説明

光送信装置

【課題】温度調整型波長可変レーザの温度を変えた場合でも、同一集積素子内の半導体MZ変調器素子の温度を簡単な構成で略一定に保つこと。
【解決手段】光送信装置100は、半導体MZ変調器素子101および温度調整型波長可変レーザ素子102を集積した集積素子103と、嵌通孔105を有するキャリア104と、TEC106,107とを有しており、キャリア104の嵌通孔105上に集積素子103に含まれる半導体MZ変調器素子101と温度調整型波長可変レーザ素子102とを結ぶ導波路が配置されるように集積素子103をキャリア104上に固定している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光半導体からなる変調器と波長可変レーザとを集積した集積素子を有する光送信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、300pin−LFF(Large Form Factor)のMSA(Multi Source Agreement)光トランシーバーでは、従来の単一波長型から波長可変型に、8波(50GHz間隔)の少数波長可変型から88波(50GHz間隔)のフルバンド波長可変型に市場ニーズが移ってきている。このような、フルバンド波長可変型への市場動向は、小型・低消費電力のMSA光トランシーバーである300pin−SFF(Small Form Factor)やXFP(10Gigabit Small Form Factor Pluggable)に移りつつある。
【0003】
中でもXFPは、サイズが小さく(8.35×78×13.5mm)、このサイズの中に、変調器、フルバンド波長可変レーザ、受光デバイス(Photo Detector)、制御回路を入れ込むことは容易ではない。このため、変調器とフルバンド波長可変レーザを一体化し、小型化する試みが行われている。以下の説明において、光トランシーバーに含まれる、変調器とフルバンド波長可変レーザ等を一体化したものを便宜的に光送信装置と表記する。この光送信装置を小型化するアプローチは大きく2つあり、Co-package型のと、Monolithic型の光送信装置とが開発されている。まず、Co-package型の光送信装置の構成を説明した後に、Monolithic型の光送信装置の構成について説明する。
【0004】
図6は、Co-package型の光送信装置の構成を示す図である。図6に示すように、この光送信装置10は、パッケージ10a内に、変調器素子11と、波長可変レーザ素子12と、レンズ13,18と、キャリア14,15と、TEC(Thermo Electric Coolers)16,17とを有しており、光ファイバ19に接続されている。
【0005】
この光送信装置10は、変調器素子11と波長可変レーザ素子12とを別素子とし、レンズ13を用いて光結合させている。そして、変調器素子11は、波長可変レーザ素子12から出力される光を変調し、変調した光をレンズ18を介して光ファイバ19に出力する。
【0006】
ここで、変調器素子11としては、LN(LiNbOの略称)材料からなるMZ(Mach-Zehnder)変調器、光半導体(InPなど)材料からなる光半導体MZ変調器またはEA(Electronic Absorption)変調器がある。このうちLN変調器はサイズが大きいという問題があり、EA変調器には動作波長が制限されるためフルバンド波長対応が困難となる問題があるため、光半導体MZ変調器が有望視されている。
【0007】
なお、図6において、キャリア14,15は、それぞれ、変調器素子11、波長可変レーザ素子12を支えるセラミック製のキャリアである。TEC16,17は、それぞれ、変調器素子11、波長可変レーザ素子12の温度を調整する素子である。
【0008】
次に、Monolithic型の光送信装置の構成について説明する。図7は、Monolithic型の光送信装置の構成を示す図である。図7に示すように、この光送信装置20は、パッケージ20a内に、変調器素子21および波長可変レーザ素子22を集積した集積素子23と、レンズ24と、キャリア25と、TEC26とを有しており、光ファイバ27に接続されている。
【0009】
このうち、変調器素子21は、波長可変レーザ素子22から光を直接(レンズを用いることなく)取得し、取得した光を変調してレンズ24を介して光を光ファイバ27に出力する。Monolithic型向けの集積素子23に含まれる変調器素子21は、同じ半導体プロセスで素子形成が可能な半導体MZ変調器に限られる。
【0010】
図6に示したCo-package型の光送信装置10と、図7に示したMonolithic型の光送信装置20とを比較すると、サイズの面では、変調器と波長可変レーザとのレンズによる結合が不要な分、Monolithic型の光送信装置20の方が小型化に有利であるため、XFP用途では、Monolithic型が有望である。
【0011】
