説明

光量調節装置

【課題】駆動レバーの位置精度をラフに設定した場合であっても、所望の通過光量に調節することができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】光量調節装置1は、光路開口61を有する地板60と、互いに相反する方向に移動して光路開口61を通過する光量を調節する第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50と、これら一対の羽根と連結され回動することにより一対の羽根を駆動する駆動レバー70とを備え、駆動レバー70は、一対の羽根が光路開口61を所定の通過光量に調節する際に、駆動レバー70の回動の中心を通過し羽根の移動方向に平行な仮想線Aを中心とする90度の角度範囲内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ用の光量調節装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カメラ用の光量調節装置として、開口部を有する地板に対して少なくとも2枚の羽根を直線的に相反する方向に移動自在に支持し、これらの羽根と連結された駆動レバーの円弧運動を、直線運動として羽根に出力して、開口部を通過する光量を調節する装置が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−241224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光量調節装置は、駆動レバーの円弧運動の方向と、羽根の移動方向とは、略平行に近いため、駆動レバーの位置ずれによる絞り羽根の位置ずれへの影響が大きかった。特に、開口部を所望の通過光量に調節、すなわち所望の開口径を保持する際には、このような駆動レバーのわずかな位置ずれにより、開口径が大きく変動する恐れがあった。従って、従来の光量調節装置は、駆動レバーの位置精度を正確に設定する必要があった。
【0005】
そこで、本発明は、駆動レバーの位置精度をラフに設定した場合であっても、所望の開口径を保持することができる光量調節装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、開口部を有する地板と、互いに相反する方向に直進移動して前記開口部を通過する光量を調節する一対の羽根と、前記一対の羽根と連結され回動することにより前記一対の羽根を駆動する駆動レバーとを備え、前記駆動レバーは該駆動レバーの回動の中心を通過し前記羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内で回動する、ことを特徴とする光量調節装置によって達成できる。
この構成により、駆動レバーは、一対の羽根が開口部を全閉状態叉は全開状態にする際に、その回動の中心を通過し羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内で回動するので、所定の開口径から駆動レバーの位置が僅かにずれた場合であっても、羽根の移動には大きく影響しない。従って、駆動レバーの位置精度をラフに設定した場合であっても、所望の開口径を保持することができる。
【0007】
また上記目的は、開口部を有する地板と、互いに相反する方向に直進移動して前記開口部を通過する光量を調節する一対の羽根と、前記一対の羽根と連結され回動することにより前記一対の羽根を駆動する駆動レバーとを備え、前記駆動レバーはその回動範囲の一端から他端の間に少なくとも1ヶ所の途中位置において停止位置を有し、前記停止位置における前記駆動レバーは該駆動レバーの回動の中心を通過し前記羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内に位置する、ことを特徴とする光量調節装置によって達成できる。
この構成により、駆動レバーは、一対の羽根が開口部を所定の開口径にする際に、その回動の中心を通過し羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内に位置するので、所定の開口径から駆動レバーの位置が僅かにずれた場合であっても、羽根の移動には大きく影響しない。従って、駆動レバーの位置精度をラフに設定した場合であっても、所望の開口径を保持することができる。
【0008】
また、上記の各構成において、前記一対の羽根は、前記駆動レバーに突設されたピンに係合する長孔がそれぞれに形成され、前記長孔は、各羽根に幅方向に渡って形成されている、構成を採用できる。
