光配向膜配向処理用粘着フィルム
本発明は、光配向膜配向処理用粘着フィルム、積層フィルム、光学フィルタの製造方法、光学フィルタまたは立体映像表示装置に関する。本発明では、未配向領域の発生を最小化し、且つ、高精度の配向パターンを形成することができる配向処理用粘着フィルムと、それを含む積層フィルム及びそれを用いた光学フィルタの製造方法を提供することができる。また、本発明は、光学フィルタまたは立体映像表示装置を提供することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜配向処理用粘着フィルム、積層フィルム、光学フィルタの製造方法、光学フィルタまたは立体映像表示装置に関する。
【0002】
本発明は、2010年1月22日付けで大韓民国で出願された大韓民国特許出願第2010−0005907号に基礎して優先権を主張し、その内容をここで採用する。
【背景技術】
【0003】
立体映像表示装置は、深さ感がある映像を表示することができるディスプレイ装置である。従来、映像表示装置は、映像表示面だけで情報を表現することができるので、表現しようとする対象の深さ情報は、すべて消失してしまう制約がある。
【0004】
立体映像表示装置は、空間内で対象を立体的に表示することができるので、物体本来の3次元情報をそのまま観察者に伝達することができ、現実感ある表現が可能である。
【0005】
立体映像表示技術は、大きく、眼鏡方式と無眼鏡方式とに分けられる。また、眼鏡方式は、偏光眼鏡方式とLCシャッター眼鏡(LC shutter glass)方式とに分類されることができ、無眼鏡方式は、2眼式/多視点両眼視差方式、体積型方式またはホログラフィック方式などに分類されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光配向膜配向処理用粘着フィルム、積層フィルム、光学フィルタの製造方法、光学フィルタまたは立体映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光透過領域及び光遮断領域を有する基材を含む、光配向膜配向処理用粘着フィルムに関する。
【0008】
以下、本発明の粘着フィルムを詳しく説明する。
本発明の粘着フィルムは、例えば、光配向膜に光を照射し、配向処理を行う過程に使用されることができる。1つの例示において、上記粘着フィルムは、光配向膜に第1配向方向を有する第1配向領域と、上記第1配向方向と異なる第2配向方向を有する第2配向領域とを少なくとも含むパターンまたは配向方向が互いに異なる2種類以上の配向領域を形成するための配向処理を行う過程に使用されることができる。上記配向処理過程で、光透過及び光遮断領域が形成されている基材が一種のマスクの役目を行うことができる。特に、粘着フィルムの形態なので、上記基材を光配向膜に付着させた状態、すなわち光配向膜と基材との間に間隔が実質的に存在しない状態で配向処理を行うことができ、これにより、未配向領域が存在せず、高精度の配向パターンを形成することができる。
【0009】
用語「光配向膜」には、この分野において使用されているものであって、光の照射により含まれた分子の一定方向への配向が誘導されることができるすべての種類の配向膜が含まれることができる。1つの例示において、上記光配向膜は、偏光された紫外線、例えば直線偏光された紫外線の照射により配向が誘導され、また、その上部に液晶化合物が形成された時に液晶化合物との相互作用により上記液晶化合物の配向を誘導することができる配向膜であることができる。
【0010】
本発明の1つの例示において、上記光配向膜は、立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜であることができる。立体映像表示装置に適用される光学フィルタの例としては、パターン化された位相差素子(patterned retarder)が挙げられる。
【0011】
本発明において、用語「光透過領域」は、基材の上部または下部に入射される光を透過させて、反対側面に出射させることができる領域を意味し、用語「光遮断領域」は、基材の上部または下部に入射される光を吸収または遮断し、反対側面に出射させない領域を意味することができる。
【0012】
図1は、本発明の粘着フィルムに含まれる基材10を例示的に示す断面図である。図1に示されたように、粘着フィルムの基材10は、厚さ方向に照射される光(図面で矢印で表示される)を透過させることができる光透過領域T及び上記光を遮断または吸収することができる光遮断領域Bを含む。上記光透過及び光遮断領域は、基材にそれぞれ1つ以上形成されてもよい。
【0013】
本発明の基材において、上記光遮断領域及び光透過領域が形成される形態は、特に制限されず、目的する光配向膜の配向パターンによって決定されることができる。
【0014】
本発明の1つの例示において、上記光透過領域及び光遮断領域は、それぞれストライプ(stripe)形状を有し、且つ、互いに隣接して交互に形成されてもよい。図2は、本発明の1つの例示による基材を上部で観察した場合を模式的に示す図であり、図示の基材10では、光透過領域T及び光遮断領域Bがストライプ状に交互に形成されている。
【0015】
光透過領域及び光遮断領域がストライプ状に交互に形成される場合、上記領域のピッチ、すなわち1つの光遮断領域の線幅及び隣接する光遮断領域間の間隔の和(図2のP);及び隣接する光遮断領域の間隔(図2のV)は、特に制限されず、光配向膜が適用される用途によって決定されることができる。
【0016】
例えば、上記光配向膜が立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜である場合、光透過領域と隣接する光遮断領域のピッチは、上記立体映像表示装置の表示部の左目用映像または右目用映像を生成する単位画素(pixel)の幅の2倍であることができる。通常、立体映像表示装置は、例えば図6に示されたように、表示パネル62のような表示部及びパターン化位相差素子のような光学フィルタ63を含むことができる。また、上記で、表示部には、図3に示されたように、左目用映像を生成するための単位画素(左目用単位画素、図3のUL)及び右目用映像を生成するための単位画素(右目用単位画素、図3のUR)がストライプ形状に交互に配置されてもよい。本発明において、粘着フィルムが適用される光配向膜が前述のような立体映像表示装置の光学フィルタに適用されるものである場合、上記ピッチPは、上記表示部の単位画素(URまたはUL)の幅(図3のW1またはW2)の2倍の値と同一の数値を有することが好ましい。
【0017】
本発明において、用語「同一」は、本発明の効果を損傷させない範囲での実質的同一を意味するものであり、例えば、製造誤差(error)または偏差(variation)などを勘案した誤差を含むものである。
【0018】
例えば、上記ピッチが単位画素の幅の2倍と同一であることは、約±60μm以内の誤差、好ましくは約±40μm以内の誤差、より好ましくは約±20μm以内の誤差を含むものである。
【0019】
上記ピッチを前述のように調節し、配向処理後に配向膜上に未配向領域の発生を防止し、高精度の配向パターンを形成することができる。これにより、上記配向膜を含む光学フィルタが立体映像表示装置に適用される場合、いわゆるクロストークなどが誘発されないようにすることができる。
【0020】
隣接する光遮断領域の間隔(図2のV)は、立体映像表示装置の表示部で左目用単位画素または右目用単位画素の幅(例えば、図3のW1またはW2)と同一の数値を有することが好ましい。単位画素の幅と同一の数値は、前述した実質的な同一を意味し、例えば、±30μm以内の誤差、好ましくは約±20μm以内の誤差、より好ましくは約±10μm以内の誤差を含むものである。上記間隔を単位画素の幅と同一に設定し、配向処理時に未配向領域の発生を防止し、高精度の配向パターンを形成することができる。また、光学フィルタが表示装置に適用される場合に、各偏光変換部が左目用及び右目用映像生成部の単位画素と効果的に対応することができ、クロストークなどの発生を防止することができる。
【0021】
本発明の基材において光透過領域及び光遮断領域の形状が前述したストライプ状に制限されるものではなく、立体映像表示装置での画像生成部の形態または本発明の光配向膜が適用される他の用途によって変更されることができる。
【0022】
例えば、本発明の光配向膜が、立体映像表示装置の光学フィルタに適用され、また、表示部で左目用及び右目用単位画素が格子状に形成される場合、上記光遮断領域及び光透過領域も上記画素に対応するように格子状に配置されることができる。この場合、各領域のピッチ及び間隔は、前述したものと同一の方式で規定されることができが、例えば、光透過領域及び隣接する光遮断領域のピッチは、上記格子状に形成された左目用または右目用単位画素の幅の2倍と実質的に同一であることができる、また、隣接する光遮断領域間の間隔は、上記単位画素の幅と実質的に同一であることができる。上記で、ピッチ及び間隔は、格子状に配列される光透過領域及び光遮断領域で縦または横方向のピッチ及び間隔を意味することができ、単位画素の幅は、上記画素の縦または横方向の幅を意味することができる。
【0023】
本発明において、粘着フィルムの基材は、例えば、光透過性シートと、上記シート上で光遮断領域を形成している光遮断性または光吸収性インクとを含むことができる。
【0024】
すなわち、上記基材は、光透過性シートの表面に目的するパターンによって光遮断性または光吸収性インクを印刷し、光遮断領域を形成することによって製造することができる。
【0025】
上記で「光透過性シート」は、光配向処理に使用される光、例えば紫外線を有効に透過させることができるシートを意味し、上記で、有効な透過というのは、光配向膜の配向処理に有効な程度の量の透過を意味することができる。例えば、上記光透過性シートは、紫外線(UV)領域での光吸収率が低いシートであって、約320nm以下の波長の光に対する吸収率が10%以下のシートであることができる。このようなシートとしては、例えば、トリアセチルセルロースなどのようなセルロース系シートまたはノルボルネン誘導体シートなどのようなオレフイン系シートなどを挙げることができるが、シートが適切な光透過性を示す限り、上記に制限されるものではない。上記光透過性シートの厚さは、特に制限されず、目的用途及び光透過度などを考慮して適宜選択されることができる。
【0026】
上記のようなシートは、通常、光学フィルタの製造過程で配向膜の汚染を防止し、配向性を向上させるために使用される保護フィルムの基材として使用されることがある。本発明の1つの例示では、上記のような保護フィルムの基材に直接光遮断領域を形成することによって、上記保護フィルムが保護機能とともにマスクの機能を有することができるようにし、そのフィルムの付着の前及び/または後に光照射を行う方式を通じて、追加設備などを使用することなく、生産性が高い簡単な方法で高精度の光学フィルタを製造することができる。
【0027】
一方、上記シート上で光遮断領域を形成するインクの種類は、特に制限されず、公知の光遮断性または光吸収性インクを使用することができる。このようなインクの例としては、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛または酸化鉄などのような無機顔料や、アゾ系顔料またはフタロシアニン系顔料などの有機顔料を含むインクを有することができ、上記のようなインクは、適切なバインダー(binder)及び/または溶剤(solvent)と配合され、印刷工程に適用されることができる。
【0028】
上記で光遮断領域を形成するための印刷方式は、特に制限されず、例えば、スクリーン印刷またはグラビア印刷などの通常的な印刷方式や、インクジェット方式による選択的なジェッティング方式を使用することができる。
【0029】
本発明において上記インクの印刷高さは、約0.1μm〜4μm、好ましくイ、約0.5μm〜2.0μm程度であることができる。しかし、本発明において印刷高さが上記に制限されるものではない。例えば、上記印刷高さが極めて低い場合、光遮断効果が低下することができ、反対に極めて高い場合、本発明の粘着フィルムを保護フィルムの用途に適用しにくい側面があるので、このような点を考慮して、印刷高さは、適宜選択されることができる。
【0030】
本発明の粘着フィルムは、上記のような基材の少なくとも一面に形成される粘着層をさらに含むことができ、このような粘着層は、上記基材を光配向膜に密着させるために使用されることができる。上記で、密着は、前述したように、光配向膜と基材との間に間隔が実質的に存在しない場合を意味する。図4は、本発明の粘着フィルムの1つの例示的な断面図であり、図4に示されたように、本発明の粘着フィルムは、光透過領域T及び光遮断領域Bが形成されている基材10と、該基材の一面に形成される粘着層20とを含むことができる。
【0031】
