説明

光電センサ及び光電センサシステム

【課題】複数の光電センサの受光量表示を統一するとともに、ワークの検出状態とは無関係な僅かな受光量変化を無視し、且つ異常が発生している光電センサを発見しやすい光電センサ及び光電センサシステムを提供する。
【解決手段】スケーリング表示の実行指示を光電センサ30の制御部31が受け付けた際に、スケーリング表示実行中の表示上限値よりも大きな値に設定された目標値に受光量を割り当ててスケーリング調整率を算出する。その後に取得された受光量は算出されたスケーリング調整率に基づいてスケーリング後の受光量を求め、スケーリング後の受光量が表示上限値よりも大きくなる場合は表示上限値をスケーリング後の受光量として表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受光量と閾値とを比較することにより所望のワークを検出する光電センサ、及び該光電センサを複数連結して構成される光電センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
光電センサは検出領域に光を投光するとともに、検出領域からの光を受光して、受光した受光量を所定の閾値と比較することにより、検出領域におけるワークの有無を検出する。この種の光電センサの使用態様として、複数の光電センサを連結し、複数の箇所に光を投光してワークの状態監視を行う光電センサシステムが知られている。
【0003】
光電センサにはLEDやレーザダイオード等の発光素子と、フォトダイオード等の受光素子が内蔵されている。通常の光電センサには発光素子の輝度ばらつきや、受光素子の感度やオフセットなどに個体ばらつきが必ず存在する。また、光ファイバを挿入して該光ファイバを用いて光を導光するタイプの光電センサであれば、光ファイバの挿入ばらつきによる光結合効率のばらつきも存在し、これら個体ばらつきにより、複数の光電センサをたとえ同一環境下で用いたとしても、各光電センサが取得する受光量は完全に同一にはならない。
【0004】
光電センサ毎に取得する受光量が異なっていると、各光電センサの特性に合致した閾値の設定が必要となりユーザにとって手間がかかる上、同一環境下で光電センサを使用しているにも関わらず、受光量表示が光電センサ毎に異なっているとユーザの装置への信頼を損ねる虞がある。
【0005】
これに対して、従来から受光量をスケーリングして表示するスケーリング機能が知られている。このスケーリング機能は、受光量を予め設定されたスケーリング目標値に調整するとともに、その後取得された受光量をスケーリング調整率に基づいて拡大又は縮小して表示するものである(例えば特許文献1)。スケーリング機能としては実際に取得される受光量がスケーリング目標値に近づくように発光素子や受光素子を制御するものや、実際に得られる受光量は変化させずに受光量の表示値を拡大又は縮小して表示するものが知られている。
【0006】
このスケーリング機能を実行することにより、複数の光電センサの受光量表示を同じ値に容易に設定することができるため、複数の光電センサの閾値を統一的に管理できるばかりでなく、ユーザに対して受光量表示の見栄えを向上することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−158497号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来のスケーリング機能は、スケーリング目標値に一致するように各光電センサの受光量をハード的あるいはソフト的に調整するだけなので、ワークの検出状態とは無関係な僅かな環境変動や汚れなどに起因する光量変動が原因で受光量表示にスケーリング機能実行後、直ぐにばらつきが生じてしまう。したがって、ユーザは頻繁にスケーリング機能を実行する必要があり手間がかかる。また、スケーリング機能を実行すると元の受光量が分からなくなるため、スケーリング目標値が光電センサ毎に異なっていると、どの程度の受光量の低下が発生しているかをユーザが把握し難いという問題があり、受光量の低下が許容できる範囲内なのか、あるいは早急にメンテナンスが必要な状態なのかを容易に判断することができない。
【0009】
