光送信器及び光伝送システム
【課題】本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る光送信器は、下り信号に対して容量の異なる複数の階層で多値/高次変調を行って送信する。この際、光送信器は、各ONUが備える光受信器の宛先アドレスと受信可能な階層とを対応付けて記憶した対応表を参照し、宛先アドレスに応じて各フレームの変調の階層を決定することにより、階層によるユーザ多重を行う。
【解決手段】本発明に係る光送信器は、下り信号に対して容量の異なる複数の階層で多値/高次変調を行って送信する。この際、光送信器は、各ONUが備える光受信器の宛先アドレスと受信可能な階層とを対応付けて記憶した対応表を参照し、宛先アドレスに応じて各フレームの変調の階層を決定することにより、階層によるユーザ多重を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多値/高次変調を階層符号化の形式で行う光送信器及びこれを備える光伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在光アクセスネットワークとして普及しているPONシステムにおいて、高速化に向けた研究開発が広く行われている。高速化の一手段として多値変調方式や高次変調方式を適用する研究もなされている。
【0003】
変調方式としてOOK(2値振幅変調:on−off−keying)を用いた従来のPONシステム101と、その光送信器11及び光受信器21の概略図を図1〜3に示す。下り信号を送信する光送信器11は、パルス化したフレーム列を単一の光源及び変調器15で変調(直接変調あるいは外部変調)して送信し、スプリッタ30配下の複数の光受信器21は全て同じ信号を受信/信号再生部22で受信及び信号再生をし、フレーム復元を行う。フレームを復元した後、フレーム内の宛先アドレスの判定を行い、自己宛であれば取得し、それ以外のフレームは廃棄する。ここで、OLT10は、局側終端装置(Optical Line Terminal)である。ONU20は、加入者側終端装置(Optical Network Unit)である。
【0004】
同一伝送路において通信容量を多くするためにフレームを多値変調や高次変調することがある。多値変調及び高次変調の少なくとも一方の変調(以下、「多値変調及び高次変調の少なくとも一方の変調」を「多値/高次変調」と記載することがある。)を下り通信に適用した場合のPONシステム102とその光送信器11’及び光受信器21’の概略図の例を図4〜8に示す。まずシステム全体(図4)としては、OLT10’及びONU20’全てを多値/高次変調方式用のものに交換する必要がある。光送信器11’及び光受信器21’の構成に関しては、多値/高次変調の方式自体が多種多様であり、かつ1つの変調方式に対しても光送信器11’及び光受信器21’の構成は多種多様である(例えば、非特許文献1を参照。)。代表的な変調例として、1つの光源の光を多段で変調して多値/高次変調する場合の光送信器11’−aの構成を図5に、光受信器21’−aの構成を図7に示す。また、他の変調例として、符号化及びアップコンバージョン(upconversion)を電気段で行う光送信器11’−bの構成を図6に、復号及びダウンコンバージョン(downconversion)を電気段で行う光受信器21’−bの構成を図8に示す。
【0005】
図5の光送信器11’−aは、変調軸あるいはダイナミックレンジの異なる変調器15をn台用い、ひとつの光源14からの出力光を符号化されたn並列の信号で多段変調し伝送する。図7の光受信器21’−aは、受光/信号再生部22を複数備えており、受信光をスプリッタ24で分割し、光段にある復号部25で復号してそれぞれ受光及び信号再生を行う。
【0006】
図6の光送信器11’−bは、デジタル信号処理部16において多値/高次変調信号を生成し、デジタルアナログ変換器17でアナログ信号に変換した信号を用い、光源14からの光を変調器15で変調して送信する。図8の光受信器21’−bは、送信側と逆の処理を行い、受信したアナログ信号をアナログデジタル変換部27でデジタル信号に変換し、デジタル信号処理部28で復号処理を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】High−Order Modulation for Optical Fiber Transmission, Matthias Seimetz著, 2009,pp.26−53,66−73,79−81,84−93,100−101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に変調の多値度や変調の次数を低いものから高いものに上げるとき、送受信器ともに高価格化及び高消費電力化する。例えば図2、3と図5、7あるいは図6、8を比較すると、まず図5、7に関しては1つであった変調器15、受光/信号再生部22が複数に増えている。図6、8に関しては、変調器15、受光/信号再生部22は1つであるが、ADC27、DAC17、upconversionやdownconversion、符号化や復号等の機能部分であるデジタル信号処理部(16、28)が増えている。
【0009】
通信容量を多くするための、図5〜8以外の構成に関しても、例えばシンボル間距離に応じたSN比を確保するために高パワー出力のレーザ、増幅器、感度のよいAPDを用いたり、符号化及び復号のための計算量が増えるためにより高速で大規模な信号処理部を使用したりする場合もある。いずれにしても装置として高価格化及び高消費電力化する可能性が高い。とりわけ光受信器は、PONシステムの下り通信においては送信器に比べ数が多い。例えば、GE−PONでは光送信器:光受信器=1:32である。このため、図4のように全てのONU20’に一様に図7、8に示す多値/高次変調信号用の光受信器21’を搭載すると、ネットワーク全体として高価格化と高消費電力化の影響が大きくなることが予想される。すなわち、PONシステムにおいて通信容量を多くする場合、高価格化と高消費電力化の影響が課題となる。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る光送信器は、下り信号に対して容量の異なる複数の階層で受信可能な符号による多値/高次変調を行って送信する。この際、光送信器は、各ONUが備える光受信器の宛先アドレスと受信可能な階層とを対応付けて記憶した対応表を参照し、宛先アドレスに応じて各フレームの変調の階層を決定することにより、階層によるユーザ多重を行うことができる。
【0012】
具体的には、本発明に係る光送信器は、フレームの宛先となる複数の光受信器毎に受信可能な変調方式の階層を対応付けた対応表と、前記対応表を参照し、フレームの宛先に基づいて各フレームを階層に振り分ける階層振分手段と、前記階層振分手段で振り分けられたフレームの階層に応じた変調方式で光源の光を変調する変調手段と、を備える。
【0013】
本光送信器は、多値/高次変調を階層符号化の形式で行い、階層をユーザの多重に用いる。ここで、階層符号化とは、予め単一の符号により変調された信号を複数パターンの信号として受信できるよう、階層を分けて符号化しておく方式である。1つのPONシステムにおいて、階層符号を用いることで受信側であるONU側も複数の階層で受信できるよう複数パターンの光受信器を混在させることができる。このため、本光通信器を備えれば、高価格で高消費電力な通信容量が大きい階層を受信可能なONUのみでなく、低価格で低消費電力な通信容量が小さい階層しか受信できないONUも1つのPONシステムに含めることができる。つまり、本光通信器は、PONシステム全体としての周波数利用効率を低下させることなく低価格化及び低消費電力化を図ることができる。
