説明

光起電力装置およびその製造方法

【課題】 本発明では、出力レベルを維持しつつパターンの共通化が可能な光起電力装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 第1電極層11、半導体層13および第2電極層12から成る太陽電池層24に、開口部17が形成可能な開口領域25A、25Bを設ける。開口領域25Bの外縁に対応する領域の第2電極層12を溝状に除去して、第2除去領域16を形成する。また、開口領域25Bの周囲に残存した第2電極層12から成る接続部14を介して、開口領域25B内部の第2電極層12は、開口領域25B外部の第2電極層12と接続されている。従って、開口領域25B内部の第2電極層12は、開口領域25Bが打ち抜かれない場合は、発電領域として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光起電力装置およびその製造方法に関し、特に太陽電池層を貫通して設けた開口部を有する光起電力装置およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、表示部に設けられた表示面に太陽電池を配置し、得られた電力により、表示部の表示機能の少なくとも一部が稼動するように構成された装置がある。
【0003】
これらの中で最も典型的な光起電力装置としては、文字板の全体もしくは一部の代わりに太陽電池の受光面を配置した腕時計がある。この種の腕時計は、文字板の表面となるべき所に太陽電池の受光面を設けているので、表示面以外に受光面を設ける必要がなく、受光面を設けるためのスペ−スを節約することができる。特に小さな腕時計において、消費電力を充分にまかなう発電能力を備えた太陽電池を容易に内蔵することができる。
【0004】
図8を参照して、腕時計に用いられる従来の光起電力装置100を説明する。光起電力装置100では、基板101上に複数に分割して太陽電池(セル)102A、102Bが載置されている。太陽電池102Aには、日付や曜日が表示される表示部103が形成される。この表示部103は、製造工程の途中で、基板101および太陽電池102をくり抜くことで形成されている(特許文献1)。
【0005】
更に、腕時計の短針や長針等を設けるための針穴109も、上記した表示部103と同様に太陽電池および基板101を打ち抜いて形成される。
【0006】
図9を参照して、次に、上述した光起電力装置100の製造方法を説明する。
【0007】
図9(A)を参照して、先ず、基板101の上面に第1電極層110、半導体層111および第2電極層112を積層させて、太陽電池層113を形成する。
【0008】
図9(B)を参照して、次に、図8に示す表示部103が形成される領域を取り囲むように溝状に第2電極層112を除去して、ダミーセル114を形成する。ダミーセル114は、他の領域の第2電極層112から電気的に分離されており、発電領域として機能しない。
【0009】
図9(C)を参照して、次に、ダミーセル114が形成された領域に於いて、太陽電池層113および基板101を打ち抜き加工により除去して、開口部115を形成する。この開口部115が、図8に於ける針穴109および表示部103となる。ダミーセル114を形成することで、打ち抜き加工により第2の電極層112から成るバリが発生することを防止することができる。従って、このバリにより、第2電極層112と第1電極層110とがショートすることを防止することができる。
【特許文献1】特開2002−90475号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したような太陽電池が内蔵される腕時計等ではデザインが多種にわたり、外形は同一でも、機種によって表示部103および針穴109のレイアウトが異なる。従って、表示部103等となる開口部を形成する為に設けられるダミーセル114も、機種によって異なる箇所に設けられなければ成らない。しかしながら、レイアウトが異なる機種毎に所定のパターンを設計・作成すると、製造コストが高くなってしまう問題がある。そこで従来では、パターンを共通化するために、表示部103および針穴109が形成される複数の領域にダミーセル114を形成していた。このことにより、パターンの設計および作成に係るコストを低減させることができる。
【0011】