上記で使用されることができる粘着層の素材及びその厚さなどは、特に制限されず、配向処理の条件などを考慮して適宜選択されることができる。例えば、上記粘着層は、光透過性粘着剤として、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、SBR(Styrene−butadiene rubber)などのようなゴム系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、メラミン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、フェノール系粘着剤またはシリコーン系粘着剤であるか、またはこれらのうち2種以上の混成粘着剤であることができる。
【0032】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成されている光配向膜と、上記光配向膜上に付着されている本発明による粘着フィルムとを含む光学フィルタ製造用積層フィルムに関する。
【0033】
本発明の上記積層フィルムに適用される基板の種類は、特に制限されず、例えば、光学フィルタに適用される通常的な基板が使用されることができる。このような基板の例としては、通常的なガラス基板またはプラスチック基板を挙げることができる。上記で、プラスチック基板の例としては、TAC(triacetyl cellulose)、COP(cyclo olefin copolymer)、Pac(Polyacrylate)、PES(poly ether sulfone)、PC(polycarbonate)、PEEK(polyetheretherketon)、PMMA(polymethylmethaacrylate)、PEI(polyetherimide)、PEN(polyethylenemaphthatlate)、PET(polyethyleneterephtalate)、PI(polyimide)、PSF(polysulfone)、PVA(polyvinylalcohol)、PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂材質の基板などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の1つの例示において、上記光学フィルタがパターン化された位相差素子の場合、上記プラスチック基板として、(−)cプレートの特性を有し、Reが約10nm以下、好ましくは約5nm以下であり、Rthが約300nm以下、好ましくは約100nm以下、より好ましくは約60nm以下、さらに好ましくは約15nm以下であり、屈折率が約1.33〜1.53の基板を使用することが好ましい。
【0035】
上記で、(−)cプレート特性は、基板の面内遅相軸方向の屈折率をNx、面内進相軸方向の屈折率をNy、厚さ方向の屈折率をNzとした場合、上記屈折率が「Nx=Ny>Nz」の関系を満足させる特性を意味し、Reは、「(Nx−Ny)×d」で計算される数値を示し、Rthは、{(Nx+Ny/2−Nz}×d」で計算される数値を示す(上記でdは基板の厚さである)。
【0036】
本発明では、上記のような光学異方性を有するプラスチック基板を使用することによって、例えば、光学フィルタがパターン化位相差素子の場合、その特性を極大化しながら表示装置でのクロストークなどを最小化することができ、また、所定の屈折率を有することによって、輝度なども優秀に維持することができる。特にこのような特性のプラスチック基板を使用し、より軽量で且つ薄膜化が可能となり、柔軟性などの特性に優れたフィルタを提供することができる。
【0037】
通常、光学フィルタの基板としてプラスチック基板を使用する場合、プラスチック基板の特性上、製造過程での成形温度または溶剤などによる影響を大きく受け、配向層などの収縮や膨脹などによって高精度の配向パターンを形成しにくいという短所があるが、前述した本発明の粘着フィルムを使用した配向処理を通じて上記のような短所を回避しながらプラスチック基板の使用による利点を極大化することができる。
【0038】
本発明の積層フィルムにおいて上記基板に形成される光配向膜の種類は、特に制限されず、この分野において公知されているすべての種類の光配向膜が使用されることができる。本発明の1つの例示において、上記光配向膜は、直線偏光の照射により誘導された、異性化(cis−trans isomerization)、フリース再配列(fries rearrangement)または二量化(dimerization)反応により配向が決定され、決定された配向により隣接する液晶層に配向を誘導することができる化合物を含むことができる。例えば、上記光配向膜は、アゾベンゼン(azobenzene)、スチリルベンゼン(styryl benzene)、クマリン(cumarine)、カルコン(chalcone)、フッ素及びシンナメート(cinnamate)よりなる群から選択される1つ以上の官能基または残基を有する単量体、オリゴマーまたは高分子化合物を含むことができ、好ましくはフッ素またはシンナメート残基を含むノルボルネン樹脂などを含むことができる。
【0039】
本発明において基板に上記のような光配向膜を形成する方式は、特に制限されず、例えば、前述した化合物を適切な溶剤などに希釈し、ロールコーティング、スピンコーティングまたはバーコーティングなどの公知のコーティング法で基板上にコーティングする方式で形成することができる。また、この場合、配向膜のコーティング厚さは、特に制限されない。
【0040】
本発明の積層フィルムにおいて上記光配向膜は、1次配向処理された光配向膜であることができる。上記で、1次配向処理は、例えば、一定方向に直線偏光された紫外線を粘着フィルムの付着前に光配向膜、好ましくは光配向膜の全面に照射することによって行うことができる。
【0041】
光配向膜の配向のために、例えば、直線偏光された紫外線を1回以上照射すれば、上記配向膜の配向は、最終的に照射される光により決定される。したがって、上記積層フィルムに含まれる光配向膜に一定方向に直線偏光された紫外線を照射し、1次配向させた後、後述するように、本発明の粘着フィルムを付着した状態で上記1次配向の直線偏光と異なる方向の直線偏光を照射し、2次配向させる場合、第1配向方向を有する第1配向領域と上記第1配向方向と異なる第2配向方向を有する第2配向領域とを少なくとも含むパターンまたは配向方向が互いに異なる2種類以上の配向領域を形成するための配向処理を効果的に行うことができる。
【0042】
本発明の1つの例示において、上記1次配向は、直線偏光された紫外線を使用して行い、上記で直線偏光された紫外線の偏光角度は、上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光されたものであることができ、より好ましくは、上記境界線と45度の角度で交差するように偏光されたものであることができる。以下、本発明で角度を規定する場合は、約±10度以下、より好ましくは約±5度以下、さらに好ましくは約±3度以下の誤差を含むものである。上記の場合において、粘着フィルムの付着後に行われる2次配向は、直線偏光された紫外線を使用して行い、2次配向の直線偏光された紫外線の偏光角度は、やはり上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光されたものであることができ、この場合、好ましくは上記2次配向の直線偏光の偏光角度と上記1次配向の偏光角度は、互いに垂直であることができる。このように1次及び2次配向の偏光角度を制御することによって、さらに優れた性能の光学フィルタを製造することができる。
【0043】
本発明の積層フィルムは、上記のような1次配向後または1次配向前の未配向された光配向膜に前述した本発明による粘着フィルムを付着させて製造することができる。この場合、粘着フィルムが粘着層を含む場合、上記粘着層を媒介にして光配向膜に付着することができる。このような積層フィルムにおいて上記粘着フィルムを上記光配向膜と密着していることが好ましい。本発明において粘着フィルムが光配向膜と密着しているということは、光配向膜と粘着フィルムとの間に間隔が実質的に存在しないことを意味する。このように粘着フィルムが光配向膜に密着することによって、照射される光が進行過程でフィルムと光配向膜との間で拡散し、所望の程度の均一な強さの光を照射することが困難になり、また、配向領域間の境界部が不明確になるか、または未配向領域が発生することを防止することができる。
【0044】
また、本発明は、前述した本発明の積層フィルムを使用して光学フィルタを製造する方法として、上記積層フィルムの粘着フィルムの基材を媒介にして上記積層フィルムの光配向膜に光を照射する段階を含む光学フィルタの製造方法に関する。
【0045】
このように粘着フィルムを媒介にして配向を行う場合、照射される光は、粘着フィルムの光透過領域だけに透過し、光透過領域に対応する光配向膜の領域だけが照射された光によって配向される。すなわち、光透過領域に対応する光配向膜の部位では、1次配向された方向が2次配向により変更されるか、あるいは無配向状態であった配向膜が配向されることができる。
【0046】
本発明の1つの例示では、前述したように、上記積層フィルムの光配向膜が直線偏光された紫外線、具体的には、基材の光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように直線偏光された紫外線、より好ましくは上記境界線と45度の角度で交差するように直線偏光された紫外線の照射により1次配向されたものであることができる。この場合、上記光学フィルムの製造方法において光の照射段階は、2次配向のための光の照射であることができ、前述したように、上記2次配向の光の照射は、直線偏光された紫外線の照射であって、その偏光角度は、上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光され、また、1次配向時の直線偏光の角度に対して互いに垂直であることができる。
【0047】
図5は、本発明の1つの例示的な光学フィルタの製造方法を模式的に示す図である。図5の(a)〜(d)に示されたように、本発明の製造方法は、基板1上に光配向膜2を形成し(図5の(a))、上記光配向膜2に偏光(矢印)を照射し、1次配向した後(図5の(b))、本発明による粘着フィルム3を光配向膜2に付着し(図5の(c))、1次配向と異なる角度に偏光された紫外線(矢印)を照射し、2次配向を行う段階を含むことができる(図5の(d))。これにより、互いに異なる配向方向を有する領域21、22が形成される。
【0048】
また、本発明の製造方法は、図5の(e)及び(f)で例示的に示されたように、光の照射後に粘着フィルム3を剥離し、光配向膜2上に液晶層4を形成する段階をさらに含むことができる。
【0049】
上記で液晶層4を形成する方法は、特に制限されず、例えば、(a)光配向膜上に光架橋性または光重合性液晶化合物を塗布及び配向処理する段階と、(b)上記液晶化合物を光架橋または光重合させる段階とを含むことができる。このような段階を進行することによって、液晶化合物の配向方向が異なる2種類以上の領域41、42が形成されることができる。
【0050】
上記で、光配向膜に塗布される液晶化合物の種類は、特に制限されず、光学フィルタの用途によって適宜選択されることができる。例えば、上記光学フィルタがパターン化位相差素子の場合、上記液晶化合物は、下部に存在する配向膜の配向パターンによって配向することができ、光架橋または光重合によりλ/4の位相差特性を示す液晶高分子層を形成することができる液晶化合物であることができる。このような液晶化合物を使用することによって、例えば、入射される光を左円偏光された光及び右円偏光された光に分割することができるパターン化された位相差素子を製造することができる。この分野では、目的する光学フィルタの用途によって使用可能な多様な種類の液晶化合物が公知されていて、本発明では、上記のような液晶化合物をすべて適宜選択して採用することができる。
【0051】
一方、上記段階で、液晶化合物を塗布し、また、配向処理、すなわち下部の配向膜の配向パターンによって整列させる方式は、特に制限されず、この分野において公知された適切な手法を採用して行うことができる。
【0052】
上記のような段階に引き続いて、適切な光の照射により配向処理された液晶化合物を架橋または重合させることによって、液晶層、例えば、位相遅延層を形成することができる。
【0053】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成されていて、且つ、第1方向に配向処理された第1配向領域と第2方向に配向処理された第2配向領域とを有する光配向膜とを含み、上記光配向膜において未配向部分の面積が全体光配向膜の面積に対して10%以下の光学フィルタに関する。
【0054】
