光送信器
【課題】光送信機を小型化及び低消費電力化する。
【解決手段】RZ−DQPSK送信器において、クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備え、RZ変調器を省略する構成とする。
【解決手段】RZ−DQPSK送信器において、クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備え、RZ変調器を省略する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長距離高速光通信に適した光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の光通信システムには、光信号の強度によってデータを伝送する強度変調方式が適用されている。具体的には、2.5〜40Gbit/sという高速の電気デジタル信号を光変調器又は光源に入力し、光信号をそのままオン・オフして伝送する方式である。
【0003】
近年、光ファイバを用いた高速大容量通信の速度は10〜40Gbit/sに達し、さらなる伝送速度及び伝送距離の拡大が求められている。しかし、従来の強度変調方式で高速化を行う場合、以下二つの課題のため、伝送速度及び伝送距離の拡大が困難となる。
【0004】
第1の課題は、波長分散である。波長分散は、波長の異なる光が光ファイバ中で異なる速度で伝送される現象である。高速で変調された光信号の光スペクトルは異なる波長成分を含むため、伝送路である光ファイバの波長分散によってそれぞれの波長成分は異なった時刻に受信端に到着する。その結果、伝送後の光波形は大きな波形歪を引き起こすことが知られている。例えば、ビットレートが2倍になると、光ファイバの波長分散によって、伝送可能な距離は1/4に制限されてしまう。
【0005】
第2の課題は、光ファイバ非線形効果である。光ファイバ非線形効果は、光信号が、自分自身の持つ強度変調成分によって、光ファイバを伝送中に自分自身又は並進する光信号に余分な位相変調(周波数チャープ)を印加してしまう現象である。この位相変調成分が上述の波長分散と相互作用することでさらに大きな波形歪が発生する。
【0006】
第1の課題に対し、光通信システムの高速化及び長距離化を実現させるための変調方式として,光の位相を使った変調方式、特にDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)が注目されている。DQPSKでは、シンボルレートがビットレートの半分となるため、波長分散によって制限される伝送距離は、従来の2値変調と比較すると4倍に延長可能となる。
【0007】
一方、第2の課題に対し、信号の各ビットをRZ(Return to Zero)パルス化して伝送する方式が採用されている。RZ方式は光送信器の構成が複雑になる代わりに、ビット境界で光パワーが必ず0レベルに戻るので、信号のレベルが同じ場合、平均光パワーが小さくなる。よって、RZ方式は受信感度に優れた変調方式である。さらに、RZ方式はビット間のパルス干渉を抑制する効果があるため、非線形効果に強い。
【0008】
これらの結果、以上二つの課題を克服するために、RZ−DQPSK変調方式が、長距離伝送を可能とする方式として近年急速に認知されるようになった。
【0009】
図6は、RZ−DQPSK送信器の構成を示すブロック図である。
【0010】
図6の例において、レーザ光源11から出力された信号光は、IQ変調器27に入力される。IQ変調器27は、光カプラ12、位相変調器13、位相変調器14、位相器19及び光カプラ23を備える。
【0011】
IQ変調器27に入力された信号光は、1×2の光カプラ12で分岐される。分岐された光は2値の位相変調器13及び14に入力されて変調される。変調器14で変調された光は、位相器19に入力される。位相器19には、バイアス電圧Vb2を印加するためのバイアス信号入力端子20が設けられている。位相器19は、このバイアス電圧Vb2に応じて光の位相を変える。理想的にはこの位相はπ/2である。
【0012】
位相変調器13及び14としては、一般に、リチウムニオベイト(LN)などの材料を導波路基板とするマッハツェンダ(MZ)型の光変調器が用いられている。
【0013】
位相変調器13及び14は、2つの進行波電極入力端子15及び16にそれぞれ位相の反転したクロックが印加される両相駆動型である。進行波電極入力端子16の途中には、バイアスティー17を介して低速のバイアス電圧Vb1を印加するためのバイアス信号入力端子18が設けられている。
【0014】
バイアス電圧Vb1は後述のように光変調器14の動作点を設定するために用いられる。位相変調器13から出力された光21及び位相器19から出力された光22は、光カプラ23で合成される。合成された光は光出力経路24からNRZ−DQPSK信号として出力される。
【0015】
そして、NRZ−DQPSK信号は、光出力経路24を介して光変調器(RZ変調器)25に入力される。クロック26が印加される光変調器25の位相関係を合わせることによって、シンボルレート(B/2、B:ビットレート)の半分の周波数でRZパルスに変換されて、RZ−DQPSK光波形として出力される。
【0016】
ここで、図7を参照して、両相駆動型MZ型光変調器を用いたNRZ−DQPSK光パルスの生成原理を示す。
【0017】
図7(b)は両相駆動型のMZ変調器の光透過特性であり、縦軸は光透過率、横軸は2つの電極に印加される差電圧である。光透過率の1周期に対応する電圧幅を2Vπと表記する。NRZ−DQPSK光パルスを生成するには、2つの電極に位相が互いに反転したデータ信号を印加する。
【0018】
両電極の差電圧の例を図7(a)に示す。その電圧振幅を以下ではデータ振幅と記載する。このデータ振幅をおよそ2Vπ、またその中心となるバイアス電圧を光透過率が最小となる正弦波の底(最適点)に合致するように設定する。バイアス電圧が最適点に合致している場合、MZ変調器の透過率は印加したデータ電圧の周波数の2倍の周期でオン・オフを繰り返し、図6の光出力経路24からは図7(c)のようなNRZ−DQPSK光パルスが出力される。
【0019】
さて、以上説明したような従来のRZ−DQPSK信号発生方法には、以下の3つの課題がある。第1の課題は、2台の光変調器(すなわちIQ変調器27及びRZ変調器25)が必要となるため変調器のコストがかかることである。第2の課題は、光変調器を2台用いることによって変調器の損失が大きいため、光源のパワーを高くする必要があることである。第3の課題は、変調器2台の位相関係が常に一定となるように調整が必要であることである。
【0020】
これに対して、非特許文献1及び特許文献1では、RZ変調器を用いずに、RZ−DPSK信号を生成する方法が開示されている。これらは、本発明の対象としている信号と異なる2値の位相変調信号を生成する方法であるが、基本的には4値位相変調と同じ生成方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2006−251570号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Xiang Liu, Y. Kao, "GENERATION OF RZ-DPSK USING A SINGLE MACH ZENDER MODULATOR AND NOVELDRIVER ELECTRONICS", 30th European Conference on optical Communications (ECOC2004), paper We3.4.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来技術に示した信号発生方法には、以下の問題点がある。