この構成により、前記一対の羽根の幅方向に渡って長孔が形成されているので、前記駆動レバーは、その回動の中心を通過し前記羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内に位置することができる。
【0009】
また、上記構成において、前記途中位置における前記開口部の状態は、全閉状態である、構成を採用できる。
この構成により、全閉時における再露光を防止できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、駆動レバーの位置精度をラフに設定した場合であっても、所望の開口径を保持することができる光量調節装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明に係る実施例を説明する。
【0012】
図面を参照しながら本実施例の光量調節装置の構成を説明する。図1は、上方から見た光量調節装置1の分解斜視図である。図2は、下方から見た光量調節装置1の分解斜視図である。
光量調節装置1は、羽根押さえ板10、第1羽根20、補助羽根30、羽根受け板40、第2羽根50、地板60、駆動レバー70、モータ部80等から構成される。
第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50は、その移動によって地板60に形成された光路開口61を通過する光量を調節する。
【0013】
羽根押さえ板10は、地板60との間に挿入される羽根等を、光軸方向から押さえ込み、各羽根の光軸方向の移動量を規制する。
また、羽根押さえ板10には、撮像素子(不図示)への光を通過させるための開口11が形成されている。
また、羽根押さえ板10には、開口11が形成された側と反対側において、駆動レバー70の第1ピン71の逃げ孔13が円弧状に形成され、第2ピン72の逃げ孔12が半円状に形成されている。
【0014】
第1羽根20には、光路開口61の開口面積を変化させるための開口21が、羽根の中央部全体に広がるように形成されている。また開口21は、駆動レバー70に形成された第2ピン72の逃げ孔を兼ねている。
駆動レバー70に形成された第1ピン71と係合する長孔22が、第1羽根20の幅方向に渡って形成されている。この長孔22は、途中でく字状に屈曲するカムとなっている。
また、地板60に形成されたガイドピン64と係合するガイド孔24が、第1羽根20の長手方向に伸長して形成されている。
【0015】
補助羽根30は、光路開口61の開口面積を変化させるための開口31が形成されている。
また補助羽根30は、第1ピン71と係合する長孔32が、幅方向に渡って直線状に形成されている。ここで、第1羽根20と補助羽根30は駆動レバー70に突設された同一の第1ピン71と係合している。また補助羽根30は、第1羽根20と重なっており、第1羽根20及び第2羽根50と協動して光路開口61を閉鎖状態となるように形成されている。
補助羽根30は、第2ピン72の移動を逃がす逃げ孔33が半円状に形成されている。
また、補助羽根30は、ガイドピン64に係合するガイド孔34が、その長手方向に伸長して形成されている。ガイド孔34は、補助羽根30の移動量に対応して、第1羽根20に形成されたガイド孔24よりも短く形成されている。
【0016】
羽根受け板40は、補助羽根30と第2羽根50との間に挟まれるように収納される。
また羽根受け板40は、撮像素子への光を通過させるための開口41が形成されている。
また羽根受け板40は、第2ピン72の逃げ孔42が円弧状に形成され、第1ピン71の逃げ孔43が半円状に形成されている。
また羽根受け板40は、ガイドピン64と嵌め合う係止孔44が形成されており、これにより羽根受け板40は、地板60に対して移動しないように固定される。
【0017】
第2羽根50は、その端部を切欠いて開口51が形成されている。第2羽根50は、第2ピン72に係合する長孔52が、第2羽根50の幅方向に渡って形成されている。この長孔52は、途中でく字状に屈曲するカムとなっている。
また第2羽根50は、ガイドピン64に係合するガイド孔54が、その移動方向に沿って伸長して形成されている。
【0018】
地板60は、光路開口61が形成されている。また、駆動レバー70の逃げ孔62が形成されている。また、光路開口61の近傍に、ガイド孔54、34、24と係合し、係止孔44と嵌合するガイドピン64が形成されている。また、地板60の両側部の一部に、ガイド壁65が形成されており、ガイドピン64とガイド孔65とにより、第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50の移動が地板60の長手方向に直線的に案内される。
