説明

光走査装置、および、画像表示装置

【課題】光の照射に起因する温度上昇を抑制する。
【解決手段】本発明の光走査装置は、支持部と、光を反射するミラーが装着されるミラー装着部と、ミラー装着部の両端に互いに対向して形成され、ミラー装着部を支持部に対して回動可能に支持する一対のばね部と、ミラー装着部を回動駆動する駆動部と、を有し、一対のばね部の各々は、永久磁石が装着される、スリットが形成された板状の磁石装着部と、磁石装着部を支持部に対して回動可能に支持する第1のばねと、第1のばねと略同位置直線上に設けられ、ミラー装着部を磁石装着部に対して回動可能に支持する第2のばねと、を有し、駆動部は、ミラー装着部の回動軸に沿って永久磁石を囲むように配置されたヨークと、ヨークに巻き付けられ、導通によってヨークを励磁して、永久磁石に作用する磁場を発生させるコイルと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置、および、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミラーを回動させることで光を走査する光走査装置は、デジタル複写機、レーザプリンタ、バーコードリーダ、スキャナ、プロジェクタなどで広く用いられている。光走査装置としては、モータ駆動のポリゴンミラーやガルバノミラーなどが用いられてきた。
【0003】
一方、近年の微細加工技術の進歩に伴い、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いた光走査装置が大きな発展を遂げている。MEMS技術を用いた光走査装置としては、ミラーが装着されたミラー装着部の両端を弾性材料で形成されたばね部で支持し、ばね部を回動軸としてミラー装着部を回動駆動することで光走査するものがある。このような光走査装置は、モータ駆動のポリゴンミラーなどと比較して、構造が簡単であり、かつ半導体プロセスを用いた一体形成が可能であることから、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0004】
光走査装置を用いたプロジェクタなどの画像表示装置において、表示画像の輝度を上げるためには、光の照射パワーを上げる必要がある。
【0005】
一般に、ミラーでの光の反射率を100%とすることは困難であり、ミラーに照射された光の一部は、ミラーに吸収され熱が発生する。また、光の照射パワーを上げると、ミラーでの発熱量も大きくなる。
【0006】
上述のばね部を回動軸としてミラー装着部を回動させる光走査装置においては、ミラーで発生した熱は、ミラー装着部、ばね部を放熱経路として放熱される。ここで、ミラーで発生した熱の放熱が十分でないと、ミラーに歪みが発生したり、ばね部の温度が上昇して、共振周波数が所定値からずれたりして、安定した光の走査が困難になるという問題がある。
【0007】
そこで、特許文献1(特開2008−039861号公報)には、ミラー装着部のミラー装着面とは反対側の面にヒートシンクを取り付けることで、光の照射に起因する温度上昇を抑制する光走査装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2(特開2009−134029号公報)には、ミラー装着部と、支持部と、ミラー装着部および支持部とばね部を介して接続された板状の部材と、板状の部材の下面に対向する電極と、を有し、電極に電圧を印加することで生じる電極と板状の部材との静電力を用いてミラー装着部を回動駆動する光走査装置において、板状の部材の上面に接合膜を介してヒートシンクを取り付けた光走査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−039861号公報
【特許文献2】特開2009−134029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示の光走査装置においては、ヒートシンクが取り付けられるため、ミラー装着部の慣性モーメントが大きくなり、ミラー装着部を回動駆動させるための駆動エネルギーが増加するという問題がある。
【0011】
また、特許文献2に開示の光走査装置においては、ミラー装着部で発生した熱はばね部を介して板状の部材に伝わり、さらに、接合膜、ヒートシンクと伝わって放熱される。ここで、接合膜が放熱に対する抵抗となるため、特許文献2に開示の光走査装置においては、放熱の効果が低下するという問題がある。
【0012】
