光通信システム及び光通信方法
【課題】本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、方路または、波長と方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する1対Nの光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、送信許可を受けた装置からの信号を受信する一の送受信機の時刻に、送信許可を送信する他の送受信機が一の送受信器から送信許可の送信依頼を受けてから送信許可を通知するまでの時間を加えた時刻とし、更に下り信号の波長等を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。
【解決手段】本発明は、送信許可を受けた装置からの信号を受信する一の送受信機の時刻に、送信許可を送信する他の送受信機が一の送受信器から送信許可の送信依頼を受けてから送信許可を通知するまでの時間を加えた時刻とし、更に下り信号の波長等を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ごとに複数の波長又は異なる経路を利用する光通信システム及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやイントラネットの急成長を背景に,大容量通信の需要が高まっており,高速光通信システムの普及が急ピッチで進んでいる中、経済的な高速光アクセスネットワークを実現するためのシステムとして、PON(Passive Optical Network)が知られている。また、PONに用いる受動素子(光スプリッタ等)の代わりに、光スイッチを備える光アクセスネットワークも多くの提案がなされている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0003】
光アクセスネットワークの信頼性を向上するために、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)による冗長構成(例えば、非特許文献1を参照。)や芯線多重による冗長構成(例えば、非特許文献2を参照。)を適用する提案がなされている。WDMを用いる場合、光源として広帯域光源を用い、信号の合分岐点であるRN(Remote Node)でAWGスターのような波長毎に異なる経路を選択する場合が切り替えの高速化の観点で優れている。芯線多重による冗長構成では、非特許文献2に記載されるタイプAなどのようにONUの単一の送受信端からの入出力を分岐して冗長化する構成がコスト低減の観点から優れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「総帯域拡張型WDM/TDM−PONと動的波長帯域割当の一提案」、吉野學、原一貴、中村浩崇、木村俊二、吉本直人、雲崎清美、2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信(2)、p.426、B−10−107
【非特許文献2】「ATM−PONのプロテクション方式及び動的帯域割当との連携動作の検討」、吉田俊和、向井宏明、岩崎充佳、浅芝慶弘、一番ケ瀬広、横谷哲也、2001年5月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告vol.101(53):CS2001−21,pp.25−30
【非特許文献3】「光パケットスイッチを適用したアクセスネットワークにおける効率的なディスカバリ方法の提案」、上田裕巳、坪井利憲、河西宏之、2009年4月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告Vol.109(4):CS2009−12,pp.69−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ONUが広帯域な光を送信し、ODN中の分岐WDMを使って、冗長化する場合を例にとって課題を説明する。本課題は芯線多重する場合も波長を方路に読み替えれば同様である。非特許文献1のシステムは、図2に示すように、ONUはいずれかのOLTに信号を送信し、いずれかのOLTからの信号を受信する。ONUは波長毎に異なるOLTと通信し、同一のOLTと通信するONU間でTDMを適用する方式である。図2のシステムは、ONU1に波長λ1’、ONU2に波長λ2’の下り信号を送信する送信器TxとONU1から波長λ1、ONU2から波長λ2の上り信号を受信する受信器Rxで構成されるOLT1、ONU1に波長λ2’、ONU2に波長λ1’の下り信号を送信する送信器TxとONU1から波長λ2、ONU2から波長λ1の上り信号を受信する受信器Rxで構成されるOLT2、及び波長λ1’及びλ2’を受信する受信器Rx、波長λ1及びλ2を送信する送信器Txを含むONUで構成される。OLTを構成するTxとRxは一方が故障することがある。一方が故障した場合、帯域の利用効率の観点から、下り又は上り通信の内でOLT側のRxまたはTxで破損した方向の通信は壊れていないOLTと全ONUが通信し、下り又は上り通信の内でいずれかのOLT側の機器の破損していない方向の通信では両方のOLTが全ONUを按分して通信することが望ましい。そのため、各OLTから送信された下り信号(λ1’、λ2’)と、OLTによって送信許可された各ONUからの上り信号(λ1、λ2)は、上り/下りで独立して選択し、上り方向と下り方向のそれぞれで通信量を平準化するための最適な組合せとするのが望ましい。
【0006】
ここで、単一のOLTとONU間で送受信を行う場合に適用できる従来の上り信号送信許可方法と、その前段で行なわれるディスカバリ処理について(図2では、例えばOLT1とONU[A、B,C])IEEE802.3に示される手法を用いて説明する。
【0007】
ディスカバリ操作は、OLTに新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。OLTは新たにONUがいつPONに接続されてもよいように、定期的にONUに対して、ディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)を送信する。ディスカバリゲートメッセージは、送信可能な時間を通知するゲートメッセージ(GATE Message)の一種であり、当該メッセージの送信時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSが示されている。ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。OLTは、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。OLTは、LLIDを決定し、そのLLIDをレジスタメッセージ(Register Message)によりONUに通知する。
【0008】
またOLTは、次の上りタイミングをこのLLIDで指定したゲートメッセージ(GATE Message)により当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0009】
上り信号許可は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLTが把握したONUの上り蓄積データ量に基づいて、ゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0010】
このようにすることで、各ONUから送信された上り信号は、ONUから送信された上り信号同士が時間軸上で衝突することなくOLTで受信される。上記で述べた送信許可通知方法を図2に示されるようなWDM/TDM−PON方式にも適用させるためには、OLT同士の時刻が一致している必要がある。しかし、IEEE 802.3に規定されるシステムは、通常、非同期系であり、OLT間の時刻が一致していない。
【0011】
そのため、異なる波長の下り信号を受信するONUが同一の波長として受信される波長の上り信号を送出する場合、同一の波長として受信される上り信号同士が時間軸上で衝突する恐れがある。例えば、図2の構成において、波長λ1の上り信号に注目すると、ONU[A]は、OLT1から下り信号λ1’で上り信号λ1の送信許可を受け、ONU[D]、ONU[E]は、送受信器OLT2から下り信号λ1’で上り信号λ2の送信許可を受けるので、OLT1とOLT2が非同期の場合、時刻が一致していない恐れがあり、OLT1が波長λ1で受信する上り信号と波長λ2として受信する上り信号同士が時間軸長で衝突が生じ、受信できない可能性がある。
【0012】
更に、上述の手順から明らかであるように、ONUの認識する送信時刻t1は、OLTにおける送信時刻t1にOLT−ONUの一方向の伝搬遅延時間を加えた時刻である。このため、波長、方路、又はその組合せを上り又は下りの一方のみ切り換えた場合、波長分散、方路長、又はその組合せによる伝搬遅延差により、OLTからONUに対して到着する送信許可に記載される同一の値の送信時刻の意味するOLTにおける時刻又はOLTの通知する送信開始時刻の値の意味するOLTにおける時刻が変わり、OLTの通知した送信許可が正しく伝達されない。このように、下り信号の伝搬時間が変動すると、ONUの認識する送信時刻t1のOLTにおける時刻が異なる。上り信号の伝搬時間が変動しても同様である。従って、OLTは、ゲートメッセージの送信許可に示される時刻に上り信号を受信できない場合がある。
【0013】
OLT間を同期系にすることで、上記課題を解決することも可能であるが、同期系にするためには、クロックの精度、時刻の配信の方法、時刻の配信のシステム、マスタースレーブの設定等の様々な変更が必要となり、装置ならびにシステム運用上のコストが増大する恐れがある。
【0014】
このように、非同期系かつ、送受する波長、方路、又は波長と方路の組合せが任意である場合にONUに対して、上り信号間の衝突を抑止した送信許可を通知する手段が確立されていない。特に、波長、方路、又はその組合せを上り又は下りの一方のみ切り換えた場合、波長分散、方路長、又はその組合せによる伝搬遅延差により、OLTからONUに対して到着する送信許可に記載される同一の値の送信時刻の意味するOLTにおける時刻又はOLTの通知する送信開始時刻の値の意味するOLTにおける時刻が変わり、OLTの通知した送信許可が正しく伝達されない問題が発生する。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題を解決すべく、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、方路または、波長と方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、送信許可で通知し許可を受ける側で同期する時刻の値を、当該送信許可を通知する波長、方路又は波長と方路の組合せを送信する送受信機が送信許可を送信する送信時刻ではなく、送信許可を受けた装置からの信号を受信する一の送受信機の時刻に、送信許可を送信する他の送受信機が一の送受信器から送信許可の送信依頼を受けてから送信許可を通知するまでの時間を加えた時刻とし、更に下り信号の波長、方路、又はその組合せを変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。
【0017】
具体的には、本発明に係る光通信システムは、送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させる制御部と、
