光透過性RFID用アンテナ装置とそれを用いた家具及びシステム
【課題】タグIDを同一平面において複数エリアで認識できるRFID用アンテナ装置の提供。
【解決手段】光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板20と、前記ガラス基板20の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンPと、を備え、前記複数のアンテナパターンPは、前記ガラス基板20の平面をそのアンテナパターンPの数で分割して得られる各領域20a〜20dのほぼ全体をそれぞれのパターンPが取り囲むように隣接して設けられる、ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【解決手段】光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板20と、前記ガラス基板20の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンPと、を備え、前記複数のアンテナパターンPは、前記ガラス基板20の平面をそのアンテナパターンPの数で分割して得られる各領域20a〜20dのほぼ全体をそれぞれのパターンPが取り囲むように隣接して設けられる、ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はRFIDタグに記録された情報(以下適宜「タグID」という。)を受け取るための光透過性RFID用アンテナ装置とそれを用いた家具及びシステムに係わり、特にRFIDタグ固有のタグIDに加えて、当該アンテナ装置とRFIDタグとの相対位置関係の情報をもあわせて受け取ることができる光透過性RFID用アンテナ装置とそれを用いた家具及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年非接触方式の情報伝達手段であるRFID(Radio Frequency IDentification)技術において、RFIDタグ(電子タグ、ICタグ等とも呼ばれている。)が用いられるようになってきている。RFIDタグは周知の通り一種の情報記録媒体であって、一般に、電波を受信/送信するためのアンテナと、タグIDを格納する不揮発性メモリ(EEPROM等)および周辺送受信回路とを集積してなるICチップとを備えて構成されている。RFIDタグを情報読み取り用のリーダに接続されているリーダアンテナに近接させると、RFIDタグの送受信回路がそのリーダアンテナからの電波を受信して動作用電力を発生するとともに、メモリに格納されているタグIDを読み出してリーダアンテナへ向けて送信する。そして、リーダアンテナによって受信されたこのタグIDデータがリーダへ転送、入力されて、それに基づく種々の情報処理が行われる。
【0003】
このようなRFIDタグを用いた情報処理応用技術は、RFIDタグの外形寸法が著しく小型化されたことと、製造コストが大幅に下がってきたこと等が相まって、商品流通分野、医療分野などで急速に導入が拡大しつつある。例えば特許文献1は商品流通分野における応用例であって、リーダ用アンテナ付き棚板を備えた物品棚を開示している。これは、図1に示すように、リーダ用アンテナ11が設けられたガラス板等の棚板6〜8上に陳列される商品を、アンテナによって視界を遮られることなく利用者が見ることができるように、アンテナ11を一定の透過率以上のアンテナパターン薄膜によって構成したもので、RFIDタグが取り付けられている商品を棚板6〜8上に置くことによってアンテナ11との間で情報データの授受が行われるという機能を備えるとともに、アンテナによってじゃまされることなく商品がよく見えるという効果を有するとされている。
【0004】
また、特許文献2には、光透過性基材または光反射性基材のうえに設置された光透過性アンテナからなるアンテナ装置において、基材の持つ光透過性または光反射性能を損なわずに通信性能の優れたアンテナ装置を供給すべく、線状区画領域により区画される少なくとも1種の平面充填図形によって構成される光透過性アンテナであって、該光透過性アンテナの光線透過度が60%以上であり、該線状区画域の線幅が0.1〜100μmであり、該光透過性アンテナが基材の上に設置されており、基材が光透過性基材または光反射性基材であることを特徴とするアンテナ装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−37899
【特許文献2】特開2006−186742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2の構成によっては、リーダ用アンテナを持った透過性の棚板が得られるものの、リーダ用アンテナによって読み取ることができる情報は置かれる商品等に取り付けられたRFIDタグ固有のタグID(識別子)のみであり、そのIDがあるかないかの二値しか得られないため、同一のテーブルや棚のどの場所で読み取られたかは識別できなかった。
【0006】
また、特許文献1や特許文献2の構成によると、例えば棚板にリーダ用アンテナを設けた場合、その棚板に載置した物品に付されたタグIDを読み取るばかりでなく、棚板の下方から接近させた物品のタグIDを誤って読み取ってしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたもので、
本発明の一態様は、
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
前記ガラス基板の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンと、を備え、
前記複数のアンテナパターンは、前記ガラス基板の平面をそのアンテナパターンの数で分割して得られる各領域のほぼ全体をそれぞれのパターンが取り囲むように隣接して設けられる、
ことを特徴とする、複数エリア検知可能なRFID用アンテナ装置である。
この際、前記アンテナパターンの数で分割して得られる複数の領域の内、それらの面積において互いに相異なるものがあるように構成してもよい。
【0008】
また、前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンを形成してもよい。
前記複数のアンテナパターンを前記ガラス基板の一方の面に設け、そのガラス基板の他方の面の側にはそのほぼ全面に導電性薄膜を形成し前記アンテナパターンへの不要な電波の入射を防止する電波シールド層を構成することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、前記本発明の一態様に係るRFID用アンテナ装置を備えるガラス天板またはガラス棚板が、一ないし二以上の支持脚にて略水平に支持されてなる、ガラス板材を利用した家具であって、前記RFID用アンテナ装置のアンテナパターンがガラス基板の上面に設けられていることを特徴とする、ガラス板材を利用した家具である。
この際、前記各アンテナパターンからRFIDリーダライタへのリード線引き出し位置が、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定めることがよい。
【0010】
本発明の別の態様は、
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
そのガラス基板のそれぞれの面に少なくとも一つずつ設けられている、光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなるアンテナパターンと、
前記ガラス基板の厚み方向に相対向するアンテナパターンの間において、そのガラス基板のほぼ全面にわたって設けられた電波シールド層と、
を備えていることを特徴とするRFID用アンテナ装置である。
【0011】
前記電波シールド層は、前記アンテナパターンと同一の導電性薄膜によって形成することができる。
前記ガラス基板を、2枚の板ガラス材の間に導電性薄膜を挟み込んでなる合わせガラス構造とし、当該導電性薄膜によって前記電波シールド層を構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
前記本発明の一態様によるRFID用アンテナ装置によれば、ガラス基板上のアンテナパターンが目立たないために用途が広がるだけでなく、RFIDタグを取り付けた物品をガラス基板上のどの位置に置くかによってRFIDタグの情報を読み取るアンテナを異ならせることができるので、RFIDタグに格納されたタグIDに加えてガラス基板上の位置情報も加味した情報に基づいて種々の情報処理を行わせることができる。各アンテナパターンの領域の面積に互いに異なるものがあるように設定すれば、アンテナパターンによって情報読み取り感度を変えることができる。さらに前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンを形成すれば、当該アンテナパターンの受信感度を高めることができる。またアンテナパターン設置面の反対側に導電性薄膜による電波シールド層を設ければ、意図しない方向からアンテナパターンに入射するノイズの受信を防止することができる。
