説明

光記録媒体

【課題】 環境湿度が変化した場合であっても変形が少なく、また表面耐久性が高い光記録媒体を提供すること。
【解決手段】 少なくとも、基板、透明樹脂層b、及び透明樹脂層aをこの順に積層した光記録媒体であって、透明樹脂層aの弾性率が1000MPa以上2500MPa以下であり、透明樹脂層bの弾性率が100MPa以上1300MPa以下であることを特徴とする、光記録媒体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録再生ディスク等の光記録媒体に関するものである。さらに詳しくは、環境湿度の変化に対応可能であり、かつ表面耐久性に優れ、高密度型光ディスク等にも利用可能な光記録媒体を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、動画情報等の膨大な情報を記録ないし保存する情報記録の媒体として再生専用光ディスクや光記録ディスク等の光情報媒体が多く用いられるようになってきた。その中の一つとして、例えば波長400nmのレーザー光を利用する高密度型光ディスク(いわゆるブルーレイディスク、以下適宜「ブルーレイディスク」ともいう。)が提案されている(特許文献1参照。)。
【0003】
上記ブルーレイディスクは樹脂基板、反射層、記録層、保護層等の層を具備する光記録媒体であるが、ディスク表面に対しては局部的な圧力や傷への耐久性が求められる。一方、ディスク全体に対しては、温度や湿度といった環境が変化しても安定的に情報の読み書きができるように、温度や湿度を急激に変化させてもディスクの変形が小さいこと等が求められる。
【0004】
特許文献2には、透明性、耐磨耗性、記録膜保護性、及び機械特性に優れ、さらに耐熱・耐湿変形性にも優れる放射線硬化性組成物(ウレタンアクリレートを含有する放射線硬化性組成物)が記載されており、この放射線硬化性組成物を用いた光記録媒体が提案されている。上記特許文献2では、上記光記録媒体を長時間、高温高湿下に保存した後、室温に戻して長時間保存した後における変形が少ないことが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開平11−273147号公報
【特許文献2】特開2003−263780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の上記光記録媒体では、温度や湿度を急激に変化させたときのディスクの変形の抑制については不十分であり、同時に更に表面に対する局部的な圧力への耐久性を満足させることは難しかった。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものである。即ち、本発明の目的は、環境湿度が変化した場合であっても変形が少なく、また表面耐久性が高い光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意研究したところ、光記録媒体の保護において、比較的弾性率の低い層と、比較的弾性率の高い層とを2層構成にすることにより、環境湿度変化に対する変形抑制と、高い表面耐久性を両立しうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも、基板、透明樹脂層b、及び透明樹脂層aをこの順に積層した光記録媒体であって、透明樹脂層aの弾性率が1000MPa以上2500MPa以下であり、透明樹脂層bの弾性率が100MPa以上1300MPa以下であることを特徴とする、光記録媒体に存する(請求項1)。
【0010】
このとき、該透明樹脂層aの弾性率が、該透明樹脂層bの弾性率より大きいことが好ましい(請求項2)。
【0011】
また、該透明樹脂層bの膜厚に対する、該透明樹脂層aの膜厚の膜厚比が、10/90以上60/40以下であることが好ましい(請求項3)。
【0012】
また、該透明樹脂層aが放射線硬化性組成物αの硬化物であって、該放射線硬化性組成物αが(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有し、該放射線硬化性組成物α中における(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が、15重量%以上90重量%以下であることが好ましい(請求項4)。
【0013】
このとき、該(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物が、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい(請求項5)。
【0014】
また、該透明樹脂層bが放射線硬化性組成物βの硬化物であって、該放射線硬化性組成物βが(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物、及び(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有し、該放射線硬化性組成物β中における(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が、10重量%以上70重量%以下であることが好ましい(請求項6)。
【0015】
このとき、該(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、ポリエーテル骨格を含有することが好ましい(請求項7)。
【0016】
また、上記の光記録媒体が、青色レーザーを用いて再生を行うことが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境湿度が変化した場合であっても変形が少ないため、安定して使用することが可能であり、かつ表面耐久性に優れた光記録媒体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の例示に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々に変更して実施することができる。
【0019】
なお、「(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物」、「(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物」、及び「(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物」の冒頭に付した、(A)、(B)、及び(C)は、各化合物を識別するための符合に過ぎない。
【0020】
現在、一般的に用いられている光記録媒体としては、再生専用型の媒体(ROM媒体)、一度の記録のみ可能な追記型の媒体(Write Once媒体)、または記録消去を繰り返し行える書き換え可能型の媒体(Rewritable媒体)がある。
【0021】
これらの光記録媒体は、それぞれの目的に応じた層構成を採用することができる。例えば、再生専用型の媒体においては、再生用の凹凸を形成した基板面に、通常、例えばアルミニウム、銀、金等の金属を含有する反射層が形成されていることが好ましい。
追記型の光記録媒体においては、記録再生機能層を形成した面に保護膜が形成されることが好ましい。記録再生機能層は、通常、例えばアルミニウム、銀、金等の金属を含有する反射層と有機色素を含有する記録層とをこの順に基板上に設けることによって構成される。
また、書き換え可能型の光記録媒体においても、記録再生機能層を形成した面に保護膜が形成されることが好ましい。記録再生機能層は、通常、例えばアルミニウム、銀、金等の金属を含有する反射層と、誘電体層と、記録層と、誘電体層とをこの順に基板上に設けることによって構成される。
【0022】
一方、光記録媒体の記録再生のためのレーザー(以下、適宜「記録再生光」ということがある。)の波長は、CD、DVD、ブルーレイディスク、HDDVD等、その規格によって、最適な波長の光を用いることができる。近年のリッチコンテンツの普及に伴い、光記録媒体の高密度化、高容量化の要請が高まる中で、より波長の短い青色レーザーを用いる研究が盛んに成されている。
【0023】
この青色レーザーを記録再生に用いる光記録媒体のことを、本明細書においては「次世代高密度光記録媒体」という。具体的に次世代高密度光記録媒体とは、基板において誘電体膜、記録膜、反射膜など(以下、これらの層を総称して適宜「記録再生機能層」ということがある。)を形成した面に保護膜が形成される光記録媒体であって、波長が通常350nm以上、好ましくは380nm以上、また、通常450nm以下、好ましくは430nm以下の記録再生光を用いる光記録媒体を意味する。
【0024】
本発明の光記録媒体は、上記のいずれの種類の光記録媒体にも適用することができる。則ち、ROM媒体、Wirte Once媒体、及びRewritable媒体の何れにも適用することができる。さらに、本発明の光記録媒体に用いる記録再生光の波長に関しても、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、高密度、高容量化の要請から青色レーザーを用いることが好ましく、則ち次世代高密度光記録媒体に適用することが好ましい。
【0025】
本発明の光記録媒体は、少なくとも基板、透明樹脂層b、及び透明樹脂層aをこの順に積層した光記録媒体である。また、これらの層の他に反射層、記録層等の他の層を備えていてもよい。
これらの層の構成は、光記録媒体として通常用いられている層構成であれば制限はない。従って、基板と透明樹脂層bとの間に他の層を有していてもよいし、透明樹脂層bと透明樹脂層aとの間に他の層を有していてもよいし、透明樹脂層bの透明樹脂層aとは反対側に他の層を有してもよい。
【0026】
ここで、典型的な層構成の一例を挙げると、基板、反射層、記録層、透明樹脂層b、透明樹脂層aという順に層が形成された層構成がある。この層構成は追記型や書き換え可能型の光記録媒体に好ましく用いられる。
また、他の層構成の一例としては、基板、記録層、反射層、透明樹脂層b、透明樹脂層aという順に層が形成された層構成がある。この層構成は再生専用型の光記録媒体に好ましく用いられる。
【0027】
また、例えば、記録層と反射層とをそれぞれ2つ有する2層式の層構成をとってもよい。2層式の層構成の場合、基板の上に順に積層してもよいが、記録層と反射層とを一対積層したものを、2枚貼合せて形成していてもよい。貼り合わせるときには、貼合せる面に接着層を設けてもよい。また、3層式以上の層構成であってもよい。
さらには、必要に応じてハブを付け、カートリッジへ組み込んでもよい。
【0028】
以下、本発明の光記録媒体において、上記の各層につき詳細に説明する。
【0029】
[1.透明樹脂層a・透明樹脂層b]
透明樹脂層bは、透明樹脂層b用材料を用いて形成される。透明樹脂層b用材料は、好ましくは放射線硬化性を有する液状の化合物である。透明樹脂層b用材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
透明樹脂層bの形成方法としては、例えば、複数種の透明樹脂層b用材料を混合した放射線硬化性組成物βを、スピンコート法によって塗布した後、放射線を照射する方法等が挙げられる。
【0030】
また、透明樹脂層aは、透明樹脂層a用材料を用いて形成される。透明樹脂層a用材料は、好ましくは放射線硬化性を有する液状化合物である。透明樹脂層a用材料は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
透明樹脂層aの形成方法としては、例えば、透明樹脂層bと同様に、複数種の透明樹脂材料aを混合した放射線硬化性組成物αをスピンコート法によって塗布した後、放射線を照射する方法等が挙げられる。
【0031】
なお、透明樹脂層bと透明樹脂層aとを合わせて保護層ということがある。以下、これらの層について詳述する。
【0032】
<1−1.保護層>
本発明の光記録媒体における保護層は、透明樹脂層bと透明樹脂層aとを合わせて構成される。
【0033】
保護層を構成する透明樹脂層bの25℃における弾性率は、通常100MPa以上であり、好ましくは200MPa以上であり、より好ましくは400MPa以上であり、また、通常1300MPa以下であり、好ましくは1000MPa以下であり、より好ましくは800MPa以下であり、更に好ましくは600MPaである。これにより、環境温度が変化した際の光記録媒体の変形を少ないものとすることが可能となる。