を備える。
【0018】
本発明に係る光通信システムの光通信方法は、送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、を備える光通信システムの光通信方法であって、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させることを特徴とする。
【0019】
このようにゲートメッセージに記載するタイムスタンプを変更することで、ONUは他のOLTからゲートメッセージを受け取っても一のOLTの時刻を知ることができる。更に、波長、方路、又はその組合せの切り換えに伴う上り信号又は下り信号の伝搬遅延差の増減に応じてゲートメッセージで伝える時刻を増減することでOLT側に着信する時刻を一定にすることができる。
【0020】
従って、本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、または、方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0021】
本発明は、通知時刻並びに送信開始時刻を次のように設定する。
【0022】
本発明に係る光通信システムの前記制御部は、
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る光通信方法は、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上り/下りの波長、または、方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【図2】本発明の課題を説明する図である。
【図3】ディスカバリ処理を説明する図である。
【図4】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図6】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図7】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図8】下り遅延が増加する場合を説明する図である。
【図9】下り遅延が減少する場合を説明する図である。
【図10】上り遅延が増加する場合を説明する図である。
【図11】上り遅延が減少する場合を説明する図である。
【図12】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光通信システム301を説明する概念図である。光通信システム301は、異なる波長をそれぞれ送受信するOLT21、22と、OLT21、22に光伝送路である光分配網(ODN:Optical Distribution Network)ODN50を介して接続され、OLT21、22との間で複数の波長(例えば、OLTからONUへの下り方向がλ1、λ2、ONUからOLTへの上り方向がλ1’、λ2’)を用いて波長分割多重且つ時分割多重で光信号を送受する光送受信器を有する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム301は、例えば、PONであり、波長分割多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。
【0028】
ONU(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信器はOLT21、22に到達する波長の信号光を出力する。
【0029】
ODN50は、各ONUの光送受信器からの上り信号光を合流して光合分波器25を介してOLT21、22へ結合し、光合分波器25を介して、OLT21、22からの信号光を分岐して各ONUの光送受信器へ結合する。ここで、各ONUの光送受信器から出力された上り信号光が同一波長として受信される波長が同時にOLT21、22に到着すると受信できなくなるため、OLT21、22は、各ONUの光送受信器の当該波長における伝搬時間の差を考慮して同一波長として受信される信号光同士がOLT21、22で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信器で受信中の波長にてOLT200から通知される。受信中の波長は、各OLT21、22からONUに到達しうる波長のうちの1波長である。光合分波器25は、ONUからの光を波長ごとに分波し、OLTに受け渡し、OLT21、22からの光を合波してONUに受け渡す。光合分波器25は、例えば、AWG等の周回性波長フィルタ等を適用することができる。
【0030】
ここで、話を簡略化するために適用する波長を上り下りそれぞれ2波長とすれば、光合分波器25は、ONUからの上り信号光を波長λ1’と波長λ2’に分波し、ONUと波長の組合せに応じた光をそれぞれOLT21、22に結合する。OLT21、22は、受信した信号光のいずれかの波長を選択して、受光し、その信号光を電気信号として出力する。このため、OLT21、22は、ONU毎に定められた波長(λ1’、λ2’)で信号光を受信することができる。OLT21、22は、それぞれ行き先のONUに応じた波長λ1と波長λ2の下り信号光を出力し、光合分波器25で合波しODN50を介してONUに結合する。
【0031】
次に光通信システム301の行う上り送信許可の例を示す。まず初めに切替によって伝搬遅延が変化しない例を示し、その後切替によって伝搬遅延が変化する例について示す。
【0032】
本実施例では、例えば、ONUがOLT22からの下り信号を受信し、OLT21へ上り信号を送信する場合を考える。ONUへOLT22の下り信号でOLT21に対する送信許可をOLT22が通知する際に、まず、OLT21がOLT22に送信許可の送信依頼を行う。そして、送信許可に記載する時刻は、OLT22がOLT21の送信依頼時刻t1に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻としている。
【0033】
ONU(100A、100B、100C)は、OLTからの送信許可を受信したときに自装置の時刻を送信許可に記載の時刻に合わせる。
【0034】
次に、光通信システム301の行う上り送信許可とその前段のディスカバリ操作の例を
示す。ここで、OLT22の下り信号を受信しかつOLT21に上り信号を送信するONUに着目する。ディスカバリ操作は、ODN50に新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。以下、ディスカバリ処理を図3の時間ダイヤグラムに従って説明する。
【0035】
(1)OLT21からOLT22へのディスカバリゲートメッセージ送信依頼
所定時にOLT21はOLT21に送信するONUに対するディスカバリのための送信許可であるディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)の送出を当該ONUに送信するOLT22に依頼する。ここで、所定時とは、未登録のONUが接続したことを周期的に観測するための定期的な周期の時刻であってもよいし、加入者側装置ONU登録等のイベントが生起した時刻であってもよいし、ONU側又はOLT側又はその両方のバッファ内の未送信データが所定の量以上又は以下となった等のデータ量や割当帯域やONU間の割当帯域比が所定の範囲になった時刻でもよい。
【0036】
OLT21は、OLT22に、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSを伝え、ディスカバリゲートメッセージの送信依頼をする。ここで、t1に対するt2の時刻差が一定であったり、Sの値が一定値であったりして、他の値から確定できる値はOLT22への受け渡しを省略しても良い。
【0037】
(2)OLT22からOLT21に送信するONUへのディスカバリゲートメッセージ
送信依頼を受けたOLT22は、依頼を受けてからディスカバリゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。OLT22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウの長さSが示されているディスカバリゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、OLT22における他の下り情報伝送と衝突しないようなOLT22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲で送信できない場合は、OLT21に送信不能と通知することが望ましい。送信不能通知に応じてOLT21は(1)に戻るか終了する。
【0038】
(3)ONUからのレジスタリクエストメッセージ
ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。
【0039】
OLT21は、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。
【0040】
(4)OLT21からOLT22へのレジスタメッセージ依頼
OLT21は、レジスタリクエストメッセージ受け取った未登録ONUのLLIDを決定し、そのLLIDを通知するレジスタメッセージ(Register Message)の送信をOLT22に依頼する。
【0041】
(5)OLT22からONUへのレジスタメッセージ
OLT22は、レジスタメッセージによりONUのLLIDを通知する。本通知は下の(7)の到着以前であり、ONUが当該LLIDに応じた動作を準備する時間以前に実施される。
【0042】
(6)OLT21からOLT22へのゲートメッセージ送信依頼
OLT21は、次の上りタイミングを、当該ONUに通知するためにLLIDで指定したゲートメッセージの送信をOLT22に依頼する。依頼に際して、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを伝える。なお、依頼する時刻t1、時刻t2は(1)と値が異なる。
【0043】
(7)OLT22からONUへのゲートメッセージ
送信依頼を受けたOLT22は、依頼を受けてからゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。OLT22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kが示されているゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、OLT22において当該ゲートメッセージを送信可能な時間によって異なり、(2)と値は必ずしも一致しない。I1の値は、OLT22における他の下り情報伝送と衝突しないようなOLT22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲では送信できない場合又は(5)のレジスタメッセージがONUに到着してLLIDに応じた動作を準備する時間以前にt2となる場合は、OLT21に送信不能と通知する。送信不能通知に応じてOLT21は(6)に戻る。(6)に戻るのは、例えばゲートメッセージの未着によりレジスタによる登録が解除される時間までが望ましい。
【0044】
(8)ONUからのレジスタACKメッセージ
ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。
【0045】
以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0046】
