説明

光記録媒体及び光情報再生方法

【課題】 屈折率や吸収率変化を利用して情報を読み出す媒体は、反射面等の積層構造を持たないため、撮像したい面に対物レンズの焦点位置を自動的に合わせる事が困難であった。
【解決手段】 媒体の所定の情報層に対し、少なくとも光軸方向の前後に、フォーカス制御用のマーク21a,bを設け、このフォーカス制御用マークを撮像しその結果からフォーカスエラー信号を算出し、フォーカス制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光情報再生方法及び光記録媒体に関し、例えば複数の記録層を有する光記録媒体の再生を行う光情報再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災、水没等の災害に最も耐性がある情報記録媒体として光を用いた情報記録再生方式は有力であり、大容量光情報記録媒体は次世代のデジタルデータアーカイブとして期待されている。
大容量光記録媒体として、ホログラフィックメモリや二光子吸収メモリ、導波路型メモリ等が提案されているが、これらとは異なる光情報記録再生方式として、透明な材質に情報を記録する方式が提案されている。特許文献1ならびに非特許文献1に記載の記録方式は、パルス発振するレーザ光を石英ガラス等に照射し、非線形光吸収を起こす事によって集光位置の屈折率を変化させ情報を記録する。パルス幅を数百フェムト秒程度である場合、屈折率変化が滑らかとなり、ひび割れなどの構造欠陥を引き起こさない。光パワー強度が強くなると、物質によっては吸収率変化も引き起こす。2次元平面に記録する場合、レーザから出力される1パルス毎に記録媒体を微小に移動、もしくは例えばガルバノミラーを用いてパルス光の位置を変化させ、つまり1パルスに対して1ドットずつパルス光と記録媒体の位置関係を相対的に変化させて記録する方法や、非特許文献2に記載のように計算によるホログラム生成(Computer Generated Hologram:CGH)を用いて1パルスに対して多数ドットを生成する方法が用いられる。その2次元パターンを透過型顕微鏡光学系で、例えばCCDカメラ等を用いて撮像する事によって情報の再生を行う。また記録時の入射光もしくは再生時の透過光の光軸方向に平行に2次元情報記録層(以下、情報層と呼ぶ)を積層する事により大容量化を行う事ができる。この方式は、記録媒体を石英ガラス等安価な材料にすることができ、また再生時における光学系調整もホログラム、導波路光学系程シビアではなく、また、記録データの長期保存性に優れている。ここでは、3次元構造の媒体の屈折率変化や吸収率変化を利用して、情報を記録再生する方式を透過型3次元メモリと呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-110634号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】E.N.Glezer, et.al., Opt. Lett. 21, No.24, pp.2023 (1996)
【非特許文献2】M.Sakakura, et.al., Opt.Lett. 36, No.7, pp.1065 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元に情報を記録した情報記録媒体はこれまで数多く取り扱われてきた。いずれの情報記録媒体も反射率の異なる物質の積層による層構造を有しており、情報層に光の焦点位置を合わせる事は比較的容易であり、またその方法も種々提案されている。しかしながら、透過型3次元メモリのような、反射率の異なる面や層構造を有さない情報記録媒体に関しては近年提案されてきたため、特定の情報層に光の焦点を合わせるという方法は確立されていない。そのため透過型3次元メモリのような情報記録媒体において、再生の対象となる情報層(以降、対象層と呼ぶ)も対物レンズなど光学部品の位置関係を正常に合わせる、例えば対象層に焦点を合わせる、といった事が困難である。特に、2次元に記録された情報を一括に撮像するためには、対象層における全ての情報再生領域において対物レンズの焦点が合わさっている必要がある。
【0006】
また、透過型3次元メモリの場合、記録媒体の種類を限定する必要はなく、光学的に透明であればよい。例えば石英ガラスやBK7、サファイア結晶を用いる事も可能である。しかし媒体によって屈折率は異なり、同じ種類の媒体でも不純物の混入度合いや若干の組成の違いによりその屈折率は変化する。屈折率と情報層の層間隔により対物レンズの移動距離は決まるため、情報記録媒体の媒質によって臨機応変に対応する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、情報記録媒体中の情報層に対して少なくとも光軸方向の前後にフォーカス制御用のマークを書き込む事によって解決する。このマークは2つ以上存在し、マークサイズは対物レンズの回折限界程度もしくはそれより大きく、また光軸に垂直な方向に関してマークの間隔は回折限界の2倍以上離れている。回折限界は光源の波長と対物レンズのNAを用いてλ/(2×NA)で求められる。光軸方向に関しては、それぞれのマークはあらかじめ定めた位置関係に配置している。
【0008】
フォーカス用マークが2つの場合、各マークとも情報層と同一面内には存在せず、一方は対物レンズ側に、もう一方は照明側に存在し、2つのマークの間に情報層が存在している。
【0009】
フォーカス用マークが例えば3つの場合、うち1つは情報層と同一面内もしくは予め定めたその付近にあり、そのマークを基準に一方は対物レンズ側に、もう一方は光源側に位置する。
【0010】
2つ、もしくは3つのマークについて光軸方向における各点の間隔は、対物レンズの焦点深度の長さ以上離れている。各マークの検出には撮像用のCCDカメラ中の特定のピクセルもしくはピクセル群によって独立に行う。
【0011】