本発明の目的は、駆動エネルギーの増加を抑制しつつ、光の照射に起因する温度上昇を抑制し、安定した光の走査を行うことができる光走査装置、および、画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本発明の光走査装置は、
支持部と、
光を反射するミラーが装着されるミラー装着部と、
前記ミラー装着部の両端に互いに対向して形成され、前記ミラー装着部を前記支持部に対して回動可能に支持する一対のばね部と、
前記ミラー装着部を回動駆動する駆動部と、を有し、
前記一対のばね部の各々は、
永久磁石が装着される、スリットが形成された板状の磁石装着部と、
前記磁石装着部を前記支持部に対して回動可能に支持する第1のばねと、
前記第1のばねと略同位置直線上に設けられ、前記ミラー装着部を前記磁石装着部に対して回動可能に支持する第2のばねと、を有し、
前記駆動部は、
前記ミラー装着部の回動軸に沿って前記永久磁石を囲むように配置されたヨークと、
前記ヨークに巻き付けられ、導通によって前記ヨークを励磁して、前記永久磁石に作用する磁場を発生させるコイルと、を有する。
【0014】
上記目的を達成するために本発明の画像表示装置は、
変調された光束を生成する光束生成装置と、
前記光束を反射及び走査する上述の光走査装置と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、駆動エネルギーの増加を抑制しつつ、光の照射に起因する温度上昇を抑制し、安定した光の走査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】本発明の第1の実施形態の光走査装置の上面図である。
【図1B】図1Aに示す主フレームの上面図である。
【図1C】図1AのA−A’線に沿った断面図である。
【図2A】図1Aに示す主フレームの斜視図である。
【図2B】図1Aに示す光走査装置の斜視図である。
【図3A】図1Aに示す光走査装置の左偏向状態を示す図である。
【図3B】図1Aに示す光走査装置の右偏向状態を示す図である。
【図4】図1Aに示す光走査装置における放熱効果について説明するための図である。
【図5】本発明の光走査装置を備えた画像表示装置の構成例を示す図である。
【図6A】本発明の第1の実施形態の光走査装置の他の構成を示す上面図である。
【図6B】図6AのA−A’線に沿った断面図である。
【図7A】図6Aに示す光走査装置の左偏向状態を示す図である。
【図7B】図6Aに示す光走査装置の右偏向状態を示す図である。
【図8A】本発明の第2の実施形態の光走査装置における主フレームの上面図である。
【図8B】図8AのB−B’線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1Aは、本発明の第1の実施形態の光走査装置1の上面図である。また、図1Bは、図1Aに示す光走査装置1の主フレームの上面図である。また、図1Cは、図1AのA−A’線に沿った断面図である。
【0019】
本実施形態の光走査装置1は、図1Aに示すように、ミラー2と、永久磁石3と、主フレーム10と、駆動部20と、を有する。
【0020】
主フレーム10は、図1Bに示すように、ミラー装着部11と、支持部12と、一対のばね部13と、を有する。また、一対のばね部13の各々は、磁石装着部14と、第1のばね15と、第2のばね16と、を有する。
【0021】
駆動部20は、図1Cに示すように、ヨーク21と、コイル25と、を有する。
【0022】
ミラー2は、例えば、基板としてガラスを用い、そのガラス上に光を反射する反射膜として誘電体多層膜をコーティングしたものである。ミラー2は、例えば、矩形に形成され、ミラー装着部11に接着剤などを用いて固定される。
【0023】
永久磁石3は、例えば、サマリウムコバルト磁石やネオジム磁石などで構成され、磁石装着部14に接着剤などを用いて固定される。
【0024】
主フレーム10は、ミラー装着部11、支持部12、および、一対のばね部13(磁石装着部14、第1のばね15、第2のばね16)が、例えば単結晶シリコン基板やステンレスその他の金属基板など、適度な剛性を有する非磁性材料基板で、相互に一体に形成されている。また、主フレーム10は、図1Aから図1Cでは不図示のベースに支持部12において固定される。
【0025】
以下、主フレーム10の構成の詳細について、図1Bおよび図2Aを参照して説明する。なお、図2Aは、主フレーム10の斜視図である。
【0026】
ミラー装着部11は、枠状に形成され、枠の上面にミラー2が装着される。
【0027】