【0013】
また、前記本発明の別の態様によるガラス板材を利用した家具では、RFIDタグが取り付けられた物品を同一のガラス天板や棚板上のどこに置くかに応じて異なる情報処理を行わせることができる。前記各アンテナパターンからのリード線引き出し位置を、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定めれば、リード線が目立たず意匠効果が高まる。
【0014】
さらに本発明の他の態様によれば、ガラス基板の両面に設けられたアンテナパターンが両パターンの間に介在する電波シールド層によって隔てられているので、それぞれのアンテナパターンの側から入射するタグIDをのせた電波をそれぞれの側で独立して受信してそれに基づく情報処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
《RFID用アンテナ装置》
本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図を図1Aに、その部分断面図を図1Bに示す。このRFID用アンテナ装置(以下「アンテナ装置」と略称する。)10は使用周波数13.56MHz用に構成されたものであって、330mm角のガラス基板20上に4つのアンテナパターンを形成してある。すなわちガラス基板20は、図中に破線で示すように、平面で見て4つの均等な領域20a〜20dに分割され、それぞれの領域20a〜20dの境界に沿うようにしてアンテナパターンPが形成されている。
【0017】
アンテナパターンPを形成するにあたっては、まずガラス基板20の片面のほぼ全面に導電膜(図示せず)を形成する。そして所要のパターン形状が得られるようにマスキングをした状態でブラストをかけたり薬品処理したりすることでアンテナパターンPの形状に導電膜を残して残余の部分を脱膜する。この導電膜は例えば特開2006−169088に開示されているものであって、ITO、酸化スズ等の金属酸化物等が好適で、その膜厚は1μm以下として光透過性を持たせている。上記アンテナパターン導電膜が形成されたガラス基板20に対して0.3〜2mm程度の厚さの中間膜(図示せず)を接着すれば、ブラストのときに生成されたガラス基板20上の凹凸が中間膜によって埋められてほぼ透明となる。
【0018】
本実施形態に係るアンテナ装置において形成されたアンテナパターンPは、3つのループ状パターンP1〜P3を備えている。最外側のパターンP1がRFIDタグとのタグIDデータ授受を行う送受信アンテナであり、方形ガラス基板20の各頂点に相当する部分にフィーダ部Fが形成され、パターンP1の両端それぞれにリード線Lが接続されるようになっている。引き出されたリード線LはRFIDリーダ装置に引き込まれることになるが、これについては後述する。
【0019】
本実施形態のアンテナ装置10では、各アンテナパターンPについて、送受信アンテナを構成しているパターンP1の内側に、ほぼこれに沿うようにして2つの閉じたループパターンP2、P3が形成されている。これらのパターンP2、P3は、RFIDタグからの電波によって誘導電流が誘起され、それによる誘導磁界が送受信アンテナパターンP1と結合することによって受信感度を向上させる機能を発揮している。なお、この感度向上用ループパターンは、本実施形態のように送受信用ループパターンP1と平面上で隣接するように設けてもよいし、あるいはガラス基板20を介してパターンの厚み方向に一定長さ離隔して隣接するように、すなわちガラス基板20の厚み方向に積み重ねるように設けても同様の感度向上機能を発揮する。
【0020】
図2に、ガラス基板20に設けた1つの送受信用アンテナパターンP1(図2(a))に対して、その送受信用アンテナパターンP1に積層させるように、その厚み方向に感度向上用ループパターンP2(図2(b))を隣接させて設けた構成を示す。図示しているのは、図1Aのアンテナパターン1回路分に相当する。それぞれアンテナパターンP1及びループパターンP2を形成したガラス基板20を、合わせ中間膜Mを挟んでサンドイッチ状に接着して図2(c)のアンテナ装置を得る。この際、ループパターンP2の外周はアンテナパターンP1の内周にほぼ一致するような形状寸法とすることが好ましい。
【0021】
送受信用ループパターンP1の導電膜パターン幅は、本実施形態においては13.56MHzの電波を送受信するのに適合するように10mmとしているが、これは目的とする特性によって適宜定めればよい。感度向上用ループパターンP2、P3についても同様に所望の特性が得られるように適宜定めればよい。また図示のように、各ループパターンP1〜P3は、パターン折り曲げ部にRを付けているが、これはループパターンの電波特性を向上させるためであって、Rの半径などは適宜決定すればよい。ただし送受信用アンテナパターンから離れるにつれて、すなわち内側に行くにしたがって外側よりも感度向上用ループパターンの幅は細くするほうがよい。上記した、送受信用アンテナパターンに対して感度向上用ループパターンを積層させて配置する場合にも同じことが言える。
【0022】
なお、図1Bの断面図に示すように、ガラス基板20のアンテナパターンPが設けられているのとは反対側の面には、ガラス基板20を通してアンテナパターンPにノイズ電波が入射するのを防止するための電波シールド層Sを設けることが好ましいことがある。この電波シールド層Sを設ける場合は、アンテナパターンPの反対側の面のほぼ全体に形成してその面の側からアンテナパターンPへの電波入射を遮るようにする。電波シールド層Sは、アンテナパターンPと同様の導電性薄膜をガラス基板20表面に成膜させて形成することができる。なおまたこの電波シールド層Sは、必要に応じて接地してもよい。
【0023】
《RFID用アンテナ装置の形状とパターン》
次に、アンテナ装置の形状とパターンについて説明する。図3A、図3Bは、アンテナ装置の平面形状とアンテナループパターンの類型を模式的に示した図である。
【0024】
まずアンテナ装置の平面形状として、前記実施形態の方形(四角形)のほか、例えば円形、三角形にすることが考えられる。言うまでもなくこの形状は本アンテナ装置の用途、設置場所、外観デザイン上の要請等に基づいて、これらに限られず適宜に決定することができる。また各アンテナパターンを配置する領域の数と形状も、アンテナ装置平面形状に対応して定めればよい。図3A、図3Bでは例示として2つから8つまでの領域に分割して各領域にアンテナパターンを配置した様子を示している。例えば、円形のアンテナ装置について3つの領域を設定する場合、円形の中心について三等分して得られる各扇形領域の外周に沿ってループパターンを形成する。なお、図3A、図3Bの模式図においては、四角形のガラス基板について領域を5分割あるいは6分割した例のように、必ずしも領域の面積が均等となっていないものも含まれる。この場合、各アンテナパターンの持つ指向性に基づいて比較的に他より面積が狭い領域に設定されたアンテナパターンはRFIDタグの読み取り範囲が狭まる、言い換えれば他の領域に比べて情報の授受が成立しにくい場所がガラス基板20上に存在することになるから、受信結果による情報処理の種類等に応じて読み取りやすい、読み取りにくい、といった操作性に関する重み付けを行うことができる。すなわち、重要な情報操作と関連づける領域は比較的に面積を狭くすることにより、意識的にそこにRFIDタグを近づけなくては読み取りができないような構成を取ることができる。つまり、読み取る場所と読み取らない場所を意図的に選別できる。
【0025】
また、図3A、図3Bには、アンテナ装置の形状、パターン領域の数とアンテナ装置全体を支持するための支柱(支持脚)の数と配置との関係についてもそのバリエーションを示している。これは、例えば本実施形態のアンテナ装置をガラス天板に備えるテーブルの構成に主として関係している。各模式図において、各パターンに付されている黒丸印(・)が、各パターンからのリード線引き出し部分であるフィード部の位置を表している。前記した円形装置に3つの領域を設ける構成について、円形の中心に1本の支柱を設ける場合と、円形の円周上に120°ピッチで支柱を設ける場合では、図示のように各パターンのフィーダ部Fの位置を異ならせるが、この場合、フィーダ部の位置はもっとも近くにある支柱の直近位置とされる。これは、本アンテナ装置は全体がほぼ透明であるためにフィーダ部Fから取り出されるリード線を隠す処理ができないので、目立たないようにフィーダ部Fから取り出したリード線Lをすぐに支柱内部に引き込むかあるいは支柱に沿って配線することが適当だからである。
【0026】
このことをより明確に示すために、円形のガラス基板20を備え、これを三等分した領域20a〜20cを設定したアンテナ装置10について、図4A、図4Bに図示する。図4Aは円形ガラス基板20の中心に支柱30を設けた例、図4Bは円形ガラス基板20の円周上に120°ピッチで3本の支柱30を設けた例を示している。これらの図から明らかなように、各ループパターンP、P1〜P3のフィーダ部Fは、それぞれ支柱30の断面プロフィール内で終端するように配置されているから、ここからリード線Lを引き込めばリード線Lの存在は外から見えず美観を損ねるようなことがない。