本発明の光学フィルタは、例えば、立体映像表示装置に使用されるパターン化された位相差素子であることができる。
【0055】
本発明の光学フィルタにおいて使用されることができる基板及び光配向膜には、前述したものと同一の内容が適用されることができる。
【0056】
本発明の光学フィルタにおいて、光配向膜には、配向パターンが形成されていて、具体的には、一定の第1方向に配向されている第1配向領域と上記第1方向と異なる方向に配向されている第2配向領域とを含む配向パターンが形成されていて、例えば、前述したように、上記第1及び第2配向パターンは、光配向膜においてストライプ形状に交互に配置されてもよい。本発明では、特に上記のような配向パターンにおいて、未配向領域が、配向膜の全体面積に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。上記のような未配向領域は、例えば、従来技術において、光配向処理時に光配向膜とマスクとの間に存在する間隔に起因して、入射される光が上記間隔を経由しながら拡散するなどの現象により発生することができ、このような未配向領域は、配向領域間の境界部を不明確にし、表示装置への適用時にクロストークを誘発する原因となることができる。
【0057】
しかし、本発明の場合、前述したような特徴的な粘着フィルムを使用して、上記粘着フィルムを光配向膜に密着させた状態で配向処理を行うことによって、上記のような未配向領域の発生を最小化することができる。
【0058】
上記で、未配向領域は、吸収軸が互いに垂直に配置された2個の偏光子の間に光学フィルタを、配向方向を上記吸収軸に合わせて適宜配置し、上記偏光板を光源で照明すれば、未配向部分だけで光漏れが誘発される。したがって、上記未配向領域の面積比率は、上記状態で偏光顕微鏡で光漏れが発生する領域を観察する方式で測定することができる。
【0059】
また、本発明の光学フィルタは、下記一般式1で計算されるクロストーク率が5%以下、好ましくは2%以下であることができる。
【0060】
[一般式1]
XT=(XTL+XTR)/2
【0061】
上記一般式1で、XTは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置のクロストーク比率を示し、XTLは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して左目に観察されるクロストーク比率を示し、XTRは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して右目に観察されるクロストーク比率を示す。
【0062】
上記一般式1で、XTL及びXTRは、それぞれ下記一般式2及び3により計算することができる。
【0063】
[一般式2]
XTL={(L(LB−RW)−L(LB−RB)/(L(LW−RB)−L(LB−RB))}×100
【0064】
[一般式3]
XTR={(L(LW−RB)−L(LB−RB)/(L(LB−RW)−L(LB−RB))}×100
【0065】
上記式で、L(LB−RW)は、上記光学フィルタが適用された立体映像表示装置の表示部で左目用単位画素がブラックであり、右目用単位画素がホワイトである時の輝度を示し、L(LB−RB)は、上記表示部で左目用単位画素及び右目用単位画素がブラックである時の輝度を示し、L(LW−RB)は、上記表示部で左目用単位画素がホワイトであり、右目用単位画素がブラックである時の輝度を示す。
【0066】
上記で、各単位画素に状態によって輝度を測定する方式は、特に制限されず、この分野において公知された方式により測定することができる。
【0067】
本発明では、前述したような方式で配向膜を形成し、配向膜の未配向領域の範囲を最小化することによって、上記のような優れたクロストーク率を有する光学フィルタを提供することができる。
【0068】
本発明の光学フィルタは、上記光配向膜の上部に形成された液晶層をさらに含むことができ、前述したように、上記光学フィルタがパターン化された位相差素子の場合、上記液晶層は、位相遅延層、具体的には、λ/4波長の位相差特性を有する位相遅延層であることができる。このような位相遅延層には、下部の光配向膜の配向パターンによって形成されたものであって、第1方向に遅相軸を有する第1領域と上記第1方向と異なる方向に遅相軸を有する第2領域とを含むパターンが形成されてもよく、上記第1及び第2領域は、例えば、図2に記載されたパターンと同様に、立体映像装置の表示部の各画素に対応するようにそれぞれストライプ形状をもって交互に形成されてもよい。
【0069】
上記のような場合、第1領域の遅相軸は、第1及び第2領域の境界線と直交以外の角度、例えば、約45度の角度で交差する方向に形成されてもよい。また、第2領域の遅相軸は、やはり上記境界線と直交以外の角度で交差する方向に形成され、また、上記第1領域の遅相軸と垂直を成す角度に形成されてもよい。このような遅相軸関系が形成されたλ/4波長特性の位相遅延層は、立体映像表示装置への適用時にそれぞれ左円偏光及び右円偏光を生成することができる。
【0070】
また、本発明は、前述した本発明による光学フィルタを含む立体映像表示装置に関する。
【0071】
本発明の1つの例示において、上記光学フィルタは、パターン化された位相差素子であることができ、上記立体映像表示装置は、偏光眼鏡方式の立体映像表示装置であることができる。
【0072】
本発明の立体映像表示装置は、前述した本発明の光学フィルタを含む限り、その他の構成や動作方式は、特に制限されず、一般的な立体映像表示装置での構成及び動作方式を採用することができる。
【0073】
図6は、本発明の1つの例示による立体映像表示装置の断面構成を示すものである。
上記表示装置60は、偏光眼鏡を着用した観察者(図示せず)に立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置であることができる。このような表示装置60は、バックライトユニット61、液晶表示パネルなどのような表示パネル62及び位相差素子63を上記の順序に配置して構成されることができ、この場合、上記位相差素子63は、本発明による光学フィルタとして基板631と、上記基板上に形成された光配向膜(図示省略)及び上記光配向膜上に形成され、前述した第1及び第2領域632A及び632Bを有する液晶層632、すなわち位相遅延層を含むことができる。このような表示装置60において、位相差素子63の表面が映像表示面となり、観察者側に向かっている。また、本実施形態では、映像表示面が垂直面(図6のy−z平面)と平行となるように表示装置60が配置されているものとする。また、映像表示面は、例えば、長方(rectangular)形状であることができ、映像表示面の長手(longitudinal)方向が水平方向(図面中のy軸方向)と平行となっている。また、観察者は、偏光眼鏡を着用した後、映像表示面を観察することにする。
【0074】
バックライトユニット61は、図面には具体的に図示していないが、例えば反射板、光源及び光学シートを具備してもよい。反射板は、光源からの出射光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱及び/または拡散などの機能を有している。このような反射板は、例えば発泡PET(expanded polyethyleneterephthalate)などにより構成されることができる。これにより、光源からの出射光を効率的に利用することができる。光源は、表示パネル62を背後から照明するものであり、例えば、2個以上の線形状の光源が同一間隔で並列配置されるか、または複数の点形状の光源が2次元配列されたものであることができる。また、線形状の光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)または冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが使用されることができ、点形状の光源としては、例えばLED(Light Emitting Diode)などが使用されることができる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化するか、または光源からの光の発散角または偏光状態を目的する状態で調整するものであり、例えば拡散板(diffusion plate)、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子または位相差板などを含んで構成されることができる。また、光源は、エッジ型(edge−type)または直下型(direct−type)のいずれの形態でもよく、必要に応じて導光板または導光フィルムなどをさらに含むことができる。
【0075】
液晶表示パネル62は、複数の画素が行方向及び列方向に2次元配列された透過型表示パネルであり、映像信号により各画素を駆動することによって画像を表示することができ、上記各画素は、前述したように、例えば、図3に示されたように、左目用映像画素及び右目用映像画素を含むことができる。このような液晶表示パネル62は、例えば、図6のように、バックライトユニット61側から順に、透明基板622、画素電極623、配向膜624、液晶層625、配向膜626、共通電極627、カラーフィルタ628及び透明基板(対向基板)629を含むことができる。また、本発明では、上記パネルの入射側、すなわち透明基板622の面に第1偏光板621Aが付着されていて、上記入射側とは反対側、すなわち透明基板(対向基板)629には、第2偏光板621Bが付着されている。
【0076】
第1偏光板621Aは、表示パネル62にバックライトユニットからの光が入射する側に配置された偏光板であり、第2偏光板621Bは、表示パネル62から光が出射する側に配置された偏光板である。偏光板621A、621Bは、一種の光学シャッターであって、所定の振動方向の光のみを通過させる。偏光板621A、621Bは、それぞれ、例えば吸収軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されることができ、これにより、バックライトユニット61から出射される光が液晶層を経て透過するか、あるいは遮断されるようにすることができる。
【0077】
第1偏光板621Aの吸収軸(図示せず)の方向(direction)は、バックライトユニット61から出射された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット61から出射される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、偏光板621Aの吸収軸も垂直方向に向かっていて、バックライトユニット61から出射される光の偏光軸が水平方向の場合には、第1偏光板621Aの吸収軸も水平方向に向かうように配置される。また、バックライトユニット61から出射される光は、直線偏光光の場合に限るものではなく、円偏光、楕円偏光または無偏光であってもよい。
【0078】
第2偏光板21Bの吸収軸の方向は、表示パネル62を透過した光を透過させることができるように配置される。例えば、第1偏光板621Aの吸収軸の方向が水平方向の場合には、第2偏光板621Bの吸収軸は、上記と直交する方向、すなわち垂直方向に向かうことができ、第1偏光板621Aの吸収軸方向が垂直方向の場合には、第2偏光板621Bの吸収軸は、上記と直交する方向、すなわち水平方向に向かうことができる。
【0079】
透明基板622、629は、通常、可視光線に対して透明な基板である。また、バックライトユニット61側の透明基板には、例えば透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor)及び配線などを含むアクティブ型駆動回路が形成されることができる。画素電極623は、例えばITO(Indium Tin Oxide)よりなり、画素毎の電極として機能する。配向膜624は、例えばポリイミドなどの高分子材料よりなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層625は、例えばVA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶よりなる。この液晶層625は、駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット61からの出射光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極627は、例えばITOよりなり、共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ628は、バックライトユニット61からの出射光を、例えば赤色(Red)、緑色(Green)及び青色(Blue)の3元色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部628Aを配列して形成されることができる。このようなカラーフィルタ628では、フィルタ部628Aは、画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリックス部628Bが設置されてもよい。