【0014】
従って、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器を提供することができる。
【0015】
本発明に係る光送信器の少なくとも1つの前記階層は、少なくとも2以上の前記光受信器が受信可能な変調方式の階層であることを特徴とする。本光送信器は、フレームのマルチキャストやブロードキャストが可能になる。
【0016】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、多段の強度変調器で前記光源の光を強度変調し、前記対応表は、フレームの宛先と前記強度変調器とを対応付けていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を位相振幅変調し、前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を直角位相振幅変調し、前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る光伝送システムは、前記光送信器と、複数の前記光受信器と、前記光送信器からの光信号を分岐して前記光受信器に結合する光伝送路と、を備える。
【0020】
本光伝送システムは本発明に係る光通信器を備えるため、高価格で高消費電力な通信容量が大きい階層を受信可能なONUのみでなく、低価格で低消費電力な通信容量が小さい階層しか受信できないONUも接続可能である。つまり、本光伝送システムは、PONシステム全体としての周波数利用効率を低下させることなく低価格化及び低消費電力化を図ることができる。
【0021】
従って、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる本光伝送システムを提供することができる。
【0022】
本発明に係る光伝送システムは、受信容量が異なる符号化方式の前記光受信器が混在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器及び光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】PON(OOK)の構成を説明する図である。
【図2】光送信器(OOK)の構成を説明する図である。
【図3】光受信器(OOK)の構成を説明する図である。
【図4】PON(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図5】光送信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図6】光送信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図7】光受信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図8】光受信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図9】本発明に係る光伝送システムを説明する図である。
【図10】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図11】本発明に係る光送信器が有する対応表を説明する図である。
【図12】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図13】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図14】本発明に係る光送信器が有する対応表を説明する図である。
【図15】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図16】本発明に係る光送信器おいて多値度により多値変調の階層を分ける場合を説明する図である。
【図17】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図18】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図19】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図20】階層変調に適さないシンボルマッピングの例を説明する図である。
【図21】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【図22】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【図23】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。また、枝番号を付さずに説明している場合は、当該符号の全ての枝番号に共通する説明である。
【0026】
(構成)
本実施形態のPONである光伝送システム103の構成を図9に示す。OLT50は、多値/高次変調信号を階層符号化形式で送信する。ONU60は大容量で受信可能なものと、小容量のみ受信可能なものがスプリッタ30配下に混在している。光伝送システム103は、大容量受信用のONU60と小容量受信用のONU60とがどちらも1つ以上存在し、混在している状態であることが特徴である。
【0027】
OLT50の下り信号の光送信器51の構成例を図10から15を用いて説明する。図10は、図5で説明した光源14からの光を多段に変調することにより多値/高次変調をする方式に階層変調を適用する場合の例である。図13は、図6で説明した符号化/復号をデジタル信号処理部で行い、アナログ伝送する方式に階層変調を適用する場合の例である。
【0028】
本実施形態の光送信器と図5及び図6の多値/高次変調方式の光送信器との構成上の差は、フレーム列を変調する前に階層符号化処理を行っている点である。この階層符号化処理は、主にフレームの宛先となっているONU60が受信できる階層で該当フレームを変調するための処理である。階層符号化処理部52は対応表53を有する。図11及び図14は、それぞれ対応表53−a、対応表53−bの一例である。対応表53は、あらかじめ、どの宛先のONUがどの階層を受信できるかという情報に基づき、各構成において対応した階層で変調するために必要となる情報が記載されている。なお、図11や図14のような対応表でなく、対応表53のような情報が得られるような別形態の手段であってもよい。
【0029】
フレームが到着してから階層符号化処理が行われる流れを図12に示す。階層符号化処理部52−aの変調器決定部54は到着したフレームのヘッダに格納された宛先アドレスを参照する。そして、該当フレームを宛先のONU60が受信可能な階層で変調するために必要となる情報を対応表53−aから得る。変調器決定部54は、対応表53−aの情報に応じて、宛先のONU60が受信可能な階層で変調されるよう変調器15の順を考慮してフレームを振り分ける。
【0030】
フレームが到着してから他の階層符号化処理が行われる流れを図15に示す。階層符号化処理部52−bのビット位置決定部55は到着したフレームのヘッダに格納された宛先アドレスを参照する。そして、該当フレームを宛先のONU60が受信可能な階層で変調するために必要となる情報を対応表53−bから得る。ビット位置決定部55は、対応表53−bの情報に応じて、宛先のONU60が受信可能な階層で変調されるよう符号のビット列の順を考慮してフレームを振り分ける。