【0019】
駆動レバー70は、その中心位置を回動中心として所定の作動角範囲内を回動し、その両端部に第1ピン71及び第2ピン72が羽根側に向けて突設されている。
また駆動レバー70は、その回動範囲の一端から他端の間の少なくとも1ヶ所の途中位置において停止が可能となっている。すなわち駆動レバー70が回動することにより、第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50が駆動され、駆動レバー70の一端、他端及び途中の停止位置において光路開口61を通過する光量が調節される。
モータ部80は、その回転軸を駆動レバー70の中心位置で連結され、駆動レバー70を駆動する。
【0020】
次に、羽根の動作について説明する。
図3は、羽根の動作状態を示しており、図3(a)は、全開状態、(b)は全閉状態、(c)は小絞り状態を示している。尚、図3には、羽根押さえ板10、羽根受け板40及び地板60の逃げ孔62については省略してある。また、第1羽根20及び補助羽根30などの形状についても簡略化して記載してある。
【0021】
図3(a)を参照して全開状態について説明する。
光路開口61は、第1羽根20に形成された開口21と、補助羽根30に形成された開口31と、第2羽根50に形成された開口51とに囲まれるようにして全開状態が保持される。
また、駆動レバー70は、光量調節装置1の幅方向と略平行となるように位置付けられる。
【0022】
全開状態から全閉状態への動作について説明する。
図3(a)に示した、駆動レバー70の回動範囲の他端である全開状態から、駆動レバー70が反時計方向に回動して、第1羽根20及び補助羽根30を右方向に直進移動させ、第2羽根50を左方向に直進移動させ、即ち第1羽根20及び補助羽根30と第2羽根50とを相反する方向に直進移動させて光路開口61の状態は図3(b)に示すように、駆動レバー70の回動範囲の途中位置である全閉状態に調節される。ここで第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50により光路開口61が遮蔽されて、全閉状態が保持される。
【0023】
次に、全閉状態から小絞り状態への動作について説明する。
図3(b)に示した、駆動レバー70の回動範囲の途中位置である全閉状態から、駆動レバー70が更に反時計方向に回転して、第1羽根20及び補助羽根30を左方向に直進移動させ、第2羽根50を右方向に直進移動させて光路開口61の状態は図3(c)に示すように、駆動レバー70の回動範囲の一端位置である小絞り状態に調節される。この小絞り状態は、開口21及び開口51の内輪郭により保持される。
【0024】
以上のように、駆動レバー70の回転により、光路開口61の状態は、全開状態から全閉状態へ、全閉状態から小絞り状態へと調節される。
【0025】
次に、全閉状態に調節される際の駆動レバー70の位置について詳細に説明する。図4は、全閉状態に調節される際の駆動レバー70の位置についての説明図である。
図4(a)には、光路開口61の状態が全閉状態に調節される際の駆動レバー70と、駆動レバー70の回動中心Pを通過し、各羽根の移動方向に平行な仮想線Aとが示されている。また、仮想線Aから回動中心Pを中心として時計方向に45°までの角度範囲内をα1、α3とし、反時計方向に45°までの角度範囲内をα2、α4とする。また、上記以外の90°の角度範囲内をβ1、β2とする。
【0026】
全閉状態において第1ピン71は、角度範囲α3内に位置し、第2ピン72は、角度範囲α1内に位置する。即ち、全閉状態において駆動レバー70は、仮想線Aから時計方向に45°の角度範囲内に位置する。
【0027】
次に、光路開口61の状態が全閉状態に調節される際に駆動レバー70が上記の位置に位置付けられることによる効果について説明する。
図4(b)は、全閉状態における駆動レバー70の位置が、図4(a)に示した状態から僅かに反時計方向にずれた場合について示してある。図4(c)は、駆動レバー70が角度範囲β1、β2の位置に位置付けられており、その位置から僅かに反時計方向にずれた場合について示してある。尚、図4(b)と(c)とのそれぞれに示した、駆動レバー70のずれた角度は略同一である。
【0028】
図4(b)に示すように、駆動レバー70の位置が僅かにずれた場合、第2ピン72の中心位置は、羽根の移動方向にD1だけずれる。
