説明

光通信システムの振幅変調

【課題】分布型ラマン増幅器で光信号の特性を判定できるように、利得を制御できるようにする。
【解決手段】分布型ラマン増幅器内のポンプレーザ用の電源を、変調源208からの変調信号により振幅変調で変調する。フォトダイオード212で光信号を受信し、復調器214で、フォトダイオード212からの電気信号を復調して、光信号の振幅変調の受信値を示す信号を抽出する。復調器214で抽出された振幅変調の受信値を示す信号(第1の値)と、変調源208に入力した振幅変調の入力値(第2の値)とから、利得を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光通信システムに関し、より詳細には分布型ラマン増幅器内のチャネル信号およびポンプレーザ信号等の光通信システム内の信号の振幅変調に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信システムは、通信媒体として光ファイバ、情報媒体として光を用いる。例えば、光信号は、バイナリコードの情報を表すように変調した光ビームであってもよい。光を用いて情報を送る場合、該情報は受信機内の光検出器を用いて、光ビームから抽出する。光検出器は、光エネルギを電気エネルギに変換することで光放射を検出する電子部品である。一般的な光検出器はフォトダイオードと呼ばれ、光導電性と呼ばれる特性を備えた半導体からなり、フォトダイオードを構成する半導体材料に衝突した光の強度に応じて導電率が変化する。基本的に、フォトダイオードは、パッケージが透明性を有し半導体材料の内側の接合部に光エネルギが作用できることを除いては通常のダイオードと同様である。
【0003】
単一の光ファイバを効率的に用いるために、同じファイバ上で他の光信号と異なる波長で各データ信号が光信号を変調できるかぎり、多くの固有のデータ信号を同じファイバ上に送信できる。異なる光信号の波長が互いにわずかに異なるだけの場合、その送信方式は高密度波長分割多重方式(DWDM)と呼ばれる。DWDMを用いるネットワークでは、単一の物理的リンク(光ファイバ)で接続した2つの要素が複数の信号チャネルを用いて通信でき、ここで各信号チャネルは波長が異なる光信号である。
【0004】
光通信において問題となる因子の一つは減衰である。基本的に信号電力はある長さのファイバにわたって減衰し、送信リンクの受信側での信号の電力はその送信リンクの送信側での信号の電力より小さい。減衰を克服するために、長距離の光通信リンクは、いくつかのより短いスパンから構成される。最初の後の各スパンの始まりの中継器では、光信号を受け取った後、そのスパンの終わりで正確な受信が可能になるような電力レベルに再生する。残念ながら、これらの中継器では光信号を電気信号に変換する必要があり、この変換にはいくつかの本質的な欠点がある。
【0005】
幸いに、光信号を電気信号に変換することなく増幅する装置が開発されており、そのような装置の一例としてエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)がある。EDFAの背後にある概念は、ファイバにエルビウムを添加(増強)し、外部光源(例えばレーザ)からの信号を用いてエルビウムを励起すれば、ファイバを通過する光信号の電力を高められるということである。
【0006】
増幅器で光信号を増幅するのではなく、分布型増幅器が可能で伝送ファイバの一部が増幅器として機能する。このような分布型増幅方式の一つが「ラマン増幅」と呼ばれ、データ信号として同じ伝送ファイバに高出力レーザ光を送る(もしくはポンピング(励起)される)。ラマン増幅は、1928年にラマン効果と呼ばれる光散乱現象を発見した科学者にちなんで名付けられている。ラマン増幅は、「ポンプ」レーザと呼ばれるもので生成されることが多いレーザビームがシリカファイバを伝搬するとき、その内部に発生する誘導ラマン散乱を利用する。誘導ラマン散乱は非弾性散乱過程であり、入射ポンプ光子はそのエネルギを失って、低周波数のエネルギが低下した別の光子を生成する。つまり、所定の波長のポンプエネルギが、より長い波長において信号を増幅し利得を提供する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在のところ、分布型ラマン増幅は開ループ過程であり、ポンプ電力は制御できるが利得は制御できない。
前記のように、ラマン増幅を用いることが光信号に有用な場合、特にラマン増幅源が信号チャネルに隣接するとき、ラマン増幅は光信号に有害なこともわかっている。誘導ラマン散乱(SRS)によるチャネル間利得の影響は周知であるが、所定の光通信システムに対して決定することは難しい。