【0024】
RZ信号はNRZ信号の約2倍の信号帯域を持つため、変調器及び変調器駆動回路に従来の2倍程度の広帯域の部品が必要となる。特に伝送速度が40Gbit/sのような超高速システムではこのような部品を実現することが困難である。
【0025】
本発明の目的は、超高速光伝送システムにおいて、上記の問題点を解決し、安価でかつ簡単な構成によって、消費電力を抑え、かつ、高いパワーでのファイバ入力を可能にする送信信号を生成する光送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の光送信機の代表的な一例は、クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態によれば、電気回路でRZ化された電気信号がマッハツェンダ変調器に印加されるため、従来は必要であったRZ変調器25が不要になる。このため、送信機を小型化することができる。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態によれば、単一のマッハツェンダ変調器のアームにおいて1箇所又は2箇所の変調信号を駆動させることでRZパルスを生成することができる。よって、マッハツェンダ変調器を2台使用するのに比べて、光の合波、及び2台の変調器の位相調整が不要となるため、送信機をさらに小型化することができる。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態によれば、RZ−DQPSK光信号のRZパルスの生成を行うために、クロックをデータ信号の1/2の周波数で動作させればよく、低速の電気回路で光信号を生成できるため、送信機を低消費電力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の光送信器の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の光送信器の構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のI送信データ及びQ送信データの値と、両相駆動型マッハツェンダ光変調器に印加される電圧値と、の対応を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【図6】RZ−DQPSK送信器の構成を示すブロック図である。
【図7】両相駆動型MZ型光変調器を用いたNRZ−DQPSK光パルスの生成原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の光送信器の構成図である。
【0033】
第1の実施形態は、二つのNRZ送信データ信号に、本発明に係るRZ符号化回路による信号処理を加え、RZ−DQPSK光パルスを出力する光送受信器の例である。本発明に係るRZ符号化回路は、送信データの1/2の周波数を持つクロックで駆動し、NRZ送信データをRZ符号化した電気信号を出力する。
【0034】
I送信データ100及びQ送信データ120は、それぞれNRZデジタル信号である。クロック101は、周期的に1と0を繰り返すデジタル信号列であり、その周期は、I送信データ100及びQ送信データ120の周期の2倍(すなわち周波数が1/2)である。I送信データ100、Q送信データ120、及びクロック101は,図1の外部にある回路(図示省略)によって生成される。
【0035】
本実施形態の光送信機は、二つのRZ符号化回路を備え、それぞれがI送信データ100及びQ送信データ120をRZ符号化する。それらの二つのRZ符号化回路の構成は同一であるため、図1において、二つのRZ符号化回路の対応する部分には、同一の参照符号を付与した。
【0036】
クロック101は二つに分岐し、一方は遅延103に入力され、遅延103によってクロック101の周期の半分の遅延が与えられて出力される。XOR回路102は、遅延103の出力信号及びクロック101を入力され、それらの信号の排他的論理和を出力する。AND回路104は、XOR回路102の出力信号列及びI送信データ100を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路105は、XOR回路102の出力を入力され、そのビット反転信号を出力する。OR回路106は、I送信データ100及びNOT回路105の出力を入力され、それらの論理和を出力する。パワーコンバイナ107は、AND回路104及びOR回路106の出力を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0037】
二つのRZ符号化回路のパワーコンバイナ107から出力された二つのRZ信号は、IQ変調器117の位相変調器113及び114にそれぞれ入力される。図1に示すIQ変調器117は、図6に示したIQ変調器27と同等である。すなわち、IQ変調器117が備える光カプラ112、位相変調器113、位相変調器114、位相器115及び光カプラ116は、それぞれ、IQ変調器27が備える光カプラ12、位相変調器13、位相変調器14、位相器19及び光カプラ23と同等である。このため、IQ変調器117についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の光源111は、従来の光源11(図6)と同等である。ただし、後述するように、本実施形態の光源111の出力は、従来の光源11の出力より小さくてもよい。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0039】
図2に示す(1)〜(7)は、図1に示す(1)〜(7)に対応する。すなわち、図2の(1)〜(7)に示す信号波形は、図1の(1)〜(7)が表示された箇所で観測される。
【0040】
具体的には、(1)は、I送信データ100又はQ送信データ120の信号波形であり、(2)はクロック101の信号波形である。(3)は、遅延103の出力信号波形であり、半周期分遅延したクロック101の信号波形である。(4)は、XOR回路102の出力信号波形であり、入力された信号(2)及び(3)の排他的論理和の信号波形である。(5)は、AND回路104の出力信号波形であり、入力された信号(1)及び(4)の論理積の信号波形である。(6)は、OR回路106の出力信号波形であり、入力された信号(1)及び(4)の論理和の信号波形である。(7)は、パワーコンバイナ107の出力信号波形であり、信号(5)及び(6)を合成した信号の波形である。図2に示すように、パワーコンバイナ107からは、3値のRZ信号に変換されたI送信データ100又はQ送信データ120が出力される。
【0041】
二つのパワーコンバイナ107の出力は、それぞれ、IQ変調器117の位相変調器113及び114に入力される。これらの入力は、図6に示すDATA1及びDATA2に相当する。ただし、図6に示す従来のDATA1及びDATA2が図7に示すような2値のNRZ送信データであるのに対して、本実施形態の位相変調器113及び114には、それぞれ、パワーコンバイナ107から3値のRZ送信データが入力される。3値のRZ送信データの値「0」が図7のバイアス電圧に相当し、3値のRZ送信データの値「1」が例えば図7の位相πに対応する駆動電圧に相当し、3値のRZ送信データの値「−1」が例えば図7の位相0に対応する駆動電圧に相当する。
