説明

光記録ディスクおよび光記録ディスクの記録再生方法

【課題】光記録ディスクの大容量化と高速回転を可能にする。
【解決手段】光記録ディスク1は、10層以上の複数の光記録層12と、複数の光記録層12の間に設けられた複数の中間層13と、光記録層12および中間層13を支持するベースフィルム11と、光記録層12および中間層13のベースフィルム11とは反対側に設けられたカバー層14とを備え、全体としてディスク形状をなし、総厚さが300μm以下で可撓性を有して構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光記録ディスクおよび光記録ディスクの記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光などで情報を記録・再生する光記録媒体は、近年、記録層を多層化することによりディスク1枚あたりの記憶容量を高める方法が検討されている(特許文献1〜3、非特許文献1〜3)。
一方、ごく薄いフレキシブルディスク(特許文献4〜6、非特許文献4など)を多数枚カートリッジケースに収め、1枚ずつチェンジャーで取り出して使うようにすることにより、大容量のカートリッジを実現する方法が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−134784号公報
【特許文献2】特開2009−252340号公報
【特許文献3】国際公開第2008/007564号パンフレット
【特許文献4】特許第4140823号公報
【特許文献5】特開2005−011412号公報
【特許文献6】特開2009−116985号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】H.Mitsumori et al., Jpn.J.Appl.Phys. Vol.48, No.3(2009) 03A055
【非特許文献2】Mishima et al. “150 GB, 6-layer write once disc for Blu-ray Disc system”, Proc.of SPIE 6282 (2006) 62820I
【非特許文献3】Isao Ichimura et al. Proc. SPIE, Vol. 6282, 628212 (2007)
【非特許文献4】小名木他, Ricoh Technical Report No.30, p37
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、これまでの記録層を多層化した光記録媒体は、記録層および中間層の積層構造からして厚さが必要なため、結果として媒体全体の厚みが大きくなることで可撓性を有さず、10000rpm以上に高速回転させると、媒体が共振することで媒体が破損する虞があり、データ転送速度を高くしようとしても、媒体の速度による限界が低いという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、高速回転を可能にした大容量の光記録ディスクおよび光記録ディスクの記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した課題を解決する本発明の光記録ディスクは、10層以上の複数の光記録層と、前記複数の光記録層の間に設けられた複数の中間層と、前記光記録層および前記中間層を支持するベースフィルムと、前記光記録層および中間層の前記ベースフィルムとは反対側に設けられたカバー層とを備え、全体としてディスク形状をなし、総厚さが300μm以下で可撓性を有することを特徴とする。
【0008】
このような、総厚さが300μm以下の可撓性を有する光記録ディスクにすることで、300μmより厚いディスクで問題となる共振が起こりにくく、高速回転が可能となる。このため、高いデータ転送速度を実現することが可能となる。また、300μm以下の厚みの中に、10層以上の記録層を設けることで、大記憶容量とすることができる。
【0009】
前記した光記録ディスクにおいて、前記カバー層は、厚みが10〜50μmであることが望ましい。
【0010】
前記した光記録ディスクにおいては、前記カバー層および前記ベースフィルムの少なくとも一方は、内側に、トラッキングに用いるための螺旋状の溝が設けられている構成とすることができる。また、前記中間層の少なくとも一つに、トラッキングに用いるための螺旋状の溝が設けられた構成とすることもできる。