しかし、Monolithic型に使用される半導体MZ変調器は、LN変調器と比較して、温度依存性が大きいため、温度を略一定に制御して動作させる必要がある。このため、例えば、図7に示すように、TEC26の上に、熱伝道の良いセラミック(Al2O3やAIN等)製のキャリア25を介して、半導体MZ型の変調器素子11が載置することで、変調器素子(半導体MZ変調器)21の温度を略一定にしている。
【0012】
なお、変調器素子21とキャリア25との間、キャリア25とTEC26との間の固定には、熱伝導率の良い半田やAgエポキシ接着剤が用いられる。また、波長可変レーザ素子22も一般的に温度を略一定にするか、または異なる温度に制御するために、セラミック製のキャリア25を介してTEC26上に載置される。
【0013】
ところで、半導体MZ変調器素子(変調器素子21)と、温度調節型の波長可変レーザ(波長可変レーザ素子22)とを用いてMonolithic型の光送信装置を構成する(図7参照)と、変調器素子21および波長可変レーザ22を最適な温度に保つことが出来ないという問題があった。すなわち、集積素子23をキャリア25を介して1個のTEC26の上に載置しているので、TEC26が、波長可変レーザ素子22の温度を調整して波長を変えると、変調器素子21の温度まで変化してしまい、結果的に変調器素子21の特性が変化してしまう。
【0014】
かかる問題に対応するべく、変調器素子および波長可変レーザの温度を最適に保つための各種のMonolithic型の光送信装置が考案されている。図8および図9は、従来の光送信装置の構成を示す図である。まず、図8に示す光送信装置30の説明を行った後に、図9に示す光送信装置40の説明を行う。
【0015】
図8の上段は、光送信装置30の上面図であり、図8の下段は、光送信装置30の側面図である。図8に示すように、この光送信装置30は、半導体MZ変調器素子31および温度調整型波長可変レーザ素子32を集積した集積素子33と、キャリア34,35と、TEC36,37とを有する。
【0016】
そして、図8に示す構成によれば、半導体MZ変調器素子31および温度調整型波長可変レーザ素子32は、別々のキャリア34,35に載置され、半導体MZ変調器素子31と温度調整型波長可変レーザ素子32は、TEC36,37によってそれぞれ最適な温度に調整される。このように、キャリア、TECを別々に設けることで、半導体MZ変調器素子31および温度調整型波長可変レーザ素子32は、隣接する素子の温度調整の影響を受けることなく、温度を最適に保つことが可能となる。
【0017】
次に、図9に示す光送信装置40の説明を行う。図9の上段は、光送信装置40の上面図であり、図9の下段は、光送信装置40の側面図である。図9に示すように、この光送信装置40は、半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42を集積した集積素子43と、キャリア44と、TEC45,46とを有する。
【0018】
そして、図9に示す構成によれば、半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42は、同一のキャリア44に載置し、半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42はそれぞれ、TEC45、46によって温度を調整される。このように、TECを別々に設けることで、光送信装置40は、半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42の温度を個別に調整することが可能となる。
【0019】
一方、フルバンド波長可変レーザには多くの提案がある。例えば、DFB(Distributed Feed-Back)レーザをベースとし、レーザ素子の温度を変えて波長を可変する温度調整型波長可変レーザが、信頼性が高い、従来のDFBレーザのプロセスをベースに製造できるなどの理由から、広く市場に普及し始めている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2003−163411号公報
【特許文献2】特開2007−201425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、図8に示した光送信装置30は、2個のTEC36,37と、2個のキャリア34,35を介して集積素子33を固定しているため、2個のキャリア34,35の高さが微妙に異なって固定される場合がある。このように、2個のキャリア34,35の高さが異なっている状態で集積素子33が固定されると、集積素子33に応力が加わって集積素子33の特性が変化してしまい、最悪の場合、集積素子33が破損してしまうという問題があった。
【0022】
また、図9に示した光送信装置40は、2個のTEC45,46を用いて別々に温度制御を行っているものの、キャリア44が共通なので、温度調整型波長可変レーザ素子42の温度を変えた場合に、発熱または吸熱が共通のキャリア44を伝わり、半導体MZ変調器素子41の温度に影響を与えてしまうという問題があった。
