説明

光送受信モジュール

【課題】簡易な構成でウエハーレベルでの分波が可能で、かつ部品の形成が容易な光送受信モジュールを提供する。
【解決手段】光ファイバー4からの2波長の光を波長毎に受光する受光部3と、光ファイバー4に対して光を発光する発光部2と、受発光する光を分岐及び集光する分光素子1とを有し、分光素子1は発光部2からの光のみを反射する第1フィルター14を有する第1素子10と、光ファイバー4からの第1の波長の光のみを反射させる第2フィルター15を片面に有し、その反対側面に光ファイバー4からの第2の波長の光のみを反射させる第3フィルター16を有する第2素子11とからなり、光ファイバー4と受光部3及び発光部2は、いずれも分光素子1のレンズ面を有する面に対向して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバーからの2波長の光を分波して受光すると共に光ファイバーに対して光を発光する光送受信モジュールに関し、特に光の分波及び集光を1つの素子で行う光送受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光通信を行うための端末装置が用いられている。この端末装置は、光ファイバーとの間で光の送受信を行う光送受信モジュールを備えている。特に、FTTHサービスにおいては、収容局から加入者側の下り信号として1490nmの波長の光と1550nmの波長の光の2波長を波長多重送信し、加入者から収容局側の上り信号として1310nmの波長の光を送信するため、光送受信モジュールにおいてはこれらの光を適切に分波して送受信を行う必要がある。
【0003】
従来の光送受信モジュールは、筐体ブロック内に受光部と発光部、及び光を分波するフィルターやレンズなどを配置したものであった。このような光送受信モジュールとしては、例えば特許文献1に挙げるようなものがある。しかし、従来の光送受信モジュールは、部品点数が多くて、組立が煩雑であると共に、小型化が困難であった。
【0004】
一方で、ウエハー上にフィルター等の部品を形成し、部品の形成されたウエハーを組み合わせることによって光送受信モジュールを構成することが考えられている。このような光送受信モジュールとしては、例えば特許文献2に挙げるようなものがある。このように、ウエハーに部品を形成することで、部品数や実装工程数を削減することができ、低コスト化及び小型化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−23916号公報
【特許文献2】特開2008−286962号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の光送受信モジュールでは、分波する部品の両面に集光のためのレンズを設けている。分波する部品は、表面にレンズ面が形成されたウエハー基板を重ね合わせて形成するため、ウエハー基板の互いの位置合わせを行うことが必要であるが、両側のウエハー基板にレンズを有しているために、その位置合わせは容易ではない。
【0007】
また、特許文献2に挙げる光送受信モジュールでは、ウエハー基板間に空間を設け、その空間内にフィルターを配置する構成であるため、エッジ基板を使用することとなり、コストがかかるという問題もある。
【0008】
本発明は前記課題を鑑みてなされたものであり、簡易な構成でウエハーレベルでの分波が可能で、かつ部品の形成が容易な光送受信モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明に係る光送受信モジュールは、光ファイバーからの2波長の光を波長毎に受光する受光部と、前記光ファイバーに対して光を発光する発光部と、受発光する光を分岐及び集光する分光素子とを有した光送受信モジュールであって、
前記分光素子は第1基板の片面にレンズ面を有し、該レンズ面を有する面の反対側面に前記発光部からの光のみを反射する第1フィルターを有する第1素子と、該第1素子の前記第1フィルターと対向し前記光ファイバーからの光のうち第1の波長の光のみを反射させる第2フィルターを第2基板の片面に有し、該第2フィルターを有する面の反対側面に前記光ファイバーからの光のうち第2の波長の光のみを反射させる第3フィルターを有する第2素子とからなり、
前記光ファイバーと受光部及び発光部は、いずれも前記分光素子のレンズ面を有する面に対向して配置され、前記光ファイバーからの光は前記第1素子のレンズ面を有する面に対して傾斜して入射することで、前記第2フィルターで反射した第1の波長の光と前記第3フィルターで反射した第2の波長の光が、異なる光路に分岐されることを特徴として構成されている。
【0010】
また、本発明に係る光送受信モジュールは、前記第1素子のレンズ面は、前記光ファイバーからの光及び前記第1フィルターで反射した発光部からの光の光路上に位置する第1レンズと、前記発光部からの光を平行光とする第2レンズと、前記第2フィルター及び第3フィルターで反射した前記光ファイバーからの各光を前記受光部にそれぞれ集光する第3レンズ及び第4レンズとが形成されてなることを特徴として構成されている。