【0031】
階層符号化処理部52の動作は図10〜15の例に限らない。階層符号化処理部52は、フレームを特定の階層で変調できるような動作を行っていればよい。また、本例においては階層変調処理を明示的に機能ブロックとして表しているが、この動作をレイヤ2の処理に組み込み、明示的な機能ブロックとならない場合もある。
【0032】
階層符号化処理部52は、ユニキャストのフレーム(ONU個別のフレーム)を振り分けるとき、該当フレームのアドレスの宛先となっているONUが受信できる階層のうちいずれかひとつの階層で変調されるようフレームを振り分ける。階層符号化処理部52は、マルチキャスト又はブロードキャストのフレームを振り分けるとき、宛先になっているONUが共通して受信できる階層で変調されるようフレームを振り分ける。例えば、図11及び図14の例では全ONUが共通して受信できる階層がない。このような場合、階層符号化処理部52は、ブロードキャスト信号を2つの階層に分けて送信する必要がある。図11の場合であれば、変調器15の番号が1と2の2つの階層となる。図14の場合であれば、ビット位置が1と2の2つの階層となる。なお、予めブロードキャストのことを考慮し、少なくとも1つの階層だけは全ONUが共通して受信できるように構成しておくことも可能である。
【0033】
図11や図14の対応表は、ユーザがより伝送速度の速いサービスの申込をした場合など、ONUや受信可能な階層に変化が生じた際に更新される。
【0034】
どのアドレスのONUにどの階層の変調信号を受信させるかという割り当て方法に関しては,付加価値として通信容量の異なるサービスを提供するという割り当て法が可能である。具体的には、希望のユーザに大容量の階層の信号を受信可能な光受信器を備えたONUを使用するなど、ユーザごとに光受信器の構成を意図的に変え、料金に差をつけたサービスが可能である。
【0035】
ここで、多値/高次変調信号のシンボルの階層の分け方と、ビット位置と階層を対応させるシンボルマッピングの例を、以下3つの場合に分けて示す。
【0036】
(1)多値度により多値変調の階層を分ける場合
1つの変調軸に対し、多値度のみにより階層を分ける。振幅変調を2階層に分ける場合の例を図16に示す。図16においては、4値ASK信号を3つの閾値を用いる4値受信と1つの閾値を用いる2値受信とで階層を2つに分けている。
【0037】
図16におけるa,b,cはシンボル間距離を表しており,a=b=cとして全て等しく設定することも可能であるが、予めb>a=cのように傾斜をかけておいたり、図17の例のように、階層を分ける場合と分けない場合とで、使用するシンボルを切り替る場合もある。
【0038】
図17の例では、まず送信側は8値ASKで信号を変調する。あるタイムスロットにおいてフレームの宛先が全て大容量の階層を受信できるONUである場合には、階層を分ける必要はないので、8値全てのシンボルを使用する。小容量の階層しか受信できないONU宛のフレームが入っている場合には、10進数での2〜5のシンボルには情報を入れず、0、1、6、7の4値のシンボルのみを用いる。
【0039】
いずれの場合においても、図16、17のようなシンボルマッピングにしておくことで、4値受信の際にはMSB(最上位ビット)とLSB(最下位ビット)が、2値受信の際にはMSBのみが受信できることとなる。なお、多値変調の軸の振幅以外(位相等)への変更、あるいは多値度を増やすことにより階層を3階層以上にすることも可能である。
【0040】
(2)次元により高次変調の階層を分ける場合
2次以上の次数で変調し、変調する軸により階層を分ける。位相振幅変調の例を図18に示す。本例では振幅と位相により4ビット全てを受信する階層、位相のみによりMSB以外の3ビットを受信する階層、振幅のみによりMSBの1ビットを受信する階層に分けられる。
【0041】
ここでは位相振幅変調を示したが、変調軸として偏波等他の軸を用いること、変調の多値数を増やすこと、階層を増やすことも可能である。
【0042】
(3)多値度/次数により多値/高次変調の階層を分ける場合
多値/高次変調信号において、更に多値度の小さい多値/高次変調に階層を分ける例を図19に示す。本例では64QAMで変調した信号を64QAM、16QAM、QPSKの3階層で受信している。
【0043】
シンボル間距離はa=b=cと全て等しく設定することも可能であるし,a>b>cとなるように傾斜をつけておくか、図17の場合のように階層変調をする際に使わないシンボルを指定し、シンボルマッピングの方法を切り替える場合もある。
【0044】
図16〜19に示すように、図12、15の階層符号化処理部52は、各シンボルに対応するビット列のうち、宛先アドレスに対応するONUが受信できるビット位置となるようにフレームを振り分ける必要がある。
【0045】
また、シンボルマッピングは図16〜19の例に限らないが、受信部で特定の階層のデータを抽出できるよう考慮しておかなければならない。図20は、16APSKのグレイコードによるシンボルマッピングの例である。デジタル信号処理等で符号化を行う際に図20のようなマッピングで行いたい場合には,マッピングの変換を行う機能を付加しておく必要がある。
【0046】
本実施形態の構成における、通信容量の大きい階層を受信可能なONUの光受信器の構成例を図21及び図22に、通信容量の小さい階層のみ受信可能なONUの光受信器の構成例を図23に示す。図21の光受信器61−aは、図7の光受信器21’−aに階層変調を適用した場合の構成例である。図22の光受信器61−bは、図8の光受信器21’−bに階層変調を適用した場合の構成例である。
【0047】
光受信器61と図7及び図8の光送信器21’との差分は、光送信器61で階層ごとに変調されて送信されたフレームを、振り分けたフレームごとに復元できる構成となっている点である。通信容量の大きい階層を受信可能なONUは、通信容量の小さな階層の信号も含めて受信することとなるが、フレームに復元した後に自己宛てのフレームであるかを判別する。
【0048】
図23は、通信容量の小さな階層の変調信号のみを受信できるONUが持つ光受信器71を説明する図である。光受信器71は、図3の光受信器21と同様の構成か、あるいは図16〜19のようなシンボルマッピングにおいて容量の小さい階層の信号のみを判別できるよう閾値判定部分等に変更を加えたものである。光受信器71の価格や消費電力は、図21や図22の光受信器61に比べて低い。
【0049】
光受信器の構成は、図21〜図23の構成に限らない。受光/信号再生部22は、自身に設定された受信可能な階層の信号を全て復元できる機能を備えている。例えば、受光/信号再生部22は、受信可能な階層において光送信器が位相変調で送信していれば位相情報を受信する機能が必要であり、デジタル信号処理で符号化して送信していればDAC/ADCが必要となる。
【0050】
(動作)
PONの下り信号を送信する際、時間多重されたフレーム列が図10〜12、図13〜15あるいは他の階層変調を行う構造の光送信器51に入力される。まず、階層符号化処理部52は、フレームのヘッダに格納されたONU60の宛先を読みとり、対応表53を参照して各フレームを宛先ONU60が受信可能となるように変調されるよう階層に振り分ける。
【0051】