【0008】
様々な品質測定が、光通信システムの動作測定用に存在する。特定の光伝送システム上にデジタル信号を送る場合、用語「Q」を用いて、アイ開口について特定の光伝送システムの「品質」を記述できる。さらに、用語「OSNR」を用いて、所定の光システムに存在する光信号対雑音比を記述できる。
【0009】
特定のスパンでは、送信機、媒体および受信機の品質は「リンクバジェット」と呼ばれる単一の数字にまとめられる。該リンクバジェットは、そのスパン上で許容可能な減衰量、例えば30dBを表す。一つのスパン内に補助部品があれば、例えばサービス・チャネル用では、別の減衰ももたらされる。ある部品が信号電力を1dB低下させる場合、該リンクバジェットは29dBとなる。該リンクバジェットの1dBの低下は、「リンクバジェット損失」と呼ばれる。
【0010】
分布型ラマン増幅器の入出力でのトラフィック信号がわかれば、その増幅器の利得は比較的簡単に決定できる。しかし、トラフィック信号はこのような増幅器の操作側では入手できない。当然ながら、入力信号を利用せず、伝送ファイバ内のラマン増幅過程を閉ループ制御することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ある長さの伝送ファイバとポンプレーザを有する分布型ラマン増幅器内のポンプレーザ信号は、少量の振幅変調で変調される。本振幅変調はトラフィック波長に伝達し、ラマン増幅器制御システムで検出される。ラマン増幅器制御システムは、受信した変調と入力された変調がわかれば、分布型ラマン増幅器の利得を決定できる。次に、該ラマン増幅器制御システムはポンプレーザに送られる電力を制御して、所定の利得を得て、閉ループ利得制御を実現する。該分布型ラマン増幅器の利得の制御によって、分布型ラマン増幅器の電力での信号のより正確な制御が可能になる。好ましくは、出力信号レベルのより正確な制御は光リンクバジェットの改善につながり、QまたはOSNRのよりよい制御になる。
【0012】
本発明の別の形態では、決定した利得の増大によってある長さの伝送ファイバの遠端で光部品によって生じた反射の増大を決定できる。さらに、振幅変調によって受信機は特定のポンプレーザ信号を識別できる。これは、光伝送ファイバ全体での電力損失の決定に役立つ。
【0013】
さらに、光通信システムの送信側で、トラフィック波長の各々に別個の増幅ディザを配置できる。受信側、または送信機と受信機の間の監視点では、他のトラフィック波長に対応する振幅ディザがあるかどうかを所定のトラフィック波長で調べることができる。
【0014】
本発明の一形態によると、分布型ラマン増幅器のポンプレーザ信号の振幅変調を含む光ファイバ上の光信号の電力損失を容易に決定する方法を提供する。
【0015】
本発明の他の形態によると、光ファイバ上の光信号の電力損失を容易に決定する方法を提供する。該方法では、特定のポンプレーザ信号の振幅変調から分布型ラマン増幅器の特定のポンプレーザ信号を識別し、特定のポンプレーザ信号の電力を測定して、特定のポンプレーザ信号内に送られた電力の値を受け取り、送られた電力の値と特定のポンプレーザ信号の電力の測定から決定した電力から電力損失を決定する。
【0016】
本発明の別の形態では、分布型ラマン増幅器内の利得を決定する方法を提供し、該分布型ラマン増幅器はある長さの伝送ファイバとポンプレーザを有する。該方法では、分布型ラマン増幅器のポンプレーザ信号に入力された振幅変調の値を受け取り、分布型ラマン増幅器から出力された振幅変調の値を受け取り、入力された振幅変調の値と出力された振幅変調の値から利得を決定する。該発明の他の形態では、利得監視システムとポンプ電力制御器は、この方法を実行することで実現される。本発明の別の形態では、汎用コンピュータでこの方法を実行できるソフトウェア媒体を提供する。
【0017】
本発明のさらに別の形態によると、分布型ラマン増幅器内の利得の制御方法を提供し、この分布型ラマン増幅器はある長さの伝送ファイバとポンプレーザを有し、該方法では、ポンプレーザ制御電流を生成し、そのポンプレーザ制御電流を振幅変調して、変調したポンプレーザ制御電流を生成し、変調したポンプレーザ制御電流を分布型ラマン増幅器のポンプレーザに出力する。本発明の他の形態では、分布型ラマン増幅器用の利得制御はこの方法を実行することで実現される。本発明の別の形態では、汎用コンピュータでこの方法を実行できるソフトウェア媒体を提供する。
【0018】