【0080】
本発明の光学フィルタ63は、上記のような第2偏光板621Bから出射される光を、例えば、右円偏光及び左円偏光に分割し、さらに出射することによって、偏光眼鏡を着用した観測者に立体映像を表示することができるようにする。
【発明の効果】
【0081】
本発明は、光配向工程で未配向領域の発生を最小化し、且つ、高精度の配向パターンを形成することができる配向処理用粘着フィルムを提供し、また、それを含む積層フィルム、及びそれを用いた光学フィルタの製造方法を提供することができる。また、本発明は、優れた性能を有する光学フィルタまたは立体映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図2】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図3】立体映像表示装置の表示部の画素配列を例示的に示す図である。
【図4】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図5】本発明の光学フィルタの製造方法を模式的に示す段階図である。
【図6】本発明の例示的な立体映像表示装置を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図8】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図9】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図10】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図11】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図12】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図13】本発明の実施例で製造された光学フィルタを観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、本発明による実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって限定されるものではない。
【0084】
実施例1
[配向処理用粘着フィルムの製造]
光透過性シートであるトリアセチルセルロース基材(製造社:FUJI、商品名: UZ80)の表面に光遮断性インクを印刷し、光遮断領域を形成した。この場合、光遮断領域は、図2に示されたように、ストライプ状に形成し、光透過領域及び光遮断領域が交互に形成されるようにした。
この際、光透過領域及び光遮断領域のピッチ(図2のP)は、約1080μmであり、光遮断領域の間隔(図2のV)は、約540 μmであり、上記印刷厚さは、約1.5μmであった。次いで、上記基材のインク印刷面の反対面にアクリル系粘着剤を使用して粘着層を形成し、配向処理用粘着フィルムを製造した。このように製造された粘着フィルムの正面写真を図7に示した。
【0085】
[光学フィルタの製造]
上記製造された粘着フィルムを使用して、図5に示された方式で光学フィルタを製造した。まず、基板として、厚さが80μmのトリアセチルセルロース基板10の上部に乾燥厚さが1,000Aとなるようにポリシンナメート系光配向層20を形成した。上記光配向層20は、光配向層形成溶液をロールコーティング方法で基板10上にコーティングし、80℃で2分間乾燥させて、溶媒を除去して形成した。この際、上記溶液としては、下記化学式1のシンナメート基を有するポリノルボルネン(重量平均分子量(Mw)=150,000)及びアクリル系単量体の混合物を光開始剤(Igacure 907)と混合し、シクロヘキサノン溶媒にポリノルボルネンの固形分濃度が2wt%となるように溶解させて製造した(ポリノルボルネン:アクリル系単量体:光開始剤=2:1:0.25(重量比))。
【0086】
【化1】
【0087】
その後、上記光配向膜20上に直線偏光された紫外線(300mW/cm2)を照射し、光配向膜20を1次配向させた。この際、上記直線偏光された紫外線の偏光方向は、上記1次配向後に付着される上記粘着フィルムの方向を考慮して、粘着フィルムの光透過及び光遮断領域の境界線と45度の角度を成すように制御した。上記1次配向後に光配向膜20上に上記製造された粘着フィルム30を粘着層を媒介にして密着するように付着させた。その後、上記粘着フィルム30を媒介にして上記光配向膜20上に1次配向時と同様に直線偏光された紫外線(300mW/cm2)を照射し、2次配向を行った。但し、2次配向時には、直線偏光された紫外線の偏光方向は、上記1次配向時の直線偏光の角度と90度を成すように調節した。上記配向工程を終了した後、粘着フィルム30を剥離し、上記光配向膜にλ/4波長特性を有する位相遅延層4を形成した。具体的には、上記光配向膜上に液晶化合物(LC242TM、BASF(製))を約1μmの乾燥厚さとなるように塗布し、下部の光配向膜の配向によって配向させた後に、紫外線(300mW/cm2)を約10秒間照射し、液晶を架橋及び重合させて、下部光配向膜の配向によって遅相軸の方向が異なる領域を含む光学フィルタを製造した。
【0088】
比較例1
上記実施例1と同様の方式で光学フィルタを製造するが、2次配向過程で上記粘着フィルムを使用せず、光配向膜のパターン形成に通常的に使用されるマスクを上記配向膜から0.7mm離れた間隔に位置させた状態で、上記マスクを媒介にして直線偏光された紫外線を照射し、光学フィルタを製造した。
【0089】
比較例2
上記比較例1と同様の方式で光学フィルタを製造するが、2次配向過程でマスクを上記配向膜から1.1mm離れた間隔に位置させた状態で、上記マスクを媒介にして直線偏光された紫外線を照射し、光学フィルタを製造した。
【0090】
確認例1:配向状態の確認
実施例及び比較例でそれぞれ製造された光学フィルタに対して、位相遅延層のパターン形成状態を観察した。図8は、実施例1によって配向処理された光配向膜の拡大写真であり、図9は、上記光配向膜を媒介にして形成した位相遅延層の拡大写真である。また、図10は、比較例1によって配向処理された光配向膜の拡大写真であり、図11は、上記光配向膜を媒介にして形成した位相遅延層の拡大写真であり、図12は、比較例2によって形成された光配向膜の拡大写真である。図面から分かるように、本発明による場合、各パターン間の境界が鮮明に観察され、配向膜上の位相遅延層も精密な配向パターンが形成されるのに対し、比較例1及び2の場合、境界部が非常に不明確なパターンが形成されることを確認することができる。
【0091】
確認例2:未配向領域の比率及びクロストーク率
実施例及び比較例でそれぞれ製造された配向膜に対して、未配向領域の比率を測定し、また、光学フィルタを使用して、クロストーク率を測定した。未配向領域の比率は、吸収軸が垂直に配置された2枚の偏光板の間に光学フィルタを配置した後、光源で照明しながら、偏光顕微鏡で光漏れを観察する方式で測定した。また、クロストーク率は、製造された光学フィルタを、通常の立体映像表示装置に装着し、左目用及び右目用画素の輝度を変更しながら、画面表示面の正中央から約1.8m離れた位置で輝度を測定し、これを一般式1〜3に代入して測定した。
【0092】
上記測定された結果を下記表1にまとめて記載した。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1から明らかなように、本発明による実施例の場合、未配向領域がほとんど存在せず、また、表示装置への適用時にクロストークもほとんど発生しなかった。
【0095】
一方、図13は、本発明の実施例によって製造された光学フィルタを立体映像表示装置に装着した後、偏光眼鏡を着用した状態で観察した写真を示す。図13の(A)は、右目用眼鏡を着用した場合の写真であり、図13の(B)は、左目用眼鏡を着用した場合である。
【0096】
図13から分かるように、本発明の光学フィルタを通じて放出される互いに異なる偏光特性を有する左目及び右目画像を一方立体眼鏡を通じて透視すれば、眼鏡の位相差フィルムと配向方向が垂直である場合には、ブラックが表示され、水平の場合には、ホワイトが表示される。反対側眼鏡を着用して透視すれば、同じフィルムのブラック及びホワイトが反対に鮮明に変更されることを確認することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 基材
B 光遮断領域
T 光透過領域
P ピット
V 間隔
30 立体映像表示装置の表示部
UR 右目用単位画素
UL 左目用単位画素
W1,W2 単位画素の幅
20 粘着層
1 基材
2 光配向膜
3 粘着フィルム
21、22 配向領域
41、42 液晶配向領域
4 液晶層
60 立体映像表示装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向膜配向処理用粘着フィルム、積層フィルム、光学フィルタの製造方法、光学フィルタまたは立体映像表示装置に関する。
【0002】
本発明は、2010年1月22日付けで大韓民国で出願された大韓民国特許出願第2010−0005907号に基礎して優先権を主張し、その内容をここで採用する。
【背景技術】
【0003】
立体映像表示装置は、深さ感がある映像を表示することができるディスプレイ装置である。従来、映像表示装置は、映像表示面だけで情報を表現することができるので、表現しようとする対象の深さ情報は、すべて消失してしまう制約がある。
【0004】
立体映像表示装置は、空間内で対象を立体的に表示することができるので、物体本来の3次元情報をそのまま観察者に伝達することができ、現実感ある表現が可能である。
【0005】
立体映像表示技術は、大きく、眼鏡方式と無眼鏡方式とに分けられる。また、眼鏡方式は、偏光眼鏡方式とLCシャッター眼鏡(LC shutter glass)方式とに分類されることができ、無眼鏡方式は、2眼式/多視点両眼視差方式、体積型方式またはホログラフィック方式などに分類されることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光配向膜配向処理用粘着フィルム、積層フィルム、光学フィルタの製造方法、光学フィルタまたは立体映像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、光透過領域及び光遮断領域を有する基材を含む、光配向膜配向処理用粘着フィルムに関する。
【0008】
以下、本発明の粘着フィルムを詳しく説明する。
本発明の粘着フィルムは、例えば、光配向膜に光を照射し、配向処理を行う過程に使用されることができる。1つの例示において、上記粘着フィルムは、光配向膜に第1配向方向を有する第1配向領域と、上記第1配向方向と異なる第2配向方向を有する第2配向領域とを少なくとも含むパターンまたは配向方向が互いに異なる2種類以上の配向領域を形成するための配向処理を行う過程に使用されることができる。上記配向処理過程で、光透過及び光遮断領域が形成されている基材が一種のマスクの役目を行うことができる。特に、粘着フィルムの形態なので、上記基材を光配向膜に付着させた状態、すなわち光配向膜と基材との間に間隔が実質的に存在しない状態で配向処理を行うことができ、これにより、未配向領域が存在せず、高精度の配向パターンを形成することができる。
【0009】
用語「光配向膜」には、この分野において使用されているものであって、光の照射により含まれた分子の一定方向への配向が誘導されることができるすべての種類の配向膜が含まれることができる。1つの例示において、上記光配向膜は、偏光された紫外線、例えば直線偏光された紫外線の照射により配向が誘導され、また、その上部に液晶化合物が形成された時に液晶化合物との相互作用により上記液晶化合物の配向を誘導することができる配向膜であることができる。
【0010】
本発明の1つの例示において、上記光配向膜は、立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜であることができる。立体映像表示装置に適用される光学フィルタの例としては、パターン化された位相差素子(patterned retarder)が挙げられる。
【0011】
本発明において、用語「光透過領域」は、基材の上部または下部に入射される光を透過させて、反対側面に出射させることができる領域を意味し、用語「光遮断領域」は、基材の上部または下部に入射される光を吸収または遮断し、反対側面に出射させない領域を意味することができる。
【0012】