図10〜12の光送信器51−aの場合、振り分けられたフレームは、階層ごとに異なる変調器で変調される。この送信信号は、図21で説明した大容量の階層を受信できるONUの光受信器61−aでフレームに復元される。光受信器61−aは、送信信号を光スプリッタ24で分岐し、光段の復号部25で復号し、複数の受光/信号再生部22で送信信号を復元する。このため、光受信器61−aは、振り分けられたフレームごとにフレームを復元できる。
【0052】
図13〜15の光送信器51−bの場合、階層符号化処理部52−bが対応表53−bを用いて適切なビット位置にフレームを振り分け、振り分けられたフレームに対しパラレル/シリアル変換を行う。デジタル信号処理部16は、所望のビット位置に並べられたビット列に対して符号化を行う。この送信信号は、図22で説明した大容量の階層を受信できるONUの光受信器61−bでフレームに復元される。光受信器61−bは、送信信号をアナログデジタル変換部27でAD変換し、デジタル信号処理部28で復号する。そして、光受信器61−bは、復号された信号をシリアルパラレル変換することで、振り分けられたフレームごとにフレームを復元できる。
【0053】
本例ではパラレルシリアル変換を明示的に機能ブロックとして有する例を示しているが、パラレルシリアル変換の機能ブロックが明示的に存在せず、デジタル信号処理部28で同じ結果を得られるような操作を行う場合もある。
【0054】
一方、図10と図13のいずれの光送信器51で送信した場合も、図23の光受信器71は小容量の階層の信号しか受信できないため、復元されるフレームも小容量の階層の信号のみである。
【0055】
フレームが復元された後には、光受信器71も、光受信器61も、TDM−PONシステムと同様に、フレームのヘッダに格納された宛先アドレスに応じて自己宛かどうかによりフレームを受け取るか廃棄するかを決定する。
【0056】
(効果)
光送信器51及び光伝送システム103は以下の効果を有する。
図9の光伝送システム103は、多値/高次変調信号受信に必要となる高価格で高消費電力な光受信器を含むONUをスプリッタ配下の必要な箇所のみに配置する。一方、図4のPONシステム102は、高価格で高消費電力な光受信器を含むONUをスプリッタ配下の全てに配置する。しかし、光伝送システム103は、PONシステム102と同じ周波数利用効率でPONシステムを構成できる。ここで同じ周波数利用効率とは、全ての時間帯でOLTの送信できる一番高いbit/symbolで下り信号を送信できることを表している。
【0057】
PONシステム102の光受信器と光伝送システム103の光受信器を比較すると、次の点が明らかになる。構成部品により多少の差はあるが、図7、8 21、22が高価格で高消費電力の光受信器で、図23が低価格で低消費電力の光受信器である。例えば1:32のPONを構成するとき、光ファイバ、光スプリッタ以外の装置の構成について、PONシステム102の多値/変調方式は
図5の光送信器11’−aを含むOLT×1
図7の光受信器21’−aを含むONU×32
又は
図6の光送信器11’−bを含むOLT×1、
図8の光受信器21’−bを含むONU×32
のように、32個のONU全てを高価格で高消費電力の光受信器となる。
一方、光伝送システム103は、
図10の光送信器51−aを含むOLT×1、
図21の光受信器61−aを含むONU×16、
図23の光受信器71を含むONU×16
又は
図13の光送信器51−bを含むOLT×1、
図22の光受信器61−bを含むONU×16、
図23の光受信器71を含むONU×16
という構成でPONシステム102と同様の周波数利用効率を実現することを可能とする。
【0058】
図21及び図22の光受信器61を含むONU60と図23の光受信器71を含むONU60は同数に限らないが、スプリッタ30配下のONU60全てを高価格で高消費電力な図21又は図22の光受信器61で構成することはなく、低価格で低消費電力な図23の光受信器71を含むことができるという点が特徴となる。
【0059】
このため、光伝送システム103は、PONシステム102と比べ、周波数利用効率を低下させることなく、より低価格で低消費電力に多値/高次変調PONを実現できる。
【0060】
本実施形態における送受信器の構成や動作は、説明容易のため1チャネルの伝送に対するものとして記述しているが、1チャネルの伝送に限定されるものではない。例えば、構成の中の一部を複数用い、チャネルを多重するための機能を付加することで、本発明に係る光送信器及び光伝送システムは伝送される信号を複数チャネル並列伝送することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10、10’:OLT
11、11’、11’−a、11’−b:光送信器
14:光源
15:変調器
16:デジタル信号処理部
17:デジタルアナログ変換器
20、20−1、20−2、・・・、20−m(mは任意の整数):ONU
20’、20’−1、20’−2、・・・、20’−m(mは任意の整数):ONU
21、21’、21’−a、21’−b:光受信器
22:受光/信号再生部(ここの“/”は受光と信号再生の双方を行うことを意味する。)
24:スプリッタ
25:復号部
27:アナログデジタル変換部
28:デジタル信号処理部
30:スプリッタ
40:光ファイバ
50:OLT
51、51−a、51−b:光送信器
52、52−a、52−b:階層符号化処理部
53、53−a、53−b:対応表
54:変調器決定部
55:ビット位置決定部
60、60−1、60−2、・・・、60−m(mは任意の整数):ONU
61、61−a、61−b:光受信器
71:光受信器
101、102:PONシステム
103:光伝送システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、多値/高次変調を階層符号化の形式で行う光送信器及びこれを備える光伝送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在光アクセスネットワークとして普及しているPONシステムにおいて、高速化に向けた研究開発が広く行われている。高速化の一手段として多値変調方式や高次変調方式を適用する研究もなされている。
【0003】
変調方式としてOOK(2値振幅変調:on−off−keying)を用いた従来のPONシステム101と、その光送信器11及び光受信器21の概略図を図1〜3に示す。下り信号を送信する光送信器11は、パルス化したフレーム列を単一の光源及び変調器15で変調(直接変調あるいは外部変調)して送信し、スプリッタ30配下の複数の光受信器21は全て同じ信号を受信/信号再生部22で受信及び信号再生をし、フレーム復元を行う。フレームを復元した後、フレーム内の宛先アドレスの判定を行い、自己宛であれば取得し、それ以外のフレームは廃棄する。ここで、OLT10は、局側終端装置(Optical Line Terminal)である。ONU20は、加入者側終端装置(Optical Network Unit)である。
【0004】