【0034】
また、保護層を構成する透明樹脂層aの25℃における弾性率は、通常1000MPa以上であり、好ましくは1350MPa以上であり、より好ましくは1500MPa以上であり、また、通常2500MPa以下であり、好ましくは2200MPa以下であり、より好ましくは2000MPa以下である。これにより、光記録媒体の保護層側表面が、局部的な圧力に対する変形によって信号特性が悪化するのを防止することが出来る。
上記弾性率とは、0.1mm厚のフィルムを形成し、引っ張り強度試験機を用い、引っ張り速度1mm/分にて引っ張り試験を行った際の弾性率を意味する。
【0035】
透明樹脂層aの弾性率は、透明樹脂層bの弾性率より大きい方が好ましい。具体的には、弾性率の差が200MPa以上、好ましくは400MPa以上、更に好ましくは600MPa以上である。
【0036】
なお、保護層を構成する透明樹脂層aは、JIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度で、通常6B以上、好ましくは4B以上、さらに好ましくはB以上、好ましくはHB以上である。
【0037】
保護層は、通常、平面円環形状を有しており、記録再生に用いられるレーザー光を透過可能な材料により形成されている。保護層の透過率は、記録・再生に用いられる光の波長において、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは89%以上である。このような範囲であれば、記録再生光の吸収による損失を最小限にすることができる。一方、透過率は100%になることが最も好ましいが、用いる材料の性能上、通常99%以下となる。
【0038】
このような保護層は、光ディスクの記録再生に用いる波長付近のレーザー光に対して十分に透明性が高く、かつ基板上に形成された記録層を水や塵埃から保護するような性質を持つことが望ましい。
加えて、保護層の表面硬度はJIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験による表面硬度がB以上であるのが好ましい。硬度が小さすぎると、表面に傷が付きやすい可能性がある。また、硬度が大きすぎると、硬化物が脆くなる可能性となり、クラックや剥離が生じやすくなる可能性がある。保護層の表面硬度が不足している場合は、透明樹脂層aの上に、後述のハードコート層を形成し、その不足を補うこともできる。
【0039】
さらに、保護層は、その接する層との密着性が高いほうが好ましい。さらに経時密着性も高いほうが好ましく、温度80℃、相対湿度85%の環境下に100時間、さらに好ましくは200時間置いた後の前記保護層とその接する層の密着面積の割合が、置く前の密着面積の50%以上を保持しているのが好ましく、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは100%である。
【0040】
保護層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上、さらに好ましくは70μm以上、特に好ましくは85μm以上、また、通常300μm以下、好ましくは130μm以下、より好ましくは115μm以下である。膜厚をこのような範囲とすれば、保護層表面に付着したゴミや傷の影響を低減することができ、また記録層や反射層を外気の水分等から保護するのに十分な厚さとすることができる。また、スピンコートなどで用いられる一般的な塗布方法で均一な膜厚を容易に形成することができる。保護層は記録層や反射層をカバーする範囲において均一な膜厚で形成されることが好ましい。
【0041】
保護層を構成する透明樹脂層bの膜厚に対する、透明樹脂層aの膜厚の膜厚比は、好ましくは10/90以上、より好ましくは25/75以上、また、好ましくは60/40以下、より好ましくは40/60以下である。透明樹脂層aの膜厚比が高すぎると、環境温湿度に対する光記録媒体の変形量が大きくなり、情報の再生や記録に支障を来す可能性がある。逆に透明樹脂層bの膜厚比が高すぎると、表面強度が低下し、局所的な力が一定時間以上付加された際にクリープ変形を起こしやすく、表面平滑性が損なわれ、それが原因で情報の再生や記録に支障を来す可能性がある。
【0042】
なお、保護層は、本発明の効果を著しく損なわない限り、透明樹脂層b及び透明樹脂層a以外の層を、任意の位置に有していてもよい。
【0043】
<1−2.透明樹脂層b>
以下、透明樹脂層b用材料、及び放射線硬化性組成物βについて説明する。なお、放射線硬化性組成物βを用いた透明樹脂層bの製造方法については、<1−4.保護層の形成方法>で説明する。
【0044】
<1−2−1.透明樹脂層b用材料>
透明樹脂層b用材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の材料を用いることが出来る。透明樹脂層bを形成するには、放射線硬化性を有する透明樹脂層b用材料を混合した液状組成物(放射線硬化性組成物β)を用いることが好ましい。
【0045】
透明樹脂層b用材料としては、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む放射線硬化性の化合物が好ましい。さらに透明樹脂層b用材料として、(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物(以下、適宜「(B)単官能アクリレート化合物」ということがある。)と、(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、適宜「(C)多官能アクリレート化合物」ということがある。)とを用いることが好ましい。また、その他の成分を含有していてもよい。
【0046】
<(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物>
本発明に係る透明樹脂層b用材料としての(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の方法で得ることが出来るが、通常、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を含有する化合物と、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られる。(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、ウレタンアクリレート化合物が好ましい。表面硬化性に優れ、タックが残りにくいためである。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0047】
(a.ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物とは、分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物である。本化合物を用いることで、本発明の光記録媒体が機械特性に優れるという利点を得ることが出来る。
【0048】
ポリイソシアネート化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることが出来るが、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等、およびこれらの多量体が挙げられる。
【0049】
中でも、得られるウレタンオリゴマーの色相が良好であるため、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびその多量体、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0050】
また、ポリイソシアネート化合物の分子量は、通常100以上、好ましくは150以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下である。分子量がこの範囲にあると、強度と弾性率とのバランスが良好であるという利点を得ることが出来る。
【0051】
(b.ヒロドキシル基を含有する化合物)
ヒロドキシル基を含有する化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることが出来る。中でも、2個以上のヒドロキシル基を含有するポリオール類が好ましく、その具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2,3,5−トリメチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、グリセリン、1,2−ジメチロールシクロヘキサン、1,3−ジメチロールシクロヘキサン、1,4−ジメチロールシクロヘキサン等のアルキレンポリオール類が挙げられる。ヒロドキシル基を含有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0052】
中でも、上述のポリオール類が、多量体等を形成するためのエーテル結合を有する、ポリエーテルポリオール化合物;多塩基酸との反応によるエステル結合、又は環状エステルの開環重合によるエステル結合を有する、ポリエステルポリオール化合物;又は、カーボネートとの反応によるカーボネート結合を有する、ポリカーボネートポリオール化合物であることが好ましい。
【0053】
ポリエーテルポリオール化合物の具体例としては、前記ポリオール類の多量体の他に、テトラヒドロフラン等の環状エーテルの開環重合体としてのポリテトラメチレングリコール;前記ポリオール類の、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、1,2−ブチレンオキサイド、1,3−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、エピクロルヒドリン等のアルキレンオキサイドの付加物;等が挙げられる。
【0054】
ポリエステルポリオール化合物の具体例としては、前記ポリオール類と、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等の多塩基酸との反応物、及び、カプロラクトン等の環状エステルの開環重合体としてのポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0055】
ポリカーボネートポリオール化合物の具体例としては、前記ポリオール類と、エチレンカーボネート、1,2−プロピレンカーボネート、1,2−ブチレンカーボネート等のアルキレンカーボネート、又は、ジフェニルカーボネート、4−メチルジフェニルカーボネート、4−エチルジフェニルカーボネート、4−プロピルジフェニルカーボネート、4,4’−ジメチルジフェニルカーボネート、2−トリル−4−トリルカーボネート、4,4’−ジエチルジフェニルカーボネート、4,4’−ジプロピルジフェニルカーボネート、フェニルトルイルカーボネート、ビスクロロフェニルカーボネート、フェニルクロロフェニルカーボネート、フェニルナフチルカーボネート、ジナフチルカーボネート等のジアリールカーボネート、又は、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ−n−プロピルカーボネート、ジイソプロピルカーボネート、ジ−n−ブチルカーボネート、ジイソブチルカーボネート、ジ−t−ブチルカーボネート、ジ−n−アミルカーボネート、ジイソアミルカーボネート等のジアルキルカーボネート等との反応物等が挙げられる。
【0056】
これらのポリオール類の中でも、ポリエーテル骨格を導入できるポリエーテルポリオール化合物が好ましく、さらにポリアルキレングリコールが好ましい。また、アルキレングリコールの中でも、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0057】
これらのポリオール類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0058】
また、通常ポリオール類の少なくとも一部、好ましくはポリオール類合計の15モル%以上、更に好ましくはポリオール類合計の30モル%以上のポリオール類の数平均分子量が、好ましくは200以上、より好ましくは400以上、また、好ましくは1500以下、より好ましくは800以下である。ポリオール類の数平均分子量がこの範囲であると、ウレタン結合を有するモノマーとしての吸水性や吸湿性が低くなり、硬化物として光記録媒体等に用いたときの記録層の腐食を抑制できるという利点が得られる。