【0023】
図10は、図9に示した半導体MZ変調器素子41と温度調整型波長可変レーザ素子42との温度分布を示す図である。図10において、塗潰した菱形は、半導体MZ変調器素子41の下側のTEC45の温度を35℃に設定し、温度調整型可変レーザ素子42の下側のTEC46の温度を60℃に設定した場合の半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42の温度分布を示している。
【0024】
横軸の位置0.1〜2.8mmが半導体MZ変調素器子41、3.2mm〜6mmが温度調整型波長レーザ素子42の上面の温度を示している。ここで、塗潰した菱形を参照すると、半導体MZ変調器素子41から温度調整型波長レーザ素子42まで温度が穏やかに傾斜している。従って、半導体MZ変調器素子41の2.8mmでの温度は45.7℃と目標の35℃よりも10.7℃高くなってしまう。また、温度調整型波長可変レーザ42の位置3.2mmでも48.1℃と目標の温度60℃に対して11.9℃も低くなってしまう。
【0025】
一方、白抜きの菱形は、半導体MZ変調器素子41の下側にTEC45の温度を35℃に設定し、温度調整型波長可変レーザ42の下側のTEC46の温度を20℃に設定した時の、半導体MZ変調器素子41および温度調整型波長可変レーザ素子42の温度分布を示している。
【0026】
白抜きの菱形を参照すると、この場合も同様に、半導体MZ変調器素子41から温度調整型波長レーザ素子42まで温度が穏やかに傾斜している。従って、半導体MZ変調器素子41の2.8mmでの温度は28.2℃と目標の35℃よりも6.8℃低くなってしまう。また、温度調整型波長可変レーザ42の位置3.2mmでも26.8℃と目標の温度20℃に対して6.8℃も高くなってしまう。
【0027】
この結果は、すなわち、温度調整型波長可変レーザ素子42の温度を20〜60℃まで変化させるようにすると、半導体MZ変調器素子41の端の温度が28.2〜45.7℃まで変化してしまうことを示している。
【0028】
なお、図10の温度分布は、集積素子43の熱伝道率を0.68[W/cmK]、集積素子43の寸法を長さ6×幅0.5×高さ0.1[mm]、キャリア44の熱伝導率を200[W/cmK]、キャリア44の寸法を長さ6×幅5×高さ2[mm]として算出したものである。
【0029】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、温度調整型波長可変レーザの温度を変えた場合でも、同一集積素子内の半導体MZ変調器素子の温度を簡単な構成で略一定に保つことが出来る光送信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この光送信装置は、温度に応じて異なる波長の光を出力する光出力素子と、当該光出力素子から出力される光を変調する変調素子とを集積した集積素子と、対向する第1の面および第2の面を有し、当該第1の面に前記集積素子が固定され、前記集積素子を固定した状態で前記第1の面と前記第2の面とを嵌通する嵌通孔が前記光出力素子と前記変調素子との境界近傍に設けられたキャリアと、前記変調素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記変調素子の温度を調整する第1の温度調整部と、前記光出力素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記光出力素子の温度を調整する第2の温度調整部とを有することを要件とする。
【発明の効果】
【0031】
この光送信装置によれば、光出力素子の温度を変えた場合でも、簡単な構成で、変調素子の温度を略一定に保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本実施例1にかかる光送信装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示した半導体MZ変調器素子と温度調整型波長可変レーザ素子との温度分布を示す図である。
【図3】図3は、本実施例2にかかる光送信装置の構成を示す図である。
【図4】図4は、図3に示した半導体MZ変調器素子と温度調整型波長可変レーザ素子との温度分布を示す図である。
【図5】図5は、その他のキャリアの形状の一例を示す図である。
【図6】図6は、Co-package型の光送信装置の構成を示す図である。
【図7】図7は、Monolithic型の光送信装置の構成を示す図である。
【図8】図8は、従来の光送信装置の構成を示す図(1)である。
【図9】図9は、従来の光送信装置の構成を示す図(2)である。
【図10】図10は、図9に示した半導体MZ変調器素子と温度調整型波長可変レーザ素子との温度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る光送信装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例1】
