説明

光通信システム、光IDリーダ及び情報読取方法

【課題】識別情報を適切に伝達させ得るようにする。
【解決手段】光を通信媒体として、光IDタグに保持された識別情報を読み取る場合に、乱数発生手段から乱数を発生させ、乱数に対して固有の発信周波数の光を放射手段から放射させ、放射手段から光IDタグに放射され、該光IDタグによってその放射方向に反射され、かつ識別情報に基づいて変調された反射光に対する光電変換結果として得られる信号から、発信周波数の信号成分を抽出手段に抽出させ、信号成分を復調手段に復調させるようにした。
するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信システム、光IDリーダ及び情報読取方法に関し、小型の無線ICチップから識別情報を読み取る場合に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、バーコードに代わる物品の識別又は管理技術として、RFID(Radio Frequency IDentification)が注目されている。
【0003】
このRFIDでは、無線ICタグ(あるいは無線ICチップ)と呼ばれる小型の無線装置内に固有の識別情報を記憶し、この識別情報に基づいて物品の識別又は管理が行われる。
【0004】
この無線ICタグや、該無線ICタグから送信される無線信号から識別情報を読み取るリーダとしては種々のものが提案され、なかには、無線ICタグと、リーダとが光通信により識別情報を授受するようにしたものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
この特許文献1では、光IDリーダは、光IDタグに向けて光ビームを放射し、光IDタグから放射された光信号を受光して、光IDタグに固有の識別情報を読み取る光IDリーダ部を備えている。
【0006】
一方、光IDタグは、固有の識別情報を記憶するメモリと、光IDリーダから放射された光ビームを、メモリに記憶された識別情報で変調して光信号に変換する光変換部と、この変調された光信号を光ビームの入射方向に反射する光反射部とを備えている。
【0007】
この特許文献1によれば、空間中に近接して存在する複数の光IDタグの識別を離れた場所から行うことが可能となり、光IDリーダをリモコンのように用いて読み取ることが可能となる。
【特許文献1】特開2006−11948公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところがかかる構成の光IDタグでは、同じような入射角から複数の光ビームが放射された場合、反射する光はその入射方向に集まる(すなわち輻輳状態となる)ことによって、当該入射角から光ビームを放射した光IDリーダそれぞれに対し、識別情報が伝達されないあるいは同一でなる複数の識別情報が同時に伝達されるという問題があった。
【0009】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、識別情報を適切に伝達させ得る光通信システム、光IDリーダ及び情報読取方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するため本発明は、光を通信媒体として、光IDタグと光IDリーダとの間で識別情報を通信する光通信システムであって、光IDタグには、識別情報を保持する保持手段と、照射される光をその入射方向に反射させる反射手段と、反射された反射光を、保持手段に保持された識別情報に基づいて変調する変調手段とを設け、光IDリーダには、乱数を発生する乱数発生手段と、乱数に対して固有の発信周波数の光を放射する放射手段と、放射方向から到来する反射光を光電変換する光電変換手段と、光電変換手段により光電変換された結果得られる信号から、発信周波数の信号成分を抽出する抽出手段と、信号成分を復調する復調手段とを設けるようにした。
【0011】
この光通信システムでは、その光IDリーダによって放射され、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に対して、他の光IDタグから放射される反射光が輻輳した状態であったとしても、当該光IDリーダは、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に重畳される識別情報を抽出することができる。したがって、この光通信システムでは、光IDタグに近接して他の光IDタグがあり、かつその他の光IDタグに対して同じような入射角から光が照射された状況下にあったとしても、読取対象とされる光IDタグに保持された識別情報を、光IDリーダが読み取ることが可能となる。