しかしながら、発電領域として機能しないダミーセル114を複数個設けると、発電領域として機能する領域が狭くなり、光起電力装置の出力レベルが低下してしまう問題が発生していた。
【0012】
本発明は、このような問題を鑑みて成されたものであり、本発明の主な目的は、出力レベルを維持しつつパターンの共通化が可能な光起電力装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光起電力装置は、第1電極層、半導体層および第2電極層が積層させた太陽電池層を具備する光起電力装置であり、前記第1電極層、前記半導体層および前記第2電極層を貫通する開口部が形成可能な開口領域が前記太陽電池層に設けられ、前記第2電極層には、前記開口領域を不完全に囲むように溝状に前記第2電極層を除去した第2除去領域が設けられ、前記開口領域の周囲に残存した前記第2電極層から成る接続部を介して、前記開口領域の内部に位置する前記第2電極層と他の領域の前記第2電極層は電気的に接続され、前記接続部に対応する領域の前記第1電極層には、前記第1電極層を部分的に除去して第1除去領域を設けることを特徴とする。
【0014】
本発明の光起電力装置の製造方法は、1電極層、半導体層および第2電極層を積層させて太陽電池層を構成し、前記第1電極層、前記半導体層および前記第2電極層を貫通する開口部が形成可能な開口領域を前記太陽電池層に設ける光起電力装置の製造方法に於いて、前記第1電極層を形成して、前記開口部の周辺部に対応する領域を部分的に除去した第1除去領域を設ける工程と、前記第1電極層上に前記半導体層および第2電極層を形成する工程と、前記第2電極層に、前記開口領域を不完全に囲むように溝状に前記第2電極層を除去した第2除去領域を設け、前記第1除去領域に対応して残存した前記第2電極層から成る接続部を介して、前記開口領域の内部に位置する前記第2電極層と他の領域の前記第2電極層とを接続された状態にする工程とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、表示部または針穴となる開口部が形成可能な開口領域を複数個設けるので、太陽電池層のパターンを共通化して、表示部や針穴となる開口部の位置が異なる多種の光起電力装置を製造することができる。更に、本発明では、開口領域内部の太陽電池層は発電領域として機能するので、多数個の開口領域を太陽電池層に設けても、光起電力装置の出力レベルは低減しない。
【0016】
更に、本発明では、透明電極である第2電極層に、開口領域を不完全に囲む溝状の第2除去領域を設けて、開口領域の周囲に残存した第2電極層から成る接続部を介して、開口領域の内部に位置する第2電極層と他の領域の第2電極層とを接続している。更に、第1電極層を部分的に除去することにより、第2電極層の接続部の下方に位置する第1電極層を他の領域から孤立させている。従って、開口領域を打ち抜くことにより開口部を形成して、第2電極層の接続部から発生したバリが第1電極層に到達しても、バリが到達する部分の第1電極層は他の領域から孤立されているので、第1電極層と第2電極層とはショートしない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1から図4を参照して、光起電力装置10の構成を説明する。図1は光起電力装置10の全体的な構成を示す図であり、図2から図4は開口領域25の詳細を示す図である。
【0018】
本形態では、腕時計用の光起電力装置を例に挙げて説明していくが、採用製品は多種多様である。例えば、本形態の光起電力装置10は、電卓、電話、携帯機器等の電子機器等にも適用できるものである。
【0019】
図1を参照して、先ず、光起電力装置10の全体的な構成を説明する。図1(A)は光起電力装置10の平面図であり、図1(B)は図1(A)のB−B’線に於ける断面図である。
【0020】
本形態の光起電力装置10では、基板18の表面に、第1電極層11、半導体層13、第2電極層12の順序で積層された太陽電池層24が形成される。また、太陽電池層24には、光起電力装置10を貫通する開口部17が形成される領域である開口領域25が複数個形成されている。
【0021】
図1(A)を参照して、第2電極層12は、分割配置された複数の第2電極層12A〜12Dから成る。各々の第2電極層12A〜12Dは、中心角が略90°の扇形の形状であり、全体として円形になるように配置されている。そして、各第2電極層12は電気的に接続されている。