【0034】
図1は、本実施例1にかかる光送信装置100の構成を示す図である。図1の上段は、光送信装置100の上面図であり、図1の下段は、光送信装置100の側面図である。図1に示すように、この光送信装置100は、半導体MZ変調器素子101および温度調整型波長可変レーザ素子102を集積した集積素子103と、嵌通孔105を有するキャリア104と、TEC106,107とを有する。なお、その他の構成は、既存のMonolithic型の光送信装置と同様であるため、説明を省略する。
【0035】
このうち、半導体MZ変調器素子101は、温度調整型波長可変レーザ素子102から光を(レンズを用いることなく、集積素子103内の導波路を介して)取得し、取得した光を変調した後に光を光ファイバ(図示略)に出力する素子である。温度調整型波長可変レーザ素子102は、温度に応じて異なる波長の光を生成し、生成した光を半導体MZ変調器素子101に出力する素子である。
【0036】
ここで、光送信装置100は、集積素子103が、嵌通孔105を有するキャリア104の上に半田により固定されている。ここで、嵌通孔105は、キャリア104の中央近傍に空いている。そして、半導体MZ変調器素子101と温度調整型波長可変レーザ102とを接続する導波路が、丁度、嵌通孔105の位置となるように集積素子103とキャリア104との固定位置が調整されている。
【0037】
キャリア104は、対向する第1の面および第2の面を有し、第1の面に集積素子103が固定され、第2の面にTEC106,107が固定されている。
【0038】
また、キャリア104の半導体MZ変調器素子101の載置されている側の下側には、半導体MZ変調器素子101の温度を略一定に制御するためのTEC106が半田により固定されている。
【0039】
一方、キャリア104の温度調整型波長可変レーザ素子102の載置されている側の下側には、温度調整型波長可変レーザ102の温度を調整するためのTEC107が半田により固定されている。
【0040】
なお、キャリア104の半導体MZ変調器素子101の近傍に、半導体MZ変調器素子101の温度を検出するためのサーミスタ108が半田により固定されている。また、キャリア104の温度調整型波長可変レーザ102の近傍に、温度調整型波長可変レーザ102の温度を検出するためのサーミスタ109が半田により固定されている。
【0041】
図1に示したように、嵌通孔105を有するキャリア104上に集積素子103を固定することにより、TEC107が温度調整型波長可変レーザ素子102の温度を変えても、発熱または吸熱がキャリア104の嵌通孔105に遮られるので、半導体MZ変調器素子101の温度を最適に保つことが出来る。
【0042】
図2は、図1に示した半導体MZ変調器素子101と温度調整型波長可変レーザ素子102との温度分布を示す図である。図2において、塗潰した丸は、半導体MZ変調器素子101の下側のTEC106の温度を35℃に設定し、温度調整型波長可変レーザ素子102の下側のTEC107の温度を60℃に設定した場合の半導体MZ変調器素子101および温度調整型波長可変レーザ素子102の温度分布を示している。
【0043】
横軸の位置0.1〜2.8mmが半導体MZ変調器素子101、3.2mm〜6mmが温度調整型波長レーザ素子102の上面の温度を示している。ここで、塗潰した丸を参照すると、半導体MZ変調器素子101の2.8mmでの温度は38.5℃となっており、従来技術と比較して、目標の35℃に近い値となっている。また、温度調整型波長可変レーザ102の位置3.2mmでも56.5℃となり、従来技術と比較して、目標の温度60℃に近い値となっている。
【0044】
すなわち、半導体MZ変調器素子101の2.8mmでの温度は38.5℃と目標温度35℃との差は、3.5℃まで改善しており、温度調整型波長可変レーザ102の位置3.2mmでも56.6℃と目標温度60℃との差は3.5℃に留まっている。
【0045】
一方、白抜きの丸は、半導体MZ変調器素子101の下側にTEC106の温度を35℃に設定し、温度調整型波長可変レーザ102の下側のTEC107の温度を20℃に設定した時の、半導体MZ変調器素子101および温度調整型波長可変レーザ素子102の温度分布を示している。
【0046】
ここで、白抜きの丸を参照すると、半導体MZ変調器素子101の2.8mmでの温度は33.1℃となっており、従来技術と比較して、目標の35℃に近い値となっている。また、温度調整型波長可変レーザ102の位置3.2mmでも21.9℃となっており、従来技術と比較して、目標値の温度20℃に近い値となっている。
【0047】
すなわち、半導体MZ変調器素子101の2.8mmでの温度は33.1℃と目標温度35℃との差は、1.9℃まで改善しており、温度調整型波長可変レーザ102の位置3.2mmでも21.9℃と目標温度20℃との差は1.9℃に留まっている。
【0048】