その後の上り信号許可の通知は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLT側が把握したONUの上り蓄積データ量や使用帯域等に基づいて、上記の(6)〜(7)と同様にゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ONUに割り当てる上り波長を受信する送受信機における当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは上記の(8)と同様に、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0047】
次に切り替えに伴い、伝搬遅延が変化する例について示す。図4は、光通信システム301の行う上り送信許可の例である。下り信号の波長を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。また、上り信号の波長を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは送信を許可する送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ち、上り信号の伝搬遅延増加分と下り信号の伝搬遅延増加分は同様の処理を行う。
【0048】
以下、2波長の場合で示すので上り信号あるいは下り信号の一方の伝搬遅延が変更する例で示すが、上り信号と下り信号の両方が変更した場合はその組合せとすればよい。
【0049】
まず、下り遅延増加の例を図8に示す。図の横矢印はONUでの時刻であり、t1=0,t2=100,伝搬遅延増加分Δ=10とする。図中の“K”は送信可能継続時間である。従来例では、伝搬遅延増加により、切替前と比べて伝搬遅延増加Δだけ遅い時刻を切替前のt1,t2と誤認する。このため、OLTの想定する本来の送信開始時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻110を100として扱う。このため送信開始時刻が10だけ遅くなる。
【0050】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+10=10をt1として送信する。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させることで、切替前と同様の送信開始となる。
【0051】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−10=90をt2として送信する。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信開始時刻t2を早めることで、切替前と同様の送信開始となる。
【0052】
次に、下り遅延減少の例を図9に示す。減少であるので増加分を負の値とすれば増加の例と同様である。伝搬遅延増加分Δ=−10とする。それ以外は遅延増加の例と同様である。従来例では、伝搬遅延減少により、切替前と比べて伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻)を切替前のt1,t2と誤認する。このため、OLTの想定する本来の送信開始時刻t2よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻90を100(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻90を100)として扱う。このため送信開始時刻が−10だけ遅く(10だけ早く)なる。
【0053】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+(−10)=−10をt1として送信する(伝搬遅延減少分−Δをゲートメッセージの送信時刻t1から減じた時刻をt1とする。即ちt1−(−Δ)=0−(10)=−10をt1として送信する)。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させる(伝搬遅延減少に伴うゲートメッセージの早まり分だけ送信時刻t1の時刻を早める)ことで、切替前と同様の送信開始となる。
【0054】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−(−10)=110をt2として送信する(伝搬遅延減少分−Δを送信開始時刻t2に加えた時刻をt2とする。即ちt2+(−Δ)=100+(10)=110をt2として送信する)。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信開始時刻t2の時刻を早める(伝搬遅延減少に伴うゲートメッセージの早まり分だけ送信開始時刻t2の時刻を遅延させる)ことで、切替前と同様の送信開始となる。
【0055】
次に、上り遅延増加の例を図10に示す。図の横矢印はOLTでの時刻であることが異なり、それ以外は下りの例と同様である。t1=0,t2=100,伝搬遅延増加分Δ=10とする。従来例では、伝搬遅延増加により、切替前と比べて伝搬遅延増加Δだけ到着が遅くなる。このため、OLTの想定する本来の到着時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻110に到着する。
【0056】
以上説明したように、光通信システム301は、非同期システムのままで、任意の下り波長を受信するONUに対して、任意の上り波長で送信する送信許可を通知することが可能であるので、波長間における上下の組合せを自由に変更しながら、同一の波長として受信する波長の上り信号間での衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0057】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+10=10をt1として送信する。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させ、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早めることで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0058】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−10=90をt2として送信する。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信開始時刻t2を早め、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早めることで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0059】
次に、上り遅延減少の例を図11に示す。減少であるので増加分を負の値とすれば増加の例と同様である。伝搬遅延増加分Δ=−10とする。それ以外は遅延増加の例と同様である。従来例では、伝搬遅延減少により、切替前と比べて伝搬遅延増加分Δだけ到着が遅くなる(伝搬遅延減少分−Δだけ到着が早くなる)。このため、OLTの想定する本来の到着時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻90に到着する(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻90に到着する)。このため到着時刻が−10だけ遅く(10だけ早く)なる。
【0060】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+(−10)=−10をt1として送信する(伝搬遅延減少分−Δをゲートメッセージの送信時刻t1から減じた時刻をt1とする。即ちt1−(−Δ)=0−(10)=−10をt1として送信する)。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させ(伝搬遅延減少に伴う上り信号の早まり分だけ送信時刻t1の時刻を早め)、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早める(送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を長くして送信開始時刻を伝搬遅延減少分だけ遅延する)ことで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0061】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−(−10)=110をt2として送信する(伝搬遅延減少分−Δを送信開始時刻t2に加えた時刻をt2とする。即ちt2+(−Δ)=100+(10)=110をt2として送信する。)。
【0062】
伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信開始時刻t2の時刻を早め(伝搬遅延減少に伴う上り信号の早まり分だけ送信開始時刻t2の時刻を遅延させ)、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早める(送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を長くして送信開始時刻を伝搬遅延減少分だけ遅延する)ことで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0063】
OLT21、22とONU100Aとが通信している場合を考える。OLT21,22は、あるONUと通信する上り信号又は下り信号の波長を切り替えるとき、OLT21、22が、自装置の時刻に、ONU100AとそれぞれのOLT21、22との間で生ずる伝搬遅延差Δを加算した送信時刻のタイムスタンプt1、ONU100Aの上り信号を許可する送信開始時刻t2、及びONU100Aの上り信号の送信可能継続時間Kを含むゲートメッセージGMを送信する。この場合、ONU100Aは、OLT21、22からのゲートメッセージGMを受信したときに自装置の時刻をゲートメッセージGMのタイムスタンプに合わせ、ゲートメッセージGMに含まれる送信開始時刻t2からゲートメッセージGMに含まれる送信可能継続時間Kまでの間に上り信号を送信する。
【0064】
また、OLT21、22は、上り信号又は下り信号の波長を切り替えるとき、OLT21、22が、自装置の時刻t1のタイムスタンプ、ONU100Aの上り信号を許可する送信開始時刻t2から、ONU100AとそれぞれのOLT21、22との間で生ずる伝搬遅延差Δを減じた送信開始時刻t2’、及びONU100Aの上り信号の送信可能継続時間Kを含むゲートメッセージGMを送信してもよい。この場合、ONU100Aは、OLT21、22からのゲートメッセージGMを受信したときに自装置の時刻をゲートメッセージGMに含まれるタイムスタンプt1に合わせ、ゲートメッセージGMに含まれる送信開始時刻t2’からゲートメッセージGMに含まれる送信可能継続時間Kまでの間に上り信号を送信する。
【0065】
図4〜7の時間ダイヤグラムに従って説明する。図4と図5は、OLT21からのゲートメッセージによるOLT21及び22に対する送信許可を通知する例である。図6と図7は、OLT21に対する送信許可をOLT21及び22からのゲートメッセージで通知する例である。ここで、上り下りともにOLT21で送受する伝搬遅延時間はOLT22で送受する伝搬遅延時間はよりも短いとした。
【0066】
[第1の切替状態]
