説明

光起電層に有機材料を含む太陽電池およびその製造方法

【課題】 半導体材料を用いて作られた従来の太陽電池と経済的に少なくとも同じ程度に魅力的な代替の太陽電池を提供できるようにする。
【解決手段】 この太陽電池は、光を吸収し、その中に電子−正孔対を生み出すことができる、有機材料、特にポリマー材料でできた光起電層(A)を有する。この太陽電池はさらに、互いに反対側にある2つの層表面を有し、その一方は、光起電層(A)の中で作られた正孔を受け取る少なくとも1つの層(p)に接続されており、もう一方は、光起電層(A)の中で生み出された電子を受け取る少なくとも1つの層(n)に接続されている。この太陽電池はさらに、電極領域EnおよびEpを含む。電極領域(Ep)は正孔を受け取る層(p)と電気的に接触しており、他方の電極領域(En)は、電子を受け取る層(n)と電気的に接触している。本発明は特に、表面基板(S)が、表側から裏側まで貫通して側方へ突き出した開口構造(0)を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池およびその製造方法に関する。この太陽電池は、光を吸収し、その中に電子−正孔対を生み出すことができる、有機材料、特にポリマー材料でできた少なくとも1つの光起電層を有する。この太陽電池はさらに、互いの反対側にある2つの層表面を含み、その一方は、光起電層の中で作られた正孔を受け取る少なくとも1つの層に接続されており、もう一方は、光起電層の中で生み出された電子を受け取る少なくとも1つの層に接続されている。この太陽電池はさらに複数の電極領域を含み、その一方の電極領域は正孔を受け取る層に電気的に接触しており、もう一方の電極領域は電子を受け取る層に電気的に接触している。
【背景技術】
【0002】
半導体材料から作られた感光層の代わりに有機材料層、好ましくはポリマー材料層を有する上述のタイプの太陽電池は今のところ、従来の太陽電池の通例である効率20%を達成することができない。このポリマー太陽電池を用いて得られる効率は約2%である。しかし、この新しい有機太陽電池は、その材料および製造費の費用効率が非常に高いことが特徴であり、そのため経済的な観点からますます関心を集めている。製造費の効率を高く保ったまま、または製造費の効率をより高めたうえに、ポリマー太陽電池の効率を向上させることができ、かつ、有機太陽電池の生産可能電力に対して購入および運転費が、従来の太陽電池の費用/使用比に比べて低く保たれる場合には、有機太陽電池の経済的魅力は、従来の太陽電池のそれを凌ぐものとなろう。
【0003】
図2に、ポリマー太陽電池の一般的な層構造を示す。太陽光を吸収し、電子正孔対を生み出す太陽電池活性層Aは、PPV、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン誘導体などのポリマーとC60などのフラーレン誘導体との混合物から作られている。太陽光を吸収した光活性層Aの中で生み出された電子および正孔を受け取るため、層Aは、やはりPEDOTなどのポリマーから作られていることが好ましい正孔受取り層p、およびLiFから作られていることが好ましい電子受取り層nに接続されている。吸収層Aの「正孔側」の導電率を向上させるため、p層には、光透過性導電性ITO層(ドープされたインジウムスズ酸化物)が適用されている。最後に、ガラス板Gが担体基板の役目を果たす。
【0004】
上述の層構造を有する太陽電池で使用するのに適した代替の有機材料、好ましいポリマー材料は、T.Fromherz他、Solar Energy Materials and Solar Cells、第63巻、61〜68ページ、2000年に記載されている。
【0005】
n層と接触した金属電極、好ましくはアルミニウム電極En、およびITO層の側方電気接触は、上述の従来技術の太陽電池層構造と電気的に接触する役目を果たす。上述のポリマー太陽電池の決定的な欠点は、ITO層を使用することである。ITOはそれ自体が高価であり、その上、ITOの付着は、例えばPVD(物理蒸着)、蒸着またはスパッタリング・プロセスを使用した技術的に複雑な付着プロセスによって実施される。上記のプロセスは全て、その実現に高価な手段を必要とする真空条件に依存しており、そのため製造費が高くなる。