この結果によれば、温度調整型波長可変レーザ素子102の温度を20〜60℃まで変化させる場合に、半導体MZ変調器素子101の端の温度が33.1〜38.5℃まで5.4℃しか変化しないことを示している。この温度差5.4℃は、半導体MZ変調器素子101の特性上、実用レベルにある。
【0049】
なお、本実施例1にかかる集積素子103の熱伝導率を0.68[W/cmK]、集積素子103の寸法を長さ6×幅0.5×高さ0.1[mm]、キャリア104の熱伝導率を200[W/cmK]、キャリア104の寸法を長さ6×幅5×高さ2[mm]としている。
【0050】
上述してきたように、本実施例1にかかる光送信装置100は、キャリア104の嵌通孔105上に集積素子103に含まれる半導体MZ変調器素子101と温度調整型波長可変レーザ素子102とを結ぶ導波路が配置されるように集積素子103をキャリア104上に固定しているので、温度調整型波長可変レーザ素子102の温度を変えた場合でも、半導体MZ変調器素子101の温度を略一定に保つことが出来る。
【0051】
また、本実施例1にかかる光送信装置100は、単一のキャリア104により集積素子103を固定しているので、光送信装置30(図8参照)のように集積素子103に余分な応力がかかることを防止することが出来る。
【実施例2】
【0052】
次に、本実施例2にかかる光送信装置について説明する。図3は、本実施例2にかかる光送信装置200の構成を示す図である。図3の上段は、光送信装置200の上面図であり、図3の下段は、光送信装置200の側面図である。図3に示すように、この光送信装置200は、半導体MZ変調器素子201および温度調整型波長可変レーザ素子202を集積した集積素子203と、切れ込み205を有するキャリア204と、TEC206,207とを有する。なお、その他の構成は、既存のMonolithic型の光送信装置と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
このうち、半導体MZ変調器素子201は、温度調整型波長可変レーザ素子202から光を(レンズを用いることなく、集積素子203内の導波路を介して)取得し、取得した光を変調した後に光を光ファイバ(図示略)に出力する素子である。温度調整型波長可変レーザ素子202は、温度に応じて異なる波長の光を生成し、生成した光を半導体MZ変調器素子201に出力する素子である。
【0054】
ここで、光送信装置200は、集積素子203が、切れ込み205を有するキャリア204の上に半田により固定されている。ここで、切れ込み205は、キャリア204の中央近傍の片側に設けてある。そして、半導体MZ変調器素子201と温度調整型波長可変レーザ202とを接続する導波路が、丁度、切れ込み205の位置となるように集積素子203とキャリア204との固定位置が調整されている。
【0055】
また、キャリア204の半導体MZ変調器素子201の載置されている側の下側には、半導体MZ変調器素子201の温度を略一定に制御するためのTEC206が半田により固定されている。
【0056】
一方、キャリア204の温度調整型波長可変レーザ素子202の載置されている側の下側には、温度調整型波長可変レーザ202の温度を調整するためのTEC207が半田により固定されている。
【0057】
なお、キャリア204の半導体MZ変調器素子201の近傍に、半導体MZ変調器素子201の温度を検出するためのサーミスタ208が半田により固定されている。また、キャリア204の温度調整型波長可変レーザ202の近傍に、温度調整型波長可変レーザ202の温度を検出するためのサーミスタ209が半田により固定されている。
【0058】
図3に示したように、切れ込み205を有するキャリア204上に集積素子203を固定することによりTEC207が温度調整型波長可変レーザ素子202の温度を変えても、発熱または吸熱がキャリア204の切れ込み205に遮られるので、半導体MZ変調器素子201の温度を最適に保つことが出来る。
【0059】
図4は、図3に示した半導体MZ変調器素子201と温度調整型波長可変レーザ素子202との温度分布を示す図である。図4において、塗潰した四角は、半導体MZ変調器素子201の下側のTEC206の温度を35℃に設定し、温度調整型波長可変レーザ素子202の下側のTEC207の温度を60℃に設定した場合の半導体MZ変調器素子201および温度調整型波長可変レーザ素子202の温度分布を示している。
【0060】
横軸の位置0.1〜2.8mmが半導体MZ変調器素子201、3.2mm〜6mmが温度調整型波長レーザ素子202の上面の温度を示している。ここで、塗潰した四角を参照すると、半導体MZ変調器素子201の2.8mmでの温度は36.7℃となっており、従来技術と比較して、目標の35℃に近い値となっている。また、温度調整型波長可変レーザ202の位置3.2mmでも58.3℃となり、従来技術と比較して、目標の温度60℃に近い値となっている。
【0061】
すなわち、半導体MZ変調器素子201の2.8mmでの温度は36.7℃と目標温度35℃との差は、1.7℃まで改善しており、温度調整型波長可変レーザ202の位置3.2mmでも58.3℃と目標温度60℃との差は1.7℃に留まっている。