【0022】
接続端子20A、20Bは、基板18に設けられた貫通孔(不図示)を介して、基板18の裏面に形成された外部接続電極(不図示)と電気的に接続されている。ここで、基板18の表面に外部接続電極を形成してもよい。接続端子20Aは第2電極層12Aと電気的に接続されている。接続端子20Bは第2電極層20Dの下方に位置する第1電極層11と接続される。接続端子20A、20Bは、太陽電池層24から得た電気エネルギーを外部に伝える役割を担っている。
【0023】
図1(B)を参照して、光起電力装置10の断面の構造を説明する。
【0024】
基板18は、金属、樹脂、ガラスなどから形成することができるが、加工性を考慮して金属または樹脂が好適である。基板18の厚みは、例えば0.15mm程度である。
【0025】
基板18の表面に形成される第1電極層11は、厚さ約0.1〜1.0μm程度の金属膜である。第1電極層11の材料としては、タングステン、アルミニウム、チタン、ニッケル、または銅等が挙げられる。しかし第1電極層11の材料としてITO、ITZ等の透明電極を採用しても良い。
【0026】
半導体層13は、第1電極層11を被覆するように、基板18全域に積層されており、その厚みは約0.3μm〜1.0μmである。半導体層13は、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト、アモルファスシリコンゲルマニウムなどをp/nまたはp/i/nに積層されたものである。
【0027】
第2電極層12は、半導体層13の上面に形成されている。この第2電極層12は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウムスズ(ITO)または酸化錫(SnO2)等から成る透明電極層である。本形態では、第2電極層12として酸化インジウムスズ(ITO)を採用し、その膜厚は30nm〜300nm程度である。
【0028】
開口領域25は、太陽電池層24および基板18を貫通して設けられる開口部17が形成可能な領域である。開口領域25に於いては、第2電極層12およびその下方の第1電極層11が部分的に除去されている。このことにより、打ち抜き加工により開口領域25に開口部17を設けても、この加工により発生するバリにより、第1電極層11と第2電極層12とがショートすることを防止することができる。また、開口領域25の内部に位置する第2電極層12は、他の領域の第2電極層12と連続しているので、発電領域として機能している。開口領域25の詳細については、図2から図4を参照して後述する。
【0029】
図1(A)を参照すると、光起電力装置10の表面には、2つの開口領域25Aおよび25Bが設けられている。開口領域25Aは第2電極層12Aに設けられ、開口領域25Bは第2電極層12Bに設けられている。開口領域25Aに於いて太陽電池層24および基板18を除去することにより、開口部17が形成されている。この開口部17は、腕時計の場合は、日付や曜日が表示される表示部や針穴として用いられる。そして、開口領域25Bには開口部17は形成されず、開口領域25Bの内部に位置する第2電極層12Bは、発電領域として機能している。
【0030】
機種によっては、開口領域25Bのみに開口部17を設けても良いし、開口領域25Aおよび25Bの両方に開口部17を設けても良い。また、ここでは2つの開口領域25A、25Bが設けられているが、3個以上の多数個の開口領域25が設けられても良い。更にまた、開口領域25および開口部17の平面的な形状は、矩形以外でも良い。即ち、円形、三角形、楕円形等の他の平面的形状を有する開口領域25および開口部17が形成されても良い。
【0031】
本形態では、発電領域として機能する開口領域25を複数個設けて、機種に応じて開口領域25を除去して開口部17を設けている。従って、光起電力装置10の出力レベルを維持して、第2電極層12のパターンを共通化することができる。即ち、開口部17が形成可能な領域である開口領域25を多数個形成することにより、開口部17の位置が異なる多種の光起電力装置に対して、1つの太陽電池層24のパターンで対応することができる。しかしながら、打ち抜き加工により開口部17を形成する際のバリの発生を考慮して、開口領域25内部の第2電極層12をダミーセルとしてしまうと、光起電力装置10から得られる電力量が低下してしまう。特に本形態のように多数個の開口領域25を設ける場合に於いては、開口領域25の占める面積が大きくなるので、電力量の低下が顕著である。そこで本形態では、開口領域25内部の第2電極層12を、他の領域の第2電極層12と連続させている。従って、開口領域25内部の第2電極層12も発電領域として機能するので、多数個の開口領域25を形成した場合でも、光起電力装置10から得られる電力は低下しない。
