説明

光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法

【課題】記記録層にジアゾニウム塩を用い、高感度を維持しつつ、ジアゾニウム塩からガスが発生して既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、解像度、回折効率等に優れた光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法の提供。
【解決手段】支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、前記記録層の記録材料が、微小容器に内包されたジアゾニウム塩、及び前記微小容器外に存在するカップリング成分を含むことを特徴とする光記録媒体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホログラフィを利用して情報が記録される光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法に関し、既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、感度、解像度、回折効率等に優れた光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度画像データ等の大容量の情報を書き込み可能な記録媒体の一つとして光記録媒体が挙げられる。この光記録媒体としては、例えば、光磁気ディスク、相変化型光ディスク等の書換型光記録媒体やCD−R等の追記型光記録媒体については既に実用化されているが、光記録媒体の更なる大容量化に対する要求は高まる一方である。
しかし、従来より提案されている光記録媒体は全て二次元記録であり、記録容量の増大化には限界があった。そこで、近時、三次元的に情報を記録可能なホログラム型の光記録媒体が注目されている。
【0003】
前記ホログラム型記録媒体では、一般に、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光と、を感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉像を利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。
より具体的には、例えば、図2に示すように、光源61から出射した光が、ハーフミラー64を透過した情報光51と、該ハーフミラー64に反射した参照光52に分割され、情報光51はミラー66及びビームエキスパンダ68を経由して拡大され、光記録媒体50の記録層面に照射される。他方、参照光52は、ミラー65及びビームエキスパンダ67を経由して拡大され、情報光51が照射される前記記録層面と反対側の記録層面に照射され、情報光51と参照光52とにより干渉縞が生成され、この干渉縞が光情報として前記記録層に記録される。この参照光52が、情報光51が照射される方向と同じ方向から前記記録層面に照射されても異なる方向から照射されたときと同様に前記干渉縞が生成され、記録することができる。特に情報光51の光軸と参照光52の光軸とが同軸になるようにして情報光51及び参照光52が照射される方法が、コリニア方式と称され、該コリニア方式においても同様に前記干渉縞が生成され、光情報が前記記録層に記録される。記録された光情報の再生は、前記光記録媒体に前記参照光と同じ光を、記録時と同じ方向から照射することにより行われる。該光照射により光情報としての前記干渉縞から回折光が生成され、該回折光を受光することにより前記光情報が再生される。
【0004】
前記ホログラム型光記録媒体では、記録層内に光学特性分布が三次元的に形成されるので、一の情報光により情報が書き込まれた領域と、他の情報光により情報が書き込まれた領域とを部分的に重ね合わせること、すなわち多重記録が可能である。
例えば、デジタルボリュームホログラフィを利用した場合には、1スポットの信号対雑音比(S/N比)は極めて高くなるので、重ね書きによりS/N比が多少低くなっても元の情報を忠実に再現できる。その結果、多重記録回数が数百回までに及び、光記録媒体の記録容量を著しく増大させることができる(特許文献1参照)。
【0005】
前記ホログラム型光記録媒体に用いられる記録材料としては、例えば、ハロゲン化銀、フォトポリマー、気泡材、表面レリーフ材、フォトリフラクティブ、フォトクロミックなどが挙げられる。これらの中でも、気泡材は、光照射により気泡(ガス)を発生し、該ガスの屈折率が、記録層を形成する材料の屈折率と大きく異なることから、前記干渉縞の明暗を該屈折率の高低の縞として記録する屈折率変調ホログラム用として適している。また、前記気泡材は、前記屈折率を増大させるガスの発生量が極少量でも良好な干渉縞を形成し得る点や、解像度などの向上を図ることができる点でメリットがあり、一般に屈折率変調ホログラムの記録材料として用いられている。
このような気泡材として、ジアゾニウム塩を記録層に含有させた光記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。
ここで、干渉像の記録が終了した記録層においては、光照射により残存した記録材料を予め分解する、いわゆる定着を行なうことにより、再生時の再生光により前記残存した記録材料が分解して記録画像を乱すのを防ぐ必要がある。
しかしながら、前記ジアゾニウム塩を含有する記録層の場合、前記ジアゾニウム塩を光照射により定着させると、ジアゾニウム塩から発生したガスが既に記録されている画像情報を乱す成分となるため、信号劣化する問題があった。
【0006】
したがって、ジアゾニウム塩からガスが発生して既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、感度、解像度、回折効率等に優れた光記録媒体及び光記録方法は未だ実現されておらず、その提供が望まれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】特開2002−123949号公報
【特許文献2】特開平5−72727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、記録層にジアゾニウム塩を用い、高感度を維持しつつ、ジアゾニウム塩からガスが発生して既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、解像度、回折効率等に優れた光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、前記記録層の記録材料が、微小容器に内包されたジアゾニウム塩、及び前記微小容器外に存在するカップリング成分を含むことを特徴とする光記録媒体である。
本発明の光記録媒体においては、支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、前記記録層の記録材料が、微小容器に内包されたジアゾニウム塩、及び前記微小容器外に存在するカップリング成分を含むので、前記微小容器外に存在するカップリング成分によりジアゾニウム塩からガスが発生しない。このため、既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができる。また、前記記録層にジアゾニウム塩を用いるので、感度、解像度、回折効率等に優れる。
<2> ジアゾニウム塩とカップリング成分との反応生成物の、記録光源中心波長における吸光度が0.2以下である前記<1>に記載の光記録媒体である。
<3> 微小容器が、マイクロカプセルである前記<1>から<2>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<4> マイクロカプセルの中心径が、照射される光の波長と同じ長さ、及び該波長よりも小さい長さのいずれかである前記<3>に記載の光記録媒体である。
<5> マイクロカプセルの中心径が、0.4μm以下である前記<3>から<4>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<6> ジアゾニウム塩が、Hammettσp値として負の値を有する電子供与性基で置換されたジアゾニウム塩である前記<1>から<5>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<7> 記録層がバインダーを含み、前記記録層の固形分中のバインダー成分の含有量が、10〜95質量%である前記<1>から<6>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<8> 第一の基板と、記録層と、フィルタ層と、支持体としての第二の基板とをこの順に有する前記<1>から<7>のいずれかに記載の光記録媒体である。
<9> 基板が、サーボピットパターンを有する前記<8>に記載の光記録媒体である。
<10> サーボピットパターン表面に反射膜を有する前記<9>に記載の光記録媒体である。
<11> 反射膜が、金属反射膜である前記<10>に記載の光記録媒体である。
【0010】
<12> 前記<1>から<11>のいずれかに記載の光記録媒体に対して、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行われることを特徴とする光記録方法である。
本発明の光記録方法においては、本発明の前記光記録媒体を用いて、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行うことにより、高密度記録を実現することができる。
【0011】
<13> 前記<12>に記載の光記録方法により記録層に形成された干渉像に参照光と同じ再生光を照射して該干渉像に対応した記録情報を再生することを特徴とする光再生方法である。
本発明の光再生方法においては、本発明の前記光記録方法により記録層に形成された干渉像を効率よく、正確に読み取って高密度記録情報を再生することができる。
<14> 再生光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度になるように、該再生光を干渉像に照射して記録情報を再生する前記<13>に記載の光記録再生方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、記録層にジアゾニウム塩を用い、高感度を維持しつつ、ジアゾニウム塩からガスが発生して既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、解像度、回折効率等に優れた光記録媒体、光記録方法及び光記録再生方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(光記録媒体、光記録方法、及び光再生方法)
本発明の光記録媒体は、支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層及び必要に応じて適宜選択したその他の層を有する光記録媒体である。
本発明の光記録媒体は、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラムであってもよく、透過型及び反射型のいずれであってもよい。また、ホログラムの記録方式もいずれであってもよく、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなどでもよい。
本発明の光記録媒体は、少なくとも一の支持体上に記録層を積層し、情報光と参照光とが異なる方向から照射される一般的なホログラムの記録に用いられる第一の形態、第一の基板と、支持体としての第二の基板と、該第二の基板上に記録層と、前記第二の基板と該記録層との間にフィルタ層とを有し、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸になるようにして行われるコリニア方式に用いられる第二の形態などが挙げられる。以下第一の形態及び第二の形態について順に説明する。
【0014】
〔第一の形態〕
前記第一の形態は一般のホログラム記録方法に用いられるもので、層構造としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、支持体上に記録層を単層又は2以上の層を積層した構成、図1に示すように、支持体42及び43により記録層41を挟み込み、支持体42及び43の最外層にそれぞれ反射防止層44及び45を形成した層構成などが挙げられる。
更に、記録層41及び支持体42との間、記録層41と支持体43との間にガスバリア層などを形成することが好ましい。また、反射防止層44及び45の表面に保護層などのその他の層を設けてもよい。
【0015】
<記録層>
前記記録層は、ホログラフィを利用して情報が記録され得るものであり、所定の波長の電磁波(γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、電波など)を照射すると、その強度に応じて吸光係数や屈折率などの光学特性が変化する記録材料を含み、必要に応じてバインダー樹脂等の適宜選択したその他の成分を含む。
より具体的には、前記記録材料としては、例えば、微小容器に内包されたジアゾニウム塩、及び前記微小容器外に存在するカップリング成分を含み、必要に応じて有機塩基を含む。
【0016】
−ジアゾニウム塩−
前記ジアゾニウム塩としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(I)で表される化合物などが挙げられる。
【0017】
【化1】

【0018】
ただし、一般式(I)中、Arは、置換可能な芳香環を表し、Xは、対アニオンを表す。
前記Arは、置換基Yを有していてもよく、該Yとしては、各種電子供与性基や電子吸引性基が好ましく、電子供与性基である場合には、Hammettσp値として負の値を有する基がより好ましい。また、前記Arは、置換基Yを複数個有していてもよく、この場合の置換基Yは、同一であっても異なっていてもよい。