支持部12は、図2Aに示すように、ベース4に固定される。
【0028】
一対のばね部13は、ミラー装着部11の両端に互いに対向して形成され、ミラー装着部11のミラー装着面と略平行なX軸に沿って延在してミラー装着部11と支持部12とを接続し、ミラー装着部11を支持部12に対してX軸の回りに回動可能に支持する。
【0029】
磁石装着部14は、板状であり、永久磁石3が嵌入して装着される空孔部14aを有する。また、磁石装着部14は、スリットが形成されたスリット部14bを有する。スリット部14bは、放熱フィンとして機能する。なお、磁石装着部14の重心位置がX軸からずれると、駆動時に不要な振動が発生しやすくなり、安定した光走査を行うことが困難になる。そこで、スリット部14bは、X軸に対称に形成されていることが望ましい。
【0030】
第1のばね15は、支持部12と磁石装着部14とを接続し、磁石装着部14を支持部12に対してX軸の回りに回動可能に支持する。
【0031】
第2のばね16は、第1のばね15と略同一直線上に形成され、磁石装着部14とミラー装着部11とを接続し、ミラー装着部11を磁石装着部14に対して回動可能に支持する。
【0032】
駆動部20は、ミラー装着部11をX軸の回りに回動駆動する。
【0033】
以下、駆動部20の構成の詳細について、図1Cおよび図2Bを参照して説明する。なお、図2Bは、光走査装置1の斜視図である。
【0034】
永久磁石3は、図1Cに示すように、X軸(ミラー装着部11の回動軸)に対して略回転対照となるように装着されるとともに、矢印Mに示されるように、磁化方向がX軸と直交し、かつ、磁石装着部14の主面と平行となるように装着される。
【0035】
ヨーク21は、例えば、鉄系材料、フェライト材料、又はパーマロイ材料などを含む磁性材料で形成され、X軸に沿って永久磁石3を囲むように配置される。ヨーク21は、第1のヨーク部22と、第2のヨーク部23と、第3のヨーク部24と、を有する。
【0036】
第1のヨーク部22は、永久磁石3の近傍に、一端部22a(以下、第1の端部22aと称する)を有する。
【0037】
第2のヨーク部23は、永久磁石3の近傍に、永久磁石3の磁化方向と略直交する方向に永久磁石3を挟んで第1の端部22aと対向する一端部23a(以下、第2の端部23aと称する)を有し、第1のヨーク部22に対向して延在する。
【0038】
第3のヨーク部24は、第1のヨーク部22の他端部22bと第2のヨーク部23の他端部23bとを磁気的に結合する。
【0039】
したがって、第1のヨーク部22、第2のヨーク部23、および、第3のヨーク部24は、相互に磁気的に結合されて、一つの磁気回路としてのヨーク21を構成する。なお、第1の端部22aと第2の端部23aとのギャップは、一例として、1〜2mmの範囲である。
【0040】
コイル25は、第3のヨーク部24に巻き付けられ、導通することで、第1のヨーク部22、第2のヨーク部23、および、第3のヨーク部24を励磁し、永久磁石3に作用する磁場を発生させる。また、コイル25は、後述するように、導通することで、第1の端部22aと第2の端部23aとに互いに異なる磁極を形成するように構成されている。なお、コイルの巻き数は、一例として、200である。
【0041】
ここで、第1の端部22aと第2の端部23aとのギャップをgとし、コイル25の巻き数および電流をそれぞれNおよびIとすると、ギャップg間に発生する磁場Hの大きさは、概ねH=NI/gで与えられる。例えば、コイルの巻き数Nが200、電流Iが200mA、ギャップgが2mmの場合、永久磁石3に作用する磁場Hは、2×104A/m(250Oe)となる。
【0042】
次に、光走査装置1の動作について説明する。
【0043】
コイル25に通電すると、第1のヨーク部22、第2のヨーク部23、および、第3のヨーク部24内に磁束が発生し、各ヨーク部に磁極が形成される。このとき、図3Aおよび図3Bに示すように、第1の端部22aと第2の端部23aとには、互いに異なる磁極が形成される。その結果、第1の端部22aと第2の端部23aとの間に磁場が発生する。
【0044】
コイル25に所定方向の電流を流すと、図3Aに示すように、第1の端部22aにはN極が、第2の端部23aにはS極がそれぞれ発生する。各端部に発生した磁極に起因して、第1の端部22aから第2の端部23aの方向への磁場が発生する。この磁場が永久磁石3に作用して、永久磁石3のN極が第2の端部23aのS極と引き合うように、永久磁石3(すなわち磁石装着部14)を図で見て左側に傾ける(左偏向状態)。
