説明

光調整要素の駆動装置

【課題】NDフィルタ等の光調整要素を一定の角度に維持して駆動できるようにする。
【解決手段】開口部10aを画定するベース10、NDフィルタガラス20を移動自在にガイドするガイド機構及び駆動機構を備え、ガイド機構として、NDフィルタガラス20を保持する保持枠30、ベース10に固定された第1ガイドシャフト40、保持枠30に設けられて第1ガイドシャフト40を摺動自在に嵌合させる第1嵌合孔35と、保持枠30に固定された鉄芯としての第2ガイドシャフト50、ベースに設けられて第2ガイドシャフト50を摺動自在に嵌合させる第2嵌合孔71aを画定すると共にコイル80が巻回されたボビン70、保持枠30を第1ガイドシャフト40回りの一方向に回転付勢する第1磁石61及び第鉄球92と第2磁石62及び第2鉄球92を含む。これにより、NDフィルタガラス20の面角度を安定した一定の角度に維持しつつ駆動することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光量を調整するNDフィルタ等の光調整要素を駆動する駆動装置に関し、特に、CDあるいはDVD等の記録媒体に対してレーザー光を用いて情報を記録又は記録情報を再生する際に、NDフィルタ等の光調整要素を用いてレーザー光を調整するべく光ピックアップユニットに搭載される光調整要素の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光路上の開口部を通過する光の強さ又は光量を調整する絞り羽根、シャッタ羽根、NDフィルタ等の光調整要素を、開口部(光路上)に臨む位置と開口部から退避した位置との間で駆動する従来の駆動装置としては、駆動モータ、駆動モータにより揺動されるリンクあるいは揺動自在に形成された光調整要素(すなわち、絞り羽根,シャッタ羽根、あるいはNDフィルタ)等を備え、駆動モータが一方向及び他方向に回転すると、リンクを介してあるいは直接揺動して、光調整要素が開口部に臨む位置と開口部から退避した位置に移動してそれぞれ位置決めされるようになっている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
そして、光調整要素は、開口部を画定する基板等に沿って往復動(揺動)するように支持されており、特に被写体光の光量を調整する際には、被写体光の主光軸に対する光調整要素(の入射面又は射出面)の垂直度はそれ程重要視されていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2000−214514号公報
【特許文献2】特開2004−093874号公報
【特許文献3】特開2005−108970号公報
【特許文献4】特開2000−047122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、CD又はDVD等の光ピックアップユニットに対して、このような光調整要素特にNDフィルタが適用され、例えば青色のレーザー光が調整の対象となる場合、レーザー光の主光軸に対する光調整要素の面角度(入射面又は射出面の垂直度)が重要になり、光調整要素がガタツキを生じると、情報の記録又は再生を高精度に行うことができないという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、構造の簡略化、小型化、光軸方向における薄型化等を図りつつ、光が通る開口部に対して臨む位置と退避位置との間で、光調整要素の面角度が一定になるように、光調整要素を高精度に駆動することのできる光調整要素の駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光調整要素の駆動装置は、光を通す開口部を画定するベースと、開口部に対して臨む位置と退避位置との間で移動自在に支持される光調整要素と、光調整要素を移動自在にガイドするガイド機構と、光調整要素を駆動する駆動機構を備えた光調整要素の駆動装置であって、上記ガイド機構は、光調整要素を保持する保持枠と、ベースに固定された第1ガイドシャフトと、保持枠に設けられて第1ガイドシャフトを摺動自在に嵌合させる第1嵌合部と、保持枠及びベースの一方に固定された第2ガイドシャフトと、保持枠及びベースの他方に設けられて第2ガイドシャフトを摺動自在に嵌合させる第2嵌合部と、保持枠を第1ガイドシャフト回りの一方向に回転付勢する付勢手段を含む、ことを特徴としている。