図1は、本発明の粘着フィルムに含まれる基材10を例示的に示す断面図である。図1に示されたように、粘着フィルムの基材10は、厚さ方向に照射される光(図面で矢印で表示される)を透過させることができる光透過領域T及び上記光を遮断または吸収することができる光遮断領域Bを含む。上記光透過及び光遮断領域は、基材にそれぞれ1つ以上形成されてもよい。
【0013】
本発明の基材において、上記光遮断領域及び光透過領域が形成される形態は、特に制限されず、目的する光配向膜の配向パターンによって決定されることができる。
【0014】
本発明の1つの例示において、上記光透過領域及び光遮断領域は、それぞれストライプ(stripe)形状を有し、且つ、互いに隣接して交互に形成されてもよい。図2は、本発明の1つの例示による基材を上部で観察した場合を模式的に示す図であり、図示の基材10では、光透過領域T及び光遮断領域Bがストライプ状に交互に形成されている。
【0015】
光透過領域及び光遮断領域がストライプ状に交互に形成される場合、上記領域のピッチ、すなわち1つの光遮断領域の線幅及び隣接する光遮断領域間の間隔の和(図2のP);及び隣接する光遮断領域の間隔(図2のV)は、特に制限されず、光配向膜が適用される用途によって決定されることができる。
【0016】
例えば、上記光配向膜が立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜である場合、光透過領域と隣接する光遮断領域のピッチは、上記立体映像表示装置の表示部の左目用映像または右目用映像を生成する単位画素(pixel)の幅の2倍であることができる。通常、立体映像表示装置は、例えば図6に示されたように、表示パネル62のような表示部及びパターン化位相差素子のような光学フィルタ63を含むことができる。また、上記で、表示部には、図3に示されたように、左目用映像を生成するための単位画素(左目用単位画素、図3のUL)及び右目用映像を生成するための単位画素(右目用単位画素、図3のUR)がストライプ形状に交互に配置されてもよい。本発明において、粘着フィルムが適用される光配向膜が前述のような立体映像表示装置の光学フィルタに適用されるものである場合、上記ピッチPは、上記表示部の単位画素(URまたはUL)の幅(図3のW1またはW2)の2倍の値と同一の数値を有することが好ましい。
【0017】
本発明において、用語「同一」は、本発明の効果を損傷させない範囲での実質的同一を意味するものであり、例えば、製造誤差(error)または偏差(variation)などを勘案した誤差を含むものである。
【0018】
例えば、上記ピッチが単位画素の幅の2倍と同一であることは、約±60μm以内の誤差、好ましくは約±40μm以内の誤差、より好ましくは約±20μm以内の誤差を含むものである。
【0019】
上記ピッチを前述のように調節し、配向処理後に配向膜上に未配向領域の発生を防止し、高精度の配向パターンを形成することができる。これにより、上記配向膜を含む光学フィルタが立体映像表示装置に適用される場合、いわゆるクロストークなどが誘発されないようにすることができる。
【0020】
隣接する光遮断領域の間隔(図2のV)は、立体映像表示装置の表示部で左目用単位画素または右目用単位画素の幅(例えば、図3のW1またはW2)と同一の数値を有することが好ましい。単位画素の幅と同一の数値は、前述した実質的な同一を意味し、例えば、±30μm以内の誤差、好ましくは約±20μm以内の誤差、より好ましくは約±10μm以内の誤差を含むものである。上記間隔を単位画素の幅と同一に設定し、配向処理時に未配向領域の発生を防止し、高精度の配向パターンを形成することができる。また、光学フィルタが表示装置に適用される場合に、各偏光変換部が左目用及び右目用映像生成部の単位画素と効果的に対応することができ、クロストークなどの発生を防止することができる。
【0021】
本発明の基材において光透過領域及び光遮断領域の形状が前述したストライプ状に制限されるものではなく、立体映像表示装置での画像生成部の形態または本発明の光配向膜が適用される他の用途によって変更されることができる。
【0022】
例えば、本発明の光配向膜が、立体映像表示装置の光学フィルタに適用され、また、表示部で左目用及び右目用単位画素が格子状に形成される場合、上記光遮断領域及び光透過領域も上記画素に対応するように格子状に配置されることができる。この場合、各領域のピッチ及び間隔は、前述したものと同一の方式で規定されることができが、例えば、光透過領域及び隣接する光遮断領域のピッチは、上記格子状に形成された左目用または右目用単位画素の幅の2倍と実質的に同一であることができる、また、隣接する光遮断領域間の間隔は、上記単位画素の幅と実質的に同一であることができる。上記で、ピッチ及び間隔は、格子状に配列される光透過領域及び光遮断領域で縦または横方向のピッチ及び間隔を意味することができ、単位画素の幅は、上記画素の縦または横方向の幅を意味することができる。
【0023】
本発明において、粘着フィルムの基材は、例えば、光透過性シートと、上記シート上で光遮断領域を形成している光遮断性または光吸収性インクとを含むことができる。
【0024】
すなわち、上記基材は、光透過性シートの表面に目的するパターンによって光遮断性または光吸収性インクを印刷し、光遮断領域を形成することによって製造することができる。
【0025】
上記で「光透過性シート」は、光配向処理に使用される光、例えば紫外線を有効に透過させることができるシートを意味し、上記で、有効な透過というのは、光配向膜の配向処理に有効な程度の量の透過を意味することができる。例えば、上記光透過性シートは、紫外線(UV)領域での光吸収率が低いシートであって、約320nm以下の波長の光に対する吸収率が10%以下のシートであることができる。このようなシートとしては、例えば、トリアセチルセルロースなどのようなセルロース系シートまたはノルボルネン誘導体シートなどのようなオレフイン系シートなどを挙げることができるが、シートが適切な光透過性を示す限り、上記に制限されるものではない。上記光透過性シートの厚さは、特に制限されず、目的用途及び光透過度などを考慮して適宜選択されることができる。
【0026】
上記のようなシートは、通常、光学フィルタの製造過程で配向膜の汚染を防止し、配向性を向上させるために使用される保護フィルムの基材として使用されることがある。本発明の1つの例示では、上記のような保護フィルムの基材に直接光遮断領域を形成することによって、上記保護フィルムが保護機能とともにマスクの機能を有することができるようにし、そのフィルムの付着の前及び/または後に光照射を行う方式を通じて、追加設備などを使用することなく、生産性が高い簡単な方法で高精度の光学フィルタを製造することができる。
【0027】
一方、上記シート上で光遮断領域を形成するインクの種類は、特に制限されず、公知の光遮断性または光吸収性インクを使用することができる。このようなインクの例としては、カーボンブラック(carbon black)、黒鉛または酸化鉄などのような無機顔料や、アゾ系顔料またはフタロシアニン系顔料などの有機顔料を含むインクを有することができ、上記のようなインクは、適切なバインダー(binder)及び/または溶剤(solvent)と配合され、印刷工程に適用されることができる。
【0028】
上記で光遮断領域を形成するための印刷方式は、特に制限されず、例えば、スクリーン印刷またはグラビア印刷などの通常的な印刷方式や、インクジェット方式による選択的なジェッティング方式を使用することができる。
【0029】
本発明において上記インクの印刷高さは、約0.1μm〜4μm、好ましくイ、約0.5μm〜2.0μm程度であることができる。しかし、本発明において印刷高さが上記に制限されるものではない。例えば、上記印刷高さが極めて低い場合、光遮断効果が低下することができ、反対に極めて高い場合、本発明の粘着フィルムを保護フィルムの用途に適用しにくい側面があるので、このような点を考慮して、印刷高さは、適宜選択されることができる。
【0030】
本発明の粘着フィルムは、上記のような基材の少なくとも一面に形成される粘着層をさらに含むことができ、このような粘着層は、上記基材を光配向膜に密着させるために使用されることができる。上記で、密着は、前述したように、光配向膜と基材との間に間隔が実質的に存在しない場合を意味する。図4は、本発明の粘着フィルムの1つの例示的な断面図であり、図4に示されたように、本発明の粘着フィルムは、光透過領域T及び光遮断領域Bが形成されている基材10と、該基材の一面に形成される粘着層20とを含むことができる。
【0031】
上記で使用されることができる粘着層の素材及びその厚さなどは、特に制限されず、配向処理の条件などを考慮して適宜選択されることができる。例えば、上記粘着層は、光透過性粘着剤として、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリイソブチレン系粘着剤、SBR(Styrene−butadiene rubber)などのようなゴム系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、メラミン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、フェノール系粘着剤またはシリコーン系粘着剤であるか、またはこれらのうち2種以上の混成粘着剤であることができる。
【0032】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成されている光配向膜と、上記光配向膜上に付着されている本発明による粘着フィルムとを含む光学フィルタ製造用積層フィルムに関する。
【0033】
本発明の上記積層フィルムに適用される基板の種類は、特に制限されず、例えば、光学フィルタに適用される通常的な基板が使用されることができる。このような基板の例としては、通常的なガラス基板またはプラスチック基板を挙げることができる。上記で、プラスチック基板の例としては、TAC(triacetyl cellulose)、COP(cyclo olefin copolymer)、Pac(Polyacrylate)、PES(poly ether sulfone)、PC(polycarbonate)、PEEK(polyetheretherketon)、PMMA(polymethylmethaacrylate)、PEI(polyetherimide)、PEN(polyethylenemaphthatlate)、PET(polyethyleneterephtalate)、PI(polyimide)、PSF(polysulfone)、PVA(polyvinylalcohol)、PAR(polyarylate)または非晶質フッ素樹脂材質の基板などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
本発明の1つの例示において、上記光学フィルタがパターン化された位相差素子の場合、上記プラスチック基板として、(−)cプレートの特性を有し、Reが約10nm以下、好ましくは約5nm以下であり、Rthが約300nm以下、好ましくは約100nm以下、より好ましくは約60nm以下、さらに好ましくは約15nm以下であり、屈折率が約1.33〜1.53の基板を使用することが好ましい。
【0035】
上記で、(−)cプレート特性は、基板の面内遅相軸方向の屈折率をNx、面内進相軸方向の屈折率をNy、厚さ方向の屈折率をNzとした場合、上記屈折率が「Nx=Ny>Nz」の関系を満足させる特性を意味し、Reは、「(Nx−Ny)×d」で計算される数値を示し、Rthは、{(Nx+Ny/2−Nz}×d」で計算される数値を示す(上記でdは基板の厚さである)。
【0036】
本発明では、上記のような光学異方性を有するプラスチック基板を使用することによって、例えば、光学フィルタがパターン化位相差素子の場合、その特性を極大化しながら表示装置でのクロストークなどを最小化することができ、また、所定の屈折率を有することによって、輝度なども優秀に維持することができる。特にこのような特性のプラスチック基板を使用し、より軽量で且つ薄膜化が可能となり、柔軟性などの特性に優れたフィルタを提供することができる。
【0037】
通常、光学フィルタの基板としてプラスチック基板を使用する場合、プラスチック基板の特性上、製造過程での成形温度または溶剤などによる影響を大きく受け、配向層などの収縮や膨脹などによって高精度の配向パターンを形成しにくいという短所があるが、前述した本発明の粘着フィルムを使用した配向処理を通じて上記のような短所を回避しながらプラスチック基板の使用による利点を極大化することができる。
【0038】