【0027】
《RFID用アンテナ装置の作用》
次に、前記実施形態に係る方形ガラス基板を備えた4ループパターンアンテナ装置に例をとってその作用を説明する。方形ガラス基板20にはこれを四等分した4つの領域それぞれにアンテナパターンPが設けられているから、それぞれのアンテナパターンPにRFIDタグの取り付けられた物品を近づけたりその上に載せたりすると、それぞれのアンテナパターンPはRFIDタグに格納されたタグIDデータを受信することができる。一方、アンテナ装置10から受信データを受領するリーダ装置で各アンテナパターンPを判別することにより、このアンテナ装置10ではRFIDタグに格納されているタグIDデータに加えてガラス基板20上の位置情報に対応させて4種類のデータを送ることができる。またそれぞれの領域についてその全体を網羅するようにループパターンが設定されているので、ガラス基板20全体のいずれの位置でもRFIDタグの情報データを読み取ることができる。
【0028】
《応用例(テーブル家具)》
次に、前記実施形態のアンテナ装置10を用いたテーブル家具について説明する。図4Aはこのテーブル家具、ガラステーブル100の平面図、図4Bはその立面図である。前記実施形態と同様の4つのアンテナパターンPを有する方形ガラス基板120を備えたアンテナ装置110が、その四隅において4本の中空円筒状の支柱130によって支持されている。アンテナ装置110の上面にはガラステーブル100の天板を構成するガラス天板140が載置されている。アンテナパターンPはガラス基板120の上面に形成されており、リード線Lが接続されるフィーダ部Fを除き中間膜(図示せず)が接着されて保護されている。
【0029】
アンテナ装置110の下方には間隔を開けて制御部箱150が配置されていて、この制御部箱150はその四隅が支柱130によって支柱130の下端部からいくらか浮かされた位置に固定されている。この制御部箱150には、RFIDタグ情報データのリーダ装置と電源部等の周辺機器(図示せず)が収装されており、リーダ装置には4つのアンテナパターンPの各フィーダ部Fから支柱130を経由して制御部箱150に引き込まれているリード線Lが接続される。リーダ装置としては、13.56MHz用の汎用リーダ装置を種々用いることができるが、ここではアンテナ入力が4チャンネルあり4つのアンテナからの入力を識別することができるリーダ装置(例えば、タカヤ株式会社製「TR3-LD003D-4」形リーダライタ)を採用している。
【0030】
前記リーダ装置からの出力は、インターフェイス回路を介してパーソナルコンピュータ(PC)等に入力され、所定の情報処理が行われることになる。PCおよび電源部等の周辺回路機器は、必要に応じて前記制御部箱150内にリーダ装置とともに収装することができる。制御の応用例として、例えばDVDプレーヤの操作を考えてみる。いま図4Aに示すように、4つのアンテナパターンPを、アンテナ[1]〜アンテナ[4]として識別することにしたとする。DVDの収納ケースに「そのケースに入っているメディアがDVDであることを示す情報」と「そのDVDに収録されているコンテンツを特定する固有情報」とを少なくとも格納したRFIDタグが取り付けられているとする。DVDのケースをガラステーブル100の天板140の上に置くと、いずれのアンテナ[1]〜[4]によっても「置かれた物品がDVDであることとそのDVDのコンテンツ」を示す情報が読み取られる。同時にアンテナ[1]〜[4]のどのアンテナで読み取られたかがリーダ装置によって識別されるから、例えば、アンテナ[1]→メインメニュー、アンテナ[2]→本編再生、アンテナ[3]→スキップ、アンテナ[4]→バック、といったDVDプレーヤ操作系との対応付けをしておくと、DVDケースの置き場所によって異なる操作を簡単に行わせることができる。同様に、CD等他のメディアであることを識別して別の機器操作系に対応した動作をアンテナ毎に割り付ければ、メディアケースの置き場所によって種々の動作をさせることができる。
【0031】
また洋服のショウケースとして作成し、アンテナパターンの上で商品を置く場所によりコーディネートする服やスカート、ズボンなどを入れ変えて画面にだすなど商品のディスプレイや説明に応用できる。
【0032】
《RFID用アンテナ装置の変形例》
次に、本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例について説明する。図6Aはこの変形例の分解斜視図、図6Bはこの変形例の部分断面図である。後述するように、本変形例によりRFIDを施設の施錠開錠および入退室管理システムとして組み込むことが可能になる。たとえば部屋からの退室のも時にカードをかざすことを義務付ければ、部屋の使用状況や現在の利用人数などもシステム上で把握することが可能になる。
【0033】
RFID用アンテナ装置10’は、2枚のガラス基板20を備えており、その各ガラス基板20の片面には、先述した実施形態に係るRFID用アンテナ装置に形成されていたのと同様の導電膜によるループアンテナパターンPが形成されている。いずれかのガラス基板20(本変形例においては上側のガラス基板)のアンテナパターンPが形成されていない面には、ほぼその全体にアンテナパターンPと同様の導電性薄膜からなる電波シールド層Sを形成しておく。そして、一方のガラス基板20の電波シールド層Sの面と他方のガラス基板20のアンテナパターンPが形成されていない面とを互いに対向させて、その間に合わせ中間膜Mを介して密接させる。なお、アンテナパターンPを形成したガラス基板および電波シールド層Sを形成したガラス基板をどのように組み合わせても、2つのアンテナパターンPの間が電波シールド層Sによって隔てられている本発明の構成が得られる限り差し支えがない。また電波シールド層Sは、導電性薄膜以外にも、網入りガラスに用いられる金属メッシュやパンチングメタルのような金属シート材によって構成することもできる。電波シールド層Sは、必要に応じて接地してもよい。
【0034】
なお、図示の例ではアンテナパターンPを各面に一つ設置しているが、それぞれの面において2以上のアンテナパターンPを設けてももちろんよい。例えば先述した本発明の実施形態のように、それぞれの面を複数の領域に分割し、それぞれの領域をカバーするように複数のアンテナパターンPを設置するような構成としてもよい。さらにこの場合、それぞれの面において領域の分割数は必ずしも同一にする必要がなく、それぞれの面でアンテナパターンPの数を異ならせてもよい。また、先述の実施形態と同様に、感度向上用のループパターンを設けることも自由である。
【0035】
このような構成としたRFID用アンテナ装置10’によれば、ガラス基板20を挟んで対向するアンテナパターンPの間に導電性の電波シールド層Sが介在するので、いずれか一方のアンテナパターンPによって受信されたタグIDが誤って他方の(反対側の)アンテナパターンPによって受信されてしまうことがない。言い換えれば、図6A、図6Bに図示した例では、タグIDのデータを一方の側のアンテナパターンPで受信した場合と他方のアンテナパターンPで受信した場合とで区別して認識することができることになり、タグIDによって伝達される情報量を増加させることができる。
【0036】
《RFID用アンテナ装置変形例の応用》
上記の変形例に係るRFID用アンテナ装置を利用して、例えばある室内空間への人の出入りを管理するための入退出管理システムを構成することができる。図7Aに当該システムに用いられるガラスドアの正面図を、図7B、図7Cに図7Aのガラスドアに好適に用いることができるRFID用アンテナ装置の部分断面図を示す。
【0037】
この例では、建物内の壁78にガラスドア70が取り付けられている。説明の便宜上、紙面手前が室外、紙面奥側がガラスドア70によって区切られた室内であるとする。ガラスドア70はドアサッシ74に光透過性を有するドアガラス72が組み付けられてなり、ドアサッシ74が建物壁面にはめ込まれた外枠79に対して蝶番76によって取り付けられていることで、紙面前後方向に回動自在なドアを構成している。ドアガラス72の一部にはRFID用アンテナ装置10’が設けられている。このアンテナ装置10’は、ドアガラス72の対向する両表面側にそれぞれ形成されたアンテナパターンP1、P2と、それらパターンP1、P2の間を電磁気的に隔離する電波シールド層Sとを備えて構成されている。なお、図示していないが、タグIDの読み取りに応じてガラスドア70の解錠・施錠を行うオートロック装置を設備することができる。
【0038】