【0045】
一方、コイル25に上記所定方向と反対方向の電流を流すと、図3Bに示すように、第1の端部22aにはS極が、第2の端部23aにはN極がそれぞれ発生する。各端部に発生した磁極に起因して、第2の端部23aから第1の端部22aの方向への磁場が発生する。この磁場が永久磁石3に作用して、永久磁石3のN極が第1の端部22aのS極と引き合うように、永久磁石3(すなわち磁石装着部14)を図で見て右側に傾ける(右偏向状態)。
【0046】
磁石装着部14の傾きに伴って、ミラー装着部11は、磁石装着部14と同じ方向に傾く。したがって、ある角度で入射する光を、例えば、一方では浅い角度で反射させ、他方では深い角度で反射させることが可能となる。このようにして、コイル25に流れる電流の方向および大きさを変化させることで、走査光の角度を任意に設定できることが可能となる。
【0047】
ここで、ミラー2、永久磁石3、ミラー装着部11、磁石装着部14、第1のばね15、および第2のばね16からなる系は、X軸の回りに往復回動を行うねじり共振モードを有する。
【0048】
コイル25には正弦波状の電流が流され、その正弦波状の電流の周波数を上述した系の共振モードの周波数と一致させることで、上述した系はねじり共振を起こし、少ない電流で大きなミラー回転角を有する往復回動を得ることができる。
【0049】
次に、本実施形態の光走査装置1における放熱効果について説明する。
【0050】
上述したように、ミラー2に照射された光のうち、一部はミラー2に吸収され、熱となる。ミラー2で発生した熱は、ミラー装着部11、第2のばね16から磁石装着部14へと伝わる。
【0051】
磁石装着部14は、スリット部14bにスリットが形成されているため、表面積が増加し、ミラー2で発生した熱を効果的に放熱することができる。
【0052】
なお、特許文献2に開示の光走査装置は、ミラー装着部と支持部との間に、ミラー装着部および支持部とばね部を介して接続された板状の部材(質量部21,22)を設け、板状の部材にヒートシンクを設けている。しかし、このように板状部材にヒートシンクを設ける構成では、板状部材が大きな空気抵抗を受けることとなり駆動効率が激減する。
【0053】
さらに、特許文献2に開示の光走査装置の板状部材にスリットを設けることは困難である。特許文献2に開示の光走査装置では、質量部21、22の対応する部分に電極32を設け、質量部と電極と間に駆動電圧を印加させ、この駆動電圧により発生する静電気力を用いてミラーの回動駆動を行う。したがって、質量部にスリットに形成すると発生する静電気力が激減することとなるためである。
【0054】
一方、本実施形態の光走査装置1においては、磁石装着部14にスリット部14bが設けられているため、図4に示すように、磁石装着部14の回動駆動時にスリットを空気が抜ける空気流Fが生じる。そのため、駆動時の空気抵抗の増大を抑制し、駆動エネルギーの増大も抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の光走査装置1においては、磁石装着部14に装着された永久磁石に作用する電磁力を駆動力としており、磁石装着部の一部に磁石を配置してスリットを設けても駆動力が激減することがない。
【0056】
また、一般に、永久磁石3は、温度が上がると磁力が低下するという特性がある。永久磁石3の磁力が低下すると、ミラー装着部11を回動駆動する駆動力も低下し、ミラー装着部11の所望の振れ角を確保することができなくなる。そこで、本実施形態のように、磁石装着部14にスリット部14bを設けることで、永久磁石3の温度上昇を抑制することもできる。
【0057】
また、特許文献1に開示のように、ミラー装着部にヒートシンクを設けると、ミラー装着部の慣性モーメントが大きくなる。また、ヒートシンクの回転角とミラー(ミラー装着部)の回転角とは等しいため、慣性モーメントの大きなミラー装着部を駆動するための駆動エネルギーが増加する。
【0058】
一方、本実施形態では、仮に、磁石装着部14をミラー装着部11と支持部12との中間に設ける(第1のばね15の長さと第2のばね16の長さとを同じにする)と、磁石装着部14に形成されたスリット部14bの回転角は、ミラー装着部11の回転角の半分となる。したがって、特許文献1に開示のように、ミラー装着部にヒートシンクを設けるよりも、ミラー装着部を駆動するための駆動エネルギーの増加を抑制することができる。なお、磁石装着部14をミラー装着部11よりも支持部12の近くに設ける(第1のばね15の長さを第2のばね16の長さよりも短くする)ことで、スリット部14bの回転角をさらに小さくし、駆動エネルギーの増加を抑制することができる。したがって、本実施形態においては、磁石装着部14は、ミラー装着部11よりも支持部12の近くに設けることが望ましい。