本発明の他の形態によると、光ファイバ上の所定の光信号の特性を決定する方法を提供し、ここでは光ファイバを用いて、少なくとも一つの他の光信号を送信する。該方法では、送信機では他の光信号上に振幅変調を配置し、監視器では所定の光信号に振幅変調があるかどうかを調べる。
【0019】
本発明のさらに他の形態によると、光ファイバ上の所定の光信号の特性を決定する方法を提供し、ここでは光ファイバを用いて、別個のディザ信号を配置した少なくとも一つの他の光信号を送信する。該方法では、所定の光信号から受信電気信号を生成し、その受信電気信号をフィルタ処理して、少なくとも一つの別個のディザ信号を抽出し、その少なくとも一つの別個のディザ信号の振幅から所定の光信号の特性を決定する。本発明の他の形態では、受信機はこの方法を実行することで実現される。本発明の他の形態では、汎用コンピュータでこの方法の手順を実行できるソフトウェア媒体を提供する。
【0020】
本発明のさらに別の形態によると、光ファイバ上の所定の光信号の特性を容易に決定する方法を提供し、ここでは光ファイバを用いて、少なくとも一つの他の光信号を送信する。該方法では、別個の信号で少なくとも一つの他の光信号を振幅変調し、受信機では所定の光信号で検出したとき、別個の信号を他の光信号と対応付けることができる。
【0021】
本発明のさらに他の形態によると、他の光信号ごとに別個の入力ディザ信号を備えた少なくとも一つの他の光信号を振幅変調するための送信機を有する光通信システムを提供する。該光通信システムはさらに、所定の光信号から受信電気信号を生成するためのフォトダイオード、受信電気信号をフィルタ処理して、少なくとも一つの別個の出力ディザ信号を抽出するフィルタ、および少なくとも一つの出力ディザ信号の振幅から、所定の光信号の特性を決定するためのプロセッサを含む受信機を有する。
【0022】
本発明の他の形態と特徴は、添付の図面と共に、この発明の具体的な実施例の以降の説明を検討することで、当業者には明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1には、典型的な分布型ラマン増幅器100とラマン増幅器制御システム101が示されている。該ラマン増幅器100はポンプレーザ102とスタブ118を有し、ある長さの光伝送ファイバ116上で機能する。該ラマン増幅器制御システム101は、ポンプ電力制御器106の制御下のポンプ電源104を有する。ある長さの光伝送ファイバ116はスパンとも呼ばれ、各端部はEDFA(図示せず)で終端できる。
【0024】
図2を参照すると、該ラマン増幅器100は既知のものであるが、修正されたラマン増幅器制御システム201が導入されている。該ラマン増幅器制御システム201は、変調信号を生成するための変調源208、ポンプ電源104、ポンプ電源104の電力と変調源208の電力を合計するための加算器210、光伝送ファイバ116のタップカプラ218からの出力光信号を受け取るためのフォトダイオード212、フォトダイオード212で受信出力信号の変調を検出するための復調器214、光伝送ファイバ116から受信信号の変調の値と、変調源208からポンプ電源104の出力に入力された変調の値を受け取るためのポンプ電力制御器206を有する。プロセッサ230とメモリ232を有するポンプ電力制御器206の出力を用いて、該ポンプ電源104を制御する。該プロセッサ230には、本発明の典型的な方法を実行するために、ソフトウェア媒体234からラマン増幅器制御ソフトウェアをロードすることもでき、ソフトウェア媒体234は、リモート源からダウンロードしたファイルを含むディスク、テープまたはランダム・アクセス・メモリであってもよい。
【0025】
図4には、4つのポンプレーザ402A、402B、402C、402Dを有する分布型ラマン増幅器400の制御が示されている。各ポンプレーザ402A、402B、402C、402Dは対応するスタブ418A、418B、418C、418Dを有し、そこを介して伝送ファイバ416にエネルギを送る。また、ポンプレーザ402A、402B、402C、402Dの出力を単一の結合器(図示せず)で結合して、伝送ファイバ416に導入することもできる。該制御はラマン増幅器制御システム401で提供され、該ラマン増幅器制御システム401はタップカプラ420を介して、伝送ファイバ416上の信号の値を受け取る。
【0026】