一方、図4(c)に示すように、駆動レバー70の位置が僅かにずれた場合であっても、第2ピン72の中心位置は、羽根の移動方向にD2ずれる。
【0029】
D1とD2とを比較すると、駆動レバー70の位置ずれによる回動角度は略同じであるにもかかわらず、羽根の移動方向へのずれが大きく異なり、D1<D2であることが読み取れる。また、D1、D2は、そのまま各羽根の移動方向の位置ずれ量となる。即ち、駆動レバー70の位置ずれによる回動範囲が同じであっても、駆動レバー70の位置によっては、各羽根が移動方向に大きくずれる場合がある。
【0030】
このように、駆動レバー70は、第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50が光路開口61の状態が全閉状態に調節される際に、仮想線Aに対して時計方向に45度の角度範囲内に位置することにより、全閉状態の位置から駆動レバー70が僅かにずれた場合であっても、各羽根の移動には大きく影響しない。従って、駆動レバー70の位置精度をラフに設定した場合であっても、全閉状態を確実に保持することができる。
【0031】
尚、光路開口61の状態が全閉状態に調節される際に、第2ピン72が角度範囲α2内に位置し、第1ピン71が角度範囲α4内に位置するように設定した場合、即ち、駆動レバー70が、仮想線Aに対して反時計方向に45度の角度範囲内に位置するように設定した場合であっても、上記と同様の効果を得ることができる。従って、駆動レバー70は、仮想線Aを中心とする90度の角度範囲内に位置するように設定することによって、上記のような効果を得ることができる。
【0032】
また、光路開口61の状態が全閉状態のみならず、全開状態又は小絞り状態に調節される際に、駆動レバー70が上記の位置に位置付けられるように設定することにより、上記と同様の効果を得ることができる。
【0033】
また駆動レバー70は、仮想線Aを中心とする90度の角度範囲内に位置すればよく、80度や70度の範囲内に位置するように設定してもよいし、仮想線Aと略水平となるように設定してもよい。
【0034】
次に、各羽根に形成された長孔について説明する。
図5は、各羽根に形成された長孔について説明図である。
図5(a)は、第1羽根20を示している。
第1羽根20には、開口21から離隔した位置に、幅方向に半分以上の領域に渡って長孔22が形成されている。長孔22には途中で屈曲する屈曲部22aを有したく字状に形成されているカムとなっている。長孔22は、開口21側に凸となるように形成されている。
【0035】
図5(b)は、第2羽根50を示している。
第2羽根50についても、開口51から離間した位置に、幅方向に半分以上の領域に渡って長孔52が形成され、この長孔52についても途中で屈曲する屈曲部52aを有したく字状に形成されているカムとなっている。長孔52は、開口51側と反対側に向けて凸となるように形成されている。
【0036】
図5(c)は、補助羽根30を示している。
補助羽根30は、逃げ孔33の近傍に長孔32が形成されている。長孔32は、幅方向に半分以上の領域に渡って形成され、幅方向に対して僅かに傾斜した直線状に形成されている。
【0037】
このように、各羽根に形成されている長孔は、羽根の幅方向に渡って形成されている。従って、駆動レバー70は、仮想線Aを中心とする90度の角度範囲内に位置することができる。
【0038】
次に、長孔の形状と羽根の移動量との関係について説明する。
図6は、長孔の形状の相違による羽根の移動量の違いの説明図である。
図6(a)は、第2ピン72の回動にともなう長孔52の位置の変化について示している。尚、各状態における第2ピン72及び長孔52の位置を明確に示すために、図6(a)においては、全開位置、全閉位置及び小絞り位置でのそれぞれの第2ピン72及び長孔52の位置を、(a)、(b)及び(c)として示している。また、第2ピン72は、回動中心Pを中心として所定の範囲を回動する。
【0039】
全開位置(a)において、第2ピン72は、長孔52の一端に位置付けられる。この際の長孔52は、回動中心Pよりも僅かに右側に位置する。
全開位置(a)から第2ピン72が反時計方向に回転し、第2ピン72は、長孔52の屈曲部52a付近となる全閉位置(b)に位置付けられる。この際の長孔52は、回動中心Pよりも大きく左側(即ち光路開口61側)に位置する。全開位置(a)から全閉位置(b)までの長孔52の移動距離をL1とする。
【0040】