【0012】
また本発明は、光を通信媒体として、識別情報が保持された光IDタグとの間で通信する光IDリーダであって、乱数を発生する乱数発生手段と、乱数に対して固有の発信周波数の光を放射する放射手段と、放射手段から光IDタグに放射され、該光IDタグによってその放射方向に反射され、かつ識別情報に基づいて変調された反射光を光電変換する光電変換手段と、光電変換手段により光電変換された結果得られる信号から、発信周波数の信号成分を抽出する抽出手段と、信号成分を復調する復調手段とを設けるようにした。
【0013】
この光IDリーダでは、その光IDリーダによって放射され、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に対して、他の光IDタグから放射される反射光が輻輳した状態であったとしても、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に重畳される識別情報を抽出することができる。したがって、この光IDリーダでは、光IDタグに近接して他の光IDタグがあり、かつその他の光IDタグに対して同じような入射角から光が照射された状況下にあったとしても、読取対象とされる光IDタグに保持された識別情報を読み取ることが可能となる。
【0014】
さらに本発明は、光を通信媒体として、光IDタグに保持された識別情報を読み取る情報読取方法であって、乱数発生手段から乱数を発生させる第1のステップと、乱数に対して固有の発信周波数の光を放射手段から放射させる第2のステップと、放射手段から光IDタグに放射され、該光IDタグによってその放射方向に反射され、かつ識別情報に基づいて変調された反射光に対する光電変換結果として得られる信号から、発信周波数の信号成分を抽出手段に抽出させる第3のステップと、信号成分を復調手段に復調させる第4のステップとを設けるようにした。
【0015】
従って、この情報読取方法では、その光IDリーダによって放射され、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に対して、他の光IDタグから放射される反射光が輻輳した状態であったとしても、照射対象となった光IDタグから戻り光として放射される反射光に重畳される識別情報をその光IDリーダが抽出することができる。したがって、この情報読取方法では、光IDタグに近接して他の光IDタグがあり、かつその他の光IDタグに対して同じような入射角から光が照射された状況下にあったとしても、読取対象とされる光IDタグに保持された識別情報をその光IDリーダが読み取ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、光IDタグに近接して他の光IDタグがあり、かつその他の光IDタグに対して同じような入射角から光が照射された状況下にあったとしても、読取対象とされる光IDタグに保持された識別情報をその光IDリーダが読み取ることができるようにしたことにより、識別情報を適切に伝達させ得る光通信システム、光IDリーダ及び情報読取方法を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下図面について、本発明を適用した一実施の形態を詳述する。
【0018】
(1)本実施の形態による光通信システムの全体構成
図1において、本実施の形態による光通信システム1の全体構成を示し、複数の光IDタグ2i(i=1、2、3、……、又はm(mは整数))と、複数の光IDリーダ3j(j=1、2、3、……、又はn(nは整数))とによって構成される。
【0019】
光IDタグ2iは、それぞれ、所定の物品に設けられるものであり、当該光IDタグ2iには、設置対象となるその物品に関する識別情報が保持される。
【0020】
具体的には、例えば、光IDタグ2〜2が製品管理に用いられる場合、各製品に対して光IDタグ2iがそれぞれ設けられ、当該光IDタグ2iには、製品の製造番号及び製造年月日など、その製品に関する製造情報が識別情報として保持される。
【0021】
また例えば、光IDタグ2〜2が情報提供に用いられる場合、各広告媒体に対して光IDタグ2iがそれぞれ設けられ、当該光IDタグ2iには、自社のホームページのURL(Uniform Resource Locater)や、広告製品に関する情報など、その広告媒体に関する提供情報が識別情報として保持される。