図5には、ラマン増幅器制御システム401の部品が示されている。制御はポンプ電力制御器506で実現され、ポンプ電力制御器506は制御下の各ポンプレーザに対応する復調器を有する一組の復調器514A、514B、514C、514Dから入力を受け取る。各復調器514A、514B、514C、514Dは、フォトダイオード512から同じ電気信号を受け取り、フォトダイオード512はスタブ420から光信号を受け取る。変調ユニット530Aは、ポンプ電源504A、変調源508Aおよび加算器510Aを有し、ポンプ電源504Aと変調源508Aの出力を結合する。該ポンプ電源504Aはポンプ電力制御器506の制御下にあり、該変調源508Aはポンプ電力制御器506に変調レベルを報告する。一組の残りの変調ユニット530B、530C、530Dは残りの3つのポンプレーザ402B、402C、402Dに対応し、ポンプレーザ402Aに対応する該変調ユニット530Aのそれと類似の構造を有する(図4)。
【0027】
図1に示した典型的な分布型ラマン増幅器システムにおいて、ポンプレーザ102は光ファイバ・システムの光伝送ファイバ116内にレーザ光を送る。典型的なポンプレーザ波長は、1425〜1500nmである。ポンプ周波数からのエネルギは、ラマン効果を介してトラフィック波長(一般に1530〜1603nm)に伝達される。これは、ファイバに沿って分布したトラフィック波長に利得を提供する。光伝送ファイバ116に送られたレーザ光の電力は、ポンプレーザ102に送られた電流の制御によっても設定できる。本制御電流は、ポンプ電力制御器106の制御下で、ポンプ電源104からポンプレーザ102で受け取る。これは、ポンプ電力用のラマン増幅器制御システム101によって提供された制御を備えた開ループ過程であり、分布型ラマン増幅器100の利得用ではない。
【0028】
概略において、該光伝送ファイバ116上の光信号の利得の決定は、分布型ラマン増幅器100のポンプレーザ102の出力で、信号を振幅変調することで容易になる。本振幅変調によって、該ポンプ電力制御器206は分布型ラマン増幅器100によって導入された利得を決定できる。この利得がわかると、ポンプ電力制御器206は利得の閉ループ制御を実現できる。振幅変調した信号によってさらに、ラマン増幅器制御システム201は光伝送ファイバ116の端部での反射性の変化を認識して、反射率計として機能できる。さらに、該振幅変調によって特定のポンプレーザ信号の識別が可能で、送信された電力がわかれば、受信機はある長さの光伝送ファイバ116の全体での電力損失を決定できる。
【0029】
動作中、ポンプレーザ102への電力の供給は、ポンプレーザ信号が変調されるように少量の振幅変調で変調する。好ましくは、該振幅変調は低周波数、例えば10〜1000Hzで提供する。該周波数は、効率的なエネルギ伝達のために十分に低く選択すべきである。特に、ラマン増幅器が動作しているスパンの端部のEDFAは振幅変調をブロックし、次にスパンで振幅変調周波数を再利用できる。本ポンプレーザ信号の振幅変調はトラフィック波長に伝達し、フォトダイオード212を用いて、ラマン増幅器制御システム201で検出する。該ポンプ電力制御器206内のプロセッサ230は、受信した変調の値を受け取る。該プロセッサ230は、(変調源208から)入力された変調の信号レベルがわかれば、分布型ラマン増幅器100によって提供された利得を決定できる。次に、ポンプ電力制御器206は、所定の利得を与えるために、ポンプ電源104によってポンプレーザ102に送られた電力を制御して閉ループ制御を実現する。
【0030】
図3には、分布型ラマン増幅器100を制御しながら、該ポンプ電力制御器206によって実行される手順が概略的に示されている。まず、該ポンプ電源104には、ポンプ電力制御器206で基準値のポンプ電力を提供する(手順302)。該変調源208は、入力された変調信号を加算器210に送ると同様に、入力された変調信号の値をポンプ電力制御器206に送る(手順304)。該フォトダイオード212は、該ラマン増幅器100の出力で光信号を受け取り、それを電気信号に変換する。該復調器214は、この電気信号から受信した変調信号を抽出し、受信した変調信号の値をポンプ電力制御器206に送る(手順306)。入力された変調と受信した変調の両方の値を受け取ると、該ポンプ電力制御器206は次に進み、分布型ラマン増幅器100用の利得を決定できる(手順308)。手順308で決定した利得と所定の望ましい利得に基づいて、該ポンプ電力制御器206はポンプ電源104に送られるポンプ電力値を調整できる。
【0031】