この配置をとる結果、対象層にジャストフォーカスの場合、対象層と同一面内にあるマークは結像し、非同一面のマークは焦点面からの距離が対物レンズの焦点深度内に位置する場合フォーカス状態に、それ以上離れている場合は予め定められた距離間隔から予想されるデフォーカス状態となる。一方、対物レンズと対象層とが焦点距離に対して離れた場合、対物レンズに近いフォーカス用マークが結像状態に近付き、対象層と同一面内にあるマーク、光源側にあるマークの順にデフォーカス量が大きくなる。同様に、対物レンズと対象層とが焦点距離に対して近付いた場合、先程の例とは反対に光源側に近いフォーカス用マークが結像状態に近付き、対象層と同一面内にあるマーク、対物レンズ側にあるマークの順にデフォーカス量が大きくなる。よって対象層と同一面内に存在しない2つのマークの検出信号の差をとる事によって光ディスクのフォーカスエラー信号におけるS字状のカーブを持つエラー信号を検出する事が出来、同一面内に存在するマークの検出信号の強度を最も強くなる位置に合わせる事で、対象層と対物レンズとの間隔を高い精度で焦点距離に合わせる事が可能となる。フォーカス用マークについて、記録時の条件や状態などを対象層の特定の領域に記載しておけば、より精細な調整が可能となる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成により、透過型3次元メモリの再生において、対物レンズと対象層との位置関係を最適することが可能となる。これにより、情報記録媒体の媒質の種類に依存した屈折率や光軸方向における層の位置等によって変化する対物レンズと情報層の位置関係を常に最適にし、一定の品質で情報の再生を行う光記録媒体及び光情報再生装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】光情報記録媒体の概観図
【図2】光情報再生装置全体の構成を示すブロック図
【図3】光源、光情報記録媒体、光ピックアップの構成を示す略線図
【図4】光情報記録媒体設置から対物レンズを対象層へ焦点を合わせるまでのフローを示すブロック図
【図5】光情報記録媒体設置から対物レンズを対象層へ焦点を合わせるまでのフローを示すブロック図
【図6】対物レンズの対象層への合焦点から情報再生までのフローを示すブロック図
【図7】目視ラベルと再生条件情報領域の一例を示す略線図
【図8】実施例1における媒体固有情報を含む情報層の構成を示す略線図
【図9】媒体固有情報領域、層固有情報領域、データ領域の構成を示す略線図
【図10】実施例1における情報層の構成を示す略線図
【図11】実施例1における情報層の構成を示す略線図
【図12】分割された層固有情報領域、データ領域の再構成を示す略線図
【図13】実施例1におけるフォーカス用マークの配置例を示す略線図
【図14】実施例1におけるフォーカス用マークの光軸方向位置に対する構成を示す略線図
【図15】実施例1における、情報層に対物レンズの焦点位置が合っている場合の検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態を示す略線図と、検出位置に対するフォーカス用検出信号強度を示す図
【図16】実施例1における、情報層に対物レンズの焦点位置が合っていない場合の検出器面上におけるフォーカス用マーク集光状態を示す略線図と、検出位置に対するフォーカス用検出信号強度を示す図
【図17】実施例1における、情報層が多層ある場合のフォーカス用マークの光軸方向に対する構成例を示す略線図
【図18】実施例1における、情報層の傾きによる検出器面上でのチルト用マークの結像状態を示す略線図
【図19】実施例1における、チルト用マークの構成例を示す略線図
【図20】実施例2における情報層の構成を示す略線図
【図21】実施例2におけるフォーカス用マークの光軸方向位置に対する構成を示す略線図
【図22】実施例2における、情報層に対物レンズの焦点位置が合っている場合の検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態を示す略線図と、検出位置に対するフォーカス用検出信号強度を示す図
【図23】実施例2における、情報層に対物レンズの焦点位置が合っている場合の検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態を示す略線図と、検出位置に対するフォーカス用検出信号強度を示す図
【図24】実施例2における、情報層に対物レンズの焦点位置が合っていない場合の検出器面上におけるフォーカス用マーク集光状態を示す略線図と、検出位置に対するフォーカス用検出信号強度を示す図
【図25】実施例2における、情報層が多層ある場合のフォーカス用マークの光軸方向に対する構成例を示す略線図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について記述する。
【実施例1】
【0015】
実施例1では単一情報層に対してフォーカス用マークが2つである場合について述べる。また情報層面内のフォーカスを合わせるためのチルト用マークを有している情報記録媒体について述べる。
【0016】
<光情報再生装置の構成>
図1は、本発明に記載されている透過型3次元メモリの外観図である。情報記録媒体300は光を透過する一の材料からなる媒質であり、側面には内部に記録されている情報の内容を目視で確認することを目的としたラベル301、表面を保護する保護膜302、最適再生光強度・温度範囲、媒体の情報など再生に必要な情報を記載した情報領域303、単数もしくは複数存在する情報層304を有する。情報領域303は光を照射して検出器面上で結像させ、結像結果を信号解析することによって復調する。得られた情報は後述するメモリ600に格納し必要な場合に応じて参照する。
【0017】
図2は、本発明による光情報再生装置の概略構成を示す図である。光情報記録再生装置100は、光情報記録媒体300に情報を再生する装置であり、光照明系200と、光情報記録媒体300中のマークによって散乱された光を結像して検出する光ピックアップ400と、信号処理部500、復調回路800、復号回路900と、検出信号から光情報記録媒体300と光ピックアップ300内の駆動を制御する駆動制御部600と、光情報記録媒体300の姿勢制御するためのアクチュエータ700と、光ピックアップ400内の駆動制御をするアクチュエータ701と、システムコントローラ1000と、を備えている。
【0018】
図3には図2における光照明系200から光ピックアップ400までの光学系を示しており、図2、3において、光照明系200から出射された光束は、光情報記録媒体300を照射する。光情報記録媒体300中のマークによって散乱光が生じ、散乱光は光ピックアップ400に含まれる対物レンズ401(図3)によって集光される。そして、その散乱光は、光ピックアップ400に含まれる複数のピクセルを持つ光検出器404(図3)上に結像し、検出される。
【0019】
光情報記録媒体300は持ち運び任意の場所に設置・保管する事が出来、記録は一度しかできない。ただし、高温で溶かすなどして媒体の屈折率を均一化すれば、新しい情報を記載する事が可能となる。
【0020】