【0022】
これら光IDタグ2iは、照射される光ビームL1を、その光ビームの照射方向に反射させるとともに自己に保持される識別情報に基づいて変調し、この結果得られる反射光ビームL2を放射するようになされている。
【0023】
一方、光IDリーダ3jは、それぞれ、専用の可搬型端末として形成され又は携帯電話機PDA(Personal Digital Assistants)等の可搬型端末に搭載されるものであり、個々のユーザに割り当てられるものである。
【0024】
光IDタグ2iに保持される識別情報を読み取る場合、ユーザは、自己に割り当てられた光IDリーダ3jを、読取対象の光IDタグ2iに向けて、該光IDリーダ3jから光ビームL1を放射させるようになされている。
【0025】
この場合、光IDリーダ3jは、その光ビームが読取対象の光IDタグ2iから反射された反射光L2に基づいて、その反射光に重畳された該光IDタグ2iの識別情報を抽出するようになされている。
【0026】
このようにこの光通信システム1は、ユーザに対して、光IDリーダ3jをあたかもリモートコントローラとして用いさせることができるようになされている。
【0027】
(2)光IDタグの構成
次に、光IDタグ2〜2の構成について説明するが、これら光IDタグ2〜2の構成は同一であるため、説明の便宜上、ここでは光IDタグ2の構成について図2を用いて説明する。
【0028】
この図2において、光IDタグ2は、受光部11、蓄電部12、反射量変換部13及びメモリ14を有し、該反射量変換部13は、反射板21a、LCD(Liquid Crystal Display)21b及び偏向板21cを順次積層した構造でなる光学ユニット21と、LCD21b及びメモリ14に結線された変調回路22とよって構成される。
【0029】
この光IDタグ2では、例えば光IDリーダ3から光ビームL1が照射された場合、受光部11は、この光ビームL1を光電変換する。蓄電部12は、この光電変換に応じて誘起される電圧を蓄え、所定の閾値を越えると、該電圧を反射量変換部13の変調回路22に供給する。
【0030】
変調回路22は、蓄電部12から供給される電圧を待ち受け、該電圧を受けた場合には変調処理を開始する(図3:SP0)。すなわち変調回路22は、蓄電部12から供給される電圧を駆動電圧として起動し(図3:SP1)、メモリ14に記憶された識別情報を読み出す(図3:SP2)。
【0031】
そして変調回路22は、例えばマンチェスターコーディングと呼ばれる変調方式に基づいて、蓄電部12から供給される電圧を、メモリ14から読み出した記憶された識別情報に応じて変調し、この変調結果を光学ユニット21のLCD21bに与える(図3:SP3)。LCD21bでは、この識別情報に応じた電圧の可変に伴って、その液晶配向が変化することになる。
【0032】
変調回路22は、かかるLCD21bの液晶配向を、蓄電部12からの電圧供給が停止されるまで可変し続け、該電圧供給が停止された場合には(図3:SP4(Y))、変調処理を終了する(図3:SP5)。
【0033】
一方、この反射量変換部13の光学ユニット21では、光IDリーダ3から照射される光ビームL1は、偏向板21cを介して、特定の偏光成分の光のみが通過し、該偏向板21cによって選定された光は、反射板21aを介して、該反射板21aの入射方向(つまり照射対象の光IDリーダ3の方向)に反射する。
【0034】
そして、反射板21aによってその入射方向に反射された光は、LCD21Bを介して、該LCD21Bでの液晶配向にしたがってその偏光状態が可変し、この偏光状態に応じた出射光量となり、この光が偏向板21cを介して反射光L2として出射する。
【0035】
したがって、光IDリーダ3から反射量変換部13に照射される光ビームL1が、例えば図4(A)に示すように単位時間当たり一定の光量のものとした場合、その光ビームL1が照射された光IDタグ2から放射される反射光L2は、例えば図4(B)に示すように、メモリ14に記憶された識別情報に応じて可変された状態となる。
【0036】
このように光IDタグ2は、バッテリーレス状態において、光IDリーダ3から照射される光ビームL1の反射光L2の出射光量を、メモリ14に記憶された識別情報に応じて可変してその反射光L2に識別情報を重畳し、当該識別情報を光IDリーダ3に伝達することができるようになされている。
【0037】