この構成によれば、光調整要素を保持した保持枠は、その第1嵌合部がベースの第1ガイドシャフトに摺動自在に支持され、かつ、その第2ガイドシャフト(又は第2嵌合部)がベースの第2嵌合部(又は第2ガイドシャフト)に摺動自在に支持され、さらに、付勢手段により第1ガイドシャフト回りの一方向に回転付勢されているため、嵌合領域にガタツキ(遊び)があっても、保持枠(及び光調整要素)は一方向に付勢されつつ往復動自在にガイドされる。したがって、開口部を通る主光軸に対して光調整要素の面角度を安定した一定の角度に維持しつつ、光調整要素を高精度に駆動することができる。
これにより、この駆動装置が、例えば光ピックアップユニットに適用された場合、情報の記録又は再生を高精度に行うことができる。
【0007】
上記構成において、付勢手段は、保持枠及びベースの一方に固定された磁石と、保持枠及びベースの他方に固定された磁性部材からなる、構成を採用することができる。
この構成によれば、付勢手段が非接触による磁気的吸引力を用いる手法であるため、機械的接触による抵抗力が発生することなく、保持枠(及び光調整要素)を円滑にガイドしつつ往復動させることができる。
【0008】
上記構成において、第2ガイドシャフトは保持枠に固定され、第2嵌合部はベースに固定され、磁石は第2ガイドシャフトの両端に接合された第1磁石及び第2磁石からなり、磁性部材は、第1磁石及び第2磁石に対して、第1ガイドシャフト回りの一方向に偏倚すると共に第2ガイドシャフトの伸長方向の外側からそれぞれ略対向し得るようにベースに固定された第1磁性部材及び第2磁性部材からなる、構成を採用することができる。
この構成によれば、保持枠(及び光調整要素)は、その第1嵌合部がベースの第1ガイドシャフトにより摺動自在に支持され、その第2ガイドシャフトがベースの第2嵌合部により摺動自在に支持され、保持枠が移動範囲の一方端にあるとき、その第1磁石とベースの第1磁性部材が磁気的に吸引し合って光調整要素は所定の面角度に保持され、一方、保持枠が移動範囲の他方端にあるとき、その第2磁石とベースの第2磁性部材が磁気的に吸引し合って光調整要素は所定の面角度に保持さる。
このように、光調整要素が開口部に対して2ヶ所の位置に切り替えられた状態で、それぞれの位置において付勢力を発生する二組の磁石及び磁性部材を採用したことにより、光調整要素(の面角度)を所定の向きに高精度に保持することができる。
【0009】
上記構成において、駆動機構は、鉄芯を兼ねる第2ガイドシャフトと、第2ガイドシャフトの両端に接合された第1磁石及び第2磁石と、ベースに固定されかつ第2嵌合部を画定するボビンと、ボビンに巻回された励磁用のコイルを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、駆動機構が、鉄芯を兼ねる第2ガイドシャフト,第1磁石及び第2磁石、第2嵌合部を画定すると共にコイルが巻回されたボビン等を含むソレノイドとして形成されるため、コイルへの通電方向を切り替えることにより、第1磁石及び第2磁石と第2ガイドシャフトの間に生じる電磁力により、保持枠を往復動させることができる。
また、駆動機構がガイド機構の一部を兼ねるように形成されているため、部品点数を削減でき、構造の簡略化、装置の小型化、光軸方向における装置の薄型化等を達成することができる。
【0010】
上記構成において、第1磁性部材及び第2磁性部材は鉄球からなる、構成を採用することができる。
この構成によれば、磁石と鉄球の間に発生する磁力線を極力集中させて作用させることができるため、磁気的吸引力による付勢方向を所望の向きに確実に方向付けすることができる。
【0011】
上記構成において、ベースは、第1磁石及び第2磁石をそれぞれ当接させるべく第1磁性部材及び第2磁性部材の近傍にそれぞれ形成された第1ストッパ及び第2ストッパを有する、構成を採用することができる。
この構成によれば、第1磁石が第1ストッパに当接した状態で第1磁性部材との離隔距離を短くでき、又、第2磁石が第2ストッパに当接した状態で第2磁性部材との離隔距離を短くできる。これにより、それぞれに発生する磁気的吸引力を高めることができ、保持枠(及び光調整要素)を安定した角度でより確実に保持することができる。
【0012】
上記構成において、第1嵌合部は、密接かつ摺動自在に第1ガイドシャフトを嵌合させる第1嵌合孔であり、第2嵌合部は、隙間をもって摺動自在に第第2ガイドシャフトを嵌合させる第2嵌合孔である、構成を採用することができる。