好ましくは、特に伝送ファイバが複数の波長(信号チャネル)を伝達するWDM伝送システムで用いる場合、複数の波長の各々の増幅に対して制御を行うことができる。図4に示したように、該分布型ラマン増幅器400は、4つのポンプレーザ402A、402B、402C、402Dを有し、各々がラマン増幅器制御システム401の制御下にある。図5を参照すると、他の変調ユニット530B、530C、530D内の変調源によって提供された変調から、変調ユニット530A内の変調源508Aによって提供された変調を区別するために、該変調は2つまたは3つの周波数の組み合わせであってもよい。例えば、既存のトーンダイヤリング電話用の2重トーン多重周波数(DTMF)信号を生成するために用いられるものと同様の方式を用いて、ポンプ電源504Aによって提供された電力を振幅変調できる。本変調方式によって、復調器514Aは変調源508Aによって提供された変調を認識できる。また、変調を符号化して、変調源508Aを識別することもできる。
【0032】
当業者には明らかなように、復調器514A、514B、514C、514Dは信号処理技術を用いて実装できる。別の変調方式では、復調器514A、514B、514C、514Dは同調フィルタを有し、各々が別個の波長を選択するように実装でき、分散素子と検出器アレイの組み合わせを有するように実装することもできる。後者の実装は、各波長で出力された変調の値に加えて、光伝送ファイバ116から受け取った信号の平均電力の値を示すこともできる。
【0033】
既存の制御下では、例えば該ラマン増幅器制御システム101(図1)と同様の制御システムを用いて、4つのポンプレーザの各々を制御する場合、ラマン効果は同一のポンプレーザ出力であっても、異なる波長のトラフィック信号に様々な量のエネルギを伝達できる。このエネルギ伝達の相違によって、ラマン誘起利得チルトがもたらされる。このような利得チルトは、図6の波長と利得の関係のグラフ600によって示され、ここでトラフィック波長はλA、λB、λC、λDで示されている。しかし、ラマン増幅器制御システム401の制御下では、各ポンプレーザ402A、402B、402C、402Dによる利得を識別し測定できる。従って、利得チルトの量も測定、評価し、必要であれば一つ以上のトラフィック波長に入力された利得の制御を介して修正できる。
【0034】
我々は所定のポンプレーザ上の変調量をrpとして定義でき、rpは変調によるポンプレーザの光電力の二乗平均の平方根(RMS)の変動<δP>と、光ポンプ電力の平均<P>の二乗の比を表す。
【0035】
【数1】

【0036】
これは、相対強度雑音(RIN)と類似している。我々は、ラマン増幅器の場合、光伝送ファイバ上の信号の変調量(r)が(式2)で与えられることを示すことができる。
【0037】
【数2】

【0038】
ここで<δP>は光伝送ファイバ上の信号の光電力の変調による二乗平均の平方根(RMS)の変動、<P>は光伝送ファイバ上の信号の平均光電力、Gは周波数fでの振幅変調を備えたポンプレーザによって提供されたラマン利得の量、Vは信号波長の群速度、αはポンプレーザ波長でのファイバの減衰(ネーパ/km)、Lはファイバの長さ、Tはファイバの伝達時間、Leffはファイバの有効長である。
【0039】
【数3】

【0040】
ファイバが長い場合(最も長距離の伝送システムの場合)、(式3)は(式5)で近似できる。
【0041】
【数4】

【0042】
(式5)からわかるように、ポンプレーザ信号からその信号への変調の伝達関数はローパス・フィルタである。典型的なファイバ特性では、低周波減衰は約1kHzである。従って、振幅変調の周波数は、約10〜1000Hzの範囲から選択できる。
【0043】
従って、特定のポンプレーザ波長に配置した振幅変調の変調深さがわかり(rを与える)、所定の信号チャネルに伝達された変調の変調深さを測定することで(rを与える)、ポンプレーザによって提供される線形利得の量(G)は(式6)となる。
【0044】
【数5】

【0045】
各信号チャネルに対する変調深さ(r)を測定することで、各信号チャネルに各ポンプレーザが与える利得の相対量を決定できる。
【0046】
i番目のポンプレーザによって波長λの信号に与えられる利得(GRi)は、(式7)で与えられ、ここでは全部でN個のポンプレーザがあり、別個の周波数fで変調する。
【0047】
【数6】

【0048】
信号が受ける全ラマン利得は、各ポンプレーザからの利得の合計となる。
【0049】
【数7】

【0050】
各信号チャネルの全利得は、最適な利得スペクトルを生成するように、相対的なポンプ電力を最適化するために役立つ。それは、各ポンプレーザが全利得形状に与える利得寄与を知ることにも役立ち、制御ルーチンを適切に最適化できる。
【0051】