ここで、この実施の形態における光IDタグ2においては、かかる受光部11、蓄電部12、反射量変換部13及びメモリ14を、樹脂製の薄厚の筺体に収納するようになされており、これにより筺体外からの塵や水分の流入を防止しかつ簡易に持ち運びし得るようになされている。
【0038】
具体的には、例えば図5に示すように、蓄電部12は、矩形状でなる薄厚の筺体BD内の基板BSの所定位置に設けられ、受光部11は、該基板BSにおける一方の表面(光ビームL1が入射される側の面)の所定位置に設けられる。この受光部11の近傍であって基板BSの中央には、光学ユニット21が設けられ、該基板における他方の表面の所定位置には、変調回路22とメモリ14とがICチップCPとして設けられる。
【0039】
この図5に示す収納構造によれば、筺体BD表面のうち厚み方向における表面の一方だけを、光IDリーダ3jに対する光ビームL1の入射面とすることができ、基板BSの同一表面上にICチップCP及び光学ユニット21を設ける場合に比して、該光学ユニット21及び受光部11の実装面積を大きく確保することが可能となる。
【0040】
(3)光IDリーダの構成
次に、光IDリーダ3〜3の構成について説明するが、これら光IDリーダ3〜3の構成は同一であるため、説明の便宜上、ここでは光IDリーダ3の構成について図6を用いて説明する。
【0041】
この図6において、光IDリーダ3は、該光IDリーダ3全体の制御を司る制御回路30に対して、ユーザ操作に応ずる各種命令を送出する入力部31と、当該命令に対する処理やユーザ操作の内容を視覚及び聴覚を通じて知らせる出力部32と、光ビームを放射しその戻り光に重畳された識別情報を抽出する情報抽出部33とを結線して構成される。
【0042】
この制御回路30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、クロック発生器及びフラッシュメモリを含むコンピュータ構成となっている。
【0043】
制御回路30は、入力部31から識別情報の読み取り命令を受けた場合、情報抽出部33を介して光IDタグ2に保持された識別情報を取得し、この識別情報をフラッシュメモリに記憶するとともに、当該識別情報の内容を出力部32を介して通知するようになされている。
【0044】
ここで、この実施の形態における情報抽出部33を図7に示す。この図7において、情報抽出部33は、送信処理部41と、受信処理部42とによって構成される。
【0045】
送信処理部41は、乱数発生器51、信号発生部52、振幅増幅器53及びLED(Light Emitting Diode)54でなり、この乱数発生器51は、制御回路30(図6)からの制御命令を受ける度に乱数を生成し、これを信号発生部52に送出する。
【0046】
この信号発生部52には、乱数と、発信周波数との対応付けがテーブルとして保持されている。信号発生部52は、このテーブルに基づいて、乱数発生器51から供給される乱数に対応する発信周波数を選択し、該選択した発信周波数の値を受信処理部42に送出する。
【0047】
また信号発生部52は、選択した発信周波数の信号を生成し、これを振幅増幅器53を介してLED54に印加する。この結果、LED54から、乱数に応ずる発信周波数の光ビームL1(図6)が放射される。
【0048】
このようにして送信処理部41は、その都度異なる発信周波数の光ビームL1を放射することができるようになされている。
【0049】
一方、受信処理部42は、PD(Photo Diode)55、検波部56、BPF(Band Pass Filter)57及び復調回路58でなり、このPD55は、光IDタグ2によって識別情報が重畳された状態で放射される反射光L2(図6)を光電変換し、この結果得られる交流信号を検波器56に送出する。
【0050】
検波部56は、この交流信号を検波し、該検波した交流信号の包絡線を検波信号としてBPF57に送出する。
【0051】
BPF57は、送信処理部41の信号発生部52から供給される発信周波数の値を設定する。そしてBPF57は、検波部56から供給される検波信号のうち、このとき設定した発信周波数の信号成分を抽出し、これを復調回路58に送出する。
【0052】
復調回路58は、BPF57から供給される信号成分に対して、光IDタグ2における変調回路22(図2)と同一の変調方式に対応する復調処理を施し、この結果得られる識別情報を制御回路30(図6)に送出する。この識別情報は、制御回路30(図6)によってその内部のフラッシュメモリに記憶される。
【0053】