この構成によれば、第1嵌合孔と第1ガイドシャフトが密接かつ摺動自在に嵌合することにより、保持枠をガタツキ無く高精度にガイドすることができ、付勢手段(磁石及び磁性部材)により一方向へ付勢された状態で第2嵌合孔と第2ガイドシャフト(鉄芯)が遊びをもって摺動自在に嵌合することにより、光調整要素の面角度を一定の角度に保持しつつ駆動機構(ソレノイド)により円滑に駆動することができる。
また、第2ガイドシャフトと第2嵌合孔との間に積極的に隙間(遊び)を設けたことにより、バラツキを抑えつつ、光調整要素を確実に片寄せして、その面角度を安定した一定角度に維持することができる。
【0013】
上記構成において、光調整要素は、光量を調整するNDフィルタを含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、開口部を通る光の主光軸に対して、NDフィルタの面角度(入射面及び射出面の角度)を一定の角度に維持することができる。したがって、例えば、青色レーザー光等を用いる光ピックアップユニットにこの駆動装置が適用された場合、CD又はDVD等の記録媒体に対して情報の記録または記録された情報の再生を高精度に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
上記構成をなす光調整要素の駆動装置によれば、構造の簡略化、小型化、光軸方向における薄型化等を達成しつつ、光が通る開口部に対して臨む位置と退避位置との間で光調整要素の面角度が一定になるように光調整要素を高精度に駆動することのできるため、特に、小型化等が要求される情報記録及び再生装置の光ピックアップユニットにおけるレーザー光等の調整を高精度に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図6は、本発明に係る駆動装置の一実施形態を示すものであり、図1は装置の外観斜視図、図2は装置の分解斜視図、図3及び図4は装置の平面図、図5及び図6は装置の概略側面図である。
【0016】
この駆動装置は、図1及び図2に示すように、開口部10aを画定するベース10、光調整要素としてのNDフィルタガラス20を保持する保持枠30、ベース10に固定された第1ガイドシャフト40、保持枠30に固定された第2ガイドシャフト50、保持枠30に固定された第1磁石61及び第2磁石62、ベース10に固定されたボビン70、ボビン70に巻回された励磁用のコイル80、ベース10に固定された第1磁性部材及び第2磁性部材としての第1鉄球91及び第2鉄球92等を備えている。
【0017】
ベース10は、図1ないし図4に示すように、樹脂材料等を用いて一面が開口した略矩形の箱状に形成され、その略中央部に主光軸Lをもつ光を通す略矩形の開口部10a、開口部10aの下方の両側において第1ガイドシャフト40を嵌合して固定する2つの取付孔11、開口部10aの上方領域においてボビン70を嵌合して固定する2つの取付孔12及び切り欠き13、第1鉄球91を固定する凹部14、第2鉄球92を固定する凹部15、第1磁石61が当接する第1ストッパ16、第2磁石62が当接する第2ストッパ17等を備えている。
ここで、第1ストッパ16及び第2ストッパ17は、第1鉄球91及び第2鉄球92の近傍において、それぞれ薄板状に形成されているため、第1磁石61が第1ストッパ16に当接した状態で第1鉄球91との離隔距離を短くでき、又、第2磁石62が第2ストッパ17に当接した状態で第2鉄球92との離隔距離を短くできる。これにより、それぞれに発生する磁気的吸引力を高めることができ、保持枠30(及びNDフィルタガラス20)を安定した角度でより確実に保持することができる。
【0018】
光調整要素としてのNDフィルタガラス20は、図1ないし図4に示すように、略矩形の薄板状のガラスプレート21、ガラスプレート21の左半分に積層されたNDフィルタ層22により形成されている。そして、右半分のガラスプレート21が進入した光の約98パーセント程度を通し、左半分のNDフィルタ層22が進入した光の約50パーセント程度を通すようになっている。
そして、NDフィルタガラス20は、保持枠30の後述する取付凹部32に嵌め込まれて、接着剤等により固着されるようになっている。
【0019】
保持枠30は、図1ないし図4に示すように、樹脂材料等を用いて、ベース10と対向する側の面が略平坦に形成され、ベース10の開口部10aに対向する領域に略矩形の切り欠き31、NDフィルタガラス20を固定するべく切り欠き31の周縁部に形成された略矩形の取付凹部32、第2ガイドシャフト50を固定するべく切り欠き31の上方両側に形成された2つの取付凹部33、第1磁石61及び第2磁石62をそれぞれ固定するべく取付凹部33の外側に形成された2つの取付凹部34、第1ガイドシャフト40を摺動自在に嵌合させるべく取付凹部32の下方両側に形成された第1嵌合部としての2つの第1嵌合孔35等を備えている。