本発明は上述した問題点に鑑みてなされたものであり、複数の光電センサの受光量表示を統一するとともにワークの検出状態とは無関係な光量変動の影響を受けずに受光量表示を安定させ、且つ異常が発生している光電センサを発見しやすい光電センサ及び光電センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するために、本発明の光電センサは、検出領域に向けて光を投光する投光部と、前記検出領域からの光を受光して受光信号を生成する受光部と、該受光部で生成された受光信号に基づいて受光量を求め、予め定められた閾値と比較して検出領域におけるワークの有無を検出する光電センサであって、前記受光量を表示する表示部と、前記表示部に表示された受光量を予め定められた目標値に割り当てるスケーリング機能の実行指示を行うための操作部と、前記スケーリング機能の実行指示を受け付けた時の受光量を予め定められた目標値に割り当てると共に、前記受光量を該目標値に割り当てるための拡大率又は縮小率であるスケーリング調整率を算出し、その後取得された受光量を前記スケーリング調整率に基づいて拡大又は縮小したスケーリング後の受光量を前記表示部に表示させる制御部とを備え、前記制御部は、前記受光量を前記スケーリング機能実行中の表示上限値よりも大きな値に設定された目標値に割り当て、前記スケーリング後の受光量が前記表示上限値よりも大きな値となる場合は前記表示上限値をそのときのスケーリング後の受光量として前記表示部に表示させることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、スケーリング機能の実行指示を制御部が受け付けた際に、スケーリング機能実行中の表示上限値よりも大きな値に設定された目標値に受光量を割り当てるため、スケーリング機能を実行すると表示部にはまずスケーリング後の受光量として表示上限値が表示される。その後取得された受光量をスケーリング調整率に基づいて拡大又は縮小してスケーリング後の受光量を表示する。このときのスケーリング後の受光量は、受光量をスケーリング機能実行中の表示上限値よりも大きな目標値に割り当てた際に得られるスケーリング調整率に基づいて算出される。したがって、複数の光電センサに対して上記スケーリング機能を実行すれば、全ての光電センサの表示を表示上限値に統一することができる。また、実際の受光量はこの表示上限値よりも大きな目標値に割り当てられるため、僅かな受光量の減少があってもスケーリング後の受光量は表示上限値のままである。したがって、ワークの状態とは無関係な環境変動に起因する僅かな受光量の減少の影響を受けず、非常に安定した表示が可能になる。
【0012】
更に、ワークの状態とは無関係に大きな受光量の減少が発生していると、スケーリング後の受光量が表示上限値よりも下回って表示される。このような場合は、その光電センサに何らかの異常が発生している可能性が考えられる。したがって、ユーザにとっては異常な光電センサを発見しやすくなる。
【0013】
ここで、前記制御部は前記スケーリング機能の実行指示を受け付けた際に、前記表示上限値に対して予め定められた比率の大きさに設定された閾値を設定するようにしてもよい。
【0014】
これにより、閾値は目標値ではなくスケーリング機能実行時の表示上限値に対して予め定められた比率の大きさに設定されるので、目標値の大きさに依存せずに全ての光電センサに同じ閾値が自動的に設定され、複数の光電センサの閾値を一元的に管理することができる。
【0015】
ここで、前記表示部は、前記閾値を表示する第1表示部と、前記受光量を表示する第2表示部とからなり、前記制御部は前記スケーリング後の受光量を前記第2表示部に表示中に、前記操作部の操作を受け付けて前記表示上限値に対する前記閾値の比率を変更することにより該閾値の調整処理が実行可能であり、前記閾値の調整後に再度スケーリング機能の実行指示を受け付けた場合に、そのときの受光量を前記目標値に割り当てて新たなスケーリング後の受光量を前記表示部に表示する一方で、前記閾値は前記変更後の比率を維持するようにしてもよい。
【0016】
これにより、スケーリング機能実行中に表示上限値に対する閾値の比率を変更して閾値の調整処理を実行した後に、再度スケーリング表示を実行したときに、変更後の比率が維持されて閾値が再設定されるので、再スケーリング後にユーザが再度閾値の調整を行う必要がない。
【0017】
ここで、前記制御部は前記スケーリング機能が解除された際に、前記スケーリング機能実行中のスケーリング後の受光量と閾値との比率を維持するように、スケーリング機能解除後の受光量に対して閾値を再設定するようにしてもよい。
【0018】
これにより、ユーザがスケーリング機能を解除した後も、スケーリング機能実行中のスケーリング後の受光量と閾値との比率が維持されるので、スケーリング機能を解除した後に閾値を再設定する必要がない。
【0019】
ここで、前記制御部は前記操作部による操作を受け付けて前記目標値を前記表示上限値と等しくするか、あるいは前記表示上限値よりも大きくするかを選択可能であり、前記表示上限値よりも大きくする場合は所定範囲内で前記目標値を設定変更可能に構成してもよい。
【0020】
これにより、例えばユーザが目標値を表示上限値と等しく設定した場合は、僅かでも受光量の減少が発生すると、この減少を直ぐに表示に反映させることができる。一方で目標値を表示上限値よりも大きく設定する場合は、目標値を所定範囲内で設定できるので、表示に反映させない受光量の減少幅をユーザが設定できる。