本発明の積層フィルムにおいて上記基板に形成される光配向膜の種類は、特に制限されず、この分野において公知されているすべての種類の光配向膜が使用されることができる。本発明の1つの例示において、上記光配向膜は、直線偏光の照射により誘導された、異性化(cis−trans isomerization)、フリース再配列(fries rearrangement)または二量化(dimerization)反応により配向が決定され、決定された配向により隣接する液晶層に配向を誘導することができる化合物を含むことができる。例えば、上記光配向膜は、アゾベンゼン(azobenzene)、スチリルベンゼン(styryl benzene)、クマリン(cumarine)、カルコン(chalcone)、フッ素及びシンナメート(cinnamate)よりなる群から選択される1つ以上の官能基または残基を有する単量体、オリゴマーまたは高分子化合物を含むことができ、好ましくはフッ素またはシンナメート残基を含むノルボルネン樹脂などを含むことができる。
【0039】
本発明において基板に上記のような光配向膜を形成する方式は、特に制限されず、例えば、前述した化合物を適切な溶剤などに希釈し、ロールコーティング、スピンコーティングまたはバーコーティングなどの公知のコーティング法で基板上にコーティングする方式で形成することができる。また、この場合、配向膜のコーティング厚さは、特に制限されない。
【0040】
本発明の積層フィルムにおいて上記光配向膜は、1次配向処理された光配向膜であることができる。上記で、1次配向処理は、例えば、一定方向に直線偏光された紫外線を粘着フィルムの付着前に光配向膜、好ましくは光配向膜の全面に照射することによって行うことができる。
【0041】
光配向膜の配向のために、例えば、直線偏光された紫外線を1回以上照射すれば、上記配向膜の配向は、最終的に照射される光により決定される。したがって、上記積層フィルムに含まれる光配向膜に一定方向に直線偏光された紫外線を照射し、1次配向させた後、後述するように、本発明の粘着フィルムを付着した状態で上記1次配向の直線偏光と異なる方向の直線偏光を照射し、2次配向させる場合、第1配向方向を有する第1配向領域と上記第1配向方向と異なる第2配向方向を有する第2配向領域とを少なくとも含むパターンまたは配向方向が互いに異なる2種類以上の配向領域を形成するための配向処理を効果的に行うことができる。
【0042】
本発明の1つの例示において、上記1次配向は、直線偏光された紫外線を使用して行い、上記で直線偏光された紫外線の偏光角度は、上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光されたものであることができ、より好ましくは、上記境界線と45度の角度で交差するように偏光されたものであることができる。以下、本発明で角度を規定する場合は、約±10度以下、より好ましくは約±5度以下、さらに好ましくは約±3度以下の誤差を含むものである。上記の場合において、粘着フィルムの付着後に行われる2次配向は、直線偏光された紫外線を使用して行い、2次配向の直線偏光された紫外線の偏光角度は、やはり上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光されたものであることができ、この場合、好ましくは上記2次配向の直線偏光の偏光角度と上記1次配向の偏光角度は、互いに垂直であることができる。このように1次及び2次配向の偏光角度を制御することによって、さらに優れた性能の光学フィルタを製造することができる。
【0043】
本発明の積層フィルムは、上記のような1次配向後または1次配向前の未配向された光配向膜に前述した本発明による粘着フィルムを付着させて製造することができる。この場合、粘着フィルムが粘着層を含む場合、上記粘着層を媒介にして光配向膜に付着することができる。このような積層フィルムにおいて上記粘着フィルムを上記光配向膜と密着していることが好ましい。本発明において粘着フィルムが光配向膜と密着しているということは、光配向膜と粘着フィルムとの間に間隔が実質的に存在しないことを意味する。このように粘着フィルムが光配向膜に密着することによって、照射される光が進行過程でフィルムと光配向膜との間で拡散し、所望の程度の均一な強さの光を照射することが困難になり、また、配向領域間の境界部が不明確になるか、または未配向領域が発生することを防止することができる。
【0044】
また、本発明は、前述した本発明の積層フィルムを使用して光学フィルタを製造する方法として、上記積層フィルムの粘着フィルムの基材を媒介にして上記積層フィルムの光配向膜に光を照射する段階を含む光学フィルタの製造方法に関する。
【0045】
このように粘着フィルムを媒介にして配向を行う場合、照射される光は、粘着フィルムの光透過領域だけに透過し、光透過領域に対応する光配向膜の領域だけが照射された光によって配向される。すなわち、光透過領域に対応する光配向膜の部位では、1次配向された方向が2次配向により変更されるか、あるいは無配向状態であった配向膜が配向されることができる。
【0046】
本発明の1つの例示では、前述したように、上記積層フィルムの光配向膜が直線偏光された紫外線、具体的には、基材の光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように直線偏光された紫外線、より好ましくは上記境界線と45度の角度で交差するように直線偏光された紫外線の照射により1次配向されたものであることができる。この場合、上記光学フィルムの製造方法において光の照射段階は、2次配向のための光の照射であることができ、前述したように、上記2次配向の光の照射は、直線偏光された紫外線の照射であって、その偏光角度は、上記粘着フィルムに形成されている光遮断及び光透過領域の境界線と直交以外の角度で交差するように偏光され、また、1次配向時の直線偏光の角度に対して互いに垂直であることができる。
【0047】
図5は、本発明の1つの例示的な光学フィルタの製造方法を模式的に示す図である。図5の(a)〜(d)に示されたように、本発明の製造方法は、基板1上に光配向膜2を形成し(図5の(a))、上記光配向膜2に偏光(矢印)を照射し、1次配向した後(図5の(b))、本発明による粘着フィルム3を光配向膜2に付着し(図5の(c))、1次配向と異なる角度に偏光された紫外線(矢印)を照射し、2次配向を行う段階を含むことができる(図5の(d))。これにより、互いに異なる配向方向を有する領域21、22が形成される。
【0048】
また、本発明の製造方法は、図5の(e)及び(f)で例示的に示されたように、光の照射後に粘着フィルム3を剥離し、光配向膜2上に液晶層4を形成する段階をさらに含むことができる。
【0049】
上記で液晶層4を形成する方法は、特に制限されず、例えば、(a)光配向膜上に光架橋性または光重合性液晶化合物を塗布及び配向処理する段階と、(b)上記液晶化合物を光架橋または光重合させる段階とを含むことができる。このような段階を進行することによって、液晶化合物の配向方向が異なる2種類以上の領域41、42が形成されることができる。
【0050】
上記で、光配向膜に塗布される液晶化合物の種類は、特に制限されず、光学フィルタの用途によって適宜選択されることができる。例えば、上記光学フィルタがパターン化位相差素子の場合、上記液晶化合物は、下部に存在する配向膜の配向パターンによって配向することができ、光架橋または光重合によりλ/4の位相差特性を示す液晶高分子層を形成することができる液晶化合物であることができる。このような液晶化合物を使用することによって、例えば、入射される光を左円偏光された光及び右円偏光された光に分割することができるパターン化された位相差素子を製造することができる。この分野では、目的する光学フィルタの用途によって使用可能な多様な種類の液晶化合物が公知されていて、本発明では、上記のような液晶化合物をすべて適宜選択して採用することができる。
【0051】
一方、上記段階で、液晶化合物を塗布し、また、配向処理、すなわち下部の配向膜の配向パターンによって整列させる方式は、特に制限されず、この分野において公知された適切な手法を採用して行うことができる。
【0052】
上記のような段階に引き続いて、適切な光の照射により配向処理された液晶化合物を架橋または重合させることによって、液晶層、例えば、位相遅延層を形成することができる。
【0053】
また、本発明は、基板と、上記基板上に形成されていて、且つ、第1方向に配向処理された第1配向領域と第2方向に配向処理された第2配向領域とを有する光配向膜とを含み、上記光配向膜において未配向部分の面積が全体光配向膜の面積に対して10%以下の光学フィルタに関する。
【0054】
本発明の光学フィルタは、例えば、立体映像表示装置に使用されるパターン化された位相差素子であることができる。
【0055】
本発明の光学フィルタにおいて使用されることができる基板及び光配向膜には、前述したものと同一の内容が適用されることができる。
【0056】
本発明の光学フィルタにおいて、光配向膜には、配向パターンが形成されていて、具体的には、一定の第1方向に配向されている第1配向領域と上記第1方向と異なる方向に配向されている第2配向領域とを含む配向パターンが形成されていて、例えば、前述したように、上記第1及び第2配向パターンは、光配向膜においてストライプ形状に交互に配置されてもよい。本発明では、特に上記のような配向パターンにおいて、未配向領域が、配向膜の全体面積に対して10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下である。上記のような未配向領域は、例えば、従来技術において、光配向処理時に光配向膜とマスクとの間に存在する間隔に起因して、入射される光が上記間隔を経由しながら拡散するなどの現象により発生することができ、このような未配向領域は、配向領域間の境界部を不明確にし、表示装置への適用時にクロストークを誘発する原因となることができる。
【0057】
しかし、本発明の場合、前述したような特徴的な粘着フィルムを使用して、上記粘着フィルムを光配向膜に密着させた状態で配向処理を行うことによって、上記のような未配向領域の発生を最小化することができる。
【0058】
上記で、未配向領域は、吸収軸が互いに垂直に配置された2個の偏光子の間に光学フィルタを、配向方向を上記吸収軸に合わせて適宜配置し、上記偏光板を光源で照明すれば、未配向部分だけで光漏れが誘発される。したがって、上記未配向領域の面積比率は、上記状態で偏光顕微鏡で光漏れが発生する領域を観察する方式で測定することができる。
【0059】
また、本発明の光学フィルタは、下記一般式1で計算されるクロストーク率が5%以下、好ましくは2%以下であることができる。
【0060】
[一般式1]
XT=(XTL+XTR)/2
【0061】
上記一般式1で、XTは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置のクロストーク比率を示し、XTLは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して左目に観察されるクロストーク比率を示し、XTRは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して右目に観察されるクロストーク比率を示す。
【0062】
上記一般式1で、XTL及びXTRは、それぞれ下記一般式2及び3により計算することができる。
【0063】
[一般式2]
XTL={(L(LB−RW)−L(LB−RB)/(L(LW−RB)−L(LB−RB))}×100
【0064】
[一般式3]
XTR={(L(LW−RB)−L(LB−RB)/(L(LB−RW)−L(LB−RB))}×100
【0065】
上記式で、L(LB−RW)は、上記光学フィルタが適用された立体映像表示装置の表示部で左目用単位画素がブラックであり、右目用単位画素がホワイトである時の輝度を示し、L(LB−RB)は、上記表示部で左目用単位画素及び右目用単位画素がブラックである時の輝度を示し、L(LW−RB)は、上記表示部で左目用単位画素がホワイトであり、右目用単位画素がブラックである時の輝度を示す。
【0066】
上記で、各単位画素に状態によって輝度を測定する方式は、特に制限されず、この分野において公知された方式により測定することができる。
【0067】
本発明では、前述したような方式で配向膜を形成し、配向膜の未配向領域の範囲を最小化することによって、上記のような優れたクロストーク率を有する光学フィルタを提供することができる。
【0068】
本発明の光学フィルタは、上記光配向膜の上部に形成された液晶層をさらに含むことができ、前述したように、上記光学フィルタがパターン化された位相差素子の場合、上記液晶層は、位相遅延層、具体的には、λ/4波長の位相差特性を有する位相遅延層であることができる。このような位相遅延層には、下部の光配向膜の配向パターンによって形成されたものであって、第1方向に遅相軸を有する第1領域と上記第1方向と異なる方向に遅相軸を有する第2領域とを含むパターンが形成されてもよく、上記第1及び第2領域は、例えば、図2に記載されたパターンと同様に、立体映像装置の表示部の各画素に対応するようにそれぞれストライプ形状をもって交互に形成されてもよい。