【0011】
本発明の各光記録ディスクの記録再生方法は、前記ベースフィルムの外面までの距離と前記カバー層の外面までの距離のうち、ベースフィルムの外面までの距離の方が小さい光記録層に対しては、カバー層側から光を照射することで記録または再生を行い、カバー層の外面までの距離が小さい光記録層に対しては、ベースフィルム側から光を照射することで記録または再生を行うことを特徴とする。
【0012】
このように、記録再生を行う光の照射側から見て奥側にある記録層に対し記録・再生を行うよう、光記録ディスクの両側から適宜記録または再生を行うことで、ディスクの光を入射する側の表面と光記録層との距離を比較的大きく取ることができる。これにより、ディスク表面に傷や塵埃があったとしても、対象となる記録層の焦点の位置から離れているので、データの記録・再生時に傷や塵埃の影響を受けにくい。従来は、厚みの大きい光記録媒体でこのような距離を取ることで、ディスク表面の傷や塵埃の影響を受けないようにしていたが、本発明では、薄いフレキシブルディスクにおいても、適宜ディスクの両側の一方から奥の方の光記録層に対し記録再生を行うことで、光学的に傷や塵埃の影響を受けにくくすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光記録ディスクによれば、大記憶容量でありながら、高いデータ転送速度を実現することができる。また、本発明の光記録ディスクの記録再生方法によれば、ディスク表面の傷や塵埃の影響を受けにくい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】光記録ディスクの全体斜視図である。
【図2】光記録ディスクの断面図である。
【図3】光記録ディスクの層構成を説明する図である。
【図4】トラッキング用の溝の配置が異なる光記録ディスクの例を示す断面図である。
【図5】光ディスクドライブの構成図である。
【図6】光記録ディスクの層構成の組合せの例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の一実施形態について説明する。図1に示すように、本発明の一実施例に係る光記録ディスク1は、全体として円盤状をなし、可撓性のあるディスク部10が、コア19に支持されている。光記録ディスク1は、折れ曲がりなどによる損傷を防止するため、カートリッジケース2に収納した状態で取り扱うようにするとよい。
【0016】
コア19は、後述するディスクドライブに支持される部分であり、図2に示すように、円盤状の形状を有し、中央に、スピンドルが挿通される貫通孔19Aが形成されている。また、ディスク部10を張り付けなどにより支持するため、コア19には、外周にフランジ19Bが設けられている。フランジ19Bは、コア19の厚み方向の中央で(スピンドル32に支持され得る面19Cおよび面19Dの中間位置(等距離)で)ディスク部10を支持できるように、コア19の厚み方向のおよそ中央部分に配置されている。
【0017】
図3に示すように、ディスク部10は、ベースフィルム11に、多数の光記録層12および中間層13が設けられ、ベースフィルム11の反対側は、カバー層14で覆われている。具体的には、ベースフィルム11およびカバー層14の内側には、それぞれスペーサ層15,16が設けられている。2つのスペーサ層15,16の間には、多数の光記録層12が設けられ、各光記録層12同士の間には、中間層13が設けられている。ディスク部10の総厚さTは、300μm以下である。また、ディスク部10は、可撓性を有し、いわゆるフレキシブルディスクを構成している。
【0018】
ベースフィルム11は、ディスク部10の支持体となるものであり、円形をなしている。ベースフィルム11の厚さは、適度な可撓性を有するようにするため10〜100μmであるのが望ましく、10〜50μmであるのがより望ましい。ベースフィルム11の材料は、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエステル、脂環式炭化水素樹脂、エポキシ、アセタールなどを用いることができる。
【0019】