次に、このRFID用アンテナ装置10’の構成について、より詳細に説明する。図7Bはアンテナ装置10’の一実施例を示す部分断面図である。ドアガラス72は、2枚の板ガラス20を有し、それぞれの板ガラス20のアンテナ装置10’が設けられるべき部分にアンテナパターンP1、P2が片面ずつ形成されている。いずれかの板ガラス20のアンテナパターンP1、P2が形成されていない面には、導電性薄膜からなる電波シールド層Sが形成され、アンテナパターンP1、P2の間を電磁気的に隔離させる。2枚の板ガラス20は、アンテナパターンP1、P2が形成されていない面同士で合わせ中間膜Mを挟んで接着されてドアガラス72を構成する。この実施例では、アンテナパターンP1、P2がドアガラス72の両表面側に形成されているから、少なくともアンテナパターンP1、P2が保護されるように、光透過性を有する樹脂フィルム等をドアガラス72のそれぞれの面に貼り付けておくことが望ましい。また合わせ中間膜Mとしては、例えばポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)からなる厚さ0.1mm〜1.5mmの膜を用いることができる。
【0039】
図7Cは、アンテナ装置10’の別の実施例を示す部分断面図である。ドアガラス72は、3枚のガラス基板20を備えて構成されている。2枚のガラス基板20のそれぞれ片面には、アンテナパターンP1、P2が形成されている。3枚目のガラス基板20の一方の面には、導電性薄膜が形成されて電波シールド層Sを構成している。アンテナパターンP1、P2が形成された2枚のガラス基板20はアンテナパターンの側が内側となるように、その間に電波シールド層Sが形成された3枚目のガラス基板20を挟み込んで、それぞれの相隣接するガラス基板20の間に合わせ中間膜Mを挟んでそれぞれ接着する。このドアガラス72の場合には、各アンテナパターンP1、P2はドアガラス72の内側に配置されるので、先の実施例と異なり特別な樹脂フィルム等の保護材は不要である。なお、アンテナループパターンP1、P2の内側の領域は、部屋番号や適宜のロゴ、あるいはタグIDの読み取り位置であることを示す表示など、適宜の文字、数字、模様、ピクトグラムなどを転写印刷、サンドブラスト等の手法で配置するのに利用することができる。
【0040】
いずれの実施例の場合でも、各アンテナパターンP1、P2から引き出されたリード線Lは、ドアサッシ74内部を引き回して適当な位置から建物側の壁78へ取り出し、適宜のタグIDリーダ装置(図示省略)へ接続される。タグIDリーダ装置は、図示しない入退出管理システムへ読み取ったタグIDデータを、いずれのアンテナパターンで受信したかを示すIDとともに引き渡す。
【0041】
次に、本入退出管理システムの作用と効果について簡単に説明する。図7Aの紙面手前、室外側から室内へ入ろうとする人が、所定のRFIDタグが付された社員証等の身分証をガラスドア70のアンテナ装置10’に接近させると(かざすと)、読み取られたタグIDデータはリーダ装置を介して図示しないシステムサーバに転送される。システムサーバは、受け取ったタグIDデータが正規に登録された社員のものであるかどうかを照会し、正規データであればガラスドア70のロックを解除するとともに、当該タグIDの所有者が入室したことをシステムログに記録する。正規データであることが確認できなければ、ロック解除は行わず、例えば図示しない音声装置から注意を喚起するメッセージを出力するとともに、異常なアクセスがあった旨をシステムログに記録する等の処理を実行する。逆に室内から室外へ出る場合にも、同様の処理がなされる。システムとしては、室外側のアンテナで受信したか室内側のアンテナで受信したかを判別することで入退出を区別し、システムログにタグIDとともに記録することができる。したがって、このようなガラスドア70を建物内の各室出入り口に設備しておけば、どの部屋に誰が在室しているかをリアルタイムで把握するといった応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図である。
【図1B】図1AのRFID用アンテナ装置の部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置において送受信用アンテナパターンに対して感度向上用アンテナパターンを積層させて設けた例を示す模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面形状、アンテナパターン配置、および支持するための支柱配置の類型を示す模式図その1である。
【図3B】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面形状、アンテナパターン配置、および支持するための支柱配置の類型を示す模式図その2である。
【図4A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図であり、円形ガラス基板20を三分割してアンテナパターンを配置し、その中心に支柱30を設けた例である。
【図4B】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図であり、円形ガラス基板20を三分割してアンテナパターンを配置し、円形ガラス基板20の円周上に120°ピッチで3本の支柱30を設けた例である。
【図5A】本発明の一実施形態であるガラステーブルの平面図である。
【図5B】図4Bの立面図である。
【図6A】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を示す分解斜視図である。
【図6B】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を示す部分断面図である。
【図7A】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を利用して構成した入退出管理システム用ガラスドアの図である。
【図7B】図7Aのガラスドアに好適に用いられるRFID用アンテナ装置その1の断面図である。
【図7C】図7Aのガラスドアに好適に用いられるRFID用アンテナ装置その2の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10、10’ RFID用アンテナ装置
20 ガラス基板
20a、20b、20c、20d 領域(ガラス基板20に区画された)
30、130 支柱(支持脚)
70 ガラスドア
100 ガラステーブル
140 ガラス天板
150 制御部箱
P、P1、P2、P3 アンテナループパターン
F フィーダ部
S 電波シールド層
M 合わせ中間膜
L リード線
【技術分野】
【0001】
この発明はRFIDタグに記録された情報(以下適宜「タグID」という。)を受け取るための光透過性RFID用アンテナ装置とそれを用いた家具及びシステムに係わり、特にRFIDタグ固有のタグIDに加えて、当該アンテナ装置とRFIDタグとの相対位置関係の情報をもあわせて受け取ることができる光透過性RFID用アンテナ装置とそれを用いた家具及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年非接触方式の情報伝達手段であるRFID(Radio Frequency IDentification)技術において、RFIDタグ(電子タグ、ICタグ等とも呼ばれている。)が用いられるようになってきている。RFIDタグは周知の通り一種の情報記録媒体であって、一般に、電波を受信/送信するためのアンテナと、タグIDを格納する不揮発性メモリ(EEPROM等)および周辺送受信回路とを集積してなるICチップとを備えて構成されている。RFIDタグを情報読み取り用のリーダに接続されているリーダアンテナに近接させると、RFIDタグの送受信回路がそのリーダアンテナからの電波を受信して動作用電力を発生するとともに、メモリに格納されているタグIDを読み出してリーダアンテナへ向けて送信する。そして、リーダアンテナによって受信されたこのタグIDデータがリーダへ転送、入力されて、それに基づく種々の情報処理が行われる。
【0003】
このようなRFIDタグを用いた情報処理応用技術は、RFIDタグの外形寸法が著しく小型化されたことと、製造コストが大幅に下がってきたこと等が相まって、商品流通分野、医療分野などで急速に導入が拡大しつつある。例えば特許文献1は商品流通分野における応用例であって、リーダ用アンテナ付き棚板を備えた物品棚を開示している。これは、図1に示すように、リーダ用アンテナ11が設けられたガラス板等の棚板6〜8上に陳列される商品を、アンテナによって視界を遮られることなく利用者が見ることができるように、アンテナ11を一定の透過率以上のアンテナパターン薄膜によって構成したもので、RFIDタグが取り付けられている商品を棚板6〜8上に置くことによってアンテナ11との間で情報データの授受が行われるという機能を備えるとともに、アンテナによってじゃまされることなく商品がよく見えるという効果を有するとされている。
【0004】