【0019】
前記Arが有する置換基Yとしては、例えば、置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。
前記置換基Yが、置換アミノ基を表す場合、該置換アミノ基としては、炭素数1〜20のアルキルアミノ基、炭素数2〜20のジアルキルアミノ基、炭素数6〜10のアリールアミノ基、炭素数7〜20のN−アルキル−N−アリールアミノ基、炭素数2〜20のアシルアミノ基が好ましく、これらの基は更に1又は2以上の置換基を有していてもよい。また、前記アルキル基等の置換基同士が結合して環状アミノ基を形成してもよい。
前記置換基Yがアルキルチオ基を表す場合、炭素数1〜18のアルキルチオ基が好ましく、アリールチオ基を表す場合、炭素数6〜10のアリールチオ基が好ましく、アルコキシ基を表す場合、炭素数1〜18のアルコキシ基が好ましく、アリールオキシ基を表す場合、炭素数6〜10のアリールオキシ基が好ましく、これらの基は、更に1又は2以上の置換基を有していてもよい。
【0020】
前記置換基Yが表す置換アミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基におけるアルキル基、アリール基としては、以下のようなものが挙げられる。
【0021】
【化2】

【0022】
更に、前記置換基Yとしては、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、塩素原子、フッ素原子、炭素数1〜15のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルキルスルホニル基、炭素数6〜18のアリールスルホニル基、炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜18のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜12のスルホンアミド基、炭素数2〜13のカルボンアミド基、ニトロ基、及びシアノ基のいずれかが好ましい。
前記アルキル基、アルキルスルホニル基は、分岐していてもよく、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリールオキシ基、フェニル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、又はカルバモイル基で置換されていてもよい。
前記アリールスルホニル基は、ハロゲン原子、アルキル基、又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0023】
前記置換基Yとして具体的には、例えば、以下に示す置換基などが挙げられる。
【化3】

【0024】
前記置換基Yが、置換アミノ基を示す場合、置換基同士が結合して形成される環状アミノ基としては、例えば、以下の置換基などが挙げられる。
【0025】
【化4】

【0026】
前記一般式(I)中、Xで表される対アニオンとしては、例えば、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルカルボン酸(例えば、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロデカン酸、パーフルオロドデカン酸)、炭素数1〜20のパーフルオロアルキルスルホン酸(例えば、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロヘキサデカンスルホン酸)、炭素数7〜50の芳香族カルボン酸(例えば、4,4−ジ−t−ブチルサリチル酸、4−t−オクチルオキシ安息香酸、2−n−オクチルオキシ安息香酸、4−t−ヘキサデシル安息香酸、2,4−ビス−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−デシルナフトエ酸)、炭素数6〜50の芳香族スルホン酸(例えば、1,5−ナフタレンジスルホン酸、4−t−オクチルオキシベンゼンスルホン酸、4−n−ドデシルベンゼンスルホン酸)、4,5−ジ−t−ブチル−2−ナフトエ酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜16のパーフルオロアルキルカルボン酸、炭素数10〜40の芳香族カルボン酸、炭素数10〜40の芳香族スルホン酸、テトラフッ化ホウ酸、テトラフェニルホウ酸、ヘキサフルオロリン酸などが好ましい。
【0027】
前記ジアゾニウム塩の具体例としては、以下の化合物(1)〜(36)などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0028】
【化5】

【0029】
【化6】

【0030】
【化7】

【0031】
【化8】

【0032】
【化9】

【0033】
【化10】

【0034】
前記ジアゾニウム塩の前記記録層における塗布量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.05〜10mmol/mが好ましく、0.1〜3mmol/mがより好ましい。
【0035】
また、前記ジアゾニウム塩は、極大吸収波長が330〜1,000nmであることが好ましい。
【0036】
−カップリング成分−
前記カップリング成分は、前記ジアゾニウム塩の定着を行なうために用いられる。前記ジアゾニウム塩の定着は、前記ジアゾニウム塩とのカップリング反応により、前記ジアゾニウム塩を分解することにより行われる。
ここで、前記定着とは、干渉像の記録が終了した記録層に対して、記録に用いない材料の記録能力を失わせることを意味する。例えば、記録に用いないジアゾニウム塩が残存すると、再生時の再生光により前記ジアゾニウム塩が分解し、記録画像を乱すことがあるが、これを防ぐために、前記定着により前記ジアゾニウム塩を分解させることが好ましい。
【0037】
前記カップリング成分は、通常は前記ジアゾニウム塩と相互作用しないことが必要とされるので、前記ジアゾニウム塩が含有される微小容器外に隔離されて存在する。
そして、定着時に何らかのエネルギーを与えられる結果、微小容器はその隔離能力を失う。その結果、前記カップリング成分は、前記ジアゾニウム塩と相互作用しカップリング反応を起こす。このようにして、既に記録されたホログラム画像に対して悪影響のある窒素ガスを放出せずに、ジアゾニウム塩を分解することができる。
なお、定着時のエネルギーとしては、光、熱、圧力、磁気、などを単独もしくは複数組み合わせて用いることができる。
【0038】
前記カップリング成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、発色せずに定着を行なう観点から、ジアゾニウム塩とカップリング成分との反応生成物の、記録光源中心波長の吸光度が0.2以下であるものが好ましい。前記吸光度は、0.1以下がより好ましく、0.05以下が特に好ましい。なお、記録光源中心波長とは、記録に用いる光源における、最も光量の多い光の波長を意味する。
このようなカップリング成分としては、例えば、クロロアセトニトリル、ジクロロアセトニトリル、トリクロロアセトニトリル、マロニトリル、アルキル基の炭素原子数が1から12のマロン酸ジアルキルエステル、2,4−ジケトペンタン、1,5−ジクロロ−2,4−ジケトペンタン、アセトヒドロキサム酸、シクロヘキサンカルボヒドロキサム酸、ベンズヒドロキサム酸、フェニドン類、ヒドラジン類、アルキル基の炭素原子数が4から12のN−アルキルヒドロキシアミン、アルキル基の炭素原子数が4から12のジアルキルアミン、グアニジン類、アミジン類、アルキル基の炭素原子数が4から12のトリアルキルホスフィン、アルキル基の炭素原子数が4から12のトリアルキルフォスファイトなどが挙げられる。
【0039】
前記カップリング成分の記録層中における塗布量は、例えば、0.05〜500mmol/mが好ましく、0.1〜200mmol/mがより好ましい。
【0040】
前記ジアゾニウム塩とカップリング成分との記録層における含有量比は、例えば、モル比で、1:0.5〜1:50が好ましく、1:0.8〜1:30がより好ましく、1:1〜1:20が特に好ましい。
【0041】
−有機塩基−
本発明においては、ジアゾニウム塩化合物とカップリング成分とのカップリング反応を促進する目的で有機塩基を用いることが好ましい。
前記有機塩基としては、例えば、ピペラジン類、モルホリン類、ピぺリジン類、グアニジン類、第3級アミン類、アミジン類、ホルムアミジン類、ピリジン類等が挙げられる。
前記ピペラジン類としては、例えば、N,N’−ビス(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メチルフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(p−メトキシフェノキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N,N’−ビス(3−フェニルチオ−2−ヒドロキシプロピル)ピペラジン、N,N’−ビス〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル〕ピペラジン、N−3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシプロピル−N’−メチルピペラジン、1,4−ビス{〔3−(N−メチルピペラジノ)−2−ヒドロキシ〕プロピルオキシ)ベンゼン等が挙げられる。
前記モルホリン類としては、N−〔3−(β−ナフトキシ)−2−ヒドロキシ〕プロピルモルホリン、1,4−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−モルホリノ−2−ヒドロキシ−プロピルオキシ)ベンゼン等が挙げられる。
前記ピペリジン類としては、例えば、N−(3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル)ピペリジン、N−ドデシルピペリジン等が挙げられる。
前記グアニジン類としては、例えば、トリフェニルグアニジン、トリシクロヘキシルグアニジン、ジシクロヘキシルフェニルグアニジン等が挙げられる。
また、ヒドロキシ安息香酸エステル類として、例えば、4−ヒドロキシ安息香酸2−N−メチル−N−ベンジルアミノエチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸2−N,N−ジ-n−ブチルアミノエチルエステル等が挙げられる。
アミド類として、例えば、4−(3−N,N−ジブチルアミノプロポキシ)ベンゼンスルホンアミド、4−(2−N,N−ジブチルアミノエトキシカルボニル)フェノキシ酢酸アミド等が挙げられる。
これらの有機塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明に用いられる有機塩基の使用量については、特に制限はないが、ジアゾニウム塩化合物1モルに対して1〜100モルの範囲で使用することが好ましい。
【0042】
−微小容器−
前記微小容器は、ジアゾニウム塩を内包させ、前記記録層内の他の成分と前記ジアゾニウム塩を隔離することにより、本発明の光記録媒体の使用前の生保存性を向上させることができる機能がある。前記微小容器としてはマイクロカプセルが好ましい。
前記マイクロカプセルの大きさとしては、前記マイクロカプセルの中心径が、前記再生光の波長よりも小さいものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、0.4μm以下が好ましい。
前記マイクロカプセルの中心径が、0.4μmを超えると、光記録媒体の記録を再生する際に、前記光記録媒体に照射された再生光が散乱し、再生エラーを発生させることがある。
マイクロカプセルの中心径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粒子径測定装置、レーザ回折式粒子径分布測定装置、走査型電子顕微鏡などが挙げられる。
【0043】
前記マイクロカプセルの材料としては、常温では非透過性であるが、定着時に何らかのエネルギーを与えられた時に、透過性を示し、マイクロカプセル内のジアゾニウム塩とマイクロカプセル外のカップリング成分とを隔離する能力を失う特性のものが好ましい。
ここで、前記定着時のエネルギーとしては、既に述べた通りであるが、実用的な点から、前記定着は、熱エネルギーを施すことが好ましい。そのため、前記マイクロカプセルとしても、常温では非透過性を示し、加熱時に透過性を示す熱応答性マイクロカプセルが好ましい。
このような熱応答性マイクロカプセルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、高分子物質などが挙げられる。前記高分子物質としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ガラス転移温度が60〜200℃のものが好ましく、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、尿素・ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ポリスチレン、スチレン・メタクリレート共重合体、スチレン・アクリレート共重合体及びこれらの混合系などが挙げられる。
【0044】
前記マイクロカプセルのマイクロカプセル壁の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、界面重合法や内部重合法などの公知の方法の中から適宜選択することができる。該マイクロカプセル形成方法の詳細及びリアクタントの具体例等については、米国特許第3,726,804号、同第3,796,669号等の明細書に記載がある。例えば、マイクロカプセル壁材として、ポリウレア、ポリウレタンを用いる場合には、ポリイソシアネート及びそれと反応してマイクロカプセル壁を形成する第2物質(例えば、ポリオールやポリアミン)を水性媒体又はマイクロカプセル化すべき油性媒体中に混合し、水中でこれらを乳化分散し次に加温することにより油滴界面で高分子形成反応を起こしマイクロカプセル壁を形成する。なお、上記第2物質の添加を省略した場合もポリウレアを生成することができる。これらの中でも、ポリウレタン及びポリウレアの少なくともいずれかを用いる形成方法が、製造適性と熱応答感度に優れる点で好ましい。