【0042】
このため、図6に示すIQ変調器27がNRZ−DQPSK光パルスを出力するのに対して、本実施形態のIQ変調器117はRZ−DQPSK光パルスを出力する。したがって、本実施形態では従来必要だったRZ変調器25を省略することができる。これによって、IQ変調器117とRZ変調器との間の位相関係の調整が不要になる。さらに、RZ変調器による損失がないため、従来より出力が小さい光源111を用いて、従来と同等のRZ−DQPSK光パルス出力を得ることができる。あるいは、従来と同等の出力の光源111を用いれば、従来より大きいRZ−DQPSK光パルス出力を得ることができる。さらに、本実施形態のRZ符号化回路は、送信データの半分の周波数のクロックで駆動される。これらによって、光送信機の低コスト化、低消費電力化及び小型化を実現することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態の光送信器の構成図である。
【0044】
図1に示した光送信器は、両相駆動型マッハツェンダ変調器を数台備えるが、両相駆動型マッハツェンダ変調器1台でDQPSK信号を生成することもできる(David J. Krause, "Demonstration of 20-Gb/s DQPSK With a Single Dual-Drive Mach-Zender Modulator", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.20, No.16, AUGUST 15, 2008(以下、非特許文献2と記載)参照)。
【0045】
そこで、本実施形態は、本発明に係るRZ符号化回路によって、二つのNRZ送信データから、それぞれ3値の電気信号を生成し、それらを両相駆動型マッハツェンダ変調器に印加することで、1台のマッハツェンダ光変調器を用いてRZ−DQPSK光信号を出力する例を示す。
【0046】
本実施形態の光送信器は、NRZ−DQPSK変調された二つの電気信号(I送信データ300及びQ送信データ301)から、図3に示す電気回路によって3値(1,0,−1)の電圧値を持つ二つの電気信号を生成し(図中V1及びV2)、それぞれを両相駆動型マッハツェンダ光変調器311の電極へ印加することによって、RZ−DQPSK変調された光信号を出力する。
【0047】
なお、両相駆動型マッハツェンダ光変調器311に入力される光信号の光源317は、従来の光源11(図6)と同等である。ただし、第1の実施形態の場合と同様、本実施形態の光源317の出力は、従来の光源11の出力より小さくてもよい。
【0048】
ここで、前記3値(1,0,−1)は正規化された電圧値であり、それぞれマッハツェンダ光変調器311に(1/2π,0,−1/2π)の位相を発生させる。
【0049】
I送信データ300及びQ送信データ301は、2値(0,1)の電圧値を持つ電気信号である。I送信データ300及びQ送信データ301の値と、V1及びV2の電圧値と、の対応については図4を参照して説明する。
【0050】
図3のAND回路303、304、305、307、308及び309は、二入力、一出力のAND回路であり、二つの入力信号が共に“1”であれば“1”を出力し、それ以外の場合は“0”を出力する。図3の白丸は、NOT回路312、313、314、315及び316であり、入力信号“0”を“1”に、“1”を“0”に反転させた信号を出力する。パワーコンバイナ306及び310は、二つの入力信号を合成した出力信号を出力する。パワーコンバイナ306の出力信号V1、及び、パワーコンバイナ310の出力信号V2は、それぞれマッハツェンダ光変調器311の電極に印加される。
【0051】
AND回路303は、Q送信データ301及びクロック302を入力され、それらの論理積を出力する。AND回路304は、I送信データ300及びAND回路303の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路312は、I送信データ300を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路305は、AND回路303の出力信号及びNOT回路312の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路313は、AND回路305の出力信号を入力され、そのビット反転信号を出力する。パワーコンバイナ306は、AND回路304の出力信号及びNOT回路313の出力信号を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0052】
NOT回路314は、Q送信データ301を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路307は、NOT回路314の出力信号及びクロック302を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路315は、I送信データ300を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路308は、NOT回路315の出力信号及びAND回路307の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。AND回路309は、AND回路307の出力信号及びI送信データ300を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路316は、AND回路309の出力信号を入力され、そのビット反転信号を出力する。パワーコンバイナ310は、AND回路308の出力信号及びNOT回路316の出力信号を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0053】
図4は、本発明の第2の実施形態のI送信データ300及びQ送信データ301の値と、両相駆動型マッハツェンダ光変調器311に印加される電圧値と、の対応を示す説明図である。
【0054】
図3に示す回路に、I送信データ300及びQ送信データ301としてそれぞれ“0”及び“0”が入力された場合、V1及びV2としてそれぞれ“0”及び“1”が出力される。同様に、“0”及び“1”が入力された場合、“−1”及び“0”が出力される。“1”及び“0”が入力された場合、“0”及び“−1”が出力される。“1”及び“1”が入力された場合、“1”及び“0”が出力される。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0056】
図5(1)はI送信データ300の信号波形、図5(2)はQ送信データ301の信号波形、図5(3)はクロック302の信号波形である。なお、(3)のクロック302の周波数は、I送信データ300及びQ送信データ301の周波数と同じである。図5(4)は、AND回路303の出力信号波形である。図5(5)は、AND回路304の出力信号波形である。図5(6)は、AND回路305と、その出力信号が入力されるNOT回路とを通過した後の出力信号波形である。図5(7)は、パワーコンバイナ306の出力信号波形、すなわち、信号(5)及び(6)を合成した信号の波形である。図5に示すように、パワーコンバイナ306の出力信号波形(7)は、図3及び図4のV1に相当する3値のRZ信号である。