【0069】
上記のような場合、第1領域の遅相軸は、第1及び第2領域の境界線と直交以外の角度、例えば、約45度の角度で交差する方向に形成されてもよい。また、第2領域の遅相軸は、やはり上記境界線と直交以外の角度で交差する方向に形成され、また、上記第1領域の遅相軸と垂直を成す角度に形成されてもよい。このような遅相軸関系が形成されたλ/4波長特性の位相遅延層は、立体映像表示装置への適用時にそれぞれ左円偏光及び右円偏光を生成することができる。
【0070】
また、本発明は、前述した本発明による光学フィルタを含む立体映像表示装置に関する。
【0071】
本発明の1つの例示において、上記光学フィルタは、パターン化された位相差素子であることができ、上記立体映像表示装置は、偏光眼鏡方式の立体映像表示装置であることができる。
【0072】
本発明の立体映像表示装置は、前述した本発明の光学フィルタを含む限り、その他の構成や動作方式は、特に制限されず、一般的な立体映像表示装置での構成及び動作方式を採用することができる。
【0073】
図6は、本発明の1つの例示による立体映像表示装置の断面構成を示すものである。
上記表示装置60は、偏光眼鏡を着用した観察者(図示せず)に立体映像を表示する偏光眼鏡方式の表示装置であることができる。このような表示装置60は、バックライトユニット61、液晶表示パネルなどのような表示パネル62及び位相差素子63を上記の順序に配置して構成されることができ、この場合、上記位相差素子63は、本発明による光学フィルタとして基板631と、上記基板上に形成された光配向膜(図示省略)及び上記光配向膜上に形成され、前述した第1及び第2領域632A及び632Bを有する液晶層632、すなわち位相遅延層を含むことができる。このような表示装置60において、位相差素子63の表面が映像表示面となり、観察者側に向かっている。また、本実施形態では、映像表示面が垂直面(図6のy−z平面)と平行となるように表示装置60が配置されているものとする。また、映像表示面は、例えば、長方(rectangular)形状であることができ、映像表示面の長手(longitudinal)方向が水平方向(図面中のy軸方向)と平行となっている。また、観察者は、偏光眼鏡を着用した後、映像表示面を観察することにする。
【0074】
バックライトユニット61は、図面には具体的に図示していないが、例えば反射板、光源及び光学シートを具備してもよい。反射板は、光源からの出射光を光学シート側に戻すものであり、反射、散乱及び/または拡散などの機能を有している。このような反射板は、例えば発泡PET(expanded polyethyleneterephthalate)などにより構成されることができる。これにより、光源からの出射光を効率的に利用することができる。光源は、表示パネル62を背後から照明するものであり、例えば、2個以上の線形状の光源が同一間隔で並列配置されるか、または複数の点形状の光源が2次元配列されたものであることができる。また、線形状の光源としては、例えば、熱陰極管(HCFL;Hot Cathode Fluorescent Lamp)または冷陰極管(CCFL;Cold Cathode Fluorescent Lamp)などが使用されることができ、点形状の光源としては、例えばLED(Light Emitting Diode)などが使用されることができる。光学シートは、光源からの光の面内輝度分布を均一化するか、または光源からの光の発散角または偏光状態を目的する状態で調整するものであり、例えば拡散板(diffusion plate)、拡散シート、プリズムシート、反射型偏光素子または位相差板などを含んで構成されることができる。また、光源は、エッジ型(edge−type)または直下型(direct−type)のいずれの形態でもよく、必要に応じて導光板または導光フィルムなどをさらに含むことができる。
【0075】
液晶表示パネル62は、複数の画素が行方向及び列方向に2次元配列された透過型表示パネルであり、映像信号により各画素を駆動することによって画像を表示することができ、上記各画素は、前述したように、例えば、図3に示されたように、左目用映像画素及び右目用映像画素を含むことができる。このような液晶表示パネル62は、例えば、図6のように、バックライトユニット61側から順に、透明基板622、画素電極623、配向膜624、液晶層625、配向膜626、共通電極627、カラーフィルタ628及び透明基板(対向基板)629を含むことができる。また、本発明では、上記パネルの入射側、すなわち透明基板622の面に第1偏光板621Aが付着されていて、上記入射側とは反対側、すなわち透明基板(対向基板)629には、第2偏光板621Bが付着されている。
【0076】
第1偏光板621Aは、表示パネル62にバックライトユニットからの光が入射する側に配置された偏光板であり、第2偏光板621Bは、表示パネル62から光が出射する側に配置された偏光板である。偏光板621A、621Bは、一種の光学シャッターであって、所定の振動方向の光のみを通過させる。偏光板621A、621Bは、それぞれ、例えば吸収軸が互いに所定の角度だけ(例えば90度)異なるように配置されることができ、これにより、バックライトユニット61から出射される光が液晶層を経て透過するか、あるいは遮断されるようにすることができる。
【0077】
第1偏光板621Aの吸収軸(図示せず)の方向(direction)は、バックライトユニット61から出射された光を透過可能な範囲内に設定される。例えば、バックライトユニット61から出射される光の偏光軸が垂直方向となっている場合には、偏光板621Aの吸収軸も垂直方向に向かっていて、バックライトユニット61から出射される光の偏光軸が水平方向の場合には、第1偏光板621Aの吸収軸も水平方向に向かうように配置される。また、バックライトユニット61から出射される光は、直線偏光光の場合に限るものではなく、円偏光、楕円偏光または無偏光であってもよい。
【0078】
第2偏光板21Bの吸収軸の方向は、表示パネル62を透過した光を透過させることができるように配置される。例えば、第1偏光板621Aの吸収軸の方向が水平方向の場合には、第2偏光板621Bの吸収軸は、上記と直交する方向、すなわち垂直方向に向かうことができ、第1偏光板621Aの吸収軸方向が垂直方向の場合には、第2偏光板621Bの吸収軸は、上記と直交する方向、すなわち水平方向に向かうことができる。
【0079】
透明基板622、629は、通常、可視光線に対して透明な基板である。また、バックライトユニット61側の透明基板には、例えば透明画素電極に電気的に接続された駆動素子としてのTFT(Thin Film Transistor)及び配線などを含むアクティブ型駆動回路が形成されることができる。画素電極623は、例えばITO(Indium Tin Oxide)よりなり、画素毎の電極として機能する。配向膜624は、例えばポリイミドなどの高分子材料よりなり、液晶に対して配向処理を行う。液晶層625は、例えばVA(Vertical Alignment)モード、TN(Twisted Nematic)モードまたはSTN(Super Twisted Nematic)モードの液晶よりなる。この液晶層625は、駆動回路からの印加電圧により、バックライトユニット61からの出射光を画素ごとに透過または遮断する機能を有している。共通電極627は、例えばITOよりなり、共通の対向電極として機能する。カラーフィルタ628は、バックライトユニット61からの出射光を、例えば赤色(Red)、緑色(Green)及び青色(Blue)の3元色にそれぞれ色分離するためのフィルタ部628Aを配列して形成されることができる。このようなカラーフィルタ628では、フィルタ部628Aは、画素間の境界に対応する部分に、遮光機能を有するブラックマトリックス部628Bが設置されてもよい。
【0080】
本発明の光学フィルタ63は、上記のような第2偏光板621Bから出射される光を、例えば、右円偏光及び左円偏光に分割し、さらに出射することによって、偏光眼鏡を着用した観測者に立体映像を表示することができるようにする。
【発明の効果】
【0081】
本発明は、光配向工程で未配向領域の発生を最小化し、且つ、高精度の配向パターンを形成することができる配向処理用粘着フィルムを提供し、また、それを含む積層フィルム、及びそれを用いた光学フィルタの製造方法を提供することができる。また、本発明は、優れた性能を有する光学フィルタまたは立体映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図2】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図3】立体映像表示装置の表示部の画素配列を例示的に示す図である。
【図4】本発明の例示的な粘着フィルムを示す模式図である。
【図5】本発明の光学フィルタの製造方法を模式的に示す段階図である。
【図6】本発明の例示的な立体映像表示装置を示す模式図である。
【図7】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図8】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図9】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図10】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図11】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図12】本発明の実施例及び比較例で形成された光配向膜または液晶層を示す拡大写真である。
【図13】本発明の実施例で製造された光学フィルタを観察した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0083】
以下、本発明による実施例及び比較例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例によって限定されるものではない。
【0084】
実施例1
[配向処理用粘着フィルムの製造]
光透過性シートであるトリアセチルセルロース基材(製造社:FUJI、商品名: UZ80)の表面に光遮断性インクを印刷し、光遮断領域を形成した。この場合、光遮断領域は、図2に示されたように、ストライプ状に形成し、光透過領域及び光遮断領域が交互に形成されるようにした。
この際、光透過領域及び光遮断領域のピッチ(図2のP)は、約1080μmであり、光遮断領域の間隔(図2のV)は、約540 μmであり、上記印刷厚さは、約1.5μmであった。次いで、上記基材のインク印刷面の反対面にアクリル系粘着剤を使用して粘着層を形成し、配向処理用粘着フィルムを製造した。このように製造された粘着フィルムの正面写真を図7に示した。
【0085】
[光学フィルタの製造]
上記製造された粘着フィルムを使用して、図5に示された方式で光学フィルタを製造した。まず、基板として、厚さが80μmのトリアセチルセルロース基板10の上部に乾燥厚さが1,000Aとなるようにポリシンナメート系光配向層20を形成した。上記光配向層20は、光配向層形成溶液をロールコーティング方法で基板10上にコーティングし、80℃で2分間乾燥させて、溶媒を除去して形成した。この際、上記溶液としては、下記化学式1のシンナメート基を有するポリノルボルネン(重量平均分子量(Mw)=150,000)及びアクリル系単量体の混合物を光開始剤(Igacure 907)と混合し、シクロヘキサノン溶媒にポリノルボルネンの固形分濃度が2wt%となるように溶解させて製造した(ポリノルボルネン:アクリル系単量体:光開始剤=2:1:0.25(重量比))。
【0086】
【化1】
【0087】
その後、上記光配向膜20上に直線偏光された紫外線(300mW/cm2)を照射し、光配向膜20を1次配向させた。この際、上記直線偏光された紫外線の偏光方向は、上記1次配向後に付着される上記粘着フィルムの方向を考慮して、粘着フィルムの光透過及び光遮断領域の境界線と45度の角度を成すように制御した。上記1次配向後に光配向膜20上に上記製造された粘着フィルム30を粘着層を媒介にして密着するように付着させた。その後、上記粘着フィルム30を媒介にして上記光配向膜20上に1次配向時と同様に直線偏光された紫外線(300mW/cm2)を照射し、2次配向を行った。但し、2次配向時には、直線偏光された紫外線の偏光方向は、上記1次配向時の直線偏光の角度と90度を成すように調節した。上記配向工程を終了した後、粘着フィルム30を剥離し、上記光配向膜にλ/4波長特性を有する位相遅延層4を形成した。具体的には、上記光配向膜上に液晶化合物(LC242TM、BASF(製))を約1μmの乾燥厚さとなるように塗布し、下部の光配向膜の配向によって配向させた後に、紫外線(300mW/cm2)を約10秒間照射し、液晶を架橋及び重合させて、下部光配向膜の配向によって遅相軸の方向が異なる領域を含む光学フィルタを製造した。