第1の切替状態を、図4の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0067】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0068】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0069】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1に伝搬遅延増加分Δを加えた送信時刻t1’(=t1+Δ)と通信を許可する送信開始時刻t2’(=t2)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0070】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0071】
[第2の切替状態]
第2の切替状態を、図5の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0072】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0073】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0074】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1’(=t1)と元の通信を許可する送信開始時刻t2から伝搬遅延増加分Δを減じた送信開始時刻t2’(=t2−Δ)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0075】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0076】
[第3の切替状態]
第3の切替状態を、図6の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0077】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0078】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0079】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1に伝搬遅延増加分Δを加えた送信時刻t1’(=t1+Δ)と通信を許可する送信開始時刻t2’(=t2)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0080】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0081】
[第4の切替状態]
第4の切替状態を、図7の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0082】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0083】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0084】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1’(=t1)と元の通信を許可する送信開始時刻t2から伝搬遅延増加分Δを現じた送信開始時刻t2’(=t2−Δ)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0085】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0086】
図4〜図7に示されるように、光通信システム301は波長の切り換えに伴う上り方向又は下り方向の伝搬遅延差Δの増減に応じてゲートメッセージGMで伝える時刻を増減することでOLT200に着信する時刻を一定にすることができる。なお、本例では、送信許可をする側で伝搬遅延差に応じた処理を行ったが、送信許可を受ける側で同様の処理を行っても良い。
【0087】
以上説明したように、光通信システム301は、非同期システムのままで、伝搬遅延の異なる任意の下り波長を受信するONUに対して、伝搬遅延の異なる任意の上り波長で送信する送信許可を通知することが可能である。このため、波長間における上下の組合せを自由に変更しながら上り信号の衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0088】
なお、光通信システム301を、3つのONU(100A、100B、100C)と2波長で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、波長分割多重する波長の数も2以上であってよい。また、光通信システム301をPONとして説明したが、光スイッチを光スプリッタに代替した光アクセスネットワークでも同様である。これは以降の実施形態でも同様である。
【0089】
(実施形態2)
図12は、実施形態2の光通信システム302を説明する概念図である。光通信システム302は、方路(H1、H2)毎のOLT(21、22)を有するOLT21、22に光伝送路である光分配網ODNを構成する方路50(H1)、50(H2)を介して接続され、OLT21、22との間で芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム302は、例えば、PONであり、芯線多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。光通信システム302は、図1の光通信システム301が各ONUを波長(λ1、λ2)に振り分けて通信することに対して、各ONUを複数の方路(H1、H2)に振り分けて通信する点において相違する。なお、実施形態2では、すでに実施形態1で説明した部分と同一あるいは略同一である部分の説明を省略する。
【0090】
ONU(100A、100B、100C)及びOLT21、22は、実施形態1で説明したONU(100A、100B、100C)及びOLT21、22について波長を方路に置き換えたものである。
【0091】
各ONUは(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信器は両方の方路で信号光を出力する。
【0092】
ODN50(H1)、50(H2)は、各ONUの光送受信器からの信号光を方路(H1、H2)ごとに合流してOLT21、22へ結合し、OLT21、22からの信号光を方路H1、H2ごとに分岐して各ONUの光送受信器へ結合する。ここで、各ONUの光送受信器OLTから出力された上り信号光が同一方路で同時にOLT200に到着すると受信できなくなるので、OLT200は、各ONUのOLTの当該方路における伝搬時間の差を考慮してOLT21、22で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信器でOLT21、22のいずれかから通知される。
【0093】
OLT21、22の光送受信器は、ODN50(H1)、50(H2)からの光を方路ごとに受光する複数の受光器を有する。
【0094】
光通信システム302のディスカバリレンジング処理は、実施形態1の光通信システム301のディスカバリレンジング処理の波長λ1及び波長λ2をそれぞれ方路H1及び方路H2と置き変えたものである。具体的には、本ディスカバリレンジング処理は、新たにONUを収容可能な方路でOLTが所定時にディスカバリゲートメッセージを送出し、ONUがOLTからの前記ディスカバリゲートメッセージに対してレジスタリクエストメッセージで応答し、OLTが前記レジスタリクエストメッセージで応答したONUに対して、レジスタメッセージと次の上り光信号の送信タイミング等の指示を含むゲートメッセージを該ONUへ通知し、該ONUは、前記ゲートメッセージに従い前記光信号を送信する。
【0095】
以上説明したように、光通信システム302は、非同期システムであっても、伝搬遅延の異なる任意の下り方路からの信号光を受信するONUに対して、伝搬遅延の異なる任意の上り方路で送信する送信許可を通知することが可能であるので、方路間における上下の組合せを自由に変更しながら上り信号の衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0096】
なお、光通信システム302を、3つのONU(100A、100B、100C)と2つの方路で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、方路の数も2以上であってよい。また、光通信システム302の方路のそれぞれで波長分割多重を行い、実施形態1の光通信システムの処理と実施形態2の光通信システムの処理とを組み合わせてもよい。
【0097】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0098】
例えば、情報伝達媒体は、光通信システム301では波長、光通信システム302では方路であったが、他の分割多重の技術、例えば、光符号、OFDMの一つのビン、偏波、位相であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、PONに適用される光通信システム関連の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
21、22:OLT
25:光合分波器
50、50(H1)、50(H2):ODN
55:光スプリッタ
H1、H2:方路
100A、100B、100C:ONU
200:局
301、302:光通信システム
GM:ゲートメッセージ
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向ごとに複数の波長又は異なる経路を利用する光通信システム及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットやイントラネットの急成長を背景に,大容量通信の需要が高まっており,高速光通信システムの普及が急ピッチで進んでいる中、経済的な高速光アクセスネットワークを実現するためのシステムとして、PON(Passive Optical Network)が知られている。また、PONに用いる受動素子(光スプリッタ等)の代わりに、光スイッチを備える光アクセスネットワークも多くの提案がなされている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0003】
光アクセスネットワークの信頼性を向上するために、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)による冗長構成(例えば、非特許文献1を参照。)や芯線多重による冗長構成(例えば、非特許文献2を参照。)を適用する提案がなされている。WDMを用いる場合、光源として広帯域光源を用い、信号の合分岐点であるRN(Remote Node)でAWGスターのような波長毎に異なる経路を選択する場合が切り替えの高速化の観点で優れている。芯線多重による冗長構成では、非特許文献2に記載されるタイプAなどのようにONUの単一の送受信端からの入出力を分岐して冗長化する構成がコスト低減の観点から優れている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「総帯域拡張型WDM/TDM−PONと動的波長帯域割当の一提案」、吉野學、原一貴、中村浩崇、木村俊二、吉本直人、雲崎清美、2009年電子情報通信学会総合大会講演論文集 通信(2)、p.426、B−10−107