次に、全閉位置(b)から第2ピン72が更に反時計方向に回転し、第2ピン72は長孔52の他端の小絞り位置(b)に位置付けられる。全閉位置(b)から小絞り位置(b)にかけて、長孔52は、再び右側(即ち光路開口61から離間する方向)に位置する。
【0041】
このように、長孔52は、駆動レバー70が上記90度の範囲内に位置する際に、駆動レバー70の回動中心Pに向けて凸状に形成されている。詳細には、長孔52は、第2ピン72の回動軌跡に対して、凸状に形成されている。
【0042】
次に、長孔52を羽根の移動方向に対して垂直となる直線状に形成した場合について説明する。
図6(b)は、長孔が羽根の移動方向に対して垂直となる直線状に形成された場合の、第2ピン72の回動に伴う長孔の位置の変化について示している。尚、直線状に形成された長孔を長孔52gとして説明する。また、上述した長孔52(a)、52(b)、52(c)と対応させて、長孔52g(a)、52g(b)、52g(c)として図6(b)に示す。
【0043】
位置(a)から位置(b)までの長孔52gの移動距離をL2とする。
図6(a)に示した移動距離L1と、図6(b)に示した移動距離L2とを比較すると、移動距離L1のほうが大きいことがわかる。
図6(c)には、長孔52の形状を示している。図6(c)に示すように、長孔52は、屈曲部52aから先端に至るまでの、羽根の移動方向の距離をΔmとすると、この距離Δmの分だけ、第2羽根50は、左方向に大きく移動することができる。
【0044】
このように、長孔52は、駆動レバー70が上記90度の範囲内に位置する際に、駆動レバー70の回動中心Pに向けて凸状に形成されているので、駆動レバー70の回動によって駆動する第2羽根50の移動量を大きくすることができる。
【0045】
また、第1羽根20に形成された長孔22についても、長孔52と同様の機能を有する。これにより、第1羽根20及び第2羽根50の相対的な移動量を大幅に増やすことができる。第1羽根20及び第2羽根50の相対的な移動量が大幅に増えることにより、各羽根や地板60の大きさに比して光路開口61が大きい場合であっても、光路開口61を全開状態から全閉状態に調節することができる。また、光路開口61の大きさを確保しつつ、各羽根や地板60の大きさを小さくすることができるので、光量調節装置全体を小型化することができる。
【0046】
また、補助羽根30と第2羽根50との間には、羽根受け板40が挟まれている。この補助羽根30は、第1羽根20よりも移動量は小さいが、第1羽根20と同一方向に移動する。この羽根受け板40は、移動量が大きい第2羽根50と、第2羽根50と相反する方向に移動する補助羽根30との移動を緩衝する機能を有する。これにより羽根の動きをスムーズに行うことができまた、羽根の磨耗を防止することができる。
【0047】
次に、第1羽根20と補助羽根30との関係について説明する。
図7は、第1羽根20と補助羽根30との重なり量についての説明図である。
図7(a)は、全開状態における光路開口61近傍の拡大図である。図7(b)は、全閉状態における光路開口61近傍の拡大図である。
【0048】
図7(a)に示すように、第1羽根20と補助羽根30とは、光路開口61を開放した状態で地板60に保持されている。また、第1羽根20と補助羽根30とは、全閉状態に画定する際に光路開口61を覆う、第1羽根20の所定領域と補助羽根30の所定領域とが、このスペースSに収まるように保持されている。スペースSは、光路開口61の左縁から地板60の左側端部までの距離をいう。
このスペースS内で第1羽根20と補助羽根30とが重なっている領域の長さをLとする。
【0049】
全閉状態に移行すると、図7(b)に示すように、第1羽根20と補助羽根30とは、その重なり量が減少するようにして、光路開口61を覆う。この第1羽根20と補助羽根30との重なりのずれ量をΔLとすると、第1羽根20と補助羽根30とにより光路開口61を覆う領域の長さは、L+ΔLと示すことができる。
【0050】
このように、第1羽根20と補助羽根30とが重なった状態で光路開口61を全開状態とし、第1羽根20と補助羽根30とが伸びるように重なり量が減少して、第2羽根50と共に光路開口61を全閉状態とするので、全開状態での第1羽根20及び補助羽根30の収まるスペースを小さくすることができる。これにより、光量調節装置についても小型化することができる。
【0051】
次に、長孔22、32との形状の相違による第1羽根20と補助羽根30との重なりのずれ量について説明する。