【0032】
図2から図4を参照して、上述した開口領域25の詳細を説明する。
【0033】
図2を参照して、先ず、開口部17が設けられない開口領域25Bの構造を説明する。図2(A)は開口領域25Bの平面図であり、図2(B)は図2(A)のB−B’線に於ける断面図であり、図2(C)は図2(A)のC−C’線に於ける断面図である。
【0034】
図2(A)および図2(B)を参照して、開口領域25Bに於いては、第1電極層11に第1除去領域15が設けられ、第2電極層12には第2除去領域16が形成されている。
【0035】
第2除去領域16は、開口領域25Bの外縁を不完全に囲むように溝状に第2電極層12を除去した領域である。ここでは、矩形の開口領域25Bの外縁に沿って、コの字状に2つの第2除去領域16が形成されている。開口領域25Bの周辺部に於いて、第2電極層12が除去されない部分が接続部14である。この接続部14を介して、開口領域25B内部の第2電極層12が、開口領域25Bの外部に位置する第2の電極層12と電気的に接続されている。従って、開口領域25B内部の第2電極層12は、発電領域として機能している。ここでは、開口領域25Bの周辺部に2つの接続部14が設けられているが、少なくとも1つの接続部14が設けられればよい。
【0036】
第1除去領域15は、第2電極層12の接続部14に対応する領域の第1電極層11が、孤立するように設けられる領域である。ここでは、接続部14の下方に位置する第1電極層11を完全に取り囲むように、リング状に第1電極層11が除去されることで、第1除去領域15が形成されている。
【0037】
図2(C)を参照して、第1除去領域15を設けることにより、打ち抜き加工により接続部14からバリが発生しても、そのバリによる第1電極層11と第2電極層12とのショートを防止することができる。具体的には、開口領域25Bの領域を打ち抜くと、接続部14が位置する部分でバリ22が発生する。第2電極層12の接続部14から延在するバリ22が、第1電極層11に到達しても、バリ22が接続する部分の第1電極層11は、第1除去領域15により他の領域と孤立している。従って、接続部14からバリ22が発生しても、第1電極層11と第2電極層12とはショートしない。
【0038】
図3を参照して他の形態の開口領域25Bの構成を説明する。図3(A)は開口領域25Bの平面図であり、図3(B)は図3(A)のB−B’線に於ける断面図であり、図3(C)は図3(A)のC−C’線に於ける断面図である。
【0039】
これらの図を参照して、ここでは、第2電極層12の接続部14の下方に位置する第1電極層11が全面的に除去されることにより、第1除去領域15が形成されている。この様な構成によっても、打ち抜き加工で発生するバリによるショートを防止することができる。即ち、図3(C)を参照して、開口領域25Bを打ち抜き加工することにより、接続部14からバリ22が下方に延在しても、接続部14の下方には第1電極層11は存在しない。従って、バリ22が発生しても、第1電極層11と第2電極層12とはショートしない。
【0040】
図4を参照して、次に、開口部17の構成を説明する。図4(A)は開口部17を示す平面図であり、図4(B)は図4(A)のB−B’線での断面図である。
【0041】
図4(A)および図4(B)を参照して、開口領域25Aが設けられた箇所の太陽電池層24および基板18を打ち抜くことにより、開口部17が形成される。ここでは、太陽電池層24側から(紙面上にて上方から下方に)プレス等を用いて打ち抜き加工を行っている。上述したように、接続部14を除いて、開口部17の外縁に位置する第2電極層12は溝状に除去されて第2除去領域16と成っている。従って、第2除去領域16が形成された部分では、打ち抜き加工を行っても第2電極層12から成るバリは発生しない。
【0042】