【0045】
−マイクロカプセルの製造方法−
前記マイクロカプセルの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、以下のようなポリウレア・ポリウレタン壁からなるジアゾニウム塩内包のマイクロカプセルの製造方法などが挙げられる。
まず、ジアゾニウム塩は、マイクロカプセルの芯となる疎水性の有機溶媒に溶解又は分散させ、マイクロカプセルの芯となる油相を調製する。このとき、更に壁材として多価イソシアネートが添加される。
【0046】
前記油相の調製に際し、ジアゾニウム塩を溶解、分散してマイクロカプセルの芯の形成に用いる疎水性の有機溶媒としては、沸点100〜300℃の有機溶媒が好ましく、例えば、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルエタン、アルキルジフェニルメタン、アルキルビフェニル、アルキルターフェニル、塩素化パラフィン、リン酸エステル類、マレイン酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類、安息香酸エステル類、炭酸エステル類、エーテル類、硫酸エステル類、スルホン酸エステル類などが挙げられる。これらは2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
マイクロカプセル化しようとするジアゾニウム塩の前記有機溶媒に対する溶解性が劣る場合には、用いるジアゾニウム塩の溶解性の高い低沸点溶媒を補助的に併用することもでき、該低沸点溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、メチレンクロライド、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、アセトンなどが挙げられる。
このため、ジアゾニウム塩は、高沸点疎水性有機溶媒、低沸点溶媒に対する適当な溶解度を有していることが好ましく、具体的には、該溶剤に5%以上の溶解度を有していることが好ましい。水に対する溶解度は1%以下が好ましい。
【0048】
一方、用いる水相には水溶性高分子を溶解した水溶液を使用し、これに前記油相を投入後、ホモジナイザー等の手段により乳化分散を行うが、該水溶性高分子は、分散を均一かつ容易にするとともに、乳化分散した水溶液を安定化させる分散媒として作用する。ここで、更に均一に乳化分散し安定化させるためには、油相あるいは水相の少なくとも一方に界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は公知の乳化用界面活性剤が使用可能である。
界面活性剤を添加する場合の添加量は、油相質量に対して0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がより好ましい。
【0049】
調製された前記油相を分散する水溶性高分子水溶液に用いる水溶性高分子は、乳化しようとする温度における、水に対する溶解度が5%以上の水溶性高分子が好ましく、例えば、ポリビニルアルコール及びその変成物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−無水マレイン酸共重合体、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン−アクリル酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム、アルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0050】
前記水溶性高分子は、イソシアネート化合物との反応性がないか、若しくは低いことが好ましく、例えば、ゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは、予め変成する等して反応性をなくしておくことが好ましい。
【0051】
前記多価イソシアネート化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3官能以上のイソシアネート基を有する化合物が好ましく、2官能のイソシアネート化合物であってもよい。具体的には、キシレンジイソシアネート及びその水添物、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート及びその水添物、イソホロンジイソシアネート等のジイソシアネートを主原料とし、これらの2量体あるいは3量体(ビューレットあるいはイソシアヌレート)の他、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体として多官能としたもの、トリメチロールプロパン等のポリオールとキシリレンジイソシアネート等の2官能イソシアネートとのアダクト体にポリエチレンオキシド等の活性水素を有するポリエーテル等の高分子量化合物を導入した化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物などが挙げられる。
また、特開昭62−212190号公報、特開平4−26189号公報、特開平5−317694号公報、特願平8−268721号公報等に記載の化合物なども挙げられる。
【0052】
前記多価イソシアネートの使用量は、マイクロカプセルの平均粒径が0.3〜12μmで、壁厚みが0.01〜0.3μmとなるように決定される。また、その分散粒子径は、0.2〜10μm程度が一般的である。
水相中に油相を加えた乳化分散液中では、油相と水相の界面において多価イソシアネートの重合反応が生じてポリウレア壁が形成される。
【0053】
前記水相中又は油相の疎水性溶媒中に、更に、ポリオール及びポリアミンのいずれかを添加しておけば、多価イソシアネートと反応してマイクロカプセル壁の構成成分の一つとして用いることもできる。上記反応において、反応温度を高く保ち、あるいは、適当な重合触媒を添加することが反応速度を速める点で好ましい。
これらのポリオール又はポリアミンの具体例としては、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ソルビトール、ヘキサメチレンジアミンなどが挙げられる。ポリオールを添加した場合には、ポリウレタン壁が形成される。
多価イソシアネート、ポリオール、反応触媒、あるいは、壁剤の一部を形成させるためのポリアミン等については成書に詳しい(岩田敬治編 ポリウレタンハンドブック 日刊工業新聞社(1987))。
【0054】
前記乳化は、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミル等の公知の乳化装置の中から適宜選択して行うことができる。乳化後は、マイクロカプセル壁形成反応を促進させるために乳化物を30〜70℃に加温することが行われる。また、反応中はマイクロカプセル同士の凝集を防止するために、加水してマイクロカプセル同士の衝突確率を下げたり、十分な攪拌を行う等の必要がある。
【0055】
また、反応中に改めて凝集防止用の分散物を添加してもよい。重合反応の進行に伴って炭酸ガスの発生が観測され、その終息をもっておよそのマイクロカプセル壁形成反応の終点とみなすことができる。通常、数時間反応させることにより、目的のジアゾニウム塩内包マイクロカプセルを得ることができる。
【0056】
−バインダー樹脂−
前記バインダー樹脂は、塗膜性、膜強度、及びホログラム記録特性向上の効果を高める目的で使用されるものであり、ホログラム材料及び光熱変換物質との相溶性を考慮して適宜選択される。前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ゼラチン、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体;塩化ビニル、酢酸ビニルとビニルアルコール、マレイン酸及びアクリル酸の少なくともいずれかとの共重合体;塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体;塩化ビニル/アクリロニロリル共重合体;エチレン/酢酸ビニル共重合体;ニトロセルロース樹脂等のセルロース誘導体;ポリアクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ノボラック樹脂、可溶性ナイロン、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フォルマリン樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、分散性及び耐久性を更に高めるため、以上に挙げたバインダー樹脂分子中に、極性基(エポキシ基、COH、OH、NH、SOM、OSOM、PO、OPO(ただし、Mは水素原子、アルカリ金属、又はアンモニウムであり、一つの基の中に複数のMがあるときは互いに異なっていてもよい)を導入したものが好ましい。該極性基の含有量は、バインダー樹脂1グラム当り10−6〜10−4当量が好ましい。
以上列挙したバインダー樹脂は、ヘミアセタール系やイソシアネート系の公知の架橋剤を添加して硬化処理してもよい。
【0057】
前記記録層の固形分中のバインダー樹脂の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、10〜95質量%であることが好ましく、35〜90質量%であれることがより好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、安定な干渉像が得られないことがあり、95質量%を超えると、回折効率の点で望ましい性能が得られないことがある。
前記バインダー樹脂の記録層中における含有量は、全記録層固形分中、10〜95質量%が好ましく、35〜90質量%がより好ましい。
【0058】
前記記録層の形成は、例えば、湿式成膜法により、前記記録層材料を溶剤に溶解乃至分散させた溶液(塗布液)を用いる(塗布し乾燥する)ことにより、好適に行うことができる。該湿式成膜法としては、特に制限はなく、目的に応じて公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、インクジェット法、スピンコート法、ニーダーコート法、バーコート法、ブレードコート法、キャスト法、ディップ法、カーテンコート法などが挙げられる。
【0059】
前記記録層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜1,000μmが好ましく、100〜700μmがより好ましい。
前記記録層の厚みが、前記好ましい数値範囲であると、10〜300多重のシフト多重を行っても十分なS/N比を得ることができ、前記より好ましい数値範囲であるとそれが顕著である点で有利である。
【0060】
−支持体−
前記支持体としては、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状平板状、シート状などが挙げられ、前記構造としては、単層構造であってもいし、積層構造であってもよく、前記大きさとしては、前記光記録媒体の大きさ等に応じて適宜選択することができる。
【0061】
前記支持体の材料としては、特に制限はなく、無機材料及び有機材料のいずれをも好適に用いることができるが、光記録媒体の機械的強度を確保できるものであり、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する透過型の場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記無機材料としては、例えば、ガラス、石英、シリコン、などが挙げられる。
前記有機材料としては、例えば、トリアセチルセルロース等のアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリノルボルネン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、プラスチックフィルムラミネート紙、合成紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂が好ましい。
【0062】
前記支持体としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記支持体の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターなどにより回転して用いる場合には、過剰な負荷をかけることがある。
【0063】
<第一の形態における光記録再生方法>
前記第一の形態における光記録再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、本発明の光記録方法により記録された光記録媒体に対して、記録時の参照光の照射と、同一の方向から同じ光を照射することにより再生する方法などが挙げられる。前記光を前記光記録媒体の記録層に形成された干渉像に照射すると、該干渉像に対応した記録情報としての回折光が生成され、該回折光を受光することにより記録情報を再生することができる。
【0064】
〔第二の形態〕
前記第二の形態は、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行われるコリニア方式に用いられる光記録媒体の形態で、第一の基板と、支持体としての第二の基板と、該第二の基板上に記録層と、前記第二の基板と該記録層との間にフィルタ層とを有する光記録媒体などが挙げられる。
【0065】