【非特許文献2】「ATM−PONのプロテクション方式及び動的帯域割当との連携動作の検討」、吉田俊和、向井宏明、岩崎充佳、浅芝慶弘、一番ケ瀬広、横谷哲也、2001年5月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告vol.101(53):CS2001−21,pp.25−30
【非特許文献3】「光パケットスイッチを適用したアクセスネットワークにおける効率的なディスカバリ方法の提案」、上田裕巳、坪井利憲、河西宏之、2009年4月通信方式研究会電子情報通信学会技術研究報告Vol.109(4):CS2009−12,pp.69−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ONUが広帯域な光を送信し、ODN中の分岐WDMを使って、冗長化する場合を例にとって課題を説明する。本課題は芯線多重する場合も波長を方路に読み替えれば同様である。非特許文献1のシステムは、図2に示すように、ONUはいずれかのOLTに信号を送信し、いずれかのOLTからの信号を受信する。ONUは波長毎に異なるOLTと通信し、同一のOLTと通信するONU間でTDMを適用する方式である。図2のシステムは、ONU1に波長λ1’、ONU2に波長λ2’の下り信号を送信する送信器TxとONU1から波長λ1、ONU2から波長λ2の上り信号を受信する受信器Rxで構成されるOLT1、ONU1に波長λ2’、ONU2に波長λ1’の下り信号を送信する送信器TxとONU1から波長λ2、ONU2から波長λ1の上り信号を受信する受信器Rxで構成されるOLT2、及び波長λ1’及びλ2’を受信する受信器Rx、波長λ1及びλ2を送信する送信器Txを含むONUで構成される。OLTを構成するTxとRxは一方が故障することがある。一方が故障した場合、帯域の利用効率の観点から、下り又は上り通信の内でOLT側のRxまたはTxで破損した方向の通信は壊れていないOLTと全ONUが通信し、下り又は上り通信の内でいずれかのOLT側の機器の破損していない方向の通信では両方のOLTが全ONUを按分して通信することが望ましい。そのため、各OLTから送信された下り信号(λ1’、λ2’)と、OLTによって送信許可された各ONUからの上り信号(λ1、λ2)は、上り/下りで独立して選択し、上り方向と下り方向のそれぞれで通信量を平準化するための最適な組合せとするのが望ましい。
【0006】
ここで、単一のOLTとONU間で送受信を行う場合に適用できる従来の上り信号送信許可方法と、その前段で行なわれるディスカバリ処理について(図2では、例えばOLT1とONU[A、B,C])IEEE802.3に示される手法を用いて説明する。
【0007】
ディスカバリ操作は、OLTに新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。OLTは新たにONUがいつPONに接続されてもよいように、定期的にONUに対して、ディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)を送信する。ディスカバリゲートメッセージは、送信可能な時間を通知するゲートメッセージ(GATE Message)の一種であり、当該メッセージの送信時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSが示されている。ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。OLTは、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。OLTは、LLIDを決定し、そのLLIDをレジスタメッセージ(Register Message)によりONUに通知する。
【0008】
またOLTは、次の上りタイミングをこのLLIDで指定したゲートメッセージ(GATE Message)により当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0009】
上り信号許可は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLTが把握したONUの上り蓄積データ量に基づいて、ゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可の継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0010】
このようにすることで、各ONUから送信された上り信号は、ONUから送信された上り信号同士が時間軸上で衝突することなくOLTで受信される。上記で述べた送信許可通知方法を図2に示されるようなWDM/TDM−PON方式にも適用させるためには、OLT同士の時刻が一致している必要がある。しかし、IEEE 802.3に規定されるシステムは、通常、非同期系であり、OLT間の時刻が一致していない。
【0011】
そのため、異なる波長の下り信号を受信するONUが同一の波長として受信される波長の上り信号を送出する場合、同一の波長として受信される上り信号同士が時間軸上で衝突する恐れがある。例えば、図2の構成において、波長λ1の上り信号に注目すると、ONU[A]は、OLT1から下り信号λ1’で上り信号λ1の送信許可を受け、ONU[D]、ONU[E]は、送受信器OLT2から下り信号λ1’で上り信号λ2の送信許可を受けるので、OLT1とOLT2が非同期の場合、時刻が一致していない恐れがあり、OLT1が波長λ1で受信する上り信号と波長λ2として受信する上り信号同士が時間軸長で衝突が生じ、受信できない可能性がある。
【0012】
更に、上述の手順から明らかであるように、ONUの認識する送信時刻t1は、OLTにおける送信時刻t1にOLT−ONUの一方向の伝搬遅延時間を加えた時刻である。このため、波長、方路、又はその組合せを上り又は下りの一方のみ切り換えた場合、波長分散、方路長、又はその組合せによる伝搬遅延差により、OLTからONUに対して到着する送信許可に記載される同一の値の送信時刻の意味するOLTにおける時刻又はOLTの通知する送信開始時刻の値の意味するOLTにおける時刻が変わり、OLTの通知した送信許可が正しく伝達されない。このように、下り信号の伝搬時間が変動すると、ONUの認識する送信時刻t1のOLTにおける時刻が異なる。上り信号の伝搬時間が変動しても同様である。従って、OLTは、ゲートメッセージの送信許可に示される時刻に上り信号を受信できない場合がある。
【0013】
OLT間を同期系にすることで、上記課題を解決することも可能であるが、同期系にするためには、クロックの精度、時刻の配信の方法、時刻の配信のシステム、マスタースレーブの設定等の様々な変更が必要となり、装置ならびにシステム運用上のコストが増大する恐れがある。
【0014】
このように、非同期系かつ、送受する波長、方路、又は波長と方路の組合せが任意である場合にONUに対して、上り信号間の衝突を抑止した送信許可を通知する手段が確立されていない。特に、波長、方路、又はその組合せを上り又は下りの一方のみ切り換えた場合、波長分散、方路長、又はその組合せによる伝搬遅延差により、OLTからONUに対して到着する送信許可に記載される同一の値の送信時刻の意味するOLTにおける時刻又はOLTの通知する送信開始時刻の値の意味するOLTにおける時刻が変わり、OLTの通知した送信許可が正しく伝達されない問題が発生する。
【0015】
そこで、本発明は、上記問題を解決すべく、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、方路または、波長と方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明に係る光通信システム及び光通信方法は、送信許可で通知し許可を受ける側で同期する時刻の値を、当該送信許可を通知する波長、方路又は波長と方路の組合せを送信する送受信機が送信許可を送信する送信時刻ではなく、送信許可を受けた装置からの信号を受信する一の送受信機の時刻に、送信許可を送信する他の送受信機が一の送受信器から送信許可の送信依頼を受けてから送信許可を通知するまでの時間を加えた時刻とし、更に下り信号の波長、方路、又はその組合せを変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。
【0017】
具体的には、本発明に係る光通信システムは、送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させる制御部と、
を備える。
【0018】
本発明に係る光通信システムの光通信方法は、送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、を備える光通信システムの光通信方法であって、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させることを特徴とする。
【0019】
このようにゲートメッセージに記載するタイムスタンプを変更することで、ONUは他のOLTからゲートメッセージを受け取っても一のOLTの時刻を知ることができる。更に、波長、方路、又はその組合せの切り換えに伴う上り信号又は下り信号の伝搬遅延差の増減に応じてゲートメッセージで伝える時刻を増減することでOLT側に着信する時刻を一定にすることができる。
【0020】
従って、本発明は、非同期系のシステムにおいて、上り/下りの波長、または、方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【0021】
本発明は、通知時刻並びに送信開始時刻を次のように設定する。
【0022】
本発明に係る光通信システムの前記制御部は、
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする。
【0023】
本発明に係る光通信方法は、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、上り/下りの波長、または、方路の組合せを自由に変更しながら、上り信号の衝突を回避する光通信システム及び光通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【図2】本発明の課題を説明する図である。
【図3】ディスカバリ処理を説明する図である。
【図4】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図5】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図6】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図7】本発明に係る光通信システムの動作を説明する図である。
【図8】下り遅延が増加する場合を説明する図である。
【図9】下り遅延が減少する場合を説明する図である。
【図10】上り遅延が増加する場合を説明する図である。
【図11】上り遅延が減少する場合を説明する図である。