図4(B)を参照して、第2電極層12から成る接続部14が設けられた箇所では、打ち抜き加工により、開口部17の側面に沿ってバリ22が発生する。しかしながら、接続部14の下方に位置する第1電極層11は、第1除去領域15により他の領域から孤立されている。従って、接続部14の下方に位置する第1電極層11にバリ22が到達しても、第1電極層11と第2電極層12とはショートしない。
【0043】
次に図5から図7を参照して、上記した光起電力装置10の製造方法を説明する。
【0044】
図5を参照して先ず、基板18の上面に第1電極層11を形成する。基板18としては、矩形状の可撓性を有するポリイミドなどの樹脂からなるフィルム、表面に絶縁層が形成されたステンレス等の金属板を採用することができる。
【0045】
本工程では、4つの第1電極層11A〜11Dが分割配置されている。これらの第1電極層11A〜11Dは、各々中心角が略90°の扇形の形状であり、これらは相互間に所定の間隔を隔てて全体として円形になるように配置されている。更に、第1電極層11A〜11Cの各々は、隣接する第1電極層11の外方に延在する接続部11Ae、11Be、11Ceを有している。ここで、第1電極層11A〜11Dは、厚さ約0.1〜1.0μmで、タングステン、アルミニウム、チタン、ニッケル、銅等の金属膜からなる。また、ITO、ITZ等の透明電極を第1電極層11の材料として採用しても良い。
【0046】
第1電極層11Aには、開口部が形成可能な領域である開口領域25Aが規定されている。そして、開口領域25Aの外縁部に於いて、一領域を包囲するように溝状に第1電極層11Aを除去することにより、第1除去領域15が形成されている。また、第1電極層11Aと同様に、第1電極層11Bの表面にも開口領域25Bが規定され、第1除去領域15が形成されている。第1除去領域15は、YAGレーザーを用いたレーザーライン加工により、第1電極層11を部分的に除去して形成される。
【0047】
上記のように第1電極層11に第1除去領域15を設けることにより、第1電極層11の一領域を電気的に分離することが可能となる。従って、後の工程に於いて、打ち抜き加工で発生するバリによる電極層間のショートを防止することができる。この事項の詳細は後述する。
【0048】
また、接続部端子20A、20B(図1参照)が形成される領域である貫通部23A、23Bに於いては、第1電極層11Aおよび11Dは形成されていない。このようにすることで、接続部端子20A等を形成する為に貫通孔を形成する工程に於いて、電極層間のショートを防止することができる。
【0049】
図6を参照して、次に、半導体層13および第2電極層12を基板18の上面に積層させる。図6(A)は本工程の平面図であり、図6(B)は図6(A)のB−B’線に於ける断面図であり、図6(C)は開口領域25Aを拡大した平面図である。
【0050】
図6(A)および図6(B)を参照して、第1電極層11の上部に、アモルファスシリコン、アモルファスシリコンカーバイト、アモルファスシリコンゲルマニウムなどをpnまたはpinに積層した半導体層13(厚さ約0.3〜1.0μm)を形成する。
【0051】
その後、半導体層13上の略全面に、第2電極層12を形成する。この第2電極層12は、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(ITO)、酸化錫(SnO2)等の透明導電膜(厚さ約0.3〜1.0μm)からなる。更に、第2電極層12の上面を部分的に保護膜(不図示)により被覆した後に、第2電極層12の全面に上方から、エキシマレーザ(KrFレーザ光)を照射する。この工程により、不図示の保護膜により覆われていない第2電極層12が除去されて、第2電極層12A〜12Dが形成される。第2電極層12A〜12Dの平面的な形状は、第1電極層11A〜11Dと概略同じであり、各々中心角が略90°の扇形の形状である。更に本工程により、後述する第2除去領域16も形成される。
【0052】
更に、上層の第2電極層12と下層の第1電極層11とは、接続領域19A〜19Cに於いて接続される。具体的には、第1電極層11の接続部11Ae、11Be、11Ce(図5(A)参照)上に位置する第2電極層12の上方から、YAGレーザ光(波長1.06μm)を照射する。YAGレーザー光により、第1電極層11の接続部11Ae、11Be、11Ceと、その上方の第2電極層12が溶融され両者が溶着する。接続領域19Aに於いて、第1電極層11Aの接続部11Aeが、第2電極層12Bと接続される。接続領域19Bでは、第1電極層11Bの接続部11Beが、第2電極層12Cと接続される。また、接続領域19Cでは、第1電極層11Cの接続部11Ceが、第2電極層12Dと接続される。