<第二の形態における光記録方法及び光記録再生方法>
前記第二の形態における光記録方法は、前記光記録媒体に情報光及び参照光を同軸光束として照射し、該情報光と参照光との干渉による干渉パターンによって情報を記録層に記録するいわゆるコリニア方式による光記録方法である。
前記再生方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記光記録方法により記録層に形成された干渉像に参照光と同じ光を照射して該干渉像に対応した記録情報を再生することができる。
【0066】
前記第二の形態の光記録方法及び再生方法では、二次元的な強度分布が与えられた情報光と、該情報光と強度がほぼ一定な参照光とを感光性の記録層内部で重ね合わせ、それらが形成する干渉パターンを利用して記録層内部に光学特性の分布を生じさせることにより、情報を記録する。一方、書き込んだ情報を読み出す(再生する)際には、記録時と同様の配置で参照光のみを記録層に照射し、記録層内部に形成された光学特性分布に対応した強度分布を有する再生光として記録層から出射される。
ここで、前記第二の形態の光記録方法及び再生方法は、以下に説明する光記録再生装置を用いて行われる。
【0067】
前記光記録方法及び再生方法に使用される光記録再生装置について図11を参照して説明する。
図11は、前記第二の形態に係る光記録再生装置の全体構成図である。なお、光記録再生装置は、光記録装置と再生装置を含んでなる。
この光記録再生装置100は、光記録媒体20が取り付けられるスピンドル81と、このスピンドル81を回転させるスピンドルモータ82と、光記録媒体20の回転数を所定の値に保つようにスピンドルモータ82を制御するスピンドルサーボ回路83とを備えている。
また、光記録再生装置100は、光記録媒体20に対して情報光と記録用参照光とを照射して情報を記録すると共に、光記録媒体20に対して再生光を照射し、回折光を検出して、光記録媒体20に記録されている情報を再生するためのピックアップ31と、このピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動可能とする駆動装置84とを備えている。
【0068】
光記録再生装置100は、ピックアップ31の出力信号よりフォーカスエラー信号FE、トラッキングエラー信号TE、及び再生信号RFを検出するための検出回路85と、この検出回路85によって検出されるフォーカスエラー信号FEに基づいて、ピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズ(不図示)を光記録媒体20の厚み方向に移動させてフォーカスサーボを行うフォーカスサーボ回路86と、検出回路85によって検出されるトラッキングエラー信号TEに基づいてピックアップ31内のアクチュエータを駆動して対物レンズを光記録媒体20の半径方向に移動させてトラッキングサーボを行うトラッキングサーボ回路87と、トラッキングエラー信号TE及び後述するコントローラからの指令に基づいて駆動装置84を制御してピックアップ31を光記録媒体20の半径方向に移動させるスライドサーボを行うスライドサーボ回路88とを備えている。
【0069】
光記録再生装置100は、更に、ピックアップ31内の後述するCMOS又はCCDアレイの出力データをデコードして、光記録媒体20のデータエリアに記録されたデータを再生したり、検出回路85からの再生信号RFより基本クロックを再生したりアドレスを判別したりする信号処理回路89と、光記録再生装置100の全体を制御するコントローラ90と、このコントローラ90に対して、種々の指示を与える操作部91とを備えている。
コントローラ90は、信号処理回路89より出力される基本クロックやアドレス情報を入力すると共に、ピックアップ31、スピンドルサーボ回路83、及びスライドサーボ回路88等を制御するようになっている。スピンドルサーボ回路83は、信号処理回路89より出力される基本クロックを入力するようになっている。コントローラ90は、CPU(中央処理装置)、ROM(リード オンリ メモリ)、及びRAM(ランダム アクセス メモリ)を有し、CPUが、RAMを作業領域として、ROMに格納されたプログラムを実行することによって、コントローラ90の機能を実現するようになっている。なお、前記記録層としては、第一の形態に用いられた記録層と同様の記録層を用いることができる。
【0070】
<フィルタ層>
前記フィルタ層は、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることなく、情報光及び参照光による光記録媒体の反射膜からの乱反射を防止し、ノイズの発生を防止する機能がある。前記光記録媒体に前記フィルタ層を積層することにより、高解像度、回折効率の優れた光記録が得られる。
前記フィルタ層の機能は、第一の波長の光を透過し、該第一の波長の光と異なる第二の波長の光を反射することが好ましく、前記第一の波長の光が350〜600nmであり、かつ第二の波長の光が600〜900nmであることが好ましい。そのためには、光学系側から見て、記録層、フィルタ層、及びサーボビットパターンの順に積層されている構造の光記録媒体であることが好ましい。
また、前記フィルタ層は、入射角度±40°における、655nmでの光透過率が50%以上であり、80%以上が好ましく、かつ532nmでの光反射率が30%以上であり、40%以上が好ましい。
前記フィルタ層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、誘電体蒸着層、単層又は2層以上のコレステリック層、更に必要に応じてその他の層の積層体により形成される。また色材含有層を有していてもよい。
前記フィルタ層は、直接記録層など共に、前記第二の基板上に塗布などにより積層してもよく、フィルムなどの基材上に積層して光記録媒体用フィルタを作製し、該光記録媒体用フィルタを、第二の基板上に積層してもよい。
【0071】
−誘電体蒸着層−
前記誘電体蒸着層は、互いに屈折率の異なる誘電体薄膜を複数層積層してなり、波長選択反射膜とするためには、高屈折率の誘電体薄膜と低屈折率の誘電体薄膜とを交互に複数層積層することが好ましいが、2種以上に限定されず、それ以上の種類であってもよい。また色材含有層を設ける場合は、誘電体蒸着層の下に形成する。
前記積層数は、2〜20層が好ましく、2〜12層がより好ましく、4〜10層が更に好ましく、6〜8層が特に好ましい。前記積層数が、20層を超えると、多層蒸着により生産効率性が低下し、本発明の目的及び効果を達成できなくなることがある。
【0072】
前記誘電体薄膜の積層順については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、隣接する膜の屈折率が高い場合にはそれより低い屈折率の膜を最初に積層する。その逆に隣接する層の屈折率が低い場合にはそれより高い屈折率の膜を最初に積層する。前記屈折率が高いか低いかを決めるしきい値は、1.8が好ましい。なお、屈折率が高いか低いかは絶対的なものではなく、高屈折率の材料の中でも、相対的に屈折率の大きいものと小さいものとが存在してもよく、これらを交互に使用してもよい。
【0073】
前記高屈折率の誘電体薄膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Sb、Sb、Bi、CeO、CeF、HfO、La、Nd、Pr11、Sc、SiO、Ta、TiO、TlCl、Y、ZnSe、ZnS、ZrOなどが挙げられる。これらの中でも、Bi、CeO、CeF、HfO、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOが好ましく、これらの中でも、SiO、Ta、TiO、Y、ZnSe、ZnS、ZrOがより好ましい。
【0074】
前記低屈折率の誘電体薄膜の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Al、BiF、CaF、LaF、PbCl、PbF、LiF、MgF、MgO、NdF、SiO、Si、NaF、ThO、ThFなどが挙げられる。これらの中でも、Al、BiF、CaF、MgF、MgO、SiO、Siが好ましく、これらの中でも、Al、CaF、MgF、MgO、SiO、Siがより好ましい。
なお、前記誘電体薄膜の材料においては、原子比についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、成膜時に雰囲気ガス濃度を変えることにより、原子比を調整することができる。
【0075】
前記誘電体薄膜の成膜方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオンプレーティング、イオンビーム等の真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相成長法(PVD法)、化学的気相成長法(CVD法)などが挙げられる。これらの中でも、真空蒸着法、スパッタリングが好ましく、スパッタリングがより好ましい。
前記スパッタリングとしては、成膜レートの高いDCスパッタリング法が好ましい。なお、DCスパッタリング法においては、導電性が高い材料を用いることが好ましい。
また、前記スパッタリングにより多層成膜する方法としては、例えば、(1)1つのチャンバで複数のターゲットから交互又は順番に成膜する1チャンバ法、(2)複数のチャンバで連続的に成膜するマルチチャンバ法とがある。これらの中でも、生産性及び材料コンタミネーションを防ぐ観点から、マルチチャンバ法が特に好ましい。
前記誘電体薄膜の膜厚は、光学波長オーダーで、λ/16〜λの膜厚が好ましく、λ/8〜3λ/4がより好ましく、λ/6〜3λ/8が特に好ましい。
【0076】
−コレステリック液晶層−
前記コレステリック液晶層は、少なくとも、コレステロール誘導体、又はネマチック液晶化合物及びカイラル化合物を含有してなり、重合性モノマー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
前記コレステリック液晶層は、単層コレステリック液晶層及び2層以上の複数層コレステリック液晶層のいずれであってもよい。
【0077】
前記コレステリック液晶層としては、円偏光分離機能を有するものが好ましい。前記円偏光分離機能を有するコレステリック液晶層は、液晶の螺旋の回転方向(右回り又は左回り)と円偏光方向とが一致し、波長が液晶の螺旋ピッチであるような円偏光成分の光だけを反射する選択反射特性を有する。このコレステリック液晶層の選択反射特性を利用して、一定の波長帯域の自然光から、特定波長の円偏光のみを透過分離し、その残りを反射する。
【0078】
前記光記録媒体用フィルタは、垂直入射を0°とし±20°の範囲であるλ〜λ/cos20°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが好ましく、垂直入射を0°とし±40°の範囲であるλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であることが特に好ましい。前記λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上であれば、照射光反射の角度依存性を解消でき、通常の光記録媒体に用いられているレンズ光学系を採用することができる。このためにはコレステリック液晶層の選択反射波長幅が大きいことが好ましい。
具体的には、(1)単層コレステリック液晶層の場合には、コレステリック液晶層の選択反射波長領域幅Δλは、下記数式1で表されことから、(ne−no)の大きな液晶を用いることが好ましい。
<数式1>
Δλ=2λ(ne−no)/(ne+no)
ただし、前記数式1中、noは、コレステリック液晶層に含有されるネマチック液晶分子の正常光に対する屈折率を表す。neは、該ネマチック液晶分子の異常光に対する屈折率を表す。λは、選択反射の中心波長を表す。
また、特願2004−352081号明細書記載のように、カイラル化合物として感光性を有し、光によって液晶の螺旋ピッチを大きく変化させることができる光反応型カイラル化合物を用い、該光反応型カイラル化合物の含有量やUV照射時間を調整することにより、螺旋ピッチを液晶層の厚み方向に連続的に変化した光記録媒体用フィルタを用いることが好ましい。
【0079】
また、(2)複数層コレステリック液晶層の場合には、選択反射中心波長が互いに異なり、前記各コレステリック液晶層の螺旋の回転方向が互いに同じであるコレステリック液晶層を積層することが好ましい。
前記コレステリック液晶層は、上記特性を満たせば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述したように、ネマチック液晶化合物、及びカイラル化合物を含有してなり、重合性モノマー、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0080】
−−ネマチック液晶化合物−−
前記ネマチック液晶化合物は、液晶転移温度以下では、その液晶相が固定化することを特徴とし、その屈折率異方性Δnが、0.10〜0.40の液晶化合物、高分子液晶化合物、及び重合性液晶化合物の中から目的に応じて適宜選択することができる。溶融時の液晶状態にある間に、例えば、ラビング処理等の配向処理を施した配向基板を用いるなどにより配向させ、そのまま冷却等して固定化させることにより固相として使用することができる。
【0081】
前記ネマチック液晶化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、十分な硬化性を確保する観点から、分子内に重合性基を有するネマチック液晶化合物が好ましく、これらの中でも、紫外線(UV)重合性液晶が好適である。該UV重合性液晶としては、市販品を用いることができ、例えば、BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC242;Merck社製の商品名E7;Wacker−Chem社製の商品名LC−Sllicon−CC3767;高砂香料株式会社製の商品名L35、L42、L55、L59、L63、L79、L83などが挙げられる。