【0059】
このように本実施形態によれば、光走査装置1は、ミラー装着部11および支持部12とそれぞれ第2のばね16および第1のばね15を介して接続されるとともに、スリットが形成された磁石装着部14を有する。
【0060】
光の照射に起因してミラー2で発生した熱は、ミラー装着部11から第2のばね16、ミラー装着部14へと伝わる。ミラー装着部14には、スリットが設けられているため、表面積が大きくなり、ミラー装着部11で発生した熱を効果的に放熱することができる。その結果、ミラー2、永久磁石3、ばね部13などの温度上昇を抑制し、光走査装置1を安定して駆動させることができる。
【0061】
また、スリット部14bを磁石装着部14に設けることで、駆動時の空気抵抗の増加を抑制し、駆動エネルギーの増大を抑制しつつ、ミラー2で発生した熱を放熱することができる。
【0062】
また、主フレーム10を構成する各部を相互に一体に形成することで、組み立て工数の増大を招くことを防ぐことができる。
【0063】
ここで、本実施形態の光走査装置1が組み込まれる画像表示装置の構成および動作について説明する。
【0064】
図5は、本実施形態の光走査装置1を備えた画像表示装置の一構成例を示す図である。
【0065】
図5に示す画像表示装置は、外部から供給される映像信号に応じて変調された各色の光束を生成する光束生成装置P1と、光束生成装置P1で生成された各光束を平行光化するためのコリメート光学系P2と、平行光化された各光束を合成するための合成光学系P3と、を有する。また、画像表示装置は、合成光学系P3で合成された光束を画像表示するために水平方向に走査する水平走査部P4と、水平走査部P4で水平方向に走査された光束を垂直方向に走査する垂直走査部P5と、水平方向と垂直方向に走査された光束をスクリーン上に出射するための光学系(図示せず)と、を有する。本実施形態の光走査装置1は、水平走査部P4の走査ミラーP41として画像表示装置に組み込まれる。
【0066】
光束生成装置P1は、外部から供給された映像信号に基づいて画像を構成するための要素となる信号を発生させるとともに、水平走査部P4で使用される水平同期信号と、垂直走査部P5で使用される垂直同期信号とをそれぞれ出力する信号処理回路を有する。この信号処理回路において、赤(R)、緑(G)、青(B)の各映像信号が生成される。
【0067】
さらに光束生成装置P1は、信号処理回路から出力される3つの映像信号(R,G,B)のそれぞれに応じた光束を発生させる光源部P11を有している。光源部P11は、映像信号の各色に対して光束を発生させるレーザP12と、レーザP12を駆動するためのレーザ駆動系P13と、を有する。各レーザP12としては、半導体レーザあるいは高調波発生機構(SHG)付き固体レーザが好適に用いられる。
【0068】
光束生成装置P1の各レーザP12から出射された各色の光束は、コリメート光学系P2によってそれぞれ平行光化された後、合成光学系P3の各色に対応するダイクロイックミラーに入射される。各ダイクロイックミラーに入射された各色の光束は、波長選択的に反射または透過して合成され、水平走査部P4に出力される。
【0069】
水平走査部P4および垂直走査部P5は、水平走査部P4に入射した光束を、走査ミラーP41,P51を水平方向および垂直方向に走査し、画像として投影する。なお、走査ミラーP41,P51は、信号処理回路から出力され、走査同期回路を通じて入力される同期信号に基づいて、走査駆動回路によって駆動される。
【0070】
なお、本実施形態においては、駆動部の構成は、図1Cに示した構成に限られるものではない。以下では、図6Aおよび図6Bを参照して、本実施形態における光走査装置1とは異なる構成を有する光走査装置1Aについて説明する。
【0071】
図6Aは、光走査装置1Aの上面図である。また、図6Bは、図6AのA−A’線に沿った断面図である。なお、図6Aおよび図6Bにおいて、図1Aから図1Cと同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0072】
光走査装置1Aは、光走査装置1と比較して、駆動部の構成を変更した点が異なる。具体的には、光走査装置1Aにおいては、光走査装置1における駆動部20が駆動部30に変更されている。