【0062】
一方、白抜きの四角は、半導体MZ変調器素子201の下側にTEC206の温度を35℃に設定し、温度調整型波長可変レーザ202の下側のTEC207の温度を20℃に設定した時の、半導体MZ変調器素子201および温度調整型波長可変レーザ素子202の温度分布を示している。
【0063】
ここで、白抜きの四角を参照すると、半導体MZ変調器素子201の2.8mmでの温度は33.3℃となっており、従来技術と比較して、目標の35℃に近い値となっている。また、温度調整型波長可変レーザ202の位置3.2mmでも21.6℃となっており、従来技術と比較して、目標値の温度20℃に近い値となっている。
【0064】
すなわち、半導体MZ変調器素子201の2.8mmでの温度は33.3℃と目標温度35℃との差は、1.7℃まで改善しており、温度調整型波長可変レーザ202の位置3.2mmでも21.6℃と目標温度20℃との差は1.6℃に留まっている。
【0065】
この結果によれば、温度調整型波長可変レーザ素子202の温度を20〜60℃まで変化させる場合に、半導体MZ変調器素子201の端の温度が33.3〜36.7℃まで3.4℃しか変化しないことを示している。この温度差3.4℃は、半導体MZ変調器素子201の特性上、実用レベルにある。
【0066】
なお、本実施例2にかかる集積素子203の熱伝導率を0.68[W/cmK]、集積素子203の寸法を長さ6×幅0.5×高さ0.1[mm]、キャリア204の熱伝導率を200[W/cmK]、キャリア204の寸法を長さ6×幅5×高さ2[mm]としている。
【0067】
上述してきたように、本実施例2にかかる光送信装置200は、キャリア204の切れ込み205条に集積素子203に含まれる半導体MZ変調器素子201と温度調整型波長可変レーザ202とを結ぶ導波路が配置されるように集積素子203をキャリア204上に固定しているので、温度調整型波長可変レーザ素子202の温度を変えた場合でも、半導体MZ変調器素子201の温度を略一定に保つことが出来る。
【0068】
また、本実施例2にかかる光送信装置200は、単一のキャリア204により集積素子203を固定しているので、光送信装置30(図8参照)のように集積素子203に余分な応力がかかることを防止することが出来る。
【0069】
ところで、上述した実施例1では、中央近傍に嵌通孔105を備えたキャリア104に集積素子103を固定することで、温度調整型波長可変レーザ素子102の温度を変えた場合でも、半導体MZ変調器素子101の温度を略一定に保っていた。また、上述した実施例2では、中央近傍の片側に切れ込み205を備えたキャリア204に集積素子203を固定することで、温度調整型波長可変レーザ素子202の温度を変えた場合でも、半導体MZ変調器素子201の温度を略一定に保っていた。
【0070】
しかし、キャリアの形状は、実施例1,2に示したキャリア104,204の形状に限られるものではなく、キャリアの中央近傍に嵌通孔、あるいは切れ込みを有していればどの様な形状でも構わない。
【0071】
図5は、その他のキャリアの形状の一例を示す図である。図5に示すように、このキャリア300は、キャリア300の中央近傍に、H字状の嵌通孔300aを備えている。図5のようにキャリア300を構成すると、領域Aから領域Bまで熱を伝えるためには、嵌通孔300aの側面を迂回する必要がある。従って、例えば、図1のキャリア104の代わりに、図5のキャリア300を用いて光送信装置100を構成することにより、半導体MZ変調器素子101は、温度調整型波長可変レーザ素子102の温度変化の影響を更に受けにくくなる。
【0072】
上記の実施例1,2を含む実施形態に関し、以下の付記を開示する。
【0073】
(付記1)温度に応じて異なる波長の光を出力する光出力素子と、当該光出力素子から出力される光を変調する変調素子とを集積した集積素子と、
対向する第1の面および第2の面を有し、当該第1の面に前記集積素子が固定され、前記集積素子を固定した状態で前記第1の面と前記第2の面とを嵌通する嵌通孔が前記光出力素子と前記変調素子との境界近傍に設けられたキャリアと、
前記変調素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記変調素子の温度を調整する第1の温度調整部と、
前記光出力素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記光出力素子の温度を調整する第2の温度調整部と
を有することを特徴とする光送信装置。
【0074】
(付記2)前記光出力素子および前記変調素子は、前記集積素子内で導波路により相互に接続されており、前記キャリアは前記導波路近傍に嵌通孔を有していることを特徴とする付記1に記載の光送信装置。
【0075】
(付記3)前記キャリアは、前記光出力素子を載置する第1の領域と、前記変調素子を載置する第2の領域とを有し、前記光出力素子から前記第1の領域に加えられた熱が前記第2の領域に伝わるまでの距離が長くなるように前記嵌通孔が形成されていることを特徴とする付記1または2に記載の光送信装置。