【0082】
前記ネマチック液晶化合物の含有量は、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し30〜99質量%が好ましく、50〜99質量%がより好ましい。前記含有量が30質量%未満であると、ネマチック液晶化合物の配向が不十分となることがある。
【0083】
−−カイラル化合物−−
前記カイラル化合物としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、液晶化合物の色相、色純度改良の観点から、例えば、イソマンニド化合物、カテキン化合物、イソソルビド化合物、フェンコン化合物、カルボン化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記カイラル化合物としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、Merck社製の商品名S101、R811、CB15;BASF社製の商品名PALIOCOLOR LC756などが挙げられる。
【0084】
前記コレステリック液晶層の各液晶層におけるカイラル化合物の含有量は、前記各コレステリック液晶層の全固形分質量に対し30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。前記含有量が30質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0085】
−−重合性モノマー−−
前記コレステリック液晶層には、例えば、膜強度等の硬化の程度を向上させる目的で重合性モノマーを併用することができる。該重合性モノマーを併用すると、光照射による液晶の捻れ力を変化(パターンニング)させた後(例えば、選択反射波長の分布を形成した後)、その螺旋構造(選択反射性)を固定化し、固定化後のコレステリック液晶層の強度をより向上させることができる。ただし、前記液晶化合物が同一分子内に重合性基を有する場合には、必ずしも添加する必要はない。
前記重合性モノマーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレン性不飽和結合を持つモノマーなどが挙げられ、具体的には、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等の多官能モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記重合性モノマーの添加量は、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し50質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。前記添加量が50質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向を阻害することがある。
【0086】
−−その他の成分−−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、光重合開始剤、増感剤、バインダー樹脂、重合禁止剤、溶媒、界面活性剤、増粘剤、色素、顔料、紫外線吸収剤、ゲル化剤などが挙げられる。
【0087】
前記光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、p−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ジメチルベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール、ベンジルジメチルケタール、アシルホスフィン誘導体、チオキサントン/アミンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記光重合開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、チバスペシャルティケミカルズ社製の商品名イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア784、イルガキュア814;BASF社製の商品名ルシリンTPOなどが挙げられる。
【0088】
前記光重合開始剤の添加量は、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。前記添加量が0.1質量%未満であると、光照射時の硬化効率が低いため長時間を要することがあり、20質量%を超えると、紫外線領域から可視光領域での光透過率が劣ることがある。
【0089】
前記増感剤は、必要に応じてコレステリック液晶層の硬化度を上げるために添加することができる。
前記増感剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントンなどが挙げられる。
前記増感剤の添加量は、前記コレステリック液晶層の全固形分質量に対し0.001〜1.0質量%が好ましい。
【0090】
前記バインダー樹脂としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリビニルアルコール;ポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン等のポリスチレン化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース樹脂;側鎖にカルボキシル基を有する酸性セルロース誘導体;ポリビニルフォルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂;メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体;アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマー;その他の水酸基を有するポリマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー又はメタアクリル酸アルキルエステルのホモポリマーにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、2−エチルヘキシル基などが挙げられる。
前記その他の水酸基を有するポリマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタアクリル酸のホモポリマー)アクリル酸共重合体、ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/他のモノマーの多元共重合体などが挙げられる。
【0091】
前記バインダー樹脂の添加量は、前記コレステリック液晶層の全固形質量に対し80質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。前記添加量が80質量%を超えると、コレステリック液晶層の配向が不十分となることがある。
【0092】
前記重合禁止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、フェノチアジン、ベンゾキノン、又はこれらの誘導体などが挙げられる。
前記重合禁止剤の添加量は、前記重合性モノマーの固形分に対し10質量%以下が好ましく、100ppm〜1質量%がより好ましい。
【0093】
前記溶媒としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、3−メトキシプロピオン酸メチルエステル、3−メトキシプロピオン酸エチルエステル、3−メトキシプロピオン酸プロピルエステル、3−エトキシプロピオン酸メチルエステル、3−エトキシプロピオン酸エチルエステル、3−エトキシプロピオン酸プロピルエステル等のアルコキシプロピオン酸エステル類;2−メトキシプロピルアセテート、2−エトキシプロピルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のアルコキシアルコールのエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸エステル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、クロロホルム、テトラヒドロフラン、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0094】
前記コレステリック液晶層の形成方法としては、例えば、前記溶媒を用いて調製したコレステリック液晶層用塗布液(複数層の場合には各コレステリック液晶層用塗布液)を前記基材上に塗布し、乾燥させて、例えば紫外線照射することにより、コレステリック液晶層を形成することができる。
最も量産適性のよい手法としては、前記基材をロール状に巻いた形で準備しておき、該基材上にコレステリック液晶層用塗布液をバーコート、ダイコート、ブレードコート、カーテンコートのような長尺連続コーターにて塗布する形式が好ましい。
【0095】
前記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、キャスト法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法などが挙げられる。
前記紫外線照射の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、照射紫外線は、160〜380nmが好ましく、250〜380nmがより好ましい。照射時間は、例えば、0.1〜600秒が好ましく、0.3〜300秒がより好ましい。紫外線照射の条件を調整することによって、前記反応性カイラル剤を用いた光コレステリック液晶層における螺旋ピッチを液晶層の厚み方向に沿って連続的に変化させることができる。
【0096】
前記紫外線照射の条件を調整するために、前記コレステリック液晶層に紫外線吸収剤を添加することもできる。該紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤などが好適に挙げられる。これらの紫外線吸収剤の具体例としては、特開昭47−10537号公報、同58−111942号公報、同58−212844号公報、同59−19945号公報、同59−46646号公報、同59−109055号公報、同63−53544号公報、特公昭36−10466号公報、同42−26187号公報、同48−30492号公報、同48−31255号公報、同48−41572号公報、同48−54965号公報、同50−10726号公報、米国特許第2,719,086号明細書、同第3,707,375号明細書、同第3,754,919号明細書、同第4,220,711号明細書などに記載されている。
【0097】
前記複数層の場合には各コレステリック液晶層の厚みは、例えば、1〜10μmが好ましく、2〜7μmがより好ましい。前記厚みが1μm未満であると、選択反射率が十分でなくなり、10μmを超えると、液晶層の均一配向が乱れてしまうことがある。
また、各コレステリック液晶層の合計厚み(単層の場合にはコレステリック液晶層の厚み)は、例えば、1〜30μmが好ましく、3〜10μmがより好ましい。
【0098】
<光記録媒体用フィルタの製造方法>
前記フィルタ層は、光記録媒体用フィルタにより形成されてもよい。前記光記録媒体用フィルタの製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記光記録媒体用フィルタは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、基材と該基材上に形成される前記フィルタ層とからなり、前記基材ごとディスク形状に加工(例えば打ち抜き加工)されて、光記録媒体の第二の基板上に配置されるのが好ましい。また、光記録媒体のフィルタ層に用いる場合には、基材を介さず直接第二の基板上に設けることもできる。
【0099】
−基材−
前記基材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記第一の形態に用いられた支持体と同じ材料を用いることができる。
【0100】
前記基材としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
前記基材の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、10〜500μmが好ましく、50〜300μmがより好ましい。前記基材の厚みが、10μm未満であると、基板の撓みにより密着性が低下することがある。一方、500μmを超えると、情報光と参照光の焦点位置を大きくずらさなければならなくなり、光学系サイズが大きくなってしまう。波長選択膜の貼り合わせには、それぞれ公知の接着剤を任意に組み合わせて使用することができる。
前記粘着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤などが挙げられる。
前記接着剤又は前記粘着剤の塗布厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光学特性や薄型化の観点から、接着剤の場合、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、粘着剤の場合、1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましい。
【0101】
<基板>
前記基板は、その形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記形状としては、例えば、ディスク形状、カード形状などが挙げられ、光記録媒体の機械的強度を確保できる材料のものを選定する必要がある。また、記録及び再生に用いる光が基板を通して入射する場合は、用いる光の波長領域で十分に透明であることが必要である。