【0057】
図5(8)は、AND回路307の出力信号波形、図5(9)は、AND回路308の出力信号波形である。図5(10)は、AND回路309と、その出力信号が入力されるNOT回路と、を通過した後の出力信号波形である。図5(11)は、パワーコンバイナ310の出力波形、すなわち、信号(9)及び(10)を合成した信号の波形である。図5に示すように、パワーコンバイナ310の出力信号波形(11)は、図3及び図4のV2に相当する3値のRZ信号である。
【0058】
既に説明したように、V1及びV2の3値(1,0,−1)は、それぞれ、マッハツェンダ光変調器311に(1/2π,0,−1/2π)の位相を発生させる。図4に示すV1及びV2の組み合わせが入力されると、V1及びV2がいずれもRZ信号であるため、マッハツェンダ光変調器311は、RZ−DQPSK光パルスを出力する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、従来の光送信機(図6参照)において必要だったRZ変調器25を省略することができ、さらに、第1の実施形態のIQ変調器117において必要だった二つのマッハツェンダ光変調器113及び114のうち一方と、光カプラ112及び116と、位相器115とを省略することができる。このため、本実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、光送信機のさらなる低コスト化、低消費電力化及び小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
11、111 レーザ光源
12、23、112、116 光カプラ
13、14、113、114 位相変調器
15、16 進行波電極入力端子
17 バイアスティー
18、20 バイアス信号入力端子
19、115 位相器
21 位相変調器の光出力
22 位相器の光出力
24 NRZ−DQPSK信号
25 RZ変調器
26 クロック
27、117 IQ変調器
100、300 I送信データ
101、302 クロック
102 XOR回路
103 遅延
104、303、304、305、307、308、309 AND回路
105 NOT回路
106 OR回路
107、306、310 パワーコンバイナ
120、301 Q送信データ
311 両相駆動型マッハツェンダ変調器
【技術分野】
【0001】
本発明は、長距離高速光通信に適した光送信器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の光通信システムには、光信号の強度によってデータを伝送する強度変調方式が適用されている。具体的には、2.5〜40Gbit/sという高速の電気デジタル信号を光変調器又は光源に入力し、光信号をそのままオン・オフして伝送する方式である。
【0003】
近年、光ファイバを用いた高速大容量通信の速度は10〜40Gbit/sに達し、さらなる伝送速度及び伝送距離の拡大が求められている。しかし、従来の強度変調方式で高速化を行う場合、以下二つの課題のため、伝送速度及び伝送距離の拡大が困難となる。
【0004】
第1の課題は、波長分散である。波長分散は、波長の異なる光が光ファイバ中で異なる速度で伝送される現象である。高速で変調された光信号の光スペクトルは異なる波長成分を含むため、伝送路である光ファイバの波長分散によってそれぞれの波長成分は異なった時刻に受信端に到着する。その結果、伝送後の光波形は大きな波形歪を引き起こすことが知られている。例えば、ビットレートが2倍になると、光ファイバの波長分散によって、伝送可能な距離は1/4に制限されてしまう。
【0005】
第2の課題は、光ファイバ非線形効果である。光ファイバ非線形効果は、光信号が、自分自身の持つ強度変調成分によって、光ファイバを伝送中に自分自身又は並進する光信号に余分な位相変調(周波数チャープ)を印加してしまう現象である。この位相変調成分が上述の波長分散と相互作用することでさらに大きな波形歪が発生する。
【0006】
第1の課題に対し、光通信システムの高速化及び長距離化を実現させるための変調方式として,光の位相を使った変調方式、特にDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)が注目されている。DQPSKでは、シンボルレートがビットレートの半分となるため、波長分散によって制限される伝送距離は、従来の2値変調と比較すると4倍に延長可能となる。
【0007】
一方、第2の課題に対し、信号の各ビットをRZ(Return to Zero)パルス化して伝送する方式が採用されている。RZ方式は光送信器の構成が複雑になる代わりに、ビット境界で光パワーが必ず0レベルに戻るので、信号のレベルが同じ場合、平均光パワーが小さくなる。よって、RZ方式は受信感度に優れた変調方式である。さらに、RZ方式はビット間のパルス干渉を抑制する効果があるため、非線形効果に強い。
【0008】
これらの結果、以上二つの課題を克服するために、RZ−DQPSK変調方式が、長距離伝送を可能とする方式として近年急速に認知されるようになった。
【0009】
図6は、RZ−DQPSK送信器の構成を示すブロック図である。
【0010】
図6の例において、レーザ光源11から出力された信号光は、IQ変調器27に入力される。IQ変調器27は、光カプラ12、位相変調器13、位相変調器14、位相器19及び光カプラ23を備える。
【0011】
IQ変調器27に入力された信号光は、1×2の光カプラ12で分岐される。分岐された光は2値の位相変調器13及び14に入力されて変調される。変調器14で変調された光は、位相器19に入力される。位相器19には、バイアス電圧Vb2を印加するためのバイアス信号入力端子20が設けられている。位相器19は、このバイアス電圧Vb2に応じて光の位相を変える。理想的にはこの位相はπ/2である。
【0012】
位相変調器13及び14としては、一般に、リチウムニオベイト(LN)などの材料を導波路基板とするマッハツェンダ(MZ)型の光変調器が用いられている。
【0013】
位相変調器13及び14は、2つの進行波電極入力端子15及び16にそれぞれ位相の反転したクロックが印加される両相駆動型である。進行波電極入力端子16の途中には、バイアスティー17を介して低速のバイアス電圧Vb1を印加するためのバイアス信号入力端子18が設けられている。
【0014】
バイアス電圧Vb1は後述のように光変調器14の動作点を設定するために用いられる。位相変調器13から出力された光21及び位相器19から出力された光22は、光カプラ23で合成される。合成された光は光出力経路24からNRZ−DQPSK信号として出力される。
【0015】
そして、NRZ−DQPSK信号は、光出力経路24を介して光変調器(RZ変調器)25に入力される。クロック26が印加される光変調器25の位相関係を合わせることによって、シンボルレート(B/2、B:ビットレート)の半分の周波数でRZパルスに変換されて、RZ−DQPSK光波形として出力される。
【0016】
ここで、図7を参照して、両相駆動型MZ型光変調器を用いたNRZ−DQPSK光パルスの生成原理を示す。
【0017】