このようにして受信処理部42は、送信処理部41により照射された光ビームL1(図6)の反射光L2(図6)から、その反射光L2に重畳された識別情報を抽出することができるようになされている。
【0054】
(4)情報抽出処理
次に、上述した光IDリーダ3における制御回路30の情報抽出処理手順を、図8に示すフローチャートを用いて説明する。但し、ここでは、光IDリーダ3は、光IDタグ2〜2(図1)のうち光IDタグ2に向けられている、つまり光IDリーダ3による識別情報の読取対象が光IDタグ2とされているものとする。
【0055】
また、図9に示すように、光IDタグ2に近接して例えば光IDタグ2及び光IDタグ2が存在しており、これら光IDタグ2、2に対して他の光IDリーダ3、3が光IDリーダ3と同じような入射角からその光IDタグ2、2の識別情報の読み取りを行っている状況下にあるものとする。
【0056】
制御回路30は、入力部31から識別情報の読み取り命令を受けると、この情報抽出処理手順をステップSP10において開始し、続くステップSP11において、乱数を発生するように乱数発生器51(図7)を制御するとともに、該乱数に応ずる発信周波数の信号を放射するように信号発信部52(図7)を制御し、このとき発生された乱数に応ずる発信周波数の光ビームL1(図6)をLED54(図7)から放射させる。
【0057】
この光ビームL1は、光IDタグ2に照射され、その光IDタグ2に保持された識別情報が重畳された反射光L2(図9)として、該光IDタグ2から放射されることになる。このとき、図9に示したように、反射光L2には、他の光IDリーダ3、3に対して光IDタグ2、2から到来する反射光L2、L2が輻輳することになり、この結果、光IDリーダ3には、他の反射光L2、L2が輻輳した状態で反射光L2が到来することとなる。
【0058】
制御回路30は、ステップSP12に進んで、ステップSP11で放射した方向から到来する反射光L2を光電変換し、続くステップSP13において、該光電変換結果に基づいて、ステップSP11で放射した光ビームL1の発信周波数の信号成分から、その信号成分に重畳された識別情報を抽出するように受信処理部42(図7)を制御する。
【0059】
そして制御回路30は、次のステップSP14において、抽出した識別情報の内容を通知するように出力部32を制御した後、ステップSP15に進んでこの情報抽出処理手順を終了する。
【0060】
このように制御回路30は、乱数に応ずる発信周波数の光ビームL1を放射させ、その反射光L2の受光結果のうち該発信周波数の信号成分から識別情報を抽出することによって、反射光L2に対して他の反射光L2、L2が輻輳する状態でも、読取対象である光IDタグ2に記憶された識別情報を忠実に取得し、これを通知することができるようになされている。
【0061】
(5)動作及び効果
以上の構成において、この光通信システム1の光IDリーダ3jは、読取操作に応じて乱数を発生し、その乱数に対して固有の発信周波数の光をLED54(図7)から放射させる。
【0062】
そして光IDリーダ3jは、このLED54から所定の光IDタグ2iに放射され、該光IDタグ2iによってその放射方向に反射され、かつ識別情報に基づいて変調された反射光をPD55(図7)を介して光電変換し、この光電変換された結果得られる信号から、発信周波数の信号成分をBPF57(図7)を介して抽出し、その信号成分を復調回路58(図7)を介して復調する。
【0063】
したがって、この光IDリーダ3jは、照射対象となった光IDタグ2(図9)から戻り光として放射される反射光に対して、他の光IDタグ2、2(図9)から放射される反射光が輻輳した状態であったとしても、照射対象となった光IDタグ2から戻り光として放射される反射光に重畳される識別情報を抽出することができる。
【0064】
これによりこの光通信システム1では、例えば電車の中吊り広告に光IDタグ2iが設けられており、その光IDタグ2iに対して、複数のユーザが同時に、自己の光IDリーダ3jを用いて光IDタグ2iに保持された識別情報の読み取りを行った場合等、光IDタグ2に近接して他の光ICタ2、2グがあり、かつその他の光IDタグ2、2に対して同じような入射角から光が照射された状況下にあったとしても、読取対象とされる光IDタグ2に保持された識別情報をその光IDリーダ3が読み取ることが可能となる。この結果、光通信システム1では、光IDタグ2iにおける配置の制約を低減することが可能となる。
【0065】