前記基板材料としては、通常、ガラス、セラミックス、樹脂、などが用いられるが、成形性、コストの点から、樹脂が特に好適である。
前記樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ABS樹脂、ウレタン樹脂、などが挙げられる。これらの中でも、成形性、光学特性、コストの点から、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂が特に好ましい。
前記基板としては、適宜合成したものであってもよいし、市販品を使用してもよい。
【0102】
前記基板には、半径方向に線状に延びる複数の位置決め領域としてのアドレス−サーボエリアが所定の角度間隔で設けられ、隣り合うアドレス−サーボエリア間の扇形の区間がデータエリアになっている。アドレス−サーボエリアには、サンプルドサーボ方式によってフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを行うための情報とアドレス情報とが、予めエンボスピット(サーボピット)等によって記録されている(プリフォーマット)。なお、フォーカスサーボは、反射膜の反射面を用いて行うことができる。トラッキングサーボを行うための情報としては、例えば、ウォブルピットを用いることができる。なお、光記録媒体がカード形状の場合には、サーボピットパターンは無くてもよい。
【0103】
前記基板の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、0.1〜5mmが好ましく、0.3〜2mmがより好ましい。前記基板の厚みが、0.1mm未満であると、ディスク保存時の形状の歪みを抑えられなくなることがあり、5mmを超えると、ディスク全体の重量が大きくなってドライブモーターに過剰な負荷をかけることがある。
【0104】
<その他の層>
前記第二の形態における光記録媒体は、更に必要に応じて、反射膜、第1ギャップ層、第2ギャップ層などのその他の層を有してもよい。
【0105】
−反射膜−
前記反射膜は、前記基板のサーボピットパターン表面に形成される。
前記反射膜の材料としては、記録光や参照光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。使用する光の波長が400〜780nmである場合には、例えば、Al、Al合金、Ag、Ag合金、などを使用することが好ましい。使用する光の波長が650nm以上である場合には、Al、Al合金、Ag、Ag合金、Au、Cu合金、TiN、などを使用することが好ましい。
なお、前記反射膜として、光を反射すると共に、追記及び消去のいずれかが可能な光記録媒体、例えば、DVD(ディジタル ビデオ ディスク)などを用い、ホログラムをどのエリアまで記録したかとか、いつ書き換えたかとか、どの部分にエラーが存在し交替処理をどのように行ったかなどのディレクトリ情報などをホログラムに影響を与えずに追記及び書き換えすることも可能となる。
【0106】
前記反射膜の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、各種気相成長法、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマCVD法、光CVD法、イオンプレーティング法、電子ビーム蒸着法などが用いられる。これらの中でも、スパッタリング法が、量産性、膜質等の点で優れている。
前記反射膜の厚さは、十分な反射率を実現し得るように、50nm以上が好ましく、100nm以上がより好ましい。
【0107】
−第1ギャップ層−
前記第1ギャップ層は、必要に応じて前記フィルタ層と前記反射膜との間に設けられ、第二の基板表面を平滑化する目的で形成される。また、記録層内に生成されるホログラムの大きさを調整するのにも有効である。即ち、前記記録層は、記録用参照光及び情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるので、前記記録層とサーボピットパターンとの間にギャップを設けることが有効となる。
前記第1ギャップ層は、例えば、サーボピットパターンの上から紫外線硬化樹脂等の材料をスピンコート等で塗布し、硬化させることにより形成することができる。また、フィルタ層として透明基材の上に塗布形成した光記録媒体用フィルタを使用する場合には、該透明基材が第1ギャップ層としても働くことになる。
前記第1ギャップ層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0108】
−第2ギャップ層−
前記第2ギャップ層は、必要に応じて記録層とフィルタ層との間に設けられる。
前記第2ギャップ層の材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリスルホン(PSF)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル=ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のような透明樹脂フィルム、又は、JSR社製商品名ARTONフィルムや日本ゼオン社製商品名ゼオノアのような、ノルボルネン系樹脂フィルム、などが挙げられる。これらの中でも、等方性の高いものが好ましく、TAC、PC、商品名ARTON、及び商品名ゼオノアが特に好ましい。
前記第2ギャップ層の厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、1〜200μmが好ましい。
【0109】
ここで、前記反射膜、前記第1及び前記第2ギャップ層を有する本発明の光記録媒体の具体例1〜6について、図面を参照して更に詳しく説明する。
<光記録媒体の具体例1>
図4は、本発明の具体例1における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この具体例1に係る光記録媒体21では、ポリカーボネート樹脂又はガラスの第二の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3上にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。なお、図4では第二の基板1全面にサーボピットパターン3が形成されているが、図3に示すように周期的に形成されていてもよい。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1,750Å(175nm)であり、基板を始め他の層の厚さに比べて充分に小さいものである。
【0110】
第1ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を第二の基板1の反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。第1ギャップ層8は、反射膜2を保護すると共に、記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、記録層4において記録用参照光と情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるため、記録層4とサーボピットパターン3との間にギャップを設けると有効である。
第1ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6と第一の基板5(ポリカーボネート樹脂基板やガラス基板)によって記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
【0111】
図4において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層からなる。このコレステリック液晶層からなるフィルタ層6は、第1ギャップ層8上に塗布によって直接形成してもよいし、基材上にコレステリック液晶層を形成したフィルムを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層によって、λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上となり、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることがなくなる。
【0112】
具体例1における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよい。カード形状の場合にはサーボピットパターンは無くてもよい。また、この光記録媒体21では、第二の基板1は0.6mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は2〜3μm、記録層4は0.6mm、第一の基板5は0.6mmの厚さであって、合計厚みは約1.9mmとなっている。
【0113】
次に、図10を参照して、光記録媒体21周辺での光学的動作を説明する。まず、サーボ用レーザから出射した光(赤色光)は、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、対物レンズ12を通過する。対物レンズ12によってサーボ用光は反射膜2上で焦点を結ぶように光記録媒体21に対して照射される。つまり、ダイクロイックミラー13は緑色や青色の波長の光を透過し、赤色の波長の光をほぼ100%反射させるようになっている。光記録媒体21の光の入出射面Aから入射したサーボ用光は、第一の基板5、記録層4、フィルタ層6、及び第1ギャップ層8を通過し、反射膜2で反射され、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、記録層4、及び第一の基板5を透過して入出射面Aから出射する。出射した戻り光は、対物レンズ12を通過し、ダイクロイックミラー13でほぼ100%反射して、サーボ情報検出器(不図示)でサーボ情報が検出される。検出されたサーボ情報は、フォーカスサーボ、トラッキングサーボ、スライドサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。また、サーボ用光の反射膜2による戻り光は、ダイクロイックミラー13によってほぼ100%反射するようになっているので、サーボ用光が再生像検出のためのCMOSセンサ又はCCD14で検出されることはなく、再生光に対してノイズとなることもない。
なお、図12に示したλ〜1.3λの反射域は、λ=532nmのとき1.3λ=692nmとなり、サーボ光が655nmの場合はサーボ光を反射してしまう。ここに示すλ〜1.3λの範囲はフィルタ層における±40°入射光への適性であるが、実際にそうした大きな斜め光まで使用する場合は、入射角±20°以内のサーボ光をマスキングして使用すれば支障なくサーボ制御できる。また、使用するフィルタ層におけるコレステリック液晶層の螺旋ピッチを十分大きくすれば、フィルタ層内での入射角を±20°以内で全て設計することも容易であり、その場合は図13に示すλ〜1.1λのコレステリック液晶層でよいのでサーボ光透過には全く支障がなくなる。
【0114】
また、記録用/再生用レーザから生成された情報光及び記録用参照光は、偏光板16を通過して線偏光となりハーフミラー17を通過して1/4波長板15を通った時点で円偏光になる。ダイクロイックミラー13を透過し、対物レンズ12によって情報光と記録用参照光が記録層4内で干渉パターンを生成するように光記録媒体21に照射される。情報光及び記録用参照光は入出射面Aから入射し、記録層4で干渉し合って干渉パターンをそこに生成する。その後、情報光及び記録用参照光は記録層4を通過し、フィルタ層6に入射するが、該フィルタ層6の底面までの間に反射されて戻り光となる。つまり、情報光と記録用参照光は反射膜2までは到達しない。フィルタ層6は螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層から形成され、赤色光のみを透過する性質を有するからである。あるいは、フィルタ層を漏れて通過する光を入射光強度の20%以下に抑えていれば、たとえその漏れ光が底面に到達して戻り光となっても、再度フィルタ層で反射されるので再生光へ混じる光強度は20%×20%=4%以下となり、実質的に問題とはならない。
【0115】
<光記録媒体の具体例2>
図5は、本発明の具体例2における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この具体例2に係る光記録媒体22では、ポリカーボネート樹脂又は第二の基板1にサーボピットパターン3が形成され、該サーボピットパターン3表面にアルミニウム、金、白金等でコーティングして反射膜2が設けられている。また、このサーボピットパターン3の高さは、通常1,750Å(175nm)である点については、前記具体例1と同様である。
【0116】
前記具体例2と前記具体例1の構造の差異は、前記具体例2に係る光記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第2ギャップ層7が設けられていることである。
【0117】
螺旋ピッチが液晶層の厚み方向に連続的に変化した単層のコレステリック液晶層からなるフィルタ層6は、第1ギャップ層8を形成した後、該第1ギャップ層8上に形成され、前記具体例1と同様のものを用いることができる。
【0118】
第2ギャップ層7は、情報光及び再生光がフォーカシングするポイントが存在する。このエリアをフォトポリマーで埋めていると過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり多重記録能が下がってしまう。そこで、無反応で透明な第2ギャップ層を設けることが有効となる。
【0119】