図7(b)は両相駆動型のMZ変調器の光透過特性であり、縦軸は光透過率、横軸は2つの電極に印加される差電圧である。光透過率の1周期に対応する電圧幅を2Vπと表記する。NRZ−DQPSK光パルスを生成するには、2つの電極に位相が互いに反転したデータ信号を印加する。
【0018】
両電極の差電圧の例を図7(a)に示す。その電圧振幅を以下ではデータ振幅と記載する。このデータ振幅をおよそ2Vπ、またその中心となるバイアス電圧を光透過率が最小となる正弦波の底(最適点)に合致するように設定する。バイアス電圧が最適点に合致している場合、MZ変調器の透過率は印加したデータ電圧の周波数の2倍の周期でオン・オフを繰り返し、図6の光出力経路24からは図7(c)のようなNRZ−DQPSK光パルスが出力される。
【0019】
さて、以上説明したような従来のRZ−DQPSK信号発生方法には、以下の3つの課題がある。第1の課題は、2台の光変調器(すなわちIQ変調器27及びRZ変調器25)が必要となるため変調器のコストがかかることである。第2の課題は、光変調器を2台用いることによって変調器の損失が大きいため、光源のパワーを高くする必要があることである。第3の課題は、変調器2台の位相関係が常に一定となるように調整が必要であることである。
【0020】
これに対して、非特許文献1及び特許文献1では、RZ変調器を用いずに、RZ−DPSK信号を生成する方法が開示されている。これらは、本発明の対象としている信号と異なる2値の位相変調信号を生成する方法であるが、基本的には4値位相変調と同じ生成方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】特開2006−251570号公報
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Xiang Liu, Y. Kao, "GENERATION OF RZ-DPSK USING A SINGLE MACH ZENDER MODULATOR AND NOVELDRIVER ELECTRONICS", 30th European Conference on optical Communications (ECOC2004), paper We3.4.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、従来技術に示した信号発生方法には、以下の問題点がある。
【0024】
RZ信号はNRZ信号の約2倍の信号帯域を持つため、変調器及び変調器駆動回路に従来の2倍程度の広帯域の部品が必要となる。特に伝送速度が40Gbit/sのような超高速システムではこのような部品を実現することが困難である。
【0025】
本発明の目的は、超高速光伝送システムにおいて、上記の問題点を解決し、安価でかつ簡単な構成によって、消費電力を抑え、かつ、高いパワーでのファイバ入力を可能にする送信信号を生成する光送信器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の光送信機の代表的な一例は、クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の実施形態によれば、電気回路でRZ化された電気信号がマッハツェンダ変調器に印加されるため、従来は必要であったRZ変調器25が不要になる。このため、送信機を小型化することができる。
【0028】
さらに、本発明の一実施形態によれば、単一のマッハツェンダ変調器のアームにおいて1箇所又は2箇所の変調信号を駆動させることでRZパルスを生成することができる。よって、マッハツェンダ変調器を2台使用するのに比べて、光の合波、及び2台の変調器の位相調整が不要となるため、送信機をさらに小型化することができる。
【0029】
さらに、本発明の一実施形態によれば、RZ−DQPSK光信号のRZパルスの生成を行うために、クロックをデータ信号の1/2の周波数で動作させればよく、低速の電気回路で光信号を生成できるため、送信機を低消費電力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態の光送信器の構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【図3】本発明の第2の実施形態の光送信器の構成図である。
【図4】本発明の第2の実施形態のI送信データ及びQ送信データの値と、両相駆動型マッハツェンダ光変調器に印加される電圧値と、の対応を示す説明図である。
【図5】本発明の第2の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【図6】RZ−DQPSK送信器の構成を示すブロック図である。
【図7】両相駆動型MZ型光変調器を用いたNRZ−DQPSK光パルスの生成原理を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0032】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の光送信器の構成図である。
【0033】
第1の実施形態は、二つのNRZ送信データ信号に、本発明に係るRZ符号化回路による信号処理を加え、RZ−DQPSK光パルスを出力する光送受信器の例である。本発明に係るRZ符号化回路は、送信データの1/2の周波数を持つクロックで駆動し、NRZ送信データをRZ符号化した電気信号を出力する。
【0034】
I送信データ100及びQ送信データ120は、それぞれNRZデジタル信号である。クロック101は、周期的に1と0を繰り返すデジタル信号列であり、その周期は、I送信データ100及びQ送信データ120の周期の2倍(すなわち周波数が1/2)である。I送信データ100、Q送信データ120、及びクロック101は,図1の外部にある回路(図示省略)によって生成される。
【0035】
本実施形態の光送信機は、二つのRZ符号化回路を備え、それぞれがI送信データ100及びQ送信データ120をRZ符号化する。それらの二つのRZ符号化回路の構成は同一であるため、図1において、二つのRZ符号化回路の対応する部分には、同一の参照符号を付与した。
【0036】
クロック101は二つに分岐し、一方は遅延103に入力され、遅延103によってクロック101の周期の半分の遅延が与えられて出力される。XOR回路102は、遅延103の出力信号及びクロック101を入力され、それらの信号の排他的論理和を出力する。AND回路104は、XOR回路102の出力信号列及びI送信データ100を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路105は、XOR回路102の出力を入力され、そのビット反転信号を出力する。OR回路106は、I送信データ100及びNOT回路105の出力を入力され、それらの論理和を出力する。パワーコンバイナ107は、AND回路104及びOR回路106の出力を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0037】
二つのRZ符号化回路のパワーコンバイナ107から出力された二つのRZ信号は、IQ変調器117の位相変調器113及び114にそれぞれ入力される。図1に示すIQ変調器117は、図6に示したIQ変調器27と同等である。すなわち、IQ変調器117が備える光カプラ112、位相変調器113、位相変調器114、位相器115及び光カプラ116は、それぞれ、IQ変調器27が備える光カプラ12、位相変調器13、位相変調器14、位相器19及び光カプラ23と同等である。このため、IQ変調器117についての詳細な説明は省略する。なお、本実施形態の光源111は、従来の光源11(図6)と同等である。ただし、後述するように、本実施形態の光源111の出力は、従来の光源11の出力より小さくてもよい。