【0021】
ここで、前記表示部は前記スケーリング表示実行中に、該スケーリング表示が実行中であることを示す表示を行うようにしてもよい。
【0022】
これにより、ユーザは現在の表示が受光量表示なのか、あるいはスケーリング後の受光量なのかを容易に判断できる。
【0023】
ここで、前記光電センサは他の光電センサと通信するための接続手段を備え、該光電センサを前記接続手段を介して複数連結して構成され、前記制御部は前記操作部によるスケーリング機能の実行指示を受け付けるとともに、前記接続手段に接続された他の光電センサに前記スケーリング機能の実行指示を送信し、他の光電センサの制御部は、前記スケーリング機能の実行指示を受け付けて前記スケーリング機能を実行するようにしてもよい。
【0024】
これにより、複数の光電センサが連結して用いられる光電センサシステムにおいて、一の光電センサにスケーリング表示の実行指示を与えると、他の光電センサにもスケーリング表示の実行指示が与えられるので、複数の光電センサの表示を手間をかけずに一斉に統一することができる。
【0025】
ここで、前記制御部は、前記スケーリング機能実行中に前記操作部による前記閾値の調整処理を受け付けた際に、前記閾値の調整処理を実行するとともに前記接続手段を介して接続された他の光電センサに前記閾値の調整処理を示す信号を送信し、前記他の光電センサの制御部は前記閾値の調整処理を示す信号を受け付けて閾値の調整処理を実行するようにしてもよい。
【0026】
これにより、複数の光電センサが連結して用いられる光電センサシステムにおいて、スケーリング機能実行中に一の光電センサの閾値の調整処理を指示すると、他の光電センサにも閾値の調整処理の指示が与えられる。したがって、スケーリング表示実行後に、ユーザが複数の光電センサに個別に閾値調整を行う必要がなく、複数の光電センサの閾値調整を簡便に行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、複数の光電センサの受光量表示を統一するとともにワークの検出状態とは無関係な僅かな受光量変化の影響を受けない安定した受光量表示を実現し、且つ異常が発生している光電センサを発見しやすい光電センサ及び光電センサシステムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施の形態における光電センサについて詳細に説明する。図1(a)は本実施の形態における光電センサ30を一方の側面から見た状態の斜視図であり、図1(b)は光電センサ30を反対側の側面から見た状態の斜視図である。また図2は光電センサ30を上面から見た図である。光電センサ30は図1(a)、(b)に示すように、幅が狭いケース51に部材を収容したユニットである。ケース51の上面には4桁の7セグメントLEDで形成された表示部34や各種のスイッチから成る操作部35が設けられている。表示部34はセンサの受光量と設定閾値や、受光量と余裕度などの値を同時にデジタル表示可能である。
【0029】
操作部35は、アップダウンスイッチ35a、セットスイッチ35b、モードスイッチ35c、チャンネルセレクタ35d、プリセットスイッチ35eを備え、表示部34はケース51の長手方向に横並びに隣接して配置された第1、第2の表示部34a、34bが設けられている。各表示部34a、34bはそれぞれ4桁の7セグメントLEDで構成されている。
【0030】
ケース51の上部には、上面を覆う着脱自在のカバーが設けられるが、図1では省略している。また、ケース51の長手方向端部には、光ファイバ32a、33aを装着するヘッド装着孔52a、52bと、光ファイバ32a、33aを装着するヘッド装着孔52a、52bと、光ファイバ32a、33aを固定する固定レバーが設けられている。
【0031】
図1(a)に示すようにケース51の一方の側面には、コネクタ37が設けられている。また、ケース51の一方の側面には、長手方向両端部に近接して係合突起53a、53bが設けられている。この係合突起53a、53bは、後述するネットワークユニット10と係合させるためのもので、ネットワークユニット10との連結の際の位置決めと接続を行う物理的な接続手段を構成している。コネクタ37は上流側のネットワークユニット10又は光電センサ30と電気的に接続する接続手段を構成している。
【0032】
図1(b)に示すようにケース51の他方の側面にはコネクタ37と対象な位置にコネクタ38が設けられている。また、ケース51の他方の側面には、長手方向両端部に近接して係合凹部54a、54bが設けられている。この係合凹部54a、54bは、下流の光電センサ30に設けられた係合突起を嵌入させて係合するもので、光電センサ30同士の連結の際の位置決めと接続を行う物理的な接続手段を構成している。コネクタ38は下流側の光電センサ30と電気的に接続する接続手段を構成している。