また、特許文献2には、光透過性基材または光反射性基材のうえに設置された光透過性アンテナからなるアンテナ装置において、基材の持つ光透過性または光反射性能を損なわずに通信性能の優れたアンテナ装置を供給すべく、線状区画領域により区画される少なくとも1種の平面充填図形によって構成される光透過性アンテナであって、該光透過性アンテナの光線透過度が60%以上であり、該線状区画域の線幅が0.1〜100μmであり、該光透過性アンテナが基材の上に設置されており、基材が光透過性基材または光反射性基材であることを特徴とするアンテナ装置が開示されている。
【特許文献1】特開2007−37899
【特許文献2】特開2006−186742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1や特許文献2の構成によっては、リーダ用アンテナを持った透過性の棚板が得られるものの、リーダ用アンテナによって読み取ることができる情報は置かれる商品等に取り付けられたRFIDタグ固有のタグID(識別子)のみであり、そのIDがあるかないかの二値しか得られないため、同一のテーブルや棚のどの場所で読み取られたかは識別できなかった。
【0006】
また、特許文献1や特許文献2の構成によると、例えば棚板にリーダ用アンテナを設けた場合、その棚板に載置した物品に付されたタグIDを読み取るばかりでなく、棚板の下方から接近させた物品のタグIDを誤って読み取ってしまうおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の、及び他の課題を解決するためになされたもので、
本発明の一態様は、
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
前記ガラス基板の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンと、を備え、
前記複数のアンテナパターンは、前記ガラス基板の平面をそのアンテナパターンの数で分割して得られる各領域のほぼ全体をそれぞれのパターンが取り囲むように隣接して設けられる、
ことを特徴とする、複数エリア検知可能なRFID用アンテナ装置である。
この際、前記アンテナパターンの数で分割して得られる複数の領域の内、それらの面積において互いに相異なるものがあるように構成してもよい。
【0008】
また、前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンを形成してもよい。
前記複数のアンテナパターンを前記ガラス基板の一方の面に設け、そのガラス基板の他方の面の側にはそのほぼ全面に導電性薄膜を形成し前記アンテナパターンへの不要な電波の入射を防止する電波シールド層を構成することができる。
【0009】
本発明の別の態様は、前記本発明の一態様に係るRFID用アンテナ装置を備えるガラス天板またはガラス棚板が、一ないし二以上の支持脚にて略水平に支持されてなる、ガラス板材を利用した家具であって、前記RFID用アンテナ装置のアンテナパターンがガラス基板の上面に設けられていることを特徴とする、ガラス板材を利用した家具である。
この際、前記各アンテナパターンからRFIDリーダライタへのリード線引き出し位置が、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定めることがよい。
【0010】
本発明の別の態様は、
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
そのガラス基板のそれぞれの面に少なくとも一つずつ設けられている、光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなるアンテナパターンと、
前記ガラス基板の厚み方向に相対向するアンテナパターンの間において、そのガラス基板のほぼ全面にわたって設けられた電波シールド層と、
を備えていることを特徴とするRFID用アンテナ装置である。
【0011】
前記電波シールド層は、前記アンテナパターンと同一の導電性薄膜によって形成することができる。
前記ガラス基板を、2枚の板ガラス材の間に導電性薄膜を挟み込んでなる合わせガラス構造とし、当該導電性薄膜によって前記電波シールド層を構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
前記本発明の一態様によるRFID用アンテナ装置によれば、ガラス基板上のアンテナパターンが目立たないために用途が広がるだけでなく、RFIDタグを取り付けた物品をガラス基板上のどの位置に置くかによってRFIDタグの情報を読み取るアンテナを異ならせることができるので、RFIDタグに格納されたタグIDに加えてガラス基板上の位置情報も加味した情報に基づいて種々の情報処理を行わせることができる。各アンテナパターンの領域の面積に互いに異なるものがあるように設定すれば、アンテナパターンによって情報読み取り感度を変えることができる。さらに前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンを形成すれば、当該アンテナパターンの受信感度を高めることができる。またアンテナパターン設置面の反対側に導電性薄膜による電波シールド層を設ければ、意図しない方向からアンテナパターンに入射するノイズの受信を防止することができる。
【0013】
また、前記本発明の別の態様によるガラス板材を利用した家具では、RFIDタグが取り付けられた物品を同一のガラス天板や棚板上のどこに置くかに応じて異なる情報処理を行わせることができる。前記各アンテナパターンからのリード線引き出し位置を、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定めれば、リード線が目立たず意匠効果が高まる。
【0014】
さらに本発明の他の態様によれば、ガラス基板の両面に設けられたアンテナパターンが両パターンの間に介在する電波シールド層によって隔てられているので、それぞれのアンテナパターンの側から入射するタグIDをのせた電波をそれぞれの側で独立して受信してそれに基づく情報処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明をその実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0016】
《RFID用アンテナ装置》
本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図を図1Aに、その部分断面図を図1Bに示す。このRFID用アンテナ装置(以下「アンテナ装置」と略称する。)10は使用周波数13.56MHz用に構成されたものであって、330mm角のガラス基板20上に4つのアンテナパターンを形成してある。すなわちガラス基板20は、図中に破線で示すように、平面で見て4つの均等な領域20a〜20dに分割され、それぞれの領域20a〜20dの境界に沿うようにしてアンテナパターンPが形成されている。
【0017】
アンテナパターンPを形成するにあたっては、まずガラス基板20の片面のほぼ全面に導電膜(図示せず)を形成する。そして所要のパターン形状が得られるようにマスキングをした状態でブラストをかけたり薬品処理したりすることでアンテナパターンPの形状に導電膜を残して残余の部分を脱膜する。この導電膜は例えば特開2006−169088に開示されているものであって、ITO、酸化スズ等の金属酸化物等が好適で、その膜厚は1μm以下として光透過性を持たせている。上記アンテナパターン導電膜が形成されたガラス基板20に対して0.3〜2mm程度の厚さの中間膜(図示せず)を接着すれば、ブラストのときに生成されたガラス基板20上の凹凸が中間膜によって埋められてほぼ透明となる。
【0018】
本実施形態に係るアンテナ装置において形成されたアンテナパターンPは、3つのループ状パターンP1〜P3を備えている。最外側のパターンP1がRFIDタグとのタグIDデータ授受を行う送受信アンテナであり、方形ガラス基板20の各頂点に相当する部分にフィーダ部Fが形成され、パターンP1の両端それぞれにリード線Lが接続されるようになっている。引き出されたリード線LはRFIDリーダ装置に引き込まれることになるが、これについては後述する。
【0019】
本実施形態のアンテナ装置10では、各アンテナパターンPについて、送受信アンテナを構成しているパターンP1の内側に、ほぼこれに沿うようにして2つの閉じたループパターンP2、P3が形成されている。これらのパターンP2、P3は、RFIDタグからの電波によって誘導電流が誘起され、それによる誘導磁界が送受信アンテナパターンP1と結合することによって受信感度を向上させる機能を発揮している。なお、この感度向上用ループパターンは、本実施形態のように送受信用ループパターンP1と平面上で隣接するように設けてもよいし、あるいはガラス基板20を介してパターンの厚み方向に一定長さ離隔して隣接するように、すなわちガラス基板20の厚み方向に積み重ねるように設けても同様の感度向上機能を発揮する。
【0020】