【0059】
従って、ヒロドキシル基を含有する化合物としては、数平均分子量800以下のポリアルキレングリコールが好ましく、数平均分子量800以下のポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。
【0060】
(c.ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物)
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とは、ヒドロキシル基と(メタ)アクリロイル基とを併せ持つ化合物である。本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることができるが、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリシジルエーテル化合物と(メタ)アクリル酸との付加反応物、グリコール化合物のモノ(メタ)アクリレート体等が挙げられる。これらのヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0061】
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物の分子量は、通常40以上、好ましくは80以上、また、通常800以下、好ましくは400以下である。分子量が小さすぎると硬化収縮が増大する可能性があり、大きすぎると粘度が増大する可能性がある。
【0062】
(d.(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法)
ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を含有する化合物と、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを付加反応させることにより、(メタ)アクリロイル基を有する(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造することができる。その際、用いる原料量は、イソシアネート基とヒドロキシル基とが化学量論的に等量になるように仕込むことが好ましい。特に、ヒドロキシル基を含有する化合物としてジオールを用いることにより、得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は硬化物の密着性や表面硬化度がさらに増すという利点がある。
【0063】
なお、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造する際、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物の使用量を、上記ヒドロキシル基を含有する化合物と上記ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを合わせた全化合物に対して、通常20重量%以上、好ましくは40重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは60重量%以下とする。その割合に応じて、得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の分子量を制御することができる。使用量が少なすぎる場合、硬化収縮が大きくなる可能性がある。また、使用量が多すぎる場合、粘度が著しく増大する可能性がある。
【0064】
これらのポリイソシアネート化合物とヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物との付加反応は、所望の(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造できる限り、公知の何れの方法で行うことができる。例えば、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを、通常40℃以上、好ましくは50℃以上、また、通常90℃以下、好ましくは75℃以下の条件下で反応させる。温度が低すぎる場合、所望の(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物が製造できない可能性があり、温度が高すぎる場合、原料が分解してしまう可能性がある。
【0065】
この際、必要に応じて触媒を用いるが、この触媒はあらかじめヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物と混合しておくことが好ましい。
【0066】
反応時間は、所望の(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造できる限り、任意であるが、通常30分以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、また、通常48時間以下、好ましくは24時間以下、より好ましくは18時間以下である。反応時間が短すぎる場合、所望の(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物が製造できない可能性がある。また、反応時間が長すぎる場合、着色やゲル化の可能性が増す。
【0067】
なお、加熱の操作としては、前記原料混合物を所定の温度に加熱してもよいし、それぞれの原料及び必要に応じて用いられる触媒を単独又は2種以上の混合物の状態で所定の温度に加熱し、加熱した状態の原料及び必要に応じて用いられる触媒を混合してもよい。この際、加熱の方法、条件、装置等は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に決定することが出来る。
【0068】
混合の方法も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、ポリイソシアネート化合物存在下に、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物と、付加反応触媒との混合物を滴下することが好ましい。
【0069】
付加反応の触媒としては、所望の(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造できる限り任意であるが、例えば、ジブチルスズラウレート、ジブチルスズジオクトエート、ジオクチルスズジラウレート、及び、ジオクチルスズジオクトエート等が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0070】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を製造する際、上述の材料の他に、本発明の効果を著しく損なわない限り、その他の成分を含有させてもよい。また、上記以外の条件も、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意に決定することが出来る。
【0071】
(e.その他)
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、透明性の高い材料であることが好ましい。透明性の高い化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることが出来るが、例えば、芳香環を有しない化合物であることが好ましい。芳香環を含有する放射線硬化性組成物β及びその硬化物は、得られる化合物が着色していたり、最初は着色していなくても保存中に着色したり着色が強まったりすること(いわゆる黄変)がある。この原因は、芳香環を形成する二重結合部分が、エネルギー線によってその構造を不可逆的に変化させるからであると考えられている。このため、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、芳香環を有さない構造を持つことで、色相の悪化が無く、かつ光線透過性も低下することなく、オプトエレクトロニクス用途など、無色透明が要求される用途への応用に特に適する利点がある。
【0072】
芳香環を有しない(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、芳香環を有しないポリイソシアネート化合物と、芳香環を有しないヒドロキシル基を含有する化合物と、芳香環を有しないヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを付加反応することにより製造できる。
【0073】
芳香環を有しないポリイソシアネート化合物の具体例としては、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアナトシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0074】
芳香環を有しないヒドロキシル基を含有する化合物の具体例としては、アルキレンポリオール、アルキレンポリエステル、アルキレンカーボネートポリオール等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0075】
芳香環を有しないヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0076】
以上の原料を反応させて得られる(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、通常1000以上、好ましくは1500以上、また、通常10000以下、好ましくは5000以下である。重量平均分子量がこの範囲だと、粘度と機械特性とのバランスが良好なためである。
【0077】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の含有量は、放射線硬化性組成物β中、25重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは30重量%以上である。また、その上限は、95重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは90重量%以下である。含有量が少なすぎると硬化物を形成するときの成形性や機械強度が低下し、クラックが生じやすくなる可能性がある。含有量が多すぎると、硬化物の表面硬度が低下する可能性がある。
【0078】
<(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物>
本発明に係る透明樹脂層b用材料としての(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物(以下、単に「(B)単官能アクリレート化合物」ということがある。)としては、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外であって、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの単官能(メタ)アクリレート化合物を用いることができるが、特に単官能アクリレート化合物が、表面硬化性に優れ、タックが残らない点から好ましい。
ここで、単官能とは分子内に(メタ)アクリロイル基が1つ含有される化合物と定義される。
【0079】
単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ(メタ)アクリレート類や(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0080】
中でも(メタ)アクリロイルモルフォリン、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレート等の脂環式(メタ)アクリレートが好ましく、更には疎水性の高いテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン骨格を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
【0081】