【0038】
図2は、本発明の第1の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0039】
図2に示す(1)〜(7)は、図1に示す(1)〜(7)に対応する。すなわち、図2の(1)〜(7)に示す信号波形は、図1の(1)〜(7)が表示された箇所で観測される。
【0040】
具体的には、(1)は、I送信データ100又はQ送信データ120の信号波形であり、(2)はクロック101の信号波形である。(3)は、遅延103の出力信号波形であり、半周期分遅延したクロック101の信号波形である。(4)は、XOR回路102の出力信号波形であり、入力された信号(2)及び(3)の排他的論理和の信号波形である。(5)は、AND回路104の出力信号波形であり、入力された信号(1)及び(4)の論理積の信号波形である。(6)は、OR回路106の出力信号波形であり、入力された信号(1)及び(4)の論理和の信号波形である。(7)は、パワーコンバイナ107の出力信号波形であり、信号(5)及び(6)を合成した信号の波形である。図2に示すように、パワーコンバイナ107からは、3値のRZ信号に変換されたI送信データ100又はQ送信データ120が出力される。
【0041】
二つのパワーコンバイナ107の出力は、それぞれ、IQ変調器117の位相変調器113及び114に入力される。これらの入力は、図6に示すDATA1及びDATA2に相当する。ただし、図6に示す従来のDATA1及びDATA2が図7に示すような2値のNRZ送信データであるのに対して、本実施形態の位相変調器113及び114には、それぞれ、パワーコンバイナ107から3値のRZ送信データが入力される。3値のRZ送信データの値「0」が図7のバイアス電圧に相当し、3値のRZ送信データの値「1」が例えば図7の位相πに対応する駆動電圧に相当し、3値のRZ送信データの値「−1」が例えば図7の位相0に対応する駆動電圧に相当する。
【0042】
このため、図6に示すIQ変調器27がNRZ−DQPSK光パルスを出力するのに対して、本実施形態のIQ変調器117はRZ−DQPSK光パルスを出力する。したがって、本実施形態では従来必要だったRZ変調器25を省略することができる。これによって、IQ変調器117とRZ変調器との間の位相関係の調整が不要になる。さらに、RZ変調器による損失がないため、従来より出力が小さい光源111を用いて、従来と同等のRZ−DQPSK光パルス出力を得ることができる。あるいは、従来と同等の出力の光源111を用いれば、従来より大きいRZ−DQPSK光パルス出力を得ることができる。さらに、本実施形態のRZ符号化回路は、送信データの半分の周波数のクロックで駆動される。これらによって、光送信機の低コスト化、低消費電力化及び小型化を実現することができる。
【0043】
<第2の実施形態>
図3は、本発明の第2の実施形態の光送信器の構成図である。
【0044】
図1に示した光送信器は、両相駆動型マッハツェンダ変調器を数台備えるが、両相駆動型マッハツェンダ変調器1台でDQPSK信号を生成することもできる(David J. Krause, "Demonstration of 20-Gb/s DQPSK With a Single Dual-Drive Mach-Zender Modulator", IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS, VOL.20, No.16, AUGUST 15, 2008(以下、非特許文献2と記載)参照)。
【0045】
そこで、本実施形態は、本発明に係るRZ符号化回路によって、二つのNRZ送信データから、それぞれ3値の電気信号を生成し、それらを両相駆動型マッハツェンダ変調器に印加することで、1台のマッハツェンダ光変調器を用いてRZ−DQPSK光信号を出力する例を示す。
【0046】
本実施形態の光送信器は、NRZ−DQPSK変調された二つの電気信号(I送信データ300及びQ送信データ301)から、図3に示す電気回路によって3値(1,0,−1)の電圧値を持つ二つの電気信号を生成し(図中V1及びV2)、それぞれを両相駆動型マッハツェンダ光変調器311の電極へ印加することによって、RZ−DQPSK変調された光信号を出力する。
【0047】
なお、両相駆動型マッハツェンダ光変調器311に入力される光信号の光源317は、従来の光源11(図6)と同等である。ただし、第1の実施形態の場合と同様、本実施形態の光源317の出力は、従来の光源11の出力より小さくてもよい。
【0048】
ここで、前記3値(1,0,−1)は正規化された電圧値であり、それぞれマッハツェンダ光変調器311に(1/2π,0,−1/2π)の位相を発生させる。
【0049】
I送信データ300及びQ送信データ301は、2値(0,1)の電圧値を持つ電気信号である。I送信データ300及びQ送信データ301の値と、V1及びV2の電圧値と、の対応については図4を参照して説明する。
【0050】
図3のAND回路303、304、305、307、308及び309は、二入力、一出力のAND回路であり、二つの入力信号が共に“1”であれば“1”を出力し、それ以外の場合は“0”を出力する。図3の白丸は、NOT回路312、313、314、315及び316であり、入力信号“0”を“1”に、“1”を“0”に反転させた信号を出力する。パワーコンバイナ306及び310は、二つの入力信号を合成した出力信号を出力する。パワーコンバイナ306の出力信号V1、及び、パワーコンバイナ310の出力信号V2は、それぞれマッハツェンダ光変調器311の電極に印加される。
【0051】
AND回路303は、Q送信データ301及びクロック302を入力され、それらの論理積を出力する。AND回路304は、I送信データ300及びAND回路303の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路312は、I送信データ300を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路305は、AND回路303の出力信号及びNOT回路312の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路313は、AND回路305の出力信号を入力され、そのビット反転信号を出力する。パワーコンバイナ306は、AND回路304の出力信号及びNOT回路313の出力信号を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0052】
NOT回路314は、Q送信データ301を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路307は、NOT回路314の出力信号及びクロック302を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路315は、I送信データ300を入力され、そのビット反転信号を出力する。AND回路308は、NOT回路315の出力信号及びAND回路307の出力信号を入力され、それらの論理積を出力する。AND回路309は、AND回路307の出力信号及びI送信データ300を入力され、それらの論理積を出力する。NOT回路316は、AND回路309の出力信号を入力され、そのビット反転信号を出力する。パワーコンバイナ310は、AND回路308の出力信号及びNOT回路316の出力信号を合成することによって、3値のRZ信号を出力する。