光記録層12は、レーザ光などの光(紫外光、赤外光を含む)により情報を記録可能な記録材料からなる層である。光記録層12の記録材料は、公知の光記録ディスクと同様に光を当てることにより、屈折率、光吸収率または蛍光特性などの光学的性質が変化するものであれば、どのようなものでもよい。一例として、光記録層12の材料は、シアニン色素、フタロシアニン色素、アゾ色素などの有機色素材料、Ge−Sb−Te、Ag−In−Sb−Te等の相変化材料、Te、Se等を含む金属材料である。
【0020】
光記録層12の厚さは、記録材料の感度に応じ、十分なS/N比が得られる程度の厚みで有ればよく、例えば、0.01〜2μmである。光記録層12が0.01μm以上であることで信号強度を大きくとって必要なS/N比を得ることが可能であり、2μm以下とすることで、光記録層12を10層以上設けることができて記憶容量を大きくできるとともに、中間層13の厚みを十分確保して層間クロストーク(隣接する光記録層12からの信号の混ざり合い)を防止することができる。
【0021】
光記録層12は、光記録ディスク1全体として大きな記憶容量を得るため、少なくとも10層以上設けられる。光記録層12の層数は、中間層13の厚さを必要なだけ確保できる限り、20層、40層などできるだけ多い方が望ましい。
【0022】
中間層13は、隣接する光記録層12同士の層間クロストークを防止するために設けられる層であり、例えば、3〜20μm程度の厚さを設けるとよい。中間層13の材料は、光記録ディスク1の記録・再生に用いる光(「記録再生光」と省略して記す。)を十分に透過できるものであれば特に限定されず、例えば、アクリル化合物、メタクリル化合物、ポリ塩化ビニル化合物、ポリビニルアルコール化合物、ポリ酢酸ビニル化合物、ポリスチレン化合物、セルロース等高分子化合物を溶媒に溶解した接着剤、アクリレート化合物やエポキシ化合物、オキセタン化合物等を主成分とする光硬化型接着剤、エチレン酢酸ビニル化合物、オレフィン化合物、ウレタン化合物等を主成分とするホットメルト接着剤、
アクリル化合物、ウレタン化合物、シリコーン化合物等からなる粘着剤を用いることができる。
【0023】
カバー層14は、ベースフィルム11と反対側の面を覆うように設けられている。カバー層14は、厚さ、材料など、ベースフィルム11と同様の構成とすることができる。本明細書では、ベースフィルム11とカバー層14に便宜上、別の名称を用いているが、ベースフィルム11とカバー層14は、全く同じ構成であっても構わない。逆に、カバー層14とベースフィルム11を異なる構成としてもよい。例えば、ベースフィルム11を厚くしてベースフィルム11の支持力を大きくし、カバー層14は、ベースフィルム11よりも薄くして、ベースフィルム11の反対側を保護するためにのみ設けてもよい。
【0024】
ベースフィルム11は、内側の面に、トラッキングに用いるための螺旋状の溝21が設けられている。カバー層14にも同様に、内側の面に、トラッキングに用いるための螺旋状の溝24が設けられている。溝21を作る場合には、例えば、ベースフィルム11の内面に紫外線硬化樹脂を塗布した上で、溝21を反転させた突条を有するスタンパを紫外線硬化樹脂層に押し付け、その状態で紫外線を照射して硬化させることで作ることができる。カバー層14に溝24を形成する場合にも同様である。ベースフィルム11と、カバー層14の内側には、それぞれ、溝21,24が設けられた面と光記録層12を隔離するためのスペーサ層15,16が設けられている。スペーサ層15は、ベースフィルム11の溝21を検出できるようにするため、隣接するベースフィルム11と異なる屈折率の材料で構成される。同様の理由から、スペーサ層16は、隣接するカバー層14と異なる屈折率の材料で構成される。
【0025】
ベースフィルム11およびカバー層14は、少なくとも一方が、記録再生光が十分に透過できるようになっていればよく、他方は、透過性を有さなくてもよい。もっとも、後述するように光記録ディスク1(ディスク部10)の両面から記録・再生を行うためには、ベースフィルム11およびカバー層14の両方が記録再生光を十分に透過できるようになっているのがよい。この透過性については、スペーサ層15,16についても同様であり、スペーサ層15,16は、ベースフィルム11およびカバー層14のうち、透過性を有するものに対応するものが、記録再生光に対し十分な透過性を有していればよい。もっとも、本実施形態のスペーサ層15,16は、トラッキング用の溝21,24に隣接しているので、溝21,24の位置を検出可能な程度に、トラッキングサーボに用いる光に対し透過性を有しているのがよい。なお、スペーサ層15,16の厚さは、1〜20μm程度とすることができ、材料としては中間層13と同じものを用いることができる。