図2に、ガラス基板20に設けた1つの送受信用アンテナパターンP1(図2(a))に対して、その送受信用アンテナパターンP1に積層させるように、その厚み方向に感度向上用ループパターンP2(図2(b))を隣接させて設けた構成を示す。図示しているのは、図1Aのアンテナパターン1回路分に相当する。それぞれアンテナパターンP1及びループパターンP2を形成したガラス基板20を、合わせ中間膜Mを挟んでサンドイッチ状に接着して図2(c)のアンテナ装置を得る。この際、ループパターンP2の外周はアンテナパターンP1の内周にほぼ一致するような形状寸法とすることが好ましい。
【0021】
送受信用ループパターンP1の導電膜パターン幅は、本実施形態においては13.56MHzの電波を送受信するのに適合するように10mmとしているが、これは目的とする特性によって適宜定めればよい。感度向上用ループパターンP2、P3についても同様に所望の特性が得られるように適宜定めればよい。また図示のように、各ループパターンP1〜P3は、パターン折り曲げ部にRを付けているが、これはループパターンの電波特性を向上させるためであって、Rの半径などは適宜決定すればよい。ただし送受信用アンテナパターンから離れるにつれて、すなわち内側に行くにしたがって外側よりも感度向上用ループパターンの幅は細くするほうがよい。上記した、送受信用アンテナパターンに対して感度向上用ループパターンを積層させて配置する場合にも同じことが言える。
【0022】
なお、図1Bの断面図に示すように、ガラス基板20のアンテナパターンPが設けられているのとは反対側の面には、ガラス基板20を通してアンテナパターンPにノイズ電波が入射するのを防止するための電波シールド層Sを設けることが好ましいことがある。この電波シールド層Sを設ける場合は、アンテナパターンPの反対側の面のほぼ全体に形成してその面の側からアンテナパターンPへの電波入射を遮るようにする。電波シールド層Sは、アンテナパターンPと同様の導電性薄膜をガラス基板20表面に成膜させて形成することができる。なおまたこの電波シールド層Sは、必要に応じて接地してもよい。
【0023】
《RFID用アンテナ装置の形状とパターン》
次に、アンテナ装置の形状とパターンについて説明する。図3A、図3Bは、アンテナ装置の平面形状とアンテナループパターンの類型を模式的に示した図である。
【0024】
まずアンテナ装置の平面形状として、前記実施形態の方形(四角形)のほか、例えば円形、三角形にすることが考えられる。言うまでもなくこの形状は本アンテナ装置の用途、設置場所、外観デザイン上の要請等に基づいて、これらに限られず適宜に決定することができる。また各アンテナパターンを配置する領域の数と形状も、アンテナ装置平面形状に対応して定めればよい。図3A、図3Bでは例示として2つから8つまでの領域に分割して各領域にアンテナパターンを配置した様子を示している。例えば、円形のアンテナ装置について3つの領域を設定する場合、円形の中心について三等分して得られる各扇形領域の外周に沿ってループパターンを形成する。なお、図3A、図3Bの模式図においては、四角形のガラス基板について領域を5分割あるいは6分割した例のように、必ずしも領域の面積が均等となっていないものも含まれる。この場合、各アンテナパターンの持つ指向性に基づいて比較的に他より面積が狭い領域に設定されたアンテナパターンはRFIDタグの読み取り範囲が狭まる、言い換えれば他の領域に比べて情報の授受が成立しにくい場所がガラス基板20上に存在することになるから、受信結果による情報処理の種類等に応じて読み取りやすい、読み取りにくい、といった操作性に関する重み付けを行うことができる。すなわち、重要な情報操作と関連づける領域は比較的に面積を狭くすることにより、意識的にそこにRFIDタグを近づけなくては読み取りができないような構成を取ることができる。つまり、読み取る場所と読み取らない場所を意図的に選別できる。
【0025】
また、図3A、図3Bには、アンテナ装置の形状、パターン領域の数とアンテナ装置全体を支持するための支柱(支持脚)の数と配置との関係についてもそのバリエーションを示している。これは、例えば本実施形態のアンテナ装置をガラス天板に備えるテーブルの構成に主として関係している。各模式図において、各パターンに付されている黒丸印(・)が、各パターンからのリード線引き出し部分であるフィード部の位置を表している。前記した円形装置に3つの領域を設ける構成について、円形の中心に1本の支柱を設ける場合と、円形の円周上に120°ピッチで支柱を設ける場合では、図示のように各パターンのフィーダ部Fの位置を異ならせるが、この場合、フィーダ部の位置はもっとも近くにある支柱の直近位置とされる。これは、本アンテナ装置は全体がほぼ透明であるためにフィーダ部Fから取り出されるリード線を隠す処理ができないので、目立たないようにフィーダ部Fから取り出したリード線Lをすぐに支柱内部に引き込むかあるいは支柱に沿って配線することが適当だからである。
【0026】
このことをより明確に示すために、円形のガラス基板20を備え、これを三等分した領域20a〜20cを設定したアンテナ装置10について、図4A、図4Bに図示する。図4Aは円形ガラス基板20の中心に支柱30を設けた例、図4Bは円形ガラス基板20の円周上に120°ピッチで3本の支柱30を設けた例を示している。これらの図から明らかなように、各ループパターンP、P1〜P3のフィーダ部Fは、それぞれ支柱30の断面プロフィール内で終端するように配置されているから、ここからリード線Lを引き込めばリード線Lの存在は外から見えず美観を損ねるようなことがない。
【0027】
《RFID用アンテナ装置の作用》
次に、前記実施形態に係る方形ガラス基板を備えた4ループパターンアンテナ装置に例をとってその作用を説明する。方形ガラス基板20にはこれを四等分した4つの領域それぞれにアンテナパターンPが設けられているから、それぞれのアンテナパターンPにRFIDタグの取り付けられた物品を近づけたりその上に載せたりすると、それぞれのアンテナパターンPはRFIDタグに格納されたタグIDデータを受信することができる。一方、アンテナ装置10から受信データを受領するリーダ装置で各アンテナパターンPを判別することにより、このアンテナ装置10ではRFIDタグに格納されているタグIDデータに加えてガラス基板20上の位置情報に対応させて4種類のデータを送ることができる。またそれぞれの領域についてその全体を網羅するようにループパターンが設定されているので、ガラス基板20全体のいずれの位置でもRFIDタグの情報データを読み取ることができる。
【0028】
《応用例(テーブル家具)》
次に、前記実施形態のアンテナ装置10を用いたテーブル家具について説明する。図4Aはこのテーブル家具、ガラステーブル100の平面図、図4Bはその立面図である。前記実施形態と同様の4つのアンテナパターンPを有する方形ガラス基板120を備えたアンテナ装置110が、その四隅において4本の中空円筒状の支柱130によって支持されている。アンテナ装置110の上面にはガラステーブル100の天板を構成するガラス天板140が載置されている。アンテナパターンPはガラス基板120の上面に形成されており、リード線Lが接続されるフィーダ部Fを除き中間膜(図示せず)が接着されて保護されている。
【0029】
アンテナ装置110の下方には間隔を開けて制御部箱150が配置されていて、この制御部箱150はその四隅が支柱130によって支柱130の下端部からいくらか浮かされた位置に固定されている。この制御部箱150には、RFIDタグ情報データのリーダ装置と電源部等の周辺機器(図示せず)が収装されており、リーダ装置には4つのアンテナパターンPの各フィーダ部Fから支柱130を経由して制御部箱150に引き込まれているリード線Lが接続される。リーダ装置としては、13.56MHz用の汎用リーダ装置を種々用いることができるが、ここではアンテナ入力が4チャンネルあり4つのアンテナからの入力を識別することができるリーダ装置(例えば、タカヤ株式会社製「TR3-LD003D-4」形リーダライタ)を採用している。
【0030】
前記リーダ装置からの出力は、インターフェイス回路を介してパーソナルコンピュータ(PC)等に入力され、所定の情報処理が行われることになる。PCおよび電源部等の周辺回路機器は、必要に応じて前記制御部箱150内にリーダ装置とともに収装することができる。制御の応用例として、例えばDVDプレーヤの操作を考えてみる。いま図4Aに示すように、4つのアンテナパターンPを、アンテナ[1]〜アンテナ[4]として識別することにしたとする。DVDの収納ケースに「そのケースに入っているメディアがDVDであることを示す情報」と「そのDVDに収録されているコンテンツを特定する固有情報」とを少なくとも格納したRFIDタグが取り付けられているとする。DVDのケースをガラステーブル100の天板140の上に置くと、いずれのアンテナ[1]〜[4]によっても「置かれた物品がDVDであることとそのDVDのコンテンツ」を示す情報が読み取られる。同時にアンテナ[1]〜[4]のどのアンテナで読み取られたかがリーダ装置によって識別されるから、例えば、アンテナ[1]→メインメニュー、アンテナ[2]→本編再生、アンテナ[3]→スキップ、アンテナ[4]→バック、といったDVDプレーヤ操作系との対応付けをしておくと、DVDケースの置き場所によって異なる操作を簡単に行わせることができる。同様に、CD等他のメディアであることを識別して別の機器操作系に対応した動作をアンテナ毎に割り付ければ、メディアケースの置き場所によって種々の動作をさせることができる。