【0011】
さらに、本発明に係る光送受信モジュールは、前記第2素子の第2フィルターには前記第3フィルターで反射した光の光路上に第5レンズが形成されることを特徴として構成されている。
【0012】
さらにまた、本発明に係る光送受信モジュールは、前記第1素子の前記光ファイバーと受光部及び発光部と対向する面には反射防止膜が形成され、該反射防止膜上に前記第1レンズと第2レンズと第3レンズ及び第4レンズが形成されてなることを特徴として構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る光送受信モジュールによれば、分光素子は第1基板の片面にレンズ面を有し、レンズ面を有する面の反対側面に発光部からの光のみを反射する第1フィルターを有する第1素子と、第1素子の第1フィルターと対向し光ファイバーからの光のうち第1の波長の光のみを反射させる第2フィルターを第2基板の片面に有し、第2フィルターを有する面の反対側面に光ファイバーからの光のうち第2の波長の光のみを反射させる第3フィルターを有する第2素子とからなり、光ファイバーと受光部及び発光部は、いずれも分光素子のレンズ面を有する面に対向して配置され、光ファイバーからの光は第1素子のレンズ面を有する面に対して傾斜して入射することで、第2フィルターで反射した第1の波長の光と第2フィルターで反射した第2の波長の光が、異なる光路に分岐されることにより、基板とフィルターを積層状に形成した単純な素子で光を分岐することができ、簡易な構成の光送受信モジュールとすることができると共に、集光のためのレンズを第1素子の一面に設ければよいので、第2素子との位置合わせを簡易にすることができ、分光素子の形成を容易とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る光送受信モジュールによれば、第1素子のレンズ面は、光ファイバーからの光及び第1フィルターで反射した発光部からの光の光路上に位置する第1レンズと、発光部からの光を平行光とする第2レンズと、第2フィルター及び第3フィルターで反射した光ファイバーからの各光を受光部にそれぞれ集光する第3レンズ及び第4レンズとが形成されてなることにより、分光素子が受光部に対する集光の機能や発光部からの光を平行光とする機能も有して、部品点数を少なくすることができる。
【0015】
さらに、本発明に係る光送受信モジュールによれば、第2素子の第2フィルターには第3フィルターで反射した光の光路上に第5レンズが形成されることにより、第1素子と受光部の位置決めに若干のずれがあっても、第2素子の調整により補正できるので、組立精度に余裕を持たせて、組立をより容易にすることができる。
【0016】
さらにまた、本発明に係る光送受信モジュールによれば、第1素子において第1基板の光ファイバーと受光部及び発光部と対向する面には反射防止膜が形成され、反射防止膜上に第1レンズと第2レンズ及び第3レンズが形成されてなることにより、各光の各レンズと第1基板との屈折率差に伴う反射を低減してより効率よく通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施形態における光送受信モジュールの概要図である。
【図2】第2の実施形態における光送受信モジュールの概要図である。
【図3】第3の実施形態における光送受信モジュールの概要図である。
【図4】第4の実施形態における光送受信モジュールの概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について図面に沿って詳細に説明する。図1には、本実施形態における光送受信モジュールの概要図を示している。本実施形態における光送受信モジュールは、光ファイバー4からの光を受光すると共に、光ファイバー4に対して光を発光するものであり、光ファイバー4からの光は2波長の光からなり、光ファイバー4に対して発光する光は1波長の光からなるものである。
【0019】
このため、光送受信モジュールには、レーザーダイオードからなる発光部2とフォトダイオードからなる受光部3が設けられており、このうち受光部3は第1の波長の光を受光する第1受光部3aと、第2の波長の光を受光する第2受光部3bとからなっている。ここで、光ファイバー4からの光を構成する第1の波長は1550nmであり、第2の波長は1490nmである。また、発光部2から発光される光の波長は1310nmである。そして、光送受信モジュールはこれらの光を分波する分光素子1を有している。
【0020】
発光部2と受光部3及び光ファイバー4は、分光素子1の一方側に全て配置されている。受光部3を構成する第1受光部3aは、発光部2に隣接し、第2受光部3bは、第1受光部3aに隣接して配置されている。
【0021】