さらに、該ラマン増幅器制御システム201は、光伝送ファイバ116の利得以外の面を監視することもできる。例えば、変調源208によって送られた変調の増加がないにもかかわらず、復調器214が受け取った振幅変調の量が増加した場合、光伝送ファイバ116の遠端の光部品によって生じた反射が増大したことを意味する。従って、該ラマン増幅器制御システム201は、反射率計として機能することもわかる。また、通常の条件下で受け取った反射量の近似値がわかれば、反射量が閾値を超えたときに、ポンプレーザ102へ送られる電力を遮断できる。このような高い反射量は、コネクタの汚染、ファイバの損傷または不整合示しているかもしれない。
【0052】
ポンプレーザに対してポンプ電源によって供給された電流に符号化振幅変調を加えることを有する特定のポンプレーザ信号の生成をファイバスパンの一端で行い、特定のポンプレーザ信号の受け取りをそのファイバスパンの他方の端部で行うこともできる。符号化振幅変調によって、受信側は特定のポンプレーザ信号を識別できる。次に、受信側はこの信号の電力を決定できる。光サービス・チャネルを用いて、ポンプレーザに供給された電力量を受信側に示すこともできる。ポンプレーザに供給された電力量と受け取った電力量がわかれば、ファイバに対応する電力損失量も決定できる。
【0053】
当然のことながら、分布型ラマン増幅器100のポンプレーザ102の出力でのポンプレーザ信号の振幅変調方式は、該ポンプレーザ102に送られる電流を制御することに限定する必要はない。例えば、該ポンプレーザ102を生成した後に、透過率を制御可能なレンズによってポンプレーザ信号を振幅変調してもよい。
【0054】
前記のように、誘導ラマン散乱(SRS)を用いて、光通信システムの性能を増大させることができるが、いくつかの有害な影響ももたらす。特に、SRSは、送信機から受信機に送られる信号チャネル間にクロストークをもたらす。前記の振幅変調を用いて、SRS誘導の増大を容易に決定できるように、振幅変調を用いてSRS誘導障害を容易に決定できる。ラマン増幅と共に上記で用いた振幅変調と区別するために、下記で用いる振幅変調は「ディザ」と呼ぶ。
【0055】
前記のように、同調フィルタまたはフィルタアレイを用いて、別個の波長を選択または区別する場合、信号チャネル間のチャネル間利得も測定できる。特に、測定できるのは誘導ラマン散乱(SRS)によるチャネル間利得であり、これはチャネル間SRSクロストークとしても知られる。本チャネル間SRS利得測定を実現するために、光通信システムの送信側で信号チャネルの各々に別個の振幅ディザを配置する。所定の信号チャネルに配置したディザの大きさは、前もって設定した変調深さによる所定の信号チャネルの出射電力に対応する。光通信システムの受信側では、図5に示したように、一つの復調器514で所定の信号チャネル(波長)を光学的に区別できる。本信号チャネルが光学的に区別されると、他の信号チャネルに配置した別個のディザの各々の寄与が測定できる。
【0056】
信号チャネルBで測定される信号チャネルAと対応するディザの振幅は(光学的に区別した後)、信号チャネルAから受けた信号チャネルBのSRS利得の量に比例する。ここで用いられる「利得」は一般に信号を増大するが(つまり利得>1)、信号を減衰させることもあり(つまり0<利得<1)、この場合「デプレッション」と呼ばれる。同様に、他の信号チャネルの各々から各信号チャネルが受けるチャネル間SRS利得の量を全て測定できる。
【0057】
なお、検出点は光学系内の任意の光回路パックであってもよく、ここで「回路パック」は光学フィルタ、送信機、受信機、光スイッチ、光増幅器等を有するように定義される。好ましくは、光学系におけるチャネル間SRS利得の測定は、その光学系の状態を表示できる。さらに、チャネル間SRS利得を測定するためのシステムは、制御システム用の監視システムとして機能でき、本制御システムはチャネル間SRS利得を低減するように構成できる。信号チャネル間の過度のチャネル間SRSは、信号チャネルに光学的雑音損失をもたらし、光電力を低下させる。
【0058】
さらに、信号チャネルBで測定した信号チャネルAに対応するディザの大きさは、信号チャネルAから信号チャネルB上へのチャネル間SRS誘導データクロストークの量に比例する。過度のチャネル間SRS誘導データクロストークは、光学系の性能に影響を与える。本比例の度合いは、ディザの周波数、ファイバの分散マップ、および信号チャネルの波長の知識を与えることで決定できる。特定の信号チャネルの場合、受信側では特定の信号チャネルに対応するディザの大きさを検出し、事前に設定したそのディザの変調深さの知識と組み合わせて、受信側でその信号チャネルの出射電力を決定できる。その結果、光学的に区別した後、信号チャネルAで検出した他の信号チャネルからの各ディザの大きさを合計することで(事前に設定した変調深さと共に)、信号チャネルA上での全チャネル間SRS誘導データクロストークを決定できる。