図2において、信号処理回路500は、検出信号に基づいて、再生信号、フォーカス信号、面内フォーカス信号、位置制御信号を生成する。再生信号は、復調回路800及び復号回路900を経て、システムコントローラ1000へ送出される。フォーカス信号、面内フォーカス信号、位置制御信号は駆動制御部600へ送出される。駆動制御部700は、システムコントローラ1000からの命令に基づきアクチュエータ702は光情報記録媒体300の姿勢制御を、アクチュエータ701は光ピックアップ400内のレンズ、ピンホール位置など光学系の制御を行う。
【0021】
光ピックアップ400にて撮像した結果から信号処理部においてフォーカス用のマーク、面内用フォーカス用のマーク、情報データ領域指定用マークの形状、配置の規則に沿って解析し新たに算出した信号を駆動制御部、システムコントローラに配信し、また、システムコントローラ1000からの命令に基づき、必要な制御及び信号処理を行う。
【0022】
<光情報再生装置内光学系の構成>
光照明系200、光情報記録媒体300、光ピックアップ400により光情報再生装置100内の光学系は構成される。図3は本発明による光情報再生装置100内の光照明200から光ピックアップ300までを含む光学系について概略構成を示す図であり、光情報記録媒体300に情報記録層が1層存在し、光源に半導体レーザを使用している場合を示している。また、光情報記録媒体300からでる散乱光のうち一部の光を抽出してその光の伝搬を示している。
【0023】
光照明系200について、半導体レーザ201から出射した光束はコリメートレンズ202でコリメート光に変換される。記録されたマークを撮像する面積に応じて光束径を広げるため、レンズ203とレンズ204を用いて光束径を拡大する。入射光は光情報記録媒体300を照射し、光情報記録媒体300を透過、散乱した光は対物レンズ401によって集光される。
【0024】
対物レンズ401によって集光された光はピンホール402によって対物レンズ401の焦点位置にある光を抽出し、それ以外からの光を減光させる。これにより、情報層が多層になった場合に生じる非対象層からの光(層間クロストーク)の影響を低減する。対象層からの光が主となった光はレンズ403によって収束光へ変換され、2次元に複数のピクセルを持つ光検出器404上で結像し、検出される。なお、ピンホール402は、設置することにより迷光を除去する効果が得られるが、必須ではなく、設置しなくても構わない。
【0025】
<情報再生までの手順>
図4に情報記録媒体300を撮像位置に設置してから記録した情報を特定の層から読み出すまでの手順を示す。情報記録媒体300を設置する際、媒体を傷つけないために、対物レンズ401は媒体表面から対物レンズ焦点距離よりも十分離れて存在する。情報記録媒体300を設置した後、再生条件情報領域(図7(b))が読み取れる位置へ対物レンズ401を移動させ、再生条件等の情報を検出する。再生条件情報を検出しメモリ600に格納、駆動制御部700へ転送、情報再生装置を最適化した後、媒体固有情報が記載されている情報層へ対物レンズ401を移動させる。媒体固有情報が記載されている情報層ならびにアドレスの情報は再生条件情報に記載されている。
【0026】
媒体固有情報が記載されている情報層付近へ対物レンズを移動させ、フォーカス用マーク、チルト用マークから各エラー信号を検出し、その信号に基づき情報層再生のための情報記録媒体300の姿勢制御を行う。球面収差の影響が大きく、媒体固有情報を記載した領域の撮像に支障が出る場合は対物レンズを媒体固有情報が記載されている付近へ移動させ、その領域を中心に撮像する。撮像した結果を復調・復号して信号再生し、得た媒体固有情報はメモリ600に格納する。そのシステムコントローラ1000の命令に基づき再生情報のアドレスが指定され、そのアドレスに基づき対物レンズ移動距離を算出し、再生対象層付近へ対物レンズ401を移動させる。
【0027】
図5は、媒体設置から情報層チルト調節までは図4と同一であるが、媒体固有情報を記載している情報層全体を一括に撮像して信号処理を行い、得られた信号から媒体固有情報を抽出してメモリ600に格納する場合を示している。
【0028】
図6は対物レンズ401が再生対象層へ移動してから信号再生までの手順について示している。システムコントローラ1000からの指令に基づいて対物レンズ401を再生の対象層付近に移動させ、フォーカス用マーク、チルト用マークを用いて対象層に記録されたマークが正確に撮像できるよう情報記録媒体300の姿勢制御を行う。
【0029】
対象層の姿勢制御の後、層固有情報を取得するために当該情報が記載されている領域付近へ対物レンズ401を移動させ撮像する。撮像した像から信号を再生し、層固有情報を取得、メモリ600へ格納する。その後、対物レンズ401をシステムコントローラ1000が指定する再生対象のアドレス付近へ移動させ、その付近のマークを撮像しメモリ600へ格納、システムコントローラ1000指定の情報領域を抽出して復調・復号し、信号再生をする。信号再生後はシステムコントローラ1000より次に再生する信号領域のアドレスを取得し、対象層の移動、もしくは同一層内で他領域の信号検出を行う。層固有情報ならびに情報領域の撮像において、球面収差の影響が少ない場合は、対物レンズ401を対象層中心付近に位置し、全体を一括で撮像すればよい。その場合、対象層面内方向における対物レンズの移動は省略される。撮像した結果から層固有情報領域の抽出・信号再生、ならびにシステムコントローラ1000指定の情報領域の抽出・信号再生が行われる。
【0030】
なお、ここではフォーカス用マーク検出、チルト用マーク検出、データ領域撮像において再生光強度を一定として取り扱っていたが、例えばフォーカス用マーク、チルト用マーク、情報データマークにおけるそれぞれの屈折率もしくは吸収率が異なっており撮像する最適な光パワーが異なる場合は、それぞれのマークに対する撮像コントラストを最適化するため、その時の撮像する対象に応じて適宜光パワーを変化させる。
【0031】
<情報記録媒体の構成>
図7は、光情報記録媒体300に備えられている目視用ラベル(図7(a))と再生の最適条件を示した再生条件情報領域(図7(b))の構成を示している。
【0032】
図7(a)に示す目視ラベル301には、光情報記録媒体300に記録されている情報についてのプロパティや表面に記録されている再生条件情報領域が傷などにより損傷した場合に備え同等の内容を明記している。ただし、目視ラベルの情報はこれだけに限られず、必要に応じて項目を増やす事は可能である。また、この目視ラベルは主にユーザの便宜のために設けられているため、なくても構わない。
【0033】