これらの(B)単官能アクリレート化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0082】
なお、(B)単官能アクリレート化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは100以上、更に好ましくは150以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下である。分子量がこの範囲であると、粘度と収縮とのバランスが良いという利点が得られる。
【0083】
また、(B)単官能アクリレート化合物の含有量は、放射線硬化性組成物β中に10重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは15重量%以上であり、また、70重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。これらの(B)単官能アクリレート化合物が少なすぎると、放射線硬化性組成物βの粘度が高くなる可能性がある。また、多すぎると、放射線硬化性組成物βの硬化物(透明樹脂層b)としての機械物性が低下する可能性がある。
【0084】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、後述の(C)多官能アクリレート化合物との総和100重量部に対する、(B)単官能アクリレート化合物の含有量は、通常10重量部以上、好ましくは20重量部以上、更に好ましくは30重量部以上、また、通常70重量部以下、好ましくは50重量部以下、より好ましくは40重量部以下である。(B)単官能アクリレート化合物が少ないと、粘度が上昇して作業性が著しく低下するとともに、硬化速度が低下し、タックが残りやすくなる傾向がある。逆に多すぎると、本発明の光記録媒体の機械特性が低下する傾向にある。
【0085】
<(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物>
本発明に係る透明樹脂層b用材料としての(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物(以下、単に「(C)多官能アクリレート化合物」ということがある。)としては、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外であって、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のいずれの多官能(メタ)アクリレート化合物を用いることができるが、多官能アクリレート化合物が、表面硬化性に優れる点から好ましい。
ここで、多官能とは、分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上含有される化合物と定義される。
【0086】
(C)多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、脂鎖式ポリ(メタ)アクリレート、脂環式ポリ(メタ)アクリレート、芳香族ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0087】
(C)多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリイソブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールS等のビスフェノールのエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、またはブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA、ビスフェノールF、またはビスフェノールS等のビスフェノールの水添誘導体のジ(メタ)アクリレート、各種ポリエーテルポリオール化合物と他の化合物とのブロック、またはランダム共重合体のジ(メタ)アクリレート等のポリエーテル骨格を有する(メタ)アクリレート類、及び、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス[4−(メタ)アクリロイルオキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]プロパン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、p−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]キシリレン、4,4′−ビス[β−(メタ)アクリロイルオキシエチルチオ]ジフェニルスルホン等の2価の(メタ)アクリレート類、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、グリセリントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート等の3価の(メタ)アクリレート類、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート等の4価の(メタ)アクリレート類、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の5価以上の(メタ)アクリレート類等の不定多価の(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
【0088】
これらのうち、架橋生成反応の制御性から上記2価の(メタ)アクリレート類が好ましい。2価の(メタ)アクリレート類の具体例としては、脂鎖式ポリ(メタ)アクリレート、脂環式ポリ(メタ)アクリレート等が好ましく、さらには、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレートが好ましい。
【0089】
又、硬化物の架橋構造の耐熱性、表面硬度の向上等を目的として、3官能以上の(メタ)アクリレート類が好ましく用いられる。その具体例としては、上記に例示されたトリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリス(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等、及び、イソシアヌレート骨格を有する3官能の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0090】
これらの(C)多官能アクリレート化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは100以上、また、通常1000以下、好ましくは500以下である。分子量がこの範囲であると、粘度と収縮とのバランスが良いという利点が得られる。
【0091】
また、(C)多官能アクリレート化合物の含有量は、放射線硬化性組成物β中に1重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは1.5重量%以上である。また、その上限は、通常30重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは7重量%以下である。これらの(C)多官能アクリレート化合物が少なすぎると、放射線硬化性組成物βの弾性率が低くなりすぎる可能性がある。また、多すぎると、光記録媒体の変形が著しく増大する可能性がある。
【0092】
なお、(C)多官能アクリレート化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0093】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、(C)多官能アクリレート化合物との総和100重量部に対する、(C)多官能アクリレート化合物の含有量は、好ましくは1重量部以上、より好ましくは5重量部以上、また、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下である。(C)多官能アクリレート化合物が少ないと、光記録媒体の表面硬度が低下する傾向があり、多すぎると光記録媒体の環境温湿度変化に対する変形が著しく増大する可能性がある。
【0094】
<重合開始剤>
放射線硬化性組成物βは、放射線(例えば、活性エネルギー線、紫外線、電子線等)によって進行する重合反応を開始するために、重合開始剤を含有することが好ましい。中でも、放射線が活性エネルギー線、紫外線の場合、重合開始剤を含むことが特に好ましい。重合開始剤としては、光によりラジカルを発生する性質を有する化合物であるラジカル発生剤が一般的であり、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知の何れのラジカル発生剤を使用することが出来る。
【0095】
このようなラジカル発生剤の具体例としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、t−ブチルアントラキノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン等が挙げられる。
【0096】
中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、及び、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オンが好ましい。
【0097】
また、硬化速度が速く架橋密度を十分に上昇させることが出来るため、上記のラジカル発生剤のうち、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−1−〔4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル〕−2−メチル−プロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが特に好ましい。
【0098】
本発明に係る放射線硬化性組成物βの硬化物を、波長380〜800nmのレーザーを光源とする光記録媒体等に用いる場合には、読み取りに必要なレーザー光が十分に光透過層を通過するように、ラジカル発生剤の種類及び使用量を選択して用いることが好ましい。この場合、得られる光透過層がレーザー光を吸収し難い短波長感光型のラジカル発生剤を使用するのが特に好ましい。
【0099】
上記のラジカル発生剤のうち、このような短波長感光型のラジカル発生剤としては、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエート、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、メチルベンゾイルホルメート等が挙げられる。中でも、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等の水酸基を有するものが特に好ましい。
【0100】
なお、ラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0101】
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、(C)多官能アクリレート化合物との総和100重量部に対する、ラジカル発生剤の使用量は、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、更に好ましくは2重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは9重量部以下、更に好ましくは7重量部以下である。使用量が少なすぎると、放射線硬化性組成物βを十分に硬化させることができなくなる可能性がある。また、使用量が多すぎると、重合反応が急激に進行して、光学歪みの増大をもたらすだけでなく、色相も悪化する可能性がある。
【0102】
これらのラジカル発生剤と共に、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の成分を併用してもよい。例えば、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸アミル、4−ジメチルアミノアセトフェノン等の公知の増感剤を併用することができる。増感剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0103】