以上の構成によれば、光IDタグ2iの配置状態や、該光IDタグ2iに対する光ICリーダの読取状況にかかわらず、識別情報を適切に伝達させ得る光通信システム1を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、物品を識別する、あるいは、物品を管理する分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本実施の形態による光通信システムの全体構成を示す略線図である。
【図2】光IDタグの構成を示すブロック図である。
【図3】変調処理手順を示すフローチャートである。
【図4】照射光と戻り光の光量変化の説明に供する略線図である。
【図5】光IDタグの収納構造を示す略線図である。
【図6】光IDリーダの構成を示すブロック図である。
【図7】情報抽出部の構成を示すブロック図である。
【図8】情報抽出処理手順を示すフローチャートである。
【図9】戻り光の輻輳の説明に供する略線図である。
【符号の説明】
【0068】
1……光通信システム、2〜2……光IDタグ、3〜3……光IDリーダ、13……反射量変換部、21……光学ユニット、21a……反射板、21b……LCD、21c……偏向板、22……変調回路、30……制御回路、31……情報抽出部、51……乱数発生器、52……信号発生部、54……LED、55……PD、56……検波部、57……BPF、58……復調回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を通信媒体として、光IDタグと光IDリーダとの間で識別情報を通信する光通信システムであって、
上記光IDタグは、
上記識別情報を保持する保持手段と、
照射される光をその入射方向に反射させる反射手段と、
反射された反射光を、上記保持手段に保持された上記識別情報に基づいて変調する変調手段と
を具え、
上記光IDリーダは、
乱数を発生する乱数発生手段と、
上記乱数に対して固有の発信周波数の光を放射する放射手段と、
放射方向から到来する上記反射光を光電変換する光電変換手段と、
上記光電変換手段により光電変換された結果得られる信号から、上記発信周波数の信号成分を抽出する抽出手段と、
上記信号成分を復調する復調手段と
を具えることを特徴とする光通信システム。
【請求項2】
光を通信媒体として、識別情報が保持された光IDタグとの間で通信する光IDリーダであって、
乱数を発生する乱数発生手段と、
上記乱数に対して固有の発信周波数の光を放射する放射手段と、
上記放射手段から上記光IDタグに放射され、該光IDタグによってその放射方向に反射され、かつ上記識別情報に基づいて変調された反射光を光電変換する光電変換手段と、
上記光電変換手段により光電変換された結果得られる信号から、上記発信周波数の信号成分を抽出する抽出手段と、
上記信号成分を復調する復調手段と
を具えることを特徴とする光IDリーダ。
【請求項3】
上記光電変換手段は、
上記放射手段から近接する複数の上記光IDタグのうち任意の光IDタグに放射され、その光IDタグからの上記反射光を光電変換する
ことを特徴とする請求項2に記載の光IDリーダ。
【請求項4】
上記乱数発生手段は、
読取操作に応じて入力手段から入力される命令を受けるごとに上記乱数を発生する
ことを特徴とする請求項2に記載の光IDリーダ。
【請求項5】
上記復調手段により復調された結果得られる上記識別情報を通知する通知手段
をさらに具えることを特徴とする請求項2に記載の光IDリーダ。
【請求項6】
光を通信媒体として、光IDタグに保持された識別情報を読み取る情報読取方法であって、
乱数発生手段から乱数を発生させる第1のステップと、
上記乱数に対して固有の発信周波数の光を放射手段から放射させる第2のステップと、
上記放射手段から上記光IDタグに放射され、該光IDタグによってその放射方向に反射され、かつ上記識別情報に基づいて変調された反射光に対する光電変換結果として得られる信号から、上記発信周波数の信号成分を抽出手段に抽出させる第3のステップと、
上記信号成分を復調手段に復調させる第4のステップと
を具えることを特徴とする情報読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−266974(P2007−266974A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−89009(P2006−89009)
【出願日】平成18年3月28日(2006.3.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】