図7(b)に示す再生条件情報領域303は、光照明200から照射された光によって光検出器404上で結像し検出された像を復調する事によって情報を得る。この情報には再生に必要な光学条件、温度条件、再生時光パワーもしくは媒体姿勢制御時ならびにデータ領域撮像時の光パワー、また媒体固有情報や各記録層における層固有情報が記載された領域のアドレス情報等が記載されている。ここより得た情報はメモリ600に格納され、必要に応じてシステムコントローラ1000の命令により参照される。また再生条件情報領域には光情報記録媒体300を設置した時の方位(表・裏、上下・左右)の確認するための情報、もしくはマークが記載されている。
【0034】
光情報記録媒体300内部には、記録条件、層間隔、屈折率、例えばフォーカス用マークの間隔など、媒体固有情報を記載する領域と、各記録層固有の情報を記載する領域を有している。
【0035】
情報層はフォーカス用マーク、チルト用マーク、媒体固有情報領域、層固有情報領域、データ領域で構成されている。ただし、媒体固有情報領域は特定の位置層にしか存在せず、その他の情報層においてはフォーカス・チルト用マーク、層固有情報領域とデータ領域で構成されている。
【0036】
<情報層の構成>
図8に媒体固有情報を含む情報層構成の一例を示す。マーク10はフォーカス用マークであり、マーク11a〜11cはチルト用マークである。フォーカス用マーク・チルト用マークの検出結果から演算、エラー信号の算出を行い、フィードバック制御を行う事によって光情報記録媒体300と対物レンズ401の位置関係を高精度に制御する。チルト用マークの構成はこの形態に限定されず、詳細は後ほど述べる。
【0037】
領域12は媒体固有情報を記載しており、媒質、屈折率、透過率、反射率、吸収係数等の媒体固有条件、そして媒体が含む情報層数、再生時における光強度や温度などの再生条件、記録時における対物レンズの開口数(NA)やレーザ光の強度などの光学条件や記録マークのサイズと面内ピッチ等記録時の情報、各情報層における層固有情報領域のアドレス、フォーカス用マーク、チルト用マークの位置・形状等の情報とそれぞれの情報に対するアドレスにより構成されている。これらの情報は読み取った後メモリ600に格納され、システムコントローラ1000の命令に従い必要に応じて参照される。媒体固有情報領域にはアドレスが記載されており、アドレス情報に基づいて媒体固有情報の抽出を行う。アドレス情報は例えば図9(a)に示すように、アドレスと情報を記載する値との間にスペースを設け、アドレスと情報を値の区別をつけられるようにする。
【0038】
層間隔や屈折率の情報は、光情報記録媒体300中の情報層を撮像する際に球面収差等の補正に使用できる。また屈折率と層間隔の情報は対象層から他層へ移動する際の対物レンズ401、もしくは媒体の移動距離をあらかじめ算出する事が可能となり、再生の高速化につながる。
【0039】
領域13は層固有情報を記載しており、多層媒体の場合の層番号やフォーカス用マーク・チルト用マークの位置・形状、隣接する他層との間の間隔、情報領域におけるアドレス情報とそれぞれの情報に対するアドレスにより構成されている。これらの情報は読み取った後メモリ600に格納され、システムコントローラ1000の命令に従い必要に応じて参照される。層固有情報領域も媒体固有情報領域と同様にアドレスが記載されており、アドレス情報に基づいて層固有情報の抽出を行う。図9(b)に層固有情報領域の構成についての一例を示す。
【0040】
領域14はデータ領域であり、アドレスとデータが記載されている。図9(c)にデータ領域の構成についての一例を示し、媒体固有情報領域・層固有情報領域と同様にアドレスに基づいてデータの抽出を行う。アドレスはデータ要素毎に設けても、複数のデータ要素をおいて設けても構わない。複数データおきにアドレスが存在する場合は、信号処理にて再生したいデータのアドレスを演算によって求め、その結果を参照する。
【0041】
<情報層の構成>
図10は情報層の構成の一例を示す図である。ここでは例として情報記録媒体300に複数の情報層が存在し、媒体固有情報は対物レンズに最も近い情報層に記載されているとする。またここでは情報層の呼び方として、対物レンズに近い方からL0、L1、L2…と呼ぶこととする。フォーカス用マークは2つあり、媒体固有情報・層固有情報・データを記載する特定の層(L0) の構成を図10(i)に、層固有情報・データのみを記載する層(L0以外)の構成を図10(ii)に示す。
【0042】
図10(i)について、マーク10はフォーカス用マーク、マーク11a〜11cはチルト用マーク、領域12ならびに12’は媒体固有情報領域、領域13ならびに13’は当該層固有情報領域、領域14ならびに14’はデータ領域である。チルト用マークは対物レンズに対して記録面全体の焦点を合わせるために存在する。単一の層においてチルト用マーク数は面を指定するために離れた位置に3か所以上、そのうちの2か所を結ぶ直線が他の直線と同一にならないように設置する。またもしくは面が特定できるような長さ・形状を備えたマークを設置する。L0層以外の層については図10(ii)に示しており、マーク15はフォーカス用マーク、マーク16a〜16cはチルト用マーク、領域17は層固有情報領域、領域18はデータ領域である。
【0043】
図10(a)(i)ではL0層においてy軸方向上から層固有情報領域、媒体固有情報領域、データ領域と、図10(a)(ii)ではL0以外の層においてy軸方向上から媒体固有情報領域、データ領域と並んでいる場合を示している。図10(b)は媒体固有情報領域、層固有情報領域を撮像する際にできるだけ球面収差の影響を少ない位置に配置している。図10(b)(i)ではL0層においてy軸方向中央付近に層固有情報領域、媒体固有情報領域を配置し、y軸方向上部と下部にデータ領域が存在する。同様に、図10(b)(ii)ではL0以外の層においてy軸方向中央付近に層固有情報領域を配置し、y軸方向上部と下部にデータ領域が存在する。
【0044】
なお、図10では媒体固有情報領域と層固有情報領域は記録領域内の角にも情報が配置されているが、球面収差の影響を最も低減されるように考慮して、図11に示すように記録領域の中央に置くことも可能である。図11(i)ではL0層において媒体固有情報領域を中央に、層固有情報領域を媒体固有情報領域を囲むように配置し、データ領域を層固有情報領域を囲むように配置させた場合の様子を示している。図11(ii)ではL0以外の層において層固有情報領域17’を取り囲むようにデータ領域18’を設けた場合を示している。
【0045】
図11に示すような全体が枠のような形状で層固有情報領域、データ領域が存在している場合、それぞれのアドレス、スペース、値の配置についての一例を図12に示す。
【0046】