ITO層の使用はしたがって、費用効率の高い太陽電池を製造し供給する所望の目標にとって不利とならざるを得ない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T.Fromherz他、Solar Energy Materials and Solar Cells、第63巻、61〜68ページ、2000年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、技術的に単純な、したがってより費用効率の高い製造方法を使用し、高価な材料の使用を避け、さらに、現在のポリマー太陽電池を用いて達成される効率を少なくとも達成し、できればその効率を上回る、できるだけ費用効率の高い材料の総称有機太陽電池、好ましくはポリマー太陽電池を製造することにある。本発明の方策の主な狙いは、経済的事項を考慮したポリマー太陽電池を製造すること、したがって、半導体材料を用いて作られた従来の太陽電池と経済的に少なくとも同じ程度に魅力的な代替の太陽電池を提供できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこの目的に対する解決手段が請求項1に記載されている。本発明の一方法が請求項21の主題である。代替の解決手段が請求項19および33に含まれている。
【0009】
本発明の概念の有利な発展的特徴が、従属請求項および説明、特に好ましい実施形態および図に関する説明の主題である。
【0010】
請求項1のジェネリック部分に基づく本発明の太陽電池は、電子受取り層がその電極領域を介して、表側および裏側を有する平坦基板(flat substrate)に接続されており、この平坦基板が、表側および裏側を貫通して側方へ突き出した開口構造を有する。
【0011】
好ましい一実施形態では、平坦基板が、平坦基板を完全に点在させる細孔を有する、例えば多孔質プラスチック箔の形態、あるいは織物材料または紙などのセルロース材料から作られた担体層の形態の多孔質材料から作られている。さらに、金属箔を熱処理および続く片面研磨にかけて、少なくとも一方の金属表面、すなわち表側を電気絶縁層、例えば酸化層でコーティングした表面処理金属箔として平坦基板を設計することも実現可能である。
【0012】
さらに、電子受取り層の上に光起電層、その上に正孔受取り層が適用される。平坦基板の表側に適用された上記層は全て、単独でまたは全体として、少なくとも単一の開口構造が、平坦基板およびこの層配列を開通して側方へ突き出すような層厚を有する。
【0013】
本発明の好ましい第1の実施形態では、正孔受取り層の上に、導電性の、例えばドーピングによる強い正孔伝導層(以下p++層と呼ぶ)が、平坦基板と層構造とを平坦基板の裏側まで貫通して側方へ突き出した開口構造をp++層材料が少なくとも部分的に埋めるような方法で適用される。このようにすると、これに対応して平坦基板の裏側に電極領域を適用することによって、平坦基板の表側に適用されたp++層を、平坦基板の裏側に電気的に接触させることができることが保証される。
【0014】
この太陽電池の好ましい代替の第2の実施形態では、光起電層に直接に適用される正孔受取り層自体が、p++層材料を有するp++層として実施される。今までのところこのp++層は、平坦基板の裏側に電極領域を適当に提供することによって平坦基板の裏側にp++層が電気的に接触することができるように、平坦基板を開通して側方へ突き出した開口構造を完全にまたは少なくとも部分的に埋めることが好ましい。
【0015】
電子受取り層に接続された電極領域および正孔受取り層に接続された電極領域はともに、金属、好ましくはアルミニウムでできている。本発明の太陽電池の裏側接触のため、これらの2つの電極領域は、太陽電池の放射方向から見て光起電層の後ろ側の層に位置し、これによって電極領域のシェーディング効果が完全に排除される。放射方向から見て光起電層の手前に置かれる材料は、光起電層の手前の層での吸収損をできるだけ小さくし、または吸収損を全くなくすために、光透過性であることが保証されなければならない。これに関係する層は、正孔受取り層とp++層、またはp++層だけである。正孔受取り層、またはp++層が、使用可能な光起電性太陽光の少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは80%を透過させることが好ましい。上記の透過値は、太陽光の強度の畳込み積分に関係し(AM1.5)、光起電層を構成する光起電性吸収材料の分光感度に関係する。正孔受取り層またはp++層に特に適した材料はポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体である。特に好ましい材料は、3.4ポリエチレンジオキシチオフェンに関係するBaytron(登録商標)の商標で販売されているBayer社の製品である。