【0073】
図6Bを参照すると、駆動部30は、ヨーク31と、コイル35と、を有する。
【0074】
ヨーク31は、例えば、鉄系材料、フェライト材料、又はパーマロイ材料などを含む磁性材料で形成され、X軸に沿って永久磁石3を囲むように配置される。ヨーク31は、第1のヨーク部32と、第2のヨーク部33と、第3のヨーク部34を有する。
【0075】
第1のヨーク部32は、永久磁石3の近傍に一端部32a(以下、第1の端部32aと称する)211aを有する。
【0076】
第2のヨーク部33は、永久磁石3の近傍であって、永久磁石3の磁化方向と略同じ方向に永久磁石3を挟んで第1の端部32aと対向する一端部33a(以下、第2の端部33aと称する)を有し、第1のヨーク部32に対向して延在する。
【0077】
第3のヨーク部34は、永久磁石3の磁化方向と略直交する方向で永久磁石3に対向する一端部34a(以下、第3の端部34aと称する)を有し、第1のヨーク部32の他端部32bと第2のヨーク部33の他端部33bとを磁気的に結合する。
【0078】
したがって、第1のヨーク部32、第2のヨーク部33、および、第3のヨーク部34は、相互に磁気的に結合されて、一つの磁気回路としてのヨーク31を構成する。なお、第1の端部32aと第3の端部34aとのギャップ、および、第2の端部33aと第3の端部34aとのギャップは、一例として、それぞれ1〜2mmの範囲である。
【0079】
コイル35は、第3のヨーク部34に巻き付けられ、導通することで、第1のヨーク部32、第2のヨーク部33、および、第3のヨーク部34を励磁し、永久磁石3に作用する磁場を発生させる。また、コイル35は、後述するように、導通することで、第1の端部32aおよび第2の端部33aと第3の端部34aとに互いに異なる磁極を形成するように構成されている。なお、コイル35は、導通することで、第1の端部32aおよび第2の端部33aと第3の端部34aとに互いに異なる磁極を形成するように構成されていれば、第1のヨーク部32、または、第2のヨーク部33に巻き付けられていてもよい。
【0080】
次に、光走査装置1Aの動作について説明する。
【0081】
コイル35に通電すると、第1のヨーク部32、第2のヨーク部33、および、第3のヨーク部34内に磁束が発生し、各ヨーク部に磁極が形成される。このとき、図7Aおよび図7Bに示すように、第1の端部32aおよび第2の端部33aには同種の磁極が形成され、第3の端部34aにはそれとは異なる磁極が形成される。その結果、第1の端部32aと第3の端部34aとの間、および、第2の端部33と第3の端部34aとの間に、それぞれ磁場が発生する。
【0082】
コイル35に所定方向の電流を流すと、図7Aに示すように、第1の端部32aおよび第2の端部33aにはN極が、第3の端部34aにはS極がそれぞれ発生する。各端部に発生した磁極に起因して、第1の端部32aおよび第2の端部33aからそれぞれ第3の端部34aの方向への磁場が発生する。この磁場が永久磁石3に作用して、永久磁石3のS極が第2の端部33aのN極と引き合うように、永久磁石3(すなわち磁石装着部14)を図で見て左側に傾ける(左偏向状態)。
【0083】
一方、コイル35に上記所定方向と反対方向の電流を流すと、図7Bに示すように、第1の端部32aおよび第2の端部33aにはS極が、第3の端部34aにはN極がそれぞれ発生する。各端部に発生した磁極に起因して、第3の端部34aからそれぞれ第1の端部32aおよび第2の端部33aそれぞれの方向への磁場が発生する。この磁場が永久磁石3に作用して、永久磁石3のN極が第1の端部32aのS極と引き合うように、永久磁石3(すなわち磁石装着部14)を図で見て右側に傾ける(右偏向状態)。
【0084】
上述したように、光走査装置1Aにおいては、光走査装置1と同様に、磁石装着部14の傾きに伴って、ミラー装着部11は、磁石装着部14と同じ方向に傾く。したがって、ある角度で入射する光を、例えば、一方では浅い角度で反射させ、他方では深い角度で反射させることが可能となる。このようにして、コイル35に流れる電流の方向および大きさを変化させることで、走査光の角度を任意に設定できることが可能となる。
【0085】
また、光走査装置1Aにおいては、光走査装置1と同様に、ミラー2、永久磁石3、ミラー装着部11、磁石装着部14、第1のばね15、および第2のばね16からなる系は、X軸の回りに往復回動を行うねじり共振モードを有する。
【0086】