図12(a)、(b)は層固有情報領域構成の一例を示しており、図12(a)は媒体固有情報領域を含むある層(L0)における場合、図12(b)はその他の層(L0以外)における場合に対応する。例えば図12(a)(i)のように層固有情報領域が枠形状の場合、左上から時計回りに存在するマークを順番を変えずに一行へまとめる事により図9(b)の場合と同じ読み出し状態(図12(a)(ii))となる。図12(a)(i)中に存在するマーク131a〜131dが、整列させた後の図12(a)(ii)における131a〜131dと一致する。
【0047】
同様に、媒体固有情報領域を含まない層(L0層以外)で例えば図12(b)に示すように層固有情報領域が矩形でかつ一行の長さが全記録領域における一行の長さの半分以下の場合、層固有情報領域内の複数の行をつなげる事によって図9(b)の場合と同じ読み出し状態(図12(b)(ii))となる。図12(b)(i)中に存在するマーク171a〜171cが、整列させた後の図12(b)(ii)における171a〜171cと一致する。
【0048】
図12(c)はデータ領域構成の一例であり、全記録領域の中央に媒体固有情報領域や層固有情報領域が存在する事によりデータ領域の中央部が空洞化している場合を示している。媒体・層固有情報領域との境界に位置するマークは全てスペースとすることで固有情報とデータの区別を行う。読み出し時に固有情報領域により空洞化した部分を画像処理の上で結合させる等を行い、スペース(もしくは巨大な区切り記号)として取り扱う。図12(c)(i)中に存在するマーク181a〜181dが、整列させた後の図12(c)(ii)における181a〜181dと一致する。
【0049】
情報データ領域を指定するマークについて、実施例1ではチルト用マークと併用する事によって位置調節用のマーク数を減らし、記録するデータ領域の容量をできるだけ多くなるように工夫している。
【0050】
<フォーカス用マークの構成>
図13はフォーカス用マークを情報層へ投影した時の配置例を示している。実施例1では単一の情報層に対してフォーカス用マークが2つ存在する場合を取り扱っており、それぞれのマークは同一面に存在せず、かつ光軸上に重なる位置に存在しない。以上を満たせば2つのマークの並び方は任意であり、例えば図13(a)〜(c)におけるフォーカス用マーク19a〜19cのような位置関係が考えられる。
【0051】
図14はフォーカス用マークの光軸方向の配置について示している。領域20はある1層における記録する情報のデータ領域の一行であり、領域10(領域15)はフォーカス用マークのうち、対象層の位置に対して光照明系側にあるマークを21a、対物レンズ側にあるマークを21bとしている。
【0052】
マーク21a、21bは媒体固有情報に記載されている予め定められた強度、サイズ、形状で記録されたマークであり、マークのサイズは対物レンズのNAと光源の波長によって決まる回折限界と同程度かそれよりも大きい。光軸に対して垂直な方向におけるマーク間の間隔d0は回折限界程度もしくはそれよりも大きい。光軸方向の間隔について、マーク21aは対象層と同位置から光照明系側へ距離d1、マーク21bは対象層と同位置からd2離れて位置する。2重線の真ん中の直線部分はフォーカス用マーク点を中心とした対物レンズの焦点深度範囲を示している。フォーカス用マーク間の間隔d1+d2が焦点深度より長ければ、対物レンズの焦点位置が対象層からずれた時にカメラで検出される各フォーカス用マークのデフォーカス状態が等しくなくなるため、対物レンズのデフォーカス状態を検出できる。例えば、波長405 nm、対物レンズNA0.9、CCDカメラピクセルサイズ10 μmの場合、回折限界が0.14 μm、焦点深度が0.16 μmとなるのでマークサイズを10 μm以上、マーク間隔を30 μm以上、光軸方向中のマーク間距離を0.16 μm以上であることが望ましい。情報層の間隔は他層にあるマーク強度の影響を10分の1程度に落とすと想定すると、0.55 μm以上であることが望ましい。
【0053】
図15は対物レンズの焦点位置がちょうど対象層上にあり、かつ対象層が対物レンズに対して傾いていない場合の、光検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態(図15(i))と、その時の2次元光検出器による検出信号を特定の軸方向に抽出した場合の位置と検出信号強度の関係(図15(ii))を示している。図15(i)に記載されているグリッド線は光検出器のピクセルを表している。フォーカスマーク用受光領域を22’a、22’bの枠で示す。図15(a)は光軸方向において対象層位置から各フォーカス用マークまでの間隔がちょうど対物レンズの焦点深度程度であり、かつ二つのマークの対象層位置からのそれぞれの距離が同程度(d1≒d2)である場合の検出器における照射状態を示している。図15(a)(i)は左から、マーク21a、21bの光検出器面上における照射状態である光22a、22bであり、図15(a)(ii)はフォーカス用受光領域26a、26bにて検出される領域22a、22bそれぞれのマークにおける検出信号Sa22、Sb22である。なお、領域22a、22bの各々が複数ピクセルによって検出される場合は、構成ピクセルの和もしくは平均をそれぞれSa22、Sb22とする。図15(a)の場合、マーク21a、21bのデフォーカス量は同じとなるためSa22=Sb22(=l1)となる。よって検出強度は下記数1の関係にある。
【0054】
【数1】

【0055】
図15(b)はフォーカス用マークの光軸方向の間隔が対物レンズの焦点深度より長く、d1≠d2である場合の照射状態を示している。図15(a)(i)は左から、マーク21a、21bの光検出器面上における照射状態である光23a、23bであり、図15(a)(ii)は領域23a、23bそれぞれのマークにおける検出信号Sa23、Sb23である。図15(b)の場合、マーク21a、21bのデフォーカス量は情報層からの距離にしたがって異なるため、Sa23、Sb23の検出強度はそれぞれl2、l3となる。Sa23、Sb23の関係を下記数2に示す。
【0056】
【数2】

【0057】
なお、d1=d2の場合は数1と同等になる。
【0058】
図16は対物レンズの焦点位置が対象層より光源側にある場合(図16(a))と対象層より対物レンズ側にある場合(図16(b))を示したものである。図16(a)(b)(i)にその時の光検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態を、また図16(a)(b)(ii)にその時の2次元光検出器による検出信号を特定の軸方向に抽出した場合の位置と検出信号強度の関係を示す。光24a、24bならびに光25a、25bはそれぞれの状態におけるマーク21a、21bの光検出器面上における照射状態であり、その検出信号をそれぞれSa1、Sb1とする。図16(a)の場合、マーク21bが最も結像状態に近くなり、21aのデフォーカス量が大きくなる。よってSa1、Sb1の関係が変わり、下記数3となる。d1≠d2の場合の式も合わせて記載する。