【0033】
本実施の形態における光電センサ30はネットワークユニット10を介して、図示しないPLC等の上位制御装置にデータを転送したり、あるいは上位制御装置からの命令を受け付けることができる。図3は複数の光電センサ30を連結し、ネットワークユニット10を介して上位制御装置に接続される連設型センサシステムの構成を示す図である。ネットワークユニット10はネットワークポート18を有し、ネットワークポート18を介して上位制御装置から各光電センサに個別に、あるいは同時に外部入力信号を入力することができる。
【0034】
図4は、光電センサ30の内部構成を示す機能ブロック図である。光電センサ30は、1チップのゲートアレイやマイクロプロセッサを用いて形成した制御部31を有している。制御部31はタイミング制御部31a、判定部31b、シリアル通信部31c、表示制御部31dを内部に備えている。また制御部31には発光部32、受光部33、表示部34、操作部35、メモリ36、出力トランジスタQ1及びコネクタ37、38が接続されている。
【0035】
制御部31は、シリアル伝送ライン41を介してネットワークユニット10との間でシリアル信号を送受信する機能を有する。また、光電センサ30内のパラメータが更新されたときにメモリ36が保持する更新フラグをオンとし、パラメータの送出を終えるとこのフラグをリセットする機能を有している。
【0036】
判定部31bは受光量を所定の閾値により弁別してオン/オフの二値化された判別信号に変換する判別部である。センサの判別信号は出力用トランジスタQ1を介して外部に直接出力される。
【0037】
シリアル通信部31cはコネクタ37、38のシリアル伝送ライン41に接続され、連設型センサシステム1に接続されるネットワークユニット10との間でシリアル通信を行うもので、シリアル伝送手段を構成している。
【0038】
表示制御部31dは、受光部33が受光した受光量や予め設定された閾値を表示部34に表示させる。また、操作部35による操作を受け付けて、操作内容に対応した表示を表示部34に表示させる。
【0039】
発光部32はタイミング制御部31aからのタイミング信号に基づいて発光素子を駆動するものである。発光素子からの光は光ファイバ32aを介して伝送されて先端から光を輻射する。光ファイバ32aから輻射される光は物体検知領域を介して光ファイバ33aに入射し、受光部33に導かれる。受光部33は入射光を電気信号に変換し、増幅するものである。
【0040】
メモリ36は、検出された受光量、判別信号を記憶する揮発性メモリと、各光電センサで個別に設定される設定パラメータや初期化情報等を記憶する不揮発性メモリとからなり、このメモリの詳細については後述する。
【0041】
コネクタ37は、ネットワークユニット10と隣接する光電センサ30のコネクタ38と互いに接続可能となっている。またコネクタ37はシリアル伝送ライン41の上流側に接続される2個の接続端子37a、37bと、コネクタ38の接続端子38a、38bとの間は各々直接接続されてシリアル伝送ライン41が形成されている。
【0042】
コネクタ38はシリアル伝送ライン41の下流側に接続される2個の接続端子38a、38bを有する。コネクタ37の接続端子37a、37bと、コネクタ38の接続端子38a、38bとの間は各々直接接続されてシリアル伝送ライン41が形成されている。
【0043】
コネクタ37の接続端子37cはタイミング制御部31aを介してコネクタ38の接続端子38cに接続されている。また、コネクタ37の接続端子37d、37eとコネクタ38の接続端子38d、38eとの間は各々直接接続され、光電センサ30の内部に電源を供給すると共に、下流の光電センサ30に電源を供給する。
【0044】
以上のように構成された本実施の形態における光電センサ30のプリセット機能について説明する。図5は本発明におけるプリセット機能実行時の表示部34の画面遷移を示す図である。図5の例では、3台の光電センサ30−1、30−2、30−3がネットワークユニット10を介して上位制御装置42に接続されているものとする。各光電センサは通常表示状態で表示部34aに閾値、表示部34bにそのときの受光量を表示し、図5の例では透過型の光電センサにおいてワークにより遮光されていない状態の受光量を示している。
【0045】
図5(a)に示すように、各光電センサは同一環境下で使用されていても、内蔵する発光素子の輝度や受光素子の感度やオフセット、光ファイバの挿入位置の精度等に個体ばらつきがあり、受光量が同じにはならない。したがって、例えば閾値を入光状態にあるときの受光量の90%の受光量に設定したい場合は、図5(a)に示すように光電センサ毎に個別に異なる閾値を設定する必要があり、ユーザにとっては非常に手間がかかる。
【0046】