同一伝送路において通信容量を多くするためにフレームを多値変調や高次変調することがある。多値変調及び高次変調の少なくとも一方の変調(以下、「多値変調及び高次変調の少なくとも一方の変調」を「多値/高次変調」と記載することがある。)を下り通信に適用した場合のPONシステム102とその光送信器11’及び光受信器21’の概略図の例を図4〜8に示す。まずシステム全体(図4)としては、OLT10’及びONU20’全てを多値/高次変調方式用のものに交換する必要がある。光送信器11’及び光受信器21’の構成に関しては、多値/高次変調の方式自体が多種多様であり、かつ1つの変調方式に対しても光送信器11’及び光受信器21’の構成は多種多様である(例えば、非特許文献1を参照。)。代表的な変調例として、1つの光源の光を多段で変調して多値/高次変調する場合の光送信器11’−aの構成を図5に、光受信器21’−aの構成を図7に示す。また、他の変調例として、符号化及びアップコンバージョン(upconversion)を電気段で行う光送信器11’−bの構成を図6に、復号及びダウンコンバージョン(downconversion)を電気段で行う光受信器21’−bの構成を図8に示す。
【0005】
図5の光送信器11’−aは、変調軸あるいはダイナミックレンジの異なる変調器15をn台用い、ひとつの光源14からの出力光を符号化されたn並列の信号で多段変調し伝送する。図7の光受信器21’−aは、受光/信号再生部22を複数備えており、受信光をスプリッタ24で分割し、光段にある復号部25で復号してそれぞれ受光及び信号再生を行う。
【0006】
図6の光送信器11’−bは、デジタル信号処理部16において多値/高次変調信号を生成し、デジタルアナログ変換器17でアナログ信号に変換した信号を用い、光源14からの光を変調器15で変調して送信する。図8の光受信器21’−bは、送信側と逆の処理を行い、受信したアナログ信号をアナログデジタル変換部27でデジタル信号に変換し、デジタル信号処理部28で復号処理を行う。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】High−Order Modulation for Optical Fiber Transmission, Matthias Seimetz著, 2009,pp.26−53,66−73,79−81,84−93,100−101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に変調の多値度や変調の次数を低いものから高いものに上げるとき、送受信器ともに高価格化及び高消費電力化する。例えば図2、3と図5、7あるいは図6、8を比較すると、まず図5、7に関しては1つであった変調器15、受光/信号再生部22が複数に増えている。図6、8に関しては、変調器15、受光/信号再生部22は1つであるが、ADC27、DAC17、upconversionやdownconversion、符号化や復号等の機能部分であるデジタル信号処理部(16、28)が増えている。
【0009】
通信容量を多くするための、図5〜8以外の構成に関しても、例えばシンボル間距離に応じたSN比を確保するために高パワー出力のレーザ、増幅器、感度のよいAPDを用いたり、符号化及び復号のための計算量が増えるためにより高速で大規模な信号処理部を使用したりする場合もある。いずれにしても装置として高価格化及び高消費電力化する可能性が高い。とりわけ光受信器は、PONシステムの下り通信においては送信器に比べ数が多い。例えば、GE−PONでは光送信器:光受信器=1:32である。このため、図4のように全てのONU20’に一様に図7、8に示す多値/高次変調信号用の光受信器21’を搭載すると、ネットワーク全体として高価格化と高消費電力化の影響が大きくなることが予想される。すなわち、PONシステムにおいて通信容量を多くする場合、高価格化と高消費電力化の影響が課題となる。
【0010】
そこで、前記課題を解決するために、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器及び光伝送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明に係る光送信器は、下り信号に対して容量の異なる複数の階層で受信可能な符号による多値/高次変調を行って送信する。この際、光送信器は、各ONUが備える光受信器の宛先アドレスと受信可能な階層とを対応付けて記憶した対応表を参照し、宛先アドレスに応じて各フレームの変調の階層を決定することにより、階層によるユーザ多重を行うことができる。
【0012】
具体的には、本発明に係る光送信器は、フレームの宛先となる複数の光受信器毎に受信可能な変調方式の階層を対応付けた対応表と、前記対応表を参照し、フレームの宛先に基づいて各フレームを階層に振り分ける階層振分手段と、前記階層振分手段で振り分けられたフレームの階層に応じた変調方式で光源の光を変調する変調手段と、を備える。
【0013】
本光送信器は、多値/高次変調を階層符号化の形式で行い、階層をユーザの多重に用いる。ここで、階層符号化とは、予め単一の符号により変調された信号を複数パターンの信号として受信できるよう、階層を分けて符号化しておく方式である。1つのPONシステムにおいて、階層符号を用いることで受信側であるONU側も複数の階層で受信できるよう複数パターンの光受信器を混在させることができる。このため、本光通信器を備えれば、高価格で高消費電力な通信容量が大きい階層を受信可能なONUのみでなく、低価格で低消費電力な通信容量が小さい階層しか受信できないONUも1つのPONシステムに含めることができる。つまり、本光通信器は、PONシステム全体としての周波数利用効率を低下させることなく低価格化及び低消費電力化を図ることができる。
【0014】
従って、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器を提供することができる。
【0015】
本発明に係る光送信器の少なくとも1つの前記階層は、少なくとも2以上の前記光受信器が受信可能な変調方式の階層であることを特徴とする。本光送信器は、フレームのマルチキャストやブロードキャストが可能になる。
【0016】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、多段の強度変調器で前記光源の光を強度変調し、前記対応表は、フレームの宛先と前記強度変調器とを対応付けていることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を位相振幅変調し、前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る光送信器の前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を直角位相振幅変調し、前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る光伝送システムは、前記光送信器と、複数の前記光受信器と、前記光送信器からの光信号を分岐して前記光受信器に結合する光伝送路と、を備える。
【0020】
本光伝送システムは本発明に係る光通信器を備えるため、高価格で高消費電力な通信容量が大きい階層を受信可能なONUのみでなく、低価格で低消費電力な通信容量が小さい階層しか受信できないONUも接続可能である。つまり、本光伝送システムは、PONシステム全体としての周波数利用効率を低下させることなく低価格化及び低消費電力化を図ることができる。
【0021】
従って、本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる本光伝送システムを提供することができる。
【0022】