【0059】
【数3】

【0060】
図16(b)の場合、マーク22aが最も結像状態に近くなり、22bのデフォーカス量が大きくなる。よってSa1、Sb1は下記数4の関係となる。d1≠d2の場合における式も合わせて記載する。
【0061】
【数4】

【0062】
よって、信号Sa1、Sb1の差からからフォーカスエラー信号を算出しフィードバック制御を行う事で対象層を対物レンズの焦点位置に合わせる事が可能となる。2つのフォーカス用マークの検出強度の差を十分得るためには、d1+d2は対物レンズのNAと光源の波長によって決まる焦点深度以上の必要がある。
【0063】
図17に3層以上の多層光情報記録媒体の場合の、フォーカス用マークの配置についての例を示す。実施例1の場合、フォーカス用マークは各情報層に対して2つ存在し、楕円形の破線は1つの情報層に対するフォーカス用マーク対をまとめている。図17(a)は対物レンズ側、基板側各マークの位置が同位置の場合を示しており、カメラ中の読みだすピクセル位置が変化しないため、信号演算の簡易化につながる。図17(b)(c)はフォーカス用のマークの光軸方向における位置関係が各層で互い違いになる配置であり、フォーカス用マークの領域を節約する事が可能となる。
【0064】
<チルト用マーク・情報データ領域指定マークの構成>
実施例1において図10、11に記載のチルト用マーク11a〜11cもしくは16a〜16cは、情報データ領域指定マークも兼ねている。図18はマーク11a〜11c(16a〜16c)の光検出器面上における集光状態を示しており、図18(a)は面内全体のチルトが合っている場合、図18(b)はチルト用マークa-b側が対物レンズの焦点位置からずれている場合、図18(c)はチルト用マークb-c側が対物レンズの焦点位置からずれている場合に相当する。全てのチルト用マークの結像コントラストを上げる事によって、対象層の面内全体のチルトを合わせる事が可能となる。領域27a〜27cは光検出器におけるチルト用マークを検出する領域を示しており、領域27a〜27cにおける検出信号をそれぞれSma、Smb、Smcとする。それぞれの信号強度が下記数5の関係にある時、対象層の面内チルトが最適化される。
【0065】
【数5】

【0066】
図19にチルト用マークの構成例について示す。図19(a)(b)は角部に設けられたマークが3箇所の場合の構成例であり、1箇所におけるマークの形状は図19(b)に示すように複数部分に分かれていてもかまわない。チルト用マークは位置・形状について、図19(c)(d)に示すように、自由度を持つ。情報層が多層で層間隔が入射光波長と対物レンズNAで決まる焦点深度の2〜3倍程度しかない場合、当該層撮像時に他層のチルト用マークがデフォーカス状態で同時に撮像される。よって他層チルト用マークの像の影響を回避するために、例えば図19(a)(b)のような構成を層によって使い分け、媒体固有情報もしくは層固有情報に記載することによってチルト用マークに対する層間クロストーク低減対策となる。上記のような構成を取る場合、チルト用マークを検出する光検出器の領域はマークの形状によって変わるため、光情報記録媒体の情報データ領域もしくは当該層の情報データ領域に層によるチルト用マークの形状と位置について記載する必要がある。
【実施例2】
【0067】
<光情報再生装置の構成>
実施例2は、フォーカス用マークが単一情報層に対して3つある場合について述べる。3つある場合、光軸方向に並ぶマークのうち真ん中にあるマークを対象である情報層の光軸上位置とほぼ一致させ、その結像情報を用いる事により精度の高い調整を可能とする。
【0068】
図20乃至25は実施例2に関するものであり、図1乃至3、8に示す実施例1に対応する部分は同一符合で示されている。なお、光情報記録再生装置100とその光学系、情報記録媒体の構成、チルト用マーク・情報データ領域指定マークの構成については実施例1と同じなので説明は省略する。
【0069】
<情報層の構成>
図20は情報層の構成の一例を示す図である。フォーカス用マークは単一情報層に対して3つあり、光記録媒体300は情報層を積層していると想定し、記録条件などの全体の情報を記載する特定の層の構成を図20(i)に、それ以外の層で個々の層の情報を記載する構成を図20(ii)に示す。
【0070】
図20(i)について、領域30はフォーカス用マーク、マーク31a〜31cはチルト用マーク、領域32は媒体固有情報を記載した領域、領域33は層固有情報を記載した領域、領域34は記録した情報を記載しているデータ領域である。単一の層においてチルト用マーク数は面を指定するために離れた位置に3か所以上、そのうちの2か所を結ぶ直線が他の直線と同一にならないように設置する。またもしくは面が特定できるような長さ・形状を備えた1つのマークを設置する。L0層以外の層については図20(ii)に示しており、領域35はフォーカス用マーク、マーク36a〜36cはチルト用マーク、領域37は当該層情報を記載しているデータ領域、領域38は記録した情報を記載しているデータ領域である。L0層とそれ以外の層とでは、L0層には媒体固有情報領域が存在しそれ以外の層では媒体固有情報領域は存在しない。媒体固有情報には媒体の屈折率、フォーカス用マークについて個数・間隔などの情報、情報データ領域のサイズ、記録マークのサイズと面内ピッチ、マーク記録時におけるレーザ光波長やレーザ光強度、対物レンズのNAなどの記録条件、上記調整用に記録したマークの情報、多層媒体の場合は層数と層間隔の情報などが考えられる。また、当該層情報としてはその層番号や記録されたデータ領域のサイズなどが挙げられる。なお、図20では媒体固有情報領域と層固有情報領域を面収差の影響を考慮して実施例1の場合における図11に示すように、記録領域の中央に設置したが、実施例1の図10に示されるように、記録領域内に数行に渡って記載する構成も可能であり、この場合撮像結果からマークの配置換算処理を必要としないため信号処理過程が簡略化される。
【0071】
<フォーカス用マークの構成>
図21はフォーカス用マークの光軸方向の配置について示している。領域40はある1層における記録する情報のデータ領域の一行であり、領域30(領域35)はフォーカス用マークのうち、情報層の位置近傍にあるマークを41a、情報層の位置に対して光照明系側にあるマークを41b、対物レンズ側にあるマークを41cとしている。
【0072】