2つの第1嵌合孔35は、第1ガイドシャフト40が密接した状態で摺動自在となる内径寸法に形成されている。
【0020】
すなわち、保持枠30に対しては、NDフィルタガラス20が取付凹部32に嵌合されて接着剤等により固着され、第1ガイドシャフト40が第1嵌合孔35に密接して摺動自在に嵌合され、第2ガイドシャフト50が取付凹部33に嵌合されて一体的に固着され、第1磁石61及び第2磁石62がそれぞれ取付凹部34に嵌合されて一体的に固着されている。
【0021】
第1ガイドシャフト40は、剛性の高い材料例えば金属材料等を用いて、図1ないし図4に示すように、断面が円形をなすと共にこの外径寸法が保持枠30の2つの第1嵌合孔35に対して密接に嵌合しかつ摺動自在となるように形成されている。
そして、第1ガイドシャフト40は、保持枠30の2つの第1嵌合孔35に摺動自在に挿入されると共にベース10の2つの取付孔11に嵌合されて固着されている。
第2ガイドシャフト50がボビン70の第2嵌合孔71aに嵌合されない状態で、保持枠30は、第1ガイドシャフト40回りに揺動自在となっている。
【0022】
第2ガイドシャフト50は、剛性が高くかつ磁性をもつ材料、例えば鉄等の材料を用いて、図1ないし図4に示すように、断面が円形をなすと共にこの外径寸法がボビン70の後述する1つの第2嵌合孔71aに対して隙間をもって嵌合しかつ摺動自在となるように形成されている。
そして、第2ガイドシャフト50は、保持枠30の2つの取付凹部33に嵌合固着されて保持枠30と一体的に移動するようになっている。
すなわち、第2ガイドシャフト50は、駆動機構としてのソレノイドの一部をなす鉄芯としても機能するようになっている。
【0023】
第1磁石61及び第2磁石62は、付勢手段の一方をなすものであり、図1ないし図4に示すように、2極に着磁された略立方体に形成されて、保持枠30の取付凹部34にそれぞれ嵌合されると共に第2ガイドシャフト50の端部に接合固着され、保持枠30と一体的に移動するようになっている。
そして、第1磁石61は、保持枠30が左向き(NDフィルタガラス20のガラスプレート21が開口部10aに臨む位置にかつNDフィルタ層22が開口部10aから退避した位置に)移動したとき、ベース10の第1ストッパ16に当接して、保持枠30を移動範囲の左端に位置決めし、第2磁石62は、保持枠30が右向き(NDフィルタガラス20のNDフィルタ層22が開口部10aに臨む位置にかつガラスプレート21が開口部10aから退避した位置に)移動したとき、ベース10の第2ストッパ17に当接して、保持枠30を移動範囲の右端に位置決めするようになっている。
【0024】
ボビン70は、樹脂材料等を用いて形成され、図1ないし図4に示すように、第2嵌合部としての第2嵌合孔71aを画定する円筒部71、円筒部71の両端に形成され2つの鍔部72、鍔部72の後方に突出して形成されベース10の取付孔12に嵌合される2つの嵌合ピン73等を備えている。第2嵌合孔71aは、第2ガイドシャフト50の外径寸法よりも若干大きい内径寸法に形成されている。
そして、ボビン70は、円筒部71の回りに励磁用のコイル80が巻回された状態で、その第2嵌合孔71aに第2ガイドシャフト50が遊びをもって摺動自在に嵌合され、2つの嵌合ピン73がベース10の取付孔12に嵌合されかつ2つの鍔部72の一部がベース10の切り欠き13に嵌合されてベース10に一体的に固着されている。
このように、第2嵌合孔71aに対して第2ガイドシャフト50が隙間(遊び)をもって摺動自在に嵌合されることにより、製造が容易になり、保持枠30が移動する際の抵抗力を減らすことができる。
【0025】
第1鉄球91及び第2鉄球92は、付勢手段の他方をなすものであり、図1ないし図6に示すように、鉄により球状に形成されて、ベース10の凹部14,15にそれぞれ嵌合固着されている。
そして、第1鉄球91及び第2鉄球92は、それぞれ第1磁石61及び第2磁石62に対して、図5及び図6に示すように、第1ガイドシャフト40回りの一方向(図5中の反時計回り及び図6中の時計回り)に、寸法Dだけ偏倚した位置に配置され、又、第2ガイドシャフト50の伸長方向の外側からそれぞれ略対向し得るようになっている。
【0026】