【0016】
できるだけ少ない損失で太陽光を光起電層まで透過させるために、正孔受取り層材料およびp++層が光に対してできるだけ透明でなければならないことに加えて、平坦基板の裏側に適用された電極領域までの開口構造の中に含まれるp++層材料の導電率ができるだけ高いことが必要である。しかし、開口構造の中では、光透過をできるだけ高くするという前者の要件は何の役割も果たさず、そのため、導電率強化材料、例えば黒鉛、金属、あるいはアンチモン、ドープされた酸化スズなどのドープされた酸化亜鉛またはドープされた酸化スズを選択的に添加することができる。このようなタイプ材料は極端な場合、光を全く通さないが、しかし、このような材料は、少なくとも部分的に透明なp++層材料よりもかなり良好な導電率を有する。
【0017】
費用面の理由から上記の導電率強化材料を添加しない場合には、開口構造の幅すなわち直径を、光起電層に適用された正孔受取り層およびp++層の層厚よりも大きくすると有利である。p++層、必要ならば光起電層上の正孔受取り層の層厚をできるだけ薄くし、同時に、p++層材料で部分的にまたは完全に埋められた開口構造の幅をできるだけ広く設計するこのようなタイプの方策は、一方でp++層の透過性を増大させ、他方で開口構造の縦方向の導電率を高めるのに役立つ。
【0018】
これに対して、開口構造の中に含まれる材料または材料の混合物の導電率を無限に最適化することは、開口構造の中で生じる、平坦基板上に直接に置かれた電子を排出する電極領域と光起電層上のp++層との間の局所的な短絡するため危険であろう。同様に、吸収層の上のp++材料の導電率を無限に最適化することも、開口構造の外で生じる、平面上に直接に置かれた電子を排出する電極領域と光起電層上のp++層との間の局所的な短絡に関して危険であろう。
【0019】
したがって、本発明の太陽電池の層構造の利点は、上述の短絡、すなわちいわゆるピンホールに対して鈍感であることにある。正孔伝導層の限られた導電率のため、開口構造内または開口構造外の局所的な短絡の影響は、より高い導電率の材料でできた太陽電池ほどには深刻ではない。基板の上の電子を排出する電極領域と正孔を排出する吸収層の上のp++層との間に短絡がある場合、本発明の太陽電池の電流はさらに、開口構造の中または開口構造の外の正孔伝導材料のコンダクタンスに対応した追加の直列抵抗を克服しなければならない。例えば、一般的な直径10μm、一般的な高さないし長さ100μm、および要件に対応する導電率を有する開口構造の場合、この抵抗は、60×10Ω(正方形平面要素についてR2=2×10Ω)に対応する。面積1cmの場合にいくつかの並列短絡の全抵抗1000Ωが許容可能とみなされる場合、これは、60個/cmの許容可能短絡密度に対応する。例えば、開口構造の一般的な側方間隔がおよそ100μmである場合、これは、およそ開口167個に1つの短絡に対応する。例えば開口構造の一般的な側方間隔が10μmである場合、これは、およそ開口2個に1つの短絡に対応する。したがって、許容可能な短絡密度は、R2=2×10Ωで600個/cm、R2=8×10Ωで24個/cm、R2=2×10Ωで6個/cmである。
【0020】
この太陽電池のできるだけ最適化された幾何学的および電気的設計の他の態様は、太陽電池の照射に起因する開口構造の縦方向の抵抗降下は、太陽電池の電力が最大となる動作点での太陽電池の動作電圧よりもはるかに小さくなければならないという要件に関係する。好ましくは、開口構造の縦方向の抵抗降下は、最大電力動作点での太陽電池電圧の5%未満でなければならない。このことから、一方で、放射方向から見て光起電層の手前のp++層の電気抵抗、ならびに開口構造の中の対応する材料に対するある種の値および事前設定が導き出され、他方で、平坦基板の中の単一の開口構造の幾何学的な配置および設計の事前設定が導き出される。これ以上の詳細については好ましい実施形態に関する説明を参照されたい。
【0021】
さらに、有機材料、特にポリマー材料でできた上述のタイプの少なくとも1つの光起電層を有する太陽電池を製造する本発明の一方法が記載される。この方法は、以下の方法ステップを特徴とする。第1のステップでは、先に説明したように表側および裏側を有する平坦基板であって、特に、平坦基板を貫通してその表側からその裏側まで完全に突き出した開口構造を有する平坦基板を用意する。この平坦基板は、片側すなわちその表側に、平坦基板の表側を金属で被覆した電極領域を備える。この金属被覆プロセスは、例えば湿式化学プロセスの一部として、例えば浸漬浴(steep bath)の中で実施される。またこの2次元金属被覆は、蒸着またはスパッタリング・プロセスの一部として実施することもできる。