【0088】
比較例1
上記実施例1と同様の方式で光学フィルタを製造するが、2次配向過程で上記粘着フィルムを使用せず、光配向膜のパターン形成に通常的に使用されるマスクを上記配向膜から0.7mm離れた間隔に位置させた状態で、上記マスクを媒介にして直線偏光された紫外線を照射し、光学フィルタを製造した。
【0089】
比較例2
上記比較例1と同様の方式で光学フィルタを製造するが、2次配向過程でマスクを上記配向膜から1.1mm離れた間隔に位置させた状態で、上記マスクを媒介にして直線偏光された紫外線を照射し、光学フィルタを製造した。
【0090】
確認例1:配向状態の確認
実施例及び比較例でそれぞれ製造された光学フィルタに対して、位相遅延層のパターン形成状態を観察した。図8は、実施例1によって配向処理された光配向膜の拡大写真であり、図9は、上記光配向膜を媒介にして形成した位相遅延層の拡大写真である。また、図10は、比較例1によって配向処理された光配向膜の拡大写真であり、図11は、上記光配向膜を媒介にして形成した位相遅延層の拡大写真であり、図12は、比較例2によって形成された光配向膜の拡大写真である。図面から分かるように、本発明による場合、各パターン間の境界が鮮明に観察され、配向膜上の位相遅延層も精密な配向パターンが形成されるのに対し、比較例1及び2の場合、境界部が非常に不明確なパターンが形成されることを確認することができる。
【0091】
確認例2:未配向領域の比率及びクロストーク率
実施例及び比較例でそれぞれ製造された配向膜に対して、未配向領域の比率を測定し、また、光学フィルタを使用して、クロストーク率を測定した。未配向領域の比率は、吸収軸が垂直に配置された2枚の偏光板の間に光学フィルタを配置した後、光源で照明しながら、偏光顕微鏡で光漏れを観察する方式で測定した。また、クロストーク率は、製造された光学フィルタを、通常の立体映像表示装置に装着し、左目用及び右目用画素の輝度を変更しながら、画面表示面の正中央から約1.8m離れた位置で輝度を測定し、これを一般式1〜3に代入して測定した。
【0092】
上記測定された結果を下記表1にまとめて記載した。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1から明らかなように、本発明による実施例の場合、未配向領域がほとんど存在せず、また、表示装置への適用時にクロストークもほとんど発生しなかった。
【0095】
一方、図13は、本発明の実施例によって製造された光学フィルタを立体映像表示装置に装着した後、偏光眼鏡を着用した状態で観察した写真を示す。図13の(A)は、右目用眼鏡を着用した場合の写真であり、図13の(B)は、左目用眼鏡を着用した場合である。
【0096】
図13から分かるように、本発明の光学フィルタを通じて放出される互いに異なる偏光特性を有する左目及び右目画像を一方立体眼鏡を通じて透視すれば、眼鏡の位相差フィルムと配向方向が垂直である場合には、ブラックが表示され、水平の場合には、ホワイトが表示される。反対側眼鏡を着用して透視すれば、同じフィルムのブラック及びホワイトが反対に鮮明に変更されることを確認することができる。
【符号の説明】
【0097】
10 基材
B 光遮断領域
T 光透過領域
P ピット
V 間隔
30 立体映像表示装置の表示部
UR 右目用単位画素
UL 左目用単位画素
W1,W2 単位画素の幅
20 粘着層
1 基材
2 光配向膜
3 粘着フィルム
21、22 配向領域
41、42 液晶配向領域
4 液晶層
60 立体映像表示装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過領域及び光遮断領域を含む基材を含む、光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項2】
光透過領域及び光遮断領域がそれぞれストライプ形状を有し、且つ、互いに隣接して交互に形成されている、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項3】
光配向膜が立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜であり、光透過領域と上記光透過領域に隣接する光遮断領域のピッチは、上記立体映像表示装置の表示部の左目用単位画素または右目用単位画素の幅の2倍である、請求項2に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項4】
隣接する光遮断領域間の間隔が、表示部の左目用単位画素または右目用単位画素の幅と同一である、請求項3に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項5】
光透過性シート、及び上記シート上で光遮断領域を形成している光遮断性または光吸収性インクを含む、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項6】
基材の少なくとも一面に形成されていて、且つ、基材を光配向膜に密着させるための粘着層をさらに含む、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項7】
基板;
上記基板上に形成されている光配向膜;及び
上記光配向膜上に付着されている請求項1に記載の粘着フィルムを含む、光学フィルタ製造用積層フィルム。
【請求項8】
光配向膜は、直線偏光された紫外線により1次配向処理されている光配向膜である、請求項7に記載の光学フィルタ製造用積層フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載の積層フィルムの粘着フィルムの基材を媒介にして上記積層フィルムの光配向膜に光を照射する段階を含む光学フィルタの製造方法。
【請求項10】
光の照射後に粘着フィルムを剥離し、光配向膜上に液晶層を形成する段階をさらに含む、請求項9に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項11】
液晶層の形成は、(a)光配向膜上に光架橋性または光重合性液晶化合物を塗布及び配向処理し、(b)上記液晶化合物を光架橋または光重合させる段階を含む、請求項10に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項12】
基板;及び
上記基板上に形成されていて、且つ、第1方向に配向処理された第1配向領域と第2方向に配向処理された第2配向領域を有する光配向膜を含み、
上記光配向膜で未配向部分の面積が全体光配向膜の面積に対して10%以下である光学フィルタ。
【請求項13】
下記一般式1で計算されるクロストーク率が5%以下である、請求項12に記載の光学フィルタ:
[一般式1]
XT=(XTL+XTR)/2
上記一般式1で、XTは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置のクロストーク比率を示し、XTLは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して左目で観察されるクロストーク比率を示し、XTRは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して右目で観察されるクロストーク比率を示す。
【請求項14】
光配向膜上に形成されている位相遅延層をさらに含む、請求項12に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載の光学フィルタを含む立体映像表示装置。
【請求項1】
光透過領域及び光遮断領域を含む基材を含む、光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項2】
光透過領域及び光遮断領域がそれぞれストライプ形状を有し、且つ、互いに隣接して交互に形成されている、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項3】
光配向膜が立体映像表示装置の光学フィルタ用光配向膜であり、光透過領域と上記光透過領域に隣接する光遮断領域のピッチは、上記立体映像表示装置の表示部の左目用単位画素または右目用単位画素の幅の2倍である、請求項2に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項4】
隣接する光遮断領域間の間隔が、表示部の左目用単位画素または右目用単位画素の幅と同一である、請求項3に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項5】
光透過性シート、及び上記シート上で光遮断領域を形成している光遮断性または光吸収性インクを含む、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項6】
基材の少なくとも一面に形成されていて、且つ、基材を光配向膜に密着させるための粘着層をさらに含む、請求項1に記載の光配向膜配向処理用粘着フィルム。
【請求項7】
基板;
上記基板上に形成されている光配向膜;及び
上記光配向膜上に付着されている請求項1に記載の粘着フィルムを含む、光学フィルタ製造用積層フィルム。
【請求項8】
光配向膜は、直線偏光された紫外線により1次配向処理されている光配向膜である、請求項7に記載の光学フィルタ製造用積層フィルム。
【請求項9】
請求項7に記載の積層フィルムの粘着フィルムの基材を媒介にして上記積層フィルムの光配向膜に光を照射する段階を含む光学フィルタの製造方法。
【請求項10】
光の照射後に粘着フィルムを剥離し、光配向膜上に液晶層を形成する段階をさらに含む、請求項9に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項11】
液晶層の形成は、(a)光配向膜上に光架橋性または光重合性液晶化合物を塗布及び配向処理し、(b)上記液晶化合物を光架橋または光重合させる段階を含む、請求項10に記載の光学フィルタの製造方法。
【請求項12】
基板;及び
上記基板上に形成されていて、且つ、第1方向に配向処理された第1配向領域と第2方向に配向処理された第2配向領域を有する光配向膜を含み、
上記光配向膜で未配向部分の面積が全体光配向膜の面積に対して10%以下である光学フィルタ。
【請求項13】
下記一般式1で計算されるクロストーク率が5%以下である、請求項12に記載の光学フィルタ:
[一般式1]
XT=(XTL+XTR)/2
上記一般式1で、XTは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置のクロストーク比率を示し、XTLは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して左目で観察されるクロストーク比率を示し、XTRは、上記光学フィルタが装着された立体映像表示装置に対して右目で観察されるクロストーク比率を示す。
【請求項14】
光配向膜上に形成されている位相遅延層をさらに含む、請求項12に記載の光学フィルタ。
【請求項15】
請求項14に記載の光学フィルタを含む立体映像表示装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図5(e)】
【図5(f)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(A)】
【図13(B)】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5(a)】
【図5(b)】
【図5(c)】
【図5(d)】
【図5(e)】
【図5(f)】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13(A)】
【図13(B)】
【公表番号】特表2013−518296(P2013−518296A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549948(P2012−549948)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000492
【国際公開番号】WO2011/090355
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000492
【国際公開番号】WO2011/090355
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】
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