【0026】
トラッキング用の溝は、ベースフィルム11やカバー層14に設けずに、中間層13に設けてもよい。例えば、図4に示すように、中間層13の一層を、互いに屈折率が異なる第1中間層13Aと第2中間層13Bとで構成し、第1中間層13Aに螺旋状の溝23を設けることができる。
【0027】
次に、光記録ディスク1に対しデータの記録・再生を行う光ディスクドライブの一例について説明する。
図5に示すように、光ディスクドライブ30は、スタビライザ31と、スピンドル32と、モータ34と、光ピックアップ35と、モータ34および光ピックアップ35の動作を制御する制御部41とを主に備えている。
【0028】
スタビライザ31は、高精度の平面部31Aを有する板であり、スピンドル32が貫通する中央の穴31Bを有している。スタビライザ31の平面部31Aには、光記録ディスク1のディスク部10が対面するため、平面部31Aは、ディスク部10よりも大きく形成されている。スタビライザ31は、スタビライザホルダ31Cにより、十分に安定した図示しないベースに固定されている。スタビライザ31は、回転するディスク部10との間に僅かな空気層を保持することで、光記録ディスク1を高速回転(例えば、15000〜20000rpm程度)させても、ディスク部10を安定させることができる。
【0029】
スピンドル32は、光記録ディスク1を支持して回転する部材である。スピンドル32の先端は、コア19の貫通孔19Aに対応した形状を有しており、キャップ33がスピンドル32の先端に係合することにより、コア19は、スピンドル32にしっかりと把持されるようになっている。
【0030】
モータ34は、スピンドル32を回転させる駆動源であり、回転子がスピンドル32に結合されている。モータ34の回転は、制御部41により制御される。
【0031】
光ピックアップ35は、レーザ光源や、レンズ、受光素子などを有した公知の光ピックアップ装置と同様の構成である。光ピックアップ35は、光記録ディスク1の半径方向に延びるガイド35Aに沿って移動してトラッキングを行うようになっている。このトラッキングは、前記した溝21または溝24からの反射光が所定の強度になるように光ピックアップ35の位置を調整することで行われる。溝21または溝24の位置と、光記録層12の位置は深さ(光記録ディスク1の厚み)方向で異なるため、光ピックアップ35は、記録・再生用の光源および受光素子と、サーボトラッキング用の光源および受光素子を別個に備えているとよい。
光ピックアップ35で再生時に受光して得た信号およびトラッキング用に受光した信号は、信号処理部42に出力される。
【0032】
制御部41は、信号処理部42と接続されている。
信号処理部42は、記録時に外部から入力されたデータを、光ピックアップ35の出力パターンにエンコードした記録信号を制御部41に出力するとともに、光ピックアップ35から入力された信号をデコードして外部に出力する機能を有する。また、信号処理部42は、トラッキング用に受光した信号から、トラッキングのずれを算出し、光ピックアップ35の位置をフィードバック制御するため、光ピックアップ35の位置制御量を制御部41に出力する。
【0033】
制御部41は、モータ34を所定の回転数で回転させるようにモータ34に制御信号を出力する。また、データの記録時および再生時において、所定の記録箇所に光ピックアップ35をトラッキング制御する。さらに、データの記録時には、信号処理部42から入力された記録信号を光ピックアップ35に出力し、データの再生時には、所定の出力で光ピックアップ35の光源から光を出射させる。
【0034】
上記の機能に加え、制御部41は、記録再生光を複数の光記録層12のうちの所定の層にフォーカシングする機能を有する。このフォーカシングは、例えば、光の照射側から見て最も奥の光記録層12(図3では一番下の光記録層12)にフォーカスした後、フォーカスを徐々に手前(図3では上)側に移動しつつ、層数をカウントすることで、所望の層にフォーカスを移すことができる。
【0035】