重合開始剤としてベンゾフェノン系重合開始剤を用いる場合、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、(C)多官能アクリレート化合物との総和100重量部に対する、ベンゾフェノン系重合開始剤の使用量は、通常0.5重量部以上、また、好ましくは2重量部以下、更に好ましくは1重量部以下である。ベンゾフェノン系重合開始剤量が多いと、硬化物中の揮発成分が多くなり、高温、高湿環境下での膜厚が減少する可能性がある。
【0104】
なお、放射線として、電子線によって重合反応を開始させる場合には、上記ラジカル発生剤を用いることも出来るが、ラジカル発生剤やその他の重合開始剤を使用しないことが好ましい。重合開始剤を使用しなくても十分硬化するためである。
【0105】
なお、ラジカル発生剤以外の重合開始剤としては、酸化剤等が挙げられる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0106】
重合開始剤には、塩素原子、硫黄原子、燐原子、ナトリウム原子等の不純物を含有していることがあるが、そのような不純物含有量は少ないことが好ましい。それぞれの含有量は好ましくは100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。不純物量が多すぎると、所望の放射線硬化性組成物βの硬化物が得られない可能性がある。
【0107】
<エポキシ基を含有する化合物>
本発明の光記録媒体の信号特性向上の目的で、放射線硬化性組成物β中に、エポキシ基を1個以上含有する化合物を含有させてもよい。エポキシ基はどのような形態、方法で含有されていても構わない。
【0108】
本発明に係るエポキシ基を分子中に1個以上含有する化合物としては、エポキシ基を有する化合物であれば特に制限されない。具体例としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノール又はアルキルフェノールのノボラック等の多価フェノール;グリコール類;トリメチロールプロパン等の多価アルコールをグリシジル化して得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸をグリシジル化して得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンやイソシアヌレート等のポリアミンをグリシジル化して得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;アミノフェノール、アミノアルキルフェノール等をグリシジル化して得られるグリシジルアミノグリシジルエーテル型エポキシ樹脂;3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート等の脂環族エポキサイド;等が挙げられる。
【0109】
これらのエポキシ基を分子中に1個以上含有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0110】
<補助成分>
本発明に係る放射線硬化性組成物βには、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、必要に応じて添加剤等の補助成分が含有されていてもよい。
その補助成分の具体例としては、酸化防止剤、熱安定剤、或いは光吸収剤等の安定剤類;ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、マイカ、タルク、カオリン、金属繊維、金属粉等のフィラー類;炭素繊維、カーボンブラック、黒鉛、カーボンナノチューブ、C60等のフラーレン類等の炭素材料類(フィラー類、炭素材料類を総称して無機成分と称する。);帯電防止剤、可塑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、沈降防止剤、界面活性剤、チクソトロピー付与剤等の改質剤類;顔料、染料、色相調整剤等の着色剤類;モノマー及び/またはそのオリゴマー、または無機成分の合成に必要な硬化剤、触媒、硬化促進剤類等が挙げられ、これらの補助成分は、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。これら補助成分の含有量は、放射線硬化性組成物βの通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、さらに好ましくは5重量%以下である。
【0111】
これらの中で、フィラー類としてのシリカについて詳述する。上記放射線硬化性組成物βに用いるシリカとは、珪素酸化物一般を指し、珪素と酸素との比率や、結晶であるかアモルファスであるかは問わない。上記シリカ粒子としては、工業的に生産されている、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、または粉体のシリカ粒子;アルコキシシラン等の原料から誘導、合成されたシリカ粒子等を挙げることができる。中でも、上記放射線硬化性組成物βに用いる場合、混合や分散のしやすさから、溶媒中に分散されている状態のシリカ粒子、または、アルコキシシラン等の原料から誘導、合成されたシリカ粒子が好ましい。
【0112】
上記シリカ粒子の粒径は任意であるが、TEM(透過型電子顕微鏡)等を用いた形態観察によって測定される数平均粒径として、好ましくは0.5nm以上、さらに好ましくは1nm以上であり、また、好ましくは50nm以下、より好ましくは30nm以下、さらに好ましくは15nm以下、特に好ましくは10nm以下、中でも好ましくは6nm以下である。シリカ粒子としては超微粒子であることが好ましいが、小さすぎると、超微粒子の凝集性が極端に増大して、硬化物の透明性や機械的強度が極端に低下する傾向があり、量子効果による特性が顕著でなくなる傾向があるためである。
【0113】
<1−2−2.放射線硬化性組成物βの製造方法>
放射線硬化性組成物βは、上記(A)ポリイソシアネート化合物、(B)単官能アクリレート化合物、及び(C)多官能アクリレート化合物、並びに必要に応じて用いられる上記重合開始剤や補助成分等を、放射線を遮断した状態で、攪拌し均一に混合することにより調製される。
【0114】
その際の各成分の混合順序としては、限定されるものではないが、低粘度の液体成分に高粘度の液体成分及び/または固体成分を加え攪拌することが好ましい。また重合開始剤は、最後に加えることが好ましい。
【0115】
また、その際の攪拌条件は、限定されるものではない。攪拌温度としては、通常常温とするが、通常90℃以下、好ましくは70℃以下の温度に加熱してもよい。
攪拌速度としては、通常100rpm以上、好ましくは300rpm以上、また、通常1000rpm以下である。
攪拌時間としては、通常10秒以上、好ましくは3時間以上、また、通常24時間以下である。
【0116】
<1−3.透明樹脂層a>
以下、透明樹脂層a用材料、及び放射線硬化性組成物αについて説明する。なお、放射線硬化性組成物αを用いた透明樹脂層aの製造方法については、<1−4.保護層の形成方法>で説明する。
【0117】
<1−3−1.透明樹脂層a用材料>
透明樹脂層a用材料は、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の材料を用いることが出来る。透明樹脂層aを形成するには、好ましくは前記透明樹脂層bと同様、放射線硬化性を有する透明樹脂層a用材料を混合した液状組成物(放射線硬化性組成物α)を用いることが好ましい。
【0118】
透明樹脂層a用材料としては、前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含む放射線硬化性の化合物が好ましい。さらに透明樹脂層a用材料として、前記(B)単官能アクリレート化合物を用いてもよいが、(B)単官能アクリレート化合物は用いないか、用いたとしてもなるべく少なくすることが好ましい。また、透明樹脂層a用材料として、前記(C)多官能アクリレート化合物を用いることが好ましい。また、その他の成分を含有していてもよい。
【0119】
<(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物>
本発明に係る透明樹脂層a用材料としての(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、前記透明樹脂層b用材料と同様、通常、ポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシル基を含有する化合物と、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて得られる。(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、ウレタンアクリレート化合物が好ましい。表面硬化性に優れ、タックが残りにくいためである。
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0120】
(a.ポリイソシアネート化合物)
ポリイソシアネート化合物としては、前記透明樹脂層bと同様の化合物を用いることができるが、中でも、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の多量体であるイソシアネート骨格を含む化合物が、本発明の光記録媒体の信号特性低下が起きにくく、好ましい。
ポリイソシアネート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0121】
(b.ヒロドキシル基を含有する化合物)
ヒドロキシル基を含有する化合物としては、前記透明樹脂層bと同様の化合物を用いることができるが、中でも、ポリエーテル骨格を導入できるポリエーテルポリオール化合物、及びポリエステル骨格を導入できるポリエステルポリオール化合物が好ましい。
ヒドロキシル基を含有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0122】
(c.ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物)
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物としては、前記透明樹脂層bと同様の化合物を用いることができる。
ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0123】
(d.(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の製造方法)
本発明に係る透明樹脂層a用材料としての(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、前記本発明に係る透明樹脂層b用材料としての(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と同様の方法で製造することができる。
【0124】
(e.その他)
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、透明性の高い材料であることが好ましい。透明性の高い化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意の化合物を用いることが出来るが、例えば、透明樹脂層b用材料と同様にして、芳香環を有しない化合物であることが好ましい。
また、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、通常500以上、好ましくは800以上、また、通常5000以下、好ましくは2000以下である。重量平均分子量がこの範囲だと、低硬化収縮率と高表面耐久性とが両立することができるためである。
【0125】
<(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物>
(B)単官能アクリレート化合物としては、前記透明樹脂層bと同様の化合物を用いることができるが、その含有量は少ないか、含有しないことが好ましい。(B)単官能アクリレート化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