本発明に係る光伝送システムは、受信容量が異なる符号化方式の前記光受信器が混在していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、高価格化と高消費電力化を抑制しつつ通信容量の増大を図れる光送信器及び光伝送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】PON(OOK)の構成を説明する図である。
【図2】光送信器(OOK)の構成を説明する図である。
【図3】光受信器(OOK)の構成を説明する図である。
【図4】PON(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図5】光送信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図6】光送信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図7】光受信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図8】光受信器(多値/高次変調)の構成を説明する図である。
【図9】本発明に係る光伝送システムを説明する図である。
【図10】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図11】本発明に係る光送信器が有する対応表を説明する図である。
【図12】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図13】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図14】本発明に係る光送信器が有する対応表を説明する図である。
【図15】本発明に係る光送信器を説明する図である。
【図16】本発明に係る光送信器おいて多値度により多値変調の階層を分ける場合を説明する図である。
【図17】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図18】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図19】本発明に係る光送信器おいて階層を分ける場合を説明する図である。
【図20】階層変調に適さないシンボルマッピングの例を説明する図である。
【図21】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【図22】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【図23】本発明に係る光伝送システムの光受信器を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。また、枝番号を付さずに説明している場合は、当該符号の全ての枝番号に共通する説明である。
【0026】
(構成)
本実施形態のPONである光伝送システム103の構成を図9に示す。OLT50は、多値/高次変調信号を階層符号化形式で送信する。ONU60は大容量で受信可能なものと、小容量のみ受信可能なものがスプリッタ30配下に混在している。光伝送システム103は、大容量受信用のONU60と小容量受信用のONU60とがどちらも1つ以上存在し、混在している状態であることが特徴である。
【0027】
OLT50の下り信号の光送信器51の構成例を図10から15を用いて説明する。図10は、図5で説明した光源14からの光を多段に変調することにより多値/高次変調をする方式に階層変調を適用する場合の例である。図13は、図6で説明した符号化/復号をデジタル信号処理部で行い、アナログ伝送する方式に階層変調を適用する場合の例である。
【0028】
本実施形態の光送信器と図5及び図6の多値/高次変調方式の光送信器との構成上の差は、フレーム列を変調する前に階層符号化処理を行っている点である。この階層符号化処理は、主にフレームの宛先となっているONU60が受信できる階層で該当フレームを変調するための処理である。階層符号化処理部52は対応表53を有する。図11及び図14は、それぞれ対応表53−a、対応表53−bの一例である。対応表53は、あらかじめ、どの宛先のONUがどの階層を受信できるかという情報に基づき、各構成において対応した階層で変調するために必要となる情報が記載されている。なお、図11や図14のような対応表でなく、対応表53のような情報が得られるような別形態の手段であってもよい。
【0029】
フレームが到着してから階層符号化処理が行われる流れを図12に示す。階層符号化処理部52−aの変調器決定部54は到着したフレームのヘッダに格納された宛先アドレスを参照する。そして、該当フレームを宛先のONU60が受信可能な階層で変調するために必要となる情報を対応表53−aから得る。変調器決定部54は、対応表53−aの情報に応じて、宛先のONU60が受信可能な階層で変調されるよう変調器15の順を考慮してフレームを振り分ける。
【0030】
フレームが到着してから他の階層符号化処理が行われる流れを図15に示す。階層符号化処理部52−bのビット位置決定部55は到着したフレームのヘッダに格納された宛先アドレスを参照する。そして、該当フレームを宛先のONU60が受信可能な階層で変調するために必要となる情報を対応表53−bから得る。ビット位置決定部55は、対応表53−bの情報に応じて、宛先のONU60が受信可能な階層で変調されるよう符号のビット列の順を考慮してフレームを振り分ける。
【0031】
階層符号化処理部52の動作は図10〜15の例に限らない。階層符号化処理部52は、フレームを特定の階層で変調できるような動作を行っていればよい。また、本例においては階層変調処理を明示的に機能ブロックとして表しているが、この動作をレイヤ2の処理に組み込み、明示的な機能ブロックとならない場合もある。
【0032】
階層符号化処理部52は、ユニキャストのフレーム(ONU個別のフレーム)を振り分けるとき、該当フレームのアドレスの宛先となっているONUが受信できる階層のうちいずれかひとつの階層で変調されるようフレームを振り分ける。階層符号化処理部52は、マルチキャスト又はブロードキャストのフレームを振り分けるとき、宛先になっているONUが共通して受信できる階層で変調されるようフレームを振り分ける。例えば、図11及び図14の例では全ONUが共通して受信できる階層がない。このような場合、階層符号化処理部52は、ブロードキャスト信号を2つの階層に分けて送信する必要がある。図11の場合であれば、変調器15の番号が1と2の2つの階層となる。図14の場合であれば、ビット位置が1と2の2つの階層となる。なお、予めブロードキャストのことを考慮し、少なくとも1つの階層だけは全ONUが共通して受信できるように構成しておくことも可能である。
【0033】
図11や図14の対応表は、ユーザがより伝送速度の速いサービスの申込をした場合など、ONUや受信可能な階層に変化が生じた際に更新される。
【0034】
どのアドレスのONUにどの階層の変調信号を受信させるかという割り当て方法に関しては,付加価値として通信容量の異なるサービスを提供するという割り当て法が可能である。具体的には、希望のユーザに大容量の階層の信号を受信可能な光受信器を備えたONUを使用するなど、ユーザごとに光受信器の構成を意図的に変え、料金に差をつけたサービスが可能である。
【0035】
ここで、多値/高次変調信号のシンボルの階層の分け方と、ビット位置と階層を対応させるシンボルマッピングの例を、以下3つの場合に分けて示す。
【0036】