【図12】本発明に係る光通信システムを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0027】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光通信システム301を説明する概念図である。光通信システム301は、異なる波長をそれぞれ送受信するOLT21、22と、OLT21、22に光伝送路である光分配網(ODN:Optical Distribution Network)ODN50を介して接続され、OLT21、22との間で複数の波長(例えば、OLTからONUへの下り方向がλ1、λ2、ONUからOLTへの上り方向がλ1’、λ2’)を用いて波長分割多重且つ時分割多重で光信号を送受する光送受信器を有する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム301は、例えば、PONであり、波長分割多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。
【0028】
ONU(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信器はOLT21、22に到達する波長の信号光を出力する。
【0029】
ODN50は、各ONUの光送受信器からの上り信号光を合流して光合分波器25を介してOLT21、22へ結合し、光合分波器25を介して、OLT21、22からの信号光を分岐して各ONUの光送受信器へ結合する。ここで、各ONUの光送受信器から出力された上り信号光が同一波長として受信される波長が同時にOLT21、22に到着すると受信できなくなるため、OLT21、22は、各ONUの光送受信器の当該波長における伝搬時間の差を考慮して同一波長として受信される信号光同士がOLT21、22で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信器で受信中の波長にてOLT200から通知される。受信中の波長は、各OLT21、22からONUに到達しうる波長のうちの1波長である。光合分波器25は、ONUからの光を波長ごとに分波し、OLTに受け渡し、OLT21、22からの光を合波してONUに受け渡す。光合分波器25は、例えば、AWG等の周回性波長フィルタ等を適用することができる。
【0030】
ここで、話を簡略化するために適用する波長を上り下りそれぞれ2波長とすれば、光合分波器25は、ONUからの上り信号光を波長λ1’と波長λ2’に分波し、ONUと波長の組合せに応じた光をそれぞれOLT21、22に結合する。OLT21、22は、受信した信号光のいずれかの波長を選択して、受光し、その信号光を電気信号として出力する。このため、OLT21、22は、ONU毎に定められた波長(λ1’、λ2’)で信号光を受信することができる。OLT21、22は、それぞれ行き先のONUに応じた波長λ1と波長λ2の下り信号光を出力し、光合分波器25で合波しODN50を介してONUに結合する。
【0031】
次に光通信システム301の行う上り送信許可の例を示す。まず初めに切替によって伝搬遅延が変化しない例を示し、その後切替によって伝搬遅延が変化する例について示す。
【0032】
本実施例では、例えば、ONUがOLT22からの下り信号を受信し、OLT21へ上り信号を送信する場合を考える。ONUへOLT22の下り信号でOLT21に対する送信許可をOLT22が通知する際に、まず、OLT21がOLT22に送信許可の送信依頼を行う。そして、送信許可に記載する時刻は、OLT22がOLT21の送信依頼時刻t1に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を加算した時刻としている。
【0033】
ONU(100A、100B、100C)は、OLTからの送信許可を受信したときに自装置の時刻を送信許可に記載の時刻に合わせる。
【0034】
次に、光通信システム301の行う上り送信許可とその前段のディスカバリ操作の例を
示す。ここで、OLT22の下り信号を受信しかつOLT21に上り信号を送信するONUに着目する。ディスカバリ操作は、ODN50に新たに接続されたONUのOLT−ONU間の往復時間RTT(Round Trip Time)の測定と未登録のONUにフレーム取捨選択に必要な識別番号LLID(Logical Link ID)の付与を行う処理である。以下、ディスカバリ処理を図3の時間ダイヤグラムに従って説明する。
【0035】
(1)OLT21からOLT22へのディスカバリゲートメッセージ送信依頼
所定時にOLT21はOLT21に送信するONUに対するディスカバリのための送信許可であるディスカバリゲートメッセージ(Discovery_GATE Message)の送出を当該ONUに送信するOLT22に依頼する。ここで、所定時とは、未登録のONUが接続したことを周期的に観測するための定期的な周期の時刻であってもよいし、加入者側装置ONU登録等のイベントが生起した時刻であってもよいし、ONU側又はOLT側又はその両方のバッファ内の未送信データが所定の量以上又は以下となった等のデータ量や割当帯域やONU間の割当帯域比が所定の範囲になった時刻でもよい。
【0036】
OLT21は、OLT22に、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウ(Discovery Time Window)の長さSを伝え、ディスカバリゲートメッセージの送信依頼をする。ここで、t1に対するt2の時刻差が一定であったり、Sの値が一定値であったりして、他の値から確定できる値はOLT22への受け渡しを省略しても良い。
【0037】
(2)OLT22からOLT21に送信するONUへのディスカバリゲートメッセージ
送信依頼を受けたOLT22は、依頼を受けてからディスカバリゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。OLT22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2とディスカバリタイムウインドウの長さSが示されているディスカバリゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、OLT22における他の下り情報伝送と衝突しないようなOLT22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲で送信できない場合は、OLT21に送信不能と通知することが望ましい。送信不能通知に応じてOLT21は(1)に戻るか終了する。
【0038】
(3)ONUからのレジスタリクエストメッセージ
ディスカバリゲートメッセージを受け取った未登録ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは上り時の衝突を避けるためディスカバリゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2にランダム時間d(0≦d≦D、D:ランダム時間の最大値)加えた時刻t2*(=t2+d)に、タイムスタンプをt2*としたレジスタリクエストメッセージ(Register_REQ Message)で応答する。レジスタリクエストメッセージはONUのMACアドレスが示されている。
【0039】
OLT21は、受け取ったレジスタリクエストメッセージの到着時刻t3を測定するとともに、タイムスタンプからt2*を取得し、ONUまでの往復時間Tx(=t3−t2*)を求める。
【0040】
(4)OLT21からOLT22へのレジスタメッセージ依頼
OLT21は、レジスタリクエストメッセージ受け取った未登録ONUのLLIDを決定し、そのLLIDを通知するレジスタメッセージ(Register Message)の送信をOLT22に依頼する。
【0041】
(5)OLT22からONUへのレジスタメッセージ
OLT22は、レジスタメッセージによりONUのLLIDを通知する。本通知は下の(7)の到着以前であり、ONUが当該LLIDに応じた動作を準備する時間以前に実施される。
【0042】
(6)OLT21からOLT22へのゲートメッセージ送信依頼
OLT21は、次の上りタイミングを、当該ONUに通知するためにLLIDで指定したゲートメッセージの送信をOLT22に依頼する。依頼に際して、現在の自分の時刻t1と送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを伝える。なお、依頼する時刻t1、時刻t2は(1)と値が異なる。
【0043】
(7)OLT22からONUへのゲートメッセージ
送信依頼を受けたOLT22は、依頼を受けてからゲートメッセージを送信するまでの時間I1を時刻t1に加算して、現在の時刻t1をt1+I1とする。OLT22は時刻t1、送信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kが示されているゲートメッセージを送信する。ここで、I1の値は、OLT22において当該ゲートメッセージを送信可能な時間によって異なり、(2)と値は必ずしも一致しない。I1の値は、OLT22における他の下り情報伝送と衝突しないようなOLT22において当該ディスカバリゲートメッセージを送信可能な時間とし、伝搬遅延やランダム時間を考慮し、ONUにおいてt1<t2となる範囲にある。この範囲では送信できない場合又は(5)のレジスタメッセージがONUに到着してLLIDに応じた動作を準備する時間以前にt2となる場合は、OLT21に送信不能と通知する。送信不能通知に応じてOLT21は(6)に戻る。(6)に戻るのは、例えばゲートメッセージの未着によりレジスタによる登録が解除される時間までが望ましい。
【0044】
(8)ONUからのレジスタACKメッセージ
ゲートメッセージを受け取った当該ONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に、レジスタAckメッセージ(Register ACK Message)で応答する。
【0045】
以上で、ディスカバリ処理は終了となる。
【0046】
その後の上り信号許可の通知は、ONUからのレポートメッセージ(Report Message)によりOLT側が把握したONUの上り蓄積データ量や使用帯域等に基づいて、上記の(6)〜(7)と同様にゲートメッセージで当該ONUに通知する。ゲートメッセージには、当該ONUに割り当てる上り波長を受信する送受信機における当該ゲートメッセージの送信時刻t1と、送信を許可する送信開始時刻t2と継続時間Kが示されている。ゲートメッセージを受け取った当該ONUは上記の(8)と同様に、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUは送信開始時刻t2から継続時間が経過するまでの間に上り信号を送信する。
【0047】
次に切り替えに伴い、伝搬遅延が変化する例について示す。図4は、光通信システム301の行う上り送信許可の例である。下り信号の波長を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは伝搬遅延増加分を送信開始時間t2から減じた時刻をt2とする。また、上り信号の波長を変更する際、その変更に伴う伝搬遅延増加分をゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とし、あるいは送信を許可する送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ち、上り信号の伝搬遅延増加分と下り信号の伝搬遅延増加分は同様の処理を行う。
【0048】
以下、2波長の場合で示すので上り信号あるいは下り信号の一方の伝搬遅延が変更する例で示すが、上り信号と下り信号の両方が変更した場合はその組合せとすればよい。
【0049】