【0059】
図7では、DWDMシステム700は送信ノード702、光ファイバ716およびクロストーク監視器706を有する。該送信ノード702はN個のチャネル送信機710A、710B、…、710N(一般にチャネル送信機710と呼ぶ)を有し、各々が多重化器/逆多重化器(MUX/DEMUX)708に波長チャネルを提供する。該送信ノード702はさらに、報告チャネル受信機704を有する。該MUX/DEMUX708は、該チャネル送信機710から受け取ったチャネルを多重化し、多重化信号をファイバ716上の受信ノード(図示せず)に送る。さらに、MUX/DEMUX708は報告チャネルを受け取り、その報告チャネル信号を報告チャネル受信機704に送る。
【0060】
DWDMシステム700の送信側では、システム制御ユニット712で制御したとおりに、各チャネル送信機710で各チャネルに送信パラメータを与えることができる。このようなパラメータには、出射電力、信号チャネル波長、および別個のディザの振幅と周波数が含まれる。また、各チャネル送信機710は、レーザ源と減衰器/増幅器(図示せず)を有することができ、各信号チャネル用に送信パラメータを調整できる。さらに、チャネル間SRS利得の測定は、報告チャネル受信機704からシステム制御ユニット712で受け取ることができる。該システム制御ユニット712には、本発明の典型的な方法を実行するためにソフトウェア媒体714から送信機制御ソフトウェアをロードすることもでき、ソフトウェア媒体714はリモート源からダウンロードしたファイルを含むディスク、テープまたはランダム・アクセス・メモリであってもよい。
【0061】
該クロストーク監視器706では、受信スタブ720を用いてファイバ716上にある信号チャネルを受け取る。送信ノード702に報告するために、報告スタブ722を用いてファイバ716上に報告チャネルを配置する。
【0062】
クロストーク監視器706の部品は、図8で詳しく検討できる。フォトダイオード812は、受信スタブ720から光信号を受け取る。一組の復調器814A、814B、…、814Nは各信号チャネルに対応する復調器を有し、各々フォトダイオード812から同じ電気信号を受け取る。電気信号を復調し、おそらくフィルタ処理した後、信号チャネルはSRS利得決定ユニット806に送られる。該SRS利得決定ユニット806は、各信号チャネル上の他の信号チャネルからのディザの量を決定し、本情報を報告チャネル送信機804に報告できる。報告チャネルは、該報告チャネル送信機804によって報告スタブ722上に配置できる。
【0063】
該SRS利得決定ユニット806は、信号チャネルをフィルタ処理して、一つ以上のディザがあるかどうかを識別するための一組のフィルタ(図示せず)と、他の信号チャネルの特定の一つと、特定の周波数のディザを対応付けるためのプロセッサ(図示せず)を有する。該SRS利得決定ユニット806には、本発明の典型的な方法を実行するためにソフトウェア媒体824からSRS利得決定ソフトウェアをロードすることもでき、ソフトウェア媒体824はリモート源からダウンロードしたファイルを含むディスク、テープまたはランダム・アクセス・メモリであってもよい。
【0064】
なお、ラマン増幅器制御システム201(図2)の動作(ポンプレーザの振幅変調、信号チャネルの区別、利得の監視)は、該送信ノード702(図7)と受信ノード(図示せず)の間の点で一般に行われる。図のように、該送信ノード702と受信ノードの間の点で、該クロストーク監視器706の動作(信号チャネルの区別、ディザの測定、クロストークの報告)を行うこともできるが、クロストーク監視器の動作は受信ノードで行うことがより自然である。該信号は受信機の機能の一部として受信機で光学的に区別し、クロストークの区別の報告は受信機の別の特徴であってもよい。
【0065】
当業者には明らかなように、該報告チャネル送信機804と報告チャネル受信機704、およびいわゆるファイバ716の報告チャネルの組み合わせは、ネットワーク要素の間の通信を一般的に代表するものである。様々なネットワーク要素間の通信を可能にするネットワーク監視システムはよく知られており、複数の方法で実装できる。
【0066】
他の変形は当業者には明らかであり、それらの発明は本請求項に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】典型的な分布型ラマン増幅システムの概略図である。