【0022】
平坦基板の裏側のコーティングないし金属被覆を防ぐため、この金属被覆プロセスから裏側を保護しなければならない。例えば、平坦基板の裏側に、容易に除去することができる保護箔を配置することができる。
【0023】
平坦基板の表側の金属被覆が完了した後、付着させた電極領域の上に、電子はよく受け取るが正孔はあまり受け取らず、電子を被覆金属に渡す電子選択層を、2次元的に適用する。この目的に特に適しているのは例えば、非常に薄いLIF(LiF)層、またはAlまたはCsがドープされたバトフェナントロリンである。この層も、従来の蒸着または湿式化学プロセスによって適用することができる。
【0024】
次に、この電子選択層の上に光起電層、いわゆる吸収層を付着させる。この層は、フラーレン誘導体とPPVポリマーの混合物から作られることが好ましい。基本的に、例えば先に述べたT.Fromherzの論文に出ている材料などの代替の有機材料、特にポリマー光起電材料を使用することもできる。
【0025】
この方法の第1の代替変形形態では、付着させた吸収層の上に、正孔はよく受け取ることができるが電子はあまり受け取ることができない、例えばポリチオフェン誘導体でできたp導電層を適用することができる。さらに、この層を浸漬浴によって適用して、製造費を低く維持することができる。最後にこの層の上に、正孔をよく伝導する、例えばポリチオフェン誘導体でできた濃くドープされたp++層を、この濃くドープされたp++材料層が、好ましくは平坦基板を横方向に点在させる開口構造を完全に埋め、それぞれの開口構造を通り抜けて平坦基板の裏側に侵入するように適用する。
【0026】
このようにして、平坦基板の表側から裏側への太陽電池の電気接触が達成され、これによって電極領域による太陽電池の光起電活性層のシェーディングが回避される。さらに、導電層を構成するペースト、ワニスまたは溶液は、開口構造を貫通して平坦基板の裏側に突き出した電気接触を改善するのに適している。このようなタイプの物質は、先に述べた保護箔を平坦基板の裏側から除去した後に、平坦基板の裏側に適用し、この開口構造ないし細孔の中に押し込むことが好ましい。
【0027】
光起電層を製造する上述の付着プロセスに基づいて、第2の代替方法では、裏側接触を実現するため先に述べたように開口構造の中に少なくとも部分的に貫通するp++層を、光起電層の上に直接形成する。
【0028】
最後に、上述の2つの変形方法から独立した狙いは、平坦基板の裏側に、p++層の電極領域の働きをする金属層を形成することである。平坦基板の裏側への金属層の適用は、蒸着、または特に導電性接着剤を接触媒質として用いた金属箔の接着によることが好ましい。導電機能に加えてこの金属被覆は、裏側から太陽電池系に入る例えば酸素、水などの不純物に対する障壁としての機能を有する。
【0029】
好ましい一実施形態では、薄いITO層または他の透明な無機導電層を、蒸着またはスパッタリングによってp++層の上に付着させることが実現可能である。コスト因子を考慮するため、これらの追加の層を、平坦基板を貫通したその電気接触のために比較的に薄く選択することができる。
【0030】
多孔質構造を有し、好ましくは自体が弾性を持つ平坦基板上に単一の層を適用する上述のいくつかの方法ステップは、いわゆる「ロール・ツー・ロール(roll−to−roll)コーティング・プロセス」によって実施されることが好ましい。このプロセスでは、単一の湿式化学浸漬浴の中で平坦基板を引っ張り、それによって対応する層形成を起こさせる。決定的に重要なコーティング・パラメータは、コーティングする平坦基板を単一の浸漬浴の中で引張る速度であり、これによって単一の層の厚さが決まる。
【0031】
基本的に、上述の有機太陽電池は、n層とp層を交換して設計することもできる。これに対応して、例えばドーピングによる強い電子伝導層はn++と呼ぶ必要があり、これに対応してp++とn++は交換される。したがって、請求項19および20は、交換された導電特性を有するが、それ以外は、以上に記載した本発明の太陽電池設計と同じ設計を有する太陽電池を記述したものである。同じことが、言葉を入れ換えた方法、請求項33および34にも言える。
【0032】
本発明は、好ましい実施形態を使用した、添付図面に関する、本発明の全体概念の範囲または趣旨を限定しない、以下の説明からより明白となろう。