マーク41a〜41cは予め定められた強度、サイズ、形状で記録されたマークであり、マークのサイズは対物レンズのNAと光源の波長によって決まる回折限界と同程度かそれよりも大きい。サイズ、形状は同じである必要はない。面内方向におけるマーク間の間隔d3、d4は回折限界程度もしくはそれよりも大きい。光軸方向の間隔について、マーク41bは情報層と同一面内から光照明系側へ距離d5、マーク41cは情報層と同一面内からd6離れて位置する。d3=d4である必要はなく、予め定められていればよい。2重線の真ん中の直線部分はフォーカス用マーク点を中心とした対物レンズの焦点深度範囲を示している。フォーカス用マーク41b-41a間ならびにフォーカス用マーク41a-41c間の間隔d5+d6が焦点深度より長ければ、対物レンズの焦点位置が情報層からずれた時にカメラで検出される各フォーカス用マークのデフォーカス状態が等しくなくなり、対物レンズのデフォーカス状態を検出できる。ちなみにd5=d6である必要はなく、予め定められていればよい。
【0073】
フォーカス用マークを情報層へ投影した時の配置例は図13に示す実施例1と同様に考えてよい。それぞれのマークは同一面に存在せず、かつ光軸上に重なる位置に存在しない。以上を満たせば3つのマークの並び方は任意である。
【0074】
図22は対物レンズが情報層の焦点位置にあり、かつ情報層が対物レンズに対して傾いていない場合の光検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態(図22(i))と、その時の2次元光検出器による検出信号を特定の軸方向に抽出した場合の位置と検出信号強度の関係(図22(ii))を示している。図22(i)に記載されているグリッド線は光検出器のピクセルを表している。図22ではフォーカス用マーク41b-41a間ならびにフォーカス用マーク41a-41c間の光軸方向における間隔がd5=d6である場合を示しており、図22(i)は左から、マーク41b、41a、41cの光検出器面上における照射状態である光42b、42a、42cであり、フォーカス用受光領域43b、43a、43cによって検出される。図22(ii)はフォーカス用受光領域43b、43a、43cにおける検出信号Sb43、Sa43、Sc43である。なお、領域42a〜42bの各々が複数ピクセルによって検出される場合は、構成ピクセルの和もしくは平均をそれぞれSb43、Sa43、Sc43とする。図22の場合、マーク41b、41cのデフォーカス量は同じとなるためSb43=Sc43(=l9)となる。よって検出強度は下記数6の関係にある。
【0075】
【数6】

【0076】
図23は対物レンズ401が情報層の焦点位置にあり、かつ情報層が対物レンズに対して傾いていない場合の光検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態(図23(i))と、その時の2次元光検出器による検出信号を特定の軸方向に抽出した場合の位置と検出信号強度の関係(図23(ii))を示している。フォーカス用マーク41b-41a間ならびにフォーカス用マーク41a-41c間の光軸方向における間隔はd5>d6の関係にある。図23(ii)は左から、マーク41b、41a、41cの光検出器面上における照射状態である光44b、44a、44cであり、受光部45b、45a、45cによって検出される。図23(ii)は受光部45b、45a、45cにおける検出信号Sb45、Sa45、Sc45である。図23の場合、マーク41b、41cのデフォーカス量は情報層からの距離にしたがって異なるため、Sb45、Sc45の検出強度はそれぞれl10、l11となる。Sa45、Sb45、Sc45の関係を下記数7に示す。
【0077】
【数7】

【0078】
なお、d5=d6の場合、数6と一致する。
【0079】
図24に対物レンズ401の焦点位置が対象層より光源側にある場合(図24(a))と対象層より対物レンズ側にある場合(図24(b))における光検出器面上におけるフォーカス用マークの結像状態(図24(a)(b)(i))と、その時の2次元光検出器による検出信号を特定の軸方向に抽出した場合の位置と検出信号強度の関係(図24(a)(b)(ii))を示し、光スポット46a〜46cならびに光47a〜47cはそれぞれの状態におけるマーク41a〜41cの光検出器面上における照射状態であり、受光部45b、45a、45cにおける検出信号をそれぞれSa2、Sb2、Sc2とする。図24(a)の場合、光スポット46cが最も結像状態に近くなり、46bのデフォーカス量が大きくなる。よってSa2、Sb2、Sc2の関係は下記数8となる。
【0080】
【数8】

【0081】
図24(b)の場合、光スポット47bが最も結像状態に近くなり、47cのデフォーカス量が大きくなる。よってSa2、Sb2、Sc2の関係は下記数9の関係となる。
【0082】
【数9】

【0083】
d5、d6が対物レンズ焦点深度より長く、またd5≠d6の場合、l12〜l17、の関係を下記数10に示す。
【0084】
【数10】

【0085】
これにより、信号Sa2、Sb2、Sc2から生成される差動信号によりフォーカスエラー信号を算出しフィードバック制御を行う事で対象層を対物レンズの焦点位置に合わせる事が可能となる。3つのフォーカス用マークの検出強度の差を十分得るためには、d5+d6は対物レンズのNAと光源の波長によって決まる焦点深度以上の必要がある。
【0086】
図25に多層光情報記録媒体の場合の、フォーカス用マークの配置についての例を示す。図25(a)はある単一の層に対する3つのマークのうち2つが隣接する他層のマークと共有している場合で、光情報記録媒体の単位長さにおける情報層の積層数を増やし、かつフォーカス用マークの配置がシフトするため、層間クロストークによる影響も少なくする事が可能となる。図25(b)はフォーカス用のマークの光軸方向における位置関係が各層で互い違いになる配置であり、フォーカス用マークの領域を節約する事が可能となる。図25(c)は図25(a)(b)の複合型の配置を示す。楕円形の破線は1つの情報層に対するフォーカス用マーク対をまとめている。
【0087】
なおここでは各層ごとに3つのフォーカス用マークをそれぞれ用いる事を説明したが、基準となる層のみに3つのフォーカス用マークを設け基準層以外の層にはフォーカス用マークを設けなくてもかまわない。この場合には基準面でフォーカスした後、媒体固有情報から層間隔を読みだして、その層間間隔に基づいてフォーカスジャンプを行い、データマークを撮像する。
【符号の説明】
【0088】
300…光情報記録媒体、301…目視用ラベル、302…再生条件情報、303…多層情報層