まず、下り遅延増加の例を図8に示す。図の横矢印はONUでの時刻であり、t1=0,t2=100,伝搬遅延増加分Δ=10とする。図中の“K”は送信可能継続時間である。従来例では、伝搬遅延増加により、切替前と比べて伝搬遅延増加Δだけ遅い時刻を切替前のt1,t2と誤認する。このため、OLTの想定する本来の送信開始時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻110を100として扱う。このため送信開始時刻が10だけ遅くなる。
【0050】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+10=10をt1として送信する。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させることで、切替前と同様の送信開始となる。
【0051】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−10=90をt2として送信する。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信開始時刻t2を早めることで、切替前と同様の送信開始となる。
【0052】
次に、下り遅延減少の例を図9に示す。減少であるので増加分を負の値とすれば増加の例と同様である。伝搬遅延増加分Δ=−10とする。それ以外は遅延増加の例と同様である。従来例では、伝搬遅延減少により、切替前と比べて伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻)を切替前のt1,t2と誤認する。このため、OLTの想定する本来の送信開始時刻t2よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻90を100(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻90を100)として扱う。このため送信開始時刻が−10だけ遅く(10だけ早く)なる。
【0053】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+(−10)=−10をt1として送信する(伝搬遅延減少分−Δをゲートメッセージの送信時刻t1から減じた時刻をt1とする。即ちt1−(−Δ)=0−(10)=−10をt1として送信する)。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させる(伝搬遅延減少に伴うゲートメッセージの早まり分だけ送信時刻t1の時刻を早める)ことで、切替前と同様の送信開始となる。
【0054】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−(−10)=110をt2として送信する(伝搬遅延減少分−Δを送信開始時刻t2に加えた時刻をt2とする。即ちt2+(−Δ)=100+(10)=110をt2として送信する)。伝搬遅延増加に伴うゲートメッセージの遅延分だけ送信開始時刻t2の時刻を早める(伝搬遅延減少に伴うゲートメッセージの早まり分だけ送信開始時刻t2の時刻を遅延させる)ことで、切替前と同様の送信開始となる。
【0055】
次に、上り遅延増加の例を図10に示す。図の横矢印はOLTでの時刻であることが異なり、それ以外は下りの例と同様である。t1=0,t2=100,伝搬遅延増加分Δ=10とする。従来例では、伝搬遅延増加により、切替前と比べて伝搬遅延増加Δだけ到着が遅くなる。このため、OLTの想定する本来の到着時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻110に到着する。
【0056】
以上説明したように、光通信システム301は、非同期システムのままで、任意の下り波長を受信するONUに対して、任意の上り波長で送信する送信許可を通知することが可能であるので、波長間における上下の組合せを自由に変更しながら、同一の波長として受信する波長の上り信号間での衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0057】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+10=10をt1として送信する。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させ、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早めることで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0058】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−10=90をt2として送信する。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信開始時刻t2を早め、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早めることで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0059】
次に、上り遅延減少の例を図11に示す。減少であるので増加分を負の値とすれば増加の例と同様である。伝搬遅延増加分Δ=−10とする。それ以外は遅延増加の例と同様である。従来例では、伝搬遅延減少により、切替前と比べて伝搬遅延増加分Δだけ到着が遅くなる(伝搬遅延減少分−Δだけ到着が早くなる)。このため、OLTの想定する本来の到着時刻t2(=100)よりも伝搬遅延増加分Δだけ遅い時刻90に到着する(伝搬遅延減少分−Δだけ早い時刻90に到着する)。このため到着時刻が−10だけ遅く(10だけ早く)なる。
【0060】
一方、光通信システム301は、方法1として伝搬遅延増加分Δをゲートメッセージの送信時刻t1に加えた時刻をt1とする。即ちt1+Δ=0+(−10)=−10をt1として送信する(伝搬遅延減少分−Δをゲートメッセージの送信時刻t1から減じた時刻をt1とする。即ちt1−(−Δ)=0−(10)=−10をt1として送信する)。伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信時刻t1の時刻を遅延させ(伝搬遅延減少に伴う上り信号の早まり分だけ送信時刻t1の時刻を早め)、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早める(送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を長くして送信開始時刻を伝搬遅延減少分だけ遅延する)ことで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0061】
光通信システム301は、方法2として伝搬遅延増加分Δを送信開始時刻t2から減じた時刻をt2とする。即ちt2−Δ=100−(−10)=110をt2として送信する(伝搬遅延減少分−Δを送信開始時刻t2に加えた時刻をt2とする。即ちt2+(−Δ)=100+(10)=110をt2として送信する。)。
【0062】
伝搬遅延増加に伴う上り信号の遅延分だけ送信開始時刻t2の時刻を早め(伝搬遅延減少に伴う上り信号の早まり分だけ送信開始時刻t2の時刻を遅延させ)、送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を短くして送信開始時刻を伝搬遅延増加分だけ早める(送信時刻t1から送信開始時刻t2までの時間を長くして送信開始時刻を伝搬遅延減少分だけ遅延する)ことで、切替前と同様の到着時刻となる。
【0063】
OLT21、22とONU100Aとが通信している場合を考える。OLT21,22は、あるONUと通信する上り信号又は下り信号の波長を切り替えるとき、OLT21、22が、自装置の時刻に、ONU100AとそれぞれのOLT21、22との間で生ずる伝搬遅延差Δを加算した送信時刻のタイムスタンプt1、ONU100Aの上り信号を許可する送信開始時刻t2、及びONU100Aの上り信号の送信可能継続時間Kを含むゲートメッセージGMを送信する。この場合、ONU100Aは、OLT21、22からのゲートメッセージGMを受信したときに自装置の時刻をゲートメッセージGMのタイムスタンプに合わせ、ゲートメッセージGMに含まれる送信開始時刻t2からゲートメッセージGMに含まれる送信可能継続時間Kまでの間に上り信号を送信する。
【0064】
また、OLT21、22は、上り信号又は下り信号の波長を切り替えるとき、OLT21、22が、自装置の時刻t1のタイムスタンプ、ONU100Aの上り信号を許可する送信開始時刻t2から、ONU100AとそれぞれのOLT21、22との間で生ずる伝搬遅延差Δを減じた送信開始時刻t2’、及びONU100Aの上り信号の送信可能継続時間Kを含むゲートメッセージGMを送信してもよい。この場合、ONU100Aは、OLT21、22からのゲートメッセージGMを受信したときに自装置の時刻をゲートメッセージGMに含まれるタイムスタンプt1に合わせ、ゲートメッセージGMに含まれる送信開始時刻t2’からゲートメッセージGMに含まれる送信可能継続時間Kまでの間に上り信号を送信する。
【0065】
図4〜7の時間ダイヤグラムに従って説明する。図4と図5は、OLT21からのゲートメッセージによるOLT21及び22に対する送信許可を通知する例である。図6と図7は、OLT21に対する送信許可をOLT21及び22からのゲートメッセージで通知する例である。ここで、上り下りともにOLT21で送受する伝搬遅延時間はOLT22で送受する伝搬遅延時間はよりも短いとした。
【0066】
[第1の切替状態]
第1の切替状態を、図4の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0067】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0068】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0069】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1に伝搬遅延増加分Δを加えた送信時刻t1’(=t1+Δ)と通信を許可する送信開始時刻t2’(=t2)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0070】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0071】
[第2の切替状態]
第2の切替状態を、図5の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0072】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0073】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0074】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1’(=t1)と元の通信を許可する送信開始時刻t2から伝搬遅延増加分Δを減じた送信開始時刻t2’(=t2−Δ)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0075】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0076】
[第3の切替状態]