【発明の効果】
【0033】
半導体材料を用いて作られた従来の太陽電池と経済的に少なくとも同じ程度に魅力的な代替の太陽電池を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に従って設計された太陽電池の層の配列の概略断面図である。
【図2】従来技術の有機太陽電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に、平坦基板Sを有する、本発明に従って設計された太陽電池の断面図を示す。基板Sは多孔構造を有し、基板を貫通して側方へ突き出した開口構造Oを備える。このようなタイプの開口構造が多数、平坦基板Sをその表側から裏側まで完全に貫通して突き出している。すでに述べたとおり、多孔平坦基板として適しているのは、紙、多孔質プラスチック箔または表面処理された金属箔である。
【0036】
平坦基板Sの表側には、金属層として設計され、本明細書に記載の太陽電池のカソードの働きをする電極領域Enが適用されている。さらに、少なくとも電極領域Enを完全に覆い、例えば湿式化学コーティング・プロセスによって、電極領域Enおよび平面Sの表面全体を覆うことができる、電子受取り層nが提供されている。すでに述べたとおり、層の付着は、付着させる層材料で自由表面全体を濡らす浸漬浴によって実施する。n層はLIFでできていることが好ましい。別の方法プロセスで、このn層に光起電層Aを付着させ、その上に正孔受取り層pを配し、これをp++層によって覆う。
【0037】
本発明に従って設計された有機太陽電池の本質的な点は、p++層が、開口構造Oの中を、層構造全体を側方へ貫通して、アノードとなる別の電極領域Epが配置された太陽電池の裏側に貫通接触することである。
【0038】
太陽電池の表側に入射した光Lは、実質的に透明なp++およびp層を通り抜け、光起電性吸収層Aに入り、そこで電子/正孔対が形成される。電子は、n層を通って電極領域Enに入り、それによって太陽電池のカソードを形成する。一方、光起電層Aの中で分離された正孔は、層pを通ってp++層に入り、開口構造Oを経て、太陽電池のアノードを形成する電極領域Epに達する。
【0039】
開口構造Oの縦方向にp++層材料を透過する光は何の役割も果たさないので、この領域のp++層材料に添加剤を添加し、これによって正孔の伝導率を高めることができる。このようなタイプの添加剤は例えば、黒鉛、金属、あるいはアンチモン、ドープされた酸化スズなどのドープされた酸化亜鉛またはドープされた酸化スズである。
【0040】
さらに、R1は、光起電層A上のp++層の正方形領域要素の電気抵抗であり、R2は、開口構造に含まれる材料の正方形領域要素の電気抵抗である。Ldは、2つの開口構造間の平均間隔であり、hは、平坦基板の一般的な厚さ、したがってほぼ、開口構造の一般的な長さであり、bは開口の一般的な直径、Iは、有機太陽電池に入射する光の一般的な照射強度である。
【0041】
開口構造の縦方向の抵抗降下が、最大電力動作点、いわゆる最大電力点での有機太陽電池の電圧の5%未満である場合、適用される上記のパラメータの値は、抵抗R1およびR2:R1≦2×10Ω、およびR2≦2×10Ωに対して以下のとおりである:Ld=100μm、b=10μm、h=100μm、I=1000W/m
【0042】
実用上の理由から、2つの開口構造間の側方間隔は、開口構造の直径よりも著しく大きいので、開口の直径が平坦基板の厚さ、すなわち開口の長さよりも小さい場合、許容可能なR1の最大値はR2のそれよりも大きい。これに対応して、吸収層の上にp++層よりも厚い材料または他の材料を適用し、それによって開口の抵抗をより小さくすると有利である。上記のパラメータの好ましい値を下表に示す。
【表1】

【0043】
本発明に基づく太陽電池の好ましい応用分野は、例えば直射日光の場合に得られる高い光強度を用いた太陽電池の照射である。100W/mから1000W/mまでの間の光の強度は屋外応用ではごく一般的である。一方で、この太陽電池は、例えば太陽光の間接照射または人工光を用いた照射、例えば100W/m未満の強度の光を用いる屋内応用など、強度の低い光で非常によく機能する。さらに、低照射強度では、太陽電池系の単一の層の導電率に対する要求が低くなる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、太陽電池に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を吸収し、その中に電子−正孔対を生み出すことができる、有機材料、特にポリマー材料でできた少なくとも1つの光起電層(A)を有する太陽電池において、互いに反対側にある2つの層表面を有し、その一方が、前記光起電層(A)の中で生み出された少なくとも1つの正孔受取り層(p)に接続され、もう一方が、前記光起電層(A)の中で生み出された少なくとも1つの電子受取り層(n)に接続され、さらに、電極領域EnおよびEpを有し、一方の前記電極領域(Ep)が前記正孔受取り層(p)に電気的に接触し、もう一方の前記電極領域(En)が、前記電子受取り層(n)に電気的に接続された太陽電池であって、