100…光記録再生装置、200…光照明系、300…光情報記録媒体、400…光ピックアップ、500…信号処理回路、600…メモリ、700…駆動制御部、701,702…アクチュエータ800…復調回路、900…復号回路、1000…システムコントローラ、
201…半導体レーザor 発光ダイオード、202…コリメートレンズ、203…レンズ、204…レンズ、401…対物レンズ、402…ピンホール、403…結像レンズ、404…光検出器
101, 106…対物レンズ移動、102, 107…フォーカスエラー信号取得、104, 109…フォーカス調節、105, 110…情報取得、111…信号再生
20, 40…情報層、
10, 15, 19a〜19c, 30, 34…フォーカス用マーク群、21a, 21b, 41a〜41c…フォーカス用マーク、11a〜11c, 16a〜16c, 31a〜31c, 36a〜36c…チルト用マーク、12, 12’, 12”, 32…媒体固有情報領域、13, 13’, 13”, 17, 17’, 17”…当該層固有情報領域、14, 18, 18’, 18”, 18’”, 34, 38…データ領域、
131a〜131d, 171a〜171c, 181a〜181d…マーク
22a, 22b, 23a, 23b, 24a, 24b, 25a, 25b, 42a〜42c, 44a〜44c, 46a〜46c, 47a〜47…フォーカス用マークの光検出器面上での照射状態、
22’a〜22’c, 43a〜43c, 45a〜45c …フォーカス用マークの受光領域、26a〜26c, 28a〜28c, 29a〜29c…チルト用マークの光検出器面上での集光状態、27a〜27c…チルト用マークの受光領域、Sa22, Sb22, Sa23, Sb23, Sa1, Sb1, Sa43〜Sc43, Sa45〜Sc45, Sa2〜Sc2…フォーカス用マーク検出信号、l1〜l17…フォーカス用マーク検出信号強度、d0〜d6…フォーカス用マーク間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率または吸収率変化を利用して、情報を再生する情報記録媒体であって、
前記情報記録媒体中の所定の情報層に対し、少なくとも光軸方向の前後に、フォーカス制御用のマークが設けられていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項2】
前記フォーカス制御用のマークは、前記光軸方向の前後に2つ設けられ、前記2つのフォーカス制御用のマークは、前記光軸に対して垂直な面において、回折限界以上離間して設けられていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項3】
前記フォーカス制御用のマークは、前記光軸方向の前後に2つ設けられ、前記2つのフォーカス制御用のマークの前記光軸方向の間隔は、焦点深度よりも長いことを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項4】
前記フォーカス制御用のマークは、前記光軸方向の前後に2つ設けられ、前記2つのフォーカス制御用のマークの少なくとも一方は、他の情報層のフォーカス制御用のマークと兼ねていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項5】
前記フォーカス制御用のマークは、前記所定の情報面と同一面に1つと、前記光軸方向の前後に2つ設けられ、前記3つのフォーカス制御用のマークは、それぞれ前記光軸に対して垂直な面において、回折限界以上離間して設けられていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項6】
前記光軸方向の前後に設けられた2つのフォーカス制御用のマークの前記光軸方向の間隔は、焦点深度よりも長いことを特徴とする請求項5記載の情報記録媒体。
【請求項7】
前記3つのフォーカス制御用のマークの少なくとも1つは、他の情報層のフォーカス制御用のマークと兼ねていることを特徴とする請求項1記載の情報記録媒体。
【請求項8】
光源からの光を情報記録媒体に照射して撮像することにより、前記情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生方法であって、
前記情報記録媒体中の所定の情報層に対し、少なくとも光軸方向の前後に設けられたフォーカス制御用のマークを用いて、フォーカス制御を行って、前記所定の情報層にフォーカスを合わせ、
前記所定の情報層を撮像することによって、前記所定の情報層に記録された情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【請求項9】
前記所定の情報層にフォーカスを合わせた後、前記情報層の角部に設けられたチルトマークを用いてチルト調整を行うことを特徴とする情報再生方法。
【請求項10】
光源からの光を情報記録媒体に照射して撮像することにより、前記情報記録媒体に記録された情報を再生する情報再生方法であって、
前記情報記録媒体の再生条件情報領域から再生条件を読みだすステップと、
前記再生条件に基づいて、再生パワーを調整するステップと、
前記情報記録媒体の媒体固有情報領域から、媒体固有情報を読みだすステップと、
前記媒体固有情報から、再生対象層のアドレス情報を取得するステップと、
前記アドレス情報に基づいて、前記再生対象層の少なくとも光軸方向の前後に設けられたフォーカス制御用のマークを用いて、フォーカス制御を行って、前記再生対象層にフォーカスを合わせるステップと、
前記再生対象層を前記再生パワーで撮像することによって、前記再生対象層に記録された情報を再生することを特徴とする情報再生方法。
【請求項11】
前記媒体固有情報領域が設けられた媒体固有情報層の少なくとも光軸方向の前後に設けられたフォーカス制御用のマークを用いて、フォーカス制御を行って、前記媒体固有情報層にフォーカスを合わせ、前記媒体固有情報層を撮像することによって、前記媒体固有情報層に記録された媒体固有情報を再生することを特徴とする請求項10記載の情報再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図25】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−97834(P2013−97834A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239886(P2011−239886)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】