【0053】
図6(C)を参照して、本工程では、開口領域25Aの外縁に沿って溝状に第2電極層12を除去することにより、第2除去領域16を形成している。具体的には、矩形の開口領域25Aの外縁に沿って、コの字状に2つの第2除去領域16が形成されている。
【0054】
第2除去領域16は、開口領域25Aを不完全に包囲するように形成され、開口領域25Aの周辺部には、残存した第2電極層12から成る接続部14が形成されている。接続部14が形成されることで、開口領域25Aの内部に位置する第2電極層12が、開口領域25Aの外部に位置する第2電極層12と接続される。従って、開口領域25Aが打ち抜き加工により除去されない場合は、開口領域25Aの内部に位置する第2電極層12は発電領域として機能する。
【0055】
接続部14は、下層の第1電極層11に形成された第1除去領域15の位置に対応して形成されている。即ち、平面的には、第1電極層11に形成される第1除去領域15の内部の領域に、第2電極層12の接続部14が形成される。また、本工程にて形成される接続部14の個数は2つ以外でも良く、少なくとも1つの接続部14が形成されればよい。
【0056】
上述した構成は、第2電極層12Bに形成される開口領域25Bに関しても同様である。
【0057】
図7を参照して、次に、開口領域25Aを打ち抜いて開口部17を形成する。図7(A)は本工程の平面図であり、図7(B)は図7(A)のB−B’線に於ける断面図であり、図7(C)は開口領域25Aを拡大した平面図である。
【0058】
本工程では、開口領域25Aの領域に於いて、太陽電池層24および基板18を打ち抜くことにより、開口部17を形成する。ここでは、プレス機等を用いて開口領域25Aを上方から下方に打ち抜いて、太陽電池層24および基板18を部分的に除去し、開口部17を形成している。また、レーザー加工により、開口領域25Aの太陽電池層24および基板18を除去しても良い。
【0059】
図7(B)および図7(C)を参照して、上述したように本形態では、開口領域25Aに、第1除去領域15および第2除去領域16を設けているので、電極間のショートが防止されている。具体的には、打ち抜き加工により発生するバリ22が、第2電極層12の接続部14から第1電極層11まで延在しても、バリ22が接触する部分の第1電極層11は周囲から孤立している。従って、本工程の打ち抜き加工によりバリ22が発生しても、第1電極層11と第2電極層12とのショートは発生しない。
【0060】
ここでは、開口領域25Aのみに開口部17が設けられ、開口領域25Bには開口部17が設けられない。このことにより、開口領域25Aの部分のみに表示部となる開口部17が必要な機種に対応することができる。また、開口領域25Bのみに表示部や針穴となる開口部17が必要な機種の場合は、開口領域25Bに開口部17を設けて、開口領域25Aには開口部17を設けない。更に、必要に応じて、開口領域25A、25Bの両方に開口部17を形成しても良いし、両方に開口部17を設けなくても良い。
【0061】
また本工程に於いて、レーザー加工を行うことにより、太陽電池層24および基板18を貫通する貫通孔21A、21Bが形成される。貫通孔21A、21Bの開口径は、100μm程度である。
【0062】
本工程が終了した後は、貫通孔21A、21Bに銀ペースト等の導電性材料を印刷して
、接続端子20A、20B(図1参照)を設ける。更に、図7(A)に点線で示した領域で基板18を打ち抜く。これらの工程により、図1に示すような光起電力装置10が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の光起電力装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図2】本発明の光起電力装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は断面図である。
【図3】本発明の光起電力装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は断面図である。