前記電子受取り層(n)が、その電極領域(En)を介して、表側および裏側を有する平坦基板(S)に接続され、
前記平坦基板(S)が、前記表側から前記裏側まで貫通して側方へ突き出した開口構造(O)を備え、
前記正孔受取り層(p)、前記光起電層(A)、前記電子受取り層(n)、および前記層(n)に接続された前記電極領域(En)が、前記平坦基板(S)の前記表側に、少なくとも1つの前記開口構造が、前記平坦基板(S)と、前記層En、n、Aおよびpを含む前記層系とを貫通して側方へ突き出すように形成され、
前記正孔受取り層(p)が、前記平坦基板(S)の前記裏側まで前記平坦基板(S)を貫通して側方へ突き出した前記開口構造(O)を少なくとも部分的に埋めるp++層として設計され、
前記平坦基板(S)の前記裏側に、前記正孔受取り層(p)を受け取るための前記電極領域(Ep)が形成され、前記電極領域(Ep)が、前記開口構造(O)を貫通して延びる前記p++層に電気的に接触した
太陽電池。
【請求項2】
少なくとも1つの開口構造(O)の中に、前記p++層の層材料よりも導電率のよい正孔伝導材料が含まれる、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記開口構造の中の前記正孔伝導材料の導電率が低く選択され、そのため、前記開口構造の中での前記電子受取り電極領域(En)と前記p++層の間の可能な短絡が、前記太陽電池の短絡電流および/または効率を低下させない、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記開口構造の外の前記正孔伝導材料(p)の導電率が低く選択され、そのため、前記開口構造の外での前記電子受取り電極領域(En)と前記p++層の間の可能な短絡が、前記太陽電池の短絡電流および/または効率をあまり低下させない、請求項1から3の一項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記電極領域が金属層として設計されている、請求項1から4の一項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記p++層の最大電気抵抗が10Ω、好ましくは10から10Ω、特に好ましくは10から10Ωである、請求項1から5の一項に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記p++層が、使用可能な光起電性太陽光の少なくとも50%、好ましくは70%、特に好ましくは80%を透過させる、請求項1から6の一項に記載の太陽電池。
【請求項8】
ドープされた前記p++層がポリチオフェンまたはポリチオフェン誘導体を含む、請求項1から7の一項に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記開口構造(O)の中に導入された前記正孔伝導p++層材料が、黒鉛、金属、あるいはアンチモンがドープされた酸化スズ、アルミニウムがドープされた酸化亜鉛などのドープされた酸化亜鉛またはドープされた酸化スズを含む、請求項1から8の一項に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記平坦基板(S)が、前記平坦基板(S)を貫通して側方へ突き出した前記開口構造(O)を形成する細孔を有する多孔質材料から作られている、請求項1から9の一項に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記開口構造(O)が1から10μmの範囲の開口直径を提供し、隣接する前記開口構造(O)が10から100μmの間隔で配置されており、または、
前記開口構造(O)が0.1から1μmの範囲の開口直径を提供し、隣接する前記開口構造(O)が1から10μmの間隔で配置されており、または、