また、光記録媒体22では、第二の基板1は1.0mm、第1ギャップ層8は100μm、フィルタ層6は3〜5μm、第2ギャップ層7は70μm、記録層4は0.6mm、第一の基板5は0.4mmの厚みであって、合計厚みは約2.2mmとなっている。
【0120】
情報の記録又は再生を行う場合、このような構造を有する光記録媒体22に対して、赤色のサーボ用光及び緑色の情報光並びに記録及び再生用参照光が照射される。サーボ用光は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7、フィルタ層6、及び第1ギャップ層8を通過して反射膜2で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第1ギャップ層8、フィルタ層6、第2ギャップ層7、記録層4及び第一の基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。出射した戻り光は、フォーカスサーボやトラッキングサーボ等に用いられる。記録層4を構成するホログラム材料は、赤色の光では感光しないようになっているので、サーボ用光が記録層4を通過したり、サーボ用光が反射膜2で乱反射したとしても、記録層4には影響を与えない。緑色の情報光等は、入出射面Aから入射し、記録層4、第2ギャップ層7を通過して、フィルタ層6で反射して戻り光となる。この戻り光は、再度、第2ギャップ層7、記録層4及び第一の基板5をこの順序で通過して、入出射面Aより出射する。また、再生時についても再生用参照光はもちろん、再生用参照光を記録層4に照射することによって発生する回折光も反射膜2に到達せずに入出射面Aから出射する。なお、光記録媒体22周辺(図10における対物レンズ12、フィルタ層6、検出器たるCMOSセンサ又はCCD14)での光学的動作は、具体例1(図10)と同様なので説明を省略する。
【0121】
<光記録媒体の具体例3>
図6は、前記具体例3における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この具体例3に係る光記録媒体21では、フィルタ層6以外は具体例1と同様に構成される。
【0122】
図6において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、色材含有層6b上に、互いに屈折率の異なる誘電体薄膜が7層積層された誘電体蒸着層とを形成した積層体である。この色材含有層と誘電体蒸着膜との組み合わせであるフィルタ層6は、第1ギャップ層8上に塗布及び蒸着により直接形成してもよいし、基材上に色材含有層及び誘電体蒸着膜を形成したフィルムを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。フィルタ層として色材含有層と誘電体蒸着膜との組み合わせを用いることによって、入射角度±40°における、655nmでの光透過率が50%以上であり、かつ532nmでの光反射率が30%以上となり、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることがなくなる。
【0123】
前記具体例3における光記録媒体21の形状は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよく、具体例1と同様に形成される。
【0124】
<光記録媒体の具体例4>
図7は、前記具体例4における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この第二の実施形態に係る光記録媒体22では、フィルタ層6以外は具体例1と同様に構成される。
【0125】
前記具体例4と前記具体例3の構造の差異は、前記具体例4に係る光記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第2ギャップ層7が設けられていることである。
【0126】
色材含有層と誘電体蒸着膜との組み合わせであるフィルタ層6は、第1ギャップ層8を形成した後、該第1ギャップ層8上に形成され、前記第一実施形態と同様のものを用いることができる。
【0127】
第2ギャップ層7は、情報光及び再生光がフォーカシングするポイントが存在する。このエリアをフォトポリマーで埋めていると過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり多重記録能が下がってしまう。そこで、無反応で透明な第2ギャップ層を設けることが有効となる。
【0128】
また、光記録媒体22では、第二の基板1及び第一の基板5は具体例2と同様に形成される。
【0129】
<光記録媒体の具体例5>
ここで、前記具体例5について、図面を参照して更に詳しく説明する。
図8は、前記具体例5における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この具体例5に係る光記録媒体21は、フィルタ層6以外は具体例1と同様に構成される。
【0130】
第1ギャップ層8は、紫外線硬化樹脂等の材料を第二の基板1の反射膜2上にスピンコート等により塗布して形成される。第1ギャップ層8は、反射膜2を保護すると共に、記録層4内に生成されるホログラムの大きさを調整するためにも有効である。つまり、記録層4において記録用参照光と情報光の干渉領域をある程度の大きさに形成する必要があるため、記録層4とサーボピットパターン3との間にギャップを設けると有効である。
第1ギャップ層8上にはフィルタ層6が設けられ、該フィルタ層6と第一の基板5(ポリカーボネート樹脂基板やガラス基板)によって記録層4を挟むことによって光記録媒体21が構成される。
【0131】
図8において、フィルタ層6は、赤色光のみを透過し、それ以外の色の光を通さないものである。従って、情報光、記録及び再生用参照光は緑色又は青色の光であるので、フィルタ層6を透過せず、反射膜2まで達することなく、戻り光となり、入出射面Aから出射することになる。
このフィルタ層6は、コレステリック液晶層6c、6d、及び6eが3層積層された積層体である。このコレステリック液晶層の積層体であるフィルタ層6は、第1ギャップ層8上に塗布によって直接形成してもよいし、基材上に3層積層したコレステリック液晶層を形成したフィルムを光記録媒体形状に打ち抜いて配置してもよい。コレステリック液晶層を3層積層することによって、λ〜λ/cos20°、特にλ〜λ/cos40°(ただし、λは照射光波長を表す)における光反射率が40%以上となり、入射角が変化しても選択反射波長にずれが生じることがなくなる。
【0132】
前記具体例5における光記録媒体21は、ディスク形状でもいいし、カード形状であってもよく、具体例1と同様に形成される。
【0133】
<光記録媒体の具体例6>
図9は、前記具体例6における光記録媒体の構成を示す概略断面図である。この具体例6に係る光記録媒体22では、フィルタ層6以外は具体例5と同様に構成される。
【0134】
前記具体例6と前記具体例5との構造の差異は、前記具体例6に係る光記録媒体22では、フィルタ層6と記録層4との間に第2ギャップ層7が設けられていることである。
【0135】
コレステリック液晶層の3層積層体であるフィルタ層6は、第1ギャップ層8を形成した後、該第1ギャップ層8上に形成され、前記具体例1と同様のものを用いることができる。
【0136】
第2ギャップ層7は、情報光及び再生光がフォーカシングするポイントが存在する。このエリアをフォトポリマーで埋めていると過剰露光によるモノマーの過剰消費が起こり多重記録能が下がってしまう。そこで、無反応で透明な第2ギャップ層を設けることが有効となる。
また、光記録媒体22では、第二の基板1及び第一の基板5は具体例2同様に形成される。
【0137】
(光記録媒体の製造方法)
本発明の光記録媒体の製造方法は、記録層形成工程を少なくとも含んでなり、更に必要に応じて、フィルタ層形成工程、反射膜形成工程などのその他の工程を含んでなる。なお、前記記録層形成工程及び反射層形成工程は、それぞれ記録層、反射層を形成する工程であり、その形成方法は既に述べた通りである。
【0138】
−フィルタ層形成工程−
前記フィルタ層形成工程は、本発明の前記光記録媒体用フィルタを光記録媒体形状に加工し、該加工したフィルタを前記第二の基板に貼り合わせてフィルタ層を形成する工程である。
ここで、本発明の前記光記録媒体用フィルタの製造方法については、上述した通りである。
前記光記録媒体形状としては、ディスク形状、カード形状、などが挙げられる。
前記加工としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、プレスカッターによる切り出し加工、打ち抜きカッターによる打ち抜き加工、などが挙げられる。
前記貼り合わせでは、例えば、接着剤、粘着剤、などを用いて気泡が入らないようにフィルタを基板に貼り付ける。
前記接着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、UV硬化型、エマルジョン型、一液硬化型、二液硬化型等の各種接着剤が挙げられ、それぞれ公知の接着剤を任意に組み合わせて使用することができる。
前記粘着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリルアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、などが挙げられる。
前記接着剤又は前記粘着剤の塗布厚みは、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、光学特性や薄型化の観点から、接着剤の場合、0.1〜10μmが好ましく、0.1〜5μmがより好ましい。また、粘着剤の場合、1〜50μmが好ましく、2〜30μmがより好ましい。
【0139】
なお、場合によっては、基板上に直接フィルタ層を形成することもできる。例えば、基板上に色材含有層用塗布液を塗布して色材含有層を形成し、該色材含有層上にスパッタリング法により誘電体蒸着膜を形成する方法などが挙げられる。
【実施例】
【0140】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0141】
(実施例1)
(1)記録層形成液の調製
以下、順次、混合液(I)、マイクロカプセル液(II)、マイクロカプセル液(III)、及びカップリング成分乳化分散液(IV)を得た後に、マイクロカプセル液(III)とカップリング成分乳化分散液(IV)とを混合し、記録層形成液(V)として調製した。
【0142】
酢酸エチル16.1gに、ジアゾニウム塩化合物(例示化合物(35))4.3g、スクアラン6.8g、モノイソプロピルビフェニル2.8gを添加し、45℃に加熱して均一に溶解した。この混合液にカプセル壁材としてキシリレンジイソシアネート/トリメチロールプロパン付加物とキシリレンジイソシアネート/ビスフェノールA付加物との混合物(商品名;タケネートD119N(50質量%酢酸エチル溶液)、武田薬品工業(株)製)7.9gを添加し、均一に撹拌し混合液(I)を得た。
【0143】
別途、ポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA−105、(株)クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液5gとシリカ変性ポリビニルアルコール水溶液(商品名:R−1130、(株)クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液80gとのポリビニルアルコール混合水溶液に対し、混合液(I)を添加し、ホモジナイザー(日本精機製作所(株)製)を用いて外温10℃で乳化分散した。得られた乳化液に水20gを加えて均一化した後、外温40℃で撹拌して酢酸エチルを除去しながら3時間カプセル化反応を行った。この後、イオン交換樹脂アンバーライトIRA68(オルガノ(株)製)4.1g及びアンバーライトIRC50(オルガノ(株)製)8.1gを加え、更に1時間撹拌した。その後、イオン交換樹脂を濾過して取り除き、カプセル液の固形分濃度が50.0%になるように水をゆっくりと蒸発させ、濃度調節しジアゾニウム塩化合物内包のマイクロカプセル液(II)を得た。得られたマイクロカプセルの粒径は、粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で測定)の結果、メジアン径で0.19μmであった。
【0144】
次いで、前記マイクロカプセル液(II)を特開2005−96124号公報記載の方法に従い、遠心分離法により分級し、マイクロカプセル液(III)を記録層形成液として調製した。得られたマイクロカプセルの粒径は、走査型電子顕微鏡で撮影し、画像解析により粒径を測定した結果、体積標準メジアン径で0.07μmであった。
【0145】
酢酸エチル8.3gに、カップリング成分としてのシクロヘキサンカルボヒドロキサム酸2.3gと、トリフェニルグアニジン2.5g、トリクレジルフォスフェート10.5g、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(70%メタノ−ル溶液)1.1gとを溶解した液に、ポリビニルアルコール水溶液(商品名:PVA−105、(株)クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液5gとシリカ変性ポリビニルアルコール水溶液(商品名:R−1130、(株)クラレ製、ケン化度98〜99%)10質量%水溶液80gとのポリビニルアルコール混合水溶液及びイオン交換水26.8gを混合して得られた混合液を、ホモジナイザ−(日本精機製作所(株)製)により10℃の下で乳化分散した。得られたカップリング成分乳化物を減圧及び加熱し、酢酸エチルを除去した後、固形分濃度が45%になるように濃度調節を行った。得られたカップリング成分乳化分散液(IV)の粒径は、粒径測定(LA−700,堀場製作所(株)製で実施)の結果、メジアン径で0.11μmであった。
【0146】