そこで、ユーザは各光電センサのプリセットスイッチ35eを押下するか、あるいは外部入力機能として受光量のスケーリング処理を行うプリセット機能を設定し、各光電センサに外部入力信号を入力すると図5(b)に示すように、現在の受光量が所定の目標値にスケーリングされ、全ての光電センサの受光量が統一される。本実施の形態ではプリセット機能実行時の表示上限値が100、プリセット機能実行後の初期閾値がその半分の50に固定されている。プリセット機能実行時の表示上限値とは4桁の表示部34bで表現できる表示最大値(9999)ではなく、それよりも小さな値に固定される。本実施の形態では表示上限値が100に固定されているが、これに限らず、200や1000等をプリセット機能実行時の表示上限値としてもよい。また、本実施の形態ではプリセット機能実行時の初期閾値を50に設定したが、上記表示上限値よりも小さな値であれば、これに限られるものではない。
【0047】
プリセット表示34cはプリセット表示機能が実行中か否かを示す表示であり、プリセット機能実行中のみ点灯する。ユーザはプリセット表示34cを確認することにより、現在表示されている閾値及び受光量がスケーリング前の値か、スケーリング後の値であるかを容易に判断できる。
【0048】
図6は本実施の形態におけるプリセット機能を説明するための図である。表示部34aに閾値、表示部34bに受光量を表示する通常表示(a)の状態から外部入力信号、あるいはプリセットスイッチ35eの押下を受け付けると、光電センサ30の制御部31は現在の受光量(ここでは2200)を予め定められた目標値(ここでは110)にスケーリングする。目標値はユーザにより設定変更が可能であり、図6(b)に示すようにプリセット機能実行時の表示上限値よりも大きな値に設定できる。スケーリングした受光量は表示部34bに表示され、閾値は表示上限値の半分の50に自動的に設定され、表示部34aに表示される。
【0049】
プリセット機能が実行されると、光電センサ30の制御部31は現在の受光量を目標値に割り当てたときのスケーリング調整率を算出し、センサ設定情報メモリ36cに記憶する。図6の例では受光量2200を目標値110に割り当てているので、スケーリング調整率として目標値を受光量で割った0.05が記憶される。制御部31はプリセット機能実行後に新たに取得される受光量をこのスケーリング調整率0.05を掛けて表示部34bに表示しようとする。しかし、プリセット機能実行時の表示上限値は100に固定されているため、スケーリング調整率0.05を掛けて得られたスケーリング後の受光量が100よりも大きくなる場合は、表示部34bには表示上限値である100をスケーリング後の受光量として表示する。
【0050】
図6の例では表示上限値100をスケーリング前の受光量に換算すると2000となるため、実際の受光量が2000よりも小さくならない限り、表示部34bには表示上限値100の表示が継続される。図6(c)はプリセット機能実行後に環境変動あるいは素子の劣化等の影響で受光量が僅かに減少した例を示している。図6(c)の例ではスケーリング後の受光量が110から105まで減少したが、表示上限値100よりは大きな受光量を維持しているため、表示部34bの表示は表示上限値100が維持されて表示される値に変化は無い。このように、スケーリングを実行する際の目標値を、プリセット機能実行時の表示上限値よりも大きく設定することにより、プリセット機能実行後の僅かな受光量の減少を無視し、本来ユーザが観測したい図6(d)に示すようなワーク検出時の大きな受光量の変動のみを表示部34bに反映させることができる。したがって、プリセット機能実行直後に環境変動や汚れに起因する光量変動の影響を受けて受光量表示がばらついてしまう虞がない。
【0051】
また、図6(e)に示すように、ワークを検出していないにも関わらずスケーリング後の受光量が表示上限値100よりも小さく表示されている場合には、無視できないレベルの大きな環境変化や素子の劣化等が生じていると判断することができる。このような場合は、再度プリセット機能を実行して、閾値の再設定を行うか、使用環境のメンテナンスや交換等の対処を行うことができる。このように、本実施の形態によれば、ユーザによるメンテナンスが必要なレベルで受光量が減少している光電センサのみを容易に識別することができる。
【0052】
上述した目標値は、表示上限値100よりも大きな所定範囲(例えば100〜200)でユーザが自由に設定変更可能である。目標値を大きく設定すると、大きな受光量の減少が無い限り表示部34bには表示上限値の表示が継続し、逆に目標値を表示上限値に近づけて設定すると、僅かな受光量の減少が表示部34bに反映される。したがって、ユーザは用途に応じた目標値を設定することにより、受光量がどの程度減少したら表示部34bの表示を変化させるかを任意に設定することができる。また、プリセット機能実行直後からの受光量の減少を正確に把握したいユーザのために目標値を表示上限値と等しく設定することも可能である。