前記開口構造(O)が10から100μmの範囲の開口直径を提供し、隣接する前記開口構造(O)が100から500μmの間隔で配置されており、または、
前記開口構造(O)が5から25μmの範囲の開口直径を提供し、隣接する前記開口構造(O)が25から100μmの間隔で配置されている、
請求項1から10の一項に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記電極領域(En)、前記電子受取り層(n)、前記光起電層(A)を含む、前記平坦基板(S)の前記表側の層配列の全厚が、前記開口構造(O)の開口直径の2分の1よりも小さい、請求項1から11の一項に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記平坦基板(S)が、多孔質プラスチック材料、織物材料、紙などのセルロース材料、または表面処理した金属箔から作られている、請求項1から12の一項に記載の太陽電池。
【請求項14】
前記表面基板材料が弾性材料である、請求項1から13の一項に記載の太陽電池。
【請求項15】
前記光起電層(A)がポリマー材料またはポリマー材料のコンパウンドを含む、請求項1から14の一項に記載の太陽電池。
【請求項16】
前記光起電層(A)が、フラーレン誘導体とPPVポリマーの混合物を含む、請求項1から15の一項に記載の太陽電池。
【請求項17】
前記電子−受取り層(n)がLiF層、あるいはAlまたはCsがドープされたバトフェナントロリン層である、請求項1から16の一項に記載の太陽電池。
【請求項18】
前記電極領域(En、Ep)がアルミニウムでできている、請求項1から17の一項に記載の太陽電池。
【請求項19】
前記正孔受取り層(p)が、その電極領域(Ep)を介して、表側および裏側を有する平坦基板(S)に接続され、
前記平坦基板(S)が、前記表側から前記裏側まで貫通して側方へ突き出した開口構造(O)を有し、
前記電子受取り層(n)、前記光起電層(A)、前記正孔受取り層(p)、および前記層(p)に接続された前記電極領域(Ep)が、前記平坦基板(S)の前記表側に、少なくとも1つの開口構造(O)が、前記平坦基板(S)と、前記層Ep、p、Aおよびnからなる前記層系とを貫通して側方へ突き出すように形成され、
前記電子受取り層(n)が、前記平坦基板(S)の前記裏側まで前記平坦基板(S)を貫通して側方へ突き出した前記開口構造(O)を少なくとも部分的に埋めるn++層として設計され、
前記平面(S)の前記裏側に、前記電子受取り層(n)の前記電極領域(En)が形成され、前記電極領域(En)が、前記開口構造(O)を貫通して延びる前記n++層に電気的に接触した、
請求項1のジェネリック部分に記載の太陽電池。
【請求項20】
請求項2から7、9から16および18の特徴を、単独で、または組み合わせて使用することができるが、前記請求項の中に引用された前記導電材料(n)、(En)、(p++)、(Ep)、pの導電性を逆にしたことを特徴とする、請求項19に記載の太陽電池。
【請求項21】
有機材料、特にポリマー材料でできた少なくとも1つの光起電層を有する太陽電池を製造するための方法であって、
表側および裏側を有し、自体を貫通して前記表側から前記裏側まで側方へ突き出した開口構造(O)を備えた平坦基板(S)を用意するステップと、
前記平坦基板(S)の前記表側に電極領域(En)を形成するステップと、
前記平坦基板(S)の前記表側の前記電極領域(En)の上に電子受取り層(n)を2次元的に形成するステップと、
前記電子受取り層(n)の上に前記光起電層(A)を2次元的に形成するステップと、
前記平坦基板(S)を貫通して前記平面(S)の前記裏側まで側方へ突き出した前記開口構造(O)が前記p++層材料で埋められるように、前記光起電層(A)の上に正孔受取り層(p)をp++層の形態で2次元的に形成するステップと、
前記平坦基板(S)の前記裏側に追加の電極領域(Ep)を、前記p++層が、前記開口構造(O)を貫通して前記追加の電極領域(Ep)と接触するように、形成するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項22】