一の光記録層12に対し、記録・再生動作を行うときには、その光記録層12がベースフィルム11とカバー層14のうち、ベースフィルム11に近い場合には、図3に示したように、カバー層14側から記録・再生を行い、カバー層14に近い場合には、光記録ディスク1を裏返してスピンドル32に支持させ、ベースフィルム11側から光を照射して記録・再生を行うとよい。このように、記録・再生の対象とする光記録層12から遠い表面側から光を照射することで、光が透過する手前側の表面と記録・再生の対象となる光記録層12の距離を大きく取れるので、仮に光が透過する手前側の表面に傷や塵埃があったとしても、その傷や塵埃の影響をほとんど受けることなくデータの記録・再生が可能となる。従来の、可撓性を有さない厚い光記録ディスクでは、厚い基板を通して記録・再生用の光を照射していたため、基板の傷や塵埃の影響を受けないことができたが、本実施形態の光記録ディスク1は、300μm以下で可撓性を有する程度に薄く、また、その中に10層以上の光記録層12を設けているため、ベースフィルム11およびカバー層14は、従来の可撓性を有さない光記録ディスクよりもかなり薄くなってしまう。そのため、対象とする光記録層12の位置に応じて、上記のように遠い側の表面から光を照射することで、表面の傷や塵埃の影響を避けることができる。なお、ベースフィルム11の外面とカバー層14の外面の中央にある光記録層12については、ベースフィルム11側、カバー層14側のいずれから記録再生光を照射して記録・再生をしてもよい。
【0036】
光記録層12のうち、光の照射側から見て奥側の層について、記録・再生をすることの指示は、この光ディスクドライブ30を操作するユーザが、記録すべき光記録層12の位置を適宜光ディスクドライブ30に入力して行ってもよいし、制御部41が記録再生光をフォーカシングするときに、ディスク部10の厚み方向中央より下側の光記録層12(つまり、奥側の光記録層12)にのみにフォーカスするように構成してもよい。さらに、光ディスクドライブ30に接続される外部機器が、奥側の光記録層12にのみ記録・再生を行うように指示してもよい。
【0037】
次に、光記録ディスク1の、各層の厚みなどのバリエーションについて例を挙げて説明する。図6は、本発明に含まれる各層の厚みや、トラッキング用の溝の位置を例示した実施例1〜6と、本発明に含まれない比較例1,2を表にしたものである。実施例1〜6のように、ベースフィルム11およびカバー層14を10〜50μmにした上で、総厚さを300μm以内に抑えることで、ディスク部10の全体として可撓性を持たせることができる。一方、比較例1,2のように、総厚さを300μmより大きくしてしまうと、ディスク部10が可撓性を有さなくなり、高速回転が困難となる。
【0038】
また図6の表には、各実施例および比較例について、記録再生光として、405nmのレーザ光を用い、対物レンズとして現在広く使われているレンズの中で最も大きいNAであるNA0.85のレンズを用い、カバー層14から数えて1層目の光記録層12に焦点を合わせた場合の、光記録ディスク1の対物レンズ側の表面のレーザ光のスポットの大きさを示した。このスポット光の大きさは、カバー層14側からレーザ光を照射した場合のカバー層14の表面での大きさと、ベースフィルム11側からレーザ光を照射した場合のベースフィルム11の表面での大きさを計算して示した。この表からわかるように、実施例1〜6において、カバー層14側から記録再生光を照射すると、カバー層14の表面でのスポット径は70μmより小さく、カバー層14の表面において50μm以下程度までの大きさの欠陥や傷しか許容できないが、ベースフィルム11側から記録再生光を照射すると、100μm以上の欠陥や傷も許容できるようになる。このことから、カバー層14の外面までの距離が小さい光記録層12に対しては、ベースフィルム11側から光を照射することで記録または再生を行うことが好ましいことが示される。
【0039】
光記録ディスク1に、傷などに対し十分な耐性を持たせるためには、傷の大きさとして50μm以上が許容される必要があり、そのためには、記録再生光の照射側の表面でのスポット径が70μm以上である必要がある。このことからは、光記録ディスクの層厚さは、100μm(実施例3のベースフィルムの厚さ50μmの2倍)以上であることが望ましい。光記録ディスク1の厚さは、この傷への耐性の観点からは、厚い方が望ましく、150μm以上がより望ましく、200μm以上であるのがさらに望ましい。
【0040】
以上のような、本実施形態の光記録ディスク1は、総厚さが300μm以下であり可撓性を有するため、共振による光記録ディスク1の破損が起こりにくく、可撓性が無い従来の光記録ディスクに比較して高速回転が可能である。そのため、データの高速転送も可能となる。そして、総厚さが300μm以下でありながら、光記録層12を10層以上設けたため、コンパクトでありながら大量の記憶容量を実現することができる。