【0053】
プリセット機能実行時の閾値は表示上限値に対して所定の比率(本実施の形態では50%)の値に設定される。ユーザにより値が変更可能な目標値ではなく、固定された表示上限値に対する比率で閾値が設定されるため、複数の光電センサの目標値が異なる場合でも閾値を同じ値に一元管理できる。また、内部的には実際に取得した受光量が表示上限値よりも大きな値に割り当てられていても、ユーザは表示部34bに表示されている受光量を現在の受光量として認識するため、閾値を実際に表示される表示上限値に対する比率で設定することによりユーザによる無用な混乱を防止することができる。
【0054】
プリセット機能実行中の閾値はアップダウンスイッチ35aを操作することにより、ユーザが調整することができる。図7はプリセット機能実行後に閾値を変更した場合の表示画面の遷移と各表示画面が表示されているときのスケーリング前の受光量と閾値の対比を示す図である。図7に示すように表示部35にはプリセット機能が実行されるとスケーリング後の受光量と閾値(以下、表示閾値)を表示するが、内部的には制御部31によりスケーリング前の実際の受光量と閾値(以下、判別閾値)との比較に基づいて判別信号が出力されている。通常表示状態の図7(a)の状態からプリセットスイッチ35eを押下すると、プリセット機能が実行されて、図7(b)に示すように受光量2000が目標値100にスケーリングされ、スケーリング後の受光量100が表示される。ここでは目標値が表示上限値100と等しく設定されているものとする。プリセット機能が実行されると表示閾値は表示上限値100の50%にあたる50が初期表示されるが、アップダウンスイッチ35aを操作することで、図7(c)に示すように変更することができる。表示閾値を例えば50から90に変更すると、スケーリング前の受光量に対する判別閾値は1000から1800に変更される。
【0055】
図7(d)に示すように、環境変動や汚れ等による光量変動の影響で受光量が減少すると、ユーザはプリセットスイッチ35eを押下することにより、再度プリセット機能を実行することができる。図7(d)の例では、プリセットスイッチ35eを再度押下することで受光量1900が目標値100に再度スケーリングされてスケーリング後の受光量100が表示される。光電センサ30の制御部31は、プリセットスイッチ35eの押下を受け付けると、受光量1900を目標値100に割り当てるとともに、スケーリング前の受光量に対する判別閾値を受光量1900の90%に当たる1710に変更する(図7(e)参照)。表示閾値は変更されず、表示閾値90を維持する。このように、表示閾値を一度変更した後に再度プリセット機能が実行されても、表示上限値に対する表示上の閾値の比率を維持するように、判別閾値を変更する。したがって、プリセット機能を実行する度に、そのときの受光量に対応した所望の比率の閾値を自動的に設定することができるので、メンテナンスを簡便に行うことができる。
【0056】
図7(f)に示すように例えばプリセットスイッチ35eを長押しすることにより、プリセット表示から通常表示に移行させることができる。通常表示に移行するとプリセット表示中のスケーリング後の受光量と表示閾値との相対関係を維持した状態で、実際の受光量と閾値が表示される。
【0057】
本実施の形態における光電センサ30は、図3で説明したように複数の光電センサを連結して光電センサシステムを構成することができる。上述したように、各光電センサは同一環境下で使用されていても、内蔵する発光素子の輝度や受光素子の感度やオフセット、光ファイバの挿入位置の精度に個体ばらつきがあり、受光量が同じにはならない。図8は4台の光電センサを連結して用いた場合の各光電センサの表示部の画面遷移を示す図である。図8(a)に示すように、各光電センサの受光量は同一環境下でも異なる。そこで、上述したプリセット機能を用いると図8(b)に示すように複数の光電センサの受光量をスケーリングし、受光量及び閾値の表示を統一することができる。
【0058】
上述したプリセット機能は、外部入力機能として各光電センサにプリセット機能を設定しておき、外部入力信号を上位制御装置14から入力するか、あるいは各光電センサに設けられたプリセットスイッチ35eを押下することにより実行することができる。プリセットスイッチ35eを押下してプリセット機能を実行させる場合は、図8(b)に示すように全ての光電センサのプリセットスイッチ35eを押下しなくても、共通キー操作機能を用いて親機である光電センサ30−1のプリセットスイッチ35eを押下することで、光電センサ30−1に連結された他の光電センサにプリセット機能を実行させることができる。
【0059】