前記p++層材料に加えて、前記開口構造の中に導電材料を、前記導電材料が前記p++層および前記平坦基板(S)の前記裏側の前記電極領域(Ep)と接触するように導入する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記電極領域(En)、前記電子受取り層(n)、前記光起電層(A)、前記正孔受取り層(p)がp++層の形態で形成され、および/または、前記電極領域(Ep)が、蒸着、スパッタリングまたは湿式化学プロセスによって形成される、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記平坦基板(S)をコーティングする前に前記平坦基板(S)の前記裏側に箔が形成され、前記箔が、前記平坦基板(S)の前記裏側に前記追加の電極領域(Ep)を形成する前に前記平坦基板(S)の前記裏側から除去される、請求項21から23の一項に記載の方法。
【請求項25】
前記平坦基板(S)を貫通して前記表側から前記裏側まで側方へ突き出した前記開口構造(O)の中に含まれる前記p++層と前記平坦基板(S)の前記裏側の前記電極領域(Ep)との前記接触が、ペースト、ワニスまたは溶液によって支持される、請求項21から24の一項に記載の方法。
【請求項26】
前記ペースト、ワニスまたは溶液が導電性であり、少なくとも部分的に前記開口構造(O)の中に侵入し、前記p++層との導電性接続を生じさせる請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記p++層の上および/または内側に、少なくとも1つの薄いITO層(ドープされたインジウムスズ酸化物)および/または透明な無機導電層が形成される、請求項21から26の一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ITO層および/または前記透明な無機導電層が蒸着またはスパッタリングによって付着される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記平坦基板(S)の前記裏側への前記電極領域(Ep)の前記形成が、蒸着または金属箔の接着によって実施される、請求項21から28の一項に記載の方法。
【請求項30】
前記金属箔を接着するために導電性接着剤が利用される、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記導電性接着剤が、少なくとも部分的に前記開口構造(O)に侵入し、前記p++層との導電性接続を生み出す、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記平坦基板(S)が第1のロールから広げることによって提供され、全ての前記方法ステップの実行後に、生み出された太陽電池が第2のロールに巻きつけられる、請求項21から31の一項に記載の方法。
【請求項33】
表側および裏側を有し、自体を貫通して前記表側から前記裏側まで側方へ突き出した開口構造(O)を備えた平坦基板(S)を用意するステップと、
前記平坦基板(S)の前記表側に電極領域(Ep)を形成するステップと、
前記平坦基板(S)の前記表側の前記電極領域(Ep)の上に正孔受取り層(p)を2次元的に形成するステップと、
前記正孔受取り層(p)の上に前記光起電層(A)を2次元的に形成するステップと、
前記平坦基板(S)を貫通して前記平面(S)の前記裏側まで側方へ突き出した前記開口構造(O)がp++層材料で埋められるように、前記光起電層(A)の上に正孔受取り層(p)を前記p++層の形態で2次元的に形成するステップと、
前記平坦基板(S)の前記裏側に追加の電極領域(En)を、前記n++層が、前記開口構造(O)を貫通して前記追加の電極領域(Ep)と接触するように、形成するステップとを有することを特徴とする、請求項21のジェネリック部分に記載の方法。
【請求項34】
請求項22から26および29から32の特徴を形成することができるが、前記請求項の中に引用された前記導電材料(n)、(En)、(p++)、(Ep)、pの導電性を逆にしなければならない、請求項21に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−278145(P2009−278145A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197644(P2009−197644)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【分割の表示】特願2003−544826(P2003−544826)の分割
【原出願日】平成14年11月2日(2002.11.2)
【出願人】(500242786)フラウンホファー ゲセルシャフトツール フェールデルンク ダー アンゲヴァンテン フォルシュンク エー.ファオ. (47)
【Fターム(参考)】