【0053】
図4は、本発明の第2の実施形態のI送信データ300及びQ送信データ301の値と、両相駆動型マッハツェンダ光変調器311に印加される電圧値と、の対応を示す説明図である。
【0054】
図3に示す回路に、I送信データ300及びQ送信データ301としてそれぞれ“0”及び“0”が入力された場合、V1及びV2としてそれぞれ“0”及び“1”が出力される。同様に、“0”及び“1”が入力された場合、“−1”及び“0”が出力される。“1”及び“0”が入力された場合、“0”及び“−1”が出力される。“1”及び“1”が入力された場合、“1”及び“0”が出力される。
【0055】
図5は、本発明の第2の実施形態の光送信器内部の各箇所における信号波形を示すタイミングチャートである。
【0056】
図5(1)はI送信データ300の信号波形、図5(2)はQ送信データ301の信号波形、図5(3)はクロック302の信号波形である。なお、(3)のクロック302の周波数は、I送信データ300及びQ送信データ301の周波数と同じである。図5(4)は、AND回路303の出力信号波形である。図5(5)は、AND回路304の出力信号波形である。図5(6)は、AND回路305と、その出力信号が入力されるNOT回路とを通過した後の出力信号波形である。図5(7)は、パワーコンバイナ306の出力信号波形、すなわち、信号(5)及び(6)を合成した信号の波形である。図5に示すように、パワーコンバイナ306の出力信号波形(7)は、図3及び図4のV1に相当する3値のRZ信号である。
【0057】
図5(8)は、AND回路307の出力信号波形、図5(9)は、AND回路308の出力信号波形である。図5(10)は、AND回路309と、その出力信号が入力されるNOT回路と、を通過した後の出力信号波形である。図5(11)は、パワーコンバイナ310の出力波形、すなわち、信号(9)及び(10)を合成した信号の波形である。図5に示すように、パワーコンバイナ310の出力信号波形(11)は、図3及び図4のV2に相当する3値のRZ信号である。
【0058】
既に説明したように、V1及びV2の3値(1,0,−1)は、それぞれ、マッハツェンダ光変調器311に(1/2π,0,−1/2π)の位相を発生させる。図4に示すV1及びV2の組み合わせが入力されると、V1及びV2がいずれもRZ信号であるため、マッハツェンダ光変調器311は、RZ−DQPSK光パルスを出力する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、従来の光送信機(図6参照)において必要だったRZ変調器25を省略することができ、さらに、第1の実施形態のIQ変調器117において必要だった二つのマッハツェンダ光変調器113及び114のうち一方と、光カプラ112及び116と、位相器115とを省略することができる。このため、本実施形態によれば、第1の実施形態と比較して、光送信機のさらなる低コスト化、低消費電力化及び小型化を実現することができる。
【符号の説明】
【0060】
11、111 レーザ光源
12、23、112、116 光カプラ
13、14、113、114 位相変調器
15、16 進行波電極入力端子
17 バイアスティー
18、20 バイアス信号入力端子
19、115 位相器
21 位相変調器の光出力
22 位相器の光出力
24 NRZ−DQPSK信号
25 RZ変調器
26 クロック
27、117 IQ変調器
100、300 I送信データ
101、302 クロック
102 XOR回路
103 遅延
104、303、304、305、307、308、309 AND回路
105 NOT回路
106 OR回路
107、306、310 パワーコンバイナ
120、301 Q送信データ
311 両相駆動型マッハツェンダ変調器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備えることを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記電子回路は、前記クロック信号、前記クロック信号と同じ周期の第1の送信データ、及び、前記クロック信号と同じ周期の第2の送信データに基づいて、第1のRZパルス列及び第2のRZパルス列を発生させ、
前記マッハツェンダ型変調器は、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列を入力される両相駆動型マッハツェンダ型変調器であることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データは、第1の論理値及び第2の論理値を含む2値のNRZ符号であり、
前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列は、第3の値、第4の値及び第5の値を含む3値のRZパルス列であり、
前記電子回路は、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしていずれも前記第1の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第4の値及び前記第3の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしてそれぞれ前記第1の論理値及び前記第2の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第5の値及び前記第4の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしてそれぞれ前記第2の論理値及び前記第1の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第4の値及び前記第5の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしていずれも前記第2の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第3の値及び前記第4の値を出力し、
前記第3の値、前記第4の値及び前記第5の値は、それぞれ、前記両相駆動型マッハツェンダ型変調器に1/2π、0及び−1/2πの位相差を発生させることを特徴とする請求項2に記載の光送信機。
【請求項4】
前記電子回路は、
前記第2の送信データと前記クロック信号との積を出力する第1の積回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の送信データとの積を出力する第2の積回路と、
前記第1の送信データの論理値を反転する第1の反転回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の反転回路の出力信号との積を出力する第3の積回路と、
前記第3の積回路の出力信号の論理値を反転する第2の反転回路と、
前記第2の積回路の出力信号と前記第2の反転回路の出力信号とを電力合成することによって前記第1のRZパルス列を出力する第1のパワーコンバイナと、
前記第2の送信データの論理値を反転する第3の反転回路と、