具体的に好ましい含有量としては、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、後述の(C)多官能アクリレート化合物の総和100重量部に対して、通常30重量部以下、好ましくは20重量部以下、より好ましくは10重量部以下、更に好ましくは0重量部である。(B)の含有量が多すぎると、光記録媒体の保護層側表面が、局部的な圧力に対して変形しやすく、その影響で信号特性が悪化する傾向にある。
【0126】
<(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物>
(C)多官能アクリレート化合物としては、前記透明樹脂層bと同様の化合物を用いることができる。
中でも、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、等のポリアルキレングリコール骨格(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン=ジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキストリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラキステトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、等の脂肪族(メタ)アクリレート及びこれらのポリアルキレングリコール変性体が特に好ましい。
(C)多官能アクリレート化合物は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0127】
特に放射線硬化性組成物αにおいては、(C)多官能(メタ)アクリレートとしては、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラキストリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラキステトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート及びこれらのポリアルキレングリコール変性体である。3官能以上の(メタ)アクリレート化合物の含有量は、多官能(メタ)アクリレート中に好ましくは10重量%以上、更に好ましくは20重量%以上、また、好ましくは90重量%以下、更に好ましくは80重量%以下である。
【0128】
なお、(C)多官能アクリレート化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0129】
また、(C)多官能アクリレート化合物の含有量は、放射線硬化性組成物α中に15重量%以上であることが好ましく、より好ましくは20重量%以上、更に好ましくは25重量%以上である。また、その上限は、通常90重量%以下であることが好ましく、より好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下、特に好ましくは35重量%以下である。これらの(C)多官能アクリレート化合物が少なすぎると、光記録媒体の保護層側表面が、局部的な圧力に対して変形しやすく、その影響で信号特性が悪化しやすくなる傾向がある。逆に多すぎると、光記録媒体の環境温湿度変化に対する変形が著しく増大する可能性がある。
【0130】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、(C)多官能アクリレート化合物との総和に対する、(C)多官能アクリレート化合物の含有量は、好ましくは15重量部以上、より好ましくは20重量部以上、更に好ましくは25重量部以上、また、好ましくは90重量部以下、より好ましくは70重量部以下、更に好ましくは50重量部以下、特に好ましくは35重量部以下である。多官能アクリレート化合物が少ないと、光記録媒体の表面硬度が低下する傾向があり、多すぎると光記録媒体の環境温湿度変化に対する変形が著しく増大する可能性がある。
【0131】
<重合開始剤>
本発明に係る放射線硬化性組成物αは、放射線によって進行する重合反応を開始するために、重合開始剤としてラジカル発生剤を含有することが好ましい。ラジカル発生剤の具体例としては、前記透明樹脂層bに用いることのできる化合物と同様の化合物を挙げることができる。
重合開始剤は1種類を単独で用いてもよく、また2種類以上を任意の組み合わせ、及び比率で用いてもよい。
【0132】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物と、(B)単官能アクリレート化合物と、(C)多官能アクリレート化合物との総和100重量部に対する、ラジカル発生剤の使用量は、通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常10重量部以下、好ましくは6重量部以下、更に好ましくは4重量部以下、特に好ましくは2.5重量部以下である。使用量が少なすぎると、放射線硬化性組成物αを十分に硬化させることができなくなる可能性がある。また、使用量が多すぎると、重合反応が急激に進行して、光学歪みの増大をもたらすだけでなく、色相も悪化したり、光記録媒体の保護層側表面が、局部的な圧力に対して変形しやすく、その影響で信号特性が悪化しやすくなる傾向にある。
【0133】
<エポキシ基を含有する化合物>
本発明の光記録媒体の信号特性向上の目的で、放射線硬化性組成物α中に、エポキシ基を1個以上含有する化合物を含有させてもよい。エポキシ基はどのような形態、方法で含有されていても構わない。
【0134】
本発明に係るエポキシ基を分子中に1個以上含有する化合物の具体例としては、前記透明樹脂層bに用いることのできる化合物と同様の化合物を挙げることができる。
エポキシ基を分子中に1個以上含有する化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0135】
<1−3−2.放射線硬化性組成物αの製造方法>
放射線硬化性組成物αは、前記放射線硬化性組成物βと同様の方法で製造することができる。
【0136】
<1−4.保護層の形成方法>
保護層の製造方法は、所望の保護層を形成できる限り任意である。例えば、光記録媒体の基板上に、前記透明樹脂層b用材料(放射線硬化性組成物β)を塗布し、放射線(活性エネルギー線や電子線)を照射して重合反応を開始させる、いわゆる「放射線硬化」を行い、続いて前記投影樹脂層a用材料(放射線硬化性組成物α)を、同様に塗布および放射線硬化を行うことによって製造できる。上記塗布方法に制限はなく、例えばスピンコート法等、一般的な方法とすることができる。
【0137】
なお、基板上に反射層や記録層を形成した上に、上記の透明樹脂材料aを形成してもよいし、透明樹脂層aと透明樹脂層bとの間に他の層を形成してもよい。斯かる場合でも、透明樹脂層a、及び透明樹脂層bの硬化は、放射線を照射して重合反応を用いて行なうことが好ましい。
【0138】
上記放射線硬化性組成物α及び放射線硬化性組成物β(以下、これらの2種類を総称して単に「放射線硬化性組成物」ということがある。)の重合反応の形式に制限はなく、例えばラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合等の公知の重合形式を用いることができる。これら重合形式の例示のうち、特に好ましい重合形式はラジカル重合である。ラジカル重合では、重合反応の開始が重合系内で均質かつ短時間に進行することにより、生成物の均質性が高くなるものと推定されるためである。
【0139】
ここで、上記放射線とは、必要とする重合反応を開始する重合開始剤に作用して上記重合反応を開始する化学種を発生させる働きを有する電磁波(ガンマ線、エックス線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波等)、または粒子線(電子線、α線、中性子線、各種原子線等)である。本発明において好ましく用いられる放射線の一例は、エネルギーと汎用光源とを使用可能であることから、紫外線、可視光線、及び電子線が好ましく、特に好ましくは紫外線及び電子線である。
【0140】
放射線として紫外線を用いる場合、紫外線によりラジカルを発生する光ラジカル発生剤を上記重合開始剤として使用することが好ましい。この時、必要に応じて増感剤を併用してもよい。上記紫外線の波長は、通常200nm以上、好ましくは240nm以上、また、通常400nm以下、好ましくは350nm以下の範囲である。
【0141】
紫外線を照射する装置としては、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、マイクロ波によって紫外線を発生させる構造の紫外線ランプ等、公知の装置を好ましく用いることができる。上記装置の出力は通常10W/cm以上、好ましくは30W/cm以上、また、通常200W/cm以下、好ましくは180W/cm以下であり、上記装置は、被照射体に対して通常5cm以上、好ましくは30cm以上、また、通常80cm以下、好ましくは60cm以下の距離に設置するようにすると、被照射体の光劣化や熱劣化、熱変形等が少なく、好ましい。
【0142】
上記放射線硬化性組成物は、電子線によっても好ましく硬化することができ、機械特性、特に引張伸び特性に優れた硬化物を得ることができる。電子線を用いる場合、その光源及び照射装置は高価であるものの、重合開始剤の使用が省略可能であること、及び酸素による重合阻害を受けず、従って表面硬度が良好となるという利点がある。電子線照射に用いられる電子線照射装置としては、特にその方式に制限はないが、例えばカーテン型、エリアビーム型、ブロードビーム型、パルスビーム型等が挙げられる。電子線照射の際の加速電圧は通常10kV以上、好ましくは100kV以上、また、通常1000kV以下、好ましくは200kV以下が好ましい。
【0143】
これらの放射線は、照射強度を、通常0.1J/cm2以上、好ましくは0.2J/cm2以上、また、通常20J/cm2以下、好ましくは10J/cm2以下、より好ましくは5J/cm2以下、さらに好ましくは3J/cm2以下、特に好ましくは2J/cm2以下で照射する。照射強度がこの範囲内であれば、放射線硬化性組成物の種類によって適宜選択可能である。
【0144】
放射線の照射時間は通常1秒以上、好ましくは10秒以上、また、通常3時間以下、反応促進と生産性の点で好ましくは1時間以下である。放射線の照射エネルギーや照射時間が極端に少ない場合、重合が不完全なため保護層の耐熱性、機械特性が十分に発現されない場合がある。また、逆に極端に過剰な場合は黄変等の光による色相悪化に代表される劣化を生じる場合がある。
【0145】
上記放射線の照射は、一段階で照射してもよく、或いは複数段階で照射してもよい。その線源としては、通常、放射線が全方向に広がる拡散線源を用いる。放射線の照射は、通常、放射線硬化性組成物が塗布されたディスクを固定静置した状態、またはコンベアで搬送された状態で、放射線源を固定静置して行なう。
【0146】
透明樹脂層b、及び透明樹脂層aの弾性率の制御は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を構成するヒドロキシル基を含有する化合物の分子鎖の長さ、および(C)多官能アクリレート化合物の含有量と官能基数を変化させることによって行うことが出来る。
弾性率を上げるには、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を構成するヒドロキシル基を含有する化合物の分子鎖を短くしたり、(C)多官能アクリレート化合物の含有量を多くしたり、(C)多官能アクリレート化合物の官能基数を多くしたりすることによって可能となり、逆に弾性率を下げるには、(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を構成するヒドロキシル基を含有する化合物の分子鎖を長くしたり、(C)多官能アクリレート化合物の含有量を少なくしたり、(C)多官能アクリレート化合物の官能基数を少なくしたりすることによって可能となる。
【0147】
[2.ハードコート層]
本発明の光記録媒体は、前記保護層上にさらにハードコート層が形成されていてもよい。この場合のハードコート層は、表面硬度がB以上のものであれば、その種類は限定されず、一般的な光記録媒体におけるハードコート層として公知のものを用いることができる。また本発明におけるハードコート層の表面硬度は好ましくはB以上、より好ましくはHB以上、さらに好ましくはF以上、特に好ましくはH以上である。