したがって、保持枠30(及びNDフィルタガラス20)が、第1嵌合孔35がベース10に固定された第1ガイドシャフト40により密接して摺動自在に支持され、第2ガイドシャフト(鉄芯)50がベース10に固定されたボビン70の第2嵌合孔71aにより遊びをもって摺動自在に支持された取付状態において、保持枠30が移動範囲の左端にあるとき、第1磁石61と第1鉄球91は、第2ガイドシャフト50の伸長方向に対して斜め方向に向かうように磁気的吸引力を及ぼす。すなわち、第1磁石61が図3に示すように第1ストッパ16に当接するように、かつ、第2ガイドシャフト50が図5に示すように第2嵌合孔71aに対して第1ガイドシャフト40回りの一方向(図5中の反時計回り)に偏るように磁気的吸引力を及ぼし合う。
また、上記取付状態において、保持枠30が移動範囲の右端にあるとき、第2磁石62と第2鉄球92は、第2ガイドシャフト50の伸長方向に対して斜め方向に向かうように磁気的吸引力を及ぼす。すなわち、第2磁石62が図4に示すように第2ストッパ17に当接するように、かつ、第2ガイドシャフト50が図6に示すように第2嵌合孔71aに対して第1ガイドシャフト40回りの一方向(図6中の時計回り)に偏るように磁気的吸引力を及ぼし合う。
【0027】
このように、保持枠30(及びNDフィルタガラス20)が開口部10aに対して2ヶ所の位置に切り替えられた状態で、それぞれの位置において磁気的付勢力を発生する二組の磁石及び磁性部材(第1磁石61及び第1鉄球91、第2磁石62及び第2鉄球92)を採用したことにより、保持枠30(及びNDフィルタガラス20)は、開口部10aを通る光の主光軸Lに対して所定の面角度(主光軸Lに対してNDフィルタガラス20の入射面及び射出面がなす角度)が一定となるようにガタツキ無く安定して高精度に維持されることになる。
また、付勢手段(磁石61,62及び鉄球91,92)が、非接触による磁気的吸引力を用いる手法であるため、機械的接触による抵抗力が発生することなく、保持枠30(及びNDフィルタガラス20)を円滑にガイドしつつ往復動させることができる。
磁性部材として鉄球91,92を採用したことにより、磁石61,62と鉄球91,92の間に発生する磁力線を極力集中させて作用させることができるため、磁気的吸引力による付勢方向を、所望の向きに確実に方向付けすることができる。これにより、保持枠30を片寄せしてガタツキを確実に防止することができる。
【0028】
上記構成において、NDフィルタガラス20を移動自在にガイドするガイド機構は、保持枠30、ベース10に固定された第1ガイドシャフト40、保持枠30に設けられ第1ガイドシャフト40を摺動自在に嵌合させる第1嵌合孔35、保持枠30に固定された第2ガイドシャフト50、ベース10に固定されたボビン70の第2嵌合孔71a、保持枠30に固定された第1磁石61及び第2磁石62、ベース10に固定された第1鉄球91及び第2鉄球92により形成されている。
このように、ガイド機構として、NDフィルタガラス20を挟むように配置された平行な二つのガイドシャフト40,50及び二つの嵌合孔35,71aを採用するため、NDフィルタガラス20を、その面角度を所望の向きに維持しつつ往復動自在にガイドすることができ、又、主光軸Lの方向において装置の薄型化を達成できる。
【0029】
また、上記構成において、NDフィルタガラス20を駆動する駆動機構は、鉄芯を兼ねる第2ガイドシャフト50、第2ガイドシャフト50の両端に接合されて付勢手段の一部も兼ねる第1磁石61及び第2磁石62、ベース10に固定されて第2嵌合部(第2嵌合孔71a)を兼ねるボビン70、ボビン70に巻回されたコイル80により、電磁駆動力を発生するソレノイドとして形成されている。
このように、駆動機構が、ソレノイドとして形成されているため、コイル80への通電方向を切り替えることにより、第1磁石61及び第2磁石62と第2ガイドシャフト50の間に生じる電磁力により、保持枠30を容易に往復動させることができる。
また、駆動機構がガイド機構の一部を兼用しているため、部品点数を削減でき、構造の簡略化、装置の小型化、主光軸Lの方向における装置の薄型化等を達成できる。
【0030】
次に、上記駆動装置の動作について、図3及び図4を参照しつつ説明する。
先ず、コイル80に非通電の状態で、図3に示すように、保持枠30がベース10に対して左側に保持されている、すなわち、第1磁石61が第1ストッパ16に当接して、第1磁石61と第1鉄球91の間の磁気的吸引力により保持されているとき、NDフィルタガラス20は、そのNDフィルタ層22が開口部10aから退避した位置(すなわち、ガラスプレート21が開口部10aに臨む位置)に位置付けられている。
この状態で、開口部10aを通る光(例えば、青色レーザー光)は、殆ど減光されることなくNDフィルタガラス20を通過する。