第3の切替状態を、図6の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0077】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0078】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0079】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1に伝搬遅延増加分Δを加えた送信時刻t1’(=t1+Δ)と通信を許可する送信開始時刻t2’(=t2)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0080】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0081】
[第4の切替状態]
第4の切替状態を、図7の時間ダイヤグラムを用いて説明する。
【0082】
(1)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1と通信を許可する送信開始時刻t2と送信許可を継続する時間Kを含む。
【0083】
(2)ONUからOLT21への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0084】
(1’)OLT21からONUへのゲートメッセージ
OLT21は、ONUをLLIDで指定したゲートメッセージを送信する。ゲートメッセージは、現在の自分の時刻t1’(=t1)と元の通信を許可する送信開始時刻t2から伝搬遅延増加分Δを現じた送信開始時刻t2’(=t2−Δ)と送信許可を継続する時間K’(=K)を含む。ここでΔはONU−OLT21とONU−OLT22との伝搬遅延差である。
【0085】
(2’)ONUからOLT22への上り信号
ゲートメッセージを受け取ったONUは、このメッセージのタイムスタンプで示される当該メッセージの送信時刻t1’に自分の時計を合わせる。ONUはゲートメッセージで指示された送信開始時刻t2’から継続時間Kが経過するまでの間に、上り信号を送信する。
【0086】
図4〜図7に示されるように、光通信システム301は波長の切り換えに伴う上り方向又は下り方向の伝搬遅延差Δの増減に応じてゲートメッセージGMで伝える時刻を増減することでOLT200に着信する時刻を一定にすることができる。なお、本例では、送信許可をする側で伝搬遅延差に応じた処理を行ったが、送信許可を受ける側で同様の処理を行っても良い。
【0087】
以上説明したように、光通信システム301は、非同期システムのままで、伝搬遅延の異なる任意の下り波長を受信するONUに対して、伝搬遅延の異なる任意の上り波長で送信する送信許可を通知することが可能である。このため、波長間における上下の組合せを自由に変更しながら上り信号の衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0088】
なお、光通信システム301を、3つのONU(100A、100B、100C)と2波長で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、波長分割多重する波長の数も2以上であってよい。また、光通信システム301をPONとして説明したが、光スイッチを光スプリッタに代替した光アクセスネットワークでも同様である。これは以降の実施形態でも同様である。
【0089】
(実施形態2)
図12は、実施形態2の光通信システム302を説明する概念図である。光通信システム302は、方路(H1、H2)毎のOLT(21、22)を有するOLT21、22に光伝送路である光分配網ODNを構成する方路50(H1)、50(H2)を介して接続され、OLT21、22との間で芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数のONU(100A、100B、100C)と、を備える。光通信システム302は、例えば、PONであり、芯線多重且つ時分割多重で光信号を伝達する。光通信システム302は、図1の光通信システム301が各ONUを波長(λ1、λ2)に振り分けて通信することに対して、各ONUを複数の方路(H1、H2)に振り分けて通信する点において相違する。なお、実施形態2では、すでに実施形態1で説明した部分と同一あるいは略同一である部分の説明を省略する。
【0090】
ONU(100A、100B、100C)及びOLT21、22は、実施形態1で説明したONU(100A、100B、100C)及びOLT21、22について波長を方路に置き換えたものである。
【0091】
各ONUは(100A、100B、100C)は各加入者宅に設置されており、送信する上り信号で使用するために各ONUの光送受信器は両方の方路で信号光を出力する。
【0092】
ODN50(H1)、50(H2)は、各ONUの光送受信器からの信号光を方路(H1、H2)ごとに合流してOLT21、22へ結合し、OLT21、22からの信号光を方路H1、H2ごとに分岐して各ONUの光送受信器へ結合する。ここで、各ONUの光送受信器OLTから出力された上り信号光が同一方路で同時にOLT200に到着すると受信できなくなるので、OLT200は、各ONUのOLTの当該方路における伝搬時間の差を考慮してOLT21、22で重ならないように送信許可する。送信許可は、各ONU側の光送受信器でOLT21、22のいずれかから通知される。
【0093】
OLT21、22の光送受信器は、ODN50(H1)、50(H2)からの光を方路ごとに受光する複数の受光器を有する。
【0094】
光通信システム302のディスカバリレンジング処理は、実施形態1の光通信システム301のディスカバリレンジング処理の波長λ1及び波長λ2をそれぞれ方路H1及び方路H2と置き変えたものである。具体的には、本ディスカバリレンジング処理は、新たにONUを収容可能な方路でOLTが所定時にディスカバリゲートメッセージを送出し、ONUがOLTからの前記ディスカバリゲートメッセージに対してレジスタリクエストメッセージで応答し、OLTが前記レジスタリクエストメッセージで応答したONUに対して、レジスタメッセージと次の上り光信号の送信タイミング等の指示を含むゲートメッセージを該ONUへ通知し、該ONUは、前記ゲートメッセージに従い前記光信号を送信する。
【0095】
以上説明したように、光通信システム302は、非同期システムであっても、伝搬遅延の異なる任意の下り方路からの信号光を受信するONUに対して、伝搬遅延の異なる任意の上り方路で送信する送信許可を通知することが可能であるので、方路間における上下の組合せを自由に変更しながら上り信号の衝突を回避する1対Nの光アクセスシステムを提供することができる。
【0096】
なお、光通信システム302を、3つのONU(100A、100B、100C)と2つの方路で説明したが、ONUの数が増減してもよいし、方路の数も2以上であってよい。また、光通信システム302の方路のそれぞれで波長分割多重を行い、実施形態1の光通信システムの処理と実施形態2の光通信システムの処理とを組み合わせてもよい。
【0097】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0098】
例えば、情報伝達媒体は、光通信システム301では波長、光通信システム302では方路であったが、他の分割多重の技術、例えば、光符号、OFDMの一つのビン、偏波、位相であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、PONに適用される光通信システム関連の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
21、22:OLT
25:光合分波器
50、50(H1)、50(H2):ODN
55:光スプリッタ
H1、H2:方路
100A、100B、100C:ONU
200:局
301、302:光通信システム
GM:ゲートメッセージ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させる制御部と、
を備える光通信システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
を備える光通信システムの光通信方法であって、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させることを特徴とする光通信方法。
【請求項4】
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする請求項3に記載の光通信方法。
【請求項1】
送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させる制御部と、
を備える光通信システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする請求項1に記載の光通信システム。
【請求項3】
送受信する波長、方路、又は波長と方路の組合せの異なる少なくとも2つの局側装置(OLT:Optical Line Terminal)と、
前記OLTに光伝送路を介して接続され、前記OLTとの間で波長分割多重且つ時分割多重、芯線多重且つ時分割多重、又は波長分割多重、芯線多重且つ時分割多重で光信号を送受する複数の加入者側装置(ONU:Optical Network Unit)と、
を備える光通信システムの光通信方法であって、
一の前記OLTの現時刻を基準とする通知時刻、前記ONUの上り信号の送信を許可する送信開始時刻、及び上り信号を受信可能な継続時間を含み、一の前記OLTで受信する上り信号の送信を許可する送信許可を他の前記OLTから前記ONUへ送信する際に、前記ONUと他の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延と前記ONUと一の前記OLTとの間の上り信号又は下り信号の伝搬遅延との差である伝搬遅延差に応じて前記通知時刻又は前記送信開始時刻を変更し、
前記ONUに対して、前記OLTからの前記送信許可を受信したときに前記ONUの時刻を前記通知時刻に合わせ、前記送信許可に含まれる前記送信開始時刻に他の前記OLTへ上り信号を送信させ、且つ前記送信開始時刻から前記伝搬遅延差経過後、前記送信許可に含まれる前記継続時間の間に一の前記OLTへ上り信号を送信させることを特徴とする光通信方法。
【請求項4】
前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間及び前記伝搬遅延差を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とする、
あるいは、前記通知時刻を、一の前記OLTが他の前記OLTに前記送信許可の送信依頼を行い、他の前記OLTが一の前記OLTの送信依頼時刻に送信依頼を受信してから送信許可を送出するまでの時間を一の前記OLTの現時刻に加算した時刻とし、前記送信開始時刻を一の前記OLTが設定した時刻から前記伝搬遅延差を減じた時刻とすることを特徴とする請求項3に記載の光通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−253417(P2012−253417A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122256(P2011−122256)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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