【図4】本発明の光起電力装置を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図5】本発明の光起電力装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
【図6】本発明の光起電力装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図7】本発明の光起電力装置の製造方法を示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図であり、(C)は平面図である。
【図8】従来の光起電力装置を示す平面図である。
【図9】従来の光起電力装置の製造方法を示す図であり、(A)−(C)は平面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 光起電力装置
11 第1電極層
12 第2電極層
13 半導体層
14 接続部
15 第1除去領域
16 第2除去領域
17 開口部
18 基板
19A、19B、19C 接続領域
20A、20B 接続端子
21A、21B 貫通孔
22 バリ
23A、23B 貫通部
24 太陽電池層
25A、25B 開口領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、半導体層および第2電極層が積層させた太陽電池層を具備する光起電力装置であり、
前記第1電極層、前記半導体層および前記第2電極層を貫通する開口部が形成可能な開口領域が前記太陽電池層に設けられ、
前記第2電極層には、前記開口領域を不完全に囲むように溝状に前記第2電極層を除去した第2除去領域が設けられ、前記開口領域の周囲に残存した前記第2電極層から成る接続部を介して、前記開口領域の内部に位置する前記第2電極層と他の領域の前記第2電極層は電気的に接続され、
前記接続部に対応する領域の前記第1電極層には、前記第1電極層を部分的に除去して第1除去領域を設けることを特徴とする光起電力装置。
【請求項2】
複数個の前記開口領域が前記太陽電池層に設けられ、
少なくとも1つの前記開口領域に前記開口部が形成されることを特徴とする請求項1記載の光起電力装置。
【請求項3】
前記開口部は、表示部または針穴として用いられることを特徴とする請求項1記載の光起電力装置。
【請求項4】
前記第2電極層は、太陽光を透過させる材料から成ることを特徴とする請求項1記載の光起電力装置。
【請求項5】
前記開口部は前記開口領域を打ち抜いて形成されることを特徴とする請求項1記載の光起電力装置。
【請求項6】
第1電極層、半導体層および第2電極層を積層させて太陽電池層を構成し、前記第1電極層、前記半導体層および前記第2電極層を貫通する開口部が形成可能な開口領域を前記太陽電池層に設ける光起電力装置の製造方法に於いて、
前記第1電極層を形成して、前記開口部の周辺部に対応する領域を部分的に除去した第1除去領域を設ける工程と、
前記第1電極層上に前記半導体層および前記第2電極層を形成する工程と、
前記第2電極層に、前記開口領域を不完全に囲むように溝状に前記第2電極層を除去した第2除去領域を設け、前記第1除去領域に対応して残存した前記第2電極層から成る接続部を介して、前記開口領域の内部に位置する前記第2電極層と他の領域の前記第2電極層とを接続された状態にする工程とを具備することを特徴とする光起電力装置の製造方法。
【請求項7】
複数個の開口領域を前記太陽電池層に設け、
少なくとも1つの前記開口領域に前記開口部を設けることを特徴とする請求項6記載の光起電力装置の製造方法。
【請求項8】
打ち抜き加工により前記開口領域を除去して、前記開口部を形成することを特徴とする請求項6記載の光起電力装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−10387(P2007−10387A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−189221(P2005−189221)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(301079420)関東三洋セミコンダクターズ株式会社 (70)
【Fターム(参考)】