【0031】
次に、コイル80が一方向に通電されると、ソレノイドに発生する電磁駆動力により、保持枠30は、図4に示すように、ベース10に対して右向きに移動し、第2磁石62が第2ストッパ17に当接して停止する。ここで、コイル80を非通電にすると、第2磁石62と第2鉄球92の間の磁気的吸引力によりその位置に保持される。
このとき、NDフィルタガラス20は、そのNDフィルタ層22が開口部10aに臨む位置(すなわち、ガラスプレート21が開口部10aから退避した位置)に位置付けられている。
この状態で、開口部10aを通る光(例えば、青色レーザー光)は、約半分に減光されてNDフィルタガラス20を通過する。
【0032】
一方、図4に示す非通電の状態で、コイル80が逆向きに通電されると、ソレノイドに発生する電磁駆動力により、保持枠30は、図3に示すように、ベース10に対して左向きに移動し、第1磁石61が第1ストッパ16に当接して停止する。ここで、コイル80を非通電にすると、第1磁石61と第1鉄球91の間の磁気的吸引力によりその位置に保持される。
このとき、NDフィルタガラス20は、再びそのガラスプレート21が開口部10aに臨む位置(すなわち、NDフィルタ層22が開口部10aから退避した位置)に位置付けられている。
このように、コイル80への通電方向を切り替えるだけで、保持枠30に保持されたNDフィルタガラス20のNDフィルタ層22を、その面角度を主光軸Lに対して一定の角度に維持しつつ、開口部10aに望む位置と退避位置の間で容易に切り替えることができる。
【0033】
上記実施形態においては、第2ガイドシャフト50を保持枠30に一体的に移動するように設け、第2嵌合孔71aを画定するボビン70をベース10に固定した場合を示したが、これに限定されるものではなく、第1磁石61及び第2磁石62の配置場所を変更してソレノイドとして機能するように構成すれば、逆に、磁石61,62と第2ガイドシャフト50をベース10に固定し、第2嵌合孔71aを画定するボビン70を保持枠30に一体的に移動するように構成してもよい。
【0034】
上記実施形態においては、光調整要素として、NDフィルタ層22を部分的にもつNDフィルタガラス20を示したが、これに限定されるものではなく、複数段に亘って光透過率が変えられた複数のNDフィルタ層をもつもの、又はガラスプレート21を用いずNDフィルタそのものの材料により形成されたもの、さらには、面角度が要求される絞り羽根等その他の光調整要素を適用することができる。
【0035】
上記実施形態においては、付勢手段として、ベース10の左右両側に位置する第1鉄球91及び第2鉄球92と保持枠30に固定された第1磁石61及び第2磁石62からなる二組の磁石及び磁性部材を採用した場合を示したが、これに限定されるものではなく、ソレノイドとして機能する別の磁石を設ければ、保持枠30を常時一方向に付勢するように保持枠30の移動範囲の略中間領域に一組の磁石及び磁性部材を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上述べたように、本発明に係る光調整要素の駆動装置は、構造の簡略化、小型化、主光軸の方向における薄型化等を達成しつつ、光が通る開口部に対して臨む位置と退避位置との間で光調整要素の面角度を一定に維持しつつ光調整要素を高精度に駆動することができるため、特に小型化等が要求される情報記録及び再生装置の光ピックアップユニットにおけるレーザー光(例えば青色レーザー光)等の強さ調整を行う駆動装置として適用できるのは勿論のこと、NDフィルタ等に限らず、ガタツキを防止して面角度を一定に維持しつつ光調整要素を駆動する必要のあるものであれば、その他の光学装置にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る光調整要素の駆動装置の一実施形態を示す外観斜視図である。
【図2】本発明に係る光調整要素の駆動装置の一実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図1及び図2に示す駆動装置の平面図である。
【図4】図1及び図2に示す駆動装置の平面図である。
【図5】図1及び図2に示す駆動装置において第1磁石と第1鉄球の関係を示す右側面図である。
【図6】図1及び図2に示す駆動装置において第2磁石と第2鉄球の関係を示す左側面図である。
【符号の説明】
【0038】
10 ベース
10a 開口部
11,12 取付孔
13 切り欠き
14,15 凹部
16 第1ストッパ