コイル35には正弦波状の電流が流され、その正弦波状の電流の周波数を上述した系の共振モードの周波数と一致させることで、上述した系はねじり共振を起こし、少ない電流で大きなミラー回転角を有する往復回動を得ることができる。
【0087】
また、光走査装置1Aにおいては、光走査装置1と同様に、磁石装着部14にスリット部14bが形成されているので、ミラーで発生した熱を効果的に放熱することができる。
【0088】
このように、光走査装置1Aによっても、光走査装置1と同様に、ミラー装着部11を回動駆動させつつ、光を照射することでミラー2において発生した熱に起因する温度上昇を抑制することができる。
【0089】
なお、光走査装置1および光走査装置1Aにおいては、ヨークの一端部を、永久磁石3に向けて鋭角状の断面を有して形成する、凹凸状の断面を有して形成する、複数の突起を有して形成するなどして、その一端部の断面積を永久磁石3に向けて縮小するように形成してもよい。ヨークの一端部の断面積を永久磁石3に向けて縮小するように形成することで、その端部の磁束密度を増大し、永久磁石3に作用する磁場を増大することができる。その結果、駆動力を増大し、ミラー装着部11の触れ角を増大することができる。
【0090】
(第2の実施形態)
本実施形態の光走査装置は、第1の実施形態の光走査装置1および光走査装置1Aと比較して、主フレームの構成が異なる。具体的には、本実施形態の光走査装置は、第1の実施形態の光走査装置1および光走査装置1Aと比較して、主フレーム10を主フレーム10Bに変更した点が異なる。なお、以下では、第1の実施形態と同様の構成については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0091】
図8Aは、本実施形態の主フレーム10Bの上面図である。また、図8Bは、図8AのB−B’線に沿った断面図である。なお、図8Aおよび図8Bにおいては、主フレーム10Bに永久磁石3が装着されている状態を示す。
【0092】
図8Aに示すように、本実施形態の主フレーム10Bは、第1の実施形態の光走査装置1および光走査装置1Aにおける主フレーム10と比較して、磁石装着部14を磁石装着部81に変更した点が異なる。
【0093】
磁石装着部81は、板状であり、永久磁石3が装着されるとともに、互いに略平行に複数のスリットが形成されたスリット部82を有する。
【0094】
スリット部82は、図8Bに示すように、磁石装着部81の主面に対して上方向に突出した立ち上がり部82aと、磁石装着部81の主面に対して下方向に突出した立ち下がり部82bとを有する。なお、立ち上がり部82aおよび立ち下がり部82bは、例えば、プレス加工などを用いて容易に形成することができる。
【0095】
このように、立ち上がり部82aおよび立ち下がり部82bを形成することで、単にスリットを形成するよりも、スリット部82の表面積が増加し、より効率的に放熱を行うことができる。
【0096】
なお、立ち上がり部82aのみを形成した場合、あるいは、立ち下がり部82bのみを形成した場合には、磁石装着部81の重心位置がX軸からずれることがある。上述したように、磁石装着部81の重心位置がX軸からずれると、駆動時に不要な振動が発生しやすくなり、安定した光走査を行うことが困難になる。そこで、磁石装着部81の重心位置がX軸からずれるのを防止するためには、立ち上がり部82aと立ち下がり分82bとを交互に、また、立ち上がり部82aと立ち下がり分82bとを同数だけ形成するようにすることが望ましい。
【0097】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態が本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更され得ることは明らかである。
【符号の説明】
【0098】
1 光走査装置
2 ミラー
3 永久磁石
4 ベース
10 主フレーム
11 ミラー装着部
12 支持部
13 ばね部
14,81 磁石装着部
14a 空孔部
14b,82 スリット部
15 第1のばね
16 第2のばね
20,30 駆動部
21 ヨーク
22,32 第1のヨーク部
22a,32a 第1の端部
22b,32b 他端部
23,33 第2のヨーク部
23a,33a 第2の端部
23b,33b 他端部
24,34 第3のヨーク部
34a 第3の端部
25,35 コイル
82a 立ち上がり部
82b 立ち下がり部
P1 光束生成装置
P11 光源部
P12 レーザ
P13 レーザ駆動系
P2 コリメート光学系