分光素子1は、平行に載置された第1素子10と第2素子11の2つの素子によって構成されている。第1素子10は、第1基板12の一面に第1フィルター14を有し、第1フィルター14とは反対側の面には、第1レンズ20、第2レンズ21、第3レンズ22、及び第4レンズ23が並設形成されている。また、第2素子11は、第2基板13の一面に第2フィルター15を有すると共に、それと反対側の面には第3フィルター16を有している。
【0022】
分光素子1を構成する第1素子10は、発光部2と受光部3及び光ファイバー4が配置された側に設けられ、各レンズの形成された面が発光部2等に対向する。第1素子10の第1基板12は、光を透過させる素材により形成されている。また、第1フィルター14は多層膜フィルターからなり、光ファイバー4からの光と発光部2からの光のうち、発光部2からの光のみを反射させ、それ以外の光を透過させる特性を有している。
【0023】
分光素子1を構成する第2素子11は、第2フィルター15の形成された面が第1素子10の第1フィルター14側の面に対向するように設けられる。第2素子11の第2基板13は、光を透過させる素材により形成されている。また、第2フィルター15は多層膜フィルターからなり、光ファイバー4からの光のうち、第1の波長である1550nmの光のみを反射させ、第2の波長である1490nmの光は透過させる特性を有している。一方で、第2素子11の第3フィルター16は、第2の波長である1490nmの光を反射させる特性を有している。
【0024】
図1に示すように、光ファイバー4からの光は、第1素子10の対向する面に対して傾斜して入射する。そのために、光ファイバー4の端面は光軸に対して斜めにカットされている。また、光ファイバー4を傾斜して配置するようにしてもよい。第1レンズ20から第1素子10に入射した光ファイバー4からの光は、第1基板12内に進入し、第1フィルター14を透過して、第2素子11側に進む。
【0025】
第2素子11において光ファイバー4からの光は、第2フィルター15で1550nmの光のみが反射され、1490nmの光はそのまま透過して第2基板13内に進入する。第2フィルター15で反射した1550nmの光は、再び第1素子10に入射し、これを透過して第3レンズ22で第1受光部3aに集光される。一方、第2フィルター15を透過した1490nmの光は、第3フィルター16において反射し、第2基板13と第2フィルター15を再び透過し、1550nmの光の光路と平行な別の光路をたどって第1素子10を透過し、第4レンズ23から第1素子10を出て、受光部3のうち第2受光部3bに集光される。
【0026】
このように、第1の波長の光を反射させる第2フィルター15と第2の波長の光を反射させる第3フィルター16とが、分光素子1において厚み方向に離隔して配置されているため、傾斜して入射した光ファイバーからの光は、各フィルターで波長毎に反射することで異なる光路に分岐される。
【0027】
発光部2からの1310nmの光は、発光部2に対向する第2レンズ21から第1素子10に対し斜め方向に入射し、第1基板12を透過して第1フィルター14で反射し、再び第1基板12を透過して第1レンズ20から第1素子10を出て、光ファイバー4の端面に集光される。
【0028】
分光素子1をこのように構成することにより、発光部2と受光部3及び光ファイバー4の全てを分光素子1の一方側に配置することができ、したがって第1素子10の一面にのみレンズを設ければよいこととなる。このため、第1素子10と第2素子11の位置合わせを容易にすることができ、分光素子1の形成を容易とすることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図2には、第2の実施形態における光送受信モジュールの概要図を示している。本形態に係る光送受信モジュールの構成は、図1に示した第1の実施形態の光送受信モジュールと概ね同様である。すなわち、この光送受信モジュールは、光ファイバー4からの光を受光すると共に、光ファイバー4に対して光を発光するものであり、光ファイバー4からの光は2波長の光からなり、光ファイバー4に対して発光する光は1波長の光からなるものである。
【0030】
また、分光素子1として第1素子10及び第2素子11を有し、第1素子10は第1レンズ20と第2レンズ21、第3レンズ22及び第4レンズ22を備え、これらと反対側面には第1フィルター14を有し、第2素子11は第1フィルター14と対向するように第2フィルター15を有すると共に、その反対側面には第3フィルター16を有する。
【0031】
一方、本実施形態において第1の実施形態と異なる点は、第2素子11の第2フィルター15を有する面に、第5レンズ24を設けた点である。第5レンズ24は、第3フィルター16で反射した光ファイバーからの第2の波長の光の光路上に配置され、平行光として反射した当該光を収束光とする。
【0032】