なお、表面硬度はJIS K5400に準拠した鉛筆硬度試験によって測定することができる。
【0148】
ハードコート層の波長550nmにおける光線透過率は、通常80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは88%以上である。また、水に対する接触角が90°以上、より好ましくは100°以上である。これにより、光記録媒体の防汚性を高いものとすることができる。水に対する接触角の測定は、接触角計等を用いた公知の方法で実施することができる。
【0149】
ハードコート層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.5μm以上、好ましくは1μm以上、より好ましくは1.5μm以上である。また通常5μm以下、好ましくは3μm以下、より好ましくは2μm以下である。膜厚が薄すぎると表面硬度が低下する可能性があり、厚すぎるとクラックを生じやすくなる可能性がある。
【0150】
本発明に係るハードコート層は、前記水に対する接触角が高いこと等の防汚性を有していることが好ましい。防汚性を有するハードコート層の材料(以下、適宜「ハードコート剤」ということがある。)としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知の任意の材料を用いることが出来る。中でも、耐汚染性付与剤としてシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物と、多官能(メタ)アクリレートモノマー、エポキシ化合物、無機ナノ粒子等の無機成分とを含有する放射線硬化性の組成物が好ましく用いられる。耐汚染性付与剤については具体的には、例えば、オルガノポリシロキサン骨格等のシリコーン骨格を有する重合体、シリコーン骨格とアクリル基とを有する放射線硬化性の化合物、シリコーン系界面活性剤等のシリコーン化合物、フッ素原子を含有する重合体、フッ素原子とアクリル基を有する放射線硬化性の化合物、フッ素系界面活性剤等のフッ素化合物が挙げられる。耐汚染性付与剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0151】
ただし、青色レーザーを用いる光記録媒体等の高記録密度媒体の場合は、そのレーザースポット径が小さいため、指紋や塵、埃などの汚れに敏感である。特に指紋のように有機物を含む汚れについては、汚れが媒体のレーザー光入射側の表面に付着した場合、レーザーによる記録/再生エラー等の多大な影響を生じる可能性を有し、その除去もしにくいことがある。従って、本発明において用いることのできるハードコート剤は、耐汚染性付与剤としてのシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含む活性エネルギー線硬化性ハードコート剤(以下、適宜「ハードコート剤」ということがある。)が特に好ましく、中でも、活性エネルギー線硬化性を有する前記の耐汚染性付与剤を含有することが好ましい。また、前記シリコーン化合物はポリシロキサンであることが好ましい。
【0152】
ハードコート剤の好ましい具体例としては、例えば、(1)末端に活性エネルギー線硬化性を有するシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含み、無機成分を含まないハードコート剤、(2)活性エネルギー線硬化性基と、シリコーンユニット及び/又は有機フッ素基ユニットとを含む重合体を含有するハードコート剤、(3)側鎖に活性エネルギー線硬化性基を有するシリコーン化合物及び/又はフッ素化合物を含有するハードコート剤、が挙げられる。なお、これらのハードコート剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0153】
なお、ハードコート層を形成するのに用いられる材料の塗布方法は、限定されるものではなく、例えばスピンコート法等の一般的な塗布方法とすることができる。また、上記の放射線硬化性を有する材料物等の硬化に用いられる放射線については限定されず、例えば保護層の形成の際に用いられる放射線と同様に行うことができる。
【0154】
[3.背面層]
本発明の光記録媒体は、基板からみて、記録再生機能層とは反対の面に背面層が形成されていてもよい。本発明に用いられる背面層は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意に形成することが出来るが、25℃における弾性率が所定の範囲内であることが好ましく、具体的には、上限が2000MPa以下、好ましくは1500MPa以下である。また下限に制限はないが、保護層の弾性率より高いことが好ましい。上記背面層の弾性率が高すぎると、温度変化に対する光記録媒体の変形が大きくなり過ぎる可能性がある。上記弾性率の測定方法は、保護層の弾性率の測定方法と同様とすることができ、JIS K7127に準拠した方法にて測定することができる。
【0155】
背面層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り限定されないが、通常3μm以上、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは15μm以下である。背面層の膜厚が小さすぎると、背面層形成による光記録媒体変形の抑制効果がほとんど発揮されなくなる傾向にある。また大きすぎると、光記録媒体を積み重ねて保管したときに、光記録媒体同士が接触しやすくなり、外観を損ない、記録の読み出し時にエラーを生じやすくなる可能性がある。
【0156】
背面層の形成に用いられる材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、限定されない。具体的には、一般的に背面層の材料として公知のものを用いることができ、例えば上述した保護層と同様の材料を用いることができるが、上記弾性率が得られるものを選択的に用いることが好ましい。このような材料として、保護層の形成に用いられる放射線硬化性を有する化合物を用いることが特に好ましい。
【0157】
なお、背面層を形成する際に用いられる上記放射線硬化性を有する化合物の塗布方法は、限定されるものではなく、例えばスピンコート法等の一般的な塗布方法とすることができる。また、上記放射線硬化性を有する化合物の硬化に用いられる放射線についても限定されず、例えば保護層の形成の際に用いられる放射線と同様に行うことができる。
【0158】
本発明の光記録媒体は、基板の記録再生機能層とは反対の面に、温度変化に対する光記録媒体の変形を抑制する目的で、無機層等の薄膜がスパッタ等の手法で形成されていてもよいが、コストの面からは形成されないことが好ましい。
【0159】
[4.基板]
本発明に用いられる樹脂基板について制限は無く、光記録媒体の樹脂基板として公知のものを任意に用いることができる。光記録媒体の樹脂基板の形状は任意であるが、通常は円板形状に形成される。
【0160】
また、樹脂基板の材料は光透過性材料であれば他に制限は無い。即ち、光情報の記録や再生に用いる波長の光が透過しうる任意の素材で形成することができる。その具体例としては、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いることができる。中でもポリカーボネート樹脂は、CD−ROM等においても特に広く用いられているものであり、安価であるので特に好ましい。なお、樹脂基板の材料は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0161】
さらに、樹脂基板の寸法にも制限は無く任意である。ただし、樹脂基板の厚さは、通常0.1mm以上、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、また、通常20mm以下、好ましくは15mm以下、より好ましくは3mm以下である。中でも、1.2±0.2mm程度の厚さの樹脂基板がしばしば使用される。また、樹脂基板の外径は、一般的には120mm程度である。
また、樹脂基板の製造方法に制限は無く任意であるが、例えば、光透過性樹脂の射出成形などによって製造することができる。
【0162】
[5.反射層・記録層]
本発明の光記録媒体の反射層は、例えば、アルミニウム、銀、金等の金属を含有する物質をスパッタリング法等によって形成される。
本発明の光記録媒体の記録層は、基板に形成された凹凸層や、相変化物質や有機色素を含有する層が好ましく用いられる。
上記反射層や記録層等の他の層は、複数存在していてもよく、また、透明樹脂層bや透明樹脂層a中に存在してもよい。例えば、反射層及び記録層が2つずつ存在する光記録媒体の層構成の一例としては、基板、反射層、記録層、透明樹脂層bの一部、反射層、記録層、透明樹脂層bの残りの一部、透明樹脂層a、という層構成となる。
【0163】
[6.本発明の利点と本発明の効果が得られるメカニズム]
本発明により、環境湿度が変化した場合であっても変形が少なく、また表面耐久性が高い光記録媒体を提供することができる。
【0164】
しかし、なぜその様な効果が得られるかは、明らかになっていない。このことについて発明者は以下のように推測する。
【0165】
従来、透明性、耐磨耗性、記録膜保護性、及び機械特性に優れ、さらに耐熱・耐湿変形性にも優れる放射線硬化性組成物は開発されていたものの、温度や湿度を急激に変化させたときの光記録媒体の変形の抑制については不十分であった。さらに、同時に表面に対する局部的な圧力への耐久性も満足できるものではなかった。
【0166】
例えば、局部的な圧力への耐久性も満足させようとすると、保護層の弾性率を上げることになる。しかし、弾性率を上げると、温度や湿度を急激に変化させたときの光記録媒体の変形が起きやすくなり、さらに急激に湿度を変化させなくても経時的に光記録媒体の反りが生じる傾向が強まる。経時的な光記録媒体の反りは硬化条件等で調整はできるもの、急激な湿度変化に対する変形は避けることができず、局部的な圧力への耐久性とトレードオフの関係にあった。
【0167】
そこで、局部的な圧力への耐久性を向上させるための弾性率の高い透明樹脂層aと、急激な湿度変化による光記録媒体の反りを抑制するための弾性率の低い透明樹脂層bとを積層して保護層を形成した。
【0168】
ここで、急激な湿度の変化によって光記録媒体の反りを生じさせる力は、以下の式で定められる。
力=応力σ×断面積A
=(脱水収縮量ε×弾性率E)×断面積A
すなわち、急激な湿度変化による反りを抑制するためには、高い弾性率を有する透明樹脂層aの断面積をなるべく少なく(厚みをなるべく薄く)することが好ましい。
【0169】
従って、弾性率の高い透明樹脂層aによって局部的な圧力への耐久性を維持しつつ、その厚みを薄くし、さらに弾性率の低い透明樹脂層bを厚く積層することによって、急激な湿度変化による光記録媒体の反りを抑制しているものと考えられる。
【実施例】
【0170】
以下、本発明について、実施例を用いてされに詳細に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0171】
(放射線硬化性組成物αの調製)
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート41.9gとジブチルスズラウレート40mgとを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。
【0172】
温度が一定になったら、1,6−ヘキサンジオール11.1gとヘキサメチレンジアミン3量体(ローディア社製「トロネートHDT」)88.0gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌した。
【0173】
温度を70℃まで下げてから、ヒドロキシエチルアクリレート33.9gとメトキノン0.2gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。
【0174】
温度を50℃に下げた後、テトラヒドロフルフリルアクリレート(共栄社化学社製)25.0gを加え、更に3時間撹拌して、均一液状のウレタンアクリレートオリゴマー希釈液Aを得た。
【0175】