17 第2ストッパ
20 NDフィルタガラス(光調整要素)
21 ガラスプレート(光調整要素)
22 NDフィルタ層(光調整要素)
30 保持枠(ガイド機構)
31 切り欠き
32,33,34 取付凹部
35 第1嵌合孔(第1嵌合部、ガイド機構)
40 第1ガイドシャフト(ガイド機構)
50 第2ガイドシャフト(鉄芯、ガイド機構、駆動機構)
61 第1磁石(付勢手段、ガイド機構、駆動機構)
62 第2磁石(付勢手段、ガイド機構、駆動機構)
70 ボビン
71 円筒部
71a 第2嵌合孔(第2嵌合部、ガイド機構)
72 鍔部
73 嵌合ピン
80 励磁用のコイル(駆動機構)
91 第1鉄球(第1磁性部材、付勢手段、ガイド機構)
92 第2鉄球(第2磁性部材、付勢手段、ガイド機構)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通す開口部を画定するベースと、前記開口部に対して臨む位置と退避位置との間で移動自在に支持される光調整要素と、前記光調整要素を移動自在にガイドするガイド機構と、前記光調整要素を駆動する駆動機構を備えた、光調整要素の駆動装置であって、
前記ガイド機構は、前記光調整要素を保持する保持枠と、前記ベースに固定された第1ガイドシャフトと、前記保持枠に設けられて前記第1ガイドシャフトを摺動自在に嵌合させる第1嵌合部と、前記保持枠及びベースの一方に固定された第2ガイドシャフトと、前記保持枠及びベースの他方に設けられて前記第2ガイドシャフトを摺動自在に嵌合させる第2嵌合部と、前記保持枠を前記第1ガイドシャフト回りの一方向に回転付勢する付勢手段を含む、
ことを特徴とする光調整要素の駆動装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記保持枠及びベースの一方に固定された磁石と、前記保持枠及びベースの他方に固定された磁性部材からなる、
ことを特徴とする請求項1記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項3】
前記第2ガイドシャフトは、前記保持枠に固定され、
前記第2嵌合部は、前記ベースに固定され、
前記磁石は、前記第2ガイドシャフトの両端に接合された第1磁石及び第2磁石からなり、
前記磁性部材は、前記第1磁石及び第2磁石に対して、前記第1ガイドシャフト回りの一方向に偏倚すると共に前記第2ガイドシャフトの伸長方向の外側からそれぞれ略対向し得るように前記ベースに固定された第1磁性部材及び第2磁性部材からなる、
ことを特徴とする請求項2記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項4】
前記駆動機構は、鉄芯を兼ねる前記第2ガイドシャフトと、前記第2ガイドシャフトの両端に接合された前記第1磁石及び第2磁石と、前記ベースに固定されかつ前記第2嵌合部を画定するボビンと、前記ボビンに巻回された励磁用のコイルを含む、
ことを特徴とする請求項3記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項5】
前記第1磁性部材及び第2磁性部材は、鉄球からなる、
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項6】
前記ベースは、前記第1磁石及び第2磁石をそれぞれ当接させるべく前記第1磁性部材及び第2磁性部材の近傍にそれぞれ形成された第1ストッパ及び第2ストッパを有する、
ことを特徴とする請求項3ないし5いずれかに記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項7】
前記第1嵌合部は、密接かつ摺動自在に前記第1ガイドシャフトを嵌合させる第1嵌合孔であり、
前記第2嵌合部は、隙間をもって摺動自在に前記第第2ガイドシャフトを嵌合させる第2嵌合孔である、
ことを特徴とする請求項1ないし6いずれかに記載の光調整要素の駆動装置。
【請求項8】
前記光調整要素は、光量を調整するNDフィルタを含む、
ことを特徴とする請求項1ないし7いずれかに記載の光調整要素の駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−257749(P2007−257749A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81866(P2006−81866)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】