第3フィルター16で反射した光は、前述のように第1素子10の第4レンズ22においても第2受光部3bに対し集光されるが、第2受光部3bと第4レンズ22の位置決めに若干のずれがあった場合に、第2受光部3bにおいて受光する光の強度が充分でないことがある。これに対し、本実施形態のように第2素子11に第5レンズ24を設けていることにより、第2素子11の第1素子10に対する位置を調整することで、第1素子10と第2受光部3bとの間の位置決めに若干のずれがあっても、第2受光部3bに入射する光の調整を追加的に行うことができる。したがって、第1素子10の位置決め精度に余裕を持たせることができて、組立を容易にすることができる。
【0033】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態の光送受信モジュールは、第1の実施形態と概ね共通しているので、共通している点については説明を省略する。本実施形態が第1の実施形態と異なっているのは、第1素子10の第1レンズ20等が形成される面に、反射防止膜17が形成されている点である。
【0034】
反射防止膜17は、各レンズと第1基板との屈折率差に伴う反射を低減する機能を有している。これによって、反射を低減し効率よく通信を行うことができる。
【0035】
また、本発明の第4の実施形態についても説明する。本実施形態の光送受信モジュールは、第2の実施形態と概ね共通しているので、共通している点については説明を省略する。本実施形態が第2の実施形態と異なっているのは、第1素子10の第1レンズ20等が形成される面に、反射防止膜17が形成されている点である。
【0036】
本実施形態においても、第3の実施形態と同様、反射防止膜17は、各レンズと第1基板との屈折率差に伴う反射を低減する機能を有している。これによって、反射を低減し効率よく通信を行うことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の適用は本実施形態には限られず、その技術的思想の範囲内において様々に適用されうるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 分光素子
2 発光部
3 受光部
3a 第1受光部
3b 第2受光部
4 光ファイバー
10 第1素子
11 第2素子
12 第1基板
13 第2基板
14 第1フィルター
15 第2フィルター
16 第3フィルター
20 第1レンズ
21 第2レンズ
22 第3レンズ
23 第4レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバーからの2波長の光を波長毎に受光する受光部と、前記光ファイバーに対して光を発光する発光部と、受発光する光を分岐及び集光する分光素子とを有した光送受信モジュールであって、
前記分光素子は第1基板の片面にレンズ面を有し、該レンズ面を有する面の反対側面に前記発光部からの光のみを反射する第1フィルターを有する第1素子と、該第1素子の前記第1フィルターと対向し前記光ファイバーからの光のうち第1の波長の光のみを反射させる第2フィルターを第2基板の片面に有し、該第2フィルターを有する面の反対側面に前記光ファイバーからの光のうち第2の波長の光のみを反射させる第3フィルターを有する第2素子とからなり、
前記光ファイバーと受光部及び発光部は、いずれも前記分光素子のレンズ面を有する面に対向して配置され、前記光ファイバーからの光は前記第1素子のレンズ面を有する面に対して傾斜して入射することで、前記第2フィルターで反射した第1の波長の光と前記第3フィルターで反射した第2の波長の光が、異なる光路に分岐されることを特徴とする光送受信モジュール。
【請求項2】
前記第1素子のレンズ面は、前記光ファイバーからの光及び前記第1フィルターで反射した発光部からの光の光路上に位置する第1レンズと、前記発光部からの光を平行光とする第2レンズと、前記第2フィルター及び第3フィルターで反射した前記光ファイバーからの各光を前記受光部にそれぞれ集光する第3レンズ及び第4レンズとが形成されてなることを特徴とする請求項1記載の光送受信モジュール。
【請求項3】
前記第2素子の第2フィルターには前記第3フィルターで反射した光の光路上に第5レンズが形成されることを特徴とする請求項2記載の光送受信モジュール。
【請求項4】
前記第1素子の前記光ファイバーと受光部及び発光部と対向する面には反射防止膜が形成され、該反射防止膜上に前記第1レンズと第2レンズと第3レンズ及び第4レンズが形成されてなることを特徴とする請求項2または3記載の光送受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−191342(P2010−191342A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37618(P2009−37618)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】