図8は、長孔22、32との形状の相違による第1羽根20と補助羽根30との重なりのずれ量についての説明図である。尚、図8においては、各状態における第1ピン71及び長孔32の位置を明確に示すために、全開位置及び全閉位置でのぞれぞれの長孔32及び第1ピン71の位置を(a)、(b)として示している。また、長孔22を基準として、長孔32及び第1ピン71の位置の変化の様子を示している。
【0052】
図8に示すように、第1ピン71の全開位置(a)においては、長孔32は、長孔22に対して右側に位置する。また、第1ピン71は、長孔22及び長孔32の下端部に位置付けられる。
【0053】
第1ピン71の全開位置(a)から第1ピン71が反時計方向に回転し、第1ピン71は、長孔22の屈曲部22a付近である第1ピン71の全閉位置(b)に位置付けられる。第1ピン71の全閉位置(b)での長孔32の位置は、第1ピン71の全開位置(a)での長孔32の位置と比較し、左方向に位置がずれている。このときのすれ量をΔLと示すことができる。即ち、図7に示した第1羽根20と補助羽根30との移動のずれ量は、長孔22と長孔32との形状が異なっているからである。この構成により、光路開口61を全閉状態にするときと、全開状態にするときとで第1羽根20と補助羽根30との重なり具合をずらすことができる。
【0054】
次に、小絞り状態に調節される際の駆動レバー70の位置について説明する。
図9は、小絞り状態に調節される際の駆動レバーの位置の説明図である。
図9は、地板60に形成された逃げ孔62と小絞り状態に調節される際の駆動レバー70を示している。
【0055】
逃げ孔62は、略円形状に形成されているが、その内輪郭の一部が逃げ孔62の中心に向かって凸となるように湾曲して、その湾曲した部分にストッパ部63が形成されている。ストッパ部63は、逃げ孔62の中心を介して対象となる2箇所の位置に形成されている。
【0056】
小絞り状態に調節される際には、駆動レバー70は、第1ピン71及び第2ピン72がストッパ部63にそれぞれ当接し、それ以上の反時計方向への回動が規制される。
【0057】
このように、各羽根は、ストッパ部63により規制される回動範囲の一端に駆動レバー70が位置するときに、光路開口61は小絞り状態に調節されるので、常に小絞り状態での開口部の開口量を一定とすることができる。従って、精度よく小絞り状態を確定することができる。
【0058】
また、ストッパ部63は、地板60に一体に形成されている。この構成により、簡単な構成で駆動レバー70の回動範囲を規制することができる。
【0059】
また、第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50は、回動範囲の他端に駆動レバー70が位置するときに、光路開口61は全開状態に調節され、回動範囲の途中に駆動レバー70が位置するときに、光路開口61は全閉状態に調節される。この構成により、光路開口61を全開状態、全閉状態及び小絞り状態に保持することができる。
【0060】
また、第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50は、駆動レバー70が回動範囲の一端から途中に至るまでの上記各羽根の移動方向と、途中から他端に至るまでの上記各羽根の移動方向が相反するように設定されている。このため、駆動レバー70が回動範囲の一端から途中に至るまでの間に、上記各羽根が小絞り位置から全閉位置への移行し、駆動レバー70が回動範囲の途中から他端に至るまでの間に、上記各羽根が全閉位置から全開位置へと移行することができる。
【0061】
また、前述したように長孔22及び長孔52は、各羽根の幅方向に渡ってカム形状に形成されている。この構成により、駆動レバー70の回動位置によって各羽根を容易に小絞り位置、全閉位置、全開位置に移動させることができる。
【0062】
次に、光量調節装置の変形例について説明する。
光量調節装置の変形例に係る第2羽根50Aは、開口51の部分にNDフィルターを備えている。図10は、NDフィルター51Aを設けた第2羽根50Aの例示図である。ここでNDフィルター51Aは、駆動レバー70が回動範囲の一端において、すなわち、各羽根が小絞り位置において光路開口61を覆う様に設けられている。
このように、各羽根のうち少なくとも一枚にNDフィルターを設けるように構成してもよい。
【0063】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、変形・変更が可能である。
【0064】