P3 合成光学系
P4 水平走査部
P41 走査ミラー
P5 垂直走査部
P51 走査ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持部と、
光を反射するミラーが装着されるミラー装着部と、
前記ミラー装着部の両端に互いに対向して形成され、前記ミラー装着部を前記支持部に対して回動可能に支持する一対のばね部と、
前記ミラー装着部を回動駆動する駆動部と、を有し、
前記一対のばね部の各々は、
永久磁石が装着される、スリットが形成された板状の磁石装着部と、
前記磁石装着部を前記支持部に対して回動可能に支持する第1のばねと、
前記第1のばねと略同位置直線上に設けられ、前記ミラー装着部を前記磁石装着部に対して回動可能に支持する第2のばねと、を有し、
前記駆動部は、
前記ミラー装着部の回動軸に沿って前記永久磁石を囲むように配置されたヨークと、
前記ヨークに巻き付けられ、導通によって前記ヨークを励磁して、前記永久磁石に作用する磁場を発生させるコイルと、を有することを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
請求項1記載の光走査装置において、
前記永久磁石は、前記回動軸に対して略回転対称となるように配置されるとともに、磁化方向が前記回動軸と略直交するように配置されることを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
請求項2記載の光走査装置において、
前記ヨークは、前記永久磁石の磁化方向と略同じ方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する2つの端部と、前記永久磁石の磁化方向と略直交する方向で前記永久磁石に対向する1つの端部と、を有し、
前記コイルが、導通によって前記2つの端部と前記1つの端部とに異なる磁極を形成するように、前記ヨークに巻き付けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項4】
請求項2記載の光走査装置において、
前記ヨーク部は、前記永久磁石の磁化方向と略直交する方向に前記永久磁石を挟んで互いに対向する2つの端部を有し、
前記コイルは、導通によって前記2つの端部にそれぞれ異なる磁極を形成するように、前記ヨーク部に巻き付けられていることを特徴とする光走査装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記ミラー装着部は、枠状であることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記第1のばねは、前記第2のばねよりも短いことを特徴とする光走査装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記スリットは、前記磁石装着部の主面に対して上方向に突出した立ち上がり部、および、前記磁石装着部の主面に対して下方向に突出した立ち下がり部が形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項8】
請求項7記載の光走査装置において、
前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とは、交互に形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項9】
請求項7または8記載の光走査装置において、
前記立ち上がり部と前記立ち下がり部とは、同数形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光走査装置において、
前記スリットは、前記回動軸に対して対称に形成されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項11】
変調された光束を生成する光束生成装置と、
前記光束を反射及び走査する請求項1から10のいずれか1項に記載の光走査装置と、を備えることを特徴とする画像表示装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−242595(P2012−242595A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112385(P2011−112385)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】