前記第3の反転回路の出力信号と前記クロック信号との積を出力する第4の積回路と、
前記第1の送信データの論理値を反転する第5の反転回路と、
前記第5の反転回路の出力信号と前記第4の積回路の出力信号との積を出力する第5の積回路と、
前記第4の積回路の出力信号と前記第5の積回路の出力信号との積を出力する第6の積回路と、
前記第6の積回路の出力信号の論理値を反転する第6の反転回路と、
前記第5の積回路の出力信号と前記第6の反転回路の出力信号とを電力合成することによって前記第2のRZパルス列を出力する第2のパワーコンバイナと、を備えることを特徴とする請求項3に記載の光送信器。
【請求項5】
前記電子回路は、第1の周期の前記クロック信号と、前記第1の周期の半分の周期である第2の周期の前記送信データと、に基づいて前記送信データのRZパルス列を発生させることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項6】
前記電子回路は、
前記クロック信号に前記第2の周期と同等の遅延を加える遅延回路と、
前記遅延回路に入力されるクロック信号と、前記遅延回路から出力されたクロック信号との排他的論理和を出力する第1の排他的論理和回路と、
前記送信データと前記第1の排他的論理和回路の出力信号との積を出力する第1の積回路と、
前記第1の排他的論理和回路の出力信号の論理値を反転する第1の反転回路と、
前記送信データと前記第1の反転回路の出力信号との和を出力する第1の和回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の和回路の出力信号とを電力合成することによって前記RZパルス列を出力する第1のパワーコンバイナと、を備えることを特徴とする請求項5に記載の光送信器。
【請求項1】
クロック信号及び送信データに基づいてRZパルス列を発生させる電子回路と、光源からの光及び前記RZパルス列を入力され、RZ変調された光信号を出力するマッハツェンダ型変調器と、を備えることを特徴とする光送信器。
【請求項2】
前記電子回路は、前記クロック信号、前記クロック信号と同じ周期の第1の送信データ、及び、前記クロック信号と同じ周期の第2の送信データに基づいて、第1のRZパルス列及び第2のRZパルス列を発生させ、
前記マッハツェンダ型変調器は、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列を入力される両相駆動型マッハツェンダ型変調器であることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項3】
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データは、第1の論理値及び第2の論理値を含む2値のNRZ符号であり、
前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列は、第3の値、第4の値及び第5の値を含む3値のRZパルス列であり、
前記電子回路は、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしていずれも前記第1の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第4の値及び前記第3の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしてそれぞれ前記第1の論理値及び前記第2の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第5の値及び前記第4の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしてそれぞれ前記第2の論理値及び前記第1の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第4の値及び前記第5の値を出力し、
前記第1の送信データ及び前記第2の送信データとしていずれも前記第2の論理値が入力された場合、前記第1のRZパルス列及び前記第2のRZパルス列としてそれぞれ前記第3の値及び前記第4の値を出力し、
前記第3の値、前記第4の値及び前記第5の値は、それぞれ、前記両相駆動型マッハツェンダ型変調器に1/2π、0及び−1/2πの位相差を発生させることを特徴とする請求項2に記載の光送信機。
【請求項4】
前記電子回路は、
前記第2の送信データと前記クロック信号との積を出力する第1の積回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の送信データとの積を出力する第2の積回路と、
前記第1の送信データの論理値を反転する第1の反転回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の反転回路の出力信号との積を出力する第3の積回路と、
前記第3の積回路の出力信号の論理値を反転する第2の反転回路と、
前記第2の積回路の出力信号と前記第2の反転回路の出力信号とを電力合成することによって前記第1のRZパルス列を出力する第1のパワーコンバイナと、
前記第2の送信データの論理値を反転する第3の反転回路と、
前記第3の反転回路の出力信号と前記クロック信号との積を出力する第4の積回路と、
前記第1の送信データの論理値を反転する第5の反転回路と、
前記第5の反転回路の出力信号と前記第4の積回路の出力信号との積を出力する第5の積回路と、
前記第4の積回路の出力信号と前記第5の積回路の出力信号との積を出力する第6の積回路と、
前記第6の積回路の出力信号の論理値を反転する第6の反転回路と、
前記第5の積回路の出力信号と前記第6の反転回路の出力信号とを電力合成することによって前記第2のRZパルス列を出力する第2のパワーコンバイナと、を備えることを特徴とする請求項3に記載の光送信器。
【請求項5】
前記電子回路は、第1の周期の前記クロック信号と、前記第1の周期の半分の周期である第2の周期の前記送信データと、に基づいて前記送信データのRZパルス列を発生させることを特徴とする請求項1に記載の光送信器。
【請求項6】
前記電子回路は、
前記クロック信号に前記第2の周期と同等の遅延を加える遅延回路と、
前記遅延回路に入力されるクロック信号と、前記遅延回路から出力されたクロック信号との排他的論理和を出力する第1の排他的論理和回路と、
前記送信データと前記第1の排他的論理和回路の出力信号との積を出力する第1の積回路と、
前記第1の排他的論理和回路の出力信号の論理値を反転する第1の反転回路と、
前記送信データと前記第1の反転回路の出力信号との和を出力する第1の和回路と、
前記第1の積回路の出力信号と前記第1の和回路の出力信号とを電力合成することによって前記RZパルス列を出力する第1のパワーコンバイナと、を備えることを特徴とする請求項5に記載の光送信器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−40881(P2011−40881A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184644(P2009−184644)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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