【0041】
また、光記録ディスク1は、コア19のスピンドル32に支持される面19Cおよび面19Dの中間位置(等距離)にディスク部10を支持しているので、光ディスクドライブ30にベースフィルム11を下にしてセットした場合と、カバー層14を下にしてセットした場合とで、光ディスクドライブ30内の各部分、例えば、光ピックアップ35やスタビライザ31との位置関係が同様になる。そのため、光を入射させる面を表裏で変えても、光ディスクドライブ30が、同様の動作で記録・再生を行うことができる。
【0042】
そして、光記録ディスク1は、ベースフィルム11やカバー層14または中間層13に螺旋状の溝21,23,24が設けられていることで、トラッキング制御が容易である。
【0043】
また、上記のように、ベースフィルム11の外面までの距離とカバー層14の外面までの距離のうち、ベースフィルム11の外面までの距離の方が小さい光記録層12は、カバー層14から光を照射することで記録または再生を行い、カバー層14の外面までの距離が小さい光記録層12は、ベースフィルム11側から光を照射することで記録または再生を行う光記録ディスクの記録再生方法により、ディスク部10の光の入射側の表面に傷や塵埃があったとしても、記録・再生の対象となる光記録層12と当該表面との距離を比較的大きく取れるので、それらの傷や塵埃の影響を大きく受けることなく記録・再生が可能である。
【0044】
以上に本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されることなく適宜変形して実施することが可能であることはいうまでもない。例えば、トラッキング用の溝は、ベースフィルム11の内面およびカバー層14の内面だけでなく、これらに加えて中間層13にも設けても構わない。
【符号の説明】
【0045】
1 光記録ディスク
2 カートリッジケース
10 ディスク部
11 ベースフィルム
12 光記録層
13 中間層
13A 第1中間層
13B 第2中間層
14 カバー層
15 スペーサ層
16 スペーサ層
19 コア
21 溝
23 溝
24 溝
30 光ディスクドライブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10層以上の複数の光記録層と、複数の光記録層の間に設けられた複数の中間層と、光記録層および中間層を支持するベースフィルムと、光記録層および中間層のベースフィルムとは反対側に設けられたカバー層とを備え、全体としてディスク形状をなし、総厚さが300μm以下で可撓性を有することを特徴とする光記録ディスク。
【請求項2】
カバー層は、厚みが10〜50μmであることを特徴とする請求項1に記載の光記録ディスク。
【請求項3】
カバー層およびベースフィルムの少なくとも一方は、内側に、トラッキングに用いるための螺旋状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光記録ディスク。
【請求項4】
中間層の少なくとも一つに、トラッキングに用いるための螺旋状の溝が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の光記録ディスク。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の光記録ディスクの記録再生方法であって、
ベースフィルムの外面までの距離とカバー層の外面までの距離のうち、ベースフィルムの外面までの距離の方が小さい光記録層に対しては、カバー層側から光を照射することで記録または再生を行い、カバー層の外面までの距離が小さい光記録層に対しては、ベースフィルム側から光を照射することで記録または再生を行うことを特徴とする光記録ディスクの記録再生方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−187135(P2011−187135A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53283(P2010−53283)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】