このウレタンアクリレートオリゴマー希釈液Aを、別のビーカーに72g取り、ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製)28.0g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製)3.0gを加え、撹拌翼を用いて室温にて3時間撹拌して、放射線硬化性組成物αを得た。
この組成物中の単官能アクリレート化合物の含有量は8.7重量%、多官能アクリレート化合物の含有量は27.2重量%である。
【0176】
この組成物を、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム上にスピンコートによって100μmの厚みに塗布し、高圧水銀ランプ(ジャテック社製;J−cure100)を用いて、波長365nmにおける照射量1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた後、PETフィルムから剥離して、放射線硬化性組成物αの硬化物のフィルムを得た。
このフィルムから10mm×100mmの短冊状のサンプルを5本切り出し、引っ張り強度試験機を用いて、テストスピード1mm/分の引っ張り試験を行って弾性率を求めたところ、その平均値は1750MPaであった。
【0177】
(放射線硬化性組成物βの調製)
攪拌器、還流冷却器、滴下漏斗、温度計を取り付けた4つ口フラスコにイソホロンジイソシアネート59.5gとジブチルスズラウレート40mgとを入れ、オイルバスにて70〜80℃に加熱し、温度が一定になるまで静かに撹拌した。
【0178】
温度が一定になったら、1,6−ヘキサンジオール11.3gとポリテトラメチレングリコール(三菱化学社製;数平均分子量650)24.6gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、温度を80℃に保ちながら2時間撹拌した。
【0179】
温度を70℃まで下げてから、ヒドロキシエチルアクリレート31.1gとメトキノン0.2gとの混合物を滴下漏斗にて滴下し、滴下が終わったら温度を80℃に保ち、10時間撹拌させ、ウレタンアクリレートオリゴマーを合成した。
【0180】
温度を50℃に下げた後、テトラヒドロフルフリルアクリレート(共栄社化学社製)73.5gを加え、更に3時間撹拌して、均一液状のウレタンアクリレートオリゴマー希釈液Bを得た。
【0181】
このウレタンアクリレートオリゴマー希釈液Bを、別のビーカーに98g取り、ノナンジオールジアクリレート(新中村化学社製)2.0g、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバスペシャルティケミカルズ社製)3.0gを加え、撹拌翼を用いて室温にて3時間撹拌して、放射線硬化性組成物βを得た。
この組成物中の単官能アクリレート化合物の含有量は35.0重量%、多官能アクリレート化合物の含有量は1.9重量%である。
【0182】
この組成物を、ガラス板上に貼り付けたPETフィルム上にスピンコートによって100μmの厚みに塗布し、高圧水銀ランプ(ジャテック社製;J−cure100)を用いて、波長365nmにおける照射量1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させた後、PETフィルムから剥離して、放射線硬化性組成物βの硬化物のフィルムを得た。
このフィルムから10mm×100mmの短冊状のサンプルを5本切り出し、引っ張り強度試験機を用いて、テストスピード1mm/minの引っ張り試験を行って弾性率を求めたところ、その平均値は530MPaであった。
【0183】
<実施例1>
(試験ディスクの作製)
直径120mm、厚み1.1mmの平滑なポリカーボネート製樹脂基板表面に、100nmの厚みのAg−Cu−Au反射層をスパッタにて形成した。
この反射層表面に、スピンコーターにて厚み80μmになるように放射線硬化性組成物βを塗布し、高圧水銀ランプ(ジャテック社製;J−cure100)を用いて、波長365nmにおける照射量1000mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、透明樹脂層bを得た。次いで、スピンコーターにて厚み20μmになるように放射線硬化性組成物αを塗布し、同様に硬化させて透明樹脂層aを得て、保護層を形成し、試験ディスクを得た。同様の操作により、試験ディスクを合計2枚得た。
【0184】
(対湿度ディスク変形評価試験)
作製したディスクのうち1枚を25℃、45%RH(相対湿度)に設定した環境下に3日間静置したのち、このディスクを25℃、90%以上RHの設定した恒温恒湿槽に3日間放置した。その後25℃、45%RHに設定した環境にディスクを取り出し、取り出し直後のディスクの反りd0を、変位センサ(キーエンス社製;型番「LT−9010」)によって、ディスクの中心から35mmの位置の変位を測定することによって求めた。ただし、保護層側に凹反りの場合をプラス、凸反りの場合をマイナスとした。
以後取り出して1時間後、2時間後、4時間後、6時間のディスクの反りd1246を測定によって求め、次式により、D1〜D6を計算した。
【0185】
1=|d1−d0
2=|d2−d0
4=|d4−d0
6=|d6−d0
【0186】
1、D2、D4、D6の中の最大値を、このディスクの「湿度変形値」とし、この値が0.06mm以上の場合を「×」、0.03以上0.06未満の場合を「△」、0.015以上0.03未満の場合を「○」、0.015未満の場合を「◎」と判定した。結果を表1に示す。
【0187】
(表面耐久性試験)
作製したディスクのうち残り1枚の保護層を上にして定盤の上に置き、保護層面上に、サンドブラストされた100mm角、厚み5mmのガラス板を重ね、その上に鋼鉄製のコルク台(重さ630g)を乗せ、1日間静置した。その後、コルク台とガラス板を静かに取り除き、すぐに目視及び偏光顕微鏡にて保護層表面を観察した。
【0188】
保護層表面にサンドブラストの跡が、全体面積の75%以上において目視観測された場合を「×」、全体面積の75%未満において目視観測された場合を「△」、目視で観測されないが偏光顕微鏡にて観測された場合を「○」、目視でも偏光顕微鏡でも観測されなかった場合を「◎」と判定した。結果を表1に示す。
【0189】
<実施例2>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを75μm、透明樹脂層aの厚みを25μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0190】
<実施例3>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを70μm、透明樹脂層aの厚みを30μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0191】
<実施例4>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを60μm、透明樹脂層aの厚みを40μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0192】
<実施例5>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを50μm、透明樹脂層aの厚みを50μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0193】
<実施例6>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを85μm、透明樹脂層aの厚みを15μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0194】
<実施例7>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを45μm、透明樹脂層aの厚みを55μmとした以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0195】
<比較例1>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層bの厚みを100μmとし、透明樹脂層aを形成しなかった以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0196】
<比較例2>
実施例1の試験ディスク作製において、透明樹脂層aの厚みを100μmとし、透明樹脂層bを形成しなかった以外は実施例1と同様に試験ディスクを作製した。対湿度ディスク変形評価試験、及び表面耐久性試験を表1に示す。
【0197】
【表1】

【0198】
これらの結果から、本発明の光記録媒体は、環境湿度が変化した場合であっても変形が少なく、また表面耐久性が高いことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の光記録媒体は、環境湿度が変化した場合であっても変形が少なく、また表面耐久性が高い。したがって、本発明はブルーレイディスク等の次世代高密度光記録媒体等も含む光記録媒体に好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基板、透明樹脂層b、及び透明樹脂層aをこの順に積層した光記録媒体であって、
透明樹脂層aの弾性率が1000MPa以上2500MPa以下であり、
透明樹脂層bの弾性率が100MPa以上1300MPa以下である
ことを特徴とする、光記録媒体。
【請求項2】
該透明樹脂層aの弾性率が、該透明樹脂層bの弾性率より大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の光記録媒体。
【請求項3】
該透明樹脂層bの膜厚に対する、該透明樹脂層aの膜厚の膜厚比が、10/90以上60/40以下である
ことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の光記録媒体。
【請求項4】
該透明樹脂層aが放射線硬化性組成物αの硬化物であって、
該放射線硬化性組成物αが(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有し、
該放射線硬化性組成物α中における(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が、15重量%以上90重量%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜3の何れか一項に記載の光記録媒体。
【請求項5】
該(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物が、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む
ことを特徴とする、請求項4記載の光記録媒体。
【請求項6】
該透明樹脂層bが放射線硬化性組成物βの硬化物であって、
該放射線硬化性組成物βが(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物、(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物、及び(C)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物を含有し、
該放射線硬化性組成物β中における(B)(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量が、10重量%以上70重量%以下である
ことを特徴とする、請求項1〜5の何れか一項に記載の光記録媒体。
【請求項7】
該(A)ウレタン(メタ)アクリレート化合物が、ポリエーテル骨格を含有する
ことを特徴とする、請求項6に記載の光記録媒体。
【請求項8】
青色レーザーを用いて再生を行う
ことを特徴とする、請求項1〜7の何れか一項に記載の光記録媒体。

【公開番号】特開2009−140588(P2009−140588A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317649(P2007−317649)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】