親機である光電センサ30−1の制御部31はプリセットスイッチ35eの操作を受け付けると、シリアル伝送ライン41を介して他の光電センサ30−2〜30−4にプリセット機能を実行させるプリセット実行信号を送信する。光電センサ30−4には予めキーロックが設定されており、親機からのプリセット実行信号を受け付けてもプリセット機能を実行せず、表示部34aにキーロックが設定されていることを示す「Loc」を表示する。キーロック設定は、各光電センサの操作部35を操作して予め設定しておくことができる。
【0060】
プリセット機能を実行させる信号を受け付けた光電センサ30−2、30−3はプリセット機能を実行し、そのときの受光量を目標値にスケーリングして、スケーリング後の受光量を表示するとともに、閾値を初期値である50に設定する。初期閾値50から閾値を変更したい場合は、親機である光電センサのアップダウンスイッチ35aを操作して閾値を変更することができる。光電センサ30の制御部31は閾値変更の操作を受け付けると、閾値の変更処理を実行するとともに、シリアル伝送ライン41を介して、他の光電センサ30−2、30−3に閾値調整信号を送信し、図8(c)に示すように他の光電センサの閾値を同時に変更することができる。例えば、アップダウンスイッチ35aで光電センサ30−1の閾値を1上げる操作を行うと、他の光電センサ30−2、30−3の閾値を1上げることができる。
【0061】
このように、本実施の形態における共通キー操作は、親機である光電センサの操作と子機の光電センサの操作を完全に共通化することができる。すなわち、プリセット機能を実行するための親機に対する操作を受け付けて、子機にプリセット機能を実行させるだけではなく、閾値を変更するためのアップダウンスイッチ35aの1回の操作毎に子機に閾値調整信号を送信し、閾値の変更結果を各光電センサの表示部34aにリアルタイムに更新して表示することができる。したがって、ユーザは親機である光電センサ30−1に対するプリセット機能の実行指示、及び閾値の変更設定を行うだけで子機に対する光電センサ30−2、30−3に対する設定を同時に完了することができる。
【0062】
親機からの共通キー操作を受け付けたくない光電センサが連結されている場合は、その光電センサに対して上述したキーロック設定を行うか、あるいは共通キー操作の受付を無効にすることができる。これらの設定は、操作部35を操作して表示部34に設定メニューを呼び出して設定可能であり、設定情報は各光電センサの設定情報メモリ36cに記憶される。
【0063】
プリセット機能実行時にスケーリング目標値が表示上限値よりも大きく設定されている場合は、僅かな受光量の減少は表示部34には反映されず、スケーリング後の受光量として表示上限値の表示が継続される。しかし、図8(d)に示すセンサ30−2の受光量表示のように、素子の劣化や環境変動の影響で大きく受光量が減少してくると、表示される受光量は表示上限値100を下回りスケーリング後の受光量が表示される。このような場合は、光電センサ30−2のプリセットスイッチ35eを押下することにより、再度プリセット機能を実行することで、受光量表示を他の光電センサの受光量表示と再び統一することができる。
【0064】
以上説明したように、本発明によれば、スケーリング表示の実行指示を制御部が受け付けた際に、スケーリング表示実行中の表示上限値よりも大きな値に設定された目標値に受光量を割り当てるため、僅かな受光量の減少があってもスケーリング後の受光量は表示上限値が表示される。したがって、ワークの状態とは無関係な環境変動に起因する光量変動の影響を受けず、非常に安定した表示が可能になる。
【0065】
特に、複数の光電センサを連結して用いる場合は複数の光電センサの受光量表示を統一し、閾値を一元的に管理できる他、その後の僅かな受光量変動を無視するため、長期的に受光量表示が統一された状態を維持できる。また、これらを外部入力あるいは共通キー操作により一括設定することができる。したがって、ユーザによる複数の光電センサに対する煩雑な設定を不要とし、且つ各光電センサの個体差に起因する受光量のばらつきによる受光量・閾値の個別管理を不要とするなど優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の光電センサ30を側面から見た状態の斜視図である。
【図2】本発明の光電センサ30を上面から見た状態の図である。
【図3】本発明の光電センサシステムを側面から見た状態の斜視図である。
【図4】本発明の光電センサのブロック構成図である。
【図5】本発明のプリセット機能実行時の表示部34の画面遷移を示す図である。
【図6】本発明のプリセット機能を説明するための図である。
【図7】本発明のプリセット機能実行時に閾値を変更した場合の表示部34の画面遷移と実際の閾値と受光量の対比図である。
