにクエン酸1水和物を30g添加した後、120℃で6時間水熱処理し、限外洗浄、濃縮を行うことでTiO2濃度20%の酸化チタンゾルを得た。この酸化チタンゾル304gに実施例1の洗浄後のチタン酸ゲルを200g混合し、さらに酸化銀1.3gを混合、溶解させた後、90℃で8時間加熱した。これをアンモニア水でpH調整することで、TiO2濃度10%、銀成分がAg2Oとして0.17%、クエン酸を1.0%含有するpH6.5のアナターゼ型の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0056、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.04、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.14)を得た。
【0024】
[実施例3]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gを120℃で6時間水熱処理した後、クエン酸1水和物を30g添加し、さらに120℃で3時間水熱処理した。これを限外洗浄、濃縮することでTiO2濃度15%の酸化チタンゾルを得た。この酸化チタンゾル400gに実施例1の洗浄後のチタン酸ゲルを200g混合し、さらにクエン酸1水和物6g、酸化銀1.3gを混合、溶解させた後、90℃で8時間加熱した。これをアンモニア水でpH調整することで、TiO2濃度10%、銀成分がAg2Oとして0.17%、クエン酸を1.2%含有するpH6.5のアナターゼ型の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0060、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.05、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.12)を得た。
【0025】
[実施例4]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gにリンゴ酸1水和物を26g、酸化銀1.3gを混合、溶解させた後、120℃で6時間水熱処理を行った。これをアンモニア水でpH7とした後、限外ろ過により、洗浄、濃縮を行い、TiO2濃度20%、銀成分がAg2Oとして0.30%、リンゴ酸を1.8%含有するpH6.8のアナターゼ型の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0050、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.05、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.10)を得た。
【0026】
[実施例5]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gにクエン酸1水和物30gを添加した後、120℃で6時間水熱処理し、限外洗浄、濃縮を行うことでTiO2濃度20%の酸化チタンゾルを得た。この酸化チタンゾル304gに実施例1の洗浄後のチタン酸ゲルを200g混合し、さらに酸化銀10gを混合、クエン酸1水和物を2.8g溶解させた後、90℃で8時間加熱した。これをアンモニア水でpH調整することで、TiO2濃度10%、銀成分がAg2Oとして1.3%、クエン酸を1.1%含有するpH6.5のアナターゼ型の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.049、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.05、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.98)を得た。
【0027】
[比較例1]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gにクエン酸1水和物80gを混合、溶解させた後、120℃で6時間水熱処理を行った。これを限外ろ過により、濃縮を行った。これに酸化銀を1.3g添加することで、TiO2濃度10%、銀成分がAg2Oとして0.17%、クエン酸を3.5%含有するpH3.0の光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0056、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.14、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.04)を得た。
【0028】
[比較例2]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gにクエン酸1水和物30g、酸化銀1.3gを混合、溶解させた後、120℃で6時間水熱処理を行った。これをアンモニア水でpH7とした後、限外ろ過により、洗浄、濃縮を行った。さらにアンモニア水でpH10に調整することで、TiO2濃度10%、銀成分がAg2Oとして0.14%、クエン酸を1.0%含有する光触媒酸化チタンゾル(酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)モル比=0.0044、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)モル比=0.04、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸モル比=0.11)を得た。
【0029】
[比較例3]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gに35%塩酸を50g添加した後、140℃で24時間水熱処理し、限外洗浄、濃縮を行うことでTiO2濃度20%の酸化チタンゾルを得た。この酸化チタンゾル304gに実施例1の洗浄後のチタン酸ゲルを200g混合し、硝酸銀1.9gを添加したところ、白色沈殿が発生した。これを90℃で8時間加熱したが、沈殿、溶液ともに黒色になり、安定なゾルは得られなかった。
【0030】
[比較例4]
実施例1の洗浄後のチタン酸ゲル1000gを120℃で24時間の水熱処理を行い、TiO2=7.6%のチタンゾルを得た。このゾル200gに酸化銀0.9gと水酸化銅5.3gおよび水酸化テトラメチルアンモニウム25%水溶液1.7gを添加してよく撹拌した後、加熱濃縮することで、TiO2濃度15%、銀成分がAg2Oとして0.18%、銅成分がCuOとして0.85%含有するpH11の光触媒酸化チタンゾルを得た。
【0031】
これら実施例及び比較例で得られた光触媒酸化チタンゾルについて、ゾル化の可否、保存安定性試験、エタノール希釈性の評価を行った。評価結果を表1に示した。
【0032】
<ゾル化の可否>
ゾル化の可否は目視で確認した。沈殿が無く、安定に分散しているものを○、沈殿が多く、透明感が全く無いものを×として評価した。
【0033】
<保存安定性>
得られたサンプルをTiO2濃度10%に調整した後、50℃の恒温槽に保存し、ゲル化、変色、沈殿が発生するまでの時間を調べた。3ヶ月以上安定なものは○、1〜2ヶ月安定なものは△、1ヶ月以下で変色、沈殿が起きたものを×として評価した。
【0034】
<エタノール希釈性>
得られたサンプルを純水でTiO2濃度10%に調整した後、エタノールで100倍希釈した。100倍希釈してもゾル分散していたものは○、ゲル化したが超音波処理10分で再分散したものを△、ゲル化し再分散しないものを×として評価した。
【0035】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀化合物とヒドロキシカルボン酸とを含有し、溶液pHが6〜8である光触媒酸化チタンゾル。
【請求項2】
銀化合物が酸化銀として酸化チタンに対して、酸化銀(Ag2O)/酸化チタン(TiO2)(モル比)=0.0002〜0.1である請求項1記載の光触媒酸化チタンゾル。
【請求項3】
ヒドロキシカルボン酸がクエン酸又はリンゴ酸である請求項1記載の光触媒酸化チタンゾル。
【請求項4】
ヒドロキシカルボン酸の量が酸化チタンに対して、ヒドロキシカルボン酸/酸化チタン(TiO2)(モル比)=0.02〜0.5である請求項1又は2記載の光触媒酸化チタンゾル。
【請求項5】
銀化合物が酸化銀としてヒドロキシカルボン酸に対して、酸化銀(Ag2O)/ヒドロキシカルボン酸(モル比)=0.01〜1.0である請求項1〜3の何れか1項記載の光触媒酸化チタンゾル。
【請求項6】
チタン酸ゲルとヒドロキシカルボン酸と銀化合物とを含有する溶液を80〜140℃で加熱処理し、次いで溶液のpHを6〜8の範囲に調整することを特徴とする光触媒酸化チタンゾルの製造方法。

【公開番号】特開2010−148999(P2010−148999A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−327086(P2008−327086)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000203656)多木化学株式会社 (58)
【Fターム(参考)】