(1)多値度により多値変調の階層を分ける場合
1つの変調軸に対し、多値度のみにより階層を分ける。振幅変調を2階層に分ける場合の例を図16に示す。図16においては、4値ASK信号を3つの閾値を用いる4値受信と1つの閾値を用いる2値受信とで階層を2つに分けている。
【0037】
図16におけるa,b,cはシンボル間距離を表しており,a=b=cとして全て等しく設定することも可能であるが、予めb>a=cのように傾斜をかけておいたり、図17の例のように、階層を分ける場合と分けない場合とで、使用するシンボルを切り替る場合もある。
【0038】
図17の例では、まず送信側は8値ASKで信号を変調する。あるタイムスロットにおいてフレームの宛先が全て大容量の階層を受信できるONUである場合には、階層を分ける必要はないので、8値全てのシンボルを使用する。小容量の階層しか受信できないONU宛のフレームが入っている場合には、10進数での2〜5のシンボルには情報を入れず、0、1、6、7の4値のシンボルのみを用いる。
【0039】
いずれの場合においても、図16、17のようなシンボルマッピングにしておくことで、4値受信の際にはMSB(最上位ビット)とLSB(最下位ビット)が、2値受信の際にはMSBのみが受信できることとなる。なお、多値変調の軸の振幅以外(位相等)への変更、あるいは多値度を増やすことにより階層を3階層以上にすることも可能である。
【0040】
(2)次元により高次変調の階層を分ける場合
2次以上の次数で変調し、変調する軸により階層を分ける。位相振幅変調の例を図18に示す。本例では振幅と位相により4ビット全てを受信する階層、位相のみによりMSB以外の3ビットを受信する階層、振幅のみによりMSBの1ビットを受信する階層に分けられる。
【0041】
ここでは位相振幅変調を示したが、変調軸として偏波等他の軸を用いること、変調の多値数を増やすこと、階層を増やすことも可能である。
【0042】
(3)多値度/次数により多値/高次変調の階層を分ける場合
多値/高次変調信号において、更に多値度の小さい多値/高次変調に階層を分ける例を図19に示す。本例では64QAMで変調した信号を64QAM、16QAM、QPSKの3階層で受信している。
【0043】
シンボル間距離はa=b=cと全て等しく設定することも可能であるし,a>b>cとなるように傾斜をつけておくか、図17の場合のように階層変調をする際に使わないシンボルを指定し、シンボルマッピングの方法を切り替える場合もある。
【0044】
図16〜19に示すように、図12、15の階層符号化処理部52は、各シンボルに対応するビット列のうち、宛先アドレスに対応するONUが受信できるビット位置となるようにフレームを振り分ける必要がある。
【0045】
また、シンボルマッピングは図16〜19の例に限らないが、受信部で特定の階層のデータを抽出できるよう考慮しておかなければならない。図20は、16APSKのグレイコードによるシンボルマッピングの例である。デジタル信号処理等で符号化を行う際に図20のようなマッピングで行いたい場合には,マッピングの変換を行う機能を付加しておく必要がある。
【0046】
本実施形態の構成における、通信容量の大きい階層を受信可能なONUの光受信器の構成例を図21及び図22に、通信容量の小さい階層のみ受信可能なONUの光受信器の構成例を図23に示す。図21の光受信器61−aは、図7の光受信器21’−aに階層変調を適用した場合の構成例である。図22の光受信器61−bは、図8の光受信器21’−bに階層変調を適用した場合の構成例である。
【0047】
光受信器61と図7及び図8の光送信器21’との差分は、光送信器61で階層ごとに変調されて送信されたフレームを、振り分けたフレームごとに復元できる構成となっている点である。通信容量の大きい階層を受信可能なONUは、通信容量の小さな階層の信号も含めて受信することとなるが、フレームに復元した後に自己宛てのフレームであるかを判別する。
【0048】
図23は、通信容量の小さな階層の変調信号のみを受信できるONUが持つ光受信器71を説明する図である。光受信器71は、図3の光受信器21と同様の構成か、あるいは図16〜19のようなシンボルマッピングにおいて容量の小さい階層の信号のみを判別できるよう閾値判定部分等に変更を加えたものである。光受信器71の価格や消費電力は、図21や図22の光受信器61に比べて低い。
【0049】
光受信器の構成は、図21〜図23の構成に限らない。受光/信号再生部22は、自身に設定された受信可能な階層の信号を全て復元できる機能を備えている。例えば、受光/信号再生部22は、受信可能な階層において光送信器が位相変調で送信していれば位相情報を受信する機能が必要であり、デジタル信号処理で符号化して送信していればDAC/ADCが必要となる。
【0050】
(動作)
PONの下り信号を送信する際、時間多重されたフレーム列が図10〜12、図13〜15あるいは他の階層変調を行う構造の光送信器51に入力される。まず、階層符号化処理部52は、フレームのヘッダに格納されたONU60の宛先を読みとり、対応表53を参照して各フレームを宛先ONU60が受信可能となるように変調されるよう階層に振り分ける。
【0051】
図10〜12の光送信器51−aの場合、振り分けられたフレームは、階層ごとに異なる変調器で変調される。この送信信号は、図21で説明した大容量の階層を受信できるONUの光受信器61−aでフレームに復元される。光受信器61−aは、送信信号を光スプリッタ24で分岐し、光段の復号部25で復号し、複数の受光/信号再生部22で送信信号を復元する。このため、光受信器61−aは、振り分けられたフレームごとにフレームを復元できる。
【0052】
図13〜15の光送信器51−bの場合、階層符号化処理部52−bが対応表53−bを用いて適切なビット位置にフレームを振り分け、振り分けられたフレームに対しパラレル/シリアル変換を行う。デジタル信号処理部16は、所望のビット位置に並べられたビット列に対して符号化を行う。この送信信号は、図22で説明した大容量の階層を受信できるONUの光受信器61−bでフレームに復元される。光受信器61−bは、送信信号をアナログデジタル変換部27でAD変換し、デジタル信号処理部28で復号する。そして、光受信器61−bは、復号された信号をシリアルパラレル変換することで、振り分けられたフレームごとにフレームを復元できる。
【0053】
本例ではパラレルシリアル変換を明示的に機能ブロックとして有する例を示しているが、パラレルシリアル変換の機能ブロックが明示的に存在せず、デジタル信号処理部28で同じ結果を得られるような操作を行う場合もある。
【0054】
一方、図10と図13のいずれの光送信器51で送信した場合も、図23の光受信器71は小容量の階層の信号しか受信できないため、復元されるフレームも小容量の階層の信号のみである。
【0055】
フレームが復元された後には、光受信器71も、光受信器61も、TDM−PONシステムと同様に、フレームのヘッダに格納された宛先アドレスに応じて自己宛かどうかによりフレームを受け取るか廃棄するかを決定する。
【0056】
(効果)
光送信器51及び光伝送システム103は以下の効果を有する。
図9の光伝送システム103は、多値/高次変調信号受信に必要となる高価格で高消費電力な光受信器を含むONUをスプリッタ配下の必要な箇所のみに配置する。一方、図4のPONシステム102は、高価格で高消費電力な光受信器を含むONUをスプリッタ配下の全てに配置する。しかし、光伝送システム103は、PONシステム102と同じ周波数利用効率でPONシステムを構成できる。ここで同じ周波数利用効率とは、全ての時間帯でOLTの送信できる一番高いbit/symbolで下り信号を送信できることを表している。