【図8】本発明の複数の光電センサを連結して用いた場合における共通キー操作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0067】
1 連設型センサシステム
10 ネットワークユニット
11,31 制御部
30−1〜30−16 光電センサ
34 表示部
35 操作部
42 上位制御装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出領域に向けて光を投光する投光部と、前記検出領域からの光を受光して受光信号を生成する受光部と、該受光部で生成された受光信号に基づいて受光量を求め、予め定められた閾値と比較して検出領域におけるワークの有無を検出する光電センサであって、
前記受光量を表示する表示部と、
前記表示部に表示された受光量を予め定められた目標値に割り当てるスケーリング機能の実行指示を行うための操作部と、
前記スケーリング機能の実行指示を受け付けた時の受光量を予め定められた目標値に割り当てると共に、前記受光量を該目標値に割り当てるための拡大率又は縮小率であるスケーリング調整率を算出し、その後取得された受光量を前記スケーリング調整率に基づいて拡大又は縮小したスケーリング後の受光量を前記表示部に表示させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記受光量を前記スケーリング機能実行中の表示上限値よりも大きな値に設定された目標値に割り当て、前記スケーリング後の受光量が前記表示上限値よりも大きな値となる場合は前記表示上限値をそのときのスケーリング後の受光量として前記表示部に表示させることを特徴とする光電センサ。
【請求項2】
前記制御部は前記スケーリング機能の実行指示を受け付けた際に、前記表示上限値に対して予め定められた比率の大きさに設定された閾値を設定することを特徴とする請求項1に記載の光電センサ。
【請求項3】
前記表示部は、前記閾値を表示する第1表示部と、前記受光量を表示する第2表示部とからなり、
前記操作部は、前記閾値を変更するための閾値調整ボタンを含み、
前記制御部は前記スケーリング後の受光量を前記第2表示部に表示中に、前記閾値調整ボタンの操作を受け付けて前記表示上限値に対する前記閾値の比率を変更することにより該閾値の調整処理が実行可能であり、前記閾値の調整後に再度スケーリング機能の実行指示を受け付けた場合に、そのときの受光量を前記目標値に割り当てて新たなスケーリング後の受光量を前記表示部に表示する一方で、前記閾値は前記変更後の比率を維持することを特徴とする請求項2に記載の光電センサ。
【請求項4】
前記制御部は前記スケーリング機能が解除された際に、前記スケーリング後の受光量と閾値との比率を維持するように、前記スケーリング機能解除後の受光量に対して閾値を再設定することを特徴とする請求項2又は3に記載の光電センサ。
【請求項5】
前記制御部は前記操作部による操作を受け付けて前記目標値を前記表示上限値と等しくするか、あるいは前記表示上限値よりも大きくするかを選択可能であり、前記表示上限値よりも大きくする場合は所定範囲内で前記目標値を設定変更可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一に記載の光電センサ。
【請求項6】
前記表示部は前記スケーリング表示後の受光量を該表示部に表示中であることを示す表示を行うことを特徴とする請求項1から5のいずれか一に記載の光電センサ。
【請求項7】
前記光電センサは他の光電センサと通信するための接続手段を備え、該光電センサを前記接続手段を介して複数連結して構成され、
前記制御部は前記操作部によるスケーリング機能の実行指示を受け付けるとともに、前記接続手段に接続された他の光電センサに前記スケーリング機能の実行指示を送信し、他の光電センサの制御部は、前記スケーリング機能の実行指示を受け付けて前記スケーリング機能を実行することを特徴とする請求項1から6のいずれか一に記載の光電センサを用いた光電センサシステム。
【請求項8】
前記制御部は、前記スケーリング機能実行中に前記操作部による前記閾値の調整処理を受け付けた際に、前記閾値の調整処理を実行するとともに前記接続手段を介して接続された他の光電センサに前記閾値の調整処理を示す信号を送信し、前記他の光電センサの制御部は前記閾値の調整処理を示す信号を受け付けて閾値の調整処理を実行することを特徴とする請求項7に記載の光電センサシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−29940(P2011−29940A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173757(P2009−173757)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】