前記マイクロカプセル液(III)及びカップリング成分乳化分散液(IV)を、内包しているジアゾニウム塩/カップリング成分のモル比が1/5になるように混合し、記録層形成液(V)を得た。
【0147】
(2)記録層シート作製
シリコンウエハー上にテフロン(登録商標)シート4枚を土手として貼り、記録層形成液を流し込む容器を作製した。具体的には、幅10mm、長さ10cm、膜厚700μmのテフロン(登録商標)シートに、可能な限り薄く均一に接着剤を塗布し、一辺10cm、深さ700μmの流し込み部を作製した。
この流し込み部に記録層形成液(V)を流し込んだ。記録層形成液(V)の流し込む量は、液中水量の95%が蒸発した後の膜厚が100μmになるように定めた。この記録層形成液(V)を、温度40℃、相対湿度30%の条件下で乾燥し、膜厚100μm±2μmのシートを得た。この操作を5回繰り返し、膜厚500μmの記録層シートを作製した。この記録シートを5cm×5cmの断面積となるようにカッターナイフで切り込みを入れながら剥離し、記録層シートを得た。
【0148】
(3)光記録媒体の作製
厚み0.5mmのガラスの片面を、532nmの波長に対して垂直な入射光による反射率が0.1%となるように反射防止処理を施し、第一の基板を、厚み0.5mmのガラスの片面を、532nmの波長に対して垂直な入射光による反射率が90%となるようにアルミ蒸着を施し、第二の基板を、それぞれ作製した。次いで、前記第一の基板の反射防止処理していない面上に、シランカップリング処理をしながら記録層シートを貼り合わせた。次いで、500μmの厚みを有する透明ポリエチレンテレフタレートシートをスぺーサとし、第二の基板のアルミ蒸着した面を、空気層を巻き込まないように貼り合わせ、光記録媒体を作製した。
【0149】
(4)光記録媒体の記録及び評価
上述のようにして作製した光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製、コリニアホログラム記録再生試験機SHOT−1000を用い、記録ホログラムの焦点位置における記録スポットの大きさ直径200μmで一連の多重ホログラムを書き込み、感度(記録エネルギー)、多重数、生保存性、及び定着性について測定又は評価を行った。
【0150】
<感度の測定>
記録時の照射光パワー(mJ/cm2)を変化させ、再生信号のエラー確率(BER:Bit Error Rate)の変化を測定した。通常、記録光パワーの増加により再生信号の輝度が増加することに伴い、再生信号のBERが徐々に低下する傾向にある。ここでは、ほぼ良好な再生像(BER<10−3)が得られる最低の記録光パワーを記録材料の記録感度とした。その結果、記録感度は75mJ/cmであった。
【0151】
<多重数の評価>
ISOM’04、Th−J−06、pp.184−185、Oct.2004に記載されている、記録スポットをスパイラル状にシフトさせて評価する手法により行った。ここで、記録ホログラム数は13×13=169ホログラム、記録ピッチは28.5μmとした。この場合、最終169個目のホログラム記録時の多重度は49多重となる。記録ホログラム数の増加に従い多重度が増加するため、記録材料の多重特性が不十分であると記録数の増加に従いBERが増加する。ここではBER>10−3となる記録ホログラム数を材料の多重特性Mとした。
この手法により多重特性Mとして121多重相当の特性が得られることを確認した。
【0152】
<光記録媒体の定着性>
多重記録を行った後の媒体を、内温80℃のオーブンに入れ、5分間加熱し、ジアゾニウム塩を完全に分解し、定着を行った。前記定着後の再生エラーはBER>10−3を保っており、定着しない場合とほぼ同じ結果を得た。なお、前記ジアゾニウム塩が完全に分解したことは、ジアゾニウム塩の吸収スペクトルを測定することにより確認できた。また、この際の反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を、UV−VIS分光光度計(島津製作所製)により測定したところ、0.1以下であることが確認できた。
続いて、再生光を10秒ごとに計100回積算照射した。定着しない媒体は、途中から再生画像の暗部が徐々に明るく見えるように乱れ始めたが、定着をした媒体では再生光の積算照射を行っても再生画像は一切乱れなかった。
【0153】
(実施例2)
実施例1で使用したシクロヘキサンカルボヒドロキサム酸2.3gの代わりに、フェニドン1.6gを使用した以外は実施例1と同様に行い、感度、多重数、及び定着性を評価した。また、定着時に実施例1と同様に、反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を測定したところ、0.1以下であることが確認できた。
【0154】
(実施例3)
実施例1で使用したシクロヘキサンカルボヒドロキサム酸2.3gの代わりに、N−ドデシルヒドロキシアミン1.5gを使用した以外は実施例1と同様に行い、感度、多重数、及び定着性を評価した。また、定着時に実施例1と同様に、反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を測定したところ、0.1以下であることが確認できた。
【0155】
(実施例4)
実施例1で使用したシクロヘキサンカルボヒドロキサム酸2.3gの代わりに、トリブチルフォスファイト2.5gを使用した以外は実施例1と同様に行い、感度、多重数、及び定着性を評価した。また、定着時に実施例1と同様に、反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を測定したところ、0.1以下であることが確認できた。
【0156】
(実施例5)
実施例1で使用したジアゾニウム塩化合物(例示化合物(35))4.3gの代わりにジアゾニウム塩化合物(例示化合物(36))4.2gを使用した以外は実施例1と同様に行い、感度、多重数、及び定着性を評価した。また、定着時に実施例1と同様に、反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を測定したところ、0.1以下であることが確認できた。
【0157】
(比較例1)
実施例1でカップリング成分乳化分散液(IV)を調製する工程でカップリング成分を使用しない、すなわち単に乳化分散液(IV)を調製した以外は実施例1と同様に行い、感度、多重数、生保存性、及び定着性を評価した。また、定着時に実施例1と同様に、反応生成物の記録光源中心波長(532nm)における吸光度を測定したところ、0.2を超えていた。
具体的には、カップリング成分乳化分散液(IV)を調整する工程で、シクロヘキサンカルボヒドロキサム酸2.3gとトリフェニルグアニジン2.5g、トリクレジルフォスフェート10.5g、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(70%メタノ−ル溶液)1.1gとを溶解した液を作製する代わりに、トリフェニルグアニジン2.5g、トリクレジルフォスフェート12.8g、及びドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム(70%メタノ−ル溶液)1.1gを溶解した液を作製した以外は、実施例1と同様に行い、乳化分散液(IV)を得た。
【0158】
実施例1〜5及び比較例1の評価結果を表1に示す。なお、定着性は、実施例2〜5では、実施例1と同様に、再生光の積算照射を行なっても再生画像の乱れが一切なく良好であったが、比較例1では全面が明るくなり乱れが多く再生できなかった。
【表1】

表1の結果から、本発明により、記録画像を再生する時の安定性が良い、高容量型の光記録媒体が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明の光記録媒体は、記録層にジアゾニウム塩を用い、高感度を維持しつつ、ジアゾニウム塩からガスが発生して既に記録されている情報を乱す成分を生成しないように定着を行なうことができ、かつ、解像度、回折効率等に優れており、2次元などの情報を記録する比較的薄型の平面ホログラムや立体像など多量の情報を記録する体積ホログラム、透過型及び反射型のいずれにも好適に用いられる。
本発明の前記光記録媒体を用いて、情報光及び参照光の照射を、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行うことにより、例えば、振幅ホログラム、位相ホログラム、ブレーズドホログラム、複素振幅ホログラムなど種々の高密度のホログラムを記録する方法として幅広く用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】図1は、本発明の光記録媒体の部分断面である。
【図2】図2は、従来の光記録方法を示す概念図である。
【図3】図3は、従来の光記録媒体の構造を示す概略断面図である。
【図4】図4は、本発明による具体例1に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図5】図5は、本発明による具体例2に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図6】図6は、本発明による具体例3に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図7】図7は、本発明による具体例4に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図8】図8は、本発明による具体例5に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図9】図9は、本発明による具体例6に係る光記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図10】図10は、本発明による光記録媒体周辺の光学系の一例を示す説明図である。
【図11】図11は、本発明の光記録再生装置の全体構成の一例を表すブロック図である。
【図12】図12は、本発明の光記録媒体用フィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図13】図13は、本発明の別の光記録媒体用フィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図14】図14は、コレステリック液晶層を3層積層したフィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【図15】図15は、コレステリック液晶層を2層積層したフィルタの正面(0°)からの入射光に対する反射特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0161】
1 第二の基板
2 反射膜
3 サーボビットパターン
4 記録層
5 第一の基板
6 フィルタ層
6a 誘電体蒸着層
6b 色材含有層
6c、6d、6e コレステリック液晶層
7 第2ギャップ層
8 第1ギャップ層
12 対物レンズ
13 ダイクロイックミラー
14 検出器
15 1/4波長板
16 偏光板
17 ハーフミラー
20 光記録媒体
21 光記録媒体
22 光記録媒体
31 ピックアップ
41 記録層
42 支持体
43 支持体
44 反射防止層
45 反射防止層
50 光記録媒体
51 情報光
52 参照光
61 光源1
63 光記録媒体
64 ハーフミラー
65 ミラー
66 ミラー
67 ビームエキスパンダ
68 ビームエキスパンダ
81 スピンドル
82 スピンドルモータ
83 スピンドルサーボ回路
84 駆動装置
85 検出回路
86 フォーカルサーボ回路
87 トラッキングサーボ回路
88 スライドサーボ回路
89 信号処理回路
90 コントローラ
91 走査部
100 光記録再生装置
A 入出射面
FE フォーカスエラー信号
TE トラッキングエラー信号
RF 再生信号


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、ホログラフィを利用して情報を記録する記録層を有し、前記記録層の記録材料が、微小容器に内包されたジアゾニウム塩、及び前記微小容器外に存在するカップリング成分を含むことを特徴とする光記録媒体。
【請求項2】
ジアゾニウム塩とカップリング成分との反応生成物の、記録光源中心波長における吸光度が0.2以下である請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
微小容器が、マイクロカプセルである請求項1から2のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項4】
マイクロカプセルの中心径が、照射される光の波長と同じ長さ、及び該波長よりも小さい長さのいずれかである請求項3に記載の光記録媒体。
【請求項5】
マイクロカプセルの中心径が、0.4μm以下である請求項3から4のいずれかに記載の光記録媒体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光記録媒体に対して、情報光及び参照光の照射が、該情報光の光軸と該参照光の光軸とが同軸となるようにして行われることを特徴とする光記録方法。
【請求項7】
請求項6に記載の光記録方法により記録層に形成された干渉像に参照光と同じ再生光を照射して該干渉像に対応した記録情報を再生することを特徴とする光再生方法。
【請求項8】
再生光が、光記録媒体の記録に用いられた参照光と同じ角度になるように、該再生光を干渉像に照射して記録情報を再生する請求項7に記載の光再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−15319(P2008−15319A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−187873(P2006−187873)
【出願日】平成18年7月7日(2006.7.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】