【図2】本発明の一実施例による分布型ラマン増幅システムの概略図である。
【図3】分布型ラマン増幅器の制御方法の手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施例による複数波長用の分布型ラマン増幅システムの概略図である。
【図5】本発明の一実施例による図4のラマン増幅制御システムの部品の概略図である。
【図6】ラマン利得チルトを示すグラフの図である。
【図7】DWDMシステムの部品を示す概略図である。
【図8】図7のDWDMシステムの受信ノードの部品を示す概略図である。
【符号の説明】
【0068】
100 分布型ラマン増幅器
101 ラマン増幅器制御システム
102 ポンプレーザ
104 ポンプ電源
106 ポンプ電力制御器
116 光伝送ファイバ
118 スタブ
201 ラマン増幅器制御システム
206 ポンプ電力制御器
208 変調源
210 加算器
212 フォトダイオード
214 復調器
218 タップカプラ
230 プロセッサ
232 メモリ
234 ソフトウェア媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ上を伝搬する光信号の特性を判定する方法であって、
前記光ファイバに沿って位置された、分布型ラマン増幅器のポンプレーザ信号を、変調源から供給された振幅変調の入力値により振幅変調する工程と、
プロセッサで、前記振幅変調の入力値の様相から前記ポンプレーザ信号を特定する工程と、
受信パワーを反映する値を結果として得るために、復調器で、前記ポンプレーザ信号のパワーを計測する工程と、
前記プロセッサで、復調器との電気的な接続を経た受信パワーを反映する値と、ポンプレーザとの電気的な接続を経た送信パワーを反映する値とを取得する工程と、
前記プロセッサで、前記受信パワーを反映する値と、前記送信パワーを反映する値とから、前記光ファイバの通過による電力損失を判定する工程とからなり、
前記ポンプレーザ信号は、ポンプレーザで生成され、スタブを介して前記光ファイバに供給され、
前記スタブは、前記ポンプレーザに接続され、前記光ファイバに一端で接続されており、
前記復調器は、フォトダイオードからの電気信号を受信するように配置され、
前記フォトダイオードは、他端で、前記光ファイバからの光信号を受信するように配置され、前記光信号を電気信号に変換する、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
光ファイバ上の光信号の特性を判断する方法であって、
前記光信号中の構成信号の中で、特定のポンプレーザ信号の特有の振幅変調に基づいて、分布型ラマン増幅器から前記特定のポンプレーザ信号を識別する工程と、
前記特定のポンプレーザ信号の受信パワーを判定する工程と、
前記特定のポンプレーザ信号での送信パワーを反映する値を取得する工程と、
前記特定のポンプレーザ信号の前記送信パワーを反映する値と、前記特定のポンプレーザ信号の前記受信パワーを反映する値とから、電力損失を判定する工程とからなり、
前記識別する工程は、
前記光信号を電気信号に変換する工程と、
前記電気信号を、前記特定のポンプレーザ信号に対応した個別のポンプ電気信号として処理する工程と、
ポンプ電気信号の個別の前記特有の符号化振幅変調を復調する工程とを含んでいる、
ことを特徴とする方法。
【請求項3】
光ファイバ上で取得された光信号の特性を判断する方法であって、
前記取得された光信号の成分として分布型ラマン増幅器から前記特定のポンプレーザ信号を該信号の振幅変調から識別する工程と、
前記特定のポンプレーザ信号のパワーを測定する工程と、
前記特定のポンプレーザ信号での送信パワーを反映する値を取得する工程と、
前記の送信パワーを反映する値と前記の特定のポンプレーザ信号のパワーを測定する工程から決定されたパワーからパワー損失を決定する工程とを含んでいる、
ことを特徴とする方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−191452(P2010−191452A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76271(P2010−76271)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2006−145994(P2006−145994)の分割
【原出願日】平成13年10月5日(2001.10.5)
【出願人】(390023157)ノーテル・ネットワークス・リミテッド (153)
【Fターム(参考)】