【0031】
また洋服のショウケースとして作成し、アンテナパターンの上で商品を置く場所によりコーディネートする服やスカート、ズボンなどを入れ変えて画面にだすなど商品のディスプレイや説明に応用できる。
【0032】
《RFID用アンテナ装置の変形例》
次に、本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例について説明する。図6Aはこの変形例の分解斜視図、図6Bはこの変形例の部分断面図である。後述するように、本変形例によりRFIDを施設の施錠開錠および入退室管理システムとして組み込むことが可能になる。たとえば部屋からの退室のも時にカードをかざすことを義務付ければ、部屋の使用状況や現在の利用人数などもシステム上で把握することが可能になる。
【0033】
RFID用アンテナ装置10’は、2枚のガラス基板20を備えており、その各ガラス基板20の片面には、先述した実施形態に係るRFID用アンテナ装置に形成されていたのと同様の導電膜によるループアンテナパターンPが形成されている。いずれかのガラス基板20(本変形例においては上側のガラス基板)のアンテナパターンPが形成されていない面には、ほぼその全体にアンテナパターンPと同様の導電性薄膜からなる電波シールド層Sを形成しておく。そして、一方のガラス基板20の電波シールド層Sの面と他方のガラス基板20のアンテナパターンPが形成されていない面とを互いに対向させて、その間に合わせ中間膜Mを介して密接させる。なお、アンテナパターンPを形成したガラス基板および電波シールド層Sを形成したガラス基板をどのように組み合わせても、2つのアンテナパターンPの間が電波シールド層Sによって隔てられている本発明の構成が得られる限り差し支えがない。また電波シールド層Sは、導電性薄膜以外にも、網入りガラスに用いられる金属メッシュやパンチングメタルのような金属シート材によって構成することもできる。電波シールド層Sは、必要に応じて接地してもよい。
【0034】
なお、図示の例ではアンテナパターンPを各面に一つ設置しているが、それぞれの面において2以上のアンテナパターンPを設けてももちろんよい。例えば先述した本発明の実施形態のように、それぞれの面を複数の領域に分割し、それぞれの領域をカバーするように複数のアンテナパターンPを設置するような構成としてもよい。さらにこの場合、それぞれの面において領域の分割数は必ずしも同一にする必要がなく、それぞれの面でアンテナパターンPの数を異ならせてもよい。また、先述の実施形態と同様に、感度向上用のループパターンを設けることも自由である。
【0035】
このような構成としたRFID用アンテナ装置10’によれば、ガラス基板20を挟んで対向するアンテナパターンPの間に導電性の電波シールド層Sが介在するので、いずれか一方のアンテナパターンPによって受信されたタグIDが誤って他方の(反対側の)アンテナパターンPによって受信されてしまうことがない。言い換えれば、図6A、図6Bに図示した例では、タグIDのデータを一方の側のアンテナパターンPで受信した場合と他方のアンテナパターンPで受信した場合とで区別して認識することができることになり、タグIDによって伝達される情報量を増加させることができる。
【0036】
《RFID用アンテナ装置変形例の応用》
上記の変形例に係るRFID用アンテナ装置を利用して、例えばある室内空間への人の出入りを管理するための入退出管理システムを構成することができる。図7Aに当該システムに用いられるガラスドアの正面図を、図7B、図7Cに図7Aのガラスドアに好適に用いることができるRFID用アンテナ装置の部分断面図を示す。
【0037】
この例では、建物内の壁78にガラスドア70が取り付けられている。説明の便宜上、紙面手前が室外、紙面奥側がガラスドア70によって区切られた室内であるとする。ガラスドア70はドアサッシ74に光透過性を有するドアガラス72が組み付けられてなり、ドアサッシ74が建物壁面にはめ込まれた外枠79に対して蝶番76によって取り付けられていることで、紙面前後方向に回動自在なドアを構成している。ドアガラス72の一部にはRFID用アンテナ装置10’が設けられている。このアンテナ装置10’は、ドアガラス72の対向する両表面側にそれぞれ形成されたアンテナパターンP1、P2と、それらパターンP1、P2の間を電磁気的に隔離する電波シールド層Sとを備えて構成されている。なお、図示していないが、タグIDの読み取りに応じてガラスドア70の解錠・施錠を行うオートロック装置を設備することができる。
【0038】
次に、このRFID用アンテナ装置10’の構成について、より詳細に説明する。図7Bはアンテナ装置10’の一実施例を示す部分断面図である。ドアガラス72は、2枚の板ガラス20を有し、それぞれの板ガラス20のアンテナ装置10’が設けられるべき部分にアンテナパターンP1、P2が片面ずつ形成されている。いずれかの板ガラス20のアンテナパターンP1、P2が形成されていない面には、導電性薄膜からなる電波シールド層Sが形成され、アンテナパターンP1、P2の間を電磁気的に隔離させる。2枚の板ガラス20は、アンテナパターンP1、P2が形成されていない面同士で合わせ中間膜Mを挟んで接着されてドアガラス72を構成する。この実施例では、アンテナパターンP1、P2がドアガラス72の両表面側に形成されているから、少なくともアンテナパターンP1、P2が保護されるように、光透過性を有する樹脂フィルム等をドアガラス72のそれぞれの面に貼り付けておくことが望ましい。また合わせ中間膜Mとしては、例えばポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)からなる厚さ0.1mm〜1.5mmの膜を用いることができる。
【0039】
図7Cは、アンテナ装置10’の別の実施例を示す部分断面図である。ドアガラス72は、3枚のガラス基板20を備えて構成されている。2枚のガラス基板20のそれぞれ片面には、アンテナパターンP1、P2が形成されている。3枚目のガラス基板20の一方の面には、導電性薄膜が形成されて電波シールド層Sを構成している。アンテナパターンP1、P2が形成された2枚のガラス基板20はアンテナパターンの側が内側となるように、その間に電波シールド層Sが形成された3枚目のガラス基板20を挟み込んで、それぞれの相隣接するガラス基板20の間に合わせ中間膜Mを挟んでそれぞれ接着する。このドアガラス72の場合には、各アンテナパターンP1、P2はドアガラス72の内側に配置されるので、先の実施例と異なり特別な樹脂フィルム等の保護材は不要である。なお、アンテナループパターンP1、P2の内側の領域は、部屋番号や適宜のロゴ、あるいはタグIDの読み取り位置であることを示す表示など、適宜の文字、数字、模様、ピクトグラムなどを転写印刷、サンドブラスト等の手法で配置するのに利用することができる。
【0040】
いずれの実施例の場合でも、各アンテナパターンP1、P2から引き出されたリード線Lは、ドアサッシ74内部を引き回して適当な位置から建物側の壁78へ取り出し、適宜のタグIDリーダ装置(図示省略)へ接続される。タグIDリーダ装置は、図示しない入退出管理システムへ読み取ったタグIDデータを、いずれのアンテナパターンで受信したかを示すIDとともに引き渡す。
【0041】
次に、本入退出管理システムの作用と効果について簡単に説明する。図7Aの紙面手前、室外側から室内へ入ろうとする人が、所定のRFIDタグが付された社員証等の身分証をガラスドア70のアンテナ装置10’に接近させると(かざすと)、読み取られたタグIDデータはリーダ装置を介して図示しないシステムサーバに転送される。システムサーバは、受け取ったタグIDデータが正規に登録された社員のものであるかどうかを照会し、正規データであればガラスドア70のロックを解除するとともに、当該タグIDの所有者が入室したことをシステムログに記録する。正規データであることが確認できなければ、ロック解除は行わず、例えば図示しない音声装置から注意を喚起するメッセージを出力するとともに、異常なアクセスがあった旨をシステムログに記録する等の処理を実行する。逆に室内から室外へ出る場合にも、同様の処理がなされる。システムとしては、室外側のアンテナで受信したか室内側のアンテナで受信したかを判別することで入退出を区別し、システムログにタグIDとともに記録することができる。したがって、このようなガラスドア70を建物内の各室出入り口に設備しておけば、どの部屋に誰が在室しているかをリアルタイムで把握するといった応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図である。
【図1B】図1AのRFID用アンテナ装置の部分断面図である。