【0057】
PONシステム102の光受信器と光伝送システム103の光受信器を比較すると、次の点が明らかになる。構成部品により多少の差はあるが、図7、8 21、22が高価格で高消費電力の光受信器で、図23が低価格で低消費電力の光受信器である。例えば1:32のPONを構成するとき、光ファイバ、光スプリッタ以外の装置の構成について、PONシステム102の多値/変調方式は
図5の光送信器11’−aを含むOLT×1
図7の光受信器21’−aを含むONU×32
又は
図6の光送信器11’−bを含むOLT×1、
図8の光受信器21’−bを含むONU×32
のように、32個のONU全てを高価格で高消費電力の光受信器となる。
一方、光伝送システム103は、
図10の光送信器51−aを含むOLT×1、
図21の光受信器61−aを含むONU×16、
図23の光受信器71を含むONU×16
又は
図13の光送信器51−bを含むOLT×1、
図22の光受信器61−bを含むONU×16、
図23の光受信器71を含むONU×16
という構成でPONシステム102と同様の周波数利用効率を実現することを可能とする。
【0058】
図21及び図22の光受信器61を含むONU60と図23の光受信器71を含むONU60は同数に限らないが、スプリッタ30配下のONU60全てを高価格で高消費電力な図21又は図22の光受信器61で構成することはなく、低価格で低消費電力な図23の光受信器71を含むことができるという点が特徴となる。
【0059】
このため、光伝送システム103は、PONシステム102と比べ、周波数利用効率を低下させることなく、より低価格で低消費電力に多値/高次変調PONを実現できる。
【0060】
本実施形態における送受信器の構成や動作は、説明容易のため1チャネルの伝送に対するものとして記述しているが、1チャネルの伝送に限定されるものではない。例えば、構成の中の一部を複数用い、チャネルを多重するための機能を付加することで、本発明に係る光送信器及び光伝送システムは伝送される信号を複数チャネル並列伝送することも可能である。
【符号の説明】
【0061】
10、10’:OLT
11、11’、11’−a、11’−b:光送信器
14:光源
15:変調器
16:デジタル信号処理部
17:デジタルアナログ変換器
20、20−1、20−2、・・・、20−m(mは任意の整数):ONU
20’、20’−1、20’−2、・・・、20’−m(mは任意の整数):ONU
21、21’、21’−a、21’−b:光受信器
22:受光/信号再生部(ここの“/”は受光と信号再生の双方を行うことを意味する。)
24:スプリッタ
25:復号部
27:アナログデジタル変換部
28:デジタル信号処理部
30:スプリッタ
40:光ファイバ
50:OLT
51、51−a、51−b:光送信器
52、52−a、52−b:階層符号化処理部
53、53−a、53−b:対応表
54:変調器決定部
55:ビット位置決定部
60、60−1、60−2、・・・、60−m(mは任意の整数):ONU
61、61−a、61−b:光受信器
71:光受信器
101、102:PONシステム
103:光伝送システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームの宛先となる複数の光受信器毎に受信可能な変調方式の階層を対応付けた対応表と、
前記対応表を参照し、フレームの宛先に基づいて各フレームを階層に振り分ける階層振分手段と、
前記階層振分手段で振り分けられたフレームの階層に応じた変調方式で光源の光を変調する変調手段と、
を備える光送信器。
【請求項2】
少なくとも1つの前記階層は、少なくとも2以上の前記光受信器が受信可能な変調方式の階層であることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
前記変調手段は、多段の強度変調器で前記光源の光を強度変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と前記強度変調器とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を位相振幅変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項5】
前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を直角位相振幅変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの光送信器と、
複数の前記光受信器と、
前記光送信器からの光信号を分岐して前記光受信器に結合する光伝送路と、
を備える光伝送システム。
【請求項7】
受信容量が異なる符号化方式の前記光受信器が混在していることを特徴とする請求項6に記載の光伝送システム。
【請求項1】
フレームの宛先となる複数の光受信器毎に受信可能な変調方式の階層を対応付けた対応表と、
前記対応表を参照し、フレームの宛先に基づいて各フレームを階層に振り分ける階層振分手段と、
前記階層振分手段で振り分けられたフレームの階層に応じた変調方式で光源の光を変調する変調手段と、
を備える光送信器。
【請求項2】
少なくとも1つの前記階層は、少なくとも2以上の前記光受信器が受信可能な変調方式の階層であることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
前記変調手段は、多段の強度変調器で前記光源の光を強度変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と前記強度変調器とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項4】
前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を位相振幅変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項5】
前記変調手段は、前記フレームを符号化して前記光源の光を直角位相振幅変調し、
前記対応表は、フレームの宛先と符号化のビット位置とを対応付けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光送信器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかの光送信器と、
複数の前記光受信器と、
前記光送信器からの光信号を分岐して前記光受信器に結合する光伝送路と、
を備える光伝送システム。
【請求項7】
受信容量が異なる符号化方式の前記光受信器が混在していることを特徴とする請求項6に記載の光伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−222456(P2012−222456A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83866(P2011−83866)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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