【0076】
(付記4)前記キャリアの嵌通孔は、H字状に形成されていることを特徴とする付記3に記載の光送信装置。
【0077】
(付記5)温度に応じて異なる波長の光を出力する光出力素子と、当該光出力素子から出力される光を変調する変調素子とを集積した集積素子と、
第1の面および第2の面を有すると共に、当該第1の面に前記集積素子を固定し、固定した集積素子の前記光出力素子と前記変調素子との境界近傍に切れ込みを有するキャリアと、
前記変調素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記変調素子の温度を調整する第1の温度調整部と、
前記光出力素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記光出力素子の温度を調整する第2の温度調整部と
を有することを特徴とする光送信装置。
【0078】
(付記6)前記光出力素子および前記変調素子は、前記集積素子内で導波路により相互に接続されており、前記キャリアは前記導波路近傍に嵌通孔を有していることを特徴とする付記5に記載の光送信装置。
【符号の説明】
【0079】
10,20,30,40,100,200 光送信装置
10a,20a パッケージ
11,21 変調器素子
12,22 波長可変レーザ素子
13,18,24 レンズ
14,15,25,34,35,44,104,204,300 キャリア
16,17,26,36,37,45,46,106,107,206,207 TEC
19,27 光ファイバ
23,33,43,103,203 集積素子
31,41,101,201 半導体MZ変調器素子
32,42,102,202 温度調整型波長可変レーザ素子
105,300a 嵌通孔
108,109,208,209 サーミスタ
205 切れ込み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度に応じて異なる波長の光を出力する光出力素子と、当該光出力素子から出力される光を変調する変調素子とを集積した集積素子と、
対向する第1の面および第2の面を有し、当該第1の面に前記集積素子が固定され、前記集積素子を固定した状態で前記第1の面と前記第2の面とを嵌通する嵌通孔が前記光出力素子と前記変調素子との境界近傍に設けられたキャリアと、
前記変調素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記変調素子の温度を調整する第1の温度調整部と、
前記光出力素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記光出力素子の温度を調整する第2の温度調整部と
を有することを特徴とする光送信装置。
【請求項2】
前記光出力素子および前記変調素子は、前記集積素子内で導波路により相互に接続されており、前記キャリアは前記導波路近傍に嵌通孔を有していることを特徴とする請求項1に記載の光送信装置。
【請求項3】
前記キャリアは、前記光出力素子を載置する第1の領域と、前記変調素子を載置する第2の領域とを有し、前記光出力素子から前記第1の領域に加えられた熱が前記第2の領域に伝わるまでの距離が長くなるように前記嵌通孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の光送信装置。
【請求項4】
温度に応じて異なる波長の光を出力する光出力素子と、当該光出力素子から出力される光を変調する変調素子とを集積した集積素子と、
第1の面および第2の面を有すると共に、当該第1の面に前記集積素子を固定し、固定した集積素子の前記光出力素子と前記変調素子との境界近傍に切れ込みを有するキャリアと、
前記変調素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記変調素子の温度を調整する第1の温度調整部と、
前記光出力素子の固定位置に対応して前記第2の面に固定され、前記光出力素子の温度を調整する第2の温度調整部と
を有することを特徴とする光送信装置。
【請求項5】
前記光出力素子および前記変調素子は、前記集積素子内で導波路により相互に接続されており、前記キャリアは前記導波路近傍に嵌通孔を有していることを特徴とする請求項4に記載の光送信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230882(P2010−230882A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77034(P2009−77034)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(309015134)富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社 (72)
【Fターム(参考)】