上記実施例において、図3に示したように、駆動レバーの一方向の回動により全開状態から全閉状態に移行し、全閉状態から小絞り状態に移行するように構成したが、このような構成に限定されず、例えば、全閉状態から全開状態に移行し、全開状態から小絞り状態に移行するように構成してもよい。
【0065】
また、停止位置は実施例のように3つではなく一端と他端のみの2つでも良い。この場合、駆動レバー70は、駆動レバー70の回動の中心を通過し羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内で回動する。
【0066】
第1羽根20、補助羽根30及び第2羽根50は、その移動によって、地板60に形成された光路開口61より小さい口径を有する羽根受け板40上の開口41の通過光量を調節するように構成してもよい。
【0067】
補助羽根30を設けずに、第1羽根20及び第2羽根50のみで光路開口61の通過光量を調節するようにしてもよい。また、この場合に、第1羽根20と第2羽根50との間に羽根受け板40を介在させることにより、双方の羽根のスライドを緩衝することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】上方から見た光量調節装置の分解斜視図である。
【図2】下方から見た光量調節装置の分解斜視図である。
【図3】羽根の動作状態を示した図である。
【図4】全閉状態に画定される際の駆動レバー70の位置についての説明図である。
【図5】各羽根に形成された長孔について説明図である。
【図6】長孔の形状の相違による羽根の移動量の違いの説明図である。
【図7】第1羽根20と補助羽根30との重なり量についての説明図である。
【図8】長孔との形状の相違による第1羽根と補助羽根との重なりのずれ量についての説明図である。
【図9】小絞り状態に画定される際の駆動レバーの位置の説明図である。
【図10】NDフィルターを設けた第2羽根の例示図である。
【符号の説明】
【0069】
1 光量調節装置
10 羽根押さえ板
11 開口
12、13 逃げ孔
20 第1羽根
21 開口
22 長孔
24 ガイド孔
30 補助羽根
31 開口
32 長孔
33 逃げ孔
34 ガイド孔
40 羽根受け板
41 開口
42、43 逃げ孔
50 第2羽根
51 開口
52 長孔
54 ガイド孔
60 地板
61 光路開口
62 逃げ孔
63 ストッパ部
64 ガイドピン
65 ガイド壁
70 駆動レバー
71 第1ピン
72 第2ピン
80 モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有する地板と、互いに相反する方向に直進移動して前記開口部を通過する光量を調節する一対の羽根と、前記一対の羽根と連結され回動することにより前記一対の羽根を駆動する駆動レバーとを備え、
前記駆動レバーは該駆動レバーの回動の中心を通過し前記羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内で回動する、ことを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
開口部を有する地板と、互いに相反する方向に直進移動して前記開口部を通過する光量を調節する一対の羽根と、前記一対の羽根と連結され回動することにより前記一対の羽根を駆動する駆動レバーとを備え、
前記駆動レバーはその回動範囲の一端から他端の間に少なくとも1ヶ所の途中位置において停止位置を有し、該停止位置における前記駆動レバーは該駆動レバーの回動の中心を通過し前記羽根の移動方向に平行な仮想線を中心とする90度の角度範囲内に位置する、ことを特徴とする光量調節装置。
【請求項3】
前記一対の羽根は、前記駆動レバーに突設されたピンに係合する長孔がそれぞれに形成され、
前記長孔は、各羽根に幅方向に渡って形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光量調節装置。
【請求項4】
前記途中位置における前記開口部の状態は、全閉状態である、ことを特徴とする請求項2又は3に記載の光量調節装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−65252(P2008−65252A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245771(P2006−245771)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(396004981)セイコープレシジョン株式会社 (481)
【Fターム(参考)】