【図2】(a)〜(c)は本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置において送受信用アンテナパターンに対して感度向上用アンテナパターンを積層させて設けた例を示す模式図である。
【図3A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面形状、アンテナパターン配置、および支持するための支柱配置の類型を示す模式図その1である。
【図3B】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面形状、アンテナパターン配置、および支持するための支柱配置の類型を示す模式図その2である。
【図4A】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図であり、円形ガラス基板20を三分割してアンテナパターンを配置し、その中心に支柱30を設けた例である。
【図4B】本発明の一実施形態に係るRFID用アンテナ装置の平面図であり、円形ガラス基板20を三分割してアンテナパターンを配置し、円形ガラス基板20の円周上に120°ピッチで3本の支柱30を設けた例である。
【図5A】本発明の一実施形態であるガラステーブルの平面図である。
【図5B】図4Bの立面図である。
【図6A】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を示す分解斜視図である。
【図6B】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を示す部分断面図である。
【図7A】本発明に係るRFID用アンテナ装置の変形例を利用して構成した入退出管理システム用ガラスドアの図である。
【図7B】図7Aのガラスドアに好適に用いられるRFID用アンテナ装置その1の断面図である。
【図7C】図7Aのガラスドアに好適に用いられるRFID用アンテナ装置その2の断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10、10’ RFID用アンテナ装置
20 ガラス基板
20a、20b、20c、20d 領域(ガラス基板20に区画された)
30、130 支柱(支持脚)
70 ガラスドア
100 ガラステーブル
140 ガラス天板
150 制御部箱
P、P1、P2、P3 アンテナループパターン
F フィーダ部
S 電波シールド層
M 合わせ中間膜
L リード線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
前記ガラス基板の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンと、を備え、
前記複数のアンテナパターンは、前記ガラス基板の平面をそのアンテナパターンの数で分割して得られる各領域のほぼ全体をそれぞれのパターンが取り囲むように隣接して設けられる、
ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナパターンの数で分割して得られる複数の領域の内、それらの面積において互いに相異なるものがあることを特徴とする請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項3】
前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のアンテナパターンが前記ガラス基板の一方の面に設けられており、そのガラス基板の他方の面の側にはそのほぼ全面に導電性薄膜が形成されて前記アンテナパターンへの不要な電波の入射を防止する電波シールド層を構成している、請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のRFID用アンテナ装置を備えるガラス天板またはガラス棚板が、一ないし二以上の支持脚にて略水平に支持されてなる、ガラス板材を利用した家具であって、
前記RFID用アンテナ装置のアンテナパターンがガラス基板の上面に設けられている、ことを特徴とするテーブル家具。
【請求項6】
前記各アンテナパターンからのリード線引き出し位置が、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定められていることを特徴とする請求項5に記載のガラス板材を利用した家具。
【請求項7】
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
そのガラス基板のそれぞれの面に少なくとも一つずつ設けられている、光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなるアンテナパターンと、
前記ガラス基板の厚み方向に相対向する前記アンテナパターンの間において、そのガラス基板のほぼ全面にわたって設けられた電波シールド層と、
を備えている
ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【請求項8】
前記電波シールド層が前記アンテナパターンと同一の導電性薄膜によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項9】
前記ガラス基板が、2枚の板ガラス材の間に導電性薄膜を挟み込んでなる合わせガラス構造となっており、当該導電性薄膜が前記電波シールド層を構成している請求項7に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項1】
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
前記ガラス基板の少なくとも一方の面に設けられている、それぞれが光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなる複数のアンテナパターンと、を備え、
前記複数のアンテナパターンは、前記ガラス基板の平面をそのアンテナパターンの数で分割して得られる各領域のほぼ全体をそれぞれのパターンが取り囲むように隣接して設けられる、
ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【請求項2】
前記アンテナパターンの数で分割して得られる複数の領域の内、それらの面積において互いに相異なるものがあることを特徴とする請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項3】
前記各アンテナパターンに沿って隣接するように、少なくとも一重のループ状導電膜パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項4】
前記複数のアンテナパターンが前記ガラス基板の一方の面に設けられており、そのガラス基板の他方の面の側にはそのほぼ全面に導電性薄膜が形成されて前記アンテナパターンへの不要な電波の入射を防止する電波シールド層を構成している、請求項1に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1に記載のRFID用アンテナ装置を備えるガラス天板またはガラス棚板が、一ないし二以上の支持脚にて略水平に支持されてなる、ガラス板材を利用した家具であって、
前記RFID用アンテナ装置のアンテナパターンがガラス基板の上面に設けられている、ことを特徴とするテーブル家具。
【請求項6】
前記各アンテナパターンからのリード線引き出し位置が、いずれかの支持脚に最も近接している位置に定められていることを特徴とする請求項5に記載のガラス板材を利用した家具。
【請求項7】
光透過性を有する、板状に形成されたガラス基板と、
そのガラス基板のそれぞれの面に少なくとも一つずつ設けられている、光透過性を有するループ状の導電性薄膜からなるアンテナパターンと、
前記ガラス基板の厚み方向に相対向する前記アンテナパターンの間において、そのガラス基板のほぼ全面にわたって設けられた電波シールド層と、
を備えている
ことを特徴とするRFID用アンテナ装置。
【請求項8】
前記電波シールド層が前記アンテナパターンと同一の導電性薄膜によって形成されていることを特徴とする請求項7に記載のRFID用アンテナ装置。
【請求項9】
前記ガラス基板が、2枚の板ガラス材の間に導電性薄膜を挟み込んでなる合わせガラス構造となっており、当該導電性薄膜が前記電波シールド層を構成している請求項7に記載のRFID用アンテナ装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【公開番号】特開2009−10865(P2009−10865A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−172384(P2007−172384)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【出願人】(